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平成29年(2017年) マンション管理士 試験問題 及び 解説

ページ2(問26より問50まで)

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謝辞:問題文の作成には、 高井様、白井様の協力を得ています。

※ 出題当時以後の法令等の改正には、一部は対応していません。

*試験に臨んで、お節介なアドバイス
  1.設問にあわせて、問題用紙に ○(まる)、X(ばつ)をつける。
    殆どの設問が、「正しい」か「間違い」かを訊いてきますので、設問により、問題の頭に、○かXをつけます。
    そして、各選択肢を読み、○かXをつけます。
    問題の○なりXと、選択肢の○かXが一致したものを、マークシートに記入してください。

  2.疑問な問題は、とりあえず飛ばす。
    回答の時間は限られています。
    そこで、回答として、○かXかはっきりしないものがでたら、「?」マークをつけて、次の問題に移ります。
    全部の回答が終わってから、再度戻って決定してください。

  3.複雑な問は、図を描く。
    甲、乙、A、B、Cなど対象が多い問題もでます。
    この場合、問題用紙の空いているところに、図を描いてください。
    重要な点が分かってきます。

(出題者からの注意
次の注意事項をよく読んでから、始めてください。
(注 意) 1 これは試験問題です。問題は、1ページから28ページまでの50問です。
      2 試験開始の合図と同時に、問題のページ数を確認してください。 もし落丁や乱丁があった場合は、ただちに試験監督員に申し出てください。 また、法律等の略称及び用語の定義について、裏面の記載を確認してください。
      3 答は、別の解答用紙に記入してください。 解答用紙に記入する際は、解答用紙の注意事項をよく読み、所定の要領で記 入してください。
      4 答は、各問題とも1つだけです。 2つ以上の解答をしたもの、判読が困難なものは、正解としません。
      5 問題中法令等に関する部分は、平成29年4月1日現在施行中の規定に基づいて 出題されています。

 問題の中で使用している主な法律等の略称及び用語の定義については、以下のとおりとします。
・「区分所有法」………………… 建物の区分所有等に関する法律 (昭和37年法律第69号)
  ☆マンション管理士 香川より;この解説においては、私も略称「区分所有法」といいます。

・「マンション管理適正化法」… マンションの管理の適正化の推進に関する法律 (平成12年法律第149号)
  ☆マンション管理士 香川より;この解説においては、私も略称「マンション管理適正化法」といいます。

・「標準管理規約」………………  マンション標準管理規約(単棟型)及び マンション標準管理規約(単棟型)コメント  (平成28年3月14日国土交通省土地・建設産業局長・ 同住宅局長通知)
  ☆マンション管理士 香川より、この解説においては、私も略称「標準管理規約」といいます。

・「マンション」…………………  「マンション管理適正化法第2条第1号イに 規定するマンション」をいう。
 ☆マンション管理士 香川より;
  初めての人には、分かり難い引用方法です。
  そこで、
私の過去の年度の解説を読んでいる人には、度々となりますが、これは、受験での基本ですから、解説します。

 建物の区分所有等に関する法律(以下、当解説では、「区分所有法」といいます)では、法律用語として「マンション」の定義がありません。しかし、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下、当解説では、「マンション管理適正化法」といいます)第2条では、以下のように定義されていますので、マンションの用語を試験で使用する際にはこのような「マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号イに規定するマンションをいう」の表現が使用されます。
 
  そこで、マンション管理適正化法第2条とは、
 
「(定義) 
  第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
     一
 マンション 次に掲げるものをいう
       イ 
二以上の区分所有者(建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)第二条第二項 に規定する区分所有者をいう。以下同じ。)が存する建物で人の居住の用に供する専有部分(区分所有法第二条第三項 に規定する専有部分をいう。以下同じ。)のあるもの並びにその敷地及び附属施設」

 です。マンション管理適正化法第2条1号イによれば、「マンション」であるための要件は、
    ①2人以上の区分所有者 がいて、 
    ②人の居住用の専有部分が1つでもあればいい 
 です。マンションの建物には、専有部分と共用部分しかなく、そして、マンションは専有部分と共用部分を含んだ建物と敷地及び附属施設の全体的なものであることに注意してください。


・「管理組合」……………………  「区分所有法第3条に規定する区分所有者の団体」 をいう。
  ☆マンション管理士 香川より; この定義の仕方には問題があります。
  まず、区分所有法第3条とは、
 
 「(区分所有者の団体)
   
第三条  区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。 」
 です。

  このマンション管理士試験では、区分所有法第3条前半に規定される区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を”即=管理組合”に置き換えていますが、区分所有法では、法人化された場合には、「管理組合法人」の規定はありますが、管理組合だけの規定は1つも存在しません。
 法律で定義がされていない管理組合を国家試験として、直ちに「区分所有法第 3条に規定する区分所有者の団体をいう」は、適切ではありません。



解説者(マンション管理士 香川)からのコメント:あやふやな出題、適切でない出題もあって、解答ができないのもあります。

※  ・マンション標準管理委託契約書は、平成30年3月9日付で24条に「反社会勢力の排除」などの改正があり、平成30年度の試験から出題適用となるので注意のこと。

   ・マンション標準管理規約は、平成29年8月29日付で「民泊」で12条に改正があり、平成30年度の試験から出題適用となるので注意のこと。

    ・マンションの管理の適正化に関する指針(国土交通省告示第490号)及びマンション標準管理規約は、平成28年3月14日付で大幅な改正があった。
  
   ・マンション標準管理委託契約書は、平成28年7月に改正があり、平成29年度の試験から出題適用となるので注意のこと。
   
   ・マンション標準管理規約は、平成16年に改正があった。また、平成23年7月にも小幅な改正があった。
   ・マンション標準管理委託契約書は、平成15年に改正があった。また、平成22年5月にも改正があった。

問26

注:標準管理規約(単棟型」)は以下、当解説では、「単棟型」を略して、「標準管理規約」といいます。

  標準管理規約は、平成28年3月14日に大幅な改正があり、また、平成29年8月29日付で「民泊」で12条に改正があったので、注意のこと。


〔問 26〕 役員の選任等に関する次の記述のうち、標準管理規約によれば、適切でないものはいくつあるか。

ア 役員は半数改選とし、役員の任期を2年とする旨を規約に定めることができる。

〇 適切である。

 役員の任期などは、標準管理規約36条
 「(役員の任期)
 第36条
役員の任期は○年とする。ただし、再任を妨げない。
2 補欠の役員の任期は、前任者の残任期間とする。
3 任期の満了又は辞任によって退任する役員は、後任の役員が就任するま での間引き続きその職務を行う。
4 役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。

 *外部専門家を役員として選任できることとする場合
4 選任(再任を除く。)の時に組合員であった役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。」
 とあり、
 「コメント第36条関係 ① 役員の任期については、組合の実情に応じて1~2年で設定することと し、選任に当たっては、その就任日及び任期の期限を明確にする。
② 業務の継続性を重視すれば、役員は半数改選とするのもよい。この場合 には、役員の任期は2年とする。」
 ともある。
 コメント第36条関係①によれば、役員の任期は2年とし、同②によれば、役員は半数改選とし、役員の任期を2年とする旨を規約に定めることができるは、適切です。

 しかし、現実には、役員のなり手がおらず、2年なんて任期は、人気がありません。任期はだいたい1年です。



イ 外部専門家を役員として選任できることとした場合、外部専門家が役員に選任された後に組合員となり、その後、その外部専門家が組合員でなくなったときは、当然に役員としての地位を失う。

X 適切でない。 選任後に組合員になった外部専門家役員なら、組合員の資格は不要で、地位を失わない。

 平成28年の改正点
 
 まったく、分かり難い設問です。 
 外部専門家を役員として選任できることとした場合は、選択肢1で引用しました、標準管理規約36条4項
 「*外部専門家を役員として選任できることとする場合
 4 選任(再任を除く。)の時に組合員であった役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。」
 とあります。
 そして、同36条 コメント③
 「③ 第4項は、組合員から選任された役員が組合員でなくなった場合の役員の地位についての規定である。第35条第2項において組合員要件を外した場合には、「外部専門家を役員として選任できることとする場合」のような規定とすべきである。
 それは、
例えば、外部の専門家として選任され た役員は、専門家としての地位に着目して役員に選任されたものであるから、当該役員が役員に選任された後に組合員となった場合にまで、組合員でなくなれば当然に役員としての地位も失うとするのは相当でないためである。 」
 とあり、
 標準管理規約36条4項 コメント③によれば、外部専門家が役員に選任された後に組合員となり、その後、その外部専門家が組合員でなくなったときでも、標準管理規約36条4項の
 「*外部専門家を役員として選任できることとする場合
 4 選任(再任を除く。)の時に組合員であった役員が組合員でなくなった場合には、その役員はその地位を失う。」
 の適用はなく、当然に役員としての地位を失わないため、適切ではありません。



ウ 正当な理由もなく恒常的に理事会を欠席している監事は、理事会の決議により解任することができる。

X 適切ではない。 監事や理事の解任は、総会に寄ること。理事会の決議ではできない。

 監事の選任は標準管理規約35条
 「(役員) 第35条 管理組合に次の役員を置く。
   一 理事長
   二 副理事長 ○名
   三 会計担当理事 ○名
   四 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
   五 監事 ○名
2 理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する。

 *外部専門家を役員として選任できることとする場合
2 理事及び監事は、総会で選任する。
3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する。
4 組合員以外の者から理事又は監事を選任する場合の選任方法については細則で定める。」
 とあり、
 標準管理規約35条2項によれば、監事も理事も総会で選任されますから、正当な理由もなく恒常的に理事会を欠席している監事であっても、理事会の決議により解任することは、出来ないため、適切ではありません。
 監事を解任させたければ、総会を開いてください。



エ 理事の選任は総会の決議によるものとし、選任された理事の間で各理事の役職を決定する。

X 適切でない。 理事の役職は、”理事会で選任する”に改正された。”理事の間”で各理事の役職を決定できない。
  平成28年の改正点。
 
 理事の選任と役職は、選択肢ウで引用しました、標準管理規約35条2項及び3項
 「2
理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する
理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事のうちから、理事会で選任する。 」
 とあり、
 標準管理規約35条2項によれば、設問の前半の「理事の選任は総会の決議によるものとする」は、適切です。

 そして、理事の役職は、標準管理規約35条3項によれば「理事のうちから、
理事会で選任」するため、選任された理事の間で各理事の役職を決定するは、適切ではありません。

 よって、選択肢エは、全体として、適切ではありません。

 ここは、平成28年の改正前は「理事の役職は、理事の互選による」との混同を狙った、卑劣な出題です。


 なお、理事会で選任となると、過半数以上の理事で決するということです。
 じゃあ、互選は?


1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ


答え:3 (適切でないのは、イ ウ エ の3つ)

 平成28年の改正点が、平成29年においても狙われるとは。 改正点から出題される傾向は、多いので注意のこと。

《タグ》標準管理規約 役員の任期 外部役員 総会の選任 役員の役職


 *理事長職の解任について
 理事間で理事長に互選された理事長の職は、理事の過半数により、解任できます。

 この判決が、最高裁判所で平成29年12月18日 にありましたので、来年度の受験生は、注意してください。 なお、該当のマンションの規約は、平成28年の改正前の標準管理規約を元にしていますので、ここにも、注意が必要ですよ。

 判示事項:理事を組合員のうちから総会で選任し,理事の互選により理事長を選任する旨の定めがある規約を有するマンション管理組合において,その互選により選任された理事長につき,理事の過半数の一致により理事長の職を解くことができるとされた事例 。

 ★この最高裁の判決の裏側にあるもの。
  一見、理事会で決定した理事長職なら、理事会でその職を解く(理事長職を解く)ことは、理事会でできると解することが普通ですが、解任された理事長の言い分としては、
  ・理事長職(他の役職を含めて)は理事の互選により選任するとの規定は規約にあるが、解任については定めがない
  ・そこで、役員の解任は、総会の決議事項である
  よって、理事会の決議では、理事長職の解任は、規約違反で、理事会の決議は無効である。
  
  さあ、あなたなら、区分所有法と規約を元に、どう、判断しますか?
  

問27

〔問 27〕 理事会において、次期通常総会に提出する役員選任の議案書作成に当たり、役員の選任要件について意見を求められたマンション管理士が行った次の助言のうち、標準管理規約によれば、適切でないものはどれか。

1 管理組合や現理事長等との間で管理組合運営に関し裁判中である区分所有者A氏は、役員とはなれないことから、役員候補者から外すべきです。

X 適切でない。 裁判で係争中は、役員の欠格事項に該当しない。

  ここも、平成28年の改正点。

 まず、役員選任規定には、標準管理規約35条2項で
 「2 理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。」
  と
 「*外部専門家を役員として選任できることとする場合
 2 理事及び監事は、総会で選任する。」
 の2つのパターンがあります。

 しかし、区分所有者であれば、共に総会の選任で役員にはなれます。

 そして、役員になれない事項(欠格事項)は、標準管理規約 36条の2
 「(役員の欠格条項)
  第36条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、役員となることができない。
   一 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
   二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受ける ことがなくなった日から5年を経過しない者
   三 暴力団員等(暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過し ない者をいう。)
 とあり、
 管理組合や現理事長等との間で管理組合運営に関し裁判中である区分所有者であっても、標準管理規約 36条の2 には、該当しないので、役員とはなれないことから、役員候補者から外すべきですは、適切ではありません。

 裁判で判決が確定するまで、罪は成立しません。



2 禁固刑に処せられ、その刑の執行が終わって5年が経過している区分所有者B氏は、役員候補者になり得ます。

〇 適切である。 刑の執行が終わって5年が経過すれば、役員の欠格事項に該当しない。
 平成28年 マンション管理士試験 「問27」 

 設問の「
禁固」刑と標準管理規約の「禁錮」が異なっているのが気になるが、禁錮刑なら、選択肢1で引用しました、標準管理規約 36条の2 2号
 「第36条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、役員となることができ ない。
 
二 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受ける ことがなくなった日から5年を経過しない者」
 とあり、
 禁固(禁錮)刑に処せられ、その刑の執行が終わって5年が経過している区分所有者B氏なら、役員候補者になり得ますから、適切です。


 なお刑には、刑法なら、重い順に、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料、没収があります。


3 細則において、派遣元の法人が銀行取引停止処分を受けている場合は外部専門家として役員となることができないとされているので、それに該当する外部専門家であるC氏は、役員候補者から外すべきです。

〇 適切である。 外部専門家としてなら、細則で別途役員の欠格条項を決めていれば、役員候補から外す。


 法人の外部専門家を役員にするなら、標準管理規約 36条の2 コメント②
 「② 外部の専門家からの役員の選任について、第35条第4項として細則で選任方法を定めることとする場合、本条に定めるほか、
細則において、次 のような役員の欠格条項を定めることとする
   ア  個人の専門家の場合
      ・ マンション管理に関する各分野の専門的知識を有する者から役員を選任しようとする場合にあっては、マンション管理士の登録の取消し 又は当該分野に係る資格についてこれと同様の処分を受けた者
   
イ 法人から専門家の派遣を受ける場合(アに該当する者に加えて)
    次のいずれかに該当する法人から派遣される役職員は、外部専門家と して役員となることができない。
     ・
銀行取引停止処分を受けている法人
     ・ 管理業者の登録の取消しを受けた法人 」
 とあり、
 標準管理規約 36条の2 コメント②イによれば、細則において、派遣元の法人が銀行取引停止処分を受けている場合は外部専門家として役員となることができないとされているので、それに該当する外部専門家であるC氏は、役員候補者から外すべきは、適切です。



4 区分所有者D氏は、破産者でしたが既に復権を得ているとのことなので、役員候補者になり得ます。

〇 適切である。 破産者でも復権を得ていれば、役員の欠格条項に該当しない。

 破産者は、選択肢1で引用しました、標準管理規約 36条の2
 「(役員の欠格条項)
  第36条の2 次の各号のいずれかに該当する者は、役員となることができない。
   
一 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
 とあり、
 標準管理規約 36条の2 1号によれば、区分所有者D氏は、破産者でしたが既に復権を得ているとのことなので、役員候補者になり得ますから、適切です。


 なお、破産者の復権は、自分で調べてください。


答え:1

 役員の欠格事項としては、それほど難しくはない。 でも、参考版の「標準管理規約」において、またそのコメントからの出題とは、出題者の意識が低い。

《タグ》標準管理規約 役員の欠格事項 裁判中 禁固刑 外部専門家 法人 銀行取引の停止 破産者

問28

〔問 28〕 議決権に関連する次の記述のうち、標準管理規約によれば、適切なものはいくつあるか。

ア 専有部分の価値の違いに基づく価値割合を基礎とした議決権割合を定める場合には、分譲契約等によって定まる敷地等の共有持分についても、価値割合に連動させることができる。

〇 適切である。 最近のタワー・マンションの出現で、上層階と下層階で分譲価格に極端な差がある場合などでは、議決権の割合も、分譲価格に比例することも検討したらいい。

 平成28年での改正点。

 マンションでの基本的な議決権の決め方は、区分所有法第38条
 
「(議決権)
 第三十八条 
各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による

 とあり、
 規約が優先し、規約が無ければ区分所有法第14条で定める「専有部分の床面積の割合」となります。

 そこで、標準管理規約での議決権は、標準管理規約 46条
 「(議決権)
 第46条
各組合員の議決権の割合は、別表第5に掲げるとおりとする
2 住戸1戸が数人の共有に属する場合、その議決権行使については、これ ら共有者をあわせて一の組合員とみなす。
3 前項により一の組合員とみなされる者は、議決権を行使する者1名を選任し、その者の氏名をあらかじめ総会開会までに理事長に届け出なければ ならない。
4 組合員は、書面又は代理人によって議決権を行使することができる。
5 組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代 理人は、以下の各号に掲げる者でなければならない。
   一 その組合員の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同 様の事情にある者を含む。)又は一親等の親族
   二 その組合員の住戸に同居する親族
   三 他の組合員
6 組合員又は代理人は、代理権を証する書面を理事長に提出しなければな らない。」
 とあり、
 議決権の割合は、標準管理規約 46条1項にありますように、今までは、基本とされる「専有部分の床面積」を元に別表で、決めていいことになっています。
ここにおいては、眺望や日当たりのいい南向き、角部屋、利便性など分譲時の価格に反映される条件は考慮されていませんでした。


 しかし、最近の超高層マンション(タワー・マンション、だいたい20階(60m)以上)の出現により、同じ床面積でありながら、東京23区では最上階の分譲価格が1階と比べて4倍、時には10倍にも及ぶという現状があります。
 そこで、上層階の居住者から、こんなに高い金額を払って購入したのに、マンションの総会における議決権が下層階の居住者と同じというのでは、不公平だという声が、多くなってきています。
 今までの床面積で議決権の割合を決めているのは、納得がいかないという、当然な不満です。


 このような、状況なら、議決権の割合も、価格も考慮した内容にすべきです。
 そこで、具体的には業者が決めた分譲価格を元にするのも一案ですが、業者が決めた分譲価格には、売れなければ、当初の分譲価格を下げるなど、かなり業者の思惑(恣意)が入っているため、客観性の面では、疑問があります。分譲価格に極端な差があるマンションでの議決権の割合を決めるには、慎重さが求められます。

 
 それらを前提に、設問の標準管理規約の世界に戻りますと、平成28年の改正時に、国土交通省の役人も分譲価格差に気が付いていて、標準管理規約 46条 コメント③
 「③  ①や②の方法による議決権割合の設定は、各住戸が比較的均質である場合には妥当であるものの、高層階と低層階での眺望等の違いにより住戸の価値に大きな差が出る場合もあることのほか、民法第252条本文が共有物の管理に関する事項につき各共有者の持分の価格の過半数で決すると規定していることに照らして、新たに建てられるマンションの議決権割合について、より適合的な選択肢を示す必要があると考えられる。
 これにより、 特に、大規模な改修や建替え等を行う旨を決定する場合、建替え前のマンションの専有部分の価値等を考慮して建替え後の再建マンションの専有部分を配分する場合等における合意形成の円滑化が期待できるといった考え方もある。

 このため、住戸の価値に大きな差がある場合においては、単に共用部分の共有持分の割合によるのではなく、専有部分の階数(眺望、日照等)、方角(日照等)等を考慮した価値の違いに基づく価値割合を基礎として、議決権の割合を定めることも考えられる。
 この価値割合とは、専有部分の大きさ及び立地(階数・方角等)等を考慮した効用の違いに基づく議決権割合を設定するものであり、住戸内の内装や備付けの設備等住戸内の豪華さ等も加味したものではないことに留意する。
 また、この価値は、必ずしも各戸の実際の販売価格に比例するものではなく、全戸の販売価格が決まっていなくても、各戸の階数・方角(眺望、 日照等)などにより、別途基準となる価値を設定し、その価値を基にした 議決権割合を新築当初に設定することが想定される。
 ただし、前方に建物 が建築されたことによる眺望の変化等の各住戸の価値に影響を及ぼすよう な事後的な変化があったとしても、それによる議決権割合の見直しは原則 として行わないものとする。
 なお、
このような価値割合による議決権割合を設定する場合には、分譲契約等によって定まる敷地等の共有持分についても、価値割合に連動させることが考えられる。」
 の記述があります。


 そこで、この標準管理規約 46条 コメント③によりますと、「このような価値割合による議決権割合を設定する場合には、分譲契約等によって定まる敷地等の共有持分についても、価値割合に連動させることが考えられる」とあり、
 専有部分の価値の違いに基づく価値割合を基礎とした議決権割合を定める場合には、分譲契約等によって定まる敷地等の共有持分についても、価値割合に連動させることができるは、まあ適切です。

 具体的に「分譲契約等によって定まる敷地等の共有持分についても、価値割合に連動させることができる」とまで言い切れるかは、具体的に実行の段階において、どうするのか、かなり疑問がありますが、これを適切とするのは、あくまでも標準管理規約での話です。



イ 専有部分の価値の違いに基づく価値割合を基礎とした議決権割合を定める場合において、事後的にマンションの前方に建物が建築され、眺望の変化等により価値割合に影響を及ぼす変化があったときは、議決権割合の見直しを行う必要がある。

X 適切でない。 標準管理規約のコメントでは、事後の変化では、議決権割合の見直しは原則 として行わないとなっている。


 設問も、選択肢アで引用しました、標準管理規約 46条 コメント③
 「
ただし、前方に建物 が建築されたことによる眺望の変化等の各住戸の価値に影響を及ぼすよう な事後的な変化があったとしても、それによる議決権割合の見直しは原則 として行わないものとする。
 とあり、
 専有部分の価値の違いに基づく価値割合を基礎とした議決権割合を定める場合において、事後的にマンションの前方に建物が建築され、眺望の変化等により価値割合に影響を及ぼす変化があったときは、議決権割合の見直しを行う必要があるは、適切ではありません。


 しかし、現実問題として、事後に他の建築物が建てられて、分譲当初に価格に反映されていた優れた眺望、日照などが無くなり、転売時には、分譲当初の価格より、半分以下の価値しかなくなった時には、どうしますか?


