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平成27年(2015年) 管理業務主任者 試験問題 及び 解説

ページ1(問1より問25まで)

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謝辞:当問題の作成にあたっては、ミスミ様、大石様、青木様のご協力を戴いております。
テキスト文への変更など、ご助力を心から感謝いたします。
「マンション管理士 香川事務所」 より。


*注: マンション標準管理規約(単棟型、団地型、複合用途型)は、平成28年3月に改正があり、当解説においては、未対応ですから、注意してください。 (2016年 8月29日:改正に対応した。)
 また、「マンションの管理の適正化に関する指針」も平成28年3月に改正がありましたので、注意してください。

※ 出題当時以後の法令等の改正には、一部は対応していません。

*試験に臨んで、お節介なアドバイス
  1.設問にあわせて、問題用紙に ○(まる)、X(ばつ)をつける。
    殆どの設問が、「正しい」か「間違い」かを訊いてきますので、設問により、問題の頭に、○かXをつけます。
    そして、各選択肢を読み、○かXをつけます。
    問題の○なりXと、選択肢の○かXが一致したものを、マークシートに記入してください。

  2.疑問な問題は、とりあえず飛ばす。
    回答の時間は限られています。
    そこで、回答として、○かXかはっきりしないものがでたら、「?」マークをつけて、次の問題に移ります。
    全部の回答が終わってから、再度戻って決定してください。

  3.複雑な問は、図を描く。
    甲、乙、A、B、Cなど対象が多い問題もでます。
    この場合、問題用紙の空いているところに、図を描いてください。
    重要な点が分かってきます。

(出題者からの注意) 1.答えは、各問題とも1つだけです。2つ以上の解答をしたもの、判読が困難なものは、正解としません。
              2.問題中法令に関する部分は、平成27年4月1日現在施行中の規定に基づいて出題されています。


解説者からのコメント:あやふやな出題、適切でない出題もあって、解答ができないのもあります。

※  マンション標準管理規約は、平成16年に改正があった。また、平成23年7月にも小幅な改正があった。
   マンション標準管理委託契約書は、平成15年に改正があった。また、平成22年5月にも改正があった。

問1

【問 1】 マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(平成12年法律第149号。以下、本試験問題において「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号に規定するものをいう。以下、本試験問題において同じ。)の管理組合A(以下、本問において「A」という。)の管理者B(以下、本問において「B」という。)が、その職務に関し、C会社(以下、本問において「C」という。)との間で取引行為をした場合に関する次の記述のうち、民法(明治29年法律第89号)、建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律第69号。以下、本試験問題において「区分所有法」という。)の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Bが、Aのためにすることを示さないでした意思表示は、Cが、BがAのためにすることを知っていたときでも、Bがした意思表示の効果はAに帰属することはない。

X 誤っている。 代理人が本人のためにすることを示さない場合でも、相手方が本人のためにしていることを知っていれば、代理人がした意思表示は、本人に帰属する。
 
 平成27年 マンション管理士試験 「問13」 、平成25年 管理業務主任者試験 「問1」 、 平成22年 管理業務主任者試験 「問3」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問5」 、 平成14年 管理業務主任者試験 「問5」

 まず、私の過去の年度の解説を読んでいる人には、度々となりますが、これは、受験での基本ですから、述べます。
 建物の区分所有等に関する法律(以下、当解説では、「区分所有法」といいます)では、法律用語として「マンション」の定義がありません。しかし、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下、当解説では、「マンション管理適正化法」といいます)第2条では、以下のように定義されていますので、マンションの用語を試験で使用する際には設問のような「マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号に規定するマンションをいう」の表現が使用されます。

 
  そこで、マンション管理適正化法第2条とは、
 
「(定義) 
  第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
     一
 マンション 次に掲げるものをいう
       イ 
二以上の区分所有者(建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)第二条第二項 に規定する区分所有者をいう。以下同じ。)が存する建物で人の居住の用に供する専有部分(区分所有法第二条第三項 に規定する専有部分をいう。以下同じ。)のあるもの並びにその敷地及び附属施設
       ロ 一団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)が当該団地内にあるイに掲げる建物を含む数棟の建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地及び附属施設」
 です。
 マンション管理適正化法第2条1号イによれば、「マンション」であるための要件は、
   
 @2人以上の区分所有者 がいて、 
    A人の居住用の専有部分が1つでもあればいい 

 です。マンションの建物には、専有部分と共用部分しかなく、そして、マンションは専有部分と共用部分を含んだ建物と敷地及び附属施設の全体的なものであることに注意してください。

 

 そこで、設問を図にしますと、
  

 となります。

 設問では、簡単にBは、A管理組合の管理者としていますが、これは、区分所有法第26条に規定される、管理者としての職務代理権限をBが有していることが前提となります。
 区分所有法第26条

 「(権限)
 第二十六条  管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
 
2  管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
 3 管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
 4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
 5  管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。 」 

 区分所有法第26条2項により、管理者であるBは、マンションの内部においては、区分所有者を代理し、対外的には、区分所有者の団体(管理組合)の行為を代理すると考えられます。
 
 そこで設問の、代理人B(管理者)が、本人A(管理組合=区分所有者の団体)のためにすることを示さないでした意思表示とC(会社)との関係は、代理行為として、民法第99条及び第100条

 「(代理行為の要件及び効果)
 第九十九条  代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
 2  前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。 」

 「(本人のためにすることを示さない意思表示)
 第百条  
代理人が本人のためにすることを示さないでした意思表示は、自己のためにしたものとみなす。ただし、相手方が、代理人が本人のためにすることを知り、又は知ることができたときは、前条第一項の規定を準用する。」 


 通常、民法第100条本文によれば、代理人B(管理者)が本人A(管理組合)のためにすることを示さないでした意思表示は、自己Bのためにしたものとみなされますが、但し書きにより、相手方のC(会社)が、代理人であるB(管理者)が、本人A(管理組合)のためにすることを知っていたときとなると、民法第99条1項の準用となり、本人A(管理組合)に効力を生じ、B(管理者)がした意思表示の効果はA(管理組合)に帰属しますから、誤りです。


2 Bが、自己の利益を図るために職務の範囲内の行為をした場合には、Cがそのことを知ることができたときでも、Bがした行為の結果はAに帰属する。

X 誤っている。 代理人が自己の利益を図るためにした権限内の行為で、相手方が代理人の意図を知ることができたときは、代理人の行為は、本人には帰属しない。
 
  代理人である管理者Bが”自己の利益を図るため”に職務内の行為をした場合で、相手方のCがそれを知ることができた場合には、最高裁の昭和42年4月20日の判決  「代理人の権限濫用の行為と民法第九三条」 があります。
  この判決の趣旨は、
 「
代理人が自己または第三者の利益をはかるため権限内の行為をしたときは、相手方が代理入の意図を知りまたは知りうべきであつた場合にかぎり、民法第九三条但書の規定を類推適用して、本人はその行為についての責に任じないと解するのが相当である。 」 とあり、
 設問の、代理人B(管理者)が、自己の利益を図るために職務の範囲内の行為をした場合には、相手方C(会社)がそのことを知ることができたときは、代理人Bがした行為の結果は本人A(管理組合)に帰属しませんから、誤りです。


 参考:民法第93条
 「(心裡留保)
 第九十三条  意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が表意者の真意を知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。 」



3 Bは、Bの職務に関しその代理権に加えられた制限について、その制限を知らなかったCに対抗することができない。

○ 正しい。 管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗できない。
   
平成21年 マンション管理士試験 「問9」 、  平成14年 管理業務主任者試験 「問33」

   選択肢1で引用しました、区分所有法第26条3項
 「 (権限)
 第二十六条
  
3 管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。」 とあり、
 代理人B(管理者)の代理権が制限されていることについて、その制限を知らなかったCは、善意の第三者ですから、Bは、Bの職務に関しその代理権に加えられた制限について、その制限を知らなかったCに対抗することができず、正しい。



4 Bが、職務の範囲外の行為をした場合において、Cが、Bの職務の範囲外であることを知ることができたときでも、CはBがした行為の結果をAに主張することができる。

X 誤っている。 第三者が代理人の権限踰越を知ることができれば、本人には主張できない。
  平成15年 マンション管理士試験 「問13」
  
  一応代理権を与えられた管理者Bが職務の範囲外の行為をした場合に第三者との関係は、「権限踰越による表見代理」といい、民法第110条
 「(権限外の行為の表見代理)
 第百十条  
前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。 」 とあり、
 引用されています前条は、民法第109条

 「(代理権授与の表示による表見代理)
 第百九条  第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。 」 
です。
 民法第110条での「第三者が代理人の権限があると信ずべき”正当な理由”があるとき」とは、もう、個別の具体的な事情を考慮して判断するほかありません。
 そこで、設問の「第三者Cが、代理人Bの職務の範囲外であることを”知ることができた”とき」が、第三者が代理人の権限があると信ずべき”正当な理由”にあたるかどうかの判断ですが、知ろうと思えば権限外であることを知りえた状況であれば、代理人の行為を無効とする”正当な理由”には、該当しないと判断できますから、第三者Cは代理人Bがした行為の結果を管理組合Aに主張することができず、誤りです。



答え:3

 平成27年の管理業務主任者試験問題は、「問1」から、随分と解説に時間がかかった。 
 答えとしての「3」は、区分所有法から、すぐに分かるが、選択肢2の判例探し、また 選択肢4では、該当の判例を探したが、見つから無かった。

 なお、区分所有法の解説は、 「マンション管理士 香川事務所」 が無料で提供しています、「超解説 区分所有法」 がありますから、ご利用ください。
 また、この「問1」では、区分所有法で扱う「区分所有者の団体」がイコール「管理組合」としていますが、区分所有者の団体の曖昧さもありますから、注意してください。

《タグ》
民法 区分所有法。 マンションとは、管理者、代理、権限踰越による表見代理

問2

【問 2】 区分所有者A(以下、本問において「A」という。)が、マンションの管理組合法人B(以下、本問において「B」という。)に対して管理費等を滞納している場合に関する次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 Bは、Aに対する管理費等債権について、Aの区分所有権及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有するが、その回収に当たっては、まず建物に備え付けた動産から弁済を受けなければならない。

○ 正しい。 先取特権の弁済は、まず、動産から受ける。 
  
先取特権は、平成27年 管理業務主任者試験 「問38」でもでている。、平成25年 管理業務主任者試験 「問3」 、平成25年 管理業務主任者試験 「問2」 、平成25年 マンション管理士試験 「問4」 、平成23年 マンション管理士試験 「問16」 、平成21年 マンション管理士試験 「問3」 、平成19年 マンション管理士試験 「問4」 など多い。
 
 設問の先取特権とは、債務の履行がないときに担保権を実行(民事執行法に基づく競売)して債権を他の債権者より優先的に回収することができる権利のことです。
 他の債権者よりも先に債務を支払ってもらえることが”特権”たる所以です。
 登記なしに一般債権者(対抗力ある担保権等の優先的権利を持たない者)に優先して債権を回収することができます。


 そこで、区分所有法での先取特権の規定は、区分所有法第7条
 「(先取特権)
 第七条  
区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。
 2  前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす。
 3  民法 (明治二十九年法律第八十九号)第三百十九条 の規定は、第一項の先取特権に準用する。 」 
とあり、
 関係の民法は、第306条及び第307条

 「(一般の先取特権
 第三百六条  次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、
債務者の総財産について先取特権を有する
    一  
共益の費用
    二  雇用関係
    三  葬式の費用
    四  日用品の供給」
 「(共益費用の先取特権)
 第三百七条  共益の費用の先取特権は、各債権者の共同の利益のためにされた債務者の財産の保存、清算又は配当に関する費用について存在する。
   前項の費用のうちすべての債権者に有益でなかったものについては、先取特権は、その費用によって利益を受けた債権者に対してのみ存在する。」 
です。

 マンションにおいては、区分所有者が滞納している管理費や修繕積立金は、区分所有法第7条における「規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権」と考えられ、滞納管理費等には、先取特権が認められます。

 そこで、民法では、一般に先取特権は、債務者の総財産を対象に行使できますが、(民法第306条以下参照)、区分所有法第7条によると、区分所有法では、民法での総財産ではなく、
   @区分所有権 (建物の専有部分の所有権) と
   A動産 
   の上に先取特権が行使できます。
 また、債権回収の実行において、先取特権と抵当権の関係は、以下のようになります。 
  1.抵当権が未登記であれば、区分所有法第7条の先取特権が未登記でも抵当権に優先します。 
  2.抵当権が登記されていて、区分所有法第7条の先取特権が未登記だと、抵当権が優先します。
  3.抵当権と区分所有法第7条の先取特権が共に登記されていると、優先順序は、その登記の前後によって決まります。(先に登記した方に優先権があります。)

 そして、先取特権の実行となると、民法第335条
 「(一般の先取特権の効力)
 第三百三十五条  
一般の先取特権者は、まず不動産以外の財産から弁済を受け、なお不足があるのでなければ、不動産から弁済を受けることができない
 2  一般の先取特権者は、不動産については、まず特別担保の目的とされていないものから弁済を受けなければならない。
 3  一般の先取特権者は、前二項の規定に従って配当に加入することを怠ったときは、その配当加入をしたならば弁済を受けることができた額については、登記をした第三者に対してその先取特権を行使することができない。
 4  前三項の規定は、不動産以外の財産の代価に先立って不動産の代価を配当し、又は他の不動産の代価に先立って特別担保の目的である不動産の代価を配当する場合には、適用しない。 」
 とあり、
 民法第335条1項により、まず不動産以外の財産から弁済を受け、なお不足があるのでなければ、不動産から弁済を受けることができないの規定により、その回収に当たっては、まず建物に備え付けた動産から弁済を受けなければならないは、正しい。



2 AがCから借りて一時的に建物に備え付けていた動産について、BがCのものと知らず、かつ知らないことに過失がなかったときは、Bは当該動産の上に先取特権を取得する。

○ 正しい。 第三者の物でも、善意で過失がなければ、先取特権が行使できる。
   平成23年管理業務主任者試験 「問2」 

  図にしましょう。

 

 本当は、債務者の物ではない動産があったときに、債権者が債務者の物と信じた時の先取特権なら、民法第319条
 「(即時取得の規定の準用)
 第三百十九条  第百九十二条から第百九十五条までの規定は、第三百十二条から前条までの規定による先取特権について準用する。」
 とあり、
 準用になるのは、民法第192条

 「(即時取得)
 第百九十二条  
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。 」 
です。
 この規定により、管理組合法人BがCのものと知らず(善意です)、かつ知らないことに過失がなかったときは、Bは当該動産の上に先取特権を取得することになります。
 そして、選択肢1で引用しました区分所有法第7条3項
 「3  民法 (明治二十九年法律第八十九号)第三百十九条 の規定は、第一項の先取特権に準用する。 」 

 とありますから、正しい。


3 Aが自ら建物に備え付けた動産をDに譲渡し、Dがその引渡しを受けた場合、Bは、その動産については、先取特権を行使することはできない。

○ 正しい。 動産が引渡しの後では、もう先取特権も行使できない。
 
  平成19年 管理業務主任者試験 「問4」 

  

 第三者に動産を引き渡したときの先取特権は、民法第333条
 「(先取特権と第三取得者)
 第三百三十三条  
先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。 」 
とあり、
 第三取得者であるDに引渡しが終わった動産だと、もう管理組合法人Bは、その動産については、先取特権を行使できませんから、正しい。



4 Aの区分所有権に、Eからの借入れのために抵当権が設定され、すでに登記も具備されていた場合でも、Bは、先取特権の登記がなくても、Eに優先して弁済を受けることができる。

X 誤っている。 登記があると登記の方が、登記のない先取特権より優先する。
 
 登記されている抵当権と登記されていない先取特権の順位は、選択肢1でも述べましたが、民法第336条
 「(一般の先取特権の対抗力)
 第三百三十六条  一般の先取特権は、不動産について登記をしなくても、特別担保を有しない債権者に対抗することができる。
ただし、登記をした第三者に対しては、この限りでない。」 
とあり、
 先取特権は、通常なら登記がなくても、優先して行使し弁済を受けることができますが、但し書きにより、 登記があると、登記してある抵当権などの方が優先しますから、誤りです。
 登記のない先取特権にいくらなんでも、登記のある第三者の地位を覆すまでの効力を認めるのは、行き過ぎだと考えたようです。


 参考: 債権回収の実行において、先取特権と抵当権の関係は、以下のようになります。 
  1.抵当権が未登記であれば、区分所有法第7条の先取特権が未登記でも抵当権に優先します。 
  2.抵当権が登記されていて、区分所有法第7条の先取特権が未登記だと、抵当権が優先します。
  3.抵当権と区分所有法第7条の先取特権が共に登記されていると、優先順序は、その登記の前後によって決まります。(先に登記した方に優先権があります。)



答え:4

  先取特権をかなり詳細に説明したので、時間がかかる。 また、先取特権の詳細については、 「マンション管理士 香川事務所」 が 無料で提供しています、「超解説 区分所有法」 の第7条をご覧ください。
 先取特権は、 平成27年 管理業務主任者試験 「問38」 でも説明してます。
 解説は長くなりましたが、選択肢4は、直ぐに選べる?

