マンション生活での相談は、「マンション管理士 香川事務所」へ。

平成22年 マンション管理士 試験問題 及び 解説

ページ1(問1より問25まで)

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 謝辞:問題文の作成には、松本さまの協力を得ています。

ご質問は、 「マンション管理士 香川事務所」へ。


*注: マンション標準管理規約(単棟型、団地型、複合用途型)は、平成28年3月に改正があり、当解説においては、未対応ですから、注意してください。

また、マンションの管理の適正化に関する指針も、平成28年3月に改正があり、当解説においては、未対応ですから、注意してください。

※ 出題当時以後の法令等の改正には、一部は対応していません。

*試験に臨んで、お節介なアドバイス
  1.設問にあわせて、問題用紙に ○(まる)、X(ばつ)をつける。
    殆どの設問が、「正しい」か「間違い」かを訊いてきますので、設問により、問題の頭に、○かXをつけます。
    そして、各選択肢を読み、○かXをつけます。
    問題の○なりXと、選択肢の○かXが一致したものを、マークシートに記入してください。

  2.疑問な問題は、飛ばす。
    回答の時間は限られています。
    そこで、回答として、○かXかはっきりしないものがでたら、「?」マークをつけて、次の問題に移ります。
    全部の回答が終わってから、再度戻って決定してください。

  3.複雑な問は、図を描く。
    甲、乙、A、B、Cなど対象が多い問題もでます。
    この場合、問題用紙の空いているところに、図を描いてください。
    重要な点が分かってきます。

(出題者からの注意) 1.答えは、各問題とも1つだけです。2つ以上の解答をしたもの、判読が困難なものは、正解としません。
              2.問題中法令に関する部分は、平成22年5月1日現在施行中の規定に基づいて出題されています。

解説者からのコメント:あやふやな出題、適切でない出題もあって、解答ができないのもあります。

※  マンション標準管理規約は、平成16年に改正があった。また、平成23年7月にも小幅な改正があった。
   マンション標準管理委託契約書は、平成15年に改正があった。また、平成22年5月にも改正があった。

問1

〔問 1〕マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号イに規定するマンションをい う。以下同じ。)の専有部分等に関する次の記述のうち、建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)によれば、正しいものはどれか。

1 区分所有者が全員で共有する専有部分については、規約で定めなくても共用部分とすることができる。

X 誤っている。 まず、区分所有法では、条文で「マンション」という用語が使用されていないことに注意してください。そこで、マンション管理士・管理業務主任者試験では、「マンション」という用語を使用する際には、定義として「マンション管理適正化法」第2条1号イ を使用することになります。
 「マンション管理適正化法」第2条1号イ は、
 「(定義) 
 第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
   一  
マンション 次に掲げるものをいう。
     イ 二以上の区分所有者(建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)第二条第二項 に規定する区分所有者をいう。以下同じ。)が存する建物で人の居住の用に供する専有部分(区分所有法第二条第三項 に規定する専有部分をいう。以下同じ。)のあるもの並びにその敷地及び附属施設
     ロ 一団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)が当該団地内にあるイに掲げる建物を含む数棟の建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地及び附属施設」 です。
   イの要件としては、@2人以上の区分所有者 がいて、 A人の居住用の専有部分が1つでもあればいい となっています。
 そして、マンションの建物部分は、区分所有権の目的となる@「専有部分」(平たくいうと「室」)と、区分所有権の目的にならないA「共用部分」(平たくいうと、みんなで使用する部分。具体的には、専有部分に通じる廊下や階段室)に分けられます。
 「共用部分」は、区分所有者全員の共有とされます。(区分所有法第11条参照)。そして、通常であれば、「専有部分」は区分所有者全員が共有していても、「共用部分」とは別な存在ですが、区分所有法では、特別に「専有部分」であっても、規約があれば、みんなで使える「共用部分」にできることを認めています。例えば、普通の室としても使用できる「集会室」や「管理人室」を想定してください。これら「集会室」や「管理人室」を、規約で「共用部分」とするやり方です。
 そこで、「共用部分」には、廊下や階段など法律上当然に「共用部分」となる物(これは、「法定共用部分」と呼ばれます。)と、「専有部分」であっても規約で「共用部分」になった物(これは、「規約共用部分」と呼ばれます。)があります。なお、「共用部分」となると、区分所有法では「法定共用部分」も「規約共用部分」も「共用部分」として、一律に「専有部分」との分離処分ができないなどの規定が適用されます。(区分所有法第11条以下参照)
 これを踏まえ、根拠は、区分所有法第4条2項 「(共用部分)
 「第四条  数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。
  2  
第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。 」とあり、
規定されている第1条は、(建物の区分所有)
 「第一条  一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。 」で、この所有権は、区分所有法では、「区分所有権」とよばれ(第2条1項)、建物の部分としては「専有部分」が「区分所有権」の目的になります(第2条3項)。
 そこで、設問の、区分所有者が全員で共有する専有部分を共用部分にするには、規約で定めることが必要となります。

2 規約で定めれば、区分所有者の共用部分の共有持分とその有する専有部分は、分離して処分することができる。

▲ 誤っている? この設問は、曖昧で問題があると、平成21年 マンション管理士試験 「問5」選択肢2 でも指摘した箇所です。
  というのは、区分所有法第15条
 「第十五条  共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う。
   2  共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。 」とあり、
 区分所有法では原則として、専有部分と共用部分の持分は分離処分ができませんが、2項での別段の定めが2つあります。
 その1番目は、規約によって他の区分所有者又は管理者を共用部分の所有者とする場合(区分所有法第11条2項、第27条1項参照)で、2番目は、規約の設定・変更によって共有持分の変更をする場合(同法第14条4項参照)です。
 1番目の場合には、実質的な処分とみなされないこともありますが、2番目の場合には、共有者の間で共用部分の持分の処分が規約により専有部分と分離してなされたことになります。

 2年も続けて、曖昧な設問を出すとは、出題元として「財団法人 マンション管理センター」は適切かな?


3 専有部分以外のマンションの建物の部分は、すべて共用部分であり、それ以外の部分はない。

○ 正しい。 区分所有法第2条4項
 「4  この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。 」とあり、
 区分所有法での建物の部分は、専有部分とそれ以外である「共用部分」に分けられています。



                 
4 区分所有者は、区分所有権の目的である専有部分を自由に使用、収益及び処分することができ、規約によっても、制限されない。

X 誤っている。 平成21年 マンション管理士 試験 「問4」 ア の逆の出題。
  ここが、マンション生活での1つの特徴となります。
  戸建であれば、自己の「所有権」に基づいて、家を喫茶店にしようが、事務所にしようが、自由に使うことが許されますが、マンションでの生活では、壁や床を隔てて複数の人々が住んでいるというその構造上、共同の管理が必要となり、そのために区分所有者達が守るべき規則(ルール)が必要とされます。これを、区分所有法では、「規約」とよんでいます。この規約については、同法第30条1項
 「(規約事項)
  第三十条  建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。」とあり、多くの事柄を規約で定めることを許しています。
 その「管理又は使用に関する事項」には、共用部分の補修、管理費などの他に専有部分の使用方法を「住居に限る」等の制限もできると解釈されています。規約で専有部分の自由な使用が制限されることがあります。

答え:3  なお、区分所有法の詳細な解説は、私の別途「超解説 区分所有法」での各条文の解説文も参考にしてください。

問2

〔問 2〕一部共用部分についての規約の定めに関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものについては、区分所有者全員の規約に定めることはできない。

X 誤っている。 一部共用部分は、平成23年 マンション管理士試験 「問1」平成17年 マンション管理士試験 「問1」平成15年マンション管理士試験 「問5」 もある。
  まず、一部共用部分とは、建物において、構造上明らかに一部の専有部分にのみ共用されている廊下や階段室のことをいいます。例としては、下が店舗で上が居住用のいわゆる「下駄ばきマンション」を想定してください。この場合、店舗用にだけ使用される廊下や階段、また住戸の人専用の廊下やエレベーターが、この一部共用部分に該当します。(区分所有法第3条後半参照)
 本来、この一部共用部分の管理や使用は、一部共用部分の区分所有者達だけで行うように規約を定めてもいいのですが、建物全体としての管理を望むなら、区分所有者全員の利害に関係していなくても、区分所有者全員の規約に定めることができます。それが、区分所有法第30条2項です。
 「(規約事項)
  第三十条  
   2  一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、
区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。 」
 丁寧に読まないと、分かり難い条文ですが、「一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて」により、区分所有者全員の利害に関係しないものであっても、区分所有者全員の規約に定めることができます。
 そこで、一部共用部分の区分所有者達で定めることのできるのは、@区分所有者全員の利害に関しないこと、と、A区分所有者全員の利害に関しないことだけど区分所有者全員の規約に定められている事項を除いた事項となります。(2011年6月17日:訂正)




2 一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属し、規約で特別に定めても管理者が所有するものとすることはできない。

X 誤っている。 前半の「一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属し」は、区分所有法第11条1項ただし書きにより正しい。
 「(共用部分の共有関係)
 第十一条  共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。 」
 そして、後半の「規約で特別に定めても管理者が所有するものとすること」については、区分所有法に特別に規定される、管理者が所有権を登記できない共用部分を所有するという規定、いわゆる「管理所有」があります。それは、同法第27条1項です。
 「(管理所有)
 第二十七条  管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。」
 この第27条1項の規定は、一部共用部分であっても適用が可能ですから、規約で特別に定めれば、管理者が一部共用部分を所有することができます。(注:管理所有については、私の「超解説 区分所有法」の関係の箇所をよく読んでください。ここも、テーマを変えて毎年出題がありますから。)



3 一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するものであっても、これを共用すべき区分所有者のみで行う旨を規約で定めることは妨げない。

X 誤っている。 分かり難い設問です。これは、選択肢1で説明した逆の解釈です。
  区分所有法第30条2項は、区分所有者全員の利害に関するものは、区分所有者全員の規約で定めるように規定されていますから、「これを共用すべき区分所有者のみ(一部共用部分の区分所有者達だけ)」での規約は定められません。



4 一部共用部分であるか否かは、その構造上決定されるものであって、規約で別段の定めをすることはできない。

○ 正しい? 一部共用部分については、区分所有法第3条の後半が参考になります。
 「(区分所有者の団体)
 第三条  区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。
一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。 」とあり、
 一部共用部分であるか否かは、その共用部分の客観的な性質からみて、
明らかであることが求められていますから、規約で別段の定めはできないと考えられます。しかし、現実には、全部共用部分か一部共用部分であるかが明確ではない場合が多くて、裁判になっていますので、規約で定めた方がいいでしょう。
(参考判例:構造・機能上特に一部の共用が明白な場合に限ってこれを一部共用部分として扱うことを相当とした(東京高裁 昭59年11月29日。他に、東京高裁:平成14年9月30日、東京地裁:平成5年3月30日など)


答え:4

問3

〔問 3〕マンションの設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときに関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 マンションの設置又は保存の瑕疵が、専有部分にあるときにその専有部分の所有者が負う責任も、共用部分にあるときに区分所有者全員が負う責任も、ともに当該部分の所有者に過失がなくても成立する。

○ 正しい。 過失がなくても責任を追及できる(無過失責任)かどうかをきいている。
  マンションの設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときには、区分所有法第9条
 「(建物の設置又は保存の瑕疵に関する推定)
 第九条  建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する。」の規定があります。
 なぜ、このような条文があるかというと、通常の戸建での設置や保存で瑕疵(きず)があり、他人に損害を与えたときは、責任者が持ち主か、借家であれば借家人などとある程度特定でき、その人が責任を負います(民法第717条1項参照)が、マンションでは、その構造上、専有部分が原因なのか共用部分が原因なのか、特定することが困難な場合がかなりあります。
 例えば、マンションで水漏れがあり、特定の区分所有者が被害をうけたとします。しかし、マンションでは、その原因が、専有部分での漏水か、共用部分とされるメインの排水管の亀裂かなかなか分かりません。被害者としては、専有部分が原因なら、その専有部分の区分所有者に賠償責任を追及する必要がありますし、共用部分が原因なら、区分所有者全員に賠償責任を追及する必要があります。しかし、原因が特定できない場合には、どこへも損害賠償の請求ができないという不都合なことになります。
 そこで、区分所有法では、このような場合には、共用部分の設置又は保存にあるものと推定して、区分所有者全員が共同で責任を負うとしました。また、「推定」ですから、その瑕疵が特定の専有部分にあることが証明できれば、賠償責任は、その特定された区分所有者が負うことになります。なお、損害を受けた人(被害者)が、原因は「マンションの設置又は保存に瑕疵があること」を立証する必要はあります。
 そこで、設問の「過失の有無」ですが、これは、民法第717条においても、区分所有法第9条においても、過失がなくても責任を負うと解されています。
 (参考:民法第717条: 「(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
 第七百十七条  土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。)



2 他人に生じた損害が専有部分の瑕疵によるものか、共用部分の瑕疵によるものか、不明であっても、マンションの設置又は保存の瑕疵によるものであることは、他人である被害者が立証しなくてはならない。 

○ 正しい。 選択肢1で述べたように、他人に生じた損害が専有部分の瑕疵によるものか、共用部分の瑕疵によるものか、不明な場合は、区分所有法第9条の適用になりますが、被害者が、原因は「マンションの設置又は保存に瑕疵があること」を立証する必要はあります。


3 マンションの設置又は保存の瑕疵が特定の専有部分にあることが証明されない限り、区分所有者全員が共同して他人に対して責任を負う。

○ 正しい。 選択肢1で述べたように、区分所有法第9条の規定は、
 「(建物の設置又は保存の瑕疵に関する推定)
 第九条  建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと
推定する。」とあり、「推定」の規定ですから、マンションの設置又は保存の瑕疵が特定の専有部分にあることが証明されれば、その特定の専有部分の区分所有者に責任を追及することができます。しかし、その証明ができなければ、区分所有者全員が共同して他人に対して責任を負うことになります。(「推定」と「みなす」の違いは、自分で勉強してください。)


4 マンションの共用部分の設置又は保存の瑕疵により当該マンションの区分所有者が損害を被った場合、その区分所有者は、他人には該当せず、損害賠償請求をすることができない。

X 誤っている。 選択肢1で述べた区分所有法第9条
 「(建物の設置又は保存の瑕疵に関する推定)
 第九条  建物の設置又は保存に瑕疵があることにより
他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する。」の規定にある「他人」の解釈です。
 ここでいう「他人」とは、責任を負う区分所有者全員との関係において、特定の区分所有者が損害を受けた場合には、その特定の区分所有者も、「他人」に該当すると解されます。

答え:4    (この問題は、「問17」も参考にしてください。)

問4

〔問 4〕規約で、その割合を定めることができないものは、区分所有法及び民法の規定によれば、次のうちどれか。

1 共用部分の持分割合

○ 規約で割合を定めることができる。 先ず、法律構成上の基本として、民法が存在し、区分所有法は、特別法であることは、理解してください。
  ここは、単純に区分所有法で、規約で定めることができるの条文があるかどうかをきいています。
  マンションの建物の共用部分の持分割合については、区分所有法第14条
 「(共用部分の持分の割合)
 第十四条  各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
   2  前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。
   3  前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。
   4  前三項の規定は、
規約で別段の定めをすることを妨げない。」とあり、
 共用部分の持分の原則は、専有部分の床面積の割合ですが(1項)、4項により規約で別段の定めを認めています。