ウ 組合員が代理人によって議決権を行使する場合において、その組合員の住居に同居する親族を代理人として定めるときは、二親等の親族を代理人とすることができる。

〇 適切である。 同居なら親族でいい。親等は問わない。

 平成28年の改正点。

 代理人による議決権の行使は、選択肢アで引用しました、標準管理規約 46条5項、
 「5 組
合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、以下の各号に掲げる者でなければならない。
   一 その組合員の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同 様の事情にある者を含む。)又は一親等の親族
   
二 その組合員の住戸に同居する親族
   三 他の組合員 」
 とあり、
 標準管理規約 46条5項1号によれば、代理人は、「その組合員の住戸に同居する親族」であればよく、 親組合員が代理人によって議決権を行使する場合において、その組合員の住居に同居する親族を代理人として定めるときは、二親等の親族を代理人とすることができるは、適切です。

 どうして、代理人の資格で、標準管理規約が「親等」を持ち出すのか、意味が分かりませんが。



エ 組合員が代理人によって議決権を行使する場合において、他の組合員を代理人として定めるときは、当該マンションに居住する他の組合員の中から定めなければならない。

X 適切でない。 居住していない組合員でもいい。

 他の組合員を代理人として定めるなら、選択肢アで引用しました、標準管理規約 46条5項3号
 「5 組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、以下の各号に掲げる者でなければならない。
    
三 他の組合員 」
 とあり、
 他の組合員であれば可能ですから、組合員が代理人によって議決権を行使する場合において、他の組合員を代理人として定めるときは、
当該マンションに居住する他の組合員の中から定めなければならないは、適切ではありません。


1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ


答え:2 (適切なものは 、ア と ウ の2つ)

 標準管理規約46条(議決権)は、平成23年にも改正があり、また平成28年にも改正があったという、基本があやふやな規定です。

  しかも、そのコメントから、安易に出題をする姿勢は、適切ではありません。

《タグ》標準管理規約 議決権 分譲の価格差 代理人 親等 組合員

問29

〔問 29〕 理事会運営に関する次の記述のうち、標準管理規約によれば、適切なものはどれか。

1 理事会に理事がやむを得ず欠席する場合において、事前に議決権行使書又は意見を記載した書面を出すことができる旨を認めるときは、あらかじめ通知された事項について、書面をもって表決することを認める旨を、理事会の決議によって定めることが必要である。

X 適切ではない。 理事の欠席で表決を認めることは、理事会の決議では、決められない。 規約が必要。

 理事会なら、標準管理規約 53条
 (理事会の会議及び議事)
 第53条
理事会の会議は、理事の半数以上が出席しなければ開くことがで きず、その議事は出席理事の過半数で決する。
2 次条第1項第五号に掲げる事項については、理事の過半数の承諾がある ときは、書面又は電磁的方法による決議によることができる。
3 前2項の決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わるこ とができない。

(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合
4 議事録については、第49条(第4項を除く。)の規定を準用する。た だし、第49条第2項中「総会に出席した組合員」とあるのは「理事会に 出席した理事」と読み替えるものとする。」
 とあります。

 そして、標準管理規約 53条のコメントは、平成28年に多く追加され、標準管理規約 53条関係コメント④
 「④
理事がやむを得ず欠席する場合には、代理出席によるのではなく、事前に議決権行使書又は意見を記載した書面を出せるようにすることが考えられる。
 これを認める場合には、理事会に出席できない理事が、あらかじめ通知された事項について、書面をもって表決することを認める旨を、”規約の明文の規定”で定めることが必要である
。」
 とあり、

 
標準管理規約 53条関係コメント④によれば、理事会に出席できない理事が、あらかじめ通知された事項について、書面をもって表決することを認める旨を、”規約の明文の規定”で定めることが必要であるとあり、”理事会の決議”によって定めることは出来ないため、適切ではありません。


2 理事会において外部専門家である理事の代理出席を認める場合には、あらかじめ総会において、外部専門家の理事としての職務を代理するにふさわしい資質・能力を有するか否かを審議の上、その職務を代理する者を定めておくことが望ましい。

X 適切でない。 外部専門家である理事なら、代理出席は認めない。


 設問は、標準管理規約 53条関係コメント③
 「③ 「理事に事故があり、理事会に出席できない場合は、その配偶者又は一 親等の親族(理事が、組合員である法人の職務命令により理事となった者である場合は、法人が推挙する者)に限り、代理出席を認める」旨を定め る規約の規定は有効であると解されるが、あくまで、やむを得ない場合の代理出席を認めるものであることに留意が必要である。
 この場合において も、あらかじめ、総会において、それぞれの理事ごとに、理事の職務を代理するにふさわしい資質・能力を有するか否かを審議の上、その職務を代 理する者を定めておくことが望ましい。
 なお、
外部専門家など当人の個人的資質や能力等に着目して選任されて いる理事については、代理出席を認めることは適当でない。
 とあり、
 標準管理規約 53条関係コメント③によれば、外部専門家など当人の個人的資質や能力等に着目して選任されて いる理事については、
代理出席を認めることは適当でないため、理事会において外部専門家である理事の代理出席を認める場合には、あらかじめ総会において、外部専門家の理事としての職務を代理するにふさわしい資質・能力を有するか否かを審議の上、その職務を代理する者を定めておくことが望ましいは、適切ではありません。


3 理事会が正式な招集手続に基づき招集され、理事の半数以上が出席していれば、監事が出席していなくても、理事会を開催することができる。

〇 適切である。 監事は理事会の開催要件ではない。

 理事会の開催は、選択肢1で引用しました、標準管理規約 53条1項、
 (理事会の会議及び議事)
 第53条 理事会の会議は、理事の半数以上が出席しなければ開くことがで きず、その議事は出席理事の過半数で決する。」
 とだけあり、
  標準管理規約 53条1項によれば、理事会が正式な招集手続に基づき招集され、理事の半数以上が出席していれば、
監事が出席していなくても、理事会を開催することができますから、適切です。

 なお、平成28年に改正された、標準管理規約 41条では、4項で
 「(監事)
  第41条
  
4 監事は、理事会に出席し、必要があると認めるときは、意見を述べなければならない。
 とあり、
 この関係を、標準管理規約 41条 コメント②
 「② 第4項は、従来「できる規定」として定めていたものであるが、監事に よる監査機能の強化のため、理事会への出席義務を課すとともに、必要が あるときは、意見を述べなければならないとしたものである。
 ただし、理事会は第52条に規定する招集手続を経た上で、
第53条第1項の要件を 満たせば開くことが可能であり、監事が出席しなかったことは、理事会に おける決議等の有効性には影響しない。」
 と苦しい言い訳をしていますが、これで、マンションの一般の居住者は、納得しますか?



4 理事会で専有部分の修繕に係る申請に対する承認又は不承認の決議を行う場合には、理事全員の承諾がなければ書面又は電磁的方法による決議を行うことができない。

X 適切でない。 専有部分の修繕に係る申請に対する承認又は不承認の決議を行う場合なら、書面又は電磁的方法による決議は、理事の過半数の承諾でいい。 理事全員の承諾は不要。
 平成28年 マンション管理士試験 「問26」 、 平成28年 マンション管理士試験 「問30」 。

 原則:理事会は理事が集まり、出席して初めて成立しますが、もう今どきのEメールが使える時代では、多忙な理事たちが簡単な事項まで集まって決議しなくてもいいのではと、国土交通省の人は考えています。

  専有部分の修繕に係る申請に対する承認又は不承認の決議は、選択肢1で引用しました、標準管理規約 53条2項
「2
次条第1項第五号に掲げる事項については、理事の過半数の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議によることができる。」
 です。
 そして、引用されています、次条は、標準管理規約 54条
 「(議決事項)
 第54条 理事会は、この規約に別に定めるもののほか、次の各号に掲げる 事項を決議する。
   一 収支決算案、事業報告案、収支予算案及び事業計画案
   二 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止に関する案
    三 長期修繕計画の作成又は変更に関する案
   四 その他の総会提出議案
   
五 第17条、第21条及び第22条に定める承認又は不承認
   六 第58条第3項に定める承認又は不承認
   七 第60条第4項に定める未納の管理費等及び使用料の請求に関する訴 訟その他法的措置の追行
   八 第67条に定める勧告又は指示等
   九 総会から付託された事項
   十 災害等により総会の開催が困難である場合における応急的な修繕工事 の実施等
2 第48条の規定にかかわらず、理事会は、前項第十号の決議をした場合 においては、当該決議に係る応急的な修繕工事の実施に充てるための資金 の借入れ及び修繕積立金の取崩しについて決議することができる。」
 とあり、
 標準管理規約 54条5号の
 「五
第17条、第21条及び第22条に定める承認又は不承認」
 の
標準管理規約 17条に「専有部分の修繕」が入っていますから、”理事の過半数の承諾”があるときは、書面又は電磁的方法による決議によることができるため、”理事全員の承諾”がなければ書面又は電磁的方法による決議を行うことができないは、適切ではありません。

 これは、専有部分の修繕の申請が多いことや、迅速な対応が必要との判断から、理事全員の承諾がなくても、書面又は電磁的方法(電子メール等)による決議ができるようにしています。

 

答え:3

 
またまた、平成28年の改正点からの出題か。 改正点をよく読んでいないと、難しい。

《タグ》標準管理規約 理事会 理事の欠席 外部専門家の代理人 理事会の開催要件 専有部分の修繕申請

問30

〔問 30〕 管理組合の書類の保管及び閲覧等に関する次の記述のうち、標準管理規約によれば、適切なものはどれか。ただし、電磁的方法が利用可能ではない場合とする。

1 理事長は、利害関係人から、大規模修繕工事の実施状況や今後の実施予定に関する情報についての書面交付について、理由を付した書面による請求があったときは、当該利害関係人が求める情報を記入した書面を交付することができる。

〇 適切である。 大規模修繕工事に関する書面の交付で、理由を付した書面による請求があったときは、交付できる。
 平成28年の改正点。

 大規模修繕工事に関するのは、標準管理規約 64条
 「(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合
 (帳票類等の作成、保管)
 第64条
理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による 請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合にお いて、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。
2 理事長は、第32条第三号の長期修繕計画書、同条第五号の設計図書及び同条第六号の修繕等の履歴情報を保管し、組合員又は利害関係人の理由 を付した書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければなら ない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定するこ とができる。
3 理事長は、第49条第3項(第53条第4項において準用される場合を 含む。)、本条第1項及び第2項並びに第72条第2項及び第4項の規定 により閲覧の対象とされる管理組合の財務・管理に関する情報について は、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求に基づき、当該 請求をした者が求める情報を記入した書面を交付することができる。この 場合において、理事長は、交付の相手方にその費用を負担させることがで きる。」
 とあり、
 標準管理規約 64条3項で引用されています第49条第3項とは、「総会の議事録」で、第72条第2項は「規約原本」、で第4項は、「使用細則など」です。


 そこで、設問の「大規模修繕工事の実施状況や今後の実施予定に関する情報についての書面」ですが、これは、標準管理規約 64条 コメント③
 「⑤ 第3項は、組合員又は利害関係人が、管理組合に対し、第49条第3項 (第53条第4項において準用される場合を含む。)、本条第1項、第2 項並びに第72条第2項及び第4項の閲覧ではなく、管理組合の財務・管 理に関する情報のうち、自らが必要とする特定の情報のみを記入した書面の交付を求めることが行われている実態を踏まえ、これに対応する規定を 定めるものである。
 
書面交付の対象とする情報としては、大規模修繕工事等の実施状況、今後の実施予定、その裏付けとなる修繕積立金の積立ての状況(マンション全体の滞納の状況も含む)や、ペットの飼育制限、楽器 使用制限、駐車場や駐輪場の空き状況等が考えられるが、その範囲につい ては、交付の相手方に求める費用等とあわせ、細則で定めておくことが望 ましい。別添4は、住戸の売却予定者(組合員)から依頼を受けた宅地建 物取引業者が当面必要とすると考えられる情報を提供するための様式の一 例に記載のある主な情報項目であり、上述の細則を定める場合の参考とさ れたい。」
 とあり、
 書面交付の対象とする情報に「大規模修繕工事等の実施状況、今後の実施予定」も入っています。

 そこで、標準管理規約 64条3項により、理事長は、利害関係人から、大規模修繕工事の実施状況や今後の実施予定に関する情報についての書面交付について、
理由を付した書面による請求があったときは、当該利害関係人が求める情報を記入した書面を交付することができますから、適切です。

 なお、利害関係人とは、
 参考:第49条関係コメント ① 第3項の「利害関係人」とは、敷地、専有部分に対する担保権者、差押 え債権者、賃借人、組合員からの媒介の依頼を受けた宅地建物取引業者等 法律上の利害関係がある者をいい、単に事実上利益や不利益を受けたりす る者、親族関係にあるだけの者等は対象とはならない。」


2 理事長は、総会議事録、理事会議事録及び会計帳簿を保管し、これらの保管場所を所定の掲示場所に掲示しなければならない。

X 適切ではない。 保管はするが、掲示に”理事会議事録”も”会計帳簿”も入っていない。
 よくある出題。
  平成26年 マンション管理士試験 「問32」 、 平成25年 マンション管理士試験 「問25」 、  平成25年 マンション管理士試験 「問29」 、平成23年 マンション管理士試験 「問28」 。

 
 まず、総会議事録は、標準管理規約 49条
 「(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合
 (議事録の作成、保管等)
 第49条 総会の議事については、議長は、議事録を作成しなければなら ない。
2 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、議長及び議長 の指名する2名の総会に出席した組合員がこれに署名押印しなければな らない。
3 理事長は、議事録を保管し、組合員又は利害関係人の書面による請求 があったときは、議事録の閲覧をさせなければならない。この場合にお いて、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。
4 理事長は、所定の掲示場所に、議事録の保管場所を掲示しなければな らない。」
 とあり、
  標準管理規約 49条1項、3項及び4項によれば、理事長は、総会の議事録を作成・保管し、所定の掲示場所に保管場所を掲示しますから、設問での総会の議事録については、「これらの保管場所を所定の掲示場所に掲示しなければならない」は、適切です。

 しかし、
理事会議事録については、標準管理規約 53条
 「(理事会の会議及び議事)
 第53条 理事会の会議は、理事の半数以上が出席しなければ開くことがで きず、その議事は出席理事の過半数で決する。
2 次条第1項第五号に掲げる事項については、理事の過半数の承諾がある ときは、書面又は電磁的方法による決議によることができる。
3 前2項の決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わるこ とができない。
 (ア)電磁的方法が利用可能ではない場合
4 議事録については、第49条(第4項を除く。)の規定を準用する。た だし、第49条第2項中「総会に出席した組合員」とあるのは「理事会に 出席した理事」と読み替えるものとする。」
 とあり、
  標準管理規約 53条4項によれば、理事会議事録については、原則として総会議事録の49条の規定が準用されますが、どっこい、そこでは、
第49条(第4項を除く)とあり、
 「4 理事長は、所定の掲示場所に、議事録の保管場所を掲示しなければな らない」
 の「保管場所の掲示」の適用がありませんから、理事会議事録には、「これらの保管場所を所定の掲示場所に掲示しなければならない」は、適切ではありません。

 そして、最後の、
会計帳簿は、選択肢1で引用しました、標準管理規約 64条1項
 「「(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合
 (帳票類等の作成、保管)
 第64条
理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による 請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合にお いて、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。 」
 とあり、
 会計帳簿については、理事長に作成・保管・閲覧義務がありますが、会計帳簿も、保管場所を所定の掲示場所に掲示しなければならないの規定はないため、「これらの保管場所を所定の掲示場所に掲示しなければならない」は、適切ではありません。

 よって、選択肢2は、総会議事録に対しては、適切ですが、理事会議事録と会計帳簿については、保管場所を所定の掲示場所に掲示しなければならないは、適切ではないため、全体として、適切では、ありません。



3 理事長は、組合員から、理由を付した書面による会計帳簿の閲覧請求があった場合には、これを閲覧させなければならないが、利害関係人からの会計帳簿の閲覧請求については、閲覧させることを要しない。

〇 適切である。 利害関係人も閲覧請求には「理由を付した書面」が必要。
 平成25年 マンション管理士試験 「問29」 選択肢4 。
 
 会計帳簿の閲覧請求は、選択肢1で引用しました、標準管理規約 64条1項
 「(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合
 (帳票類等の作成、保管)
 第64条 理事長は、
会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による 請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合にお いて、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。」
 とあり、
  標準管理規約 64条1項によれば、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類の閲覧請求が、「理由を付した書面」でなされれば、組合員にも利害関係人にも閲覧させなければなりません。

 そこで、設問の前半、「理事長は、組合員から、理由を付した書面による会計帳簿の閲覧請求があった場合には、これを閲覧させなければならない」は、適切です。

 そこで、設問の後半、「
利害関係人からの会計帳簿の閲覧請求」には、「理由を付した書面」がないため、「閲覧させることを要しない」は、適切です。

 よって、選択肢3は、全体として、適切です。

 *2018年 1月14日:出題元の 公益財団法人 マンション管理センター は、 「問21」 だけでなく、この「問30」でも、出題ミスを犯した。

 ここは、当初、すらっと読んでいて、後半の「利害関係人からの会計帳簿の閲覧請求」に、「理由を付した書面」がある気がしたが、よく読むと、前半にある「理由を付した書面による会計帳簿の閲覧請求が、後半では、「閲覧請求」とあるだけで、「理由を付した書面」が抜けている。

 この「理由を付した書面」については、
 平成25年のマンション管理士試験 「問29」 選択肢4では、
 「4 
組合員名簿は、理事長が保管し、組合員又は利害関係人から書面による閲覧請求があった場合において、書面に閲覧理由が記載されていないときは、閲覧を拒むことができる。
 とあり、
 これを、出題元の マンション管理センター は、
適切としている。

 標準管理規約64条では、会計帳簿も組合員名簿も什器備品台帳も同列です。これらの閲覧請求には、「書面に閲覧理由」が必要ということです。
 単に、「利害関係人からの会計帳簿の閲覧請求」では、要件の「理由を付した書面」が抜けています。
 
  これでは、利害関係人は閲覧できない。


 マンション管理士試験の他の出題においては、ほぼ条文や規定のとおりに出題されているのが、この選択肢2だけ「利害関係人からの会計帳簿の閲覧請求」を、「組合員から、”理由を付した書面による”会計帳簿の閲覧請求」と同列に読むことはできません。


4 規約が総会決議により変更されたときは、理事長は、変更前の規約の内容及び変更を決議した総会の議事録の内容を1通の書面に記載し、保管しなければならない。

X 適切でない。 1通の書面に、”現に有効な規約”の内容と、その内容が規約原本及び規約変更を決議した総会の議事録の内容と相違ないことを記載し、署名押 印した上で、この書面を保管する。変更前ではない。

 規約の変更は、標準管理規約 72条
 「(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合
 (規約原本等)
 第72条 この規約を証するため、区分所有者全員が記名押印した規約を1通作成し、これを規約原本とする。
2 規約原本は、理事長が保管し、区分所有者又は利害関係人の書面による請求があったときは、規約原本の閲覧をさせなければならない。
3 規約が規約原本の内容から総会決議により変更されているときは、理事長は、1通の書面に、現に有効な規約の内容と、その内容が規約原本及び規約変更を決議した総会の議事録の内容と相違ないことを記載し、署名押 印した上で、この書面を保管する。
4 区分所有者又は利害関係人の書面による請求があったときは、理事長 は、規約原本、規約変更を決議した総会の議事録及び現に有効な規約の内容を記載した書面(以下「規約原本等」という。)並びに現に有効な第1 8条に基づく使用細則及び第70条に基づく細則その他の細則の内容を記載した書面(以下「使用細則等」という。)の閲覧をさせなければならない。
5 第2項及び前項の場合において、理事長は、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。
6 理事長は、所定の掲示場所に、規約原本等及び使用細則等の保管場所を掲示しなければならない。」
 とあり、
  標準管理規約 72条3項によれば、「規約が規約原本の内容から総会決議により変更されているときは、理事長は、1通の書面に、現に有効な規約の内容と、その内容が規約原本及び規約変更を決議した総会の議事録の内容と相違ないことを記載し、署名押 印した上で、この書面を保管する」のであって、「変更前の規約の内容及び変更を決議した総会の議事録の内容を1通の書面に記載し、保管しなければならない」は、適切ではありません。



答え: 1 と 3 。 2018年 1月12日付の マンション管理センターの発表では、1 だけ。

 「問30」の選択肢3は、過去問題を調べていて、「理由を付した書面」の要件が抜けていることが分かったが、この「問30」の不注意といい、「問1」 の 選択肢4 の不明確さといい、出題元の 公益財団法人 マンション管理センター は出題文の正確さをチェックする機能が欠如している。

  もう、マンション管理士の地位の向上にも貢献していない、この公益財団法人 マンション管理センターは解体すべきだ。

《タグ》標準管理規約 利害関係人 閲覧 大規模修繕工事 総会議事録 理事会議事録 会計帳簿 規約の変更

問31

〔問 31〕 理事長がその職務を行うに当たって、理事会の決議又は承認を経ることなく、単独で行うことができる事項は、標準管理規約によれば、次のうちいくつあるか。

ア 長期修繕計画書、設計図書及び修繕等の履歴情報の保管

〇 理事長が単独でできる。
 
 長期修繕計画書、設計図書及び修繕等の履歴情報の保管は、標準管理規約64条、
 (ア)電磁的方法が利用可能ではない場合
 (帳票類等の作成、保管)
 第64条 理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳 票類を作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による 請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合にお いて、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。
理事長は、第32条第三号の長期修繕計画書、同条第五号の設計図書及び同条第六号の修繕等の履歴情報を保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければなら ない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。
3 理事長は、第49条第3項(第53条第4項において準用される場合を 含む。)、本条第1項及び第2項並びに第72条第2項及び第4項の規定 により閲覧の対象とされる管理組合の財務・管理に関する情報について は、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求に基づき、当該 請求をした者が求める情報を記入した書面を交付することができる。この場合において、理事長は、交付の相手方にその費用を負担させることがで きる。」
 とあり、
 標準管理規約64条2項によれば、長期修繕計画書、設計図書及び修繕等の履歴情報の保管は、理事長が単独でできます。



イ 災害等の緊急時における敷地及び共用部分等の必要な保存行為

〇 理事長が単独でできる。

 平成28年の改正点。

 災害等の緊急時における敷地及び共用部分等の必要な保存行為は、標準管理規約21条、
 「(敷地及び共用部分等の管理)
 第21条 敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の保存行為(区 分所有法第18条第1項ただし書の「保存行為」をいう。以下同じ。)の うち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責 任と負担においてこれを行わなければならない。
2 専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を 共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行 うことができる。
3 区分所有者は、第1項ただし書の場合又はあらかじめ理事長に申請して 書面による承認を受けた場合を除き、敷地及び共用部分等の保存行為を行 うことができない。ただし、専有部分の使用に支障が生じている場合に、 当該専有部分を所有する区分所有者が行う保存行為の実施が、緊急を要す るものであるときは、この限りでない。
4 前項の申請及び承認の手続については、第17条第2項、第3項、第5 項及び第6項の規定を準用する。ただし、同条第5項中「修繕等」とある のは「保存行為」と、同条第6項中「第1項の承認を受けた修繕等の工事 後に、当該工事」とあるのは「第21条第3項の承認を受けた保存行為後 に、当該保存行為」と読み替えるものとする。
5 第3項の規定に違反して保存行為を行った場合には、当該保存行為に要 した費用は、当該保存行為を行った区分所有者が負担する。
6 理事長は、災害等の緊急時においては、総会又は理事会の決議によらず に、敷地及び共用部分等の必要な保存行為を行うことができる。
 とあり、
 標準管理規約21条6項によれば、災害等の緊急時における敷地及び共用部分等の必要な保存行為は、理事長が単独でできます。



ウ 理事長の職務の他の理事への一部委任

X 理事長が単独でできない。 理事会の承認が必要。

 理事長の職務の他の理事への一部委任は、標準管理規約38条、
 「(理事長)
 第38条 理事長は、管理組合を代表し、その業務を統括するほか、次の各 号に掲げる業務を遂行する。
   一 規約、使用細則等又は総会若しくは理事会の決議により、理事長の職 務として定められた事項
   二 理事会の承認を得て、職員を採用し、又は解雇すること。
2 理事長は、区分所有法に定める管理者とする。
3 理事長は、通常総会において、組合員に対し、前会計年度における管理 組合の業務の執行に関する報告をしなければならない。
4 理事長は、○か月に1回以上、職務の執行の状況を理事会に報告しなけ ればならない。
5 理事長は、理事会の承認を受けて、他の理事に、その職務の一部を委任 することができる。
6 管理組合と理事長との利益が相反する事項については、理事長は、代表 権を有しない。この場合においては、監事又は理事長以外の理事が管理組 合を代表する」
 とあり、
 標準管理規約38条5項によれば、理事長は、
理事会の承認を受けて、他の理事に、その職務の一部を委任 することができるとあるため、理事長が単独でできない。 理事会の承認が必要です。


エ 臨時総会の招集

X 理事長が単独でできない。 理事会の承認が必要。

 臨時総会の招集は、標準管理規約42条
 「(総会)
 第42条 管理組合の総会は、総組合員で組織する。
2 総会は、通常総会及び臨時総会とし、区分所有法に定める集会とする。
3 理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後2か月以内に招集 しなければならない。
4 理事長は、必要と認める場合には、理事会の決議を経て、いつでも臨時総会を招集することができる。
5 総会の議長は、理事長が務める。」
 とあり、
 標準管理規約42条4項によれば、理事長は、必要と認める場合には、
理事会の決議を経て、いつでも臨時総会を招集することができるとあるため、理事長が単独でできない。 理事会の承認が必要です。


1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ


答え:2 (理事長が単独で出来ないのは、 ア と イ の2つ。)

 標準管理規約の条文のままであるが、いくつあるかと訊かれると、面倒。

《タグ》標準管理規約 理事長が単独でできるもの 長期修繕計画書等の保管 緊急時の保存行為 職務の一部委任 臨時総会の招集

問32

注:・マンション標準管理委託契約書は、平成30年3月9日付で24条に「反社会勢力の排除」などの改正があり、平成30年度の試験から出題適用となるので注意のこと。


〔問 32〕 甲管理組合と乙管理会社との間の管理委託契約に関する次の記述のうち、「マンション標準管理委託契約書及びマンション標準管理委託契約書コメント」(平成28年7月29日国土交通省土地・建設産業局長通達)によれば、適切なものはどれか。