 管理組合を「法人」として出題していることは、区分所有法での「区分所有者の団体」の規定の曖昧さを避けたのか? 下の「問3」でも、管理組合を法人にしています。

《タグ》民法 区分所有法。 先取特権、回収順位、引渡し後、登記との順位

問3

【問 3】 マンションの管理組合法人A(以下、本問において「A」という。)が、区分所有者B(以下、本問において「B」という。)に対する管理費債権(以下、本問において「本件被保全債権」という。)を保全するため、Bの債務者C(以下、本問において「C」という。)に対する金銭債権(以下、本問において「本件代位債権」という。)を代位行使する場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 AがCに対して、本件代位債権を代位行使する場合、本件被保全債権の範囲で行使することができる。

○ 正しい。 債権者代位権を行使できる。
 民法では債権者が、自己の名において、債務者が有する権利(債権)を債務者に代わって裁判外でも行使できるという制度「債権者代位権」を認めています。

 

 それが、民法第423条

 「(債権者代位権)
 第四百二十三条  
債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。
 2  債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。 」 
です。
 この民法第423条によれば、債務者の一身に専属する権利以外なら、債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができますから、債権者であるAは、Bの債務者Cに対して、管理費債権(本件被保全債権)の範囲で代位債権を行使できますから、正しい。



2 本件代位債権が国民年金受給権である場合、Aはそれを代位行使することはできない。

○ 正しい。 債務者の一身に専属する権利には債権者代位権は行使できない。
 国民年金や厚生年金、恩給、生活保護の受給権などは、債務者の一身に専属する権利になります。
 すると、選択肢1で引用しました、民法第423条1項但し書き

 「第四百二十三条  債権者は、自己の債権を保全するため、債務者に属する権利を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利は、この限りでない。 」 とあり、
 代位債権が国民年金受給権である場合には、債権者Aは、それを行使できませんから、正しい。

  参考:国民年金法第24条
  「(受給権の保護)
   第二十四条  
給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、年金給付を受ける権利を別に法律で定めるところにより担保に供する場合及び老齢基礎年金又は付加年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。


3 Aが、本件代位債権の消滅時効を中断させるには、本件被保全債権の弁済期が到来しない間は、裁判上の代位によらなければならない。

X 誤っている。 消滅時効の中断は、保存行為であるので、裁判外でも代位できる。
 債権者代位権は、基本的には、選択肢1で引用しています民法第423条2項
 「2  債権者は、その債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、前項の権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。 」 とあり
 債権者は、期限がきていない場合には、裁判所に訴えて債権の代位をしますが、但し書きがあります。
 但し書きの「保存行為」としては、債務者の現状を維持する行為と解され、消滅時効にかかりそうな債権の時効の中断や、債務者が未登記の抵当権の登記をする場合です。
 そこで、本件代位債権の消滅時効を中断させるには、本件被保全債権の弁済期が到来しない間でも、保存行為として、債権者Aは、裁判外で代位できますから、誤りです。



4 AがCに対して、本件代位債権を代位行使する場合、Bへ支払うように請求することもできるし、直接Aへ支払うように請求することもできる。

○ 正しい。
 債権者AがCに対して債務者Bに支払うように請求することは当然出来ますが、また直接自分に支払うよう請求できると解釈されていますから、正しい。
 (判例があるようだけど、古くて、昭和10年3月12日付け 探せなかった。)

  参考:昭和29年9月24日;最高裁判決。


答え:3

 余り過去では出題がない箇所「債権者代位権」からの問題で、かなり、難しいか?
 
《タグ》民法。 債権者代位権、債務者の一身に専属する権利、保存行為、 支払先

問4

【問 4】 マンションの区分所有者A(以下、本問において「A」という。)が、その専有部分をBに賃貸している場合に、Bの賃料の支払いに関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 第三者であるCがBの賃料を払うことについて、Bが反対の意思を表示したときは、たとえCがBとの間に利害関係を有していても、Cは、Bに代わって賃料を支払うことはできない。

X 誤っている。 第三者でも、利害関係を有していれば、債務者に代わって支払える。
  平成26 管理業務主任者試験 「問4」 、平成23年 マンション管理士試験 「問16」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問17」
 
  債務の弁済は、本来債務者がしますが、債務者以外でもできます。
 それが、民法第474条

 「(第三者の弁済)
 第四百七十四条  
債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、その債務の性質がこれを許さないとき、又は当事者が反対の意思を表示したときは、この限りでない。
 2  利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない
。 」 です。
 ここで、1項の当事者とは、債権者と債務者の両方を指します。
 そこで、設問の、第三者であるCがBの賃料を払うことについて、Bが反対の意思を表示したときであっても、2項により、Cは利害関係を有していますから、Bに代わって賃料を支払うことができ、誤りです。



2 Aの債権者であるDが、AのBに対する賃料債権を差し押さえたにもかかわらず、BがAに賃料を支払った場合、Dは、それにより受けた損害の限度において、さらに弁済をすべき旨をBに請求することができる。

○ 正しい。 
  分かり難い出題ですね。分かり難い場合には、図を描きましょう。
 

 まず、AのBに対する債権をAの債権者Dが差し押さえると、債務者Bは、自分の債権者Aに対して支払が禁じられます。それが、民事執行法第145条です。
 「(差押命令)
 第百四十五条  
執行裁判所は、差押命令において、債務者に対し債権の取立てその他の処分を禁止し、かつ、第三債務者に対し債務者への弁済を禁止しなければならない
 2  差押命令は、債務者及び第三債務者を審尋しないで発する。
 3  差押命令は、債務者及び第三債務者に送達しなければならない。
 4  差押えの効力は、差押命令が第三債務者に送達された時に生ずる。
 5  差押命令の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。 」

 民事執行法第145条1項でいう、「第三債務者」に、この場合Bが該当します。
 すると、民法第481条
 
「(支払の差止めを受けた第三債務者の弁済)
 第四百八十一条  
支払の差止めを受けた第三債務者が自己の債権者に弁済をしたときは、差押債権者は、その受けた損害の限度において更に弁済をすべき旨を第三債務者に請求することができる
 2  前項の規定は、第三債務者からその債権者に対する求償権の行使を妨げない。」 
とあり、
  民法第481条1項での、「支払の差止めを受けた第三債務者」とは、この場合Bが該当しています。
 これらにより、Aの債権者であるDが、AのBに対する賃料債権を差し押さえたにもかかわらず、BがAに賃料を支払った場合、Dは、それにより受けた損害の限度において、さらに弁済をすべき旨をBに請求することができますから、正しい。



3 Bの賃料の支払いをAがあらかじめ拒絶した場合、BはAに、賃料支払いの準備ができている旨を通知し、その受領を催告すれば、当該賃貸借の債務不履行の責任を免れることができる。

○ 正しい。
 債務を弁済しようとしても、相手方が受け取らないときに、そのままにしておくと債務がいつまでたっても消滅しないことになりますから、これでは債務者が困ります。
 そこで、民法第493条

 「(弁済の提供の方法)
 第四百九十三条  
弁済の提供は、債務の本旨に従って現実にしなければならない。ただし、債権者があらかじめその受領を拒み、又は債務の履行について債権者の行為を要するときは、弁済の準備をしたことを通知してその受領の催告をすれば足りる。」  とあり、
  同じく民法第第492条

 「(弁済の提供の効果)
 第四百九十二条  
債務者は、弁済の提供の時から、債務の不履行によって生ずべき一切の責任を免れる。 」 
とあります。
 弁済の提供とは、債務者が債権者に対して受領という協力を必要とする場合に、債務者がなすべき行為です。債務の履行には債権者の協力も必要です。
 これらにより、債務者としては、債権者に弁済の準備が出来ていることを通知(口頭の提供)すれば、賃貸借の債務不履行の責任を免れることができますから、正しい。



4 Bの賃料の支払いをAが受け取らない場合、Bは、当該賃料を供託すれば、当該賃料債務を免れることができる。

○ 正しい。
 供託の制度がある。
  平成23年 管理業務主任者試験 「問11」

  選択肢3でも述べましたが、債務者が弁済したくても、債権者の協力が得られないときに債務を消滅させる方法があります。
 それが、「供託」と呼ばれる制度です。
 供託は、民法第494条

 「(供託)
 第四百九十四条  
債権者が弁済の受領を拒み、又はこれを受領することができないときは、弁済をすることができる者(以下この目において「弁済者」という。)は、債権者のために弁済の目的物を供託してその債務を免れることができる。弁済者が過失なく債権者を確知することができないときも、同様とする。」 
とあり、
 債権者が受領を拒否した場合には、債務者は、当該賃料を供託すれば、当該賃料債務を免れることができますから、正しい。



答え:1

 民法のあちらこちらからの出題。 過去問題も供託などはあった。
 とにかく、民法のあちらこちらを読んでいるかを訊く、出題です。 民法全体を読んでいない人には、少し難しいかも。

《タグ》
民法  第三者の弁済、支払の差止めを受けた第三債務者の弁済、受領拒否、供託制度。

問5

【問 5】 マンションの専有部分甲(以下、本問において「甲」という。)を所有するAが、Aの友人であるBに甲を贈与する場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示することによって成立するので、Bは、Aに対し承諾の意思を表示する必要がない。

X 誤っている。 贈与の相手方の承諾も必要。 
  贈与は、平成27年 マンション管理士試験 「問12」 でも出ている。 平成16年 管理業務主任者試験 「問3」

 
  贈与の成立は、民法第549条

 「(贈与)
 第五百四十九条  
贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。 」 
とあり、
 当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示することによっては成立せず、さらに、相手方の承諾(諾成契約)が必要ですから、誤りです。


2 AがBに、書面によらないで甲を贈与した場合、Bへの所有権移転登記が完了すれば、その贈与は、撤回することができない。

○ 正しい。 書面によらない贈与でも、履行が終わると撤回できない。 
    平成15年 マンション管理士試験 「問15」
 
  書面によらない贈与の撤回は、民法第550条

 「(書面によらない贈与の撤回)
 第五百五十条  書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。
ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。 」 とあり、
 贈与契約が書面によってなされていない場合には、原則:各当事者が撤回(取り消しの解釈もあります)できますが、ただし書きで規定される、「履行の終わった部分については、この限りでない」により、動産では引渡しが履行の終了となり、不動産については、争いがありましたが、引渡しがなくても、所有権移転登記があれば、履行を終わったとなります(最高裁:昭和40年3月26日 判決)から、Aは、贈与契約を撤回することはできず、誤りです。


3 Aは、甲に瑕疵があることを知っていた場合、その瑕疵についてBに告げなかったとしても、Bに対して担保責任を負うことはない。

X 誤っている。 贈与でも瑕疵の存在を知っていて、受贈者に告げなかったときは責任を負う。
 贈与契約での瑕疵担保責任は、民法第551条
 「(贈与者の担保責任)
 第五百五十一条  贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について、その責任を負わない。
ただし、贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは、この限りでない
 2  負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。 」 
です。
 民法第551条1項によれば、原則:贈与者は担保責任を負いませんが、ただし書きにより、「贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときには、責任を負いますから、誤りです。
 この場合の責任としては、売主と同様の瑕疵担保責任までとは、言えないようです。(厳密に言うと、信頼利益と履行利益の論争点です。)
 なお、負担付贈与であれば、2項により、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負います。



4 AとBが、Aが死亡したときに甲を贈与する旨の契約を締結する場合、遺贈の規定が準用されるので、公正証書による贈与契約書を作成しなければならない。

X 誤っている。 死因贈与は、遺贈の規定が準用されるとなっているが、遺贈の規定には従わない。  
  平成15年 マンション管理士試験 「問15」

  誰かが死んだときを条件に贈与する、死因贈与は、民法第554条
 「(死因贈与)
 第五百五十四条  
贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与については、その性質に反しない限り、遺贈に関する規定を準用する。」 
とあるのですが、
 遺贈は遺言という単独行為によってなされ、特に自筆証書や公正証書など方式の規定がありますが、死因贈与は、当事者間の契約によって成立するという明確な違いがあり、
遺言のような公正証書などの特別の方式は要求されていません。(最高裁:昭和32年5月21日 判決
 
 判決文の趣旨:死因贈与も遺言の方式に関する規定に従うべきものと主張するが、民法五五四条の規定は、贈与者の死亡によつて効力を生ずべき贈与契約(いわゆる死因贈与契約)の効力については遺贈(単独行為)に関する規定に従うべきことを規定しただけで、
その契約の方式についても遺言の方式に関する規定に従うべきことを定めたものではないと解すべきである
 
 この判決によれば、死因贈与では、準用しているのは遺贈の効力であり、遺贈の方式に関する規定ではないとしていますから、遺贈の方式である公正証書による贈与契約書でなくても、作成が可能ですから、誤りです。

 遺言の方式に関する規定に従わないなら、早く民法を改正すればいいのに。


 参考民法第967条
 「(普通の方式による遺言の種類)
 第九百六十七条  
遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない。」


答え:

 贈与は、過去にも出題があったが、これも前の「問4」のように、民法のあちらこちらを読んでおくことっていう出題です。 少し、難しい?

《タグ》民法 判例。 贈与、諾成契約、担保責任、遺贈に関する規定を準用

問6

【問 6】 Aが所有するマンションの専有部分甲(以下、本問において「甲」という。)を賃貸するBが、第三者であるCに、当該賃借権を譲渡又は甲を転貸した場合に関する次の記述のうち、民法、借地借家法(平成3年法律第90号)の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Bが、Aの承諾を得てCに転貸した場合、Aは、Bに対する賃料額を限度にCから支払いを受けることができる。

○ 正しい。 転貸借・譲渡からの出題も多い。
 
 
平成26年 マンション管理士試験 「問15」 、平成25年 管理業務主任者試験 「問42」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問15」、 平成23年 管理業務主任者試験 「問3」、 平成20年 マンション管理士試験 「問3」、 平成20年 管理業務主任者試験 「問5」 など。
 

  基本的には、賃貸借は当事者の個人的な信頼関係が基礎になっていますから、賃借人は、大家(賃貸人)の承諾がなければ、勝手にその賃借権を譲り渡したり、また貸し(転借)はできません。
 それが、民法第612条

  「(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
  第六百十二条  
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない
    2  賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。」 
です。 
 しかし、大家(賃貸人)の承諾があれば、賃借権を譲り渡したり、また貸し(転借)ができます。

 それが、民法第613条
 「(転貸の効果)
 第六百十三条  
賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人に対して直接に義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
 2  前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。」 
です。
 この民法第613条によれば、転借人Cは賃貸人Aに対して直接に義務を負いますから、賃貸人Aは、転借人Cに対して、賃借人Bに支払うべき賃料の範囲でCから支払いを受けることができ、正しい。

 例:大家:賃貸人Aが賃借人Bに家賃10万円で契約をし、賃借人Bは、大家Aの許可を得て、Cに家賃13万円で転借していれば、AはCから、10万円の範囲で支払を受け取ることができます。



2 Bが、Aの承諾を得てCに転貸した場合、AB間の賃貸借契約がBの債務不履行により解除されたときは、Aは、Cに催告をして弁済の機会を与えなければ、賃貸借の終了をCに対抗することができない。

X 誤っている。 債務不履行なら、転借人までに、催告をして弁済の機会を与える必要はない。
  平成24年 マンション管理士試験 「問15」 選択肢3

   なぜ、このような設問があるかというと、適法な転貸借関係が存在しているのに、賃借人の債務不履行で契約を解除すれば、その効果は、転借人に及ぶため実態に即して転借人の権利の保護が図られるべきで、実際に占有している転借人Cに、信義則に則り支払うよう催告が必要ではないかという争いがあったからです。

  これは、判例:平成6年7月18日:最高裁の判決。 
  判決文では、「土地の賃貸借契約において、適法な転貸借関係が存在する場合に、賃貸人が賃料の不払を理由に契約を解除するには、
特段の事情のない限り、転借人に通知等をして賃料の代払の機会を与えなければならないものではない。(ただし、反対意見あり)」  とあり、
 賃貸借契約が解除されれば、転貸借だけが残ることもなく、転借人Cに対して、賃借人Bの代わりに支払うよう催告して、その支払の機会を与えなくても、賃貸借の終了をCに対抗することができますから、誤りです。


 参考:催告の必要性は、民法第541条
 「(履行遅滞等による解除権)
 第五百四十一条  当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めて
その履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。



3 Bが、Aの承諾を得ないでCに譲渡した場合、それがAに対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときでも、Aは、Bとの間の賃貸借契約を解除することができる。

X 誤っている。 賃借権の無断譲渡や無断転借でも、直ちに解除を認めず、その事実が賃貸人に対する「背信的行為」と認めるに足りない特段の事情があれば、解除はできない。
 賃借権の無断譲渡は、民法第612条
 「(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
 第六百十二条  
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない
 
2  賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。」 とあります。

  民法第612条2項によれば、当事者の信頼関係を裏切り、賃借人Bが賃貸人Aに無断で第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができます。
 しかし、多くの判例で、無断譲渡や無断転借では、直ちに解除告知を認めず、その事実が
賃貸人に対する「背信的行為」と認めるに足りない特段の事情があれば、解除はできず、無断譲渡や無断転貸でも適法なものになると解釈しています。
 例えば、最高裁:昭和28年9月25日 判決
 判決文の趣旨:賃借人が賃貸人の承諾なく第三者をして賃借物の使用または収益をなさしめた場合でも、賃借人の当該行為を賃貸人に対する背信的行為と認めるにたらない本件の如き特段の事情があるときは、賃貸人は民法第六一二条第二項により契約を解除することはできない。(少数意見および補足意見がある。)
  この判決によれば、賃借権の無断譲渡であっても、それが賃貸人Aに対する背信行為と認めるに足りない特段の事情があるときなら、賃貸人Aは、賃借人Bとの間の賃貸借契約を解除することができず、誤りです。

 しかし、この判決の少数意見などにあるように、「背信的行為と認めるにたらない本件の如き特段の事情」とは、各人の判断に大きく依存するので、適切ではない判決です。



4 BからCへの譲渡に関して、Aに不利となるおそれがないにもかかわらず、Aが当該譲渡を承諾しないときは、裁判所は、Bの申立てにより、Aの承諾に代わる許可を与えることができる。

X 誤っている。 建物の賃貸借については、民法でも借地借家法でも、大家(賃貸人)に代わって裁判所が許可を与える、このような規定がない。

 面倒な、引っ掛け問題です。
 借地借家法を勉強していますと、土地の賃借権の譲渡又は転貸として、借地借家法第19条

 「(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
 第十九条  
借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。
 2  裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。
 3  第一項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。
 4  前項の申立ては、第一項の申立てが取り下げられたとき、又は不適法として却下されたときは、その効力を失う。
 5  第三項の裁判があった後は、第一項又は第三項の申立ては、当事者の合意がある場合でなければ取り下げることができない。
 6  裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第一項又は第三項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。
 7  前各項の規定は、転借地権が設定されている場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。ただし、借地権設定者が第三項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。 」 
とあります。
 この借地借家法の規定は、
土地の賃借権を譲渡または転貸する際に、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときに、裁判所が地主に代わって許可を与えるものです。
 建物を借りているBの賃貸借や転借についての規定ではないため、誤りです。