2 敷地の持分割合

X 規約でもその割合を定めることはできない。
  よく出題される箇所です。土地と建物の関係は明確に理解しておきましょう。
  区分所有法では、建物の共用部分については、選択肢1で述べたように、規約で別段の定めができますが、敷地(土地)についての割合を定める規定はありません。そこで民法の共有関係に戻り、持分の割合は、マンションの分譲時に xxx分のyyy のように決まります。もしも、分譲時に敷地の持分を決めていないなら、各区分所有者は敷地の共有者として、持分は等しいと推定されます。(民法第250条)


3 共用部分の負担割合

○ 規約で割合を定めることができる。
  共用部分の負担割合については、区分所有法第19条
 「(共用部分の負担及び利益収取)
 第十九条  各共有者は、
規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。 」とあり、
 原則、選択肢1で説明した専有部分の床面積の割合によりますが、規約があれば、別段の定めができます。しかし、規約で別段の定めをする際には、AさんとBさんの専有部分の床面積が極端に差がある場合に、同じ負担割合にすることは、無効とされることがありますので注意してください。

4 各区分所有者の議決権割合

○ 規約で割合を定めることができる。
  各区分所有者の議決権割合については、区分所有法第38条
 「(議決権)
 第三十八条  各区分所有者の議決権は、
規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による。 」とあり、
 原則、ここも、選択肢1で説明した専有部分の床面積の割合によりますが、議決権を専有部分の床面積に合わせて aaa/bbb などとすると、集会(総会)での賛成・反対の議決権の集計が面倒ですから、1.234 を丸めて 1 にしたりすることが、規約で決めていれば、可能です。規約があれば、別段の定めができます。しかし、規約で別段の定めをする際には、その議決権をAさんとBさんの専有部分の床面積が極端に差がある場合に、同じ1つにすることは、無効とされることがありますので注意してください。

答え:2 (ここは、かなり易しい設問。)

問5

〔問 5〕専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することに該当しないものは、区分所有法及び民法の規定によれば、次のうちどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとし、敷地利用権は所有権の共有持分であるものとする。

1 区分所有者が専有部分又は敷地利用権のどちらか一方にのみ質権を設定すること。

該当する。
  原則、専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することを区分所有法第22条1項は禁じています。
 「(分離処分の禁止)
 第二十二条  敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。」
 ここでの、処分とは、譲渡・抵当権の設定・質権の設定のように、権利の変動を生じさせる法律行為です。分離して処分することができないとは、専有部分と敷地利用権について、異なる内容の処分ができないということです。専有部分又は敷地利用権のどちらか
一方にのみ質権を設定することは、まさにこの規定に該当します。 


2 敷地の共有者全員で、地下鉄敷設のため敷地の地下に区分地上権を設定すること。

該当しない?
 区分地上権とは、新しい出題です。出題者として、過去問題とは違った方向を狙ったようです。
 まず、区分地上権とは、民法第269条の2
 「(地下又は空間を目的とする地上権)
 第二百六十九条の二  地下又は空間は、工作物を所有するため、上下の範囲を定めて地上権の目的とすることができる。この場合においては、設定行為で、地上権の行使のためにその土地の使用に制限を加えることができる。
  2  前項の地上権は、第三者がその土地の使用又は収益をする権利を有する場合においても、その権利又はこれを目的とする権利を有するすべての者の承諾があるときは、設定することができる。この場合において、土地の使用又は収益をする権利を有する者は、その地上権の行使を妨げることができない。 」のことです。1966年の改正で追加された条文です。地上だけでなく地下にも関する規定ですが、区分地上権の他に部分地上権とよばれることもあります。
 ところで、原則として、土地の所有権はその土地の上下に及びます。
 民法第207条
 「(土地所有権の範囲)
 第二百七条  土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。 」
 しかし、最近の土木・建築技術の進歩により、高度な空間にモノレールを設けたり、かなりの地下に地下鉄を走らせることができるようになり、この規定ができました。
 そこで、設問の、地下鉄敷設のため敷地の地下に区分地上権を設定することは、その性質上、区分所有法でいう、専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することを禁止した行為とは異なっていて、土地の権利を持つ区分所有者全員が賛成すれば、可能だとする説もありますが、まだ区分所有法と民法の関係において疑問がある解釈です
これから、裁判でももめるでしょう。


3 区分所有者が専有部分を妻に、敷地利用権を子に贈与すること。 

該当する。 区分所有者が専有部分を妻に、敷地利用権を子に贈与すると、建物の専有部分の権利(区分所有権)は妻に帰属し、土地の敷地利用権は子供に帰属しますから、分離して処分したことになります。


4 第三者が専有部分又は敷地利用権のどちらか一方のみを差し押さえること。

該当する。 これも、専有部分又は敷地利用権のどちらか一方のみの差押えですから、分離して処分したことになります。


答え:2 (まあ、選択肢2 を正解とするのは、問題のある出題ですが、他の3つが該当するのは、比較的、早く分かる?)

問6

〔問 6〕次のア〜エについて、管理組合(区分所有法第3条に規定する区分所有者の団体をいう。以下同じ。)の管理者にのみ該当し、管理組合法人の理事には該当しないものの組合せとして正しいものは、区分所有法の規定によれば、次のうちどれか。

ア その職務に関し、区分所有者を代理する。

管理者のみに該当する。
 平成21年では、組み合わせ問題が管理業務主任者試験では特に多く出題されましたが、今年(平成22年)は少ない?  
 それは、さておき、単なる管理者だけか、管理組合法人の理事かは、よく出題される。整理して、条文を覚えてください。平成19年 マンション管理士試験 「問2」平成18年 マンション管理士試験 「問31」 等。
  まず、区分所有法では、法人化された区分所有者の団体は、「管理組合法人」と「管理組合」がつきますが、「管理組合」だけの法的な定義はありません。そこで、設問のように「管理組合(区分所有法第3条に規定する区分所有者の団体をいう。」の「区分所有者の団体」の注釈が必要となります。
  代理について、管理者が、「その職務に関し、区分所有者を代理する」の規定は、区分所有法第26条2項
 「(権限)
 第二十六条  管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
  2  
管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。 」とありますから、正しい。
 しかし、管理組合法人の理事は、同法第49条3項
 「(理事)
 第四十九条  
  3  
理事は、管理組合法人を代表する。」とあり、理事は「管理組合法人を代表する」だけです。区分所有者を代理していません。
 では、管理組合法人で、区分所有者を代理しているのは、同法第47条6項
 「(成立等)
 第四十七条  
  6  
管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。 」とあり、
 区分所有者を代理しているのは、管理組合法人であり、理事ではありません
(職務と事務、代表と代理の違いは、まとめておいてください。)
 

イ 任期に関し、規約の定め又は集会の決議により自由に定めることができる。

管理者のみに該当する。
  任期については、法人の理事でない単なる「管理者」については、区分所有法では規定がありませんから、自由に定めることができます。
 しかし、法人の理事の任期は、同法第49条6項
 「(理事)
 第四十九条
  6  
理事の任期は、二年とする。ただし、規約で三年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。 」とあり、
 原則2年、規約があれば、3年まで延長ができます。理事の任期は、自由に定められません。なお、再任は可能です。



ウ 数人の者を選任することができる。

管理者と管理組合法人の理事に該当する。
  管理者の人数も理事の人数も、また共にその資格も制限する規定は、区分所有法にはありませんから、単なる管理者にも管理組合法人の理事にも当てはまります。
 といっても、理事の複数は、理解できるでしょうが、管理者が複数いる場合は、マンションで対内的なことを担当する管理者Aとか、対外的なことを担当する管理者Bのような存在と説明しますが、現実にはこんな面倒な複数の管理者の存在を、私は知りません。


エ 集会においては、規約に別段の定めがある場合及び別段の決議をした場合を除いて、議長となる。 

管理者と管理組合法人の理事に該当する。
 集会の議長については、まず、管理者については、区分所有法第41条
 「(議長)
 第四十一条  集会においては、規約に別段の定めがある場合及び別段の決議をした場合を除いて、
管理者又は集会を招集した区分所有者の一人が議長となる。」とありますから、単なる管理者には該当します。
 そして、管理組合法人の理事については、同法第47条12項
 「(成立等)
 第四十七条
  12  管理組合法人について、第三十三条第一項本文(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定を適用する場合には第三十三条第一項本文中「管理者が」とあるのは「理事が管理組合法人の事務所において」と、第三十四条第一項から第三項まで及び第五項、第三十五条第三項、
第四十一条並びに第四十三条の規定を適用する場合にはこれらの規定中「管理者」とあるのは「理事」とする。 」とあり、
 原則として、第4節の「管理者」の規定以外の適用があり、第5節にある「規約及び集会」に関する同法第41条が、理事と読み替えられて適用されています。(注:第4節 管理者(区分所有法第25条から第29条)の規定と第33条1項ただし書きは、管理組合法人では、管理者に代わって理事がおかれますから管理組合法人には、適用がないですよ。同法第47条11項参照)



1 アとイ
2 イとウ
3 ウとエ
4 エとア

答え:1 (管理者のみに該当は、ア と イ ) (この設問も易しい)

問7

〔問 7〕滞納管理費の消滅時効に係る次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。 

1 長期にわたり管理費を滞納している区分所有者に対して、管理組合が月々累積する滞納額全額について、毎月、内容証明郵便をもって支払の請求をしている場合には、滞納管理費に係る債権が時効により消滅することはない。

X 誤っている。 時効についての出題は、必ずある。平成21年 マンション管理士試験 「問13」 など。平成22年 管理業務主任者試験 「問10」 も。
  まず、消滅時効が完成するためには、時効の中断事由の有無も関係します。時効は、その起算日にさかのぼって効力を持ちます(民法第147条)が、時効の中断事由があると、今まで経過した期間は効力がなくなり、その中断事由が終了した時から、新しく時効の期間の開始となるためです。
 そこで、時効の中断事由として、民法第147条
 「(時効の中断事由)
 第百四十七条  時効は、次に掲げる事由によって中断する。
  一  請求
  二  差押え、仮差押え又は仮処分
  三  承認」 
 が挙げられています。
 また、設問の「毎月、内容証明郵便をもって支払の請求をしている場合」は、民法上は債務者に対して履行を請求する債権者の意思の通知として、「催告」として扱われます。
 すると、民法第153条
 「(催告)
 第百五十三条  催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事審判法 による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。 」の規定により、
 毎月、内容証明郵便をもって支払の請求をしている場合でも、請求後、6ヶ月以内に裁判上の請求などをしなければ、時効を中断させませんから、時効によって「滞納管理費に係る債権が消滅」することがあります。単に、毎月、支払えと滞納者に通知しても、弁済の時から5年が過ぎると、もう時効となります。(選択肢2参照) 

 

2 管理規約の規定に基づいて区分所有者に対して発生し、その具体的な額は総会の決議によって確定し、月ごとに支払われるものである管理費に係る債権は、定期金債権として、最後の弁済期から10年間行使しないときは、時効により消滅する。

X 誤っている。 これは、過去何度も出題されている。平成21年 管理業務主任者 試験 「問39」は内容が詳しい。
  マンションでの管理費や修繕積立金の消滅時効については、定期金債権の10年かそれとも短期の5年かについては、過去から裁判でも争われ、最終的に、最高裁判決:平成16年4月23日は、基本権から派生する支分権として、民法第169条に定める5年間での短期消滅時効としました。10年間ではありません。5年間です。しかし、この判決での、管理費はともかく、修繕積立金も5年の消滅時効でいいのかは、修繕積立金の内容から疑問がある点です。
 民法第168条1項
 「(定期金債権の消滅時効)
 第百六十八条  定期金の債権は、第一回の弁済期から二十年間行使しないときは、消滅する。最後の弁済期から十年間行使しないときも、同様とする。」
 民法第169条
 「(定期給付債権の短期消滅時効)
 第百六十九条  年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。 」



3 管理組合が管理費を滞納している区分所有者に対して滞納管理費を請求する訴訟を提起して勝訴した場合には、滞納管理費に係る債権は、確定判決の時より新たに従前と同様5年の消滅時効期間が進行する。

X 誤っている。 「従前と同様5年の消滅時効」とは、選択肢2の「10年」が明らかに間違いとなるので、これは配慮が足りない出題だ。
  選択肢2で述べたように、滞納管理費に係る債権は、最後の弁済期から5年で消滅時効になるのですが、これが、裁判で確定判決を受けると、また別になります。
 民法第174条の2
 「(判決で確定した権利の消滅時効)
 第百七十四条の二  確定判決によって確定した権利については、
十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。裁判上の和解、調停その他確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利についても、同様とする。」とあり、
 5年の時効期間が、裁判の確定した時から改めて時効の進行となり、その期間は10年となります。



4 管理費を滞納している区分所有者が「滞納管理費支払合意書」により、滞納管理費全額を分割して毎月定額で支払うことを管理組合と合意した場合、そのことによる時効の中断の効力は、区分所有権を譲り受けた特定承継人に及ぶ。

○ 正しい。 特定承継人・包括(一般)承継人の区別は理解しておくこと。
  *特定承継人とは、売買や贈与など個々の原因に基づいて、権利を承継取得した人です。マンションを買った人や競売で落とした人も該当します。
  *包括(一般)承継人とは、相続などにより、区分所有者の権利・義務を一括して承継取得した人です
 管理費を滞納している区分所有者が「滞納管理費支払合意書」により、滞納管理費全額を分割して毎月定額で支払うことを管理組合と合意した場合には、選択肢1で述べた、民法第147条で規定する時効の中断事由の3号の「
承認」に該当します。前半の「時効中断の効力」は正しい。
 そして、その時効中断の効力が及ぶ範囲については、民法第148条
 「(時効の中断の効力が及ぶ者の範囲)
 第百四十八条  前条の規定による時効の中断は、その中断の事由が生じた当事者及び
その承継人の間においてのみ、その効力を有する。」とあります。
 この承継人には、当事者の包括承継人と特定承継人が該当しています。

 また、区分所有法第8条も参照のこと
 「(特定承継人の責任)
 第八条  前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。」

 

答え:4 (ここも、易しい)

問8

〔問 8〕管理組合の集会に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 集会の議事録には、集会における発言者全員の発言の要旨を記録又は記載する必要はない。

○ 正しい。 マンションでは、多くのことが集会(=総会とも)で決まりますから、その集会での内容を記録した「議事録」は、重要な意味をもっています。そして、その記録内容としては、区分所有法第42条2項
 「(議事録)
 第四十二条  集会の議事については、議長は、書面又は電磁的記録により、議事録を作成しなければならない。
   
2  議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、又は記録しなければならない。
   3  前項の場合において、議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名押印しなければならない。
   4  第二項の場合において、議事録が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報については、議長及び集会に出席した区分所有者の二人が行う法務省令で定める署名押印に代わる措置を執らなければならない。
   5  第三十三条の規定は、議事録について準用する。」とあり、
  「議事の経過の要領及びその結果」ですから、議題・議案・討議の内容・表決の結果など要領(まとめ)を記録すれば、いいことになっています。そこで、発言者の内容によっては、記録しなくても許されるものもありますから、発言者全員の要旨を記録する必要はありません。(そこで、議事録の作成者の意図が偏っていると、公平な議事録とならないことが多くあるわけです。)