1 甲は、乙に管理事務を行わせるために不可欠な管理事務室等を無償で使用させるものとし、乙は、乙が管理事務を実施するのに伴い必要となる水道光熱費、通信費、消耗品費等の諸費用を負担するものとする。

X 適切でない。 ”管理事務”を実施するのに伴い必要となる水道光熱費、通信費、消耗品費等の諸費用の負担は、管理組合がする。 管理業者ではない。
 平成27年 管理業務主任者試験 「問7」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問7」 、平成20年 マンション管理士試験 「問33」 など、 多くは、管理業務主任者試験から出ている。 

 マンション管理士試験においては、マンション標準管理委託契約書からの出題は、平成25年以降無かったが、平成28年7月29日に14条の改正があったせいでか、久し振りに出題された。

 また、平成30年3月9日付で、24条等の追加等 があるので、注意の事。
 
 まず、事務管理での費用は、マンション標準管理委託契約書7条
 「(管理事務室等の使用)
 第7条
甲(管理組合)は、乙(管理業者)に管理事務を行わせるために不可欠な管理事務室、管理用倉庫、清掃 員控室、器具、備品等(次項において「管理事務室等」という。)を無償で使用させるものとする
2 乙の管理事務室等の使用に係る費用の負担は、次のとおりとする。
   一 ○○○○費 甲(又は乙)の負担とする。
   二 ○○○○費 甲(又は乙)の負担とする。
   三 ○○○○費 甲(又は乙)の負担とする。
   四 ○○○○費 甲(又は乙)の負担とする。 」
 とあり、
 設問前半の、「甲は、乙に管理事務を行わせるために不可欠な管理事務室等を無償で使用させる」は、マンション標準管理委託契約書7条1項により、適切です。


 そして、設問後半の「乙が管理事務を実施するのに伴い必要となる水道光熱費、通信費、消耗品費等の諸費用を負担」は、マンション標準管理委託契約書6条
 「(管理事務に要する費用の負担及び支払方法)
 第6条 甲は、管理事務として乙に委託する事務(別表第1から別表第4までに定める事務)のため、乙に委託業務費を支払うものとする。
2 甲は、前項の委託業務費のうち、その負担方法が定額でかつ精算を要しない費用(以 下「定額委託業務費」という。)を、乙に対し、毎月、次のとおり支払うものとする。
   一 定額委託業務費の額 合計月額○○円 消費税及び地方消費税抜き価格 ○○円 消費税額及び地方消費税額(以下、本契約において「消費税額等」という。)
○○円 内訳は、別紙1のとおりとする。
   二 支払期日及び支払方法 毎月○日までにその○月分を、乙が指定する口座に振り込む方法により支払う。
   三 日割計算 期間が一月に満たない場合は当該月の暦日数によって日割計算を行う。(1円未 満は四捨五入とする。)
3 第1項の委託業務費のうち、定額委託業務費以外の費用の額(消費税額等を含む。) は別紙2のとおりとし、甲は、各業務終了後に、甲及び乙が別に定める方法により精 算の上、乙が指定する口座に振り込む方法により支払うものとする。
甲は、第1項の委託業務費のほか、乙が管理事務を実施するのに伴い必要となる水道光熱費、通信費、消耗品費等の諸費用を負担するものとする。」
 とあり、
  マンション標準管理委託契約書6条4項によれば、甲(管理組合)が、乙(管理業者)が”
管理事務を実施する”のに伴い必要となる水道光熱費、通信費、消耗品費等の諸費用を負担しますから、乙が負担するは、適切ではありません。

 そこで、選択肢1は、全体として、適切ではありません。

 なお、
管理事務室での費用負担は、管理組合と管理業者が協議して決めますから、混同しないように。


2 乙は、管理事務を行うため必要なときは、甲の組合員及びその所有する専有部分の占有者に対し、甲に代わって、所轄官庁の指示事項等に違反する行為又は所轄官庁の改善命令を受けるとみられる違法若しくは著しく不当な行為の中止を求めることができる。

〇 適切である。 
 平成20年 管理業務主任者試験 「問8」 、 平成18年 管理業務主任者試験 「問8」 など。

 設問は、マンション標準管理委託契約書11条
 (有害行為の中止要求)
 第 11 条
乙(管理業者)は、管理事務を行うため必要なときは、甲の組合員及びその所有する専有 部分の占有者(以下「組合員等」という。)に対し、甲に代わって、次の各号に掲げ る行為の中止を求めることができる
   一 法令、管理規約又は使用細則に違反する行為
   二 建物の保存に有害な行為
  
 三 所轄官庁の指示事項等に違反する行為又は所轄官庁の改善命令を受けるとみら れる違法若しくは著しく不当な行為
   四 管理事務の適正な遂行に著しく有害な行為 五 組合員の共同の利益に反する行為 六 前各号に掲げるもののほか、共同生活秩序を乱す行為
2 乙が、前項の規定により中止を求めても、なお甲の組合員等がその行為を中止しな いときは、乙はその責めを免れるものとし、その後の中止等の要求は甲が行うものと する。」
 とあり、
 マンション標準管理委託契約書11条1項3号によれば、乙は、管理事務を行うため必要なときは、甲の組合員及びその所有する専有部分の占有者に対し、甲に代わって、所轄官庁の指示事項等に違反する行為又は所轄官庁の改善命令を受けるとみられる違法若しくは著しく不当な行為の中止を求めることができますから、適切です。



3 乙は、甲の会計に係る帳簿等を整備、保管し、当該帳簿等を、甲の事業年度終了後、遅滞なく、甲に引き渡さなければならない。

X 適切でない。 引き渡すのは、定期総会終了後で、甲(管理組合)の事業年度終了後ではない。

 設問は、マンション標準管理委託契約書別表(2)出納⑤
  

 とあり、
 マンション標準管理委託契約書別表(2)出納⑤二 によれば、「 乙(管理業者)は、前号の帳簿等を、甲(管理組合)の”
定期総会終了後”、 遅滞なく、甲に引き渡すとあるため、「甲の事業年度終了後」は、適切ではありません。


4 宅地建物取引業者Bが、甲の組合員Aから、Aが所有する専有部分の売却の依頼を受け、その媒介業務のために管理規約の提供を求めてきた。この場合、当該管理規約が電磁的記録により作成されているときは、乙は、甲に代わって、電磁的方法により、Bに提供しなければならない。

X 適切でない。 提供は、書面をもって、又は電磁的方法により開示する。
 改正点  平成29年 管理業務主任者試験 「問9」 

 設問は、マンション標準管理委託契約書14条
 「(管理規約の提供等)
 第14条 乙は、宅地建物取引業者が、甲の組合員から、当該組合員が所有する専有部分 の売却等の依頼を受け、その媒介等の業務のために、理由を付した書面又は電磁的方 法により管理規約の提供及び別表第5に掲げる事項の開示を求めてきたときは、甲 に代わって、当該宅地建物取引業者に対し、
管理規約の写しを提供し、及び別表第5 に掲げる事項について書面をもって、又は電磁的方法により開示するものとする。甲 の組合員が、当該組合員が所有する専有部分の売却等を目的とする情報収集のため にこれらの提供等を求めてきたときも、同様とする。
2 乙は、前項の業務に要する費用を管理規約の提供等を行う相手方から受領 することができるものとする。
3 第1項の場合において、乙は、当該組合員が管理費及び修繕積立金等を滞納してい るときは、甲に代わって、当該宅地建物取引業者に対し、その清算に関する必要な措 置を求めることができるものとする。 」
 とあり、
 同14条関係コメント④
 「
④ 管理規約が電磁的記録により作成されている場合には、記録された情報の内容を”書面に表示”して、又は”電磁的方法”により提供するものとする。」
 ともありますから、
 「管理規約が電磁的記録により作成されているときは、乙は、甲に代わって、電磁的方法により、Bに提供しなければならない」は、”
書面に表示して”が抜けているため、適切ではありません。


答え:2 

 久し振りに、マンション管理士試験においても、マンション標準管理委託契約書から出題が1問あった。
 本当に、改正があると、問題の作成者は、すぐに飛びつく。
 受験生は、常に法律も含めて改正点には、特別の注意を払うこと。

 マンション標準管理委託契約書を読んでいないと難しいか。

 マンション標準管理委託契約書は、平成30年3月9日付で改正があったので、平成30年もでるぞ!

《タグ》マンション標準管理委託契約書 事務管理 費用負担 行為の中止 帳簿の引渡し 宅地建物取引業者 規約の提供

問33

〔問 33〕 手続上、総会決議を経ることなく、理事会の決議又は承認により行うことができる事項は、標準管理規約によれば、次のうちどれか。

1 敷地及び共用部分等(駐車場及び専用使用部分を除く。)の一部を第三者に使用させること。

X 総会の決議事項。 理事会の決議では、できない。
 平成21年 マンション管理士試験 「問29」 。

 設問は、標準管理規約16条
 「(敷地及び共用部分等の第三者の使用)
 第16条 管理組合は、次に掲げる敷地及び共用部分等の一部を、それぞれ 当該各号に掲げる者に使用させることができる。
   一 管理事務室、管理用倉庫、機械室その他対象物件の管理の執行上必要 な施設 管理事務(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平 成12年法律第149号。以下「適正化法」という。)第2条第六号の 「管理事務」をいう。)を受託し、又は請け負った者 二
    電気室 対象物件に電気を供給する設備を維持し、及び運用する事業 者
   三 ガスガバナー 当該設備を維持し、及び運用する事業者
2 前項に掲げるもののほか、管理組合は、総会の決議を経て、敷地及び共 用部分等(駐車場及び専用使用部分を除く。)の一部について、第三者に 使用させることができる。 」
 とあり、
 標準管理規約16条2項によれば、「敷地及び共用部分等(駐車場及び専用使用部分を除く。)の一部を第三者に使用させることは、
総会の決議事項であるため、理事会の決議又は承認により行うことは出来ません。


2 役員活動費の額及び支払方法を定めること。

X 総会の決議事項。 理事会の決議では、できない。
  平成24年 マンション管理士試験 「問29」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問36」 。


 役員活動費の額及び支払方法を定めること。は、標準管理規約48条
 「(議決事項)
 第48条 次の各号に掲げる事項については、
総会の決議を経なければなら ない
   一 収支決算及び事業報告
   二 収支予算及び事業計画
   三 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
   四 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止
   五 長期修繕計画の作成又は変更
   六 第28条第1項に定める特別の管理の実施並びにそれに充てるための 資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し
   七 第28条第2項及び第3項に定める建替え等に係る計画又は設計等の 経費のための修繕積立金の取崩し
   八 修繕積立金の保管及び運用方法
   九 第21条第2項に定める管理の実施
   十 区分所有法第57条第2項及び前条第3項第三号の訴えの提起並びに これらの訴えを提起すべき者の選任
    十一 建物の一部が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
   十二 区分所有法第62条第1項の場合の建替え及び円滑化法第108条 第1項の場合のマンション敷地売却
   
十三 役員の選任及び解任並びに役員活動費の額及び支払方法
   十四 組合管理部分に関する管理委託契約の締結
   十五 その他管理組合の業務に関する重要事項」
 とあり、
 標準管理規約48条13号によれば、役員活動費の額及び支払方法を定めることは、
総会での決議事項であるため、理事会の決議又は承認により行うことは出来ません。


3 理事会の運営について細則を定めること。

X 総会の決議事項。 理事会の決議では、できない。

  平成28年 管理業務主任者試験 「問13」 、 平成27年 管理業務主任者試験 「問12」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問29」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問13」 など多い。 


 使用細則は、選択肢2で引用しました、標準管理規約48条
 「(議決事項)
 第48条 次の各号に掲げる事項については、
総会の決議を経なければなら ない
  
四 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止
 とあり、
 標準管理規約48条4号によれば、理事会の運営について細則を定めることは、
総会での決議事項であるため、理事会の決議又は承認により行うことは出来ません。


4 規約に違反した区分所有者に対し、理事長が行為の差止訴訟を提起すること。

X 出題が適切ではない! 
 平成26年 マンション管理士試験 「問28」 平成24年マンション管理士試験 「問29」平成23年 マンション管理士試験 「問32」 選択肢2 平成23年 マンション管理士試験 「問28」 、 平成22年 管理業務主任者試験 「問36」 選択肢2 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問34」 、 平成21 マンション管理士試験 「問26」 。

 この、マンションにおける「規約違反者に対する行為の中止」を裁判所に求める(差止め請求)ことが、理事会の決議だけでできるのか、それとも、集会(総会)の決議が必要かは、非常に問題のある出題だと、過去から私が指摘してきたものです。
 まず、設問のような規約違反者に対する標準管理規約の規定は、67条にあります。
 「(理事長の勧告及び指示等)
 第67条 区分所有者若しくはその同居人又は専有部分の貸与を受けた者若 しくはその同居人(以下「区分所有者等」という。)が、法令、規約又は 使用細則等に違反したとき、又は対象物件内における共同生活の秩序を乱 す行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経てその区分所有者等 に対し、その是正等のため必要な勧告又は指示若しくは警告を行うことが できる。
2 区分所有者は、その同居人又はその所有する専有部分の貸与を受けた者 若しくはその同居人が前項の行為を行った場合には、その是正等のため必 要な措置を講じなければならない。
3 区分所有者等がこの規約若しくは使用細則等に違反したとき、又は区分 所有者等若しくは区分所有者等以外の第三者が敷地及び共用部分等におい て不法行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経て、次の措置を 講ずることができる。
   一 行為の差止め、排除又は原状回復のための必要な措置の請求に関し、 管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行すること
   二 敷地及び共用部分等について生じた損害賠償金又は不当利得による返 還金の請求又は受領に関し、区分所有者のために、訴訟において原告又 は被告となること、その他法的措置をとること
4 前項の訴えを提起する場合、理事長は、請求の相手方に対し、違約金と しての弁護士費用及び差止め等の諸費用を請求することができる。
5 前項に基づき請求した弁護士費用及び差止め等の諸費用に相当する収納 金は、第27条に定める費用に充当する。
6 理事長は、第3項の規定に基づき、区分所有者のために、原告又は被告 となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならな い。この場合には、第43条第2項及び第3項の規定を準用する。」

 
 この標準管理規約67条3項の規定により、出題者は、妥当だと考えているようですが、標準管理規約67条は、区分所有法第26条4項
 「(権限)
  第二十六条
      4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。

 を受けて、設けた規定のようです。


 しかし、区分所有法第57条は、
 「(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
  第五十七条  区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
   
2  前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
   3  管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
   4  前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。
」、
 とあり、

 区分所有法第57条2項では、区分所有法第6条に規定されている「建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」を訴訟にするには、必ず、集会の決議が必要で、理事会だけの決議ではできないとしています
 そこで、「規約違反」という設問と、どこまでが管理者(理事長)の職務に該当するかが曖昧なのです。
 標準管理規約の創案者の頭には、一応、「規約事項」と「区分所有法第57条から第60条」は別だという考え方はあったようですが、
規約には、区分所有法第6条で規定される「共同の利益」に反する内容も規定されているために、単純に上で引用しています、標準管理規約67条3項を適用して、理事会の決議だけでいいとはいえないのです。
 標準管理規約67条3項の表現は、区分所有法第57条に抵触しているため、内容を明確にした変更が必要です。


 多くの事項を裁判にするには、理事会の決議だけで可能か、それとも、集会(総会)の決議が必要かは、区分所有法の管理者の職務権限と規約での設定がどこまで許されるかで、標準管理規約の規定の曖昧さがあり、標準管理規約において、もっと、もっと検討が必要な箇所です。

 よって、「規約に違反した区分所有者に対し、理事長が行為の差止訴訟を提起すること」を出題すること自体が、不適切です。



答え:4 (あくまでも、国土交通省がマンション管理の参考版として作成した「標準管理規約」だけの世界での話です。)

 マンション管理士試験において、選択肢4の「規約に違反した区分所有者に対し、理事長が行為の差止訴訟を提起すること。」を出すこと自体が、誤りですが。

《タグ》標準管理規約 総会決議事項 理事会の決議でいいもの 

問34

〔問 34〕 平成29年3月25日に、甲マンション管理組合の普通預金口座に、組合員Aから、管理費450,000 円(月額30,000 円)が入金された。450,000 円の内訳は、平成28 年2月分から平成29 年4月分までの15ヵ月分であった。平成29 年3月に管理組合が行うべき仕訳として適切なものは次のうちどれか。ただし、会計処理は毎月次において発生主義の原則によるものとし、会計年度は平成28 年4月1日から平成29 年3月31 日までとする。



 会計は、マンション管理士試験だけでなく管理業務主任者試験においても、必ず2問は出るので、勉強のこと。
 平成29年 管理業務主任者試験 「問14」 、  平成28年 マンション管理士試験 「問34」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問34」 、平成27年 管理業務主任者試験 「問14」 、 平成26年 マンション管理士試験 「問34」 、 平成25年 マンション管理士試験 「問35」 など。 
 例年2問、仕訳と比較貸借対照表が出ていたが、平成27年あたりから、この傾向が変わってきた。仕訳が1問で、あとは、文章となっていたが、また平成29年では、次の 「問35」 では、比較収支報告書が出ている。

*私の過去問題の解説を読んでいる人には、度々の重なる説明で恐縮ですが、マンションの管理組合では、明確な会計基準がありません
 でも、営利を目的とした企業活動ではないことは明らかです。そこで、非営利団体と似ている「公益法人の会計方法」を基にしています。
 その会計の最大の特徴が、あまり耳慣れない「
発生主義」の採用です。
 
 
★マンションの会計処理で発生主義ということの重要性は、
   まず、発生主義とは、全ての費用・収益は、その支出・収入に基づいて計上し、その発生した期間
     *収入については、請求権が生じた月、
     *支出については、支出が労役などの提供又は工事などである場合は、その労役などの提供又は工事等が完了した月、物品の購入なら、その物品が納入された月に正しく割り当てるように処理すること 
  です。

 この発生主義により、管理費や修繕積立金は該当月に徴収することになっているなら、未収入金(滞納)があっても、全額計上されている。
 この辺りが、企業の会計処理を知っている人には、なかなか理解できない個所です。
 
 また、「資金の範囲は、現金預金、未収金、未払金、前受金及び前払金とする」も、重要な前提です。資金の範囲同士の取引は、「収支計算書」には、反映されません。
 
収支決算書に反映されるのは、収入の発生と費用の発生です。

 会計処理は、以下の原則があります。

仕訳での記帳の仕方    
 勘定科目など 借方   貸方
 資産勘定     現金預金 増加  減少 
未収金 
前払金
損害保険の積立部分
 負債勘定  未払金  減少 増加
前受金など
 費用の発生   管理業務費 支払有     
修繕費
保険料 など
 収入の発生   管理費収入   収入有  
修繕積立金収入
駐車場使用料など

 これを前提に、設問を見ていきましょう。
 *平成29年3月25日(まだ平成28年度中です)に、普通預金口座に
   ①管理費...¥450,000 の入金があった。 → これにより、「現金預金」勘定の借方(資産の増加)に ¥450,000が仕訳される。
借方 貸方 
 ①現金預金 450,000  

 *¥450,000の内訳は、平成28年2月から平成29年4月までの、15ヵ月分だった。
  ここで、
発生主義が意味を持ちます。
 現在行っている仕訳は、平成29年3月25日ということは、
  ② 平成28年2月から平成29年2月までの 13ヵ月分
    ¥30,000/月 x 13ヵ月 = ¥390,000
    は、既に過去の該当の月の仕訳で、 管理費の「未収金」勘定として処理がなされたとなります。
 そこで、この ¥390,000は 貸方(未収金の減少)に仕訳けられます。
借方 貸方 
 ①現金預金 450,000    ②未収金 390,000

 ③入金の15ヵ月分のうち 1ヵ月分の ¥30,000 は 当月(3月)の管理費の収入ですから、これは、「管理費収入」勘定の発生として、貸方に仕訳けます。
借方 貸方 
 ①現金預金 450,000 ②未収金   390,000
 ③管理費収入 30,000

 ④そして、入金 ¥450,000 での残り、¥30,000 は、平成29年4月分(次年度分)とのことですから、これは、3月度においては、まだ未発生ということで、「前受金」勘定の増加として、貸方に仕訳けます。
 
借方 貸方 
 ①現金預金 450,000 ②未収金   390,000
③管理費収入 30,000
④前受金    30,000

 ということで、正解は、2 となります。

  


答え:2

  仕訳の基本を押さえていれば、易しい。

《タグ》 会計 仕訳 発生主義 現金預金 未収金 前受金

問35

〔問 35〕 甲マンション管理組合の平成26年度から平成28年度までの3年間の管理費会計比較収支報告書(会計年度は4月から翌年3月まで)は下表のとおりである。これに関し、会計担当理事が理事会で行った次の説明のうち、適切なものはどれか。ただし、会計処理は発生主義の原則によるものとし、資金の範囲は、現金預金、未収金、未払金、前受金及び前払金とする。(表中の×××は、金額を表す。)



1  委託業務費が平成28年度に減少した理由は、平成29年3月17日に実施したエレベーター点検に係る費用を、平成29年4月10日に支払ったことによるものです。

X 適切でない。 平成29年3月17日に実施したエレベーター点検に係る費用は、発生主義により、平成28年度中に処理されている。平成29年度に支払っても、委託業務費が平成28年度に減少した理由にならない。

  発生主義、資金の範囲など、また過去問題については、前の 「問34」 を参考にしてください。
  
  平成29年3月17日に実施したエレベーター点検に係る費用は、発生主義によれば、平成29年3月=平成28年度に既に「未払金」として処理がなされていますから、それを、現実に平成29年4月10日に支払をしていても、委託業務費が平成28年度に減少した理由にはなりませんから、適切ではありません。  



2  平成28 年度の次期繰越収支差額は、決算の結果、395,000 円になりました。

X 適切でない。 平成28 年度の次期繰越収支差額は、決算の結果、440,000円 で、395,000 円ではない。

  面倒ですが、設問の「比較収支報告書」の空欄を平成26年度から計算で埋めましょう。
 
  まず、平成26年度の当期収支差額は、

  収入合計 ¥350,00 - 支出合計 ¥305、000 = ¥45,000
  これにより、
  平成26年度の次期繰越収支差額は、
  前期繰越収支差額 ¥290,000 + ¥45,000 = ¥335,000 です。

  同様に、平成27度の当期収支差額は、
  収入合計 ¥350,00 - 支出合計 ¥313、000 = ¥37,000
  これにより、
  平成27年度の次期繰越収支差額は、
  前期繰越収支差額 ¥335,000 + ¥37,000 = ¥372,000 です。 

 同様に、平成28度の当期収支差額は、
  収入合計 ¥340,00 - 支出合計 ¥272、000 = ¥68,000
  これにより、
  
平成28年度の次期繰越収支差額は、
  前期繰越収支差額 ¥372,000 + ¥68,000 = 
¥440,000 となります。
 
 よって、平成28 年度の次期繰越収支差額は、決算の結果、440,000円 で、395,000 円は適切ではありません。


3  平成28年度の駐車場使用料収入の減少は、平成28年度中に滞納金が発生し入金されなかったことによるものです。

X 適切でない。 発生主義では、滞納金も収入に反映されている。

  発生主義により、平成28年度中に滞納金が発生し入金されなくても、未収金として、平成28年度の駐車場使用料収入に反映されていますから、平成28年度の駐車場使用料収入の減少は、平成28年度中に滞納金が発生し入金されなかったことによるものは、適切ではありません。


4  平成29年3月24日に、組合員Aから、平成29 年度の管理費1年分を前払する振込がありましたが、平成28年度の管理費収入には計上しないため、前期の額と変動がありませんでした。

〇 適切である。 発生主義により、翌年度分なら、当年度分には反映されない。

 発生主義により、平成29年3月度に翌年度分の前払の入金があっても、平成28年度では、前受金として処理して、平成28年度の管理費収入には計上しないため、前期の額と変動がありませんでしたは、適切です。


答え:4

  選択肢2で計算で時間がかかれば、回答は後回しにすること。

  計算をしなくても、発生主義を知っていれば、正解は早い。丁寧に、出題図を加工して、計算値を入れたので、時間がかかった!