 

答え:1

 すこし難しいか?  民法関係の解説は、かなり詳細にしたので、実に時間がかかっている。1問平均すると、2時間以上はかけている。

《タグ》民法 借地借家法 判例。 転貸、譲渡、第三者、無断譲渡、無断転貸借

問7

【問 7】 マンション標準管理委託契約書及びマンション標準管理委託契約書コメント(平成15年4月9日国総動第3号。国土交通省総合政策局長通知。以下、本試験問題において「マンション標準管理委託契約書」という。)の定めによれば、管理事務(マンション管理適正化法第2条第6号に規定するものをいう。以下、本試験問題において同じ。)に要する費用の負担及び支払方法に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1 定額委託業務費とは、委託業務費のうち、その負担方法が定額でかつ精算を要しない費用をいう。

○ 適切である。
   平成23年 管理業務主任者試験 「問8」 、平成19年 管理業務主任者試験 「問8」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問13」 など。
 
  まず解説用の定義などとして、「マンション標準管理委託契約書」は、この解説では、「標準委託契約書」といいます。

 管理事務(マンション管理適正化法第2条第6号に規定するもの)とは、
 「(定義) 
 第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
      六  
管理事務 マンションの管理に関する事務であって、基幹事務(管理組合の会計の収入及び支出の調定及び出納並びにマンション(専有部分を除く。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整をいう。以下同じ。)を含むものをいう。 」 
です。

 そこで、設問の 定額委託業務費とは、標準委託契約書6条
 「(管理事務に要する費用の負担及び支払方法)
 第6条 甲(管理組合)は、管理事務として乙(管理業者)に委託する事務(別表第1から別表第4までに定める事務)のため、乙に委託業務費を支払うものとする。
 2 甲は、
前項の委託業務費のうち、その負担方法が定額でかつ精算を要しない費用(以下「定額委託業務費」という。)を、乙に対し、毎月、次のとおり支払うものとする。
    一 定額委託業務費の額
      合計月額○○円
      消費税及び地方消費税抜き価格 ○○円
      消費税額及び地方消費税額(以下、本契約において「消費税額等」という。)
      ○○円
      内訳は、別紙1のとおりとする。
    二 支払期日及び支払方法
      毎月○日までにその○月分を、乙が指定する口座に振り込む方法により支払う。
    三 日割計算
      期間が一月に満たない場合は当該月の暦日数によって日割計算を行う。(1円未満は四捨五入とする。)
 3 第1項の委託業務費のうち、定額委託業務費以外の費用の額(消費税額等を含む。)は別紙2のとおりとし、甲は、各業務終了後に、甲及び乙が別に定める方法により精算の上、乙が指定する口座に振り込む方法により支払うものとする。
 4 甲は、第1項の委託業務費のほか、乙が管理事務を実施するのに伴い必要となる水道光熱費、通信費、消耗品費等の諸費用を負担するものとする。」 とあり、
 標準委託契約書6条2項によれば、委託業務費のうち、その負担方法が定額でかつ精算を要しない費用(以下「
定額委託業務費」という)、とありますから、適切です。


2 定額委託業務費以外の業務費については、管理組合は、各業務終了後に、管理組合及びマンション管理業者(マンション管理適正化法第2条第8号に規定する者をいう。以下、本試験問題において同じ。)が別に定める方法により精算の上、マンション管理業者が指定する口座に振り込む方法により支払う。

○ 適切である。
 まず、管理組合及びマンション管理業者(マンション管理適正化法第2条第8号に規定する者をいう、とは、
   「(定義) 
 第二条
 八  
マンション管理業者 第四十四条の登録を受けてマンション管理業を営む者をいう。 」
です。
 選択肢1で引用しました、標準委託契約書6条3項
 「3 第1項の委託業務費のうち、
定額委託業務費以外の費用の額(消費税額等を含む。)は別紙2のとおりとし、甲(管理組合)は、各業務終了後に、甲及び乙(管理業者)が別に定める方法により精算の上、乙が指定する口座に振り込む方法により支払うものとする。」 
 とありますから、 適切です。


3 定額委託業務費以外の費用の額についても、管理委託契約書において内訳を明示するものとする。

○ 適切である。
 定額委託業務費以外の費用の額は、選択肢2でも引用しました、標準委託契約書6条3項
 「3 第1項の委託業務費のうち、定額委託業務費以外の費用の額(消費税額等を含む。)は
別紙2のとおりとし、甲は、各業務終了後に、甲及び乙が別に定める方法により精算の上、乙が指定する口座に振り込む方法により支払うものとする。」 とあり
 別紙2は、以下のようになっています。


 これによれば、定額委託業務費以外の費用の額についても、管理委託契約書において内訳を明示していますから、適切です。


4 マンション管理業者が管理事務を実施するのに伴い必要となる水道光熱費、通信費、消耗品等の諸費用は、マンション管理業者が負担する。

X 適切でない。 管理事務を実施するのに伴い必要となる水道光熱費、通信費、消耗品等の諸費用の負担は、管理組合が負担する。業者負担ではない。
 平成26年 管理業務主任者試験 「問7」 、平成20年 管理業務主任者試験 「問13」 、平成19年 管理業務主任者試験 「問8」 

   管理事務の実施は、選択肢1で引用しました、標準委託契約書6条4項
 「(管理事務に要する費用の負担及び支払方法)
 第6条
  4
甲(管理組合)は、第1項の委託業務費のほか、乙(管理業者)が管理事務を実施するのに伴い必要となる水道光熱費、通信費、消耗品費等の諸費用を負担するものとする。」 とあり、
 マンション管理業者が管理事務を実施するのに伴い必要となる水道光熱費、通信費、消耗品等の諸費用は、
管理組合が負担しますから、マンション管理業者が負担するは、適切ではありません。

 2016年 2月 7日:参考条文変更した。


答え:4

  「問7」は、標準委託契約書の第一問目につき、詳細に解説しました。
  このあたりは、過去問題をやっていると、易しい。

《タグ》
標準委託契約書。 定額委託業務費、定額委託業務費以外の業務費、水道光熱費、通信費、消耗品等の諸費用の負担

問8

【問 8】 宅地建物取引業者(宅地建物取引業法(昭和27年法律第176号)第2条第3号に規定する者をいう。以下、本試験問題において同じ。)が、管理組合の組合員から、当該組合員が所有する専有部分の売却の以来を受け、その媒介等の業務のために、マンション管理業者に確認を求めてきた場合の当該管理組合に代わって行うマンション管理業者の対応に関する次の記述のうち、マンション標準管理委託契約書の定めによれば、最も不適切なものはどれか。

1 マンション管理業者が提供・開示できる範囲は、原則として管理委託契約書に定める範囲となるため、一般的にマンション内の事件、事故等の情報は、当該組合員又は管理組合に確認するよう求めるべきである。

○ 適切である。
 
 平成22年 管理業務主任者試験 「問7」 、平成18年 管理業務主任者試験 「問7」 平成16年 管理業務主任者試験 「問9」
 
  設問のようなマンション内の事件、事故等の情報の開示は、基本的には、売主や管理組合に直接確認を求めるべきですが、宅地建物取引業者もマンション管理の業者も、同じ国土交通省の管轄下にあるため、宅地建物取引業法施行規則第16条の2等に定める事項等について、標準委託契約書でも宅地建物取引業者の面倒を見てやってくれといっています。
 それが、標準委託契約書14条
 「(管理規約の提供等)
 第14条 
乙(管理業者)は、宅地建物取引業者が、甲(管理組合)の組合員から、当該組合員が所有する専有部分の売却等の依頼を受け、その媒介等の業務のために管理規約の提供及び次の各号に掲げる事項の開示を求めてきたときは、甲に代わって、当該宅地建物取引業者に対し、管理規約の写しを提供し、及び各号に掲げる事項を書面をもって開示するものとする
    一 当該組合員の負担に係る管理費及び修繕積立金等の月額並びに滞納があるときはその金額
    二 甲の修繕積立金積立総額並びに管理費及び修繕積立金等に滞納があるときはその金額
    三 本マンション(専有部分を除く。)の修繕の実施状況
    四 本マンションの石綿使用調査結果の記録の有無とその内容
    五 本マンションの耐震診断の記録の有無とその内容(当該マンションが昭和56 年6月1日以降に新築の工事に着手した場合を除く。)
 2 前項の場合において、乙は、当該組合員が管理費及び修繕積立金等を滞納しているときは、甲に代わって、当該宅地建物取引業者に対し、その清算に関する必要な措置を求めることができるものとする。」 です。
 また、14条関係のコメントもあります。
 「第14条関係
   @ 本条は、宅地建物取引業者が、媒介等の業務のために、宅地建物取引業法施行規則第16条の2等に定める事項について、マンション管理業者に当該事項の確認を求めてきた場合の対応を定めたものである。
    本来宅地建物取引業者への管理規約等の提供・開示は管理組合又は売主たる組合員が行うべきものであるため、これらの事務をマンション管理業者が行う場合には、管理規約等においてその根拠が明確に規定されていることが望ましい。
  
 また、マンション管理業者が提供・開示できる範囲は、原則として管理委託契約書に定める範囲となる。一般的にマンション内の事件、事故等の情報は、売主又は管理組合に確認するよう求めるべきである。
 コメント14条関係によりますと、マンション管理業者が提供・開示できる範囲は、原則として管理委託契約書に定める範囲となるため、一般的にマンション内の事件、事故等の情報は、当該組合員又は管理組合に確認するよう求めるべきであるは、適切です。



2 当該専有部分の修繕の実施状況について開示を求めてきたときは、書面をもって開示するものとする。

X 適切でない。 専有部分は管理組合の管理に入っていない。
 選択肢1で引用しました、標準委託契約書14条1項3号
 「三 本マンション(
専有部分を除く。)の修繕の実施状況」 とあり、
 マンションの修繕の実施状況について開示を求めてきたときは、書面をもって開示しますが、管理組合の管理からもともと”専有部分は除かれる”ため、適切ではありません。



3 管理組合の修繕積立金積立総額並びに管理費及び修繕積立金等の滞納額について開示を求めてきたときは、書面をもって開示するものとする。

○ 適切である。
 これは、選択肢1で引用しました、標準委託契約書14条1項2号
 「二
甲(管理組合)の修繕積立金積立総額並びに管理費及び修繕積立金等に滞納があるときはその金額」 とあり、
 開示を求めてきたときは、書面をもって開示しますから、適切です。



4 管理費等の改定の予定及び修繕一時金の徴収の予定並びに大規模修繕の実施予定(理事会で改定等が決議されたものを含む。)がある場合には、これらも開示する情報に含め、書面をもって開示するものとする。

○ 適切である。
 これは、選択肢1で引用しました、標準委託契約書14条関係のコメントB
 「コメント
   B
開示する情報としては、管理費等の改定の予定及び修繕一時金の徴収の予定並びに大規模修繕の実施予定(理事会で改定等が決議されたものを含む。)がある場合にはこれを含むものとする。 」 とあり、
 これらも開示する情報に含め、書面をもって開示しますから、適切です。



答え:2
 
 この「問8」も、選択肢2の「専有部分を除く」は、引っ掛けで、出題としては不適切ですが、難しくはありません。

《タグ》標準委託契約書、コメント。 宅地建物取引業者への開示、

問9

【問 9】 マンション標準管理委託契約書における出納業務及び会計業務に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1 マンション管理業者は、管理組合の会計に係る管理費等の出納簿や支出に係る証拠書類等を整備、保管し、当該管理組合の定期総会終了後、遅滞なく、当該管理組合に引き渡さなければならない。

○ 適切である。
 
 平成18年管理業務主任者試験 「問9」
 
  会計の書類等の規定は、標準委託契約書の別表第1 事務管理業務 1 基幹事務 (2)出納 D


  とあり、

 同じく、コメント:甲(管理組合)の会計に係る帳簿等とは、管理費等の出納簿や支出に係る証拠書類等をいう」 とあり、
 マンション管理業者は、管理組合の会計に係る管理費等の出納簿や支出に係る証拠書類等を整備、保管し、当該管理組合の定期総会終了後、遅滞なく、当該管理組合に引き渡さなければなりませんから、適切です。



2 保証契約を締結して管理組合の収納口座と管理組合の保管口座を設ける場合、保管口座については当該口座に係る通帳、印鑑等の保管者を管理委託契約書に明記しなければならないが、収納口座についてはその必要はない。

X 適切ではない。 保証契約では、収納口座と保管口座の両方に、通帳と印鑑の保管者を、標準委託契約書に明記する。
 保証契約を締結し、管理組合の収納口座と管理組合の保管口座を設ける場合は、別表第1 事務管理業務 1 基幹事務 (2)出納 B通帳等の保管等

 とあり、

 収納口座と保管口座の両方について、通帳と印鑑の保管者を、標準委託契約書に明記しますから、適切でない。



3 マンション管理業者は、毎月、管理組合の収支状況及び収納状況が確認できる書面を作成し、管理業務主任者(マンション管理適正化法第2条第9号に規定する者をいう。以下、本試験問題において同じ。)をして管理組合に報告させなければならない。

X 適切でない。 年度末の報告は管理業務主任者がするが、月次は交付だけ。
 
 平成24年 管理業務主任者試験 「問7」 、平成21年 管理業務主任者試験 「問7」
 
  管理事務の報告は、標準委託契約書9条
 「(管理事務の報告等)
 第9条 乙(管理業者)は、甲(管理組合)の事業年度終了後○月以内に、甲に対し、当該年度における管理事務の処理状況及び甲の会計の収支の結果を記載した書面を交付し、管理業務主任者をして、報告をさせなければならない。
 
2 乙は、毎月末日までに、甲に対し、前月における甲の会計の収支状況に関する書面を交付しなければならない。
 3 乙は、甲から請求があるときは、管理事務の処理状況及び甲の会計の収支状況について報告を行わなければならない。
 4 前3項の場合において、甲は、乙に対し、管理事務の処理状況及び甲の会計の収支に係る関係書類の提示を求めることができる。」 とあり、
 標準委託契約書9条1項によれば、管理業者は事業年度終了時には、当該年度における管理事務の処理状況及び甲の会計の収支の結果を記載した書面を交付し、管理業務主任者をして、報告をさせますが、設問の「毎月、管理組合の収支状況及び収納状況が確認できる書面を作成」は、9条2項に該当していますから、原則;管理組合から請求が無ければ(3項参照)交付だけでよく、管理業務主任者の報告までは求められていませんから、適切ではありません。
 現実には、月次でも、管理業務主任者が理事会に出席して、報告していますが。



4 マンション管理業者は、管理組合の管理規約等の定め若しくは総会決議、組合員名簿若しくは組合員異動届又は専用使用契約書に基づき、毎月、組合員別管理費等負担額一覧表を管理組合に提出しなければならない。

X 適切でない。 組合員別管理費等負担額一覧表は、毎月提出ではない。
 
 平成19年 管理業務主任者試験 「問9」 平成18年 管理業務主任者試験 「問9」
 
  組合員別管理費等負担額一覧表の提出は、別表第1 事務管理業務 1 基幹事務 (2)出納 @ 一 


  とあり、

 組合員別管理費等負担額一覧表は、管理組合に提出しますが、毎月ではないため、適切ではありません。

 組合員別管理費等負担額一覧表の内容は、そんなに変更があるものではありませんから。


答え:1

 引っ掛けばかり。 すこし難しいか。

《タグ》標準委託契約書。 会計、収納口座、保管口座、

問10

【問 10】 マンション管理費の支払債務の消滅時効に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 管理費の支払債務は、区分所有者が支払期の到来したことを知らなくても、その支払期が到来した時から時効が進行する。

○ 正しい。
  平成26年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成17年 マンション管理士試験 「問17」 、 平成18年 マンション管理士試験 「問14」 等多い。
 
  まず、消滅時効の進行は、民法第166条

 「(消滅時効の進行等)
 第百六十六条  
消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する
 2  前項の規定は、始期付権利又は停止条件付権利の目的物を占有する第三者のために、その占有の開始の時から取得時効が進行することを妨げない。ただし、権利者は、その時効を中断するため、いつでも占有者の承認を求めることができる。 」 
とあり、
 民法第166条1項によれば、消滅時効は、権利を行使することができる時から進行します。
 言い換えると、支払債務であれば、支払期が到来した時から時効は進行しています。 この際に、区分所有者が支払期を知っているかは問題とされていませんから、正しい。



2 マンションの区分所有者全員が、「管理費債務の消滅時効の主張はしない」旨の文書をあらかじめ管理組合に提出している場合、各区分所有者は時効を主張することができない。

X 誤っている。 時効の利益はあらかじめ放棄できない。 各区分所有者は時効を主張することができる。
 
 平成26年 管理業務主任者試験 「問11」 、  平成25年 管理業務主任者試験 「問11」 、平成24年 管理業務主任者試験 「問3」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問11」 

  あらかじめ管理費債務の消滅時効の主張はしないという文書の提出は、時効が完成すれば得る権利や義務を免れるという時効制度の基になっています、時効の利益を放棄する行為となります。
 すると、民法第146条

 「(時効の利益の放棄)
 第百四十六条  
時効の利益は、あらかじめ放棄することができない。」 とあり、
  「管理費債務の消滅時効の主張はしない」旨の文書をあらかじめ管理組合に提出している場合には、この民法第146条に該当しますから、このような文章は無効となり、各区分所有者は、時効を主張できますから、誤りです。
 あらかじめ時効の利益を放棄することを認めると、時効制度そのものが成り立たなくなりますから、当然です。



3 管理費の滞納者が死亡し、その相続人が当該区分所有権を承継した場合は、管理費債務の時効は、その承継により中断する。

X 誤っている。 単に相続しただけでは、時効は中断しない。
 
 平成26年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成25年 管理業務主任者試験 「問10」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問13」 など、時効の中断の出題は多い。
 
  これまで経過した時効期間の効力を失わせる、時効を中断させるのは、民法第147条
 「(時効の中断事由)
 第百四十七条  時効は、次に掲げる事由によって中断する。
    一  請求
    二  差押え、仮差押え又は仮処分
    三  承認 」 
とあり、
 これ以外の事由は認めていませんから、単に相続で、当該区分所有権を承継した場合では、時効の中断事由には該当しないため、誤りです。