2 管理者がないときは、区分所有者の1/5以上で議決権の1/5以上を有するものは、連名で、集会の招集をすることができる。

○ 正しい。 原則、管理者(理事長)がいれば、その人が集会を招集しますが、管理者がいない場合でも、区分所有者は集会を招集できます。
  区分所有法第34条5項がその規定です。
 「(集会の招集)
 第三十四条
   5  管理者がないときは、区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。」
 この場合、招集をかける区分所有者は、マンションの区分所有者であることを証明するために、連名にすべきです。なお、区分所有者の数の1/5だけは、規約があれば、減らせますが、議決権の方は1/5以上です。減らせませんので、注意してください。



3 区分所有者全員が打合せのために集まり、その全員の同意があっても、招集の手続を経ていないのでその場で集会を開くことはできない。

X 誤っている。 集会には、面倒な招集手続きが必要なはずなのに、とこの文章だけで、設問の意図が分かれば、かなり勉強している人です。
  これは、区分所有法第36条
 「(招集手続の省略)
 第三十六条  集会は、区分所有者全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで開くことができる。」とあり、
 たまたま、何らかの都合で区分所有者が全員集まった席で、マンションの問題を正式の集会(総会)として討議することを、区分所有者全員が認める(全員の同意)なら、面倒な集会の招集手続きはなくても、それも集会として扱われます。集会を開くことができます。しかし、この場合でも、集会の招集手続きがないだけで、規定された議事録の作成などは当然に必要です。



4 専有部分を3人が共同で相続した場合において、議決権を行使する者が定められていないときは、3人のうちの1人に対して集会の招集通知をすれば足りる。

○ 正しい。 専有部分を3人が共同で相続した場合には、専有部分は3人の共有となります。
  区分所有法では、専有部分が共有の場合、議決権行使者を1人定めることになっています。
 同法第40条
 「(議決権行使者の指定)
 第四十条  専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない。」
 そして、集会の招集通知は、同法35条2項
 「(招集の通知)
 第三十五条
  2  専有部分が数人の共有に属するときは、前項の通知は、第四十条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の一人)にすれば足りる。 」とあり、
 議決権を行使すべき者が定められていれば、その人宛に、もしも、議決権を行使すべき者が定められていない場合には、共有者の一人宛に通知します。


答え:3  (他の選択肢から正解3は分かる。)

問9

〔問 9〕建物の一部が滅失した場合の復旧及び建替えに関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。 

1  建物の価格の1/2以下に相当する部分が滅失したときの、滅失した共用部分の復旧については、各区分所有者が行うことができないこととするとともに、滅失した共用部分を復旧する旨の集会の決議によらなければならない旨を規約に定めることはできない。

X 誤っている。 区分所有法では、建物の一部が滅失した場合、その滅失した建物の価格が1/2以下(小規模滅失といいます)か、1/2超(大規模滅失といいます)か(この判断の難しさはありますが)により、復旧費用の負担に差があると判断して、復旧のやり方を変えて規定しています。建替えとは別の規定ですが、建替えも考慮することができます。


  設問は、滅失した建物の価格が1/2以下(小規模滅失)ですから、区分所有法第61条1項から4項までが適用されます。
 「(建物の一部が滅失した場合の復旧等)
 第六十一条  建物の価格の二分の一以下に相当する部分が滅失したときは、各区分所有者は、滅失した共用部分及び自己の専有部分を復旧することができる。ただし、共用部分については、復旧の工事に着手するまでに第三項、次条第一項(注:建替え決議)又は第七十条第一項(注:団地の一括建替え決議)の決議があつたときは、この限りでない。
  2  前項の規定により共用部分を復旧した者は、他の区分所有者に対し、復旧に要した金額を第十四条に定める割合に応じて償還すべきことを請求することができる。
  3  第一項本文に規定する場合には、集会において、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。
  
4  前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。」です。
 1項により、滅失した共用部分の復旧については、各区分所有者が行うことができますが、4項により、規約で別段の定めができます。



2  建物の価格の1/2以下に相当する部分が滅失したときの、滅失した共用部分の復旧決議の内容が形状の著しい変更を伴う場合には、当該共用部分の復旧は、規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数の集会の決議によらなければならない。

○ 正しい。 選択肢1で引用しました、区分所有法第61条3項
 「3  第一項本文に規定する場合には、集会において、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。」により、
 集会において、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができます。この決議は、区分所有者および議決権の各過半数の決議(同法第39条1項参照。普通決議)でできますが、その滅失した共用部分の復旧決議の内容が形状の著しい変更を伴う場合には、今度は、同法第17条1項
 「(共用部分の変更)
 第十七条  共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
  2  前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。 」の適用となりますから、正しい。

 

3  建物の価格の1/2を超える部分に相当する滅失があり、滅失した共用部分を復旧する旨の集会の決議があった場合において、決議賛成者は、同決議後に買取指定者を指定することができるが、その指定については、決議賛成者の全員の合意を要する。

○ 正しい。 今度は、建物の価格が1/2超(大規模滅失)の場合です。大規模滅失については、区分所有法第61条5項以降が関係の条文です。
 「5  第一項本文に規定する場合を除いて、建物の一部が滅失したときは、集会において、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数で、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。 」とありますから、滅失した共用部分を復旧する旨の集会の決議は有効です。
 そして、買取指定者は、区分所有法第61条8項に規定されています。
 「8  第五項の決議の日から二週間以内に、
決議賛成者がその全員の合意により建物及びその敷地に関する権利を買い取ることができる者を指定し、かつ、その指定された者(以下この条において「買取指定者」という。)がその旨を決議賛成者以外の区分所有者に対して書面で通知したときは、その通知を受けた区分所有者は、買取指定者に対してのみ、前項前段に規定する請求をすることができる。」とあります。よって、決議賛成者の全員の合意で、買取指定者を指定できますから、正しい。




4  建替え決議成立後の売渡請求権の行使に関し、建替え決議に賛成した各区分所有者又は建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)は、買受指定者を指定することができるが、その指定については、これらの者の全員の合意を要する。

○ 正しい。 今度は、建替えです。 建替えでの買取指定者については、区分所有法第63条4項
 「(区分所有権等の売渡し請求等)
 第六十三条
  4  第二項の期間が経過したときは、建替え決議に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)又はこれらの者の
全員の合意により区分所有権及び敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者(以下「買受指定者」という。)は、同項の期間の満了の日から二月以内に、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含む。)に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。建替え決議があつた後にこの区分所有者から敷地利用権のみを取得した者(その承継人を含む。)の敷地利用権についても、同様とする。 」とありますから、正しい。
 

答え:1 (ここは、単に条文を知っているかどうかで、ひねりのない出題です。条文の詳細解説は、私の「超解説 区分所有法」を読んで、特に、建替えの要件や期間を確認しておいてください。 )

問10

*注:標準管理規約は平成28年3月に改正があったので注意の事。
    該当の条文は、必ず改正された標準管理規約で確認のこと。

〔問 10〕組合員Aの甥Bが酒を飲み過ぎて錯乱し、金属バットで共用部分である玄関ドアを破損させた場合における次の記述のうち、区分所有法、民法及びマンション標準管理規約(単棟型)(以下「標準管理規約」という。)の規定によれば、誤っているものはどれか。


 注)マンション標準管理規約は、平成23年7月に役員資格や議決権など小幅な改正があったので、注意のこと。ここは、旧のまま。


1 管理組合は、BがAと同居しているか否かを問わず、Bに対し、損害賠償を請求することができる。

○ 正しい? 不法行為についての出題も殆ど毎年出ている。平成21年 マンション管理士試験 「問12」など。
  この設問は、単に不法行為と思っていたが、突き詰めて考察すると、簡単には回答ができない。
  まず、加害者Bの「酒を飲み過ぎて錯乱」が、民法第713条
 「第七百十三条  精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間に他人に損害を加えた者は、その賠償の責任を負わない。ただし、故意又は過失によって一時的にその状態を招いたときは、この限りでない。 」の規定にどの程度該当するかです。
 加害者Bが日常から自分が飲酒すると錯乱すると認識していれば、錯乱中の行為であっても、責任をのがれないことになりますが、「精神上の障害により自己の行為の責任を弁識する能力を欠く状態にある間」の行為と認定されれば、責任を負わなくなります。
 その場合には、民法第714条
 「(責任無能力者の監督義務者等の責任)
 第七百十四条  前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
  2  監督義務者に代わって責任無能力者を監督する者も、前項の責任を負う。 」の規定により、監督者が責任を負うという事になります。
 そこまで追求しないなら、「金属バットで共用部分である玄関ドアを破損させた場合」は、民法第709条での不法行為に該当します。
 「(不法行為による損害賠償)
 第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 」により、加害者Bには損害賠償の責任があります。
 そして、管理組合が、損害賠償の請求権をもつかについては、
 マンションの共用部分の管理は、標準管理規約21条1項
 「(敷地及び共用部分等の管理)
 21条 敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の管理のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。」により、
 管理組合が、共用部分等の管理をその責任と負担で行うことになっており、管理組合の業務として、加害者Bに対して、管理組合は、損害賠償を請求することができます。この場合、加害者Bがマンション内に居住しているか、区分所有者Aと同居しているかは、無関係です。



2 BがAと同居している場合、以前から、管理組合が酒癖の悪いBの生活の秩序を乱す行為を是正するようAに警告していたときは、Aに対し、損害賠償を請求することができる。

○ 正しい? ここは、直接の加害者でない区分所有者が同居人の行為に対して責任を負うかをきいています。
  ここでも、選択肢1で説明した、「酒を飲み過ぎて錯乱した」の認定が民法上問題になります。加害者Bに責任がなければ、監督者として、同居人Aが責任を負うこともあるでしょうが、その認定はこの設問からは曖昧です。
  多分、出題者の意図としては、標準管理規約67条
 「(理事長の勧告及び指示等)
 第67条 区分所有者若しくはその同居人又は専有部分の貸与を受けた者若しくはその同居人(以下「区分所有者等」という。)が、法令、規約又は使用細則等に違反したとき、又は対象物件内における共同生活の秩序を乱す行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経てその区分所有者等に対し、その是正等のため必要な勧告又は指示若しくは警告を行うことができる。
  2 区分所有者は、その同居人又はその所有する専有部分の貸与を受けた者若しくはその同居人が前項の行為を行った場合には、その是正等のため必要な措置を講じなければならない。
  3 区分所有者等がこの規約若しくは使用細則等に違反したとき、又は区分所有者等若しくは区分所有者等以外の第三者が敷地及び共用部分等において不法行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経て、次の措置を講ずることができる。
   一 行為の差止め、排除又は原状回復のための必要な措置の請求に関し、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行すること
   二 敷地及び共用部分等について生じた損害賠償金又は不当利得による返還金の請求又は受領に関し、区分所有者のために、訴訟において原告又は被告となること、その他法的措置をとること」 あたりを想定して、区分所有者Aにも責任を追及できると、言わせたいのでしょうが、監督責任をこの規定だけで追及できるかは、かなり無理な設問です。



3 BがAからマンションを借りて居住している場合には、Bは、管理組合に対してドアの原状回復義務を負う。

○ 正しい。 ここは、賃借人である加害者は、オーナー(賃貸人)である区分所有者に対して現状回復をするのか、それとも共用部分であるドアの管理をしている管理組合に対して現状回復をするのかの問題です。
  そもそも、区分所有法では、管理組合なる用語が存在していないことが、設問の曖昧さに繋がっています。マンションの区分所有者は全員で団体と規定されているだけです(同法第3条参照)。
 しかし、標準管理規約では、選択肢1で述べたように、管理組合が共用部分の管理を任されていますから、現状回復の相手も管理組合と考えていいでしょう。なお、ドアの錠となると、錠は共用部分ではありませんから、原状回復は、区分所有者に対して行いますよ。 


4 Bが専有部分の共有者である場合には、Aは、共有者として、管理組合に対してBと連帯して損害賠償責任を負う。

X 誤っている。 ここは、共有者であれば、加害者との関係で、共同不法行為
 民法第719条
 「(共同不法行為者の責任)
 第七百十九条  数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
  2  行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。」に該当するかどうかをきいている。
 しかし、ここは、選択肢2との関係で、微妙な設問です。選択肢2を「正しい」とするなら、標準管理規約67条を根拠にせず、民法第714条での監督者責任での追及もあるわけですが、設問の「共有者として」を中心に考えると、単なる「共有者」の立場では、損害行為と関連した共通の認識や共同で損害を与えたとは言えません。
 

答え:4  (設問を「飲酒で錯乱」なんて凝った物にしてくれたために、解説に時間がかかった!)

問11

〔問 11〕一団地内にA、B及びCの三棟のマンションがある場合の区分所有法第65条の団地建物所有者の団体(この問いにおいて「団地管理組合」とい う。)における区分所有法第69条の建替え承認決議に関する次の記述のうち区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 Aマンションの建替え承認決議が成立するためには、団地管理組合の集会において、議決権の3/4以上の多数の賛成を得なければならない。

○ 正しい。 団地での建替えの出題です。このような設問では、図をかいてみましょう。
  「建替え決議(区分所有法第62条)」と「建替え承認決議」の違いは、理解してください。
  3棟のマンションがある団地において、特定の棟の建替え承認決議については、区分所有法第69条があります。
 「(団地内の建物の建替え承認決議)
 第六十九条  一団地内にある数棟の建物(以下この条及び次条において「団地内建物」という。)の全部又は一部が専有部分のある建物であり、かつ、その団地内の特定の建物(以下この条において「特定建物」という。)の所在する土地(これに関する権利を含む。)が当該団地内建物の第六十五条に規定する団地建物所有者(以下この条において単に「団地建物所有者」という。)の共有に属する場合においては、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める要件に該当する場合であつて当該土地(これに関する権利を含む。)の共有者である当該団地内建物の団地建物所有者で構成される同条に規定する団体又は団地管理組合法人の
集会において議決権の四分の三以上の多数による承認の決議(以下「建替え承認決議」という。)を得たときは、当該特定建物の団地建物所有者は、当該特定建物を取り壊し、かつ、当該土地又はこれと一体として管理若しくは使用をする団地内の土地(当該団地内建物の団地建物所有者の共有に属するものに限る。)に新たに建物を建築することができる。
    一  当該特定建物が専有部分のある建物である場合 その建替え決議又はその区分所有者の全員の同意があること。
    二  当該特定建物が専有部分のある建物以外の建物である場合 その所有者の同意があること。
  2  前項の集会における各団地建物所有者の議決権は、第六十六条において準用する第三十八条の規定にかかわらず、第六十六条において準用する第三十条第一項の規約に別段の定めがある場合であつても、当該特定建物の所在する土地(これに関する権利を含む。)の持分の割合によるものとする。
  3  第一項各号に定める要件に該当する場合における当該特定建物の団地建物所有者は、建替え承認決議においては、いずれもこれに賛成する旨の議決権の行使をしたものとみなす。ただし、同項第一号に規定する場合において、当該特定建物の区分所有者が団地内建物のうち当該特定建物以外の建物の敷地利用権に基づいて有する議決権の行使については、この限りでない。
  4  第一項の集会を招集するときは、第六十六条において準用する第三十五条第一項の通知は、同項の規定にかかわらず、当該集会の会日より少なくとも二月前に、同条第五項に規定する議案の要領のほか、新たに建築する建物の設計の概要(当該建物の当該団地内における位置を含む。)をも示して発しなければならない。ただし、この期間は、第六十六条において準用する第三十条第一項の規約で伸長することができる。
  5  第一項の場合において、建替え承認決議に係る建替えが当該特定建物以外の建物(以下この項において「当該他の建物」という。)の建替えに特別の影響を及ぼすべきときは、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者が当該建替え承認決議に賛成しているときに限り、当該特定建物の建替えをすることができる。
    一  当該他の建物が専有部分のある建物である場合 第一項の集会において当該他の建物の区分所有者全員の議決権の四分の三以上の議決権を有する区分所有者
    二  当該他の建物が専有部分のある建物以外の建物である場合 当該他の建物の所有者
  6  第一項の場合において、当該特定建物が二以上あるときは、当該二以上の特定建物の団地建物所有者は、各特定建物の団地建物所有者の合意により、当該二以上の特定建物の建替えについて一括して建替え承認決議に付することができる。
  7  前項の場合において、当該特定建物が専有部分のある建物であるときは、当該特定建物の建替えを会議の目的とする第六十二条第一項の集会において、当該特定建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、当該二以上の特定建物の建替えについて一括して建替え承認決議に付する旨の決議をすることができる。この場合において、その決議があつたときは、当該特定建物の団地建物所有者(区分所有者に限る。)の前項に規定する合意があつたものとみなす。 」です。
 設問は、単純に第69条1項が該当しています。