《タグ》会計 比較収支報告書 発生主義 未払 繰越 未収 前払

問36

〔問 36〕 マンションの建物の調査機器と調査方法に関する次の記述のうち、適切なものはどれか。

1 クラックスケールを用いて、コンクリートのひび割れ深さの調査を行った。

X 適切でない。 クラック・スケールは、コンクリートのひび割れの幅や長さを測るもの。深さを測るものではない。
 平成27年 マンション管理士試験 「問36」 、 平成26年マンション管理士試験 「問37」 、 平成24年管理業務主任者試験 「問27」 、 平成20年マンション管理士試験 「問37」 

 まず、コンクリートは、使用された材料、施工の不備、地盤沈下、使用環境、外力など、様々な要因でひび割れを生じますから、目視やルーペ、クラック・スケール、物指しまた光学機器などで調査します。
 ひび割れ幅が、0.3mm以下であっても、内部に雨水などが入って、漏水や鉄筋の腐食の原因となります。

 そこで、クラック・スケール(Crack Scale)とは、コンクリートのクラック(Crack ひび割れ)の幅や長さの計測器(Scale)であって、コンクリートのひび割れ”深さ”の調査はできませんから、適切ではありません。

  ひび割れにクラック・スケールを当てて、該当の線の太さで読み取ります。

 


2 タッピングマシンを用いて、外壁タイルの浮きの調査を行った。

X 適切でない。 タッピングマシンは、床の衝撃音発生器で、外壁タイルの浮きの調査には使われない。
 平成27年 マンション管理士試験 「問37」 、 平成26年マンション管理士 試験「問36」 、  平成24年マンション管理士試験 「問37」 平成23年管理業務主任者 試験「問28」 、 平成21年マンション管理士試験 「問38」 、 平成18年マンション管理士試験 「問37」 など。

 まず、外壁タイルの浮きの調査ですが、タイルの浮きは、温度の変化、乾燥・湿潤、建物の動き、地震などで、下地のモルタルやコンクリートとの接着力が不足し、下地と表面のタイルが分離して発生します。タイルが剥落すると危険なため、調査は重要です。
 その、調査の方法としては、
  ・外観目視調査...肉眼や望遠鏡など、眼で調査する。判定には経験が必要。
  ・打診法...テストハンマーで表面を叩いて、音の差で浮きを判断する。これも、判定には経験が必要。
  ・赤外線装置法...赤外線カメラにより、タイルやモルタルの浮いている部分と、健全な部分とを熱の伝導の差(温度差)で測定する。温度差の出やすい天候時に行うといい。
  ・反発法...コンクリートの強度を調べたのと同じように、シュミットハンマー等で、タイル面に一定の衝撃を与えて、その衝撃で生じた跳ね返りの大きさや音圧の違いで、浮きを調査する。
 等があります。


   

  

 そこで、タッピング・マシン(Tapping Machine)ですが、これは、日本語に訳すと「叩く機械」となりますが、この場合は、「床を叩いて音を発生させる機器」と捉えます。
 通常、床の衝撃音を発生させるには、軽量衝撃音を出す「
タッピング・マシン」と、重量衝撃音を出す「バング・マシン」が使用されます。
 よって、軽量衝撃音を出す「タッピング・マシン」を用いて、外壁タイルの浮きの調査は、行わないため、適切ではありません。


 


3 電磁波レーダを用いて、給排水管内部の劣化状況の調査を行った。

X 適切でない。 電磁波レーダーで、給排水管内部の劣化状況の調査はしない。
 
 給排水管など、配管の劣化を調べる方法には、目視、非破壊検査がありますが、精密に行うには、サンプル(資料)を切り取る=抜き管 方法があります。 
 給水管内のさびの状態を調査する方法で、破壊調査として、さびが発生しやすい異種金属との接続部分や量水器などを切り取る「抜管(サンプリング=資料)法」は、内部の状況を直接観察、測定する方法として、適切です。
 なお、具体的な、抜管(サンプリング)法のやりかたは、まず、配管の一部分を抜管し、配管を縦割り(半分に分けます=半割り)します。半割りした片側は現状のままで、もう1つの側を酸で洗い、錆や付着物をきれいに落とし、内面の錆や汚れの状況と管厚の減肉状況を確認します。
 酸で洗った方に管が薄くなった部分(肉減)あれば、その肉厚がいくらかを測定して、配管の経過年数をもとに推定残存寿命を知ることができます。抜管(サンプリング)法では、配管の一部を切断するために工事中は、その配管を使用することができません。


 

  そして、電磁波レーダ(-)装置は、鉄筋コンクリートに電波を当ててコンクリートの中の鉄筋の位置を測ることにより、コンクリート表面と鉄筋とのかぶり厚さを測る装置ですから、電磁波レーダ(ー)を用いて、給排水管内部の劣化状況の調査を行うことは、適切ではありません。
  電磁波では、配管の劣化は分かりません。

 なお、コンクリートのかぶり厚さを確保するのは、コンクリート建物の耐久性や耐火性を確保するためには重要なことです。

 


4 無色透明な市販の粘着テープを用いて、仕上塗材の白亜化(チョーキング)の程度の調査を行った。

〇 適切である。 仕上塗材の白亜化の調査に、無色透明な市販の粘着テープを用いることはできる。

 平成26年 マンション管理士試験 「問36」 、平成24年 マンション管理士試験 「問37」 、平成23年 マンション管理士試験 「問36」

 仕上げ塗材は、タイルとは違いますから注意してください。塗料を使ってマンションの壁、床、天井、コンクリートの壁面を仕上げます。 
 
 そこで、仕上げ塗材(外壁塗装)の白亜化(チョーキング)とは、塗装の表面が大気汚染・紫外線・熱・水分・風等により粉状(チョーキング)になる現象で、表層樹脂が劣化し、塗装面を手で触ると塗料の色成分の顔料がチョーク(白墨)のような粉状となって手に付着します。
 あまり手に付く粉(チョーク)が多いようだと、塗装の性能が低下してきています。進行すると、剥離、破断に至ります。そこで、調査が必要です。
 なお、コンクリートのエフロレッセンス(白華現象)とは、異なりますので、注意してください。


 

  その仕上げ塗材の、調査方法としては、多くは、目視によりますが、ふくれやはがれを調査するには、付着力試験(建研式接着力試験器)を使って付着力の強さを測る方法や、塗膜にカーターナイフで切り込みを格子状にいれ(クロスカット=十字に切る)、その部分に透明性の付着テープ(セロテープ)を張り付け、テープーを引き離して、テープに付着した塗膜の状況から判定するクロスカット法があります。
 ここで使用する透明性の粘着テープは、市販の、(例えば、セロテープ)でも可能ですから、無色透明な市販の粘着テープを用いて、仕上塗材の白亜化(チョーキング)の程度の調査を行ったは、適切です。

 
 


答え:4

 過去問題をやっていれば、答えは早い。 易しい問題です。

《タグ》建物 調査 コンクリートのひび割れ クラック・スケール 外壁タイルの浮き タッピング・マシン 配管の劣化状況 電磁波レーダー 白亜化 粘着テープ

問37

〔問 37〕 マンションの建物の維持保全に関する法令の規定に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 マンション管理適正化法によれば、宅地建物取引業者は、管理組合の管理者等に対し、建築基準法第6条に規定される確認申請に用いた設計図書を交付しなければならない。

X 誤っている。 建築基準法第6条に規定される”確認申請に用いた設計図書”は入っていない。工事完了時の各種図書。また、全ての宅地建物取引業者が対象ではない。

 平成26年 マンション管理士試験 「問50」 、 平成18年 管理業務主任者試験 「問50」 、 平成17年 マンション管理士試験 「問50」 、 平成15年 マンション管理士試験 「問50」 

 どうして、この「問37」 で「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下、マンション管理適正化法といいます)」からの出題があるのか、多いに疑問です。それは、マンション管理適正化法からの出題は、例年「問46」から「問50」となっており、マンション管理士試験か管理業務主任者試験の合格者には免除される部分ですから。

 設問の宅地建物取引業者の設計図書の交付は、マンション管理適正化法第103条
 「第六章 雑則
 (設計図書の交付等)
 第百三条 
宅地建物取引業者(宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)第二条第三号に規定する宅地建物取引業者をいい、同法第七十七条第二項の規定により宅地建物取引業者とみなされる者(信託業務を兼営する金融機関で政令で定めるもの及び宅地建物取引業法第七十七条第一項の政令で定める信託会社を含む。)を含む。以下同じ。)は、自ら売主として人の居住の用に供する独立部分がある建物(新たに建設された建物で人の居住の用に供したことがないものに限る。以下同じ。)を分譲した場合においては、国土交通省令で定める期間内に当該建物又はその附属施設の管理を行う管理組合の管理者等が選任されたときは、速やかに、当該管理者等に対し、当該建物又はその附属施設の設計に関する図書で国土交通省令で定めるものを交付しなければならない。
2 前項に定めるもののほか、宅地建物取引業者は、自ら売主として人の居住の用に供する独立部分がある建物を分譲する場合においては、当該建物の管理が管理組合に円滑に引き継がれるよう努めなければならない。」
 とあり、
 引用されています「国土交通省令で定めるもの」は、マンションの管理の適正化の推進に関する法律施行規則第102条
 「第百二条 法第百三条第一項の国土交通省令で定める図書は、次の各号に掲げる、
工事が完了した時点の同項の建物及びその附属施設(駐車場、公園、緑地及び広場並びに電気設備及び機械設備を含む。)に係る図書とする。
   一 付近見取図
   二 配置図
   三 仕様書(仕上げ表を含む。)
   四 各階平面図
   五 二面以上の立面図
   六 断面図又は矩計図
   七 基礎伏図
   八 各階床伏図
   九 小屋伏図
   十 構造詳細図
   十一 構造計算書」

 とあり、
 マンション管理適正化法第103条によれば、
”工事が完了した時点での各種図書”であり、建築基準法第6条に規定される”確認申請に用いた設計図書”は、入っていませんから、誤りです。また、このマンション管理適正化法第103条が適用されるのは、宅地建物取引業でも、自ら売主の場合だけですから、最終的に誤りです。


2 建築基準法第8条第2項に規定されている建築物の維持保全に関する計画には、維持保全の実施体制や資金計画等を定めることとされている。

〇 正しい。

 建築基準法第8条は、どこかで、出た問題だと調べて、やっと、古い 平成14年 管理業務主任者試験 「問16」 や 平成13年 管理業務主任者試験 「問17」 を見つけた。

 建築基準法第8条は、
 「(維持保全)
 第八条 建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。
2 第十二条第一項に規定する建築物の所有者又は管理者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するため、
必要に応じ、その建築物の維持保全に関する準則又は計画を作成し、その他適切な措置を講じなければならない。この場合において、国土交通大臣は、当該準則又は計画の作成に関し必要な指針を定めることができる。
 です。


 そして、建築基準法第8条2項の、国土交通大臣が定めた指針は、建設省告示第606号 昭和60年3月19日付
 「第 3 計画に定めるべき事項
  計画には、おおむね次の各号に掲げる項目につき、それぞれ当該各号に掲げる事項を定めるも のとする。
     一 建築物の利用計画 建築物又はその部分の用途等、将来の増改築の予定等に関する事項
     
二 維持保全の実施体制 維持保全を行うための組織、維持保全業務の委託、建築士その他専門技術者の関与等に関する事項
     三 維持保全の責任範囲 計画作成者の維持保全の責任範囲に関する事項
     四 占有者に対する指導等 建築物の破損時等における通報、使用制限の遵守等に関する事項
     五 点検 点検箇所、点検時期、点検者、点検に当たつての判断基準、結果の報告等に関する事 項
     六 修繕 修繕計画の作成、修繕工事の実施等に関する事項
     七 図書の作成、保管等 維持保全計画書、確認通知書、竣工図、設備仕様書等の作成、保管、 廃棄等に関する事項
     
八 資金計画 点検、修繕等の資金の確保、保険等に関する事項
     九 計画の変更 計画の変更の手続等に関する事項
     十 その他 前各号に掲げるもののほか、維持保全を行うため必要な事項」
 とあり、
 昭和60年3月19日建設省告示第606号によると、建築物の維持保全に関する計画には、維持保全の実施体制や資金計画等を定めることとされているので、正しい。



3 長期優良住宅の普及の促進に関する法律(平成20 年法律第87号)においては、長期優良住宅建築等計画の認定基準として、新築、増築又は改築のいずれの場合にあっても、新築後、増築後又は改築後の維持保全の期間は30年以上と定められている。

〇 正しい。
  平成29年 管理業務主任者試験 「問25」 、 平成25年 マンション管理士試験 「問39」 、 平成23年 マンション管理士試験 「問39」

  時々、長期優良住宅の普及の促進に関する法律からの出題がある。

 長期優良住宅の普及の促進に関する法律制定の目的は、従来の「つくっては壊す」スクラップ&ビルド型の社会から、「いいものを作って、きちんと手入れをして長く大切に使う」ストック活用型の社会への転換を目的として、長期にわたり住み続けられるための措置が講じられた優良な住宅(=長期優良住宅)を普及させるためです。平成20年12月5日に成立し、平成21年6月4日に施行されました。

 そして、「長期優良住宅」とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置がその構造及び設備に講じられた優良な住宅のことです。
 長期優良住宅の建築および維持保全の計画を作成して所管行政庁に申請することで、基準に適合する場合には認定を受けることができます。
 新築についての認定制度は平成21年6月4日より、既存の住宅を増築・改築する場合の認定制度は平成28年4月1日より開始しています。

 認定を受けると、税金の特例措置、補助金、融資等の優遇措置があります。
 また、計画の認定を受けた後には、計画の認定を受けた人(認定計画実施者)は、認定を受けた計画に基づき住宅を建築し、建築工事の完了後は維持保全を行うとともに、建築・維持保全の状況について記録を作成し、保存します。


 まず、定義。長期優良住宅の普及の促進に関する法律第2条
 「(
定義)
第二条 この法律において「住宅」とは、人の居住の用に供する建築物(建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二条第一号に規定する建築物をいう。以下この項において同じ。)又は建築物の部分(人の居住の用以外の用に供する建築物の部分との共用に供する部分を含む。)をいう。
2 この法律において「建築」とは、住宅を新築し、増築し、又は改築することをいう
3 この法律において「維持保全」とは、次に掲げる住宅の部分又は設備について、点検又は調査を行い、及び必要に応じ修繕又は改良を行うことをいう。
   一 住宅の構造耐力上主要な部分として政令で定めるもの
   二 住宅の雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるもの
   三 住宅の給水又は排水の設備で政令で定めるもの
 (以下、略)」

 とあり、
 長期優良住宅の普及の促進に関する法律第2条2項では、「「建築」とは、住宅を新築し、増築し、又は改築することをいう」です。

 そして、長期優良住宅建築等計画の認定基準は、長期優良住宅の普及の促進に関する法律第6条
 「(認定基準等)
 第六条 所管行政庁は、前条第一項から第三項までの規定による認定の申請があった場合において、当該申請に係る長期優良住宅建築等計画が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、その認定をすることができる。
   一 建築をしようとする住宅の構造及び設備が長期使用構造等であること。
   二 建築をしようとする住宅の規模が国土交通省令で定める規模以上であること。
   三 建築をしようとする住宅が良好な景観の形成その他の地域における居住環境の維持及び向上に配慮されたものであること。
   四 前条第一項又は第二項の規定による認定の申請に係る長期優良住宅建築等計画にあっては、次に掲げる基準に適合すること。
     イ 建築後の住宅の維持保全の方法が当該住宅を長期にわたり良好な状態で使用するために誘導すべき国土交通省令で定める基準に適合するものであること。
     
ロ 建築後の住宅の維持保全の期間が三十年以上であること。
     ハ 資金計画が当該住宅の建築及び維持保全を確実に遂行するため適切なものであること。
   五 前条第三項の規定による認定の申請に係る長期優良住宅建築等計画にあっては、次に掲げる基準に適合すること。
     イ 建築後の住宅の維持保全の方法の概要が当該住宅を三十年以上にわたり良好な状態で使用するため適切なものであること。
     ロ 資金計画が当該住宅の建築を確実に遂行するため適切なものであること。
   六 その他基本方針のうち第四条第二項第三号に掲げる事項に照らして適切なものであること。
 (以下、略)」

 とあり、
 長期優良住宅の普及の促進に関する法律第6条1項4号ロによれば、長期優良住宅建築等計画の認定基準として、新築、増築又は改築のいずれの場合にあっても、新築後、増築後又は改築後の維持保全の期間は30年以上と定められているは、正しい。



4 住宅の品質確保の促進等に関する法律(平成11 年法律第81 号)の規定による住宅性能表示制度において、鉄筋コンクリート造の既存住宅の劣化対策等級の評価基準には、コンクリートの中性化深さ及びコンクリート中の塩化物イオン量が含まれている。

〇 正しい。
 平成28年 マンション管理士試験 「問41」 選択肢4 、 平成28年 管理業務主任者試験 「問24」 平成25年 マンション管理士試験 「問39」 選択肢2 

  住宅の品質確保の促進等に関する法律は、民法での瑕疵担保責任での例外規定の他にも、日本住宅性能表示基準も定めています。この制度は平成12年から開始しています。

 日本住宅性能表示基準は、住宅の品質確保の促進等に関する法律第3条以下に規定されており、「
住宅性能表示制度」とは、住宅の性能を統一された表示ルールで比較できるように表示を行うことを定めた制度のことです。
 「住宅性能表示制度」により、住宅取得者が前もって住宅性能の違いを比較出来るようにしています。
 具体的には、
   1.構造の安定に関すること(必須/選択あり)
   2.火災時の安全に関すること(全部選択へ)
   3.劣化の軽減に関すること(必須のみ)
   4.維持管理・更新への配慮に関すること(多くは必須)
   5.温熱環境・エネルギー消費量に関すること(旧 温熱環境に関すること)(必須のみ)
   6.空気環境に関すること(全部選択へ)
   7.光・視環境に関すること(全部選択へ)
   8.音環境に関すること(選択)
   9.高齢者等への配慮に関すること(選択)
  10.防犯に関すること(全部選択へ)
  など10項目について、共通のルール(表示や評価の方法の基準)に基づき、住宅の性能を表示(評価)します。
 住宅の性能の評価は、国土交通大臣等に登録された第三者機関(登録住宅性能評価機関)が希望により有償で行います。

  平成27年(2015年)4月1日より、住宅性能表示制度が改正され、評価の必須項目が10分野から以下の4分野へと大幅に緩和されました。
   1.構造の安定
   2.劣化の軽減
   3.維持管理、更新への配慮
   4.温熱環境、エネルギー消費量


  では、住宅の品質確保の促進等に関する法律第3条
 「(日本住宅性能表示基準)
 第三条 
国土交通大臣及び内閣総理大臣は、住宅の性能に関する表示の適正化を図るため、日本住宅性能表示基準を定めなければならない
2 日本住宅性能表示基準は、利害関係人の意向を適切に反映するように、かつ、その適用に当たって同様な条件の下にある者に対して不公正に差別を付することがないように定め、又は変更しなければならない。
3 国土交通大臣又は内閣総理大臣は、日本住宅性能表示基準を定め、又は変更しようとする場合において、必要があると認めるときは、当該日本住宅性能表示基準又はその変更の案について、公聴会を開いて利害関係人の意見を聴くことができる。
4 国土交通大臣及び内閣総理大臣は、日本住宅性能表示基準を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣にあっては社会資本整備審議会の議決を、内閣総理大臣にあっては消費者委員会の議決を、それぞれ経なければならない。
5 国土交通大臣及び内閣総理大臣は、日本住宅性能表示基準を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを告示しなければならない。

 とあり、
 住宅の品質確保の促進等に関する法律第3条1項により、「日本住宅性能表示基準」が定められています。


 そして、定められた、「日本住宅性能表示基準」は、
 平成13年8月14日 国土交通省告示第1346号(最終改正は平成28年12月21日消費者庁・国土交通省告示第3号) です。

    http://www.mlit.go.jp/common/001178913.pdf


 そこで、3-1劣化対策等級(構造躯体等)での、鉄筋コンクリート造の既存住宅の劣化対策等級の評価基準は、明確な根拠が、見つからなかったのですが、以下の「資料3-1」

 
 によれば、鉄筋コンクリート造の既存住宅の劣化対策等級の評価基準には、コンクリートの中性化深さ及びコンクリート中の塩化物イオン量が含まれているようですから、正しい。

 なお、コンクリートの中性化深さ及びコンクリート中の塩化物イオン量が問題になるのは、鉄筋コンクリート造の場合、鉄筋コンクリートは、鉄筋のまわりをコンクリートが覆っています。そして、鉄筋コンクリートは、コンクリートがアルカリ性を保っているうちは、鉄筋が錆びませんが、コンクリートが中性化してしまうと錆び、劣化します。また、寒い地域では、コンクリートの水分が凍って膨らみ、コンクリートが傷んだりして劣化します。
 (「問40」 の選択肢3 の鉄筋コンクリート造 も参照)

 そのため、鉄筋コンクリート造の場合は、この2種類の劣化を評価します。

 また、性能表示事項は、等級や数値などで表示され、等級では、「5など」(4や3が最高もある)が一番よくて、→ 1、又は 0 と性能が落ちます。数字が大きいものほど性能が高いことを表しますので、注意してください。



答え:1

 こんなところで、各種法律から、しかもマイナーな箇所からの出題とは、まったく解説に時間がかかる。
  
 建築基準法第8条第2項からの出題とは、どこかでやった記憶はあったが、かなり昔で、探すのに時間がかかった。
 長期優良住宅の普及の促進に関する法律なんて知らない。これって過去にも出ているが、本当に出題の範囲か?
  選択肢1での、マンションの管理の適正化の推進に関する法律第103条で規定される内容が、宅地建物取引業者のすべてに適用されないと分かっていれば、答えは早いが、難問だ。


《タグ》マンションの管理の適正化の推進に関する法律第103条 建築基準法第8条 長期優良住宅の普及の促進に関する法律 住宅の品質確保の促進等に関する法律 性能表示制度

問38

〔問 38〕 マンションの外壁の補修工事に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

1 外壁パネル等の目地のシーリング材の補修は、既存のシーリング材を除去して新規のシーリング材を施工するシーリング再充填工法(打替え工法)が一般的である。

〇 適切である。 シーリング材の補修は、通常、シーリング再充填工法(打替え工法)で行う。
 平成27年 マンション管理士試験 「問38」 、 平成17年マンション管理士試験 「問39」 、 平成16年マンション管理士試験 「問39」 平成14年マンション管理士試験 「問37」 

 まず、シーリング(Sealing)とは、建築物の外壁や窓枠など部材と部材の接合部(継ぎ目や隙間)を雨水が入ってこないように、また気密性を高めるために埋めることです。そこで使用される埋め物が、シーリング材と呼ばれます。
 シーリング材は、当初はペースト状をして、ガン(拳銃)の形をしたシーリング・ガンで、目地や継ぎ目など使用箇所に埋め込みます。当初の柔らかいペースト状態から時間の経過により固まり、ゴム状に変化します。

 そこで、補修の方法は以下の2つがあります。
  ①増し打ち工法...既存のシーリング材の上に新規のシーリング材を充填する工法。
               既存分がさほど傷んでいない場合や撤去が困難な箇所で行う。既存シーリング材及びその周辺を清掃し、プライマーと呼ばれる下塗材を塗布、その後各種シーリング材を充填してその後ヘラなどでナビく。
  ②打替え工法...既存のシーリング材を撤去し、新規のシーリング材を充填する工法。
              メジが深い場合にはバックアップ材などをはめ込んでその後シーリング材を充填する。シーリングの基本は2面接着なので耐久性を考えるとこの工法が優れている。ただし、増し打ち工法よりコストはかかる。

 

 そこで、多くの場合、外壁パネル等の目地のシーリング材の補修は、既存のシーリング材を除去して新規のシーリング材を施工するシーリング再充填工法(打替え工法)がとられていますから、適切です。


2 モルタル塗り仕上げ部分に発生している幅が1.0mm を超えるひび割れで、ひび割れ幅が変動する場合の補修は、Uカットシール材充填工法とし、充填材にシーリング材を用いるのが一般的である。

〇 適切である。 
 平成28年 マンション管理士試験 「問37」 、平成24年 マンション管理士試験 「38」 


  ひび割れが大きくなると、Uカットシール材充填工法を使用します。
 Uカットシール材充填工法とは、ひび割れ幅が、1.0mm以上や挙動(温度差による動き)が大きくなると、樹脂注入工法ではなく、割れに対して、幅10mm、深さ10mm~15mmのU字型の溝を切って、清掃後、シーリング材や可撓性(かとうせい=動きに追随できるもの)のエポキシ樹脂を充填する工法です。


 

 

 そこで、モルタル塗り仕上げ部分に発生している幅が1.0mm を超えるひび割れで、ひび割れ幅が変動する場合の補修は、Uカットシール材充填工法とし、充填材にシーリング材を用いるのが一般的ですから、適切です。