4 管理費の滞納者が、破産手続開始決定を受けた場合は、その決定により時効が中断する。

X 誤っている。 破産手続き開始決定も、時効の中断事由にならない。
  選択肢3で引用しましたように、時効を中断させる事由は
 「 一  請求
   二  差押え、仮差押え又は仮処分
   三  承認 」

です。
 ここでの請求に、破産手続きへの参加で、民法第152条があります。

 「第百五十二条  破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加は、債権者がその届出を取り下げ、又はその届出が却下されたときは、時効の中断の効力を生じない。 」
 
 民法第152条での、破産手続きに参加とは、他人の申し立てによって開始された破産手続きに、破産債権者として債権の届けを出して、配当を要求する行為です。
 そこで、設問のような、管理費の滞納者が、破産手続開始決定を受けた場合は、その決定によってだけでは、時効は中断しませんから、誤りです。
 また、破産手続きに参加しても、債権者がその届出を取り下げ、又はその届出が却下されたときは、時効の中断の効力を生じませんから、注意してください。


 参考:破産法第111条
 「(破産債権の届出)
 第百十一条  破産手続に参加しようとする破産債権者は、第三十一条第一項第一号又は第三項の規定により定められた破産債権の届出をすべき期間(以下「債権届出期間」という。)内に、次に掲げる事項を裁判所に届け出なければならない。
   一  各破産債権の額及び原因
   二  優先的破産債権であるときは、その旨
   三  劣後的破産債権又は約定劣後破産債権であるときは、その旨
   四  自己に対する配当額の合計額が最高裁判所規則で定める額に満たない場合においても配当金を受領する意思があるときは、その旨
   五  前各号に掲げるもののほか、最高裁判所規則で定める事項
 2  別除権者は、前項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を届け出なければならない。
   一  別除権の目的である財産
   二  別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる債権の額
 3  前項の規定は、第百八条第二項に規定する特別の先取特権、質権若しくは抵当権又は破産債権を有する者(以下「準別除権者」という。)について準用する。



答え:1

 
時効やその中断事由は、よく出題されます。 易しい出題でした。

《タグ》民法。 時効、時効の中断事由、相続、破産

問11

【問 11】 民事訴訟法(平成8年法律第109号)の「少額訴訟に関する特則」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 少額訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、訴えの提起の際にしなければならない。

○ 正しい。
  少額訴訟は 、平成24年 管理業務主任者試験 「10」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「10」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問10」 。
 
  まず、少額訴訟の制度は、民事訴訟のうち,60万円以下の金銭の支払を求める訴えについて,原則として1回の審理で紛争解決を図る手続です。
 即時解決を目指すため,証拠書類や証人は,審理の日にその場ですぐに調べることができるものに限られます。
 原則、相手方の所在地を管轄する簡易裁判所に訴状を提出し、申請手数料は、訴額の約1%です。その法廷では,基本的には,裁判官と共に丸いテーブル(ラウンド・テーブル)に着席する形式で審理が進められます。
 なお、同一年内での、少額訴訟手続きの利用回数は、10回以内に制限されています。

 個人間で発生している小額の金銭トラブルなら、わざわざ裁判にしないで、解決しようとする制度です。


 少額訴訟は、具体的には、民事訴訟法第368条〜第381条に定められています。
 そこで、設問は、民事訴訟法第368条
 「(少額訴訟の要件等)
  第三百六十八条  
簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数(注:10回)を超えてこれを求めることができない。
    
2  少額訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、訴えの提起の際にしなければならない。
    3  前項の申述をするには、当該訴えを提起する簡易裁判所においてその年に少額訴訟による審理及び裁判を求めた回数を届け出なければならない。」 
 とあり、
 民事訴訟法第368条2項によれば、少額訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、訴えの提起の際にしなければなりませんから、正しい。 


2 少額訴訟における被告は、反訴を提起することができない。

○ 正しい。
 まず、民事訴訟法における「反訴」とは、民事訴訟法第146条

 「(反訴
 第百四十六条  
被告は、本訴の目的である請求又は防御の方法と関連する請求を目的とする場合に限り、口頭弁論の終結に至るまで、本訴の係属する裁判所に反訴を提起することができる。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
    一  反訴の目的である請求が他の裁判所の専属管轄(当事者が第十一条の規定により合意で定めたものを除く。)に属するとき。
    二  反訴の提起により著しく訴訟手続を遅滞させることとなるとき。
 2  本訴の係属する裁判所が第六条第一項各号に定める裁判所である場合において、反訴の目的である請求が同項の規定により他の裁判所の専属管轄に属するときは、前項第一号の規定は、適用しない。
 3  日本の裁判所が反訴の目的である請求について管轄権を有しない場合には、被告は、本訴の目的である請求又は防御の方法と密接に関連する請求を目的とする場合に限り、第一項の規定による反訴を提起することができる。ただし、日本の裁判所が管轄権の専属に関する規定により反訴の目的である請求について管轄権を有しないときは、この限りでない。
 4  反訴については、訴えに関する規定による。 」 
です。
 民事訴訟の被告が、口頭弁論終結前に同じ裁判の中で、原告を相手方として新たに提起する訴えのことです。
 紛争内容が同じであれば、1つの裁判の中において、解決を図れば裁判上も矛盾がなく経済上も効率がいいので、反訴が認められています。 


 そこで、設問に対しては、民事訴訟法第369条
 「(反訴の禁止)
 第三百六十九条  
少額訴訟においては、反訴を提起することができない。 」 とあり、
 少額訴訟制度は、通常の裁判と異なり、審理を簡便・迅速に行うことを目的にして設けられた制度ですから、反訴ができると面倒なため、反訴は認められていないので、正しい。
 なお、反訴をするなら、選択肢3のように、通常訴訟へ移行します。



3 少額訴訟における被告は、所定の時期までは、当該訴訟を通常の訴訟手続に移行させる旨の申述をすることができる。

○ 正しい。 
 選択肢2で説明しましたように、少額訴訟制度は、通常の裁判と異なり、審理を簡便・迅速に行うことを目的に設けられていて、被告は反訴が出来ませんが、これでは納得できない状況もあります。
 そこで、民事訴訟法第373条

 「(通常の手続への移行)
 第三百七十三条  
被告は、訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができる。ただし、被告が最初にすべき口頭弁論の期日において弁論をし、又はその期日が終了した後は、この限りでない。
 
2  訴訟は、前項の申述があった時に、通常の手続に移行する。
 3  次に掲げる場合には、裁判所は、訴訟を通常の手続により審理及び裁判をする旨の決定をしなければならない。
    一  第三百六十八条第一項の規定に違反して少額訴訟による審理及び裁判を求めたとき。
    二  第三百六十八条第三項の規定によってすべき届出を相当の期間を定めて命じた場合において、その届出がないとき。
    三  公示送達によらなければ被告に対する最初にすべき口頭弁論の期日の呼出しをすることができないとき。
    四  少額訴訟により審理及び裁判をするのを相当でないと認めるとき。
 4  前項の決定に対しては、不服を申し立てることができない。
 5  訴訟が通常の手続に移行したときは、少額訴訟のため既に指定した期日は、通常の手続のために指定したものとみなす。」 
とあり、
 民事訴訟法第373条1項によれば、少額訴訟では被告は反訴ができないので、審理に入る前に訴訟を通常の手続に移行させる旨の申述をすることができますから、正しい。



4 少額訴訟の終局判決に不服のある当事者は、その判決をした裁判所に異議を申し立てることはできないが、地方裁判所に控訴をすることはできる。

X 誤っている。 少額訴訟の終局判決に対しては、異議の申し立てはできるが、控訴をすることができない。
 まず、設問の前半、少額訴訟の終局判決に不服のある当事者の異議申し立ては、民事訴訟法第378条
 「(異議)
 第三百七十八条  
少額訴訟の終局判決に対しては、判決書又は第二百五十四条第二項(第三百七十四条第二項において準用する場合を含む。)の調書の送達を受けた日から二週間の不変期間内に、その判決をした裁判所に異議を申し立てることができる。ただし、その期間前に申し立てた異議の効力を妨げない。
 2  第三百五十八条から第三百六十条までの規定は、前項の異議について準用する。」 
とあり、
 民事訴訟法第378条1項によれば、救済措置としてその判決をした裁判所に”異議”を申し立てることができますから、設問の前半「少額訴訟の終局判決に不服のある当事者は、その判決をした裁判所に異議を申し立てることはできない」は、誤りです。


 設問の後半の控訴(上級裁判所に行う)は、民事訴訟法第377条
 「(控訴の禁止
 第三百七十七条  
少額訴訟の終局判決に対しては、控訴をすることができない。 」 とあり、
 控訴を認めると、少額訴訟制度の審理を簡便・迅速に行う目的が損なわれるため、控訴は少額訴訟では、認めていませんから、後半の「地方裁判所に控訴をすることはできる」は誤りです。
 よって、選択肢4は、前半も後半も誤りです。



答え:4

 少額訴訟制度を知っていれば、他の選択肢は疑問があっても、選択肢4は、易しく選べたようです。

《タグ》民事訴訟法 少額訴訟制度。 60万円以下、反訴、異議、控訴

問12

【問 12】 管理組合の会計等に関する次の記述のうち、マンション標準管理規約及びマンション標準管理規約コメント(単棟型)(平成16年1月23日国総動第232号・国住マ第37号。国土交通省総合政策局長・同住宅局長通知。以下、本試験問題において「マンション標準管理規約」という。)の定めによれば、適切なものはいくつあるか。


 *注: マンション標準管理規約(単棟型、団地型、複合用途型)は、平成28年3月に改正があり、対応した。(2016年 8月28日)


ア 機械式駐車場を有する場合、駐車場使用料は、管理費及び修繕積立金とは区分して経理することもできる。

○ 適切である。
 
 平成24年 管理業務主任者試験 「問35」 平成21年 マンション管理士試験 「問29」
 
  駐車場の使用料は、マンション標準管理規約(単棟型)(以下、この解説では「標準管理規約」といいます)29条 (注:平成28年3月の改正でも変更なし。)
 「(使用料)
 第29条 駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料(以下「使用料」という。)は、それらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる。」 とあり
 駐車場の使用料は、原則;駐車場の管理に要する費用に充てて、余れば、修繕積立金として積み立てますが、あまり維持において経費がかからない平置きと異なり、機械式駐車場では、維持に費用がかかるため、会計上独自の勘定として、細かく管理することも勧めています。
 それが、同コメント
 
コメント第29条関係 機械式駐車場を有する場合は、その維持及び修繕に多額の費用を要すことから、管理費及び修繕積立金とは区分して経理することもできる。」 とあり、
 機械式駐車場を有する場合、駐車場使用料は、管理費及び修繕積立金とは区分して経理することもできるは、適切です。



イ 管理組合の会計処理に関する細則の変更は、理事会の決議だけでできる。

X 適切でない。 規約及び細則等の制定、変更又は廃止は総会の決議が必要。理事会の決議だけではできない。
 
 平成26年 管理業務主任者試験 「問12」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問35」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問13」  総会の決議事項は、次の「問13」も参考にしてください。
 
  マンションでは会計処理に関する細則だけでなく、多くの事項は総会に諮って決めます。
 それが、標準管理規約48条  (注:平成28年3月の改正点。)

 「(議決事項)
 第48条  次の各号に掲げる事項については、総会の決議を経なければならない。
    一  収支決算及び事業報告
    二  収支予算及び事業計画
    三  管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
   
 四  規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止
    五  長期修繕計画の作成又は変更
    六  第28条第1項に定める特別の管理の実施並びにそれに充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し
    七  第28条第2項
及び第3項に定める建物の建替えに係る計画又は設計等の経費のための修繕積立金の取崩し
    八  修繕積立金の保管及び運用方法
    九  第21条第2項に定める管理の実施
    十  区分所有法第57条第2項及び前条第3項第三号の訴えの提起並びにこれらの訴えを提起すべき者の選任
    十一  建物の一部が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
    十二  区分所有法第62条第1項の場合の建替え
及び円滑化法第108条第1項の場合のマンション敷地売却
    十三  役員の選任及び解任並びに役員活動費の額及び支払方法
    十四  組合管理部分に関する管理委託契約の締結
    十五  その他管理組合の業務に関する重要事項 」 
です。
 標準管理規約48条4号によれば、「規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止」は、総会の決議事項ですから、会計処理に関する細則の変更は、理事会の決議だけではできず、適切ではありません。



ウ 長期修繕計画の変更は、理事会の決議だけでできる。

X 適切でない。 長期修繕計画の変更は、総会の決議事項で、理事会だけの決議ではできない。
 
 平成23年 マンション管理士試験 「問27」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問37」
 
  長期修繕計画の変更は、選択肢イで引用しました、総会の決議事項、標準管理規約48条5号  (注:平成28年3月の改正でも変更なし。)
 「
五 長期修繕計画の作成又は変更」 とありますから、
 これも、理事会だけの決議ではできませんから、適切ではありません。


エ 駐車場使用料は、その管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる。

○ 適切である。 
 駐車場使用料は、選択肢アでも引用しています、標準管理規約29条  (注:平成28年3月の改正でも変更なし。)
 「(使用料)
 第29条 
駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料(以下「使用料」という。)は、それらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる。」 あり、
 適切です。



1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ


答え:2 (適切なのは、 ア と エ の2つ。)

 個数問題ですが、よく出題がある箇所で、易しい。

《タグ》標準管理規約。 駐車場使用料の扱い方、総会の決議事項

問13

【問 13】 管理組合の会計及び役員に関する次の記述のうち、マンション標準管理規約の定めによれば、最も不適切なものはどれか。


 *注: マンション標準管理規約(単棟型、団地型、複合用途型)は、平成28年3月に改正があり、対応した。(2016年 8月28日)


1 管理組合の役員には、管理費等の収納、保管、運用、支出等の会計業務を行うために会計担当理事を置くこととしており、その選任は理事の互選による。

○ 適切である。
 
 平成26年 マンション管理士試験 「問29」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問12」
 
  まず、設問の前半の会計担当理事は、標準管理規約40条
  (注:平成28年3月の改正点。)

 「(理事)
 第40条  理事は、理事会を構成し、理事会の定めるところに従い、管理組合の業務を担当する。
 2  理事は、管理組合に著しい損害を及ぼすおそれのある事実があることを発見したときは、直ちに、当該事実を監事に報告しなければならない。
 
  会計担当理事は、管理費等の収納、保管、運用、支出等の会計業務を行う。」
 とあり、
 標準管理規約40条
  項により、管理費等の収納、保管、運用、支出等の会計業務を行うために会計担当理事を置くこととしていますから、前半は適切です。
 
 後半の、役員の選任は、標準管理規約35条   (注:平成28年3月の改正点。3項の規定で「互選」が無くなっているなど一部変更になっているので注意。)
 「(役員)
 第35条 管理組合に次の役員を置く。
    一 理事長
    二 副理事長 ○名
    三 会計担当理事 ○名
    四 理事(理事長、副理事長、会計担当理事を含む。以下同じ。) ○名
    五 監事 ○名
 2 理事及び監事は、組合員のうちから、総会で選任する。
   
  新 3  理事長、副理事長及び会計担当理事は、
理事のうちから、理事の互選により選任する。

 
 旧 3 理事長、副理事長及び会計担当理事は、理事の互選により選任する。」 とあり、
 標準管理規約35条 旧3項 により、会計担当理事は、理事の互選により選任されますから、後半も適切です。
 よって、選択肢2は、全部適切です。



2 管理組合は、借入れが緊急に必要な場合であっても、総会の決議を経なければ、特別の管理に要する経費に充当するための借入れをすることができない。

○ 適切である。
  
平成26年 管理業務主任者試験 「問12」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問37
 
  前の「問12」 でも出ましたが、マンションでは、多くの事項は、総会の決議がないと出来ません。
 それが、標準管理規約48条  (注:平成28年3月の改正点。)

 「(議決事項)
 第48条  次の各号に掲げる事項については、総会の決議を経なければならない。
    一  収支決算及び事業報告
    二  収支予算及び事業計画
    三  管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
    四  規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止
    五  長期修繕計画の作成又は変更
    六  第28条第1項に定める特別の管理の実施並びにそれに充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し
    七  第28条第2項
及び第3項に定める建物の建替えに係る計画又は設計等の経費のための修繕積立金の取崩し
    八  修繕積立金の保管及び運用方法
    九  第21条第2項に定める管理の実施
    十  区分所有法第57条第2項及び前条第3項第三号の訴えの提起並びにこれらの訴えを提起すべき者の選任
    十一  建物の一部が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
    十二  区分所有法第62条第1項の場合の建替え
及び円滑化法第108条第1項の場合のマンション敷地売却
    十三  役員の選任及び解任並びに役員活動費の額及び支払方法
    十四  組合管理部分に関する管理委託契約の締結
    十五  その他管理組合の業務に関する重要事項 」 です。

 標準管理規約48条6号によれば、借入れが緊急に必要な場合であっても、特別の管理に要する経費に充当するための借入れは、総会の決議事項ですから、総会の決議を経るは、適切です。


3 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、理事長の承認を得ずに臨時総会を招集することができる。

○ 適切である。
  平成27 マンション管理士試験 「問27」 、平成23年 管理業務主任者試験 「問29」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問12
 
  監事の規定は、標準管理規約41条  (注:平成28年3月の監事の大幅な改正点。)

 「(監事)
 第41条  監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況を監査し、その結果を総会に報告しなければならない。
 2  監事は、いつでも、理事及び第38条第1項第二号に規定する職員に対して業務の報告を求め、又は業務及び財産の状況の調査をすることができる。
 3 監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができる。
 4 監事は、理事会に出席し 必要があると認めるときは、意見を述べなければならない ることができる
 5  監事は、理事が不正の行為をし、若しくは当該行為をするおそれがあると認めるとき、又は法令、規約、使用細則等、総会の決議若しくは理事会の決議に違反する事実若しくは著しく不当な事実があると認めるときは、遅滞なく、その旨を理事会に報告しなければならない。
 6  監事は、前項に規定する場合において、必要があると認めるときは、理事長に対し、理事会の招集を請求することができる。
 7  前項の規定による請求があった日から5日以内に、その請求があった日から2週間以内の日を理事会の日とする理事会の招集の通知が発せられない場合は、その請求をした監事は、理事会を招集することができる。
」 です。
 そこで、標準管理規約41条 
3  項によれば、監事は、管理組合の業務の執行及び財産の状況について不正があると認めるときは、臨時総会を招集することができますから、適切です。
 この際には、理事長の承認は必要とされていません。もしも、理事長の承認が得れないとなると、総会を開くのは面倒な手続きが必要となりますから、当然です