  


2 建替え承認決議に係るAマンションの建替えが、Bマンションの建替えに特別の影響を及ぼすべきときは、Aマンションの建替えは、団地管理組合の建替え承認決議に係る集会において、Bマンションの区分所有者全員の議決権の3/4以上の議決権を有する区分所有者の賛成を得なければ行うことができない。

○ 正しい。 これは、選択肢1で引用した区分所有法第69条5項
 「5  第一項の場合において、建替え承認決議に係る建替えが当該特定建物以外の建物(以下この項において「当該他の建物」という。)の建替えに特別の影響を及ぼすべきときは、次の各号に掲げる区分に応じてそれぞれ当該各号に定める者が当該建替え承認決議に賛成しているときに限り、当該特定建物の建替えをすることができる。
    一  当該他の建物が専有部分のある建物である場合 第一項の集会において
当該他の建物の区分所有者全員の議決権の四分の三以上の議決権を有する区分所有者
    二  当該他の建物が専有部分のある建物以外の建物である場合 当該他の建物の所有者」の1号に該当しています


   
3 Aマンションの集会において建替え決議に反対した区分所有者は、団地管理組合の集会における建替え承認決議においても、反対の議決権を行使することができる。

X 誤っている。 ある棟で「建替え決議」がなされると、選択肢1で引用した、区分所有法第69条3項
 「3  第一項各号に定める要件に該当する場合における当該特定建物の団地建物所有者は、
建替え承認決議においては、いずれもこれに賛成する旨の議決権の行使をしたものとみなす。ただし、同項第一号に規定する場合において、当該特定建物の区分所有者が団地内建物のうち当該特定建物以外の建物の敷地利用権に基づいて有する議決権の行使については、この限りでない。」とあり、
 その棟で建替え決議に反対した区分所有者であっても、全体として賛成したとみなされ、もう、団地管理組合の集会における建替え承認決議においても反対の議決権は行使できません。この制限は、団地集会で改めて反対となるのは、合理的でないと、立法者が考えたからです。ただし、その区分所有者が別の棟でも専有部分を持っている時には、その別棟での議決権として、反対の議決権の行使は可能です。


4 Aマンション及びCマンションの団地建物所有者は、それぞれのマンションの建替えを目的とする集会において、区分所有者及び議決権の各4/5以上の多数で、両マンションの建替えについて一括して建替え承認決議に付する旨の決議をすることができる。

○ 正しい。 これは、選択肢1で引用した、区分所有法第69条7項
  「7  前項の場合において、当該特定建物が専有部分のある建物であるときは、当該特定建物の建替えを会議の目的とする第六十二条第一項の集会において、
当該特定建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、当該二以上の特定建物の建替えについて一括して建替え承認決議に付する旨の決議をすることができる。この場合において、その決議があつたときは、当該特定建物の団地建物所有者(区分所有者に限る。)の前項に規定する合意があつたものとみなす。」に該当します。

答え:3 (これも、条文のままとは、ひねりがない。団地も、一般の規定で準用されているもの、いないもの。建替えなどは、私の「超解説 区分所有法」で詳細を確認しておいてください。)

問12

〔問 12〕甲管理組合は、規約共用部分である101号室をAに事務所として賃貸していたが、賃貸借期間が満了したので、Aは原状回復のうえ明け渡し、甲は敷金を返還することとなった。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。ただし、原状回復の範囲及び費用負担については、契約に当たって十分な説明が行われていたものとする。

1 敷金については、明渡しの時点ではじめて返還請求権の有無や返還額が確定するので、甲の敷金の返還とAの101号室の明渡しは、同時履行の関係には立たない。

○ 正しい。 敷金が、分からない人は、おいていきますので悪しからず。
   また、最近の最高裁の判例(平成17年12月16日)で、原状回復といっても、通常の補修費用を敷金から控除できないことになっていますから、これも注意してください。設問で「ただし、原状回復の範囲及び費用負担については、契約に当たって十分な説明が行われていたものとする。」とあるのは、このためです。
  まず、同時履行は、民法第533条
 「(同時履行の抗弁)
 第五百三十三条  双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。 」と規定されています。
 契約での公平の理念から、両当事者において、一方がその契約での債務の履行を、相手方もその債務の履行をするまで履行しないことができるものです。これは、通常、同時履行の抗弁権とよばれ、各種の状況で類推適用が見られるために、判例も多くて、探すのが大変です。
 この設問の事件は、最高裁:昭和49年9月2日の判例です。
 それによりますと、賃貸借契約の終了時における敷金の返還(支払)義務と建物の明渡義務は、同時履行の関係はなく、
建物明渡義務の方が先に履行されるとなっています。正しい。


2 明渡し時点で、Aの原状回復に不完全な部分があることが判明した場合、原状回復に要する費用は、損害として、Aに返還すべき敷金から控除される。

○ 正しい。 ここは、原状回復の範囲が最近の判例では、厳密になってきていますので、少し、疑問のある出題です。
   これも、古くからの判例(大審院:大正15年7月12日や昭和7年11月15日)で、賃貸借終了の際、延滞賃料や賃借人が負担する債務(原状回復など)があれば、敷金は、当然に(当事者の意思表示をまたないで)それらの弁済に充当されます。



3 賃貸借契約終了時にAに賃料不払の債務がある場合において、当該賃料不払債務を敷金から控除するときは、賃料請求債権を自働債権とし、敷金返還請求権を受働債権として、対当額にて相殺する旨の意思表示をしなければならない。

X 誤っている。 選択肢2の延長線上にある設問です。 
  これは、最高裁:平成14年3月28日の判決。相殺の関係ではなく、賃貸借契約終了時にAに賃料不払の債務がある場合において、当該賃料不払債務は、当事者の意思表示がなくても、充当されます。敷金の充当による未払賃料等の消滅は、敷金契約から発生する効果であって、相殺のように当事者の意思表示を必要とするものではない、とのことです。
 参考:自働債権:相殺をしようとする者の債権。受働債権:相殺される者の債権。
 相殺:民法第505条及び506条
 「(相殺の要件等)
 第五百五条  二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
  2  前項の規定は、当事者が反対の意思を表示した場合には、適用しない。ただし、その意思表示は、善意の第三者に対抗することができない。

 (相殺の方法及び効力)
 第五百六条  相殺は、当事者の一方から相手方に対する意思表示によってする。この場合において、その意思表示には、条件又は期限を付することができない。
  2  前項の意思表示は、双方の債務が互いに相殺に適するようになった時にさかのぼってその効力を生ずる。」


4 賃貸借契約終了後、Aが101号室を明け渡さず引き続き使用している場合、その間の賃料相当額は、明渡し義務不履行に基づく損害賠償又は不当利得として、敷金から控除される。

○ 正しい。 これは、最高裁:昭和48年2月2日の判決です。賃貸借終了後も、賃借人が継続して占有した場合には、明け渡し終了までの賃料相当額にも敷金は控除(充当)されます。賃貸借契約における敷金契約は、授受された敷金をもって、賃料債権、賃貸借終了後の目的物の明渡しまでに生ずる賃料相当の損害金債権、その他賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得することとなるべき一切の債権を担保することを目的とする賃貸借契約に付随する契約であり、敷金を交付した者の有する敷金返還請求権は、目的物の返還時において、上記の被担保債権を控除し、なお残額があることを条件として、残額につき発生することになる、とのことです。

答え:3   (ウヘッ! まったく、こんな判例は、探すのに時間がかかる! 宅地建物取引主任者試験から流れてきた人は、正解率が高い?)

問13

〔問 13〕マンション業者Aが建設業者Bに請け負わせて、完成させたマンションの10階の1室(1001号室)をCに売却した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 AがCに売却する際、ベランダから山が見え、眺望がよいと説明していたにもかかわらず、3年後に別のマンション業者Dが近くに高層マンションを建設 し、1001号室からは、山が見えなくなった。AのCへの売却時にはDの建築計画が存在しなかった場合でも、説明と異なり眺望が守れなかったことを理由に、Aは、Cに対して債務不履行責任を負う。

X 誤っている。 これも、前の「問12」のように、宅地建物取引主任者試験から流れてきた人は、正解が早い?
 まず、債務不履行とは、民法第415条
 「(債務不履行による損害賠償)
 第四百十五条  債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。 」です。
 そして、この設問では、マンション管理士・管理業務主任者試験では、お馴染みの売主の瑕疵担保責任、民法第570条
 「(売主の瑕疵担保責任)
 第五百七十条  売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。 」
 準用の民法第567条
 「(抵当権等がある場合における売主の担保責任)
 第五百六十七条  売買の目的である不動産について存した先取特権又は抵当権の行使により買主がその所有権を失ったときは、買主は、契約の解除をすることができる。
  2  買主は、費用を支出してその所有権を保存したときは、売主に対し、その費用の償還を請求することができる。
  3  前二項の場合において、買主は、損害を受けたときは、その賠償を請求することができる。 」も関係します。
 また、最近では、消費者契約法も関係しますので注意してください。
 さて、高層マンションの購入条件として、眺望や景観の良さがあげられる事は多いことです。そこで、マンションの購入時には、見通しが良かったが、後に、隣地や空地に建物が建築され眺望が妨げられたので、損害賠償や契約の解除を請求する事件は多発しています。
 これらの、判例の判断基準としては、販売時点で販売業者が建築予定を知っていたのに、購入者に告げない場合の説明義務違反、同じ業者が眺望を売り物にしていながら、眺望や花火見物を妨げる別の建物を建築するなどは信義則に反する不法行為であるとしています。
 そこで、設問に戻りますが、マンション販売業者が販売時点では、建築計画を知らなかったこと、また、建築したのは、他の業者である点から、これだけでは、販売業者に責任追及はできないと判断します。 


2 Aは、売却前に、台所の自動式防火扉が設置され安全性が優れていると説明していたにもかかわらず、その扉のスイッチを切ったままにそのことを告げずに 1001号室をCに引き渡した。また、スイッチもわかりにくい場所にあったので、Cはスイッチが切られていることを知らなかった。その後、Cの過失により 台所から失火し、自動式防火扉が作動しなかったため、逃げ遅れたCは、大やけどを負った。この場合、Aは、Cに対して、スイッチの入れ方等を説明しなかったことを理由に、債務不履行責任を負う。

○ 正しい。 これは、最高裁:平成17年9月16日の判決。設問では、大やけどを負ったとなっていますが、実例は、死亡で、相続人が訴えたものです。
 その判決では、販売業者に防火扉のスイッチを切ったままの状態で引渡したことなどで売買の目的物に隠れた瑕疵があるとして瑕疵担保責任を認め、扉のスイッチの位置や、操作方法の説明義務違反を認めています。債務不履行として、損害賠償が認められました。
 


3 Aは、Bに対し、天井及び床に防音性の高い施工を指示したが、Bは、その指示に反し、防音性の低い工事を行った。Aから、購入前に防音性が優れていると説明を受けていたCは、防音性が説明通りに確保されていないことを理由に、Bに対して補修工事を求めることはできるが、Aに対して損害賠償の請求はできない。

X 誤っている。 購入時に説明されていなかった防音性がなければ、これは、選択肢1で引用した民法第570条で規定する「売買の目的物に不完全な点があり、買主が予期した効果を得られない(隠れた瑕疵)」に該当します。
 すると、準用される、民法566条1項は
 「第五百六十六条  売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。 」とあり、
 買主Cは、売主Aに対して、@契約解除か、A損害賠償の請求 ができますが、
ここには、補修請求が入っていないのです。また、買主Cは、売買契約の当事者でない建設業者Bに対しては補修工事を求めることもできません。なお、売主Aは、注文主として、請負人Bに対して、瑕疵の修補を請求できます。(民法第634条参照)。また、普通に買主が、売主に補修を求めることができているのは、別途の契約やアフターサービスによるものです。アフターサービスや売主の瑕疵担保責任については、平成22年 管理業務主任者試験 「問41」などを参照のこと。


4 Aは、売却に当たって、Cに耐震強度は十分確保されていると説明していたが、後日、Bが設計を依頼した一級建築士Eの法令義務に違反する設計により、 耐震強度が著しく不足することが分かった。この場合、Cは、売主たるAに対しては損害賠償を請求することができるが、Eに対しては不法行為に基づく損害賠償の請求はできない。

X 誤っている。 これは、例の姉歯元一級建築士の事件としてあったもの。平成18年 マンション管理士試験 「問13」にもある。
 耐震強度が、販売時の説明と異なり、著しく不足していれば、選択肢1や選択肢3で説明しました、民法第570条の「売主の瑕疵担保責任」に該当しますから、その結果として買主Cは売主Aに損害賠償の請求が可能です。そして、一級建築士Eの法令義務に違反する設計は、民法第709条
 「(不法行為による損害賠償)
 第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 」に該当しますから、買主Cは、一級建築士Eに対しても、損害賠償の請求ができます。なお、実際の姉歯の裁判は、建築基準法違反と議院証言法違反でした。
  

答え:2  (ここは、選択肢2 の判例を知っていると、選択肢3 の「修補」を知らなくてもできた。)   ここは、別途のまとめ「瑕疵担保責任」も参照のこと。
なお、判例は、判例検索システム http://www.courts.go.jp/search/jhsp0010?action_id=first&hanreiSrchKbn=01 で判決文も確認することが、合格に繋がりますよ。

問14

〔問 14〕甲管理組合は、工務店Aに対して、マンションの敷地にある別棟の集会所の建替え工事を発注し、工事完了後、Aから当該集会所の引渡しを受けた。この場合における工事の瑕疵に関わる修補の請求又は損害賠償の請求に係る次の記述について、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 甲がAに対して瑕疵の修補に代えて、損害賠償の請求を行ったが、Aが損害賠償義務を履行しない場合、甲は、相当の期間を定めなくても瑕疵の修補を請求することができる。