3 外壁複合改修構工法(ピンネット工法)は、既存のタイルやモルタル等の仕上げ層を撤去せずに、アンカーピンによる仕上げ層の剝落防止と繊維ネットによる既存仕上げ層の一体化により安全性を確保する工法である。

〇 適切である。
  平成24年 マンション管理士試験 「38」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問39」 

 外壁複合改修構工法(ピンネット工法)(ネットバリアー工法)とは、外壁の剥落を防ぐ工法です。

 外壁は温度変化や乾湿により絶えず伸縮を繰り返し、浮きやひび割れはこの伸縮が原因だといわれています。
 そこで、壁面に新たに、ポリマーセメントモルタルに立体網目構造不網布(リプレックスシート)を押さえ込んだネット層の上から、ステンレス製の特殊なアンカーピン(ノックスアンカーKNA)を躯体まで打ち込むことで仕上げ材の剥離、落下を防止します。
 この外壁複合改修構工法(ピンネット工法)は、既存仕上げ材の剥落を防止するとともに、耐久性にも優れた新規仕上げ層を形成することができる効果的な工法であり、従来のエポキシ樹脂注入によるモルタル剥落防止工法に比べて工事が簡素化でき、低コストで建物のリニューアルが実現できるなど、数多くの魅力を持っています。

 


 
 というわけで、外壁複合改修構工法(ピンネット工法)は、既存のタイルやモルタル等の仕上げ層を撤去せずに、アンカーピンによる仕上げ層の剝落防止と繊維ネットによる既存仕上げ層の一体化により安全性を確保する工法は、適切です。



4 コンクリート部分に発生しているひび割れの補修工事で樹脂注入工法を行う場合、注入する圧力は、樹脂を行き渡らせるために、できるだけ高圧とすることが一般的である。 

X 適切ではない。 注入する圧力は、できるだけ”低圧”で隙間まで行き渡らせる。 高圧ではムラができるのでだめ。
  平成28年 マンション管理士試験 「問37」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問38」 、平成21年 マンション管理士試験 「問39」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問37」 選択肢4 

 樹脂注入工法とは、コンクリートでひび割れが発生した場合の補修工法で、ひび割れの幅が、比較的に小さい0.2mm~1.0mmなら、手動式のポンプを使ったり、”自動低圧機”や電動ポンプを使って建築補修用のエポキシ樹脂等をひび割れ部に注入する方法です。


 
 

 そこで、樹脂注入工法では、エポキシ樹脂等をひび割れ部に確実に行き渡らせるために、注入する圧力は”低圧”で行いますから、”できるだけ高圧”とすることが一般的であるは、適切ではありません。


答え:4

  ここの選択肢4は、過去問題をやっていれば、解答は早い。 易しい。

《タグ》外壁補修 シーリング材 打替え工法 Uカット ビンネット工法 樹脂注入 低圧

問39

〔問 39〕 大規模修繕工事、長期修繕計画及び修繕積立金に関する次の記述のうち、「長期修繕計画作成ガイドライン及び同コメント」(平成20 年6月国土交通省公表)及び「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」(平成23 年4月国土交通省公表)によれば、適切でないものはどれか。

1 2012年に見直した長期修繕計画を大規模修繕工事が完了した2017 年に再度見直し、2042年までの計画を作成した。

〇 適切である。 長期修繕計画も見直しは、5年ごと。 期間は25年以上まで。

 「長期修繕計画作成ガイドライン」からも良く出題があるので、読んでおくこと。

 平成28年 マンション管理士試験 「問39」、 平成26年 マンション管理士試験 「問38」 、平成26年 管理業務主任者試験 「問27」 、 平成25年マンション管理士試験 「問37」、 平成23年マンション管理士試験 「問38」、 平成21年 マンション管理士試験 「問36」 

  長期修繕計画作成ガイドライン の目的は、
 このガイドラインは、マンションにおける長期修繕計画の作成又は見直し(以下「作成」という。)及び修繕積立金の額の設定に関して、基本的な考え方等と長期修繕計画標準様式(以下「標準様式」という。)を使用しての作成方法を示すことにより、適切な内容の長期修繕計画の作成及びこれに基づいた修繕積立金の額の設定を促し、マンションの計画修繕工事の適時適切かつ円滑な実施を図ることを目的としています。

 そこで、設問の前半、「2012年に見直した長期修繕計画を大規模修繕工事が完了した2017 年に再度見直し」は、「長期修繕計画作成ガイドライン
 第3章 長期修繕計画の作成の方法
   10 長期修繕計画の見直し
     
長期修繕計画は、次に掲げる不確定な事項を含んでいますので、5年程度ごとに調査・診断を行い、その結果に基づいて見直すことが必要です。また、併せて修繕積立金の額も見直します。
     ①建物及び設備の劣化の状況
     ②社会的環境及び生活様式の変化
     ③新たな材料、工法等の開発及びそれによる修繕周期、単価等の変動
     ④修繕積立金の運用益、借入金の金利、物価、消費税率等の変動」
 とあり
 2012年に見直した5年後の大規模修繕工事が完了した2017年に再度見直すのは、適切です。

 そして、設問後半の計画期間は、「長期修繕計画作成ガイドライン」 
  「第3章 第1節 
  5 計画期間の設定
    
計画期間は、新築マンションの場合は、30年以上とし、既存マンションの場合は、25年以上とします。
  とあり、
  基本的な考え方として、大規模修繕(周期12年程度)が2回含まれる期間 とのことです。
  そこで、既存マンションであるため、2017年に25年先の2042年までの計画を作成したも、適切です。

  よって、選択肢1は、全体として、適切です。



2 長期修繕計画の計画期間内に修繕周期に到達しない建具関係の取替えなどについて、推定修繕工事費に計上し、修繕積立金の算定根拠とした。

〇 適切である。 修繕積立金の算定においては、将来見込まれる修繕工事及び改修工事もいれること。


 「長期修繕計画作成ガイドライン」
 第2章 長期修繕計画の作成の基本的な考え方
  第1節 長期修繕計画の作成及び修繕積立金の額の設定の目的等
1 長期修繕計画の作成及び修繕積立金の額の設定の目的
  マンションの快適な居住環境を確保し、資産価値を維持するためには、適時適切な修繕工事を行うことが必要です。また、必要に応じて建物及び設備の性能向上を図る改修工事を行うことも望まれます。
 そのためには、次に掲げる事項を目的とした長期修繕計画を作成し、これに基づいて修繕積立金の額を設定することが不可欠です。
   
①将来見込まれる修繕工事及び改修工事の内容、おおよその時期、概算の費用等を明確にする。
   ②計画修繕工事の実施のために積み立てる修繕積立金の額の根拠を明確にする。
   ③修繕工事及び改修工事に関する長期計画について、あらかじめ合意しておくこと で、計画修繕工事の円滑な実施を図る。」
 とあり、
 長期修繕計画の計画期間内に修繕周期に到達しない建具関係の取替えなども、将来見込まれる工事であるため、推定修繕工事費に計上し、修繕積立金の算定根拠とすることは、適切です。



3 大規模修繕工事の実施の時期を長期修繕計画による実施時期にかかわらず、調査・診断結果に基づいて判断した。

〇 適切である。 長期修繕計画による実施時期はあくまでも”目安”。 実際の調査・診断結果に基づいて判断していい。

 この設問は、具体的な文章を探せなかったのですが、「長期修繕計画作成ガイドライン」
 「第2章 長期修繕計画の作成の基本的な考え方
 第1節 長期修繕計画の作成及び修繕積立金の額の設定の目的等
  2 基本的な考え方
   二 長期修繕計画の作成の前提条件 長期修繕計画の作成に当たっては、次に掲げる事項を前提条件とします。
      ①推定修繕工事は、建物及び設備の性能・機能を新築時と同等水準に維持、回復さ せる修繕工事を基本とする。
     ②区分所有者の要望など必要に応じて、建物及び設備の性能を向上させる改修工事 を設定する。
     ③計画期間において、法定点検等の点検及び経常的な補修工事を適切に実施する。
     
④計画修繕工事の実施の要否、内容等は、事前に調査・診断を行い、その結果に基 づいて判断する。
 とあり、
 「 ④計画修繕工事の実施の要否、内容等は、事前に調査・診断を行い、その結果に基 づいて判断する」とありますから、大規模修繕工事の実施の時期を長期修繕計画による実施時期にかかわらず、調査・診断結果に基づいて判断したは、適切でしょう。



4 15階未満のマンションにおける専有床面積当たりの修繕積立金の額の平均値は、建築延床面積が大きいほど高くなる傾向にある。

X 適切でない。 15階未満のマンションなら、専有床面積当たりの修繕積立金の額の平均値は、建築延床面積が大きいほど”低く”なる傾向がある。 ”高く”ではない。
  平成26年 マンション管理士試験 「問39」 、 平成24年マンション管理士試験 「問39」

  マンションの修繕積立金ガイドライン の
   5 修繕積立金の主な変動要因について
   ・一般的に建物の規模が大きくまとまった工事量になるほど、施工性が向上し、修繕工事の単価が安くなる傾向があります。」 
 とあり、添付、
 (2)修繕積立金の額の目安
 
 とあり、
 修繕積立金の額の目安 の表によると、15階未満のマンションの建築延床面積についての平均値は、
5,000㎡未満は、218円/㎡・月 ですが、10,000㎡以上だと、178円/㎡・月 と建築延床面積が大きいほど、修繕積立金の額の平均値は小さくなっていますので、建築延床面積が大きいほど”高くなる傾向”にあるは、適切はありません。


答え:4

  ここも、選択肢4は、過去問題をやっていれば、易しい。
  だけど、どうも、具体的な根拠文を探しきれない。 出題としては、適切でない。

《タグ》長期修繕計画作成ガイドライン 見直し=5年ごと 期間=25年先 修繕積立金には将来見込まれる修繕工事及び改修工事もいれること  マンションの修繕積立金に関するガイドライン 修繕積立金の額

問40

〔問 40〕 マンションの建物に用いられる構造形式に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

1 ラーメン構造は、柱と梁を剛接合して建物の骨組みを構成し、荷重及び外力に対応する構造形式であり、構造耐力を増すために耐力壁を設ける場合もある。

〇 適切である。
  平成29年 管理業務主任者試験 「問19」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問23」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問26」 

  ★ラーメンとは、ドイツ語で枠のこと。(蕎麦ではありません)
   ラーメン構造とは、地震力・風圧力など水平外力を柱と梁(はり)をしっかりと固定(剛接合)して、受け止める構造で、間口方向、桁行方向ともに筋交いや耐力壁を必要としない構造。
  ラーメン構造では、開口部や間仕切りの位置や大きさが、自由に設定できるというメリットがあり、鉄筋コンクリート造、鉄骨造などに使われる、一般的な構造で、中高層のビルやマンションの建築によく採用されている構造です。

  構造耐力を増すために耐力壁を設ける場合もあるので、適切です。


 


2 壁式構造は、壁や床などの平面的な構造部材を一体として構成し、荷重及び外力に対応する構造形式であり、高層の建物より中低層の建物に採用されることが多い。

〇 適切である。

 平成23年マンション管理士試験 「問41」 

 壁式構造とは、鉄筋コンクリート造りの壁と床板によって、箱状の構造を作り、荷重や外力に対応します。柱や梁がないのが特徴です。
 柱と梁をしっかり固定するラーメン構造に比べて開口部(窓、扉など)のとり方が限定されますが、柱や梁が室内に出ないため、室内を広く使えるメリットがあります。通常、5階建てまでの中低層マンションでも採用され、耐震性もあり、昭和56年以前でも利用されています。
 設問の、壁式構造は、壁や床などの平面的な構造部材を一体として構成し、荷重及び外力に対応する構造形式であり、高層の建物より中低層の建物に採用されることが多いは、適切です。



3 鉄筋コンクリート構造は、鉄筋とコンクリートのそれぞれの長所を活かすように組み合わせた構造形式であるが、施工現場において鉄筋及び型枠を組み立て、コンクリートを打つ必要があり、工業化はされていない。

X 適切でない。 鉄筋コンクリート構造でも現場以外で組み立てる「プレキャストコンクリート造」もある。
   平成23年 管理業務主任者試験 「問23」 、 平成17年 マンション管理士試験 「問41」

  鉄筋コンクリート(RC=Reinforced Concrete 補強されたコンクリート)構造は、建物の芯になる柱や梁を鉄筋で組み周りをコンクリートで覆った造りです。
 鉄筋とコンクリートを組み合せることにより、
  ・鉄筋...引張力(引っ張る力)には強いが、熱に弱く錆びやすい
  ・コンクリート...熱に強いが、引張力(引っ張る力)に弱い
 の互いの長所を活かし、短所を補う構造です。
  熱に弱い鉄筋をコンクリートで覆い、熱から鉄筋を守って酸化(錆び)を防ぎます。
 コンクリートは上から押さえつける「圧縮」に対する抵抗力はあるものの、「引張力の弱さ」があります。
 そのため、コンクリートを引張力に優れた鉄筋で補強します。

 そこで、設問の前半、「鉄筋コンクリート構造は、鉄筋とコンクリートのそれぞれの長所を活かすように組み合わせた構造形式である」は、適切です。


 

 そして、設問の後半、「施工現場において鉄筋及び型枠を組み立て、コンクリートを打つ必要があり、工業化はされていない」、ですが、鉄筋コンクリート構造の多くは、施工現場で鉄筋及び型枠を組み立て、コンクリートを打つ必要がありますが、あらかじめ専用の工場で製造し、現場へ運搬して設置する工業化したプレキャストコンクリート(Precast Concrete)工法もありますから、”工業化はされていない”は、適切ではありません。

 そこで、選択肢3は全体として、適切ではありません。


 

  なお、すべてをプレキャストコンクリート工法で造れる建築物は少ないようです。メインの柱や梁、床などは、プレキャストコンクリート工法で造り、細かな部分は、現場打ちコンクリートも併用しているようです。


4 鉄骨構造は、外力に対して粘り強い構造形式であるが、耐火被覆や防錆処理が必要となるだけでなく、鉄筋コンクリート構造に比べて揺れが大きくなりやすい。

〇 適切である。 

  鉄骨(鋼)構造(S=Steel造)とは、構造の材料に鋼などを使用して、それらを溶接や高力ボルトなどにより接合して組み立てられた構造のことで、鋼材で組み立てた主要な骨組を「鉄骨」とよび、鉄骨造、鋼構造ともいいます。
 鉄骨構造は、軽量で、外力に対して粘り強く、高層建築・大スパン(柱と柱との間の長さ)構造が可能ですが、被覆がないと火に弱く、また錆びやすい欠点があります。
 しかし、部材そのものをあらかじめ工場でつくって現場に搬入できるので、現場作業が速やかに行えます。

 マンションでは、鉄骨構造は、鉄筋コンクリート構造より、耐火性・遮音性・耐振動性が劣りますので、採用例は少ない状況です。
 
 ということで、鉄骨構造は、外力に対して粘り強い構造形式であるが、耐火被覆や防錆処理が必要となるだけでなく、鉄筋コンクリート構造に比べて揺れが大きくなりやすいは、適切です。


 
 
 鉄骨構造での主な建造物:橋やパリのエッフェル塔。


答え:3

 建物の構造とは、久し振りの出題だ。ここでは、選択肢3の「プレキャストコンクリート」を、過去問題から、知っていれば、易しいが、知らないと、かなり難しくなる。

《タグ》建物の構造 ラーメン構造 壁式構造 鉄筋コンクリート構造 プレキャストコンクリート 鉄骨構造 

問41

〔問 41〕 マンションの室内環境に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

1 建築基準法の規定による居室に設ける窓その他の開口部の採光に有効な部分の面積の算定方法は、開口部が設置されている壁面の方位により異なる。

X 適切でない。 開口部の採光に有効な部分の面積の算定方法に開口部が設置されている”壁面の方位”は入っていない。
  平成29年 管理業務主任者試験 「問18」 、平成27年 マンション管理士試験 「問20」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問20」 選択肢3 、平成17年 管理業務主任者試験 「問17」 

 まず、地上での居室の採光は、建築基準法第28条
 「(居室の採光及び換気)
 第二十八条 
住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室(居住のための居室、学校の教室、病院の病室その他これらに類するものとして政令で定めるものに限る。)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては七分の一以上、その他の建築物にあつては五分の一から十分の一までの間において政令で定める割合以上としなければならない。ただし、地階若しくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室又は温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りでない。
2 居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、二十分の一以上としなければならない。ただし、政令で定める技術的基準に従つて換気設備を設けた場合においては、この限りでない。
3 別表第一(い)欄(一)項に掲げる用途に供する特殊建築物の居室又は建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたもの(政令で定めるものを除く。)には、政令で定める技術的基準に従つて、換気設備を設けなければならない。
4 ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた二室は、前三項の規定の適用については、一室とみなす。
」 
 とあり、
 居室などには、採光が求められています。


 そして、建築基準法第28条1項での有効面積の算定方法の政令は、建築基準法施行令第20条
 「(有効面積の算定方法)
 第二十条 法第二十八条第一項に規定する居室の窓その他の開口部(以下この条において「開口部」という。)で
採光に有効な部分の面積は、当該居室の開口部ごとの面積に、それぞれ採光補正係数を乗じて得た面積を合計して算定するものとする。ただし、国土交通大臣が別に算定方法を定めた建築物の開口部については、その算定方法によることができる。
2 前項の採光補正係数は、次の各号に掲げる地域又は区域の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるところにより計算した数値(天窓にあつては当該数値に三・〇を乗じて得た数値、その外側に幅九十センチメートル以上の縁側(ぬれ縁を除く。)その他これに類するものがある開口部にあつては当該数値に〇・七を乗じて得た数値)とする。ただし、採光補正係数が三・〇を超えるときは、三・〇を限度とする。
   一 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域又は準住居地域 隣地境界線(法第八十六条第十項に規定する公告対象区域(以下「公告対象区域」という。)内の建築物にあつては、当該公告対象区域内の他の法第八十六条の二第一項に規定する一敷地内認定建築物(同条第九項の規定により一敷地内認定建築物とみなされるものを含む。以下この号において「一敷地内認定建築物」という。)又は同条第三項に規定する一敷地内許可建築物(同条第十一項又は第十二項の規定により一敷地内許可建築物とみなされるものを含む。以下この号において「一敷地内許可建築物」という。)との隣地境界線を除く。以下この号において同じ。)又は同一敷地内の他の建築物(公告対象区域内の建築物にあつては、当該公告対象区域内の他の一敷地内認定建築物又は一敷地内許可建築物を含む。以下この号において同じ。)若しくは当該建築物の他の部分に面する開口部の部分で、その開口部の直上にある建築物の各部分(開口部の直上垂直面から後退し、又は突出する部分がある場合においては、その部分を含み、半透明のひさしその他採光上支障のないひさしがある場合においては、これを除くものとする。)からその部分の面する隣地境界線(開口部が、道(都市計画区域又は準都市計画区域内においては、法第四十二条に規定する道路をいう。第百四十四条の四を除き、以下同じ。)に面する場合にあつては当該道の反対側の境界線とし、公園、広場、川その他これらに類する空地又は水面に面する場合にあつては当該公園、広場、川その他これらに類する空地又は水面の幅の二分の一だけ隣地境界線の外側にある線とする。)又は同一敷地内の他の建築物若しくは当該建築物の他の部分の対向部までの水平距離(以下この項において「水平距離」という。)を、その部分から開口部の中心までの垂直距離で除した数値のうちの最も小さい数値(以下「採光関係比率」という。)に六・〇を乗じた数値から一・四を減じて得た算定値(次のイからハまでに掲げる場合にあつては、それぞれイからハまでに定める数値)
     イ 開口部が道に面する場合であつて、当該算定値が一・〇未満となる場合 一・〇
     ロ 開口部が道に面しない場合であつて、水平距離が七メートル以上であり、かつ、当該算定値が一・〇未満となる場合 一・〇
     ハ 開口部が道に面しない場合であつて、水平距離が七メートル未満であり、かつ、当該算定値が負数となる場合 零
   二 準工業地域、工業地域又は工業専用地域 採光関係比率に八・〇を乗じた数値から一・〇を減じて得た算定値(次のイからハまでに掲げる場合にあつては、それぞれイからハまでに定める数値)
     イ 開口部が道に面する場合であつて、当該算定値が一・〇未満となる場合 一・〇
     ロ 開口部が道に面しない場合であつて、水平距離が五メートル以上であり、かつ、当該算定値が一・〇未満となる場合 一・〇
     ハ 開口部が道に面しない場合であつて、水平距離が五メートル未満であり、かつ、当該算定値が負数となる場合 零
   三 近隣商業地域、商業地域又は用途地域の指定のない区域 採光関係比率に十を乗じた数値から一・〇を減じて得た算定値(次のイからハまでに掲げる場合にあつては、それぞれイからハまでに定める数値)
     イ 開口部が道に面する場合であつて、当該算定値が一・〇未満となる場合 一・〇
     ロ 開口部が道に面しない場合であつて、水平距離が四メートル以上であり、かつ、当該算定値が一・〇未満となる場合 一・〇
     ハ 開口部が道に面しない場合であつて、水平距離が四メートル未満であり、かつ、当該算定値が負数となる場合 零」

 とあり、
 建築基準法施行令第20条1項によれば、


 採光に有効な部分の面積(有効採光面積)= 開口部面積(窓など) x 採光補正係数(用途地域ごとに採光補正係数の算定方法は異なる)

 また、採光に有効な部分の面積 は建築基準法第28条1項により、その居室の床面積に対して、住宅にあつては七分の一以上 必要となります。

 

 ということで、居室に設ける窓その他の開口部の採光に有効な部分の面積の算定方法においては、開口部が設置されている”壁面の方位”は、計算式に入っていませんから、適切ではありません。

 具体的には、
 S=居室の床面積
 W=開口部(窓)の面積
 k=最少採光床必要限度(住宅なら 1/7)
 
  W≧k・S です。

 なお、 
 ★居室とは、建築基準法第2条四号によると、「居室(とは)  居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。」とあります。
 具体的には、居間、ダイニング、キッチン、寝室、子供部屋、応接室、書斎等 継続的に使用する部屋で人が継続的に使用するので採光・換気その他環境衛生についての決まりがあります。
  玄関、廊下や階段は居室ではありません。便所、浴室も利用時間が一時的なので居室ではありません。
 ★居室に求められる室内居住環境...良好な室内居住環境を実現するために、採光、換気、防湿、遮音、温度調整、有害な化学物質の規制があります。
 ★換気も必要です。...室内で人が呼吸をすると、酸素を消費し二酸化炭素が排出され空気が汚染されます。そこで、この規定があります。
  また、台所のガスコンロなどの燃焼器具からの排ガスは人体に有害です。トイレの臭気も室内にこもると嫌な気分になりますので、屋外に排出します。



2 低放射複層ガラス(Low-E複層ガラス)は中空層側のガラス面に特殊な金属膜をコーティングしたものであるが、金属膜を屋外側ガラスにコーティングした場合と室内側ガラスにコーティングした場合とでは、室内環境に及ぼす効果が異なる。

〇 適切である。
  平成21年 マンション管理士試験 「問40」 

 まず、熱の移動には、
  ①伝導...壁や窓ガラス等の物質が熱を運ぶ
  ②対流...空気や液体などの流体が熱を運ぶ
  
③放射(輻射)...遠赤外線などの熱線によって熱が四方八方へ広がる
 があります。
 この熱の移動によって、冷暖房効果の低下や、結露の発生が起こります。
 窓ガラスは、特に熱を伝えやすいもので、断熱効果を弱くしています。

 
 そこで1枚ガラスが発展して、断熱効果を高める「複層ガラス(ペアガラス)」が生まれました。
 複層ガラスは、スペーサーと呼ばれる金属部材で、3mm程度の2枚のガラスの間に6mm程度の中空層を持たせたガラスです。2枚のガラスの間に薄く空気層を挟み込むことによって断熱性能が向上し、結露などを減少させます。スペーサーを用いて保たれた中空層には、水を含まない乾燥空気やアルゴンガスを封入してあります。


 この複層ガラスがさらに進化したのが、低放射複層ガラスです。

 低放射複層ガラス(Low-E複層ガラス、Low-E=Low Emissivity(低放射))とは、低放射性能を持つ銀・酸化スズなどの特殊金属膜を中空層のガラス面にコーティングしたもので、
ガラス表面の熱放射率を下げて、熱の移動を抑制しています
 そこで、Low-E複層ガラスには、以下の2つのタイプがあります。
  
①室内側の空気層側のガラスに特殊金属膜をコーティングするもの(断熱タイプ)
    屋外からくる太陽熱を通過させながらも室内の熱を鏡のように反射しますので、一旦取り入れた熱を外に逃がさない。
  