4 管理組合の会計年度の開始後、通常総会において当該年度の収支予算の承認を得るまでの間に、通常の管理に要する経費のうち、経常的であり、かつ、収支予算の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められる経費の支出が必要になった場合には、理事長は自らの判断により、その支出を行うことができる。

X 適切でない。 理事長の判断だけではできない。 理事会の承認が要。
  平成27年 マンション管理士試験 「問31」 でもてている
  
  多くの管理組合では、会計年度が終了してから、2ヵ月以内に総会が開催されますから、新会計年度から総会が開催されるまでの期間は、新予算がまだ総会の未承認だという不備な点があります。
 しかし、清掃費、電気代などは、新会計年度においても発生し、これらの経費を支払わないと、訴えられることにもなりかねません。
 この不備な点は、以前から指摘されており、標準管理規約でも改正がありました。それが、58条です。   
(注:平成28年3月の改正点。)

 「(収支予算の作成及び変更)
 第58条  理事長は、毎会計年度の収支予算案を通常総会に提出し、その承認を得なければならない。
 2  収支予算を変更しようとするときは、理事長は、その案を臨時総会に提出し、その承認を得なければならない。
 
3  理事長は、第56条に定める会計年度の開始後、第1項に定める承認を得るまでの間に、以下の各号に掲げる経費の支出が必要となった場合には、理事会の承認を得てその支出を行うことができる。
     一  第27条に定める通常の管理に要する経費のうち、経常的であり、かつ、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるもの
     二  総会の承認を得て実施している長期の施工期間を要する工事に係る経費であって、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるもの

 4  理事長は、前項 に定める の規定に基づき行った 支出 を行ったとき は、第1項 に定める の規定により 収支予算案の承認を得 たときは、当該収支予算案による支出とみなす る ために開催された通常総会において、その内容を報告しなければならない。この場合において、当該支出は、その他の収支予算とともに承認されたものとみなす。
   注:纏めると、ここは、以下のようになる。
   前項の規定に基づき行った支出は、第1項の規定により収支予算案の承認を得たときは、当該収支予算案による支出とみなす。
 5  理事会が第54条第1項第十号の決議をした場合には、理事長は、同条第2項の決議に基づき、その支出を行うことができる。
 6  理事長は、第21条第6項の規定に基づき、敷地及び共用部分等の保存行為を行う場合には、そのために必要な支出を行うことができる。

  
参考:旧の58条
 「(収支予算の作成及び変更)
 第58条 理事長は、毎会計年度の収支予算案を通常総会に提出し、その承認を得なければならない。
 2 収支予算を変更しようとするときは、理事長は、その案を臨時総会に提出し、その承認を得なければならない。
 3 理事長は、第56条に定める会計年度の開始後、第1項に定める承認を得るまでの間に、以下の各号に掲げる経費の支出が必要となった場合には、理事会の承認を得てその支出を行うことができる。
   一 第27条に定める通常の管理に要する経費のうち、経常的であり、かつ、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるもの
   二 総会の承認を得て実施している長期の施工期間を要する工事に係る経費であって、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認 められるもの

 4 理事長は、前項に定める支出を行ったときは、第1項に定める収支予算 案の承認を得るために開催された通常総会において、その内容を報告しなければならない。この場合において、当該支出は、その他の収支予算とと もに承認されたものとみなす。
   
 (改正:追加。) 」

 そして、コメント第58条関係 (注:平成28年3月の改正点。)

 第58条関係 (平成28年3月版)
 @ 通常総会は、第42条第3項で新会計年度開始以後2か月以内に招集することとしているため、新会計年度開始後、予算案の承認を得るまでに一定の期間を要することが通常である。第3項及び第4項の規定は、このような期間において支出することがやむを得ない経費についての取扱いを明確化することにより、迅速かつ機動的な業務の執行を確保するものである。
 なお、第4項の規定については、公益法人における実務運用を参考として、手続の簡素化・合理化を図ったものである。
 A 第3項第一号に定める経費とは、第27条各号に定める経費のうち、経常的であり、かつ、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるものであることから、前年の会計年度における同経費の支出額のおよその範囲内であることが必要である。
 B 第3項第二号に定める経費とは、総会の承認を得て実施している工事であって、その工事の性質上、施工期間が長期となり、二つの会計年度を跨ってしまうことがやむを得ないものであり、総会の承認を得た会計年度と異なる会計年度の予算として支出する必要があるものであって、かつ、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるものであることが必要である。
 C 第5項は、第54条第2項の決議に基づき、理事長が支出を行うことができることについて定めるものである。
 D 第6項は、第21条第6項の規定に基づき、災害等の緊急時において敷地及び共用部分等の保存行為を行う場合に、理事長が支出を行うことができることについて定めるものである。


 参考:平成28年3月改正前のコメント第58条関係
   @通常総会は、第42条第3項で新会計年度開始以後2か月以内に招集することとしているため、新会計年度開始後、予算案の承認を得るまでに一定の期間を要することが通常である。第3項及び第4項の規定は、このような期間において支出することがやむを得ない経費についての取扱いを明確化することにより、迅速かつ機動的な業務の執行を確保するものである。
   A第3項第一号に定める経費とは、第27条各号に定める経費のうち、経常的であり、かつ、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められるものであることから、前年の会計年度における同経費の支出額のおよその範囲内であることが必要である。
   B 第3項第二号に定める経費とは、総会の承認を得て実施している工事であって、その工事の性質上、施工期間が長期となり、二つの会計年度を跨ってしまうことがやむを得ないものであり、総会の承認を得た会計年度と異なる会計年度の予算として支出する必要があるものであって、かつ、第1項の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められる ものであることが必要である。
    (改正:追加。) 」 とあり、

 標準管理規約58条3項によれば、理事長は、新年度の収支予算案について通常総会で承認を得るまでの間、理事会の承認を得て、経常的であり、かつ、通常総会の承認を得る前に支出することがやむを得ないと認められる経費の支出を行うことができますが、それには、”理事会の承認も必要”で、理事長は自らの判断により、その支出を行うことができるは、適切ではありません。



答え:4

 
理事長の判断だけでできることも少ないことを理解していれば、易しい。

《タグ》標準管理規約。 会計担当理事、 総会の決議事項、借入れ、監事、予算案の未承認期間

問14

【問 14】 管理組合における以下の取引に関して、平成27年3月分の仕訳として最も適切なものは次のうちどれか。ただし、この管理組合の会計年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までとし、期中の取引において、企業会計原則に基づき厳格な発生主義によって経理しているものとする。


 
*私の過去問題の解説を読んでいる人には、度々の重なる説明で恐縮ですが、マンションの管理組合では、明確な会計基準がありません。
 でも、営利を目的とした企業活動ではないことは明らかです。そこで、非営利団体と似ている公益法人の会計方法を基にしています。
 その最大の特徴が、発生主義の採用です。
 
 ★マンションの会計処理で
発生主義ということの重要性は、

  全ての費用・収益は、その支出・収入に基づいて計上し、その発生した期間
     *収入については、請求権が生じた月、
     *支出については、支出が労役などの提供又は工事などである場合は、その労役などの提供又は工事等が完了した月、物品の購入なら、その物品が納入された月
    に正しく割り当てるように処理すること。

 これにより、管理費や修繕積立金は該当月に徴収することになっているなら、未収入金(滞納)があっても、全額計上されている。
 この辺りが、企業の会計処理を知っている人には、なかなか理解できない個所です。
 
 また、「資金の範囲は、現金預金、未収金、未払金、前受金及び前払金とする」も、重要な前提です。資金の範囲同士の取引は、「収支計算書」には、反映されません。
 収支決算書に反映されるのは、収入の発生と費用の発生です。

*これを前提にして、3月の仕訳ということで、問題の取引を見ていくと、
 @勘定科目の選定...増圧直結給水ポンプの設置となると、勘定科目としては、設問では「建物附属設備」を全部で使用していますから、この建物附属設備を使います。
 A工事代金の内、800,000円 を 2月に普通預金から支払った。
  これは、3月には関係ありませんが、2月の仕訳として、以下の処理をしています。

借方 貸方
前払金 ¥800,000
(資産の増加)
普通預金  ¥800,000
(資産の減少)

 B工事は、3月に完了したが、支払は4月に、残金3,200、000円を振り込む。
  ここが、発生主義の重要な点です。 まだ支払がないのですが、発生主義では、完了した3月で、
全額 4,000,000円 を計上します
  全額費用 4,000、000円 の内、800,000円 は、既に2月に前払金として計上していることに注意してください。
  また、全額費用 4,000、000円 を計上しても、実際に振り込むのは、4月ですから、このときの相手勘定は「未払金」となります。
  そこで、仕訳は、次のようになります。

 
借方 貸方
建物附属設備 ¥4、000,000
(資産の増加)
前払金   ¥800,000
(資産の減少)

未払金 ¥3,200,000
(負債の増加)
 
 これで、建物附属設備の仕訳は終わりです。
 
 次に、
 C4月に予定の外壁塗装補修工事 全額 3,000、000円 の 一部 1,000,000円 を3月に普通預金から支払った。
  出題としては、上のBまでで終わらすと、答えが簡単になるため、必ずこのCのような取引も加えてきますから注意してください。
  3月時点では、発生主義では、外壁塗装補修工事の一部 1,000,000円 は、単に 前払金となります。
   そこで、仕訳は、次のようになります。

 
借方 貸方
前払金 ¥1、000,000
(資産の増加)
普通預金  ¥1、000,000
(資産の減少)

 これらを纏めると以下のようになります。
 
借方 貸方
建物附属設備  ¥4、000,000
前払金       ¥1、000,000
前払金       ¥800,000
未払金     ¥3,200,000
普通預金   ¥1、000,000

 よって答えは、

答え:4

  かなり発生主義について細かな解説をしましたので、時間がかかった。

《タグ》会計、仕訳、発生主義、前払金、未払金

問15

【問 15】 管理組合における以下の取引に関して、平成27年3月分の仕訳として最も適切なものは次のうちどれか。ただし、この管理組合の会計年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までとし、期中の取引において、企業会計原則に基づき厳格な発生主義によって経理しているものとする。




発生主義の重要性については、前の「問14」を参考にしてください。

*3月の仕訳で、各取引を見ていきましょう。
 @まず管理費関係は、次のようになります。
  管理費関係の入金 借方 1,240,000円の内訳は、
  ア.2月以前の未収入金の 100,000円。
    これは、2月以前に既に管理費として処理がされている分ですから、入金によって貸方に計上します。
  イ.3月分の振込みは 220,000円ですが、未収入が 他に 80,000円ある。
    
管理費の発生主義による 合計は 220,000円 + 80,000円 = 300、000円です
    そこで、管理費収入としては、全額の 300,000円を貸方に計上しますが、未収があるため、借方に未収金 80,000円も計上します。
  ウ.4月分 92,000円まで 振り込んできている。
    3月では貸方に前受金として、計上します。 
  そこで、管理費関係は、次のようになります。

借方 貸方
普通預金 ¥1,240,000
未収入金    ¥80,000
未収入金   ¥100,000
管理費収入  ¥300,000
前受金     ¥920,000

 A次に修繕積立金関係は、以下のようになります。
  修繕積立金関係の入金 借方 620,000円の内訳は、
  ア.2月以前の未収入金の 50,000円。
    これは、2月以前に既に修繕積立金として処理がされている分ですから、入金によって貸方に計上します。
  イ.3月分の振込みは 110,000円ですが、未収入が 他に 40,000円ある。
    
修繕積立金の発生主義による 合計は 110,000円 + 40,000円 = 150、000円です
    そこで、管修繕積立金収入としては、全額の 150,000円を貸方に計上しますが、未収があるため、借方に未収金 40,000円も計上します。
  ウ.4月分 460,000円まで 振り込んできている。
    3月では貸方に前受金として、計上します。 
  そこで、修繕積立金関係は、次のようになります。

借方 貸方
普通預金  ¥620,000
未収入金   ¥40,000
未収入金       ¥50,000
修繕積立金収入  ¥150,000
前受金        ¥460,000

 そこで、管理費と修繕積立金を纏めると、以下のようになります。

 
借方 貸方
普通預金   ¥1,240,000
        +  ¥620,000
       = ¥1,860,000
(資産の増加)

未収入金       ¥80,000
         +  ¥40,000
         = ¥120,000
(資産の増加)
未収入金       ¥100,000
            + ¥50,000
           = ¥150,000
(資産の減少)

管理費収入     ¥300,000
(収入の発生)

修繕積立金収入  ¥150,000
(収入の発生)

前受金         ¥920,000
        +   ¥460,000
        = ¥1,380,000
(負債の増加)
  よって、答えは、1

答え:1

 問題文中の、未収入金をしっかりと、読んでください。 
 前の「問14」 も充分に参考にしてください。

《タグ》会計、仕訳、発生主義、未収入金、前受金

問16

【問 16】 管理組合の税務の取扱いに関する次の記述のうち、法人税法(昭和40年法律第34号)及び消費税法(昭和63年法律第108号)によれば、最も適切なものはどれか。

1 法人税上、管理組合がマンション敷地内で行う駐車場業は、組合員以外の第三者が利用する場合であっても非収益事業となるため、課税されない。

X 適切でない。 法人税は組合員以外の第三者が利用する場合には、収益事業となり、課税される。
  
平成27年 マンション管理士 「問35」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問34」 、平成23年 管理業務主任者試験 「問16」 、 平成22年 管理業務主任者試験 「問16」 、 平成19年 管理業務主任者試験 「問16」 など。 管理業務主任者試験で出題が多い個所です。
 
  まず、管理組合が法人化されていなくても、法人税法上は、「
人格のない社団等」に該当するものと考えられます。
 すると、法人税法上、内国法人(人格のない社団等を含みます。)に対しては、各事業年度の所得について法人税を課することとされており、このうち公益法人等及び人格のない社団等に対しては、各事業年度の所得のうち収益事業から生じた所得以外の所得(「
非収益事業から生じた所得」といいます。)には法人税を課さないこととされています。
 したがって、マンション管理組合に対する法人税は、収益事業から生じた所得にのみ課されることとなります。
 具体的には、マンション管理組合が、継続してマンション駐車場という常設された附属施設で駐車場業を行えば、収益事業に該当し、その収益事業から生じた所得に対して法人税が課されることになります。
 
 そこで、税との関係で、管理組合の管理費・修繕積立金は非課税と判断されるようになったものの、駐車場の収入などで特に、マンション外の人に使用させ、駐車場料をとる場合に、内部(組合員)の使用なら、課税の対象にならないまでは、一応国税庁の判断がありましたが、これらを纏めて、国土交通省から平成24年2月3日に国税庁に確認をし、その回答があります。
 http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/bunshokaito/hojin/120117/besshi.htm#a01
  

 設問のような、組合員以外の第三者が利用する場合は、上記質問でのケース2に該当し、その判断として、「このように独立した事業である駐車場の外部使用について、収益事業に該当するかどうかの検討をすれば、駐車場の使用であり、かつ、使用する者が区分所有者以外であることから、「共済的事業」及び「管理費の割増金」といった性質のものではないため、「駐車場業」として収益事業に該当することとなります。」 とあり、組合員以外の第三者が利用する場合は、収益事業となるため課税されますから、誤りです。

 参考:法人税法施行令第5条1項3号
 「(収益事業の範囲)
 第五条  法第二条第十三号 (収益事業の意義)に規定する政令で定める事業は、次に掲げる事業(その性質上その事業に付随して行われる行為を含む。)とする。



2 消費税法上、管理組合の支出のうち、管理組合が雇用している従業員の給与は課税取引であり、課税対象となる。

X 適切でない。 給与や賃金、保険金、株式の配当金などは、消費税の課税対象にならない。
 なにが、消費税の対象になるかは法の条文を読んでも、分かり難いものです。
 そこで、国税庁が以下のように明示していますから、利用してください。

 
 課税の対象とならないもの(不課税)の具体例
 「平成27年4月1日現在法令等]
  消費税は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡や貸付け、役務の提供が課税の対象となります。
 したがって、
次のような取引は、課税の対象となりません
    (1) 
給与・賃金・・・・雇用契約に基づく労働の対価であり、「事業」として行う資産の譲渡等の対価に当たらないからです。
    (2) 寄附金、祝金、見舞金、補助金等・・・・一般的に対価として支払われるものではないからです。
    (3) 無償による試供品や見本品の提供・・・・対価の支払いがないからです。
    (4) 保険金や共済金・・・・資産の譲渡等の対価といえないからです。
    (5) 株式の配当金やその他の出資分配金・・・・株主や出資者の地位に基づいて支払われるものであるからです。
    (6) 資産について廃棄をしたり、盗難や滅失があった場合・・・・資産の譲渡等に当たらないからです。
    (7) 心身又は資産について加えられた損害の発生に伴い受ける損害賠償金・・・・対価として支払われるものではないからです。
       しかし、損害賠償金でも、例えば次のような場合は対価性がありますので、課税の対象となります。
       イ 損害を受けた棚卸資産である製品が加害者に引き渡される場合で、その資産がそのままで使用できる場合や、軽微な修理をすれば使用できる場合
       ロ 無体財産権の侵害を受けたために受け取る損害賠償金が権利の使用料に相当する場合
       ハ 事務所の明渡しが期限より遅れたために受け取る損害賠償金が賃貸料に相当する場合

 国税庁の消費税の課税対象外として、(1) 給与・賃金・・・・雇用契約に基づく労働の対価であり、「事業」として行う資産の譲渡等の対価に当たらないからです、が挙げられていますから、管理組合が雇用している従業員の給与は課税取引であり、課税対象となるは、適切ではありません。