X 誤っている。 請負で瑕疵(この場合隠れたる瑕疵でなくても可)があれば、民法第634条
 「(請負人の担保責任)
 第六百三十四条  仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、
相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
  2  注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第五百三十三条の規定を準用する。 」とあり、
 2項により、損害賠償の請求もできますが、1項の修補の請求をする場合には、「相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求する」ことになります。「相当の期間を定めなくても」は誤りです。



2 甲がAに対して相当の期間を定めて瑕疵の修補の請求を行うとともに、損害の賠償を請求したが、Aが瑕疵の修補義務も損害の賠償義務も履行しない場合、契約の目的を達することができないとして、甲は、契約を解除することができる。

X 誤っている。 設問の「相当の期間を定めて瑕疵の修補の請求を行う」と、ここに、選択肢1の正解がありますが、それは、さておき、
  請負で契約した目的が達せられない時には、民法第635条
 「第六百三十五条  仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。
ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。 」とあります。
 そこで、工事の内容が問題となります。「集会所の建替え工事」は、この第635条でのただし書きにある「建物その他の土地の工作物」に該当しますから、管理組合甲は、残念ながら、契約の解除はできません。この立法の趣旨は、このような場合に契約の解除を認めると、請負人の負担が大きくなるだけでなく、社会的にも損失が大きいためだということです



3 瑕疵の修補に過分の費用を要する場合には、瑕疵の重要性にかかわらず、甲は、Aに対して損害賠償を請求することができるが、瑕疵の修補を請求することはできない。

X 誤っている。 瑕疵の修補に過分の費用を要する場合は、選択肢1で引用した民法第634条の解釈です。
 「(請負人の担保責任)
 第六百三十四条  仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。
ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
  2  注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第五百三十三条の規定を準用する。 」とあります。
 よく読むと、@損害賠償の請求は、例外なく可能です。A修補請求は原則認められるが、瑕疵が重要でない場合で、過分の費用がかかる場合にはできない、ということです。
 設問は、「瑕疵の重要性にかかわらず、・・・瑕疵の修補を請求することはできない。」となっていますから、この箇所が間違いです。
 


4 甲がAに対して相当の期間を定めて修補を請求した場合において、Aが期間内に修補をしないときは、甲は、瑕疵の修補に代わる損害賠償の請求をすることができる。

○ 正しい。 選択肢1及び2で説明したように、期間を定めて修補を請求しても修補しない時には、管理組合甲は、修補に代わる損害賠償の請求ができます。


答え:4  (選択肢2 のただし書きを知っていないと、少し難しいかも?)

問15

〔問 15〕甲マンション管理組合(管理者A)が、敷地内の樹木の伐採及び剪定(せんてい)について、造園業者Bと請負契約をした場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び、判例によれば、正しいものはどれか。

1 AB間において、報酬支払を「業務着手の日の7日前までに3割の前払金、業務完了後7日以内に残りの金額」と約した場合、業務着手の7日前までにAがBに3割の前払金を支払わなかったときは、Bは直ちにAとの契約を解除することができる。

X 誤っている。 管理者Aが契約内容にある前払金を支払わないのは、履行遅滞となり、民法第541条
 「(履行遅滞等による解除権)
 第五百四十一条  当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が
相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。 」とある。
 これも、前問 「問14」の選択肢1のように「相当の期間を定めてその履行の催告」が必要です。「直ちに」契約解除は、やりすぎです。



2 Bが当該業務に着手し、剪定作業等が終了した時点で、甲の内部で伐採木の選定をめぐり紛糾したため、やむを得ず伐採を中止することとした場合、AはBの損害を賠償して、契約を解除することができる。

○ 正しい。 請負契約の中途解除です。請負契約は請負人からは契約の中途解除ができませんが、注文主からは出来ます。
 これは、民法第641条
 「(注文者による契約の解除)
 第六百四十一条  請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。」です。
 注文主である管理者Aは、業者Bに損害を賠償して、契約を解除することができます。



3 業務のおおよそ半分を終えた時点で、Bの責めに帰すべき事由により請負契約が終了した場合において、Bが債務不履行責任を負うときは、Aは、Bに対して残った業務を実施するために要する費用の全額について、損害賠償を請求することができる。

X 誤っている? 設問の場合の債務不履行と損害賠償の範囲は、民法第415条と同第416条がある。
 「(債務不履行による損害賠償)
 第四百十五条  債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。」
 「(損害賠償の範囲)
 第四百十六条  債務の不履行に対する損害賠償の請求は、
これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
  2  特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。」
 管理者Aが損害賠償を請求できるが、問題は、その損害賠償の範囲である。
 損害賠償では、@通常発生する損害(1項)と、A特別の事情によって発生する損害(2項)を請求できるが、「造園業者Bに対して残った業務を実施するために要する費用の全額」が請求できるは、おかしい。 残った業務を行う費用の全額については、管理組合はまだ支出も無いわけで、これは、「通常生ずべき損害の賠償=相当因果関係のある部分)」に入っていないと解するのが妥当でしょう。管理者Aが請求できるのは、既にした契約解除に伴う費用や、債務不履行がなければ、しなくてもよかった次の剪定・伐採契約締結にかかる手間などの費用の請求までと考えます。

 *判例があった。最高裁:昭和60年5月17日: 請負において、仕事が完成に至らないまま契約関係が終了した場合に、請負人が施工ずみの部分に相当する報酬に限つてその支払を請求することができるときには、注文者は、右契約関係の終了が請負人の責に帰すべき事由によるものであり、請負人において債務不履行責任を負う場合であつても、注文者が残工事の施工に要した費用については、請負代金中未施工部分の報酬に相当する金額を超えるときに限り、その超過額の賠償を請求することができるにすぎないものというべきである。
 この判決文の説明が必要でしょう。具体的には、元の契約金(A)から済んだ部分(B)(判例は85%完成で仕事の放棄)を除いて(A-B=C)、次の契約で実際に必要となった金額(D)(これが、元の契約のCより高かった)、D-C を払え というものです。 


4 業務完了後、業務内容に瑕疵があり、AがBに対して損害賠償の請求をする場合において、Aの損害賠償請求権とBの報酬残金請求権とは、相殺することができない。

X 誤っている。 相殺は、「問12」 選択肢3 でも出ている。今年の出題者は、この分野が好きなようだ。 平成23年 管理業務主任者試験 「問11」 。
  相殺は、民法第505条1項
 「(相殺の要件等)
 第五百五条  二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。」とあり、業務が完了していれば、Aの損害賠償請求権とBの報酬残金請求権との相殺は可能。
 そして、業務内容に過失(瑕疵)があれば、民法第418条
 「(過失相殺)
 第四百十八条  債務の不履行に関して債権者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の責任及びその額を定める。」となります。参考:平成19年 マンション管理士試験 「問14」 選択肢3。



答え:2  (選択肢3 の出題意図が曖昧で、調べるのに時間がかかった!)

問16

〔問 16〕甲管理組合が看板製作業者Aに対して、マンションの屋上に設置されている甲所有の看板を撤去し新しい看板に取り替える請負工事を発注したとこ ろ、工事中にAの従業員の過失により落下事故が発生した。この件に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。ただし、甲に おいて、注文又は指図について過失はなかったものとする。

1 落下した看板によって、通行人を負傷させ、Aが使用者責任に基づき被害者への損害を賠償した場合、Aは、注文者である甲に対して求償することはできない。

○ 正しい。 使用者責任も過去問題は多い。平成16年 マンション管理士試験 「問17」など。
  ここは、二段階の解説が必要です。
  まず、看板業者Aの従業員の過失で、第三者に被害を与えると、民法第715条
 「(使用者等の責任)
 第七百十五条  ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
  2  使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
  3  前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。」の1項により、
 看板業者Aは、被害者への損害賠償責任があるのは、このとおり。
 次に、その場合、発注主(注文主)である管理組合の責任は、民法第716条
 「(注文者の責任)
 第七百十六条  注文者は、請負人がその仕事について第三者に加えた損害を賠償する責任を負わない。ただし、注文又は指図についてその注文者に過失があったときは、この限りでない。 」とあります。
 設問では、「注文主の管理組合甲に おいて、注文又は指図について過失はなかったものとする。」とありますから、看板製造業者Aは、注文主の管理組合甲に求償できません。この、注文主と請負人の関係は、使用者と被用者の関係ではありませんから注意してください。正しい。



2 落下した看板によって、隣家に損傷を与えた場合、甲は看板の所有者として隣家の所有者に対して責任を負う。

X 誤っている。 選択肢1との関係で、無駄でおかしな設問と思わないでください。
  この出題意図は、土地工作物なら、民法第717条
 「(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
 第七百十七条  土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
  2  前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
  3  前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。」の規定との関係をきいています。
 ここでいう「土地の工作物」とは、建物や橋、堤防などで、「設置又は保存に瑕疵がある」とは、それらの造り方やその後の修理などに不備な点があったことになります。
 設問では、看板の撤去作業での、請け負った業者の作業員の過失ですから、瑕疵と損害に因果関係がないため、管理組合は、たとえ、看板の所有者であっても、隣家の損害に対しては責任は、負いません。民法第717条の適用は、困難と判断します。



3 マンションの居住者が、カラーコーン等で仕切られた工事区域に無断で立ち入り、落下した看板により負傷した場合、当該マンションの居住者は、Aに対して不法行為に基づく損害賠償を請求することはできない。

X 誤っている。 カラーコーン等で仕切られた工事区域に無断で立ち入り、落下した看板により負傷した場合には、被害者に過失があった場合となりますが、不法行為として、被害者は、民法第709条
 「(不法行為による損害賠償)
 第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 」の規定で、損害賠償の請求はできます。
 しかし、過失があると、民法第722条
 「(損害賠償の方法及び過失相殺)
 第七百二十二条  第四百十七条の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。
  2  被害者に過失があったときは、裁判所は、これを考慮して、損害賠償の額を定めることができる。 」の2項により、
 損害賠償額が裁判所の考慮で、減額されることもあります。



4 落下した看板によってマンションの屋上に損傷を与えた場合、甲は、屋上に損傷を受けた時から起算して、1年以内でなければ、損害賠償の請求はできない。 

X 誤っている。 この設問は、請負における瑕疵担保責任での損害賠償ができる期間をきいています。
 それは、民法第637条
 「(請負人の担保責任の存続期間)
 第六百三十七条  前三条(注:第634条は請負人の担保責任。第635条は注文主の解除権。第636条は第634条と第635条の例外規定)の規定による瑕疵の修補又は損害賠償の請求及び契約の解除は、仕事の目的物を引き渡した時から一年以内にしなければならない。
 2  仕事の目的物の引渡しを要しない場合には、前項の期間は、仕事が終了した時から起算する。」です。
  この規定によると、仕事の目的物を引き渡した時から一年以内(新しい看板を設置した時を仕事の目的物の引渡しと考えるのが妥当か)なら、損害賠償の請求はできます。屋上に損傷を受けた時から1年以内ではありません。第634条などについては、「問14」を参照。また、土地工作物の特則が第638条にあることも注意のこと。

 別の解説:落下した看板によってマンションの屋上に損傷を与えた場合は、上で引用した民法第637条に該当しない。
 この場合は、債務不履行での損害賠償請求の民法第167条
 「(債権等の消滅時効)
  第百六十七条  債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
  2  債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。 」の1項での10年以内は請求できる。
 また、不法行為と解釈もできる。そのときは、民法第724条
 「(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
  第七百二十四条  不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。」により、損害を知ってから3年以内に請求できます。
 共に、「 1年以内でなければ、損害賠償の請求はできない」とするものではありません。(こちらの解説の方が、いい。)  



答え:1  (請負は、「問14」、「問15」も出ている。)

問17

〔問 17〕マンション(管理組合甲)のA所有の301号室をBが賃借し居住している場合に関する次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 Bが、ベランダから誤って物干し竿を落下させ、荷物を配送中の宅配業者の従業員に怪我をさせた場合、B及び甲は、怪我をした宅配業者の従業員に対して損害賠償責任を負う。

X 誤っている。 マンションを借りているBの、「ベランダから誤って物干し竿を落下させ、荷物を配送中の宅配業者の従業員に怪我をさせた」行為は、民法第709条
 「(不法行為による損害賠償)
 第七百九条  故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 」の不法行為に該当します。
 行為者Bは、被害者である宅配業者の従業員に対して損害賠償責任を持ちます。
 では、次に設問にある管理組合甲の責任を検討しましょう。
 区分所有法第9条
 「(建物の設置又は保存の瑕疵に関する推定)
 第九条  建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する。」とあり、
 この場合には、共用部分を管理する区分所有者が全体で(区分所有者の団体として=管理組合)責任を負います。(注:ここの、区分所有者の団体とか、区分所有者が全員でとか、管理組合とかが入り組んで解説されているのが、区分所有法だと理解してくれるとうれしい。)
 設問では、「賃借人Bが、ベランダから誤って物干し竿を落下させ」とあり、原因がはっきりしていますから、区分所有法第9条での「建物の設置又は保存に瑕疵がある」には該当しません。賃借人Bだけが賠償責任を負います。管理組合甲には損賠賠償責任はありません。 


2 301号室のベランダの外壁タイルが経年劣化によりはがれ落ちて、通行人が怪我をした場合、マンションの区分所有者全員が怪我をした通行人に対して損害賠償責任を負い、Bが責任を負うことはない。

X 誤っている。  まず、マンションのベランダの外壁タイルは、共用部分ですから、経年劣化によりはがれ落ちて、通行人が怪我をした場合には、建物の保存での瑕疵に該当し、選択肢1で引用した区分所有法第9条により、区分所有者全員が、被害者に責任を負います。
 次に、賃借人Bの責任を検討します。
 マンションでは賃借人は建物の管理には原則として参加していませんが、民法第717条1項
 「(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
 第七百十七条  土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、
その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。 」の規定です。
 「土地の工作物」は建物・橋・堤防などを指していますから、保存に瑕疵がある場合に、占有者は必要な注意をしていないと、被害者に損害賠償をしなければなりません。マンションの賃借人は占有者に該当していますから、例えば、外壁のタイルが今にも落ちそうであることを知っていて、そのまま放置した場合には、賃借人も責任を負います。


3 Bが、Bの洗濯機の排水ホースの締付けが不十分で外れたことに気がつかず洗濯し、床に水をあふれさせ、階下の201号室の区分所有者に損害を与えた場合、Aのみが、201号室の区分所有者に対して損害賠償責任を負う。

X 誤っている。 どうして区分所有者Aのみを出題したのか、実に分かり難く解説者にとっても不可解で不適切な設問です。
 まず、賃借人Bの過失により、被害を与えていますから、選択肢1で引用しました民法第709条の不法行為と選択肢2で引用しました民法第717条の占有者の責任により、賃借人Bが一次的に賠償責任を負います。
 では、次に区分所有者Aの責任の検討です。
 選択肢1で引用しましたように、区分所有法第9条の規定では、共用部分の設置・保存の瑕疵とありますから、床に水をあふれさせての漏水が共用部分である排水管や建物の仕様が原因であれば、区分所有者全員の責任ともなります。
 ともに、区分所有者Aのみが賠償責任を負うことはない、にはなりますが、スッキリしない設問です。



4 401号室の居住者が洗面所の水をあふれさせ、階下の301号室の天井の仕上げ部分及びBの家財に損害を与えた場合、401号室の居住者は、甲及びBに対して損害賠償責任を負うが、Aに対しては負わない。

X 誤っている。 ここは、急に細かな設問です。
  上記の各設問から、何をきいているのか、なかなか分からない。
  多分、階下の天井の仕上げ部分、賃借人の家財の所有形態の違いを聞いているのでしょう。
  過失により、階下の301号室の賃借人Bの家財に損害を与えれば、当然に加害者である401号室の居住者は、被害者Bへ損害賠償をしなければなりません。
 次に、301号室の区分所有者Aへの賠償ですが、専有部分と共用部分の仕切りは難しいのですが、天井の仕上げ部分は専有部分と考えて、区分所有者であるAにも、加害者は、損害賠償責任があると言わせたいのでしょう。
 さらに、管理組合甲にも検討が必要。
 これは、選択肢3でも述べましたように、共用部分の瑕疵であれば、管理組合甲が、反対に賠償責任を負う事もあるわけです。それに、設問として、漏水が共用部分にも損害を与えたとかの記述が欲しい設問です。そうでないと、管理組合甲の出番がありません。

答え:なし? (全部、誤っている。おかしな出題です。) (同様に、あやふやな出題が、平成16年 マンション管理士試験 「問17」 にある。 実に似たような、出題だ。マンション管理センターは、またミスをやったようだ。) (また、この問題は、平成22年 マンション管理士 「問3」 も参考にしてください。)

 また、平成22年 管理業務主任者試験 「問5」 も参考に。

マンション管理センターの答え:2


*当解説に対して、以下の様な質問がきましたので紹介します。
 設問では「民法及び区分所有法の規定」による、「301号室の賃借人で『占有者』であるBの責任」を問うています。
 と、いうことは、占有外の存在である外壁タイルについてBの責任の追求は、ここでの設問には該当しません。

 Bは「ベランダ」を占有しているだけであって、「その外壁」にまでは占有権は及ばず、解説文中、赤字で書かれた民法717条「その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。」の「占有者」にBは該当しませんよね?