②屋外側の空気層側のガラスに特殊金属膜をコーティングするもの(遮熱タイプ)
   夏には太陽光を大幅に(約50%以上)カットし、室内の冷房効果を高め、冬は、特殊金属膜が室内の熱を外へ逃がさない。

 Low-Eガラスは、熱の伝わり方の中で最も厄介な放射を押さえ、複層ガラスにすることによってより効果的になります。


  

  これらを踏まえ、設問をみますと、前半の「低放射複層ガラス(Low-E複層ガラス)は中空層側のガラス面に特殊な金属膜をコーティングしたものである」は、適切です。

 そして、後半の「金属膜を屋外側ガラスにコーティングした場合と室内側ガラスにコーティングした場合とでは、室内環境に及ぼす効果が異なる」も、適切です。

 そこで、選択肢2は、全体として適切です。


 

 簡単に言うと、Low-Eガラスを設置した側からの熱の放射を低減する性質があるので、暑い地域で窓に直接日射があるなら太陽熱の侵入を防ぐ「断熱(遮断)低放射複層ガラス」を、また寒冷地であれば室内の暖房の熱を外に逃がさない「遮熱低放射複層ガラス」を使うのが基本のようです。

 なお、空気層の両側にLow-E 金属膜を設けても、効果は倍増しないようです。



3 遮音対策としては、共用廊下やエレベーター、設備配管からの騒音にも配慮する必要がある。

〇 適切である。
  遮音からの出題も多い。
  平成27年 マンション管理士試験 「問40」 、 成21年 マンション管理士試験 「問42」 平成21年管理業務主任者試験 「問23」  平成18年マンション管理士試験 「問42」  ,平成16年 マンション管理士試験 「問38」 ,、 平成15年マンション管理士試験 「問40」 

  マンションでは、各住戸が壁や床を介して接しているため、上下間や隣戸間の遮音対策も必要ですが、共用部分である廊下、階段、エレベーター、設備配管からの騒音にも配慮する必要がありますから、適切です。



4 壁下地材などの内装材として使用されているせっこうボードは、防火性だけではなく遮音性を有している。

〇 適切である。
 石膏ボードは、水と反応するとすぐに固まる焼きせっこうをしん材とし両面を原紙で被覆し板状に固くした建築用内装材料です。
 その特徴としては、防火・耐火性、遮音性、変形しない寸法安定性、切断や釘打ちなど工事の容易性等があります。また、経済性にも優れていることから「なくてはならない建材」として建築物の壁、天井などに広く用いられていますから、適切です。


 

 また、建材だけでなく、医療用としてギブスや歯科用として歯型にも使われています。

 以下は、「マンション管理士 香川事務所」が無料で提供しています、「要約 建築基準法」第2条 の、「不燃材料」 からの転載です。

 ★せっこうボードの特徴
 ◎火に強い...せっこうボードの芯材は無機質のせっこうですので、燃えることはありません。せっこうには、約21%の結晶水が安定した形で含まれています。これは、ボード1枚に、1升ビン約1本分の水を含んでいる計算になります。火災時にせっこうボードが高温にさらされるとこの結晶水が熱分解し、水蒸気となって徐々に放出され、温度の上昇を遅らせる働きをします。また、せっこうそのものが、伝熱を防止するバリアの役割を果たします。
 ◎音を通しにくい...せっこうボードには音を通しにくい性質があります。 せっこうボードを1枚で用いるほか、 厚手品の使用や複数枚の重ね張り、さらには吸音材との併用により、たいへん優れた遮音性能を得ることができます。
アパートの住戸間の界壁や、ホテル・病院の壁など、 プライバシーや静けさが要求される場所でもよく使われています。
 ◎ 気密性・断熱性が得られる ...せっこうボードは、十分な気密性を持った材料ですが、建物の下地材や仕上げ材として使ったときの目地や隅・角などの継ぎ目の部分でも専用の材料や部品を用いてすき間なく処理することができ、気密性が保たれます。
さらに断熱材と複合使用することにより、優れた断熱効果が得られ、暖房や冷房の効果を最大限に発揮することができます。
 ◎狂わない ...せっこうボードは、 温度や湿度の変化に影響されず、 伸び縮みや歪みがほとんどありません。したがって、 高い精度の施工が可能ですし、また長期間の使用に際しても狂いが出てくることがありません。
さらに、せっこうボードの狂わない性質が、建物の気密性や遮音性能を十分に発揮しています。



答え:1

 選択肢1の採光計算で「壁面の方位」は、難しいか?
 過去問題から、消去法で選ぶ?

 ここも、丁寧に解説をしたので、時間がかかる!

《タグ》建築基準法 採光に有効な部分の面積(有効採光面積)= 開口部面積(窓など) x 採光補正係数(用途地域ごとに採光補正係数の算定方法は異なる) 低放射複層ガラス(Low-E複層ガラス) 遮音対策 石膏ボード

問42

〔問 42〕 建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(平成27 年法律第53 号)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 建築主は、既存の住宅専用マンションにおいても、増築又は改築に係る部分の床面積の合計が300 m2 以上となる場合は、その建築物のエネルギー消費性能の確保のための構造及び設備に関する計画を、所管行政庁に届け出なければならない。

〇 正しい。 既存であっても、増築又は改築に係る部分の床面積が、300㎡以上なら、届出が必要。
 平成28年 マンション管理士試験 「問42」

 去年(平成28年)は、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」からは、サラット選択肢が1つだけの出題であったのが、今年(平成29年)は、「問42」の全体を使っているので、今後を考えて、細かく説明します。
 
 *「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」の制定まで
  1970年代における原油の高騰(石油ショック オイル・ショック)の反省から、燃料、熱、電気等のエネルギーを効率的に使用することが求められ、昭和54年(1979年)に「エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)」が制定されました。この法律は、その後も改正があり、地球の温暖化対策にも貢献し、産業部門や運輸部門ではそれなりに、成果を出しています。
 しかし、平成23年(2011年)に発生した東日本大震災及び福島の東京電力原子力発電所の事故により、日本の原子力発電所が停止したことをうけ、石油、天然ガス、石炭などの消費が増大し、これでは、2015年にパリで開催されたCOP21(Conference of Parties 気候変動枠組条約締約国会議)で約束した、2030年までに、2013年よりも 
温室効果ガス(二酸化炭素など)の排出を マイナス26% とする目標の達成が困難視されています。
 そこで、国内でも、産業部門、運輸部門の他、1/3を占め、省エネ化が進んでいない建築物部門に、更なる省エネルギー対策をするために、省エネ法のほとんどを廃止し、新しく「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」を平成27年7月に公布し、性能向上計画認定等の「誘導措置」は平成28年4月1日より施行され、平成29年4月1日から「規制措置」も施行されました。


 *「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」の概要
  「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律」の概要です。
  ①
規制措置...対象となる建築物
    ・床面積 300㎡未満(小規模)では、努力義務。
    ・床面積 300㎡以上の
      1.住宅  床面積 300㎡以上(中規模)の新築、増改築...届出義務
      2.非住宅
       ア.床面積 300㎡以上(中規模)の新築、増改築...届出義務
       イ.床面積 2,000㎡以上(大規模 特定建築物)の新築、増改築...届出義務 プラス 適合義務

     ここでの届出義務で、基準に適合せず、必要と認める場合、 行政庁は指示・命令等ができる。

   ②
誘導措置...対象となる建築物
   既存も含め、全ての建築物の新築、増改築、修繕、模様替え、空気調和設備等の改修。規模に関係しない。
   内容は、  
   1.省エネ基準適合認定表示制度(所管行政庁から認定を受ける)
   2.誘導基準適合建築物の容積率の特例(性能向上計画認定制度)...延べ面積の1/10が限度で容積率に不算入。


 

  また、省エネ基準には、
  ①外皮(屋根、天井、外壁、窓)の熱の損失を防ぐ。エネルギー消費を削減する。
  ②一次エネルギー消費量...暖房設備、換気設備、照明設備、給湯設備、家電など
  があります。


 

 具体的には、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律第11条
 「(特定建築物の建築主の基準適合義務)
 第十一条 建築主は、特定建築行為(
特定建築物(居住のために継続的に使用する室その他の政令で定める建築物の部分(以下「住宅部分」という。)以外の建築物の部分(以下「非住宅部分」という。)の規模がエネルギー消費性能の確保を特に図る必要がある大規模なものとして政令で定める規模(注:床面積 2,000㎡)以上である建築物をいう。以下同じ。)の新築若しくは増築若しくは改築(非住宅部分の増築又は改築の規模が政令で定める規模(注:床面積 300㎡)以上であるものに限る。)又は特定建築物以外の建築物の増築(非住宅部分の増築の規模が政令で定める規模(注:床面積 300㎡)以上であるものであって、当該建築物が増築後において特定建築物となる場合に限る。)をいう。以下同じ。)をしようとするときは、当該特定建築物(非住宅部分に限る。)を建築物エネルギー消費性能基準に適合させなければならない
2 
前項の規定は、建築基準法第六条第一項に規定する建築基準関係規定とみなす。
 とあり、
 文中の「政令で定める規模以上である建築物」は、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律施行令第4条
 「(特定建築物の非住宅部分の規模等)
 第四条 法第十一条第一項のエネルギー消費性能の確保を特に図る必要がある大規模なものとして政令で定める規模は、床面積(内部に間仕切壁又は戸を有しない階又はその一部であって、その床面積に対する常時外気に開放された開口部の面積の合計の割合が二十分の一以上であるものの床面積を除く。第十三条を除き、以下同じ。)の合計が
二千平方メートルであることとする。
2 法第十一条第一項の政令で定める特定建築物の非住宅部分の増築又は改築の規模は、当該増築又は改築に係る部分の床面積の合計が
三百平方メートルであることとする。
3 法第十一条第一項の政令で定める特定建築物以外の建築物の非住宅部分の増築の規模は、当該増築に係る部分の床面積の合計が
三百平方メートルであることとする。」
 
 また、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律第12条
 「(建築物エネルギー消費性能適合性判定)
 第十二条 建築主は、特定建築行為をしようとするときは、その工事に着手する前に、
建築物エネルギー消費性能確保計画(特定建築行為に係る特定建築物のエネルギー消費性能の確保のための構造及び設備に関する計画をいう。以下同じ。)を提出して所管行政庁の建築物エネルギー消費性能適合性判定(建築物エネルギー消費性能確保計画(非住宅部分に係る部分に限る。第五項及び第六項において同じ。)が建築物エネルギー消費性能基準に適合するかどうかの判定をいう。以下同じ。)を受けなければならない
2 建築主は、前項の建築物エネルギー消費性能適合性判定を受けた建築物エネルギー消費性能確保計画の変更(国土交通省令で定める軽微な変更を除く。)をして特定建築行為をしようとするときは、その工事に着手する前に、その変更後の建築物エネルギー消費性能確保計画を所管行政庁に提出しなければならない。この場合において、当該変更が非住宅部分に係る部分の変更を含むものであるときは、所管行政庁の建築物エネルギー消費性能適合性判定を受けなければならない。
3 所管行政庁は、前二項の規定による建築物エネルギー消費性能確保計画の提出を受けた場合においては、その提出を受けた日から十四日以内に、当該提出に係る建築物エネルギー消費性能適合性判定の結果を記載した通知書を当該提出者に交付しなければならない。
4 所管行政庁は、前項の場合において、同項の期間内に当該提出者に同項の通知書を交付することができない合理的な理由があるときは、二十八日の範囲内において、同項の期間を延長することができる。この場合においては、その旨及びその延長する期間並びにその期間を延長する理由を記載した通知書を同項の期間内に当該提出者に交付しなければならない。
5 所管行政庁は、第三項の場合において、建築物エネルギー消費性能確保計画の記載によっては当該建築物エネルギー消費性能確保計画が建築物エネルギー消費性能基準に適合するかどうかを決定することができない正当な理由があるときは、その旨及びその理由を記載した通知書を同項の期間(前項の規定によりその期間を延長した場合にあっては、当該延長後の期間)内に当該提出者に交付しなければならない。
6 建築主は、第三項の規定により交付を受けた通知書が適合判定通知書(当該建築物エネルギー消費性能確保計画が建築物エネルギー消費性能基準に適合するものであると判定された旨が記載された通知書をいう。以下同じ。)である場合においては、当該特定建築行為に係る建築基準法第六条第一項又は第六条の二第一項の規定による確認をする建築主事又は指定確認検査機関(同法第七十七条の二十一第一項に規定する指定確認検査機関をいう。第八項において同じ。)に、当該適合判定通知書又はその写しを提出しなければならない。ただし、当該特定建築行為に係る建築物の計画(同法第六条第一項又は第六条の二第一項の規定による確認の申請に係る建築物の計画をいう。次項及び第八項において同じ。)について同法第六条第七項又は第六条の二第四項の通知書の交付を受けた場合は、この限りでない。
7 建築主は、前項の場合において、特定建築行為に係る建築物の計画が建築基準法第六条第一項の規定による建築主事の確認に係るものであるときは、同条第四項の期間(同条第六項の規定によりその期間が延長された場合にあっては、当該延長後の期間)の末日の三日前までに、前項の適合判定通知書又はその写しを当該建築主事に提出しなければならない。
8 建築主事は、建築基準法第六条第一項の規定による確認の申請書を受理した場合において、指定確認検査機関は、同法第六条の二第一項の規定による確認の申請を受けた場合において、建築物の計画が特定建築行為に係るものであるときは、建築主から第六項の適合判定通知書又はその写しの提出を受けた場合に限り、同法第六条第一項又は第六条の二第一項の規定による確認をすることができる。
9 建築物エネルギー消費性能確保計画に関する書類及び第三項から第五項までの通知書の様式は、国土交通省令で定める。」


 他に、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律
 「(建築物エネルギー消費性能向上計画の認定基準等)
 第三十条 所管行政庁は、前条第一項の規定による認定の申請があった場合において、当該申請に係る建築物エネルギー消費性能向上計画が次に掲げる基準に適合すると認めるときは、その
認定をすることができる
   一 当該申請に係る建築物のエネルギー消費性能が、建築物エネルギー消費性能基準を超え、かつ、建築物のエネルギー消費性能の向上の一層の促進のために誘導すべき経済産業省令・国土交通省令で定める基準に適合するものであること。
   二 建築物エネルギー消費性能向上計画に記載された事項が基本方針に照らして適切なものであること。
   三 前条第二項第三号の資金計画がエネルギー消費性能の向上のための建築物の新築等を確実に遂行するため適切なものであること。
2 前条第一項の規定による認定の申請をする者は、所管行政庁に対し、当該所管行政庁が当該申請に係る建築物エネルギー消費性能向上計画を建築主事に通知し、当該建築物エネルギー消費性能向上計画が建築基準法第六条第一項に規定する建築基準関係規定に適合するかどうかの審査を受けるよう申し出ることができる。この場合においては、当該申請に併せて、同項の規定による確認の申請書を提出しなければならない。
3 前項の規定による申出を受けた所管行政庁は、速やかに、当該申出に係る建築物エネルギー消費性能向上計画を建築主事に通知しなければならない。
4 建築基準法第十八条第三項及び第十四項の規定は、建築主事が前項の規定による通知を受けた場合について準用する。
5 所管行政庁が、前項において準用する建築基準法第十八条第三項の規定による確認済証の交付を受けた場合において、第一項の認定をしたときは、当該認定を受けた建築物エネルギー消費性能向上計画は、同法第六条第一項の確認済証の交付があったものとみなす。
6 所管行政庁は、第四項において準用する建築基準法第十八条第十四項の規定による通知書の交付を受けた場合においては、第一項の認定をしてはならない。
7 建築基準法第十二条第八項及び第九項並びに第九十三条から第九十三条の三までの規定は、第四項において準用する同法第十八条第三項及び第十四項の規定による確認済証及び通知書の交付について準用する。
8 エネルギー消費性能の向上のための建築物の新築等をしようとする者がその建築物エネルギー消費性能向上計画について第一項の認定を受けたときは、当該エネルギー消費性能の向上のための建築物の新築等のうち、第十二条第一項の建築物エネルギー消費性能適合性判定を受けなければならないものについては、第二項の規定による申出があった場合を除き、同条第三項の規定により適合判定通知書の交付を受けたものとみなして、同条第六項から第八項までの規定を適用する。
9 エネルギー消費性能の向上のための建築物の新築等をしようとする者がその建築物エネルギー消費性能向上計画について第一項の認定を受けたときは、当該エネルギー消費性能の向上のための建築物の新築等のうち、第十九条第一項の規定による届出をしなければならないものについては、同項の規定による届出をしたものとみなす。この場合においては、同条第二項及び第三項の規定は、適用しない。

 もあります。


 
 そこで、設問は、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律第19条
 「(建築物の建築に関する届出等)
 第十九条 
建築主は、次に掲げる行為をしようとするときは、その工事に着手する日の二十一日前までに、国土交通省令で定めるところにより、当該行為に係る建築物のエネルギー消費性能の確保のための構造及び設備に関する計画を所管行政庁に届け出なければならない。その変更(国土交通省令で定める軽微な変更を除く。)をしようとするときも、同様とする。
   一 特定建築物(注:非住宅で 床面積 2,000㎡以上の物)以外の建築物の新築であってエネルギー消費性能の確保を図る必要があるものとして政令で定める規模(注:床面積 300㎡)以上のもの
   
二 建築物の増築又は改築であってエネルギー消費性能の確保を図る必要があるものとして政令で定める規模(注:床面積 300㎡)以上のもの(特定建築行為に該当するものを除く。)
2 所管行政庁は、前項の規定による届出があった場合において、その届出に係る計画が建築物エネルギー消費性能基準に適合せず、当該建築物のエネルギー消費性能の確保のため必要があると認めるときは、その届出を受理した日から二十一日以内に限り、その届出をした者に対し、その届出に係る計画の変更その他必要な措置をとるべきことを指示することができる。
3 所管行政庁は、前項の規定による指示を受けた者が、正当な理由がなくてその指示に係る措置をとらなかったときは、その者に対し、相当の期限を定めて、その指示に係る措置をとるべきことを命ずることができる。

 とあり、
 政令で定める規模以上のものは、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律施行令第8条
 「(所管行政庁への届出の対象となる建築物の建築の規模)
 第八条 法第十九条第一項第一号の政令で定める規模は、新築に係る特定建築物以外の建築物の床面積の合計が三百平方メートルであることとする。
2 法第十九条第一項第二号の政令で定める規模は、増築又は改築に係る部分の床面積の合計が
三百平方メートルであることとする。」
 ですから、
 建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律第19条1項2号により、建築主は、既存の住宅専用マンションにおいても、増築又は改築に係る部分の床面積の合計が300 m2 以上となる場合は、その建築物のエネルギー消費性能の確保のための構造及び設備に関する計画を、所管行政庁に届け出なければならないは、正しい。



2 建築主には、新築、増築、改築、修繕若しくは模様替又は空気調和設備等の設置若しくは改修をしようとする建築物について、エネルギー消費性能の向上を図る努力義務が課せられている。

〇 正しい。 努力義務は、全建築物に課せられている。
 
  設問は、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律第6条
 「(建築主等の努力) 
 第六条 
建築主は、その建築等(建築物の新築、増築若しくは改築(以下「建築」という。)、建築物の修繕若しくは模様替又は建築物への空気調和設備等の設置若しくは建築物に設けた空気調和設備等の改修をいう。)をしようとする建築物について、建築物の所有者、管理者又は占有者は、その所有し、管理し、又は占有する建築物について、エネルギー消費性能の向上を図るよう努めなければならない
2 住宅の建築を業として行う建築主(以下「住宅事業建築主」という。)は、前項に定めるもののほか、その新築する一戸建ての住宅を第二十七条第一項に規定する基準に適合させるよう努めなければならない。

 とあり、
 建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律第6条1項によれば、建築主には、新築、増築、改築、修繕若しくは模様替又は空気調和設備等の設置若しくは改修をしようとする建築物について、エネルギー消費性能の向上を図る努力義務が課せられているは、正しい。



3 既存建築物の所有者は、エネルギー消費性能の向上のための修繕、模様替等をしなくても、所管行政庁に対し、当該建築物について建築物エネルギー消費性能基準に適合している旨の認定を申請することができる。

〇 正しい。 既存建築物でも、建築物エネルギー消費性能基準に適合している旨の認定の申請はできる。

 既存の建築物でも、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律第36条
 「(建築物のエネルギー消費性能に係る認定)
 第三十六条 
建築物の所有者は、国土交通省令で定めるところにより、所管行政庁に対し、当該建築物について建築物エネルギー消費性能基準に適合している旨の認定を申請することができる。
2 所管行政庁は、前項の規定による認定の申請があった場合において、当該申請に係る建築物が建築物エネルギー消費性能基準に適合していると認めるときは、その旨の認定をすることができる。
3 前項の認定を受けた者は、当該認定を受けた建築物(以下「基準適合認定建築物」という。)、その敷地又はその利用に関する広告その他の国土交通省令で定めるもの(次項において「広告等」という。)に、国土交通省令で定めるところにより、当該基準適合認定建築物が当該認定を受けている旨の表示を付することができる。
4 何人も、前項の規定による場合を除くほか、建築物、その敷地又はその利用に関する広告等に、同項の表示又はこれと紛らわしい表示を付してはならない。

 とあり、
 建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律第36条1項によれば、既存建築物の所有者であっても、エネルギー消費性能の向上のための修繕、模様替等をしなくても、所管行政庁に対し、当該建築物について建築物エネルギー消費性能基準に適合している旨の認定を申請することができますから、正しい。 
 
 認定に適合すると、以下のマークがもらえます。


 

  なお、認定表示は建築物全体で行うこととなるため、例えばマンションなど共同住宅における特定の住戸の部分(各室)のみや、テナント部分のみなどで認定表示をすることはできません。


4 建築物エネルギー消費性能基準に適合する建築物を新築する場合、当該建築物について、建築基準法による容積率制限及び高さ制限の特例が適用される。

X 誤っている。 容積率制限の特例はあるが、高さ制限の特例はない。
 
 設問は、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律第35条
 「(認定建築物エネルギー消費性能向上計画に係る建築物の容積率の特例)
 第三十五条 建築基準法第五十二条第一項、第二項、第七項、第十二項及び第十四項、第五十七条の二第三項第二号、第五十七条の三第二項、第五十九条第一項及び第三項、第五十九条の二第一項、第六十条第一項、第六十条の二第一項及び第四項、第六十八条の三第一項、第六十八条の四、第六十八条の五(第二号イを除く。)、第六十八条の五の二(第二号イを除く。)、第六十八条の五の三第一項(第一号ロを除く。)、第六十八条の五の四(第一号ロを除く。)、第六十八条の五の五第一項第一号ロ、第六十八条の八、第六十八条の九第一項、第八十六条第三項及び第四項、第八十六条の二第二項及び第三項、第八十六条の五第三項並びに第八十六条の六第一項に規定する建築物の容積率(同法第五十九条第一項、第六十条の二第一項及び第六十八条の九第一項に規定するものについては、
これらの規定に規定する建築物の容積率の最高限度に係る場合に限る。)の算定の基礎となる延べ面積には、同法第五十二条第三項及び第六項に定めるもののほか、認定建築物エネルギー消費性能向上計画に係る建築物の床面積のうち、第三十条第一項第一号に掲げる基準に適合させるための措置をとることにより通常の建築物の床面積を超えることとなる場合における政令で定める床面積は、算入しないものとする。
 とあり、
 政令は、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律施行令第13条
 「(認定建築物エネルギー消費性能向上計画に係る建築物の容積率の特例に係る床面積)
 第十三条 法第三十五条の政令で定める床面積は、認定建築物エネルギー消費性能向上計画に係る建築物の床面積のうち通常の建築物の床面積を超えることとなるものとして国土交通大臣が定めるもの(当該床面積が当該建築物の延べ面積の十分の一を超える場合においては、当該
建築物の延べ面積の十分の一)とする。」

 とあり、
 建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律第35条と同施行令第13条によれば、特例は、容積率において、当該建築物の延べ面積の十分の一を限度に、床面積に不算入とあるだけで、高さ制限の特例の適用はありませんから、建築物エネルギー消費性能基準に適合する建築物を新築する場合、当該建築物について、建築基準法による容積率制限”
及び高さ制限”の特例が適用されるは、誤りです。


答え:4

 建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律からの出題とは、難しい。

 建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律の概要から作成していて、解説の途中で、ファイルが壊れてしまい、また「問40」からの再作成で、ほぼ、2日間(10時間程度)かかった。まったく、解説が厭になる。

 選択肢4は、建築基準法で他の特例を知っていれば、「容積率だけ」と分かったかも。

《タグ》建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律 300㎡ 届出義務 2,000㎡以上 適合義務 認定証 容積率の特例