 参考:消費税法第4条1項、 第2条1項8号
 「(課税の対象)
 第四条  国内において事業者が行つた資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。第三項において同じ。)及び特定仕入れ(事業として他の者から受けた特定資産の譲渡等をいう。以下この章において同じ。)には、この法律により、消費税を課する。
 「(定義)
 第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
 八  資産の譲渡等 事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供(代物弁済による資産の譲渡その他対価を得て行われる資産の譲渡若しくは貸付け又は役務の提供に類する行為として政令で定めるものを含む。)をいう。 」



3 消費税法上、管理組合が納税義務者か否かを判定する場合の基準期間の課税売上高とは、前々事業年度の課税売上高のことである。

○ 適切である。 基準期間の課税売上高とは、前々事業年度の課税売上高のこと。

 まず、課税売上高とは、輸出などの免税取引を含め、返品、値引き、割戻しをした対価の返還等の金額を差し引いた額(税抜き)です。
 そして、消費税法の基準期間は、消費税法第2条1項14号

 「(定義)
 第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
     十四  基準期間 個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人についてはその事業年度の前々事業年度(当該前々事業年度が一年未満である法人については、その事業年度開始の日の二年前の日の前日から同日以後一年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間)をいう。 」 
とあり、
 管理組合が納税義務者か否かを判定する場合の基準期間の課税売上高とは、前々事業年度の課税売上高のことは、適切です。


  


4 消費税法上、基準期間における収入が1,100万円(内訳は管理費等が900万円、マンション敷地内の組合員利用に基づく駐車場収入が150万円、マンション敷地内の施設を第三者に使用させた使用料が50万円)であり、かつ基準期間以降における収入の内訳及びそれぞれの金額が同一であって、給与等支払額がない場合、当事業年度においては、納税義務は免除されない。

X 適切でない。 消費税の課税期間の基準期間における課税売上高が、1,000万円以下となり、納税義務は免除される。
  消費税では、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税の義務が免除されます。
 それが、消費税法第9条

 「(小規模事業者に係る納税義務の免除)
 第九条  事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。 」 
です。

 また、国税庁の見解では、管理費や修繕積立金、またマンションの組合員が納める駐車場収入は、消費税の課税対象にならないという以下の判断があります。

 「マンション管理組合は、その居住者である区分所有者を構成員とする組合であり、その組合員との間で行う取引は営業に該当しません。
 したがって、マンション管理組合が収受する金銭に対する消費税の課税関係は次のとおりとなります。
   イ
 駐車場の貸付け………組合員である区分所有者に対する貸付けに係るものは不課税となりますが、組合員以外の者に対する貸付けに係るものは消費税の課税対象となります。
   ロ 管理費等の収受………不課税となります。」 


 そこで、設問がかなり入り組んでいますが、分解してみましょう。
 *基準期間における収入が1,100万円 の内訳は
   管理費等が900万円 → 不課税、
   マンション敷地内の組合員利用に基づく駐車場収入が150万円 → 不課税
   マンション敷地内の施設を第三者に使用させた使用料が50万円 → 課税 
  となり、最終的には、マンション敷地内の施設を第三者に使用させた使用料が
50万円だけが、消費税の課税期間の基準期間における課税売上高となり、給与等支払額がない場合、これは、1,000万円以下となり、納税義務は免除されますから、適切ではありません。


答え:3

 税も出題がありますが、ここは、過去問題をやっていると、正解は速い。
 でも解説は、初心者向けに詳細にしたので、時間がかかった。


《タグ》法人税法 、 消費税法。 収益事業、給与、基準期間、第三者の駐車場使用

問17

【問 17】 鉄筋コンクリート造に関する次の記述のうち、建築基準法(昭和25年法律第201号)によれば、誤っているものはどれか。

1 主筋の継手の重ね長さは、継手を構造部材における引張力の最も小さい部分以外の部分に設ける場合にあっては、国土交通大臣が定めた構造方法を用いる場合を除き、主筋の径の10倍以上としなければならない。

X 誤っている。 引張力の最も小さい部分”以外の部分”に設ける場合なら、主筋の径の”40倍以上”とする。”10倍以上”ではない。
 主筋の継手の重ね長さなんて、なんのことやら分からない。まったく、建築基準法のどこにあるのか、探すのに苦労します。 

 まず、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造建物で使用される鉄筋は、ある程度長さが決められているため、現場で鉄筋をつなぎ合わせる必要があります。
 その、鉄筋をつなぎ合わせることを、「鉄筋継手」と呼び、鉄筋継手工法には、
  @重ね継手、
  A圧接継手、
  B溶接継手、
  C機械式継手  の4種類があります。
 その鉄筋継手の内の1つ、重ね継手とは、鉄筋を所定の長さに重ね合せ、周囲のコンクリートとの間の付着を利用して鉄筋を一体化させる工法です。

 
 そして、建築基準法施行令まで探して、やっと見つけた。
 該当の規定は、建築基準法施行令第73条
 「(鉄筋の継手及び定着)
 第七十三条  鉄筋の末端は、かぎ状に折り曲げて、コンクリートから抜け出ないように定着しなければならない。ただし、次の各号に掲げる部分以外の部分に使用する異形鉄筋にあつては、その末端を折り曲げないことができる。
    一  柱及びはり(基礎ばりを除く。)の出すみ部分
    二  煙突
 2  
主筋又は耐力壁の鉄筋(以下この項において「主筋等」という。)の継手の重ね長さは、継手を構造部材における引張力の最も小さい部分に設ける場合にあつては、主筋等の径(径の異なる主筋等をつなぐ場合にあつては、細い主筋等の径。以下この条において同じ。)の二十五倍以上とし、継手を引張り力の最も小さい部分以外の部分に設ける場合にあつては、主筋等の径の四十倍以上としなければならない。ただし、国土交通大臣が定めた構造方法を用いる継手にあつては、この限りでない。
 3  柱に取り付けるはりの引張り鉄筋は、柱の主筋に溶接する場合を除き、柱に定着される部分の長さをその径の四十倍以上としなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。
 4  軽量骨材を使用する鉄筋コンクリート造について前二項の規定を適用する場合には、これらの項中「二十五倍」とあるのは「三十倍」と、「四十倍」とあるのは「五十倍」とする。 」 
です。
 建築基準法施行令第73条2項によると、主筋の継手の重ね長さは、継手を構造部材における引張力の最も小さい部分以外の部分に設ける場合にあっては、国土交通大臣が定めた構造方法を用いる場合を除き、主筋の径の40倍以上とするため、10倍以上は誤りです。

 
 


2 コンクリートの養生における温度管理については、凝結及び硬化を促進するための特別の措置を講じない場合、コンクリート打込み中及び打込み後5日間は、コンクリートの温度が2℃を下らないようにしなければならない。

○ 正しい。
 
 まず聞き慣れない「コンクリートの養生」ですが、打ち終わったコンクリートは、まだ柔らかく、本来の強度や耐久性、鋼材保護性能を備えていません。
 そこで、水とコンクリートの「水和反応」によりコンクリートが固まるまで、打ち込み後の一定期間を硬化に必要な温度・湿度に保ち、過度の衝撃や荷重を与えないようにしたり、また風雨、霜、日光などに対してコンクリートの露出面を保護有害な作用の影響を受けないようにします。この作業がコンクリートの養生と言われます。
 具体的には、打込み後1週間程度は、散水したり、濡れムシロ、カンバス、オガクズなどをかけて、コンクリートが表面乾燥してひび割れしないようにする方法をとっています。


 では、コンクリートの養生は、建築基準法施行令第75条
 「(コンクリートの養生)
 第七十五条
 コンクリート打込み中及び打込み後五日間は、コンクリートの温度が二度を下らないようにし、かつ、乾燥、震動等によつてコンクリートの凝結及び硬化が妨げられないように養生しなければならない。ただし、コンクリートの凝結及び硬化を促進するための特別の措置を講ずる場合においては、この限りでない。 」 
とあり、
 コンクリート打込み中及び打込み後5日間は、コンクリートの温度が2℃を下らないようにしなければなりませんから、正しい。
 なお、コンクリートは、マイナス0.5℃からマイナス2℃になると凍ります。


 


3 構造耐力上主要な部分であるはりは、複筋ばりとし、これにあばら筋をはりの丈の4分の3(臥梁(がりょう)にあっては30cm)以下の間隔で配置しなければならない。

○ 正しい。
 まったく、複筋ばりやあばら筋、臥梁(がりょう)とは、何でしょうか? そこで、勉強しました。
 これらは、梁(はり)の構造に関係します。
 梁には、荷重によって曲げのモーメントとせん断力が生じます。これに耐えるようにしなければなりません。

 梁に荷重がかかると、内部には、圧縮・引張・曲げ・剪断(せんだん)応力がはたらきます。
 鉛直荷重がはたらいた場合、たいてい梁は下に凸となるような形にたわみを生じ、上部はわずかに縮み、逆に下部は伸びるように変形します。
 また、断面のおよそ上下半分近辺には伸びも縮みもせず、圧縮応力も引張応力も生じない面があり、そこは「中立軸」と定義されます。


 

 そこで、梁が曲がったとき、下の方は引き張られ、上の方は圧縮されます。複筋ばりは、この引張力が生じる側と 圧縮力が生じる二つの側に配筋した梁のことです。
 次に、あばら筋は、スターラップとも呼ばれ、鉄筋を囲むように入れて鉄筋を補強します。この間隔が、設問のように、梁の長さ(丈)4分の3以下の間隔をあけて配置することになっています。
 
 では、臥梁(がりょう)って何でしょう?
 私も聞いたこともないし、また読み方も難しい字です。
 調べると、レンガ造りやブロック造りなどの組積造(そせきぞう)において、構造耐力を出すために、組積造の壁の上部に壁体を補強するため渡す鉄骨、または鉄筋コンクリート造の梁だそうです。
、ピンときませんね。
 図にすると以下のようになるようです。


 

 ここでの、「まぐさ」 とは、窓や出入り口など、開口部のすぐ上に取り付けられた横材のことです。

 やっと、言葉が分かってきたので、設問は、建築基準法施行令第78条

 「(はりの構造)
 第七十八条  
構造耐力上主要な部分であるはりは、複筋ばりとし、これにあばら筋をはりの丈の四分の三(臥梁にあつては、三十センチメートル)以下の間隔で配置しなければならない。  
とあり、
 正しい。



4 布基礎の立上り部分を除いた基礎においては、鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは、捨コンクリートの部分を除き、6cm以上としなければならない(国土交通大臣が定めた構造方法を用いる部材及び国土交通大臣の認定を受けた部材を除く)。

○ 正しい。
  
平成16年 管理業務主任者試験 「問19」
 ここは、過去問題がありました。

  コンクリートの復習です。

 
 ★かぶり厚さとは、 鉄筋を覆っているコンクリートの厚さのことです。コンクリートの表面から鉄筋の表面までの距離をいいます。
  鉄筋コンコリートの建物は鉄筋とコンクリートが一体となって初めて地震などの外力に抵抗することができます。また、コンクリートの中の鉄筋は一切の錆止めをしていません。
 そして、コンクリートは打設当初は強アルカリ性の性質をもち、水や空気などから鉄筋が錆びるのを防いでいますが、コンクリートは年月と共に中性化が進行し、中性化と共にコンクリート内部の鉄筋が錆びやすくなっていきます。
 そのため、鉄筋にはかぶり厚さといって、コンクリートの表面から一定の距離をたもって鉄筋を組み立てていますが、それだけでは長い耐用年数を維持することはできません。
 ところが、水セメント比というコンクリートを配合するときに水とセメントの量の比率のうち、水を少なくすると中性化の進行が著しく遅らせることができます。
 そのため、鉄筋コンクリート造の耐久性対策では、単にかぶり厚さを確保するだけでなく、積極的に水分の少ないコンクリートを打設し、かぶり厚さ+水の少ないコンクリートによって長い耐久性を確保しようと考えています。

 具体的には、もっとも多く使われている水セメント比60〜65%程度のコンクリートの中性化年数はかぶり厚さ30mmの場合で約45年程度ですが、水セメント比を55%に変えるだけで、中性化年数は70年近くに達します。
 でも、水セメント比が少ないということは非常に打設しにくいコンクリートですから、注意深く作業をしないとコンクリートがうまく混ざらなかったり、隅々 まで行き渡らなかったりといったことが起こりやすく、打設する側の人間からすれば、あまり楽な作業ではありません。


 

  また、捨コンクリートとは、基礎の底面を平らにし,構造体の位置を決めるために敷くコンクリートです。地盤をたいらにし、墨出しや型枠の固定をする事で精度の高い基礎が出来ます。

 で、設問は、建築基準法施行令第79条
 「(鉄筋のかぶり厚さ)
 第七十九条  
鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは、耐力壁以外の壁又は床にあつては二センチメートル以上、耐力壁、柱又ははりにあつては三センチメートル以上、直接土に接する壁、柱、床若しくははり又は布基礎の立上り部分にあつては四センチメートル以上、基礎(布基礎の立上り部分を除く。)にあつては捨コンクリートの部分を除いて六センチメートル以上としなければならない
2  前項の規定は、水、空気、酸又は塩による鉄筋の腐食を防止し、かつ、鉄筋とコンクリートとを有効に付着させることにより、同項に規定するかぶり厚さとした場合と同等以上の耐久性及び強度を有するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いる部材及び国土交通大臣の認定を受けた部材については、適用しない。 」 
あり、
 布基礎の立上り部分を除いた基礎においては、鉄筋に対するコンクリートのかぶり厚さは、捨コンクリートの部分を除き、6cm以上としなければならないは、正しい。



答え:1

 知らない言葉が多く出ている。かなりの難問。解説だけで、何んと総時間が、4時間を越えてしまった。

 だけど、この出題者は、管理業務主任者に必要な内容としては、実に不適切な出題をしている。
 管理業務主任者において建築での、鉄筋の継手の長さや、腹筋梁などの知識が必要とは思われない。
 この出題は、大いに糾弾します。


《タグ》建築基準法 建築基準法施行令。 鉄筋の継手、コンクリートの養生、 腹筋梁、あばら筋、臥梁(がりょう)、まぐさ、かぶり厚さ

*2016年 1月19日: こんな、建築のマニアックな出題の解説をやっていると、時間がかかる。もう、この1問だけで3時間以上も時間がかかっている。
 今までは、出題順に解説をやってきたが、平成27年度の建築基準法からの出題は、この「問17」を始めとして、「問24」や「問27」など、実に全体として、管理業務主任者レベルに求められる知識の範囲を大いに逸脱した出題だ。
 まったく、出題として不適切だ。

 建築基準法関係は、解説に時間がかかるので、全部飛ばして、後日解説に戻ります。

 次は、「問29」 区分所有法 に飛びます。
*2016年 1月24日:一応、ページ2の「問26」から「問50」が終わったので、「問17」に戻って来ました。

問18

【問 18】 建築基準法による用語の定義及び面積、高さ等の算定方法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 延焼のおそれのある部分とは、防火上有効な公園、広場、川等の空地若しくは水面若しくは耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分を除き、隣地境界線、道路中心線又は同一敷地内の2以上の建築物(延べ面積の合計が500u以内の建築物は、1の建築物とみなす。)相互の外壁間の中心線から、1階にあっては5m以下、2階以上にあっては3m以下の距離にある建築物の部分をいう。

X 誤っている。 延焼のおそれのある部分とは、1階にあっては、3m以下、2階以上にあっては、5m以下の距離。
  平成21年 管理業務主任者試験 「問17」 、平成18年 管理業務主任者試験 「問17」 

   延焼のおそれのある部分とは、築基準法第2条6号
 「(用語の定義)
 第二条  この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
     六  
延焼のおそれのある部分 隣地境界線、道路中心線又は同一敷地内の二以上の建築物(延べ面積の合計が五百平方メートル以内の建築物は、一の建築物とみなす。)相互の外壁間の中心線から、一階にあつては三メートル以下、二階以上にあつては五メートル以下の距離にある建築物の部分をいう。ただし、防火上有効な公園、広場、川等の空地若しくは水面又は耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分を除く。
  (以下、略)」
 とあり、
 一階にあつては三メートル以下、二階以上にあつては五メートル以下の距離にある建築物の部分ですから、1階にあっては5m以下、2階以上にあっては3m以下の距離にある建築物の部分をいうという設問は、1階と2階以上の数値が逆で、誤りです。






2 建築物の容積率を算定する場合、専ら防災のために設ける備蓄倉庫の用途に供する部分の床面積は、当該敷地内の建築物の各階の床面積の合計(同一敷地内に2以上の建築物がある場合においては、それらの建築物の各階の床面積の合計の和)に5分の1を乗じて得た面積を限度として、延べ面積には算入されない。

X 誤っている。 建築物の容積率を算定する場合、専ら防災のために設ける備蓄倉庫の用途に供する部分の床面積を、延べ面積には算入しないのは、”50分の1”で”5分の1”ではない。
 建築物の容積率を算定する場合、専ら防災のために設ける備蓄倉庫の用途に供する部分の床面積を、延べ面積には算入しないのは、建築基準法施行令第2条1項
 「(面積、高さ等の算定方法)
 第二条  次の各号に掲げる面積、高さ及び階数の算定方法は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
     三  床面積 建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による。
     四  
延べ面積 建築物の各階の床面積の合計による。ただし、法第五十二条第一項 に規定する延べ面積(建築物の容積率の最低限度に関する規制に係る当該容積率の算定の基礎となる延べ面積を除く。)には、次に掲げる建築物の部分の床面積を算入しない
      イ 自動車車庫その他の専ら自動車又は自転車の停留又は駐車のための施設(誘導車路、操車場所及び乗降場を含む。)の用途に供する部分(第三項第一号及び第百三十七条の八において「自動車車庫等部分」という。)
      
ロ 専ら防災のために設ける備蓄倉庫の用途に供する部分(第三項第二号及び第百三十七条の八において「備蓄倉庫部分」という。)
      ハ 蓄電池(床に据え付けるものに限る。)を設ける部分(第三項第三号及び第百三十七条の八において「蓄電池設置部分」という。)
      ニ 自家発電設備を設ける部分(第三項第四号及び第百三十七条の八において「自家発電設備設置部分」という。)
      ホ 貯水槽を設ける部分(第三項第五号及び第百三十七条の八において「貯水槽設置部分」という。)
       (以下、略)」 
とあり、
 では、全部が床面積に算入されないかと、普通なら思うが、どっこい、同じく、これを受けた、建築基準法施行令第2条3項