 もちろん、おっしゃるように危険を予知していながら放置するような行為は、何らかの義務違反等に該当するかも知れませんし、その責任の所在を問われるかも知れませんが、それはBの個人的な責任であり、必ずしも「占有者」という立場に居る者が問われる責任とは、少し種類が違うと思います。
 また、設問ではBが危険を予見していたとの記述は無く、民法や区分所有法で何らかの責任を問われるケースではないと思いますが・・・。
 また、ベランダには落下防止の柵などが為されていて、容易に「外壁タイル」を確認できません(少なくとも我が家の場合)ベランダの柵から身を乗り出して目視したとしても、経年劣化の確認は困難だと思われますし。
(テストハンマーや建研式接着力試験器の出番?)

 この設問が「窓ガラス」であり、「ひび割れを放置していて落下させ、通行人が怪我をした」という設問なら、通常の注意で窓ガラスのひび割れも発見できるでしょうし、占有者の責任を問うのも理解できるのですが。

*他の読者は、どう思われますか?
 占有者、共用部分、必要な注意、など、他の方も、疑問点や質問点があると思われます。
  ここだけでなく、ご意見をお寄せください。
  宛先は、http://tk4982.at.webry.info/ へどうぞ。

*質問に対する追記の解説: 大変にいい疑問です。

 この質問をまとめますと、
●マンションにおいて、占有者(賃借人)が、建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、占有者はどこまで、責任を負うのか
 になると思います。
 
 そして、その責任の範囲としては、
   ア.専有部分(借りている室)だけ
   イ.専有部分と共用部分の内、専用使用が認められているベランダ(バルコニー)だけ
   ウ.専有部分と共用部分の全て
 に分類できるでしょう。

 まず、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)第9条
 「建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する。」とあり、
 *建物の設置又は保存に瑕疵があるとは?
  建物が通常備えていなければいけない性状や設備が不完全であり、安全性が欠けている状態です。
  建物の建築時から存在することもあり、その後の維持管理によって発生することもあります。過失の有無を問いません。

  区分所有法第9条は、その原因が、特定の専有部分にあることが立証されない限り、共用部分を全体で管理する区分所有者全員の共同責任としています。
 
 また、この区分所有法第9条の前提として、区分所有建物以外の戸建などで適用される、民法民法第717条1項
 「土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」があります。
 ここは、第一次として、占有者が賠償責任を負い、その占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、第二次として、所有者に損害賠償責任を負わしています。

 そこで、占有者の責任範囲に戻りましょう。
  ア.専有部分(借りている室)
  については、民法第717条1項の占有者として、責任を負う、は問題がなさそうです。
 それでは、専有部分は除いて、共用部分の内
 イ.専用使用が認められているベランダ(バルコニー)だけ
 ウ.共用部分の全て
 を検討します。

 イ.占有者は、マンションの管理には直接参加できないので、共用部分の内専用使用をしているベランダや玄関ポーチなどしか、責任を負わない、と考えるか(質問者の立場)
 ロ.マンションの外壁は、ベランダと同じように専有部分でなく共用部分ですから、ベランダを管理しているなら、外壁も管理の対象に入るという、考え方もあります。
 また、日常の共用部分の管理は誰がするのか(誰がしているのか)。この観点から、占有者しか共用部分の管理ができないのだから、責任を問うという考え方もあります。

 法律は、多くの部分が具体的な事柄に合わせて考え方(解釈)によって適用・運用されてされていることは、ご承知の通りです。法の規制を受ける国民として、自分の考えを主張することは、非常に大切な行為です。
特に区分所有法は立法されてからの期間がまだ短いため、明確でない箇所が多い法律ですから、互いの主張を述べて行きましょう。

 なお、当件に関しては、私は、区分所有者が住んでいないために日常の管理ができないため、占有者が所有者を代理した関係で、共用部分を管理する責任を負うと、判断しています。

問18

〔問 18〕マンションの登記に関する次の記述のうち、不動産登記法及び区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。 

1 マンション分譲業者を表題部所有者とする表題登記がされた後、敷地権付き区分建物の一つを購入した者が、直接自己名義で所有権の保存の登記を申請した場合、登記記録には登記原因及びその日付も登記される。

○ 正しい。 不動産登記法についても、例年1問は出題されます。そこで、不動産登記法の解説も、私のホームぺージ「目指せ! マンション管理士・管理業務主任者」の中の、「超解説 区分所有法」にありますので、参考にしてください。
  設問の所有権の保存登記は、不動産登記法第74条
 「(所有権の保存の登記)
 第七十四条  所有権の保存の登記は、次に掲げる者以外の者は、申請することができない。
    一  表題部所有者又はその相続人その他の一般承継人
    二  所有権を有することが確定判決によって確認された者
    三  収用(土地収用法 (昭和二十六年法律第二百十九号)その他の法律の規定による収用をいう。第百十八条第一項及び第三項から第五項までにおいて同じ。)によって所有権を取得した者
  2  区分建物にあっては、表題部所有者から所有権を取得した者も、前項の登記を申請することができる。この場合において、当該建物が敷地権付き区分建物であるときは、当該敷地権の登記名義人の承諾を得なければならない。」とあり、
 2項の区分建物に該当しますから、前半は正しい。
 そして、 登記の記載において、敷地権付き区分建物は、不動産登記法第76条1項
 「(所有権の保存の登記の登記事項等)
 第七十六条  
所有権の保存の登記においては、第五十九条第三号の規定にかかわらず、登記原因及びその日付を登記することを要しない。ただし、敷地権付き区分建物について第七十四条第二項の規定により所有権の保存の登記をする場合は、この限りでない。」とあり、 ただし書きにより、登記原因及びその日付を登記します。




2 敷地権付き区分建物について売買を原因とする所有権の移転の登記をする場合、同時に、敷地権の移転の登記をしなければならない。

X 誤っている。 敷地権付き区分建物として登記があり、所有権の移転があると、不動産登記法第73条1項
 「(敷地権付き区分建物に関する登記等)
 第七十三条  敷地権付き区分建物についての所有権又は担保権(一般の先取特権、質権又は抵当権をいう。以下この条において同じ。)に係る権利に関する登記は、
第四十六条の規定により敷地権である旨の登記をした土地の敷地権についてされた登記としての効力を有する。ただし、次に掲げる登記は、この限りでない。 (以下略)」とあり、
 敷地権の移転登記は不要(逆に、敷地権だけの移転登記はできない)です。これで、マンションの建物の権利である専有部分と土地の権利である敷地利用権が共に移動する訳です(区分所有法第22条参照)。なお、敷地利用権と敷地権の違いは、別途、まとめておいてください。


3 共用部分である旨の登記を申請する場合において、当該共用部分である建物に所有権以外の権利に関する登記があるときは、当該権利の登記名義人の承諾を得なければならない。

○ 正しい。  これは、過去も出ている? 当然です。
  マンションの共用部分として、登記をする時には、不動産登記法第58条3項
 「(共用部分である旨の登記等)
 第五十八条  
   3  共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記は、当該共用部分又は団地共用部分である建物に所有権等の登記以外の権利に関する登記があるときは、
当該権利に関する登記に係る権利の登記名義人(当該権利に関する登記が抵当権の登記である場合において、抵当証券が発行されているときは、当該抵当証券の所持人又は裏書人を含む。)の承諾があるとき(当該権利を目的とする第三者の権利に関する登記がある場合にあっては、当該第三者の承諾を得たときに限る。)でなければ、申請することができない。 」に該当します。


4 マンションの近傍にある駐車場を規約により敷地とした場合、規約により敷地となった日から1月以内に建物の表題部の変更登記を申請しなければならない。

○ 正しい。 マンションの近傍にある駐車場は規約により建物の敷地(規約敷地です)とすることができ(区分所有法第5条参照)、これも、敷地権と登記して専有部分と分離処分をできなくすることができます。
 不動産登記法第44条1項9号
 「(建物の表示に関する登記の登記事項)
 第四十四条  建物の表示に関する登記の登記事項は、第二十七条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
   九  建物又は附属建物が区分建物である場合において、当該区分建物について区分所有法第二条第六項 に規定する敷地利用権(登記されたものに限る。)であって、区分所有法第二十二条第一項 本文(同条第三項 において準用する場合を含む。)の規定により
区分所有者の有する専有部分と分離して処分することができないもの(以下「敷地権」という。)があるときは、その敷地権 」
 これは、建物の表題部の変更を伴いますから、不動産登記法第51条1項
 「(建物の表題部の変更の登記)
 第五十一条  第四十四条第一項各号(第二号及び第六号を除く。)に掲げる登記事項について変更があったときは、表題部所有者又は所有権の登記名義人(共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の場合にあっては、所有者)は、
当該変更があった日から一月以内に、当該登記事項に関する変更の登記を申請しなければならない。」とりますから、
 正しい。

答え:2 

問19

〔問 19〕マンション建替組合(この問いにおいて「建替組合」という。)が施行するマンション建替事業に関する次の記述のうち、マンションの建替えの円滑化等に関する法律の規定によれば、正しいものはどれか。

1 建替組合は、区分所有法第63条第4項に規定する建替えに参加しない旨を回答した区分所有者に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求しようとするときは、あらかじめ都道府県知事の承諾を得なければならない。

X 誤っている。 マンションの建替えの円滑化等に関する法律からも、毎年1問は出題されます。 そこで、この「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」(以下「マンション建替え法」という)の概要も、別途まとめていますので、ご利用ください。
 建替えでの区分所有権及び敷地利用権の売渡請求は、区分所有法第63条4項の規定を受け、マンション建替え法第15条
 「(区分所有権及び敷地利用権の売渡し請求)
 第十五条  組合は、前条第一項の公告の日(その日が区分所有法第六十三条第二項 (区分所有法第七十条第四項 において準用する場合を含む。)の期間の満了の日前であるときは、当該期間の満了の日)から二月以内に、区分所有法第六十三条第四項 (区分所有法第七十条第四項 において準用する場合を含む。)に規定する建替えに参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含み、その後に建替え合意者等となったものを除く。)に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。建替え決議等があった後に当該区分所有者から敷地利用権のみを取得した者(その承継人を含み、その後に建替え合意者等となったものを除く。)の敷地利用権についても、同様とする。
  2  前項の規定による請求は、建替え決議等の日から一年以内にしなければならない。ただし、この期間内に請求することができなかったことに正当な理由があるときは、この限りでない。
  3  区分所有法第六十三条第五項 から第七項 まで(区分所有法第七十条第四項 において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定は、第一項の規定による請求があった場合について準用する。この場合において、区分所有法第六十三条第六項 中「第四項 」とあるのは、「マンションの建替えの円滑化等に関する法律第十五条第一項」と読み替えるものとする。」とあります。
  1項により、区分所有法で建替えに参加しない旨を回答した区分所有者に対しても、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求できます。これに対しては、「あらかじめ都道府県知事の承諾を得なければならない。」の条件はありません。 


2 建替組合が権利変換計画の認可を申請するため、施行マンションについて権利を有する者の同意を得るに当たり、借家権を有する者については、当該住宅の区分所有者から同意を得ていれば、借家権を有する者の同意まで得る必要はない。

X 誤っている。 権利変換計画の認可を申請に当たっては、マンション建替え法第57条
 「(権利変換計画の決定及び認可)
 第五十七条  施行者は、前条の規定による手続に必要な期間の経過後、遅滞なく、権利変換計画を定めなければならない。この場合においては、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の認可を受けなければならない。
  2  施行者は、前項後段の規定による認可を申請しようとするときは、権利変換計画について、あらかじめ、組合にあっては総会の議決を経るとともに施行マンション又はその敷地について権利を有する者(組合員を除く。)及び隣接施行敷地がある場合における当該隣接施行敷地について権利を有する者の同意を得、個人施行者にあっては施行マンション又はその敷地(隣接施行敷地を含む。)について権利を有する者の同意を得なければならない。ただし、次に掲げる者については、この限りでない。
    一  区分所有法第六十九条 の規定により同条第一項 に規定する特定建物である施行マンションの建替えを行うことができるときは、当該施行マンションの所在する土地(これに関する権利を含む。)の共有者である団地内建物の区分所有法第六十五条 に規定する団地建物所有者(以下単に「団地建物所有者」という。)
    二  その権利をもって施行者に対抗することができない者
  3  前項の場合において、区分所有権等以外の権利を有する者から同意を得られないときは、その同意を得られない理由及び同意を得られない者の権利に関し損害を与えないようにするための措置を記載した書面を添えて、第一項後段の規定による認可を申請することができる。
  4  第二項の場合において、区分所有権等以外の権利を有する者を確知することができないときは、その確知することができない理由を記載した書面を添えて、第一項後段の規定による認可を申請することができる。」とあり、 
 2項により、敷地についての権利を有する人(借家権を有する者)の同意も必要です。


3 建替組合は、権利変換計画の認可を受けたときは、遅滞なく、登記所に、施行マンションの区分所有権及び敷地利用権について、権利変換手続開始の登記を申請しなければならない。 