問43

〔問 43〕 マンションの給水設備に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

1 さや管ヘッダー工法では、専有部分に設置する配管として耐衝撃性及び耐食性に優れた水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管を使用する。

X 適切でない。 柔らかい架橋ポリエチレン管やプリブテン管など軟質鋼管を使用する。水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管では、固すぎる。
 平成26年 マンション管理士試験 「問43」 、平成25年 マンション管理士試験 「問45」 、 平成22年マンション管理士試験 「問43」、 平成22年管理業務主任者試験 「問24」 、 平成17年 マンション管理士試験 「問44」 

 さや管ヘッダー方式とは、施工時にあらかじめ樹脂製の刀のさやのように、中身を保護するためにかぶせる”さや管(CD管)”を敷設し、あとでそのさや内に軟質の管材(架橋ポリエチレン管やプリブテン管など軟質鋼管)の給水管を差し込んで給湯器と浴室のシャワーや台所の温水栓と結びつけますから、固い水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管を使用するは、適切ではありません。

 従来工法の給湯機から一本の給湯配管が伸びて、途中で台所や浴室に分岐する工法とは異なり、さや管ヘッダー方式は、ヘッダー(一本の配管と多数の配管を分岐・合流させる装置)を給湯器やパイプシャフト周辺に設け、予めヘッダーから各給水栓までタコ足状に敷設したサヤ管(中に給湯管を通すための管)に、後から樹脂管を通管する工法をいいます。「ヘッダー」で分岐するため、在来工法に比べて、複数の水栓を同時使用したときの流量変動が小さいという特徴があります。
 曲がりの多いさや管ヘッダー方式では、耐熱、耐寒、耐食性に優れた水道用架橋ポリエチレン管や水道用ポリブテン管が使用されます。
 なお、架橋ポリエチレン管とは、熱可塑性プラスチックとしての鎖状構造ポリエチレンの分子どうしのところどころを結合させ、立体の網目構造にした超高分子量ポリエチレンをいいます。従って、架橋反応が終了した時点で、ポリエチレンはあたかも熱硬化性樹脂のような立体網目構造となり、耐熱性、クリープ性能(プラスチックが時間によって変形する現象)とも向上するのです。


 

 


2 水道直結増圧方式では、水道本管(配水管)が負圧になったときに、水道本管へ建物内の水が逆流しないように逆流防止装置を設ける。

〇 適切である。 水道直結増圧方式では、水道本管へ建物内の水が逆流しないように逆流防止装置を設ける。

 平成28年 マンション管理士試験 「問43」 、  平成22年 管理業務主任者試験 「問23」 平成22年 マンション管理士試験 「問43」  平成21年 マンション管理士試験 「問43」 、平成19年 マンション管理士試験 「問45」 

  まず、給水の方式は、大きく分けると、以下の3つになります。
   (1)配水管からの水圧で給水する直圧直結給水方式
   (2)増圧ポンプにより給水する増圧直結給水方式
   (3)受水タンクに貯めて給水する受水タンク方式


  

 そこで、水道直結増圧方式(=増圧直結給水方式)では、水道本管(配水管)が負圧(マイナス圧)になると、水道本管へ建物内の水が逆流し、水道水が汚染されますから、逆流防止装置を設けるのは、適切です。


3 ポンプ直送方式では、水道本管(配水管)から引き込んだ水を一度受水槽に貯水した後、加圧(給水)ポンプで加圧した水を各住戸に供給するため、高置水槽は不要である。

〇 適切である。 ポンプ直送方式では、高置水槽は不要。

 ポンプ直送方式とは、一度、受水槽に貯めたのちに、ポンプで圧力をかけて各住戸に給水する方式で、この方式でも受水槽は使いますが、高置水槽は不要ですから、適切です。
 大規模な団地や高層マンションで利用されます。


 


4 水栓を閉める際に生じるウォーターハンマーの防止策として、給水管内の流速を1.5~2.0m/s とすることが有効である。

〇 適切である。 ウォーターハンマーの防止策として、給水管内の流速を1.5~2.0m/s とする。

 平成26年 マンション管理士試験 「問43」 、平成24年マンション管理士試験 「問43」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問43」 

  ウォーターハンマー(水撃)現象とは、水圧管内水流を急に締め切ったときに、水流の慣性で管内に衝撃・振動水圧が発生する現象です。現象自体は水に限らず液体全般で生じます。この現象を防止するには、給水管内の流速は、1.5~2.0m/S以内に抑え、ウォーターハンマー防止装置を水栓などの近くに設置しますから、適切です。

 キッチン、浴室、洗面所等で「ドン!」、「ガン!」、「コン!」あるいは「ゴン!」、「パシッ!」、と聞こえる「原因不明の異音や衝撃音」の経験はありませんか。また、原因不明の漏水や、シャワーの温度が急に変化したり、給湯器のセンサーが破損し修理を依頼されたことはありませんか。
 これらは全てウォーターハンマー(水撃)現象により発生する音や現象で、シングルレバー水栓器具や大型全自動洗濯機、食器洗浄器等の快適さや利便性を追求した水・湯の急閉止を伴う水栓器具や電磁弁を内蔵した家電製品が急速に普及したことが原因として上げられます。更に近年、建築物の高層化、高台への建築、3階建て住宅の普及、住居密度の増加等により、各自治体は給水圧力・給水量を増やさざるを得なくなりつつあり、今後ますます増加する問題です。



答え:1

 過去問題をやっていれば、超 易しい。 理論から憶えること。

《タグ》給水設備 さや管ヘッダー方式 架橋ポリエチレン管やプリブテン管など軟質鋼管 水道直結増圧方式 ポンプ直送方式 ウォーターハンマー現象

問44

〔問 44〕 マンションの設備に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

1 飲料用の受水槽の有効容量は、一般にマンション全体の一日の使用水量の2分の1程度に計画する。

〇 適切である。 飲料用の受水槽の有効容量は、マンション全体の一日の使用水量の2分の1程度にする。
  平成27年 管理業務主任者試験 「問21」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問43」 、 平成19年 マンション管理士試験 「問45」 など

  受水槽の有効容量は、1日予想給水量の1/2程度が望ましく適切です。
 どうして、水槽の有効容量は、1日予想給水量の1/2程度が望ましいのでしょうか。
 1/2では、みんなが使用すると不足しますよね。
 それが、良いのです。水道水を余分に蓄えていると、汚染しやすくなりますから、1/2程度にして汚染を防ぎます。
 

 

 なお、居住者1人当たりの1日の使用水量は、200リットル~350リットルが目安です。


2 屋内消火栓設備の広範囲型2号消火栓は、火災時に、一人でも操作ができる。

〇 適切である。 2号消火栓なら、一人でも操作できる。 
  平成28年 マンション管理士試験 「問23」 、平成19年 マンション管理士試験 「問44」 、平成17年 マンション管理士試験 「問45」 


 屋内消火栓設備は、主に初期消火活動を居住者が操作することによって火災を消火する設備であり、水源、加圧送水装置(消火ポンプ)、起動装置、屋内消火栓(開閉弁、ホース、ノズル等)、配管・弁類及び非常電源等から構成されています。
屋内消火栓の種類には、放水圧力、放水量及び操作性によって、1号消火栓、易操作性1号消火栓及び2号消火栓に区分され、設置する防火対象物及び水平距離が定められています。
 1号は、筒先(ノズル)で毎分130リットル、0.17Mpaの放水性能を有する物で、半径25メートルの円で防火対象物をカバーしなければなりません。その為、殆どの物は口径40mm、15mのホース2本で構成されています。ノズルの口径は13mm(1/2in)で、2人以上で操作します。 
 2号は、筒先で毎分60リットル、0.25Mpaの放水性能を有する物で、半径15mの円で防火対象物をカバーしなければなりません。また、ホースは保形ホースといわれる水道ホースの様なもので、口径25mmの物が用いられ、消火栓を開く等の動作で自動的にポンプが起動する方式の物です。特に病院等の就寝施設で、一人でも有効に消火活動が行える様に考えられたのがこの消火栓です。 但し、放水性能が落ちる為に2号消火栓は(a)工場又は作業所、(b)倉庫、(c) 指定可燃物(可燃性液体類に係るものを除く。)を貯蔵し、又は取り扱うものには設置できません。
 2号消火栓は1人でも操作できますので、適切です。なお、放水量は1号消火栓より少ない。


 


3 逆わんトラップは、清掃が容易にできるため、台所流しの排水口に設置する。

X 適切でない。 逆わんトラップは、ユニットバスルームの床排水や洗濯機からの排水を受ける防水パンに用いられる。台所流しの排水口ではない。

 平成24年 マンション管理士試験 「問44」 

 トラップ(わな)の目的は、トラップ内に水(封水)を溜めて、排水管から臭いや害虫が室内に侵入しないようにします。その封水の深さは、50mm以上100mm以内と決められています。
 そこで、逆わん(型)トラップとは、椀(わん)型トラップのわんを逆さにした形状のもので、ユニットバスルームの床排水や洗濯機からの排水を受ける防水パンに用いられていますから、台所流しの排水口に設置するは、適切ではありません。
 なお、逆わんトラップは、清掃が容易にできます? (何と比べてかは、分かりませんが)

 また、台所の流しでは、通常、「わんトラップ」を設置します。
 これら「わん型」「逆わん型」の違いは、一度、台所と洗濯機の排水口の掃除をすると、すぐ分かります。
 逆わん型は、床下で横方向に排水管に接続する場合に用いられます。

 
  




4 地震時のエレベーター内への閉じ込めの防止策の一つとして、初期微動(P波)を検知して運転を制御する地震時等管制運転装置を設置する。

〇 適切である。 地震時等管制運転装置は、初期微動(P波)を検知する。
  平成29年 管理業務主任者試験 「問20」 、 平成28年 マンション管理士試験 「問45」 、平成28年 管理業務主任者試験 「問19」 、 平成27年 管理業務主任者試験 「問24」 

 地震時管制運転装置は一定の強さの揺れを感知したら、最寄り階で着床し、閉じ込めを抑止します。
 その仕組みは、まず、地震動には
初期微動(P波=Primary wave)と大きな地震波である主要動(S波=Secondary wave(第二波))があります。
 それぞれに地震加速度の設定値(加速度の単位:ガル Gal=1cm/秒)が定められており、さらに建物の高さ等により設定値は異なります。
 標準型エレベーターの場合、初期微動のP波感知器は2.5Gal、主要動のS波感知器は80Gal(およそ震度5弱以上の揺れ)で設定しており、これを感知すると地震時管制運転に移行します。
 地震はまず、初期微動であるP波から伝わり、その後、破壊力のある本震(S波)が到達します。このP波をいち早くキャッチすることで、大きな揺れが到達する前に、利用者を最寄階へと避難させることができます。

 そこで、地震時のエレベーター内への閉じ込めの防止策の一つとして、初期微動(P波)を検知して運転を制御する地震時等管制運転装置を設置するは、適切です。


 


答え:3


 ここも、過去問題をやっていれば、解答は早い。

《タグ》設備 受水槽の有効容量 1日予想給水量の1/2程度  2号消火栓 逆わんトラップ 地震時等管制運転装置 P波 S波

問45

〔問 45〕 マンションの設備の清掃及び保守点検に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

1 共用部分の排水管に設置する掃除口は、排水の流れの方向又は流れと直角方向に開口するように設ける。

X 適切でない。 掃除口は、排水の”流れと反対”または、直角に開口するように設ける。排水の”流れの方向”ではない。


 何となく、掃除口が汚水の流れる方向では、汚水が溢れ出るので、適切でないと分かるが、流れと直角方向に開口するの距離のイメージが掴めず、また根拠が不明で探した。
  平成 13 年 国土交通省告示 第 1347 号、最終改正 平成 21 年 国土交通省告示 第 354 号 かと思ったがない。 
 
 ネットで、「秋田市の 第4章 設計」 にあった。 また、東京都下水道局 でもあった。
 それらによると、
 「屋内排水設備の設計・施工については、給排水設備技術基準・同解説書(国土交通省住宅局建築指導課編修協力)、空気調和・衛生設備工事標準仕様書(SHASE-S010)給排水衛生設備規準・同解説(SHASE-S206)(空気調和・衛生工学会規格)によること。」
 とあり、
 「
掃除口は、排水の流れと反対または、直角に開口するように設ける
 ようで、
 共用部分の排水管に設置する掃除口は、排水の”流れの方向”ではなく、”排水の流れと反対”に設けますから適切ではありません。
 なお、”直角方向に開口するように設ける”は、適切です。


 


2 機械式立体駐車場は、機種、使用頻度等に応じて、1~3ヵ月以内に1度を目安として、専門技術者による点検を受ける。

〇 適切である?

   平成19年 管理業務主任者試験 「問25」

 これも、機械式立体駐車場は、二段・多段方式、垂直循環方式、エレベータ方式等、様々な種類のものが存在し、構造が複雑で、また駐車に際し自動車がよく柱など構造物に接触して壊れやすく、機種、使用頻度等に応じて、1~3ヵ月以内に1度を目安として、専門技術者による点検を受けるは、適切ですが、根拠が分からない。
 
 そこで、探しました。
 機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン 平成26年10月 国土交通省
 が該当します。

 そこの、
 「Ⅳ.管理者の取組
 
装置の安全確保のための維持保全を行うこと。装置が正常で安全な状態を維持できるよう、機種、使用頻度等に応じて、1~3ヶ月以内に1度を目安として、専門技術者による点検を受け、必要な措置を講じること
 とあり、適切です。 


 


3 消防用設備の点検において、誘導灯は、外観から又は簡易な操作により判別できる事項について点検を行う機器点検を、6ヵ月に1回実施する。

〇 適切である。 消防用設備の機器点検は、6か月に1回実施し、総合点検は、1年に1回行う。
 平成27年 管理業務主任者試験 「問23」 、平成25年 管理業務主任者試験 「21」 、平成24年 マンション管理士試験 「問24」 選択肢3 、 平成20年 マンション管理士試験 「問36」選択肢2 、 平成19年 マンション管理士試験 「問44」選択肢4 、 平成13年 マンション管理士試験 「問24

  まず、消防用設備等の定期点検は、消防法第17条の3の3 
 「第十七条の三の三 第十七条第一項の
防火対象物(政令で定めるものを除く。)の関係者は、当該防火対象物における消防用設備等又は特殊消防用設備等(第八条の二の二第一項の防火対象物にあつては、消防用設備等又は特殊消防用設備等の機能)について、総務省令で定めるところにより、定期に、当該防火対象物のうち政令で定めるものにあつては消防設備士免状の交付を受けている者又は総務省令で定める資格を有する者に点検させ、その他のものにあつては自ら点検し、その結果を消防長又は消防署長に報告しなければならない
 とあり、
  総務省令で定める政令は、消防法施行規則第31条の6 
 「(消防用設備等又は特殊消防用設備等の点検及び報告)
 第三十一条の六 法第十七条の三の三の規定による
消防用設備等の点検は、種類及び点検内容に応じて、一年以内で消防庁長官が定める期間ごとに行うものとする。
2 法第十七条の三の三の規定による特殊消防用設備等の点検は、第三十一条の三の二第六号の設備等設置維持計画に定める点検の期間ごとに行うものとする。
3 防火対象物の関係者は、前二項の規定により点検を行つた結果を、維持台帳(第三十一条の三第一項及び第三十三条の十八の届出に係る書類の写し、第三十一条の三第四項の検査済証、次項の報告書の写し、消防用設備等又は特殊消防用設備等の工事、整備等の経過一覧表その他消防用設備等又は特殊消防用設備等の維持管理に必要な書類を編冊したものをいう。)に記録するとともに、次の各号に掲げる防火対象物の区分に従い、
当該各号に定める期間ごとに消防長又は消防署長に報告しなければならない。ただし、特殊消防用設備等にあつては、第三十一条の三の二第六号の設備等設置維持計画に定める点検の結果についての報告の期間ごとに報告するものとする。
   一 令別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物 一年に一回
   二 令
別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ、(十七)項及び(十八)項までに掲げる防火対象物 三年に一回
4 法第十七条の三の三の規定による点検の方法及び点検の結果についての報告書の様式は、消防庁長官が定める。
 (以下、略)」とあり、
 共同住宅は、別表第一(五)項ロ に該当し、点検は、別途定められていますが、その報告は3年に1回です。


 では、点検の種類と点検内容は、「消防庁長官が定める期間ごと」であり、
 消防法施行規則の規定に基づき、消防用設備等又は特殊消防用設備等の種類及び点検内容に応じて行う点検の期間、点検の方法並びに点検の結果についての報告書の様式を定める件

  第二 点検の内容及び点検の方法
  
点検の内容及び点検の方法は、次のとおりとする。ただし、特殊消防用設備等にあっては、法第十七条第三項に規定する設備等設置維持計画によるものとする。
   一
機器点検  次の事項について、消防用設備等の種類等に応じ、別に告示で定める基準に従い確認すること。
     (一) 消防用設備等に附置される非常電源(自家発電設備に限る。)又は動力消防ポンプの正常な作動
     (二) 消防用設備等の機器の適正な配置、損傷等の有無その他主として外観から判別できる事項
    
 (三) 消防用設備等の機能について、外観から又は簡易な操作により判別できる事項
   二
総合点検  消防用設備等の全部若しくは一部を作動させ、又は当該消防用設備等を使用することにより、当該消防用設備等の総合
 


 とあり、
 消防用設備である、誘導灯の点検は、「消防法施行規則の規定に基づき、消防用設備等又は特殊消防 用設備等の種類及び点検内容に応じて行う点検の期間、点検 の方法並びに点検の結果についての報告書の様式を定める件
 (
三) 消防用設備等の機能について、外観から又は簡易な操作により判別できる事項」
 により、外観から又は簡易な操作により判別できる事項について機器点検を行い、その、
機器点検は6ヶ月ごと、総合点検は、1年ごとですから、適切です。(正しい)

 


4 エレベーターの保守契約におけるPOG 契約は、定期的な機器・装置の保守・点検のみを行う契約方式で、仕様書で定める消耗品を除き、劣化した部品の取替えや修理等を含まない。

〇 適切である。 POG契約では、別途費用がかかることがある。

 平成27年 管理業務主任者試験 「問24」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問45」 

 まず、エレベーターの保守契約にはPOG(パーツ・オイル・グリース)契約とFM(フルメンテナンス)契約とがあります。
   ①POG(パーツ・オイル・グリース Parts、Oil、Grease)契約とは、定期的な保守・点検は行いますが、その名の通り、電球類などの消耗部品(パーツ)・潤滑油(オイル・グリース)の取り替え及び補給のみを保証範囲とする保守契約で、主要部品の取り替えは、個別に別途、必要に応じて有償にて取り替えを発注することになります。
  ②FM(フルメンテナンス)契約とは、上のPOG契約に加えて、意匠部品以外の主要部品も保証範囲としている保守契約です。上のPOG契約では個別の有償対応となる主要部品の取り替えを、保守会社側の立案する保全計画に基づいて定期的に取替えを実施することにより、各機器の状態の悪化を抑えられるというメリットがありますが、POG契約に比べて、高くなります。

 [POG料金に含まれる消耗品] カーボンコンタクト及びフィンガー、カーボンブラシ、ヒューズ、各種ランプ類(照明用、グロー、インジケータ)点検用オイル、補充用オイル、グリス類、ウエス、サンドペーパー、ビス、ナット、ワッシャー (但しランプ類には、スリムライン、ネオン管、インテリア照明、その他特殊な発光体は含まれません。

 そこで、エレベーターの保守契約におけるPOG 契約は、定期的な機器・装置の保守・点検のみを行う契約方式で、仕様書で定める消耗品を除き、劣化した部品の取替えや修理等を含まないは、適切です。



答え:1

 選択肢1の排水管の掃除口の位置までは、知る訳がない。
 そして、選択肢3の機械式立体駐車場の点検も、根拠を探すのに、時間がかかる!
 でも、過去問題をやっていれば、なんとなく、選択肢1が適切でないと分かるが。

《タグ》設備 清掃 排水管の掃除口の位置 点検 機械式立体駐車場 消防用設備 エレベーター POG契約

問46


 *注:問46から問50までは、マンション管理士試験か管理業務主任者試験の合格者には免除される部分です。また、この問46から問50は、「マンション管理適正化法」と「同指針」からの出題と決まっていますので、出題は例年似たような内容となります。過去問題はやっておくと楽です。

 *マンションの管理の適正化に関する指針(国土交通省告示第490号)は、平成28年3月に改正があったので、注意のこと。

 *勉強の仕方としては、「マンション管理適正化法」と「同施行規則」は、連動して作成されているので、「マンション管理適正化法」と「同施行規則」が左右で対照になったものがあると分かり易い。


〔問 46〕 「マンションの管理の適正化に関する指針」(平成13年国土交通省告示第1288号)において定められている「マンションの管理の適正化の推進のために管理組合が留意すべき基本的事項」に関する次の記述のうち、適切なものはいくつあるか。

ア 管理組合の自立的な運営は、マンションの区分所有者等の全員が参加し、その意見を反映することにより成り立つものである。そのため、管理組合の運営は、情報の開示、運営の透明化等、開かれた民主的なものとする必要がある。また、集会は管理組合の最高意思決定機関である。

〇 適切である。
 平成21年 管理業務主任者試験 「問46」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問46」 、 平成13年 マンション管理士試験 「問50」 

 設問は、マンションの管理の適正化に関する指針 
  「二 マンションの管理の適正化の推進のために管理組合が留意すべき基本的事項
 1 管理組合の運営
  
管理組合の自立的な運営は、マンションの区分所有者等の全員が参加し、その意見を反映することにより成り立つものである。そのため、管理組合の運営は、情報の開示、運営の透明化等、開かれた民主的なものとする必要がある。また、集会は、管理組合の最高意思決定機関である。」
 とあり、
 管理組合の自立的な運営は、マンションの区分所有者等の全員が参加し、その意見を反映することにより成り立つものである。そのため、管理組合の運営は、情報の開示、運営の透明化等、開かれた民主的なものとする必要がある。また、集会は管理組合の最高意思決定機関であるは、適切です。



イ 長期修繕計画の策定及び見直しにあたっては、「長期修繕計画作成ガイドライン」を参考に、必要に応じ、マンション管理士等専門的知識を有する者の意見を求め、また、あらかじめ建物診断等を行って、その計画を適切なものとするよう配慮する必要がある。

〇 適切である。 
 平成28年3月の改正で、「長期修繕計画作成ガイドライン」が追加された。

 設問は、、マンションの管理の適正化に関する指針 
 「二 マンションの管理の適正化の推進のために管理組合が留意すべき基本的事項
 5 長期修繕計画の策定及び見直し等
  
長期修繕計画の策定及び見直しにあたっては、「長期修繕計画作成ガイドライン」を参考に、必要に応じ、マンション管理士等専門的知識を有する者の意見を求め、また、あらかじめ建物診断等を行って、その計画を適切なものとするよう配慮する必要がある。
 とあり、
 長期修繕計画の策定及び見直しにあたっては、「長期修繕計画作成ガイドライン」を参考に、必要に応じ、マンション管理士等専門的知識を有する者の意見を求め、また、あらかじめ建物診断等を行って、その計画を適切なものとするよう配慮する必要があるは、適切です。



ウ 管理業務の委託や工事の発注等については、説明責任等に注意して、適正に行われる必要があるが、とりわけ外部の専門家が管理組合の管理者等又は役員に就任する場合においては、マンションの管理業者から信頼されるような発注等に係るルールの整備が必要である。

X 適切でない。 「説明責任等」ではなく、「利益相反等」。また信頼されるのは、「区分所有者から」であって、「管理業者」ではない。

 ここも、平成28年3月で追加された事項。
 平成29年 管理業務主任者試験 「問46」 、 平成28年 マンション管理士試験 「問46」 
 
  似たような設問は、マンションの管理の適正化に関する指針 
 「二 マンションの管理の適正化の推進のために管理組合が留意すべき基本的事項
 6 発注等の適正化
 
 管理業務の委託や工事の発注等については、利益相反等に注意して、適正に行われる必要があるが、とりわけ外部の専門家が管理組合の管理者等又は役員に就任する場合においては、マンションの区分所有者等から信頼されるような発注等に係るルールの整備が必要である。」
 とあり、
 設問の「説明責任等に注意」は、「
利益相反等に注意」であり、又設問の「マンションの管理業者から信頼されるような発注等」ではなく、「マンションの区分所有者等から信頼されるような発注等」であるため、適切ではありません。