 「3  第一項第四号ただし書の規定は、次の各号に掲げる建築物の部分の区分に応じ、当該敷地内の建築物の各階の床面積の合計(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、それらの建築物の各階の床面積の合計の和)に当該各号に定める割合を乗じて得た面積を限度として適用するものとする。
    一  自動車車庫等部分 五分の一
    
二  備蓄倉庫部分 五十分の一
    三  蓄電池設置部分 五十分の一
    四  自家発電設備設置部分 百分の一
    五  貯水槽設置部分 百分の一
    (以下、略)」 
とあり、
 建築基準法施行令第2条1項4号但し書きと、同第2条3項2号によれば、専ら防災のために設ける備蓄倉庫の用途に供する部分の床面積を、延べ面積には算入しないのは、”50分の1”を乗じて得た面積を限度として適用するものとありますから、”5分の1を乗じて得た面積を限度として、延べ面積には算入されないは、誤りです。
 過去には、自動車車庫が出た。



3 階数の算定において、昇降機棟、装飾棟、物見棟その他これらに類する建築物の屋上部分又は地階の倉庫、機械室その他これらに類する建築物の部分で、水平投影面積の合計がそれぞれ当該建築物の建築面積の8分の1以下のものは、当該建築物の階数に算入しない。

○ 正しい。
   平成16年 管理業務主任者試験 「問17」 
 
  階数の算定において、建築物の階数に算入しないのは、建築基準法施行令第2条1項8号
 「(面積、高さ等の算定方法)
 第二条  次の各号に掲げる面積、高さ及び階数の算定方法は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 
八  階数 昇降機塔、装飾塔、物見塔その他これらに類する建築物の屋上部分又は地階の倉庫、機械室その他これらに類する建築物の部分で、水平投影面積の合計がそれぞれ当該建築物の建築面積の八分の一以下のものは、当該建築物の階数に算入しない。また、建築物の一部が吹抜きとなつている場合、建築物の敷地が斜面又は段地である場合その他建築物の部分によつて階数を異にする場合においては、これらの階数のうち最大なものによる。
 (以下、略) 」 
とあり、
 水平投影面積の合計がそれぞれ当該建築物の建築面積の八分の一以下のものは、当該建築物の階数に算入しませんから、正しい。

  


4 建築面積、建築物の高さ、軒の高さを算定する際の地盤面とは、建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい、その接する位置の高低差が6mを超える場合においては、その高低差6m以内ごとの平均の高さにおける水平面をいう。

X 誤っている。 接する位置の高低差が3mを超える場合においては、その高低差”3m以内”ごとの平均の高さにおける水平面をいう。”6m以内”ではない。

 地盤面は、建築基準法施行令第2条2項
 「(面積、高さ等の算定方法)
 第二条  次の各号に掲げる面積、高さ及び階数の算定方法は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 2  前項第二号、第六号又は第七号の「
地盤面」とは、建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい、その接する位置の高低差が三メートルを超える場合においては、その高低差三メートル以内ごとの平均の高さにおける水平面をいう。
 (以下、略)」 
とあり、
 地盤面とは、建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいいますが、斜面に建築物がある場合などでは、その接する位置の高低差が三メートルを超える場合においては、その
高低差三メートル以内ごとの平均の高さにおける水平面をいいますから、設問の高低差が6mを超える場合においては、その高低差6m以内ごとの平均の高さにおける水平面をいうは、誤りです。

 


答え:3

 
選択肢3は、かなり悩む問題。 過去問題をやっていれば、正解は、易しかったようです。

 なお、「建築基準法の解説」 も、「マンション管理士 香川事務所」 が無料で提供していますから、ご利用ください。
 また、マンション管理士・管理業務主任者の試験においては、建築基準法からの出題も多いので、「目指せ! マンション管理士・管理業務主任者」のサイトの過去問題の解説において、「建築基準法」 だけを取り出して、解説していますから、こちらも、ご利用ください。

《タグ》築基準法  建築基準法施行令。 延焼のおそれのある部分、 建築物の容積率を算定する場合の床面積を算入しない物、階数の計算、地盤面の出し方

問19

【問 19】 建築基準法に基づく石綿その他の物質の飛散又は発散に対する衛生上の措置に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 建築材料に添加しないこととされている、石綿その他の著しく衛生上有害なものとして政令で定められている物質は、石綿のみである。

○ 正しい。
 
 平成23年 管理業務主任者試験 「問18」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問24」 や 平成15年 管理業務主任者試験 「問24」 。
 
  石綿はアスベストともよばれ、天然に存在する繊維状の鉱物です。 素材としては「強い・安い・軟らかい」そして耐熱・耐磨耗性にすぐれているため、以前より建材以外にも広く利用されていました。しかし、その細かい繊維 (髪の毛の5000分の1程度)が肺に突き刺さったりすると、数十年の長い潜伏期間を経て、肺がんや中皮腫の原因になることが明らかになり、健康問題として大きく取り上げられ、規制の対象になりました。
 詳細は、別途 「建築基準法」の第28条の2 を参考にしてください。

 
 
 出題の基本となっているのは、建築基準法第28条の2 
 「(石綿その他の物質の飛散又は発散に対する衛生上の措置)
 第二十八条の二  建築物は、
石綿その他の物質の建築材料からの飛散又は発散による衛生上の支障がないよう、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。
    一  
建築材料に石綿その他の著しく衛生上有害なものとして政令で定める物質(次号及び第三号において「石綿等」という。)を添加しないこと
    二  石綿等をあらかじめ添加した建築材料(石綿等を飛散又は発散させるおそれがないものとして国土交通大臣が定めたもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを除く。)を使用しないこと。
    三  居室を有する建築物にあつては、前二号に定めるもののほか、石綿等以外の物質でその居室内において衛生上の支障を生ずるおそれがあるものとして政令で定める物質の区分に応じ、建築材料及び換気設備について政令で定める技術的基準に適合すること。 」 
とあり、
 これを受けた政令は、建築基準法施行令第20条の4

 「(著しく衛生上有害な物質)
 第二十条の四  法第二十八条の二第一号 (法第八十八条第一項 において準用する場合を含む。)の政令で定める物質は、
石綿とする。 」 
とあり
 建築材料に添加しないこととされている、石綿その他の著しく衛生上有害なものとして政令で定められている物質は、現在のところ、石綿その他の物質といいながら”石綿のみ”で、正しい。



2 吹付ロックウールでその含有する石綿の重量が当該建築材料の重量の0.01%を超えるもの及び吹付け石綿は、建築材料として使用することができない。

X 誤っている。 吹付ロックウールでその含有する石綿の重量が当該建築材料の重量の”0.1%”を超えてはいけない。 ”0.01%”ではない。

 選択肢1で引用しました、建築基準法第28条の2 により石綿は、建築材料に添加しないこととされていますが、建築基準法第28条の2 2号のカッコ書き、
 「二  石綿等をあらかじめ添加した建築材料(石綿等を飛散又は発散させるおそれがないものとして国土交通大臣が定めたもの又は国土交通大臣の認定を受けたものを除く。)を使用しないこと。 」 とあり、石綿等を飛散又は発散させるおそれがないものとして国土交通大臣が定めたものがあります。
 それが、平成18年9月29日付け、国土交通省告示第1172号 です。 
 具体的には、吹付け石綿及び石綿含有吹付けロックウールを規制の対象としています。
 内容は、
 「建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第二十八条の二第二号に規定する石綿等を飛散又は発散させるおそれがないものとして国土交通大臣が定める石綿等をあらかじめ添加した建築材料は、次に掲げるもの以外の石綿をあらかじめ添加した建築材料とする。
  
一 吹付け石綿
  二 吹付けロックウールでその含有する石綿の重量が当該建築材料の重量の〇・一パーセントを超えるもの
」 です。

 この、国土交通省告示第1172号 によれば、吹付けロックウールでその含有する石綿の重量が当該建築材料の重量の
0.1%を超えるものが、建築材料として使用することができませんから、設問の”築材料の重量の0.01%を超えるもの”は、誤りです。

 なお、ロックウールとは、工場で製造された人造の鉱物繊維で、耐火・耐熱性に優れており、石綿よりも繊維としては、太いのですが、長期間、多量に吸入すると、じん肺のおそれはあります。
 また、吹付けロックウールは、ロックウール粒状綿を主原料とし、セメントを硬化材として、専用の吹付け機を用いて鉄骨などの下地に吹付けます。一定の被覆層をつくる有機物を含まない現場施工の不燃製品です。

 
 

 そして、現在市販されているロックウール製品にアスベスト(石綿)は混じっていないとのことです。
しかし、過去にアスベストが混じっていた製品もあり、それは、工業会認定指定製品の吹付けロックウールとロックウール吸音天井板で、吹付けロックウール(乾式)は昭和55年以前(一部のカラー製品は昭和62年まで使用)に、個別認定品である吹付けロックウール(湿式)は平成元年以前に、またロックウール吸音天井板は昭和63年以前に施工されているものにはアスベスト(石綿)が混じっている場合があります。



3 居室を有する建築物については、建築材料にクロルピリホスを添加してはならず、また、あらかじめこれを添加した建築材料についても、国土交通大臣が定めた発散させるおそれがない場合を除き、使用することができない。

○ 正しい。
  クロルピリホス(Chlorpyrifos)とは、有機リン化合物で、殺虫効果を持つことから農薬や一般家庭でもダニ、シロアリ駆除などに用いられていました。
 しかし、頭痛や吐き気など化学物質を原因とするシックハウス症候群を引きこす主要な1因とされ、この対策として、居室を有する建築物へのクロルピリホスを含んだ建築材料への使用が、建築基準法の改正により平成15年から禁じられました。


 法的には、選択肢1で引用しました、建築基準法第28条の2 3号
 「(石綿その他の物質の飛散又は発散に対する衛生上の措置)
 第二十八条の二  建築物は、石綿その他の物質の建築材料からの飛散又は発散による衛生上の支障がないよう、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。
   
三  居室を有する建築物にあつては、前二号に定めるもののほか、石綿等以外の物質でその居室内において衛生上の支障を生ずるおそれがあるものとして政令で定める物質の区分に応じ、建築材料及び換気設備について政令で定める技術的基準に適合すること。  とあり、
 これを受けた政令は、建築基準法施行令第20条の6

 「第二十条の六  建築材料についてのクロルピリホスに関する法第二十八条の二第三号 の政令で定める技術的基準は、次のとおりとする。
    
一  建築材料にクロルピリホスを添加しないこと。
    二  クロルピリホスをあらかじめ添加した建築材料(添加したときから長期間経過していることその他の理由によりクロルピリホスを発散させるおそれがないものとして国土交通大臣が定めたものを除く。)を使用しないこと。
」 
とあり、
 建築基準法施行令第20条の6 によれば、居室を有する建築物については、建築材料にクロルピリホスを添加してはならず、また、あらかじめこれを添加した建築材料についても、国土交通大臣が定めた発散させるおそれがない場合を除き、使用することができないは、正しい。

 クロルピリホスを建築材料に添加することは、禁止されました。
 では、ホルムアルデヒドは、が次の選択肢4になります。



4 ホルムアルデヒドの夏季における発散速度が、表面積1uにつき毎時0.005ミリグラムを超えないものとして国土交通大臣の認定を受けた建築材料のみを、居室の内装の仕上げに用いる場合は、その使用面積に対する制限はない。

○ 正しい。 
 選択肢1で引用しました、建築基準法第28条の2 3号
 「(石綿その他の物質の飛散又は発散に対する衛生上の措置)
 第二十八条の二  建築物は、石綿その他の物質の建築材料からの飛散又は発散による衛生上の支障がないよう、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。
   三  居室を有する建築物にあつては、前二号に定めるもののほか、石綿等以外の物質でその居室内において衛生上の支障を生ずるおそれがあるものとして政令で定める物質の区分に応じ、建築材料及び換気設備について政令で定める技術的基準に適合すること。 」 
とあり、
 これを受けた政令は、建築基準法施行令第20条の7 4項

 「(居室を有する建築物の建築材料についてのホルムアルデヒドに関する技術的基準)
 第二十条の七  建築材料についてのホルムアルデヒドに関する法第二十八条の二第三号 の政令で定める技術的基準は、次のとおりとする。
 
4  第一種ホルムアルデヒド発散建築材料、第二種ホルムアルデヒド発散建築材料又は第三種ホルムアルデヒド発散建築材料のうち、夏季においてその表面積一平方メートルにつき毎時〇・〇〇五ミリグラムを超える量のホルムアルデヒドを発散させないものとして国土交通大臣の認定を受けたものについては、これらの建築材料に該当しないものとみなす。 」 とあり、
 ホルムアルデヒドの夏季における発散速度が、表面積1uにつき毎時0.005ミリグラムを超えないものとして国土交通大臣の認定を受けた建築材料のみを、居室の内装の仕上げに用いる場合は、その使用面積に対する制限はないは、正しい。


 なお、ホルムアルデヒドとは常温で無色の刺激臭のある気体で、水に溶ける性質を持っています。水に溶かしたものが、合成樹脂や殺虫・防虫・防腐剤などとして広く利用されているホルマリンです。  
 そして、ホルムアルデヒドは建築建材に広く使用されているVOC(揮発性有機化合物)です。
 家の中でホルムアルデヒドが発生する要因としては、建材として使用される合板から発生するものが一番のようで、壁紙などの接着剤等からも発生するそうです。
 合板からのホルムアルデヒド放出量は、JAS規格(日本農林規格)で規定されています。これらは低ホルムアルデヒド合板と呼ばれていますが、ホルムアル デヒド含有が全くゼロではありません。ホルムアルデヒドは特に揮発性が高く、厚生労働省「室内濃度指針値」リストアップに記載されているとおり、クロルピリホスと並んで、シックハ ウス症候群の主要原因物質と考えられています。



答え:2

 ここも、過去問題をやっていれば、なんとなく、正解ができたか。
 かなりの難問ではある。
 ここの解説も丁寧にしましたので、時間がかかった!(約1時間かかっている)

《タグ》建築基準法 建築基準法施行令。 石綿(アスベスト)、吹付けロックウール、クロルピリホス、ホルムアルデヒド

問20

【問 20】 マンションの給排水設備に関する用語の説明として、最も不適切なものはどれか。

1 排水トラップとは、衛生器具又は排水系統中の装置として、その内部に封水部を有し、排水の流れに支障を与えることなく排水管中の空気が室内に侵入してくることを阻止することができるものをいう。

○ 適切である。
  
平成27年 マンション管理士試験 「問44」、 平成26年 マンション管理士試験 「問44」 、平成21年 管理業務主任者試験 「問25」 、 平成18年マンション管理士試験 「問44」、 平成16年管理業務主任者試験 「問23」 など。
 
  排水トラップ(Trap=わな)は、便器や台所の排水施設に設けられ、水(封水)を管にためて、臭気や害虫が排水管から器具をつたわって、室内に侵入するのを防ぐ役目をしています。また、封水によって排水管からの臭い空気が室内に侵入することも阻止していますから、適切です。

  なお、トラップの封水の深さは、「50mmから100mm」と定められていますので、注意してください。
  また、1つの排水系統に2個以上のトラップを直列に配置した「二重トラップ」は、排水管内に圧力変動をもたらし、排水障害を起こすので禁止されています。

  建築基準法施行令129条2の5、2項6号の規定にもとづく昭和50年12月20日建告第1597号(最終改正:平成12年建設省告示第1406号)
  第2 排水トラップ、ホ「封水深は、5cm以上10cm以下(阻集器を兼ねる排水トラップについては5cm以上)とすること」の規定で、トラップの形状には関係なく、50mm以上100mm以下である。 


 


2 破封とは、排水立て管の通気性能不足に起因する吸い出し・はね出し現象や自己サイフォン・毛管現象(毛細管現象)・蒸発などにより封水が破れる現象をいう。

○ 適切である。

  選択肢1で説明しましたように、排水トラップの構造は排水管を曲げたりして、ただ水(封水)を溜めているだけです。 仕組みとしては、排水があると、排水の一部がトラップに溜まり、また次の排水によって封水が置き換わります。
 このトラップ内の水は、排水管内の気圧を調整しています排水立て管で圧力が変動することによって排水管側に吸い出されたり、逆に衛生器具側にはね出されたりします。また、満水状態で急に排水すると、サイフォンの原理により、封水が排水管に流れ出る自己サイフォン、髪の毛や糸くずなど細いものがあると封水が徐々に減少していく毛管現象(毛細管現象)、また自然に蒸発することにより、減少します。
 これら、トラップ内の水(封水)が減少し、排水管内部と室内空気がつながり、封水としての役目を果さなくなることを、破封(はふう)とよんでいますから、適切です。

 破封になると、悪臭や虫が室内に入ってくる恐れがありますので、注意してください。



3 バキュームブレーカとは、水使用機器において、吐水した水又は使用した水が逆サイフォン作用により、上水系統へ逆流するのを防止するための止水弁をいう。

X 適切でない。 バキュームブレーカとは、”止水弁”ではなく、”逆止弁”または、真空遮断弁という。

 バキュームブレーカ(−)とはサイフォン作用を起こす真空部分へ外部から自動的に空気を送り込み、内部の負圧の発生を防ぐことで逆サイフォン作用を防止して吐水した水や使用した水が上水系統に逆流するのを防止するための機器(弁)です。逆止弁や真空破壊弁及び逆流防止弁または真空遮断弁とも呼ばれますから、適切ではありません。
 なお、止水弁とは、給水自体を止めたり、制御する弁です。

 


4 ウォータハンマとは、水撃作用ともいい、管内水流を急に締め切ったときに、水流の慣性で管内に衝撃・振動水圧が発生する現象をいう。

○ 適切である。
 平成26年 マンション管理士試験 「問43」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問43」 

  ウォータハンマ(−)(Water Hammer)とは、水撃作用(すいげきさよう)ともよばれ、水圧管内の水流を急に締め切ったときに、水の慣性で管内に衝撃と高水圧が発生する現象ですから適切です。
 具体的には、ウォーターハンマー(水撃)現象は、弁の閉鎖や配管の充水時、ポンプの急停止といった急激な圧力変化によって生じ、台所のシングルレバー水栓や全自動洗濯機の使用時などで”ドン”とか”ガン”といった衝撃音が水道管に発生します。
  そこで、ウォーターハンマー(水撃)現象を防止するには、給水管内の流速は、1.5m/s〜2.0m/s以下が望ましく、ウォーターハンマー防止装置を水栓等の近くに設置します。



答え:3

 
選択肢3のバキュームブレーカーは知らなくても、他の選択肢は、適切と分かる?