X 誤っている。 権利変換手続開始の登記申請は、マンション建替え法第55条1項
 「(権利変換手続開始の登記)
 第五十五条  施行者は、次に掲げる
公告があったときは、遅滞なく、登記所に、施行マンションの区分所有権及び敷地利用権(既登記のものに限る。)並びに隣接施行敷地の所有権及び借地権(既登記のものに限る。)について、権利変換手続開始の登記を申請しなければならない。
    一  組合が施行するマンション建替事業にあっては、
第十四条第一項の公告又は新たな施行マンションの追加に係る事業計画の変更の認可の公告
    二  個人施行者が施行するマンション建替事業にあっては、その施行についての認可の公告又は新たな施行マンションの追加に係る事業計画の変更の認可の公告」とあり、

同法第14条1項
 「(認可の公告等)
 第十四条  都道府県知事は、第九条第一項の規定による認可をしたときは、遅滞なく、国土交通省令で定めるところにより、組合の名称、施行マンションの名称及びその敷地の区域、施行再建マンションの敷地の区域、事業施行期間その他国土交通省令で定める事項を
公告し、かつ、関係市町村長に施行マンションの名称及びその敷地の区域、施行再建マンションの設計の概要及びその敷地の区域その他国土交通省令で定める事項を表示する図書を送付しなければならない。
  2  組合は、前項の公告があるまでは、組合の成立又は定款若しくは事業計画をもって、組合員その他の第三者に対抗することができない。
  3  市町村長は、第三十八条第六項又は第八十一条の公告の日まで、政令で定めるところにより、第一項の図書を当該市町村の事務所において公衆の縦覧に供しなければならない。」とあり、
 1項によると、マンション建替組合設立の認可をすると公告がなされます。このマンション建替組合設立認可の公告があれば、遅滞なく、権利変換手続開始の登記を申請します。「権利変換計画の認可を受けたとき」ではありません。(建替組合設立を認可をしたあとで、公告があります。細かい!)(2011年6月5日:追記)

               
4 施行マンションの区分所有権又は敷地利用権を有する者は、建替組合に対し、権利の変換を希望せず、自己の有する区分所有権又は敷地利用権に代えて金銭の給付を希望する旨を申し出ることができる。

○ 正しい。 権利変換を希望しないで、お金でもらうこともできます。
  マンション建替え法第56条1項
 「(権利変換を希望しない旨の申出等)
 第五十六条  第十四条第一項の公告又は個人施行者の施行の認可の公告があったときは、施行マンションの区分所有権又は敷地利用権を有する者は、その公告があった日から起算して三十日以内に、施行者に対し、第七十条第一項及び第七十一条第二項の規定による権利の変換を希望せず、自己の有する区分所有権又は敷地利用権に代えて金銭の給付を希望する旨を申し出ることができる。」の規定です。

答え:4 (ここは、他は自信がなくても、何となく選択肢4 は分かる?)

問20

〔問 20〕建築基準法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 高さ20mを超える建築物には、周囲の状況によって安全上支障がない場合を除き、有効な避雷設備を設けなければならない。

○ 正しい。 建築基準法についても、出題は必ずある。 そこで、私のホームページでも「超解説 建築基準法」としてまとめましたので、ご利用ください。 また、過去問題の中でも、「建築基準法」として、取りだしていますので、これも、ご利用ください。
  この避雷設備は、過去問題をやっていれば、簡単。 平成18年 マンション管理士試験 「問21」 や、平成20年 管理業務主任者試験 「問21」 など。
建築基準法第33条
 「(避雷設備)
  第三十三条  高さ二十メートルをこえる建築物には、有効に避雷設備を設けなければならない。ただし、周囲の状況によつて安全上支障がない場合においては、この限りでない。 」のとおり。



2 高さ70cmを超える階段の部分には手すりを設けなければならず、手すりが設けられていない側には、側壁又はこれに代わるものを設けなければならない。

X 誤っている。 こんな、細かいものまでもでる。 でも、ここは、平成15年 管理業務主任者試験 「問16」 で出ている。 
 階段とてすりは、建築基準法施行令第25条
 「(階段等の手すり等)
 第二十五条  階段には、手すりを設けなければならない。
 2  階段及びその踊場の両側(手すりが設けられた側を除く。)には、側壁又はこれに代わるものを設けなければならない。
 3  階段の幅が三メートルをこえる場合においては、中間に手すりを設けなければならない。ただし、けあげが十五センチメートル以下で、かつ、踏面が三十センチメートル以上のものにあつては、この限りでない。
 4  前三項の規定は、
高さ一メートル以下の階段の部分には、適用しない。 」とあります。
 4項によりますと、階段の高さが1mを超えると、手すりが必要です。70cmではありません。


  

3 共同住宅の地上階における居室には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して1/7以上としなければならない。

○ 正しい。 ここも、よくでる問題。 平成17年 管理業務主任者試験 「問17」 など。
 地上の居室の採光は、建築基準法第28条1項
 「(居室の採光及び換気)
 第二十八条  住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室(居住のための居室、学校の教室、病院の病室その他これらに類するものとして政令で定めるものに限る。)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その
居室の床面積に対して、住宅にあつては七分の一以上、その他の建築物にあつては五分の一から十分の一までの間において政令で定める割合以上としなければならない。ただし、地階若しくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室又は温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りでない。 」とあり、
 住宅では、窓その他の開口部は、居室の床面積の1/7以上が必要です。


4 各階の床面積がそれぞれ150 uの5階建ての共同住宅の1階部分の用途をカフェーに変更しようとするときは、建築主事又は指定確認検査機関による確認を受けなければならない。 

○ 正しい。 共同住宅の1階を、カフェーへの用途変更は、建築基準法第87条1項
 「(用途の変更に対するこの法律の準用)
 第八十七条  建築物の用途を変更して第六条第一項第一号の特殊建築物のいずれかとする場合(
当該用途の変更が政令で指定する類似の用途相互間におけるものである場合を除く。)においては、同条(第三項及び第五項から第十二項までを除く。)、第六条の二(第三項から第八項までを除く。)、第六条の三(第一項第一号及び第二号の建築物に係る部分に限る。)、第七条第一項並びに第十八条第一項から第三項まで及び第十二項から第十四項までの規定を準用する。この場合において、第七条第一項中「建築主事の検査を申請しなければならない」とあるのは、「建築主事に届け出なければならない」と読み替えるものとする。 」とあり、「政令で指定する類似の用途相互間におけるものである場合を除いて」、確認が必要です。
 その政令は、建築基準法施行令第137条の17 にあり、
 「(建築物の用途を変更して特殊建築物とする場合に建築主事の確認等を要しない類似の用途)
  第百三十七条の十七  法第八十七条第一項 の規定により政令で指定する類似の用途は、当該建築物が次の各号のいずれかに掲げる用途である場合において、それぞれ当該各号に掲げる他の用途とする。ただし、第三号若しくは第六号に掲げる用途に供する建築物が第一種低層住居専用地域若しくは第二種低層住居専用地域内にある場合又は第七号に掲げる用途に供する建築物が第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域若しくは工業専用地域内にある場合については、この限りでない。
   一  劇場、映画館、演芸場
   二  公会堂、集会場
   三  診療所(患者の収容施設があるものに限る。)、児童福祉施設等
   四  ホテル、旅館
   五  下宿、寄宿舎
   六  博物館、美術館、図書館
   七  体育館、ボーリング場、スケート場、水泳場、スキー場、ゴルフ練習場、バッティング練習場
   八  百貨店、マーケット、その他の物品販売業を営む店舗
   九  キャバレー、
カフェー、ナイトクラブ、バー
   十  待合、料理店
   十一  映画スタジオ、テレビスタジオ」です。
 これによると、共同住宅からカフェーへの用途変更は、類似の用途ではない。
 すると、カフェーは、建築基準法第6条の別表第1(い)に該当し、
 「一  別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、
その用途に供する部分の床面積の合計が百平方メートルを超えるもの 」とあり、
床面積が100uを超えると、建築主事又は指定確認検査機関による確認を受けなければならなくなります。



答え:2  (用途変更を調べるのに、時間がかかった!)

問21

〔問 21〕市街化区域及び市街化調整区域に関する次の記述のうち、都市計画法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 都市計画区域については、必ず市街化区域と市街化調整区域との区分を定めるものとされている。

X 誤っている。 都市計画法も必ず1問はでる。 そこで、過去問題の中でも、「都市計画法」として、取りだしていますので、これも、ご利用ください。
  ここは、宅地建物取引主任者試験を受けた人なら、毎度お馴染みの設問。 また、平成16年 マンション管理士試験 「問22」 のまま。
  都市計画法第7条
 「(区域区分)
 第七条  都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、
都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分(以下「区域区分」という。)を定めることができる。ただし、次に掲げる都市計画区域については、区域区分を定めるものとする。
   一  次に掲げる土地の区域の全部又は一部を含む都市計画区域
    イ 首都圏整備法第二条第三項 に規定する既成市街地又は同条第四項 に規定する近郊整備地帯
    ロ 近畿圏整備法第二条第三項 に規定する既成都市区域又は同条第四項 に規定する近郊整備区域
    ハ 中部圏開発整備法第二条第三項 に規定する都市整備区域
   二  前号に掲げるもののほか、大都市に係る都市計画区域として政令で定めるもの  (以下略)」とあり、
 「定めることができる」で、「必ず」ではありません。

 

2 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とされている。

○ 正しい。 これも、お馴染みの出題。
  都市計画法第7条2項
 「2  市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。 」とあり、正しい。

3 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とされている。

○ 正しい。 これも、お馴染みの出題。
  都市計画法第7条3項
 「3  市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。」のまま。


4 市街化区域については、少なくとも用途地域を定めるものとされ、市街化調整区域については、原則として用途地域を定めないものとされている。

○ 正しい。 これは、都市計画法第13条1項7号
 「(都市計画基準)
 第十三条  都市計画区域について定められる都市計画(区域外都市施設に関するものを含む。次項において同じ。)は、国土形成計画、首都圏整備計画、近畿圏整備計画、中部圏開発整備計画、北海道総合開発計画、沖縄振興計画その他の国土計画又は地方計画に関する法律に基づく計画(当該都市について公害防止計画が定められているときは、当該公害防止計画を含む。第三項において同じ。)及び道路、河川、鉄道、港湾、空港等の施設に関する国の計画に適合するとともに、当該都市の特質を考慮して、次に掲げるところに従つて、土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する事項で当該都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため必要なものを、一体的かつ総合的に定めなければならない。この場合においては、当該都市における自然的環境の整備又は保全に配慮しなければならない。
   七  地域地区は、土地の自然的条件及び土地利用の動向を勘案して、住居、商業、工業その他の用途を適正に配分することにより、都市機能を維持増進し、かつ、住居の環境を保護し、商業、工業等の利便を増進し、良好な景観を形成し、風致を維持し、公害を防止する等適正な都市環境を保持するように定めること。この場合において、
市街化区域については、少なくとも用途地域を定めるものとし、市街化調整区域については、原則として用途地域を定めないものとする。」とある。

答え:1 (かなり、易しい。)

問22

〔問 22〕貯水槽水道に関する次の記述のうち、水道法の規定によれば、誤っているものはどれか。 

1 水道事業用の水道及び専用水道以外の水道であって、水道事業者から供給される水のみを水源とするもので、水槽の有効容量の合計が10立方m以下の水槽が設置されている水道は貯水槽水道ではない。

X 誤っている。 水道法もほとんど毎年1問はでます。 そこで、これも、私の「目指せ! マンション管理士・管理業務主任者」の過去問題から、「水道法」だけをまとめていますから、利用ください。
  特に、この箇所の、貯水槽水道とは、平成14年の改正で新しくできた概念で法律の条文が分かり難いため、出題者が好んで出題しますので、注意してください。
  まず、ビルやマンションなどの建築物で、水道管から供給された水をいったん受水槽に貯め、これをポンプで屋上などにある高架水槽にくみ上げてから各家庭の皆さんに給水します。この受水槽と高架水槽を合わせた設備を一般的に貯水槽といいます。この貯水槽水道には、水槽の有効容量が10立方m以下(小規模貯水槽水道)と水槽の有効容量が10立方m超(簡易専用水道)も含んでいます。
 根拠は、水道法第14条2項
 「(供給規程)
 第十四条  水道事業者は、料金、給水装置工事の費用の負担区分その他の供給条件について、供給規程を定めなければならない。
  2  前項の供給規程は、次の各号に掲げる要件に適合するものでなければならない。
   一  料金が、能率的な経営の下における適正な原価に照らし公正妥当なものであること。
   二  料金が、定率又は定額をもつて明確に定められていること。
   三  水道事業者及び水道の需要者の責任に関する事項並びに給水装置工事の費用の負担区分及びその額の算出方法が、適正かつ明確に定められていること。
   四  特定の者に対して不当な差別的取扱いをするものでないこと。
   
五  貯水槽水道(水道事業の用に供する水道及び専用水道以外の水道であつて、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするものをいう。以下この号において同じ。)が設置される場合においては、貯水槽水道に関し、水道事業者及び当該貯水槽水道の設置者の責任に関する事項が、適正かつ明確に定められていること。」とあり、
 5号では、水槽の有効容量は触れていない。
でも、この条文を理解できるかな?