エ 管理費の使途については、マンションの管理と自治会活動の範囲・相互関係を整理し、管理費と自治会費の徴収、支出を分けて適切に運用することが必要である。なお、このように適切な峻別や代行徴収に係る負担の整理が行われるとしても、自治会費の徴収を代行することは差し控えるべきである。

X 適切でない。 自治会費の徴収も、適切なら、代行していい。

 ここも、平成28年3月で追加された事項。
 平成28年 マンション管理士試験 「問46」

  似たような設問は、マンションの管理の適正化に関する指針 
 「二 マンションの管理の適正化の推進のために管理組合が留意すべき基本的事項
  7 良好な居住環境の維持及び向上
  
 マンションにおけるコミュニティ形成については、自治会及び町内会等(以下「自治会」という。)は、管理組合と異なり、各居住者が各自の判断で加入するものであることに留意するとともに、特に管理費の使途については、マンションの管理と自治会活動の範囲・相互関係を整理し、管理費と自治会費の徴収、支出を分けて適切に運用することが必要である。なお、このように適切な峻別や、代行徴収に係る負担の整理が行われるのであれば、自治会費の徴収を代行することや、防災や美化などのマンションの管理業務を自治会が行う活動と連携して行うことも差し支えない。」
 とあり、
 なお、このように適切な峻別や、代行徴収に係る負担の整理が行われるのであれば、自治会費の徴収を代行することや、防災や美化などのマンションの管理業務を自治会が行う活動と連携して行うことも差し支えないとありますから、「このように適切な峻別や代行徴収に係る負担の整理が行われるとしても、
自治会費の徴収を代行することは差し控えるべきである」は、適切ではありません。


1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ


答え:2 適切なものは、 ア と イ の2つ。

  「マンションの管理の適正化に関する指針」からも、1問は出るので、必ず読んでおくこと。
 また、解説の他でも度々指摘しているように、法律や規約等の改正があると、必ず出題者は、問題を作るのに過去問題との兼ね合いなどの気を使わなくて済むため出題します。
 まあ、安易な発想ですが、受験生は対応することです。改正なら、次は「民法」を狙いますね。

《タグ》 「マンションの管理の適正化に関する指針」 管理組合の運営 長期修繕計画とガイドライン 外部の専門家 自治会費

問47

〔問 47〕 マンション管理士に関する次の記述のうち、マンション管理適正化法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 マンション管理士は、マンション管理士の信用を傷つけるような行為をしてはならないが、国土交通大臣は、これに違反した者に対し、登録の取消し、又は期間を定めてマンション管理士の名称使用の停止を命ずることができる。

〇 正しい。 ただし、信用失墜では、罰則はない。
 良く出題される。 平成28年 マンション管理士試験 「問47」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問50」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問47」 、平成23年 マンション管理士試験 「問47」 、平成22年 マンション管理士試験 「問46」 、平成21年 マンション管理士試験 「問47」 など

 マンション管理士となると、信用が大切です。そこで、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下、この解説においては「マンション管理適正化法」といいます)第40条、
 「(信用失墜行為の禁止)
 
第四十条 マンション管理士は、マンション管理士の信用を傷つけるような行為をしてはならない
 とあり、
 設問の前半「マンション管理士は、マンション管理士の信用を傷つけるような行為をしてはならない」は、正しい。
 
 そして、後半の違反者の措置は、マンション管理適正化法第33条
 「(登録の取消し等)
 第三十三条 国土交通大臣は、マンション管理士が次の各号のいずれかに該当するときは、その
登録を取り消さなければならない
   一 第三十条第一項各号(第四号を除く。)のいずれかに該当するに至ったとき。
   二 偽りその他不正の手段により登録を受けたとき。
2 国土交通大臣は、マンション管理士が
第四十条から第四十二条までの規定に違反したときは、その登録を取り消し、又は期間を定めてマンション管理士の名称の使用の停止を命ずることができる
 とあり、
 信用失墜行為の禁止は、マンション管理適正化法第40条の規定ですから、マンション管理適正化法第33条2項に該当し、マンション管理士は、マンション管理士の信用を傷つけるような行為をしてはならないが、国土交通大臣は、これに違反した者に対し、登録の取消し、又は期間を定めてマンション管理士の名称使用の停止を命ずることができるは、正しい。

 ただし、罰則はありません。(参考:マンション管理適正化法第109条:マンション管理士の名称使用は罰金30万円以下)



2 マンション管理士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならないが、これに違反した者に対し、国土交通大臣は、登録の取消し、又は期間を定めてマンション管理士の名称使用の停止を命ずることができるほか、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する旨の罰則の規定がある。

〇 正しい。 秘密保持義務違反だと、信用失墜よりも罰則が厳しい。
   平成28年 マンション管理士試験 「問47」 、平成27年 マンション管理士試験 「問49」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問47」 
 
 まず、マンション管理士としての秘密保持は、マンション管理適正化法第42条、
 「(秘密保持義務)
 
第四十二条 マンション管理士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。マンション管理士でなくなった後においても、同様とする
 と規定されています。
 そして、違反すると、選択肢1で引用しました、マンション管理適正化法第33条2項
 「2 国土交通大臣は、マンション管理士が第四十条から
第四十二条までの規定に違反したときは、その登録を取り消し、又は期間を定めてマンション管理士の名称の使用の停止を命ずることができる。」
 の規定により、
 マンション管理適正化法第42条が該当し、マンション管理士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らすと、国土交通大臣は、これに違反した者に対し、登録の取消し、又は期間を定めてマンション管理士の名称使用の停止を命ずることができますから、ここまでは、正しい。

 さらに、秘密保持ができないマンション管理士に対する罰則は、マンション管理適正化法第107条
 「第百七条 
次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は三十万円以下の罰金に処する
   一 第十八条第一項(第三十八条、第五十八条第三項及び第九十四条において準用する場合を含む。)の規定に違反した者
   
二 第四十二条の規定に違反した者
2 前項第二号の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。

 とあり、
 マンション管理適正化法第42条の「秘密保持義務」が、マンション管理適正化法第107条1項2号に該当していますから、マンション管理士は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならないが、これに違反した者に対し、国土交通大臣は、登録の取消し、又は期間を定めてマンション管理士の名称使用の停止を命ずることができるほか、1年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する旨の罰則の規定があるは、正しい。



3 マンション管理士の登録を取り消された者は、その通知を受けた日から起算して10 日以内に、登録証を国土交通大臣(指定登録機関が登録の実務に関する事務を行う場合は指定登録機関)に返納しなければならない。

〇 正しい。 取り消されたマンション管理士の登録証は、通知を受けて10日以内に返納すること。
 平成24年 マンション管理士試験 「問47」 、 平成15年 マンション管理士試験 「問48」 

 マンション管理士の登録を取り消された者は、選択肢1で引用しました、マンション管理適正化法第33条2項
 「2 国土交通大臣は、マンション管理士が第四十条から第四十二条までの規定に違反したときは、その登録を取り消し、又は
期間を定めてマンション管理士の名称の使用の停止を命ずることができる。
 とあり、
 その期間は、マンション管理適正化法施行規則第30条
 「(登録の取消しの通知等)
 第三十条 国土交通大臣は、法第三十三条の規定によりマンション管理士の登録を取り消し、又はマンション管理士の名称の使用の停止を命じたときは、理由を付し、その旨を登録の取消し又は名称の使用の停止の処分を受けた者に通知しなければならない。
2 
法第三十三条の規定によりマンション管理士の登録を取り消された者は、前項の通知を受けた日から起算して十日以内に、登録証を国土交通大臣に返納しなければならない。」
 とあり、
 マンション管理適正化法施行規則第30条2項によれば、マンション管理士の登録を取り消された者は、その通知を受けた日から起算して10 日以内に、登録証を国土交通大臣(指定登録機関が登録の実務に関する事務を行う場合は指定登録機関)に返納しなければならないは、正しい。



4 マンション管理士でない者は、マンション管理士又はこれに紛らわしい名称を使用してはならないが、これに違反した者に対しては、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する旨の罰則の規定がある。

X 誤っている。 罰金は、30万円以下。 名義の詐称で50万円以下では高すぎる。また、罰金だけで懲役刑はない。
  平成28年 マンション管理士試験 「47」 、 平成15年 管理業務主任者試験 「問46」 、 平成14年 マンション管理士試験 「問46」
 
 まず、マンション管理士でない者が、マンション管理士等の名称を使用すると、マンション管理適正化法第43条、
 「(名称の使用制限)
 
第四十三条 マンション管理士でない者は、マンション管理士又はこれに紛らわしい名称を使用してはならない
 に該当します。
 これに、違反すると、今度は、罰則としてマンション管理適正化法第109条
 「第百九条 
次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
   一 第三十三条第二項の規定によりマンション管理士の名称の使用の停止を命ぜられた者で、当該停止を命ぜられた期間中に、マンション管理士の名称を使用したもの
   
二 第四十三条の規定に違反した者
   三 第四十八条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
   四 第五十六条第三項の規定に違反した者
   五 第九十八条の規定に違反して契約を締結した者

 とあり、
 マンション管理適正化法第43条違反者は、マンション管理適正化法第109条2号に該当し、マンション管理士でない者は、マンション管理士又はこれに紛らわしい名称を使用してはならないが、これに違反した者に対しては、
1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する旨の罰則の規定があるのうち、「懲役刑」はなく「50万円以下の罰金に処する旨の罰則」は、「30万円以下の罰金」ですから、誤りです。


答え:4

 最近は、マンション管理適正化法の単独の条文からの出題は少なくなり、各種条文を組み合わせている複合問題が多いので、関連付けて憶えること。

 出題としては、少し難?

《タグ》マンション管理適正化法 信用失墜 秘密保持義務違反 罰則 登録消除 名称の使用制限違反 

問48

〔問 48〕 マンション管理業者の業務に関する次の記述のうち、マンション管理適正化法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。

ア 国土交通大臣は、マンション管理業者が業務に関し他の法令に違反し、マンション管理業者として不適当であると認められるときは、当該マンション管理業者に対し、1年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができる。

〇 正しい。 
  平成28年 マンション管理士試験 「問48」 

 マンション管理業者に対する業務停止は、マンション管理適正化法第82条
 「(業務停止命令)
 第八十二条 
国土交通大臣は、マンション管理業者が次の各号のいずれかに該当するときは、当該マンション管理業者に対し、一年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができる
   
一 前条第三号又は第四号に該当するとき
   二 第四十八条第一項、第五十四条、第五十六条第三項、第七十一条、第七十二条第一項から第三項まで若しくは第五項、第七十三条から第七十六条まで、第七十七条第一項若しくは第二項、第七十九条、第八十条又は第八十八条第一項の規定に違反したとき。
   三 前条の規定による指示に従わないとき。
   四 この法律の規定に基づく国土交通大臣の処分に違反したとき。
   五 マンション管理業に関し、不正又は著しく不当な行為をしたとき。
   六 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者である場合において、その法定代理人(法定代理人が法人である場合においては、その役員を含む。)が業務の停止をしようとするとき以前二年以内にマンション管理業に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき。
   七 法人である場合において、役員のうちに業務の停止をしようとするとき以前二年以内にマンション管理業に関し不正又は著しく不当な行為をした者があるに至ったとき。

 とあり、
 設問の「
他の法令に違反」は、ここにはなさそうですが、マンション管理適正化法第82条1号での
 「一 前条第三号又は第四号に該当するとき」を見ると、
 前条とは、マンション管理適正化法第81条で
 「(指示)
 第八十一条 国土交通大臣は、マンション管理業者が次の各号のいずれかに該当するとき、又はこの法律の規定に違反したときは、当該マンション管理業者に対し、必要な指示をすることができる。
   一 業務に関し、管理組合又はマンションの区分所有者等に損害を与えたとき、又は損害を与えるおそれが大であるとき。
   二 業務に関し、その公正を害する行為をしたとき、又はその公正を害するおそれが大であるとき。
   
三 業務に関し他の法令に違反し、マンション管理業者として不適当であると認められるとき。
   四 管理業務主任者が第六十四条又は第六十五条第一項の規定による処分を受けた場合において、マンション管理業者の責めに帰すべき理由があるとき。

 とあり、
 マンション管理適正化法第81条3号に「三 業務に関し他の法令に違反し、マンション管理業者として不適当であると認められるとき」がありますから、国土交通大臣は、マンション管理業者が業務に関し他の法令に違反し、マンション管理業者として不適当であると認められるときは、当該マンション管理業者に対し、1年以内の期間を定めて、その業務の全部又は一部の停止を命ずることができるは、正しい。



イ 国土交通大臣は、マンション管理業の登録申請者が、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者である場合は、その登録を拒否しなければならない。

〇 正しい。
  平成26年 マンション管理士試験 「問49」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問49」 
 
 マンション管理業者の登録拒否は、マンション管理適正化法第47条、
 「(登録の拒否)
 第四十七条 
国土交通大臣は、登録申請者が次の各号のいずれかに該当するとき、又は登録申請書若しくはその添付書類のうちに重要な事項について虚偽の記載があり、若しくは重要な事実の記載が欠けているときは、その登録を拒否しなければならない
   一 成年被後見人若しくは被保佐人又は破産者で復権を得ないもの
   二 第八十三条の規定により登録を取り消され、その取消しの日から二年を経過しない者
   三 マンション管理業者で法人であるものが第八十三条の規定により登録を取り消された場合において、その取消しの日前三十日以内にそのマンション管理業者の役員であった者でその取消しの日から二年を経過しないもの
   四 第八十二条の規定により業務の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者
   
五 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
   六 この法律の規定により罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
   七 マンション管理業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人(法定代理人が法人である場合においては、その役員を含む。)が前各号のいずれかに該当するもの
   八 法人でその役員のうちに第一号から第六号までのいずれかに該当する者があるもの
   九 事務所について第五十六条に規定する要件を欠く者
   十 マンション管理業を遂行するために必要と認められる国土交通省令で定める基準に適合する財産的基礎を有しない者」

 とあり、
 マンション管理適正化法第47条5号によれば、国土交通大臣は、マンション管理業の登録申請者が、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から2年を経過しない者である場合は、その登録を拒否しなければならないは、正しい。



ウ 国土交通大臣は、マンション管理業者が業務に関し、その公正を害する行為をしたとき、又はその公正を害するおそれが大であるときは、その旨を公告しなければならない。

X 誤っている。 「公告」ではなく、「指示」である。

 マンション管理適正化法第81条からの出題は、珍しい。
 
 国土交通大臣の監督として、マンション管理適正化法第81条
 「(指示)
 第八十一条 
国土交通大臣は、マンション管理業者が次の各号のいずれかに該当するとき、又はこの法律の規定に違反したときは、当該マンション管理業者に対し、必要な指示をすることができる
   一 業務に関し、管理組合又はマンションの区分所有者等に損害を与えたとき、又は損害を与えるおそれが大であるとき。
  
 二 業務に関し、その公正を害する行為をしたとき、又はその公正を害するおそれが大であるとき
   三 業務に関し他の法令に違反し、マンション管理業者として不適当であると認められるとき。
   四 管理業務主任者が第六十四条又は第六十五条第一項の規定による処分を受けた場合において、マンション管理業者の責めに帰すべき理由があるとき。

 とあり、
 マンション管理適正化法第81条2号によれば、国土交通大臣は、マンション管理業者が業務に関し、その公正を害する行為をしたとき、又はその公正を害するおそれが大であるときは、その旨を”
公告しなければならない”ではなく、”必要な指示をすることができる”ですから、誤りです。

 なお、行政における「公告」とは、法令、条例又は規則に基づいて、一定の事項を”広く市民に周知させる行為”です。
 設問の場合、マンション管理適正化法では、”特定のマンション管理業者”に対して目的を達するために”指示”をすることにしています。



エ 国土交通大臣は、マンション管理業の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、その必要な限度で、その職員に、マンション管理業を営む者の事務所その他その業務を行う場所に立ち入り、帳簿、書類その他必要な物件を検査させ、又は関係者に質問させることができる。

 正しい。
 このマンション管理適正化法第86条からの出題も過去にはない。

 国土交通大臣の立入検査は、マンション管理適正化法第86条
 「(立入検査)
 第八十六条 
国土交通大臣は、マンション管理業の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、その必要な限度で、その職員に、マンション管理業を営む者の事務所その他その業務を行う場所に立ち入り、帳簿、書類その他必要な物件を検査させ、又は関係者に質問させることができる。
2 前項の規定により立入検査を行う職員は、その身分を示す証明書を携帯し、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
3 第一項に規定する権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。

 とあり、
 マンション管理適正化法第86条1項によれば、国土交通大臣は、マンション管理業の適正な運営を確保するため必要があると認めるときは、その必要な限度で、その職員に、マンション管理業を営む者の事務所その他その業務を行う場所に立ち入り、帳簿、書類その他必要な物件を検査させ、又は関係者に質問させることができるは、正しい。



1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ


答え:3 正しいのは、 ア イ エ の3つ。

 マンション管理適正化法からの出題も、もうネタが無くなり、選択肢3や4のように新しい条文からの出題となったようだ。

 ここで、個数問題となると、正解は難しい。

《タグ》マンション管理適正化法 業者の違反 登録の拒否 業務指示 立入検査

問49

〔問 49〕 「マンション管理適正化推進センター」が行うマンション管理適正化法第92 条に規定された業務として、正しいものはいくつあるか。ただし、記述の中で「管理者等」とあるのは、同法第2条の規定によるものとする。

ア マンションの管理の適正化に関し、管理組合の管理者等その他の関係者に対し技術的な支援を行うこと。

〇 正しい。
 平成24年 マンション管理士試験 「問49」 

 「マンション管理適正化推進センター」の業務なんて、マンション管理士とは関係がないけど、取りあえず、マンション管理適正化法第92条
 「(業務)
 第九十二条 センターは、次に掲げる業務を行うものとする。
   一 マンションの管理に関する情報及び資料の収集及び整理をし、並びにこれらを管理組合の管理者等その他の関係者に対し提供すること。
   
二 マンションの管理の適正化に関し、管理組合の管理者等その他の関係者に対し技術的な支援を行うこと。
   三 マンションの管理の適正化に関し、管理組合の管理者等その他の関係者に対し講習を行うこと。
   四 マンションの管理に関する苦情の処理のために必要な指導及び助言を行うこと。
   五 マンションの管理に関する調査及び研究を行うこと。
   六 マンションの管理の適正化の推進に資する啓発活動及び広報活動を行うこと。
   七 前各号に掲げるもののほか、マンションの管理の適正化の推進に資する業務を行うこと。

 です。

 設問は、マンション管理適正化法第92条2号「二 マンションの管理の適正化に関し、管理組合の管理者等その他の関係者に対し技術的な支援を行うこと」に該当し、正しい。



イ マンションの管理に関する苦情の処理のために必要な指導及び助言を行うこと。

〇 正しい。
  設問は、マンション管理適正化法第92条4号
 「
四 マンションの管理に関する苦情の処理のために必要な指導及び助言を行うこと」に該当し、正しい。


ウ マンションの管理の適正化に関し、管理組合の管理者等その他の関係者に対し講習を行うこと。

〇 正しい。
  設問は、マンション管理適正化法第92条3号
 「
三 マンションの管理の適正化に関し、管理組合の管理者等その他の関係者に対し講習を行うこと」に該当し、正しい。


エ マンション管理業の健全な発達を図るための調査及び研究を行うこと。

X 誤っている。
 設問に近いのは、マンション管理適正化法第92条5号「五 ”マンションの管理に関する”調査及び研究を行うこと」であり、”マンション管理業の健全な発達を図るための”調査及び研究を行うことではないため、誤りです。


1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ

答え:3 正しいのは、 ア イ ウ の3つ。
 
 本当に「マンション管理適正化推進センター」の業務まで出題ネタにするとは、出題者の頭脳の品格を疑う箇所からの出題です。

 「マンション管理適正化推進センター」は、管理組合を対象としており、別途、管理業者を対象にした組織として「管理業者の団体 = 一般社団法人 マンション管理業協会」があることを知っていれば 選択肢エ がおかしいとは分かるが、個数問題にされると、難しくなる。

《タグ》マンション管理適正化法 マンション管理適正化推進センターの業務

問50


〔問 50〕 マンション管理業者の業務に関する次の記述のうち、マンション管理適正化法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、記述の中で「マンションの区分所有者等」とあるのは、同法第2条の規定によるものとする。

1 マンション管理業者の使用人その他の従業者は、当該従業者でなくなった後5年を経過するまでは、正当な理由がなく、マンションの管理に関する事務を行ったことに関して知り得た秘密を漏らしてはならない。

X 誤っている。 秘密保持では、従業者でなくなった後5年を経過するまでの規定はない。
  平成17年 マンション管理士試験 「問47」 
 
 管理業者の使用人の秘密保持義務は、マンション管理適正化法第87条
 「(使用人等の秘密保持義務)
 第八十七条 
マンション管理業者の使用人その他の従業者は、正当な理由がなく、マンションの管理に関する事務を行ったことに関して知り得た秘密を漏らしてはならない。マンション管理業者の使用人その他の従業者でなくなった後においても、同様とする
 とあり、
 設問の「当該
従業者でなくなった後5年を経過するまでは」の規定がないため、マンション管理業者の使用人その他の従業者は、当該従業者でなくなった後5年を経過するまでは、正当な理由がなく、マンションの管理に関する事務を行ったことに関して知り得た秘密を漏らしてはならないは、誤りです。


2 マンション管理業者は、使用人その他の従業者に、その従業者であることを証する証明書を携帯させなければ、その者をその業務に従事させてはならない。

〇 正しい。

  平成15年 管理業務主任者試験 「問48」
 
 管理業者の従業員は、マンション管理適正化法第88条
 「(証明書の携帯等)
 第八十八条 
マンション管理業者は、国土交通省令で定めるところにより、使用人その他の従業者に、その従業者であることを証する証明書を携帯させなければ、その者をその業務に従事させてはならない
2 マンション管理業者の使用人その他の従業者は、マンションの管理に関する事務を行うに際し、マンションの区分所有者等その他の関係者から請求があったときは、前項の証明書を提示しなければならない。

 とあり、
 マンション管理適正化法第88条1項によれば、マンション管理業者は、使用人その他の従業者に、その従業者であることを証する証明書を携帯させなければ、その者をその業務に従事させてはならないため、正しい。



3 マンション管理業者の使用人その他の従業者は、マンションの管理に関する事務を行うに際し、マンションの区分所有者等その他の関係者から請求があったときは、当該マンション管理業者の従業者であることを証する証明書を提示しなければならない。

〇 正しい。

  平成26年 管理業務主任者試験 「問50」 

  設問は、選択肢2で引用しました、マンション管理適正化法第88条2項
 「
2 マンション管理業者の使用人その他の従業者は、マンションの管理に関する事務を行うに際し、マンションの区分所有者等その他の関係者から請求があったときは、前項の証明書を提示しなければならない。
 とあり、
 マンション管理適正化法第88条2項によれば、マンション管理業者の使用人その他の従業者は、マンションの管理に関する事務を行うに際し、マンションの区分所有者等その他の関係者から請求があったときは、当該マンション管理業者の従業者であることを証する証明書を提示しなければならないは、正しい。



4 マンション管理業者の登録がその効力を失った場合には、当該マンション管理業者であった者又はその一般承継人は、当該マンション管理業者の管理組合からの委託に係る管理事務を結了する目的の範囲内においては、なおマンション管理業者とみなす。

〇 正しい。
  平成28年 管理業務主任者試験 「問47」

  管理業者の登録が失効したら、業務委託をしている管理組合が困ることがあります。
 そこで、マンション管理適正化法第89条
 「(登録の失効に伴う業務の結了)
 第八十九条 
マンション管理業者の登録がその効力を失った場合には、当該マンション管理業者であった者又はその一般承継人は、当該マンション管理業者の管理組合からの委託に係る管理事務を結了する目的の範囲内においては、なおマンション管理業者とみなす。」
 とあり、
 マンション管理業者の登録がその効力を失った場合には、当該マンション管理業者であった者又はその一般承継人は、当該マンション管理業者の管理組合からの委託に係る”管理事務を結了する目的の範囲内において”は、なおマンション管理業者とみなすことができますから、正しい。


 なお、みなされる場合でも、範囲が限定されていることに注意してください。


答え:1

 ここは、易しい。

《タグ》 マンション管理適正化法 従業員の秘密保持義務 従業員の証明書 登録の失効

ここまで、問50


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2018年 3月 8日:再度見直した。
2018年 1月30日:どうやら、「問50」 まで終わった。
これで、平成28年の管理業務主任者試験の解説に移る。
まったく、トラブルもあって、時間がかかり、解説とは、大変な作業だ。

2018年 1月27日:「問42」を解説中に、またファイルが壊れて、再度やり直している。
まったく、参る。
2018年 1月12日:解説に着手。
問題文Up:2017年12月 1日

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