 


2 水槽の有効容量の合計が10立方mを超える貯水槽水道の設置者は、水槽の掃除を1年以内ごとに1回、定期に、行わなければならない。

○ 正しい。 水槽の有効容量の合計が10立方mを超える貯水槽水道は、選択肢1で説明しましたように、「簡易専用水道」となります。 すると、水道法第34条の2
 「第三十四条の二  簡易専用水道の設置者は、厚生労働省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならない。
  2  簡易専用水道の設置者は、当該簡易専用水道の管理について、厚生労働省令の定めるところにより、定期に、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない。 」とあり、1項の厚生労働省令で定める基準は、
 水道法施行規則の第55条です。 
 「(管理基準)
 第五十五条  法第三十四条の二第一項 に規定する厚生労働省令で定める基準は、次の各号に掲げるものとする。
   
一  水槽の掃除を一年以内ごとに一回、定期に、行うこと。
   二  水槽の点検等有害物、汚水等によつて水が汚染されるのを防止するために必要な措置を講ずること。
   三  給水栓における水の色、濁り、臭い、味その他の状態により供給する水に異常を認めたときは、水質基準に関する省令 の表の上欄に掲げる事項のうち必要なものについて検査を行うこと。
   四  供給する水が人の健康を害するおそれがあることを知つたときは、直ちに給水を停止し、かつ、その水を使用することが危険である旨を関係者に周知させる措置を講ずること。」とあり、
 1号に該当します。正しい。


3 水槽の有効容量の合計が10立方mを超える貯水槽水道の設置者は、1年以内ごとに1回、定期に、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない。

○ 正しい。 水槽の有効容量の合計が10立方mを超える貯水槽水道も選択肢2同様に、「簡易専用水道」ですから、水道法第34条の2 に該当し、検査は、同条2項
 「2  簡易専用水道の設置者は、当該簡易専用水道の管理について、
厚生労働省令の定めるところにより、定期に、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない。 」によります。
 また、水道法施行規則の第56条です。
 「(検査)
 第五十六条  法第三十四条の二第二項 の規定による
検査は、一年以内ごとに一回とする
  2  検査の方法その他必要な事項については、厚生労働大臣が定めるところによるものとする。 」の1項に該当します。 正しい。


4 水道事業者は、必要に応じて、貯水槽水道の管理責任及び管理の基準並びに貯水槽水道の管理の状況に関する検査について、供給規程に定めなければならない。

○ 正しい。 水道事業者の供給規程の制定義務は、選択肢1で引用した、水道法第14条1項及び2項に規定され、これを受け、水道法施行規則第14条の2
 「第十二条の四  法第十四条第三項 に規定する技術的細目のうち、同条第二項第五号 に関するものは、次に掲げるものとする。
   一  水道事業者の責任に関する事項として、必要に応じて、次に掲げる事項が定められていること。
     イ 貯水槽水道の設置者に対する指導、助言及び勧告
     ロ 貯水槽水道の利用者に対する情報提供
   二  貯水槽水道の設置者の責任に関する事項として、必要に応じて、次に掲げる事項が定められていること。
     
イ 貯水槽水道の管理責任及び管理の基準
     ロ 貯水槽水道の管理の状況に関する検査
」とあります。 正しい。なお、供給規程(規定ではありませんよ)は、別途勉強してください。

答え:1 (ここは、簡易専用水道と貯水槽水槽を明確に理解していると楽。 ここらの勉強は「マンション管理の知識」が基本書です。)

問23

〔問 23〕マンション(居住者50人)の管理について権原を有する者(この問いにおいて「管理権原者」という。)及び防火管理者に関する次の記述のうち、消防法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 管理権原者は、防火管理者を解任したときは、遅滞なく、その旨を消防長(消防本部を置かない市町村にあっては市町村長。)又は消防署長に届け出なければならない。

○ 正しい。 消防法からの出題も、毎年、マンション管理士試験・管理業務主任者試験において、必ずある。そこで、これも、これも、私の「目指せ! マンション管理士・管理業務主任者」の過去問題から、「消防法」だけをまとめていますから、利用ください。
 まず、 非特定防火対象物である共同住宅では、収容人員が50人以上となると、「防火管理者」を定めることになっています。
 そして、防火管理者の任命・解任は、消防法第8条
 「第八条  学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(これに準ずるものとして政令で定める大規模な小売店舗を含む。以下同じ。)、複合用途防火対象物(防火対象物で政令で定める二以上の用途に供されるものをいう。以下同じ。)その他
多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行なわせなければならない。
  2  前項の権原を有する者は、同項の規定により防火管理者を定めたときは、
遅滞なくその旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする
  3  消防長又は消防署長は、第一項の防火管理者が定められていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、同項の規定により防火管理者を定めるべきことを命ずることができる。
  4  消防長又は消防署長は、第一項の規定により同項の防火対象物について同項の防火管理者の行うべき防火管理上必要な業務が法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、当該業務が当該法令の規定又は消防計画に従つて行われるように必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
  5  第五条第三項及び第四項の規定は、前二項の規定による命令について準用する。 」とあり、
 2項により、防火管理者の選任・解任では、遅滞なくその旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければなりません。


2 管理権原者は、甲種防火管理講習の課程を修了した者等の政令で定める資格を有する者の中から防火管理者を選任しなければならない。

X 誤っている。 この設問は曖昧で不適切です。防火管理者の講習には、甲種(2日間コース)と乙種(1日コース)があります。 収容人員が50人以上では、防火管理者の選任が必要ですが、別の条件として、延べ面積が、500u以上なら甲種防火管理講習を修了した者等からの選任となりますが、延べ面積が500u未満だと、乙種防火講習の修了者からも選任できます。
 消防法施行令第3条
 「(防火管理者の資格)
 第三条  法第八条第一項 の政令で定める資格を有する者は、次の各号に掲げる防火対象物の区分に応じ、当該各号に定める者で、当該防火対象物において防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的又は監督的な地位にあるものとする。
  一  第一条の二第三項各号に掲げる防火対象物(同項第一号ロ及びハに掲げる防火対象物にあつては、次号に掲げるものを除く。)(以下この条において「甲種防火対象物」という。) 次のいずれかに該当する者
    イ 都道府県知事、消防本部及び消防署を置く市町村の消防長又は法人であつて総務省令で定めるところにより総務大臣の登録を受けたものが行う甲種防火対象物の防火管理に関する講習(第四項において
「甲種防火管理講習」という。)の課程を修了した者
    ロ 学校教育法 (昭和二十二年法律第二十六号)による大学又は高等専門学校において総務大臣の指定する防災に関する学科又は課程を修めて卒業した者で、一年以上防火管理の実務経験を有するもの
    ハ 市町村の消防職員で、管理的又は監督的な職に一年以上あつた者
    ニ イからハまでに掲げる者に準ずる者で、総務省令で定めるところにより、防火管理者として必要な学識経験を有すると認められるもの
  二  第一条の二第三項第一号ロ及びハに掲げる防火対象物で、延べ面積が、別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項イ、ハ及びニ、(九)項イ、(十六)項イ並びに(十六の二)項に掲げる防火対象物にあつては三百平方メートル未満、
その他の防火対象物にあつては五百平方メートル未満のもの(以下この号において「乙種防火対象物」という。) 次のいずれかに該当する者
    イ 都道府県知事、消防本部及び消防署を置く市町村の消防長又は法人であつて総務省令で定めるところにより総務大臣の登録を受けたものが行う
乙種防火対象物の防火管理に関する講習(第四項において「乙種防火管理講習」という。)の課程を修了した者
    ロ 前号イからニまでに掲げる者」です。
 内容が入り組んでいて、分かり難いのですが、マンションは、ここでいう、消防法施行令の
「別表第一(五)ロ 寄宿舎、下宿又は共同住宅」に該当していますから、延べ面積が500u未満なら、「乙種防火対象物」となり、「乙種防火管理講習」という。)の課程を修了した者でも可能です。

3 管理権原者は、防火管理者を選任する場合、管理組合の役員又は組合員から選任するものとされ、管理業務を委託している管理会社等からは選任することができない。

X 誤っている。 防火管理者の選任にあたっては、必要な講習課程の修了者の規定はありますが、このような、居住地の制限などの規定は、消防法にはありません。(参照:消防法第8条、消防法施行令第4条など)
  現実、マンションでは防火管理者を選任するのですが、選任にあたり、組合員からは防火管理者のなり手がなく、また役員も講習会の受講では面倒でなりたがらないこともあり、管理会社の従業員がなっていることもあります。


4 管理権原者は、マンションの位置、構造及び設備の状況並びにその使用状況に応じ、防火管理者に消防計画を作成させ、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練を行わせなければならない。

○ 正しい。 前半の防火権原者の部分は、選択肢1で引用した消防法第8条と消防法施行規則第3条1項
 「(防火管理に係る消防計画)

 第三条  防火管理者は、令第四条第三項 の規定により、防火対象物の位置、構造及び設備の状況並びにその使用状況に応じ
、次の各号に掲げる区分に従い、おおむね次の各号に掲げる事項について、当該防火対象物の管理について権原を有する者の指示を受けて防火管理に係る消防計画を作成し、別記様式第一号の二の届出書によりその旨を所轄消防長(消防本部を置かない市町村においては、市町村長。以下同じ。)又は消防署長に届け出なければならない。防火管理に係る消防計画を変更するときも、同様とする。 (以下略)」によります。
 「マンション(防火対象物です)の位置、構造及び設備の状況並びにその使用状況に応じ」は正しい。
 後半は、消防法施行令第4条
 「(防火管理者の責務)
 第四条  防火管理者は、防火管理上必要な業務を行うときは、必要に応じて当該防火対象物の管理について権原を有する者の指示を求め、誠実にその職務を遂行しなければならない。
  2  防火管理者は、消防の用に供する設備、消防用水若しくは消火活動上必要な施設の点検及び整備又は火気の使用若しくは取扱いに関する監督を行うときは、火元責任者その他の防火管理の業務に従事する者に対し、必要な指示を与えなければならない。
  3  
防火管理者は、総務省令で定めるところにより、防火管理に係る消防計画を作成し、これに基づいて消火、通報及び避難の訓練を定期的に実施しなければならない。 」の3項に該当します。 共に正しい。

答え:2 及び 3  (選択肢2 は、出題にあたって、延べ面積の500uがどこかで、抜けたのか?)
マンション管理センターの答え:3 

問24

〔問 24〕マンションの照明設備に係る防犯上確保すべき床面における平均水平面照度に関する次の記述のうち、適切でないものはどれか。

1 共用廊下・共用階段の照明設備は、極端な明暗が生じないよう配慮しつつ、床面において概ね20ルクス以上を確保する。

○ 適切である。 防犯設備についての出題も多い。 平成21年 マンション管理士試験 「問24」 、 平成18年 マンション管理士試験 「問41」 など。
   基礎知識は「マンション管理の知識」であれば、充分にでている。
   根拠は、国土交通省が平成13年に策定した、「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」。ここの問題の解説は、その部分を引用して終わりにします。
 なお、この「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」からは、過去もあちらこちらから出題がありますから、ネットで手に入れて、全文を読んでおいください。

 *「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」
 「2 共用部分の設計
  (6) 共用廊下・共用階段
   ア 共用廊下・共用階段の構造等
     ・共用廊下及び共用階段は、それぞれの各部分、エレベーターホール等からの見通しが確保され、死角を有しない配置又は構造とすることが望ましい。
     ・共用廊下及び共用階段は、各住戸のバルコニー等に近接する部分については、当該バルコニー等に侵入しにくい構造とすることが望ましい。
     ・共用階段のうち、屋外に設置されるものについては、住棟外部から見通しが確保されたものとすることが望ましく、屋内に設置されるものについては、各階において階段室が共用廊下等に常時開放されたものとすることが望ましい。
  イ 共用廊下・共用階段の照明設備
     ・共用廊下・共用階段の照明設備は、床面において概ね
20ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする。 


2 共用玄関の存する階のエレベーターホールの照明設備は、床面において概ね50ルクス以上を確保する。

○ 適切である。 「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」
 「2 共用部分の設計
  (4) エレベーターホール
   ア エレベーターホールの配置
     ・共用玄関の存する階のエレベーターホールは、共用玄関又は管理人室等からの見通しが確保された位置に配置する。見通しが確保されていない場合には、防犯カメラの設置等の見通しを補完する対策を実施する。
   イ エレベーターホールの照明設備
     ・共用玄関の存する階のエレベーターホールの照明設備は、床面において概ね
50ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする。
     ・その他の階のエレベーターホールの照明設備は、床面において概ね20ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする。



3 共用玄関以外の共用出入口の照明設備は、床面に布いて概ね10 ルクス以上を確保する。

X 適切でない。 「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」
 「2 共用部分の設計
  (1) 共用出入口
    エ 共用出入口の照明設備
      ・共用玄関の照明設備は、その内側の床面において概ね50ルクス以上、その外側の床面において概ね20ルクス以上の平均水平面照度をそれぞれ確保することができるものとする。
      ・共用玄関以外の共用出入口の照明設備は、床面において概ね
20ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする。
   
*10ルクスでは、少し暗いってことです。


4 駐車場の照明設備は、極端な明暗が生じないよう配慮しつつ、床面において概ね3ルクス以上を確保する。

○ 適切である。 「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」
 「2 共用部分の設計
    (8) 駐車場
      ア 駐車場の配置
       ・駐車場は、道路等、共用玄関又は居室の窓等からの見通しが確保された位置に配置する。屋内に設置する場合には、構造上支障のない範囲において、周囲に開口部を確保する。地下階等構造上周囲からの見通しの確保が困難な場合には、防犯カメラの設置等の見通しを補完する対策を実施する。
     イ 駐車場の照明設備
       ・駐車場の照明設備は、床面において概ね
3ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする。

答え:3  (50ルクスとか20ルクスとかが、どの程度の明るさかは、自分で勉強してください。)

問25

〔問 25〕標準管理規約を採用している管理組合の業務について、当該規約を改正しなければ行うことのできないものは、次のうちどれか。


 注)マンション標準管理規約は、平成23年7月に役員資格や議決権など小幅な改正があったので、注意のこと。ここは、旧のまま。


1 空きがでてきた駐車場を専有部分の賃借人に賃貸することができるようにすること。 

規約の改正が要。  標準管理規約(単棟型を指す。以下「標準管理規約」は複合用途型とか団地型の記述がない限り、単棟型です)によると、駐車場の使用は、特定の区分所有者しか使用できなくなっています。
 第15条 
 「(駐車場の使用)
 第15条 管理組合は、別添の図に示す駐車場について、特定の区分所有者に駐車場使用契約により使用させることができる。
   2 前項により駐車場を使用している者は、別に定めるところにより、管理組合に駐車場使用料を納入しなければならない。
   3 区分所有者がその所有する専有部分を、他の区分所有者又は第三者に譲渡又は貸与したときは、その区分所有者の駐車場使用契約は効力を失う。」 とありますから、
 「空きがでてきた駐車場を専有部分の賃借人に賃貸することができるようにする」には、規約の改正が必要です。

                            
2 第三者が屋上に広告塔を設置することを認めること。

規約の改正は不要。 屋上は共用部分です。そこに、第三者が広告塔をつけるなら、
 標準管理規約第16条
 「(敷地及び共用部分等の第三者の使用)
 第16条 管理組合は、次に掲げる敷地及び共用部分等の一部を、それぞれ当該各号に掲げる者に使用させることができる。
     一 管理事務室、管理用倉庫、機械室その他対象物件の管理の執行上必要な施設管理事務(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「適正化法」という。)第2条 第六号の「管理事務」をいう。)を受託し、又は請け負った者
     二 電気室○○電力株式会社
     三 ガスガバナー○○ガス株式会社
  2 前項に掲げるもののほか、管理組合は、総会の決議を経て、敷地及び共用部分等(駐車場及び専用使用部分を除く。)の一部について、第三者に使用させることができる。」とあり、
 2項によって、総会の決議でできますから、規約の改正は不要です。



3 管理組合が共用部分である給水管の本管と専有部分である枝管とを一体として取替える工事を行うこと。

規約の改正は不要。  これは、標準管理規約第21条
 「(敷地及び共用部分等の管理)
 第21条 敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の管理のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。
  2 専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。」とあり、
 2項により、規約の改正がなくてもできます。



4 共用部分である開口部につき、防犯等の住宅の性能の向上に資するための工事を、管理組合が計画修繕として速やかに実施できないときに区分所有者がその責任と負担において実施できるようにすること。

規約の改正は不要。 これは、標準管理規約第22条
 「(窓ガラス等の改良)
 第22条 共用部分のうち各住戸に附属する窓枠、窓ガラス、玄関扉その他の開口部に係る改良工事であって、防犯、防音又は断熱等の住宅の性能の向上等に資するものについては、管理組合がその責任と負担において、計画修繕としてこれを実施するものとする。
  2 管理組合は、前項の工事を速やかに実施できない場合には、当該工事を各区分所有者の責任と負担において実施することについて、細則を定めるものとする。」とあり、
 1項により、規約の改正がなくてもできます。

答え:1  (ここは、易しい?)

ここまで、問25


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最終更新日:
2012年 6月22日:「問10」に平成23年の標準管理規約の改正入れた。
2011年6月17日:「問2」 選択肢1の解説を訂正。
2011年:「問19」選択肢3を追記
2011年 2月19日:「問16」を追記
2011年 1月24日:再見直し。
2011年 1月15日:マンション管理センターの正解を入。
2011年 1月 8日
2010年12月13日
開始:2010年12月 1日

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