《タグ》給排水設備 。 排水トラップ、破封、封水、バキュームブレーカー、ウォーターハンマー

問21

【問 21】 マンションの受水槽に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1 受水槽の水位は、水道から受水槽への給水系統に主弁と副弁で構成される定水位弁を設けて制御する。

○ 適切である。 
 定水位弁とは一般的に貯水槽(受水槽)の水量を適量に保つ役割を持つバルブを指します。
 主弁(本体)と副弁(ボールタップや電極)により構成され、主弁は貯水槽の外部に、副弁は貯水槽の内部に設置されています。主弁が槽の外部にある為メンテナンスが容易であることから、広く利用されています。
 仕組みとしては、貯水槽内の水位が下がった場合、ボールタップが下り、これにより副弁が開き、副弁に連動して主弁が作動し、貯水槽へ給水します。
水が一杯になり、ボールタップが上がり、副弁が停止すれば主弁も停止し、水位を一定に保ちますから、適切です。

 この方式は、トイレでのロータンク方式でも採用されています。

 


2 受水槽を、耐力壁などの面に接して堅固に固定することは禁止されている。

○ 適切である。
 明確な禁止規定を探したが、見つからない。
 特に根拠らしいものといえば、平成12年建設省告示1406号
 二 給水タンク及び貯水タンク
  イ 建築物の内部、屋上又は最下階の床下に設ける場合においては、次に定めるところによること。
    
(1)外部から給水タンク又は貯水タンク(以下「給水タンク等」という。)の天井、底又は周壁の保守点検を容易かつ安全に行うことができるように設けること。
    (2)給水タンク等の天井、底又は周壁は、建築物の他の部分と兼用しないこと。
    (3)内部には、飲料水の配管設備以外の配管設備を設けないこと。
    (4)内部の保守点検を容易かつ安全に行うことができる位置に、ほこりその他の衛生上有害なものが入らないように有効に立ち上げたマンホール(直径60cm以上の円が内接することができるに限る。)を設けること。ただし、給水タンク等の天井が蓋を兼ねる場合においては、この限りではない。
    (5)(4)ほか、水抜きを設ける等内部の保守点検を容易に行うことができる構造とすること。
    (6)ほこりその他衛生上有害なものが入らない構造のオーバーフロー管を有効に設けること
    (7)ほこりその他衛生上有害なものが入らない構造の通気のための装置を有効に設けること。ただし、有効容量が2立方メートル未満の給水タンク等については、この限りではない。
    (8)給水タンク等の上にポンプ、ボイラー、空気調和機等の機器を設ける場合においては、飲料水を汚染することのないように衛生上必要な措置を講ずること。 」


 とあり、受水槽(給水タンク)の設置にあたっては、(1)の周囲4面と上下2面の外面6面を点検できるようにしなければならないために、耐力壁などの面に接して堅固に固定することは禁止されているは、適切です。

 


3 受水槽の水を給水ポンプにより建物内の必要な箇所へ直送する方式は、超高層マンションにも使われる。

○ 適切である。
  
平成22年 管理業務主任者試験 「問23」 、平成22年 マンション管理士試験 「問43」 

  受水槽の水を給水ポンプにより建物内の必要な箇所へ直送する方式は、ポンプ直送方式と呼ばれます。
 ポンプ直送方式は、水槽に受水したのち、使用水量に応じてポンプの運転台数の変更や回転数制御によって給水する方式です。 
 高層マンションや超高層マンションでも採用されています。
 高層マンションや超高層マンションで採用する際には、下層階の給水圧力を調整するために、高さをゾーン(区域)に分けて給水圧力を調整します。なお、高置水槽が不要です。


  
 


4 受水槽の有効容量は、1日予想給水量の3倍とすることが望ましい。  

X 適切でない。 3倍は不要。 受水槽の有効容量は、1日予想給水量の1/2程度が望ましい。
 
 平成20年 マンション管理士試験 「問43」 、 平成19年 マンション管理士試験 「問45」 など。
  
  受水槽の有効容量は、1日予想給水量の1/2程度が望ましく、3倍は適切ではありません。 余り多いと水があまって、衛生上よくない。

  
 

 なお、居住者1人当たりの1日の使用水量は、200リットル〜350リットルが目安です。


答え:4 

 
選択肢1の水位は新しい出題だけど、受水槽の有効容量の1日予想給水量の1/2程度は、過去問題から分かる。

《タグ》受水槽。 定水位弁、6面点検、ポンプ直送方式、受水槽の有効容量

問22

【問 22】 マンションの電気設備に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。

1 小出力発電設備に該当する設備のうち、太陽電池発電設備は、燃料電池発電設備と比較して、出力が大きいものまで認められている。

○ 適切である。 燃料電池発電設備の出力は10kW未満だが、太陽電池発電設備の出力は50kW未満と大きい。
   平成22年 管理業務主任者試験 「問25」 の一部改訂 
 
 まったく、新しい分野からの出題で、該当の箇所を探すのに苦労した。
 古いテキストで勉強している人用に、電気事業法の勉強です。


 設問の「小出力発電設備」とは、電気事業法第38条にあります。
 電気事業法  第三編 電気工作物  第一章 定義

 「 第三十八条
 この法律において「一般用電気工作物」とは、次に掲げる電気工作物をいう。ただし、小出力発電設備以外の発電用の電気工作物と同一の構内(これに準ずる区域内を含む。以下同じ。)に設置するもの又は爆発性若しくは引火性の物が存在するため電気工作物による事故が発生するおそれが多い場所であつて、経済産業省令で定めるものに設置するものを除く。
   一 他の者から経済産業省令で定める電圧以下の電圧で受電し、その受電の場所と同一の構内においてその受電に係る電気を使用するための電気工作物(これと同一の構内に、かつ、電気的に接続して設置する小出力発電設備を含む。)であつて、その受電のための電線路以外の電線路によりその構内以外の場所にある電気工作物と電気的に接続されていないもの
   二 構内に設置する小出力発電設備(これと同一の構内に、かつ、電気的に接続して設置する電気を使用するための電気工作物を含む。)であつて、その発電に係る電気を前号の経済産業省令で定める電圧以下の電圧で他の者がその構内において受電するための電線路以外の電線路によりその構内以外の場所にある電気工作物と電気的に接続されていないもの
   三 前二号に掲げるものに準ずるものとして経済産業省令で定めるもの
 2 前項において
「小出力発電設備」とは、経済産業省令で定める電圧以下の電気の発電用の電気工作物であつて、経済産業省令で定めるものをいうものとする。
 3 この法律において「事業用電気工作物」とは、一般用電気工作物以外の電気工作物をいう。
 4 この法律において「自家用電気工作物」とは、電気事業の用に供する電気工作物及び一般用電気工作物以外の電気工作物をいう。 」 
とあり、
 発電設備のうち、出力が小さく安全性が高い発電設備で電圧によって区分されています。
 そこで、電気事業法第38条2項を受けた、

 電気設備に関する技術基準を定める省令
 「(用語の定義)
 第一条
  この省令において、次の各号に掲げる用語の定義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
   三 「発電所」とは、発電機、原動機、燃料電池、太陽電池その他の機械器具(電気事業法(昭和三十九年法律第百七十号)第三十八条第二項に規定する
小出力発電設備、非常用予備電源を得る目的で施設するもの及び電気用品安全法(昭和三十六年法律第二百三十四号)の適用を受ける携帯用発電機を除く。)を施設して電気を発生させる所をいう。」 
 とあります。

 そして、電気事業法施行規則第48条4項
 「(一般用電気工作物の範囲)
 第四十八条
 法第三十八条第一項 の経済産業省令で定める場所は、次のとおりとする。
   一  火薬類取締法 (昭和二十五年法律第百四十九号)第二条第一項 に規定する火薬類(煙火を除く。)を製造する事業場
   二  鉱山保安法施行規則 (平成十六年経済産業省令第九十六号)が適用される鉱山のうち、同令第一条第二項第八号 に規定する石炭坑
 2  法第三十八条第一項第一号 の経済産業省令で定める電圧は、
六百ボルトとする。
 3  法第三十八条第二項 の経済産業省令で定める電圧は、六百ボルトとする。
 4 
法第三十八条第二項の経済産業省令で定める発電用の電気工作物は、次のとおりとする。ただし、次の各号に定める設備であって、同一の構内に設置する次の各号に定める他の設備と電気的に接続され、それらの設備の出力の合計が五十キロワット以上となるものを除く。
   一 
太陽電池発電設備であって出力五十キロワット未満のもの
   二 風力発電設備であって出力二十キロワット未満のもの
   三 次のいずれかに該当する水力発電設備であって、出力二十キロワット未満のもの
      イ 最大使用水量が毎秒一立方メートル未満のもの(ダムを伴うものを除く。)
      ロ 特定の施設内に設置されるものであって別に告示するもの
   四 内燃力を原動力とする火力発電設備であって出力十キロワット未満のもの
   五 次のいずれかに該当する
燃料電池発電設備であって、出力十キロワット未満のもの
      イ 固体高分子型又は固体酸化物型の燃料電池発電設備であって、燃料・改質系統設備の最高使用圧力が〇・一メガパスカル(液体燃料を通ずる部分にあっては、一・〇メガパスカル)未満のもの
      ロ 道路運送車両法(昭和二十六年法律第百八十五号)第二条第二項に規定する自動車(二輪自動車、側車付二輪自動車、三輪自動車、カタピラ及びそりを有する軽自動車、大型特殊自動車、小型特殊自動車並びに被牽引自動車を除く。)に設置される燃料電池発電設備(当該自動車の動力源として用いる電気を発電するものであって、圧縮水素ガスを燃料とするものに限る。)であって、道路運送車両の保安基準(昭和二十六年運輸省令第六十七号)第十七条第一項及び第十七条の二第三項の基準に適合するもの
   六 発電用火力設備に関する技術基準を定める省令(平成九年通商産業省令第五十一号)第七十三条の二第一項に規定するスターリングエンジンで発生させた運動エネルギーを原動力とする発電設備であって、出力十キロワット未満のもの」 
とあります。
 
 どうして、設問の「太陽電池発電設備は、燃料電池発電設備と比較して、出力が大きいものまで認められている。」 があるかといいますと、平成23年6月:電気事業法施行規則の改正があり、太陽電池発電設備は、これまでは出力が20kW未満のものまでが一般用電気工作物として取り扱われてきましたが、今回の改正により、一般用電気工作物とされる太陽電池発電設備の範囲が、出力50kW未満のものまでに拡大されたのです。

 今回の電気事業法施行規則の改正により、太陽電池発電設備は、出力50kW未満のものまでが、設置者に義務づけられる保安規制(技術基準の維持義務、保安規程の作成・届出・遵守、主任技術者の選任・届出)が免除されることになり、設置者への設備導入の負担が軽減され、太陽電池発電設備の普及・促進への追風になるものと期待されています。




 そこで、設問に戻りますが、小出力発電設備に該当する設備のうち、太陽電池発電設備の出力は50kW未満ですが、燃料電池発電設備の出力は10kW未満で、太陽電池発電設備の出力が大きく、適切です。


2 マンション内の電気工作物が自家用電気工作物に該当する場合には、当該電気工作物の設置者は、必ず電気主任技術者を選任しなければならない。

X 適切でない。 自家用電気工作物に該当する場合には、主務大臣の許可を受けて、主任技術者免状の交付を受けていない者を主任技術者として選任することができる。 必ず”電気主任技術者”ではない。  
 まず、電気工作物とか、自家用電気工作物とかは、選択肢1で引用しました、電気事業法第38条に規定され、それを図にしますと、以下のようになります。




 電気事業法第38条では、自家用電気工作物とは、電気事業法第38条で「電気事業の用に供する電気工作物及び一般用電気工作物以外の電気工作物」と定義されています。
具体的には、電力会社から600Xを超える電圧で受電して電気を使用する設備が該当します。同施行規則第48条2項、3項)

 
 電気工作物が自家用電気工作物に該当すると、電気事業法第43条1項
 「(主任技術者)
 第四十三条  事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、主務省令で定めるところにより、主任技術者免状の交付を受けている者のうちから、主任技術者を選任しなければならない。
 2  自家用電気工作物を設置する者は、前項の規定にかかわらず、主務大臣の許可を受けて、主任技術者免状の交付を受けていない者を主任技術者として選任することができる
 3  事業用電気工作物を設置する者は、主任技術者を選任したとき(前項の許可を受けて選任した場合を除く。)は、遅滞なく、その旨を主務大臣に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
 4  主任技術者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督の職務を誠実に行わなければならない。
 5  事業用電気工作物の工事、維持又は運用に従事する者は、主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならない。 」 
 とあり、
 電気事業法第43条2項により、自家用電気工作物を設置する者も、主任技術者の選任が規定されていますが、1項の事業用電気工作物の主任技術者には、事業場や設備によっては、特に第一種(第二種)電気主任者免除などの交付を受けている人のほかに、第一種ダム水路主任技術者免状や第一種ボイラー・タービン主任技術者免状の交付を受けている者も、主任技術者になれます。(電気事業法施行規則第52条)


 そして、自家用電気工作物を設置する者に対しては、電気事業法施行規則第54条では、
 「第五十四条  法第四十三条第二項 の許可を受けようとする者は、様式第四十五の主任技術者選任許可申請書に次の書類を添えて提出しなければならない。
   一  選任を必要とする理由を記載した書類
   二  
選任しようとする者の事業用電気工作物の工事、維持及び運用の保安に関する知識及び技能に関する説明書」 
 とあるだけで、知識及び技能を説明するだけで、特に電気主任者免除などの交付を受けている人に限らないため、適切ではありません。


3 マンションの敷地内に電柱を設け、柱上変圧器を通じて供給を受けようとする場合、供給可能な最大電力には制限がある。

○ 適切である。
 柱上変圧器((ちゅうじょうへんあつき)は、電柱上部に施設され、高圧配電線で送られてきた三相6,000Vの電気を家庭などで使用する単相100V/200V、三相200Vに降圧する機器です。
 変圧器の容量は最大で100kVA程度ですから、供給限度があり、適切です。





4 マンションの敷地内に電力会社用の専用借室を設けて600ボルト以下の電圧で受電し、その電気を当該マンションの敷地内で使用するための電気工作物は、一般用電気工作物に該当する。

○ 適切である。
 選択肢1及び2で説明しましたように、一般用電気工作物は、電気事業法第38条1項

 「 第三十八条
 この法律において「
一般用電気工作物」とは次に掲げる電気工作物をいう。ただし、小出力発電設備以外の発電用の電気工作物と同一の構内(これに準ずる区域内を含む。以下同じ。)に設置するもの又は爆発性若しくは引火性の物が存在するため電気工作物による事故が発生するおそれが多い場所であつて、経済産業省令で定めるものに設置するものを除く。
   一 他の者から経済産業省令で定める電圧(注:600V)以下の電圧で受電し、その受電の場所と同一の構内においてその受電に係る電気を使用するための電気工作物(これと同一の構内に、かつ、電気的に接続して設置する小出力発電設備を含む。)であつて、その受電のための電線路以外の電線路によりその構内以外の場所にある電気工作物と電気的に接続されていないもの
   二 構内に設置する小出力発電設備(これと同一の構内に、かつ、電気的に接続して設置する電気を使用するための電気工作物を含む。)であつて、その発電に係る電気を前号の経済産業省令で定める電圧以下の電圧で他の者がその構内において受電するための電線路以外の電線路によりその構内以外の場所にある電気工作物と電気的に接続されていないもの
   三 前二号に掲げるものに準ずるものとして経済産業省令で定めるもの」 
とあり、
 一般用電気工作物の要件は、
 1)
600V以下の電圧で受電するもの
 2)受電のための電線路以外の電線路によりその構内以外の場所にある電気工作物と電気的に接続されていないもの
 3)小出力発電設備の電気工作物を同一構内に有するもの
   小出力発電設備とは
   ・太陽電池発電設備は,出力50kW未満
   ・風力発電設備は,出力20kW未満
   ・水力発電設備は,出力20kw未満
   ・内燃力を原動機とする火力発電設備は,出力10kw未満 です。

 設問の「マンションの敷地内に電力会社用の専用借室を設けて600ボルト以下の電圧で受電し、その電気を当該マンションの敷地内で使用するための電気工作物」は、一般用電気工作物に該当しますから、適切です。

 


答え:2

 
この「問22」の電気事業法は、今までにない箇所からの出題で、新しいので詳細に解説しました。 かなりの難問です。 最新の「マンション管理の知識」 には記載されているのかな?

《タグ》電気事業法。 小出力発電設備、電気工作物、自家用電気工作物、一般用電気工作物、柱上変圧器

問23

【問 23】 非常用照明装置及び誘導灯に関する次の記述のうち、建築基準法及び消防法(昭和23年法律第186号)によれば、最も適切なものはどれか。

1 非常用照明装置については消防法、誘導灯については建築基準法により、それぞれ設置基準が定められている。

X 適切でない。 非常用照明装置については、建築基準法が定め、誘導灯については、消防法が定めている。 逆である。
 似たような内容なら、1つの役所が管轄すればいいのに、国の行政機関の縄張りの問題です。

 非常用照明装置については、例えば、建築基準法第35条
 「(特殊建築物等の避難及び消火に関する技術的基準)
 第三十五条  別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物、階数が三以上である建築物、政令で定める窓その他の開口部を有しない居室を有する建築物又は延べ面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その延べ面積の合計)が千平方メートルをこえる建築物については、廊下、階段、出入口その他の避難施設、消火栓、スプリンクラー、貯水槽その他の消火設備、排煙設備、
非常用の照明装置及び進入口並びに敷地内の避難上及び消火上必要な通路は、政令で定める技術的基準に従つて、避難上及び消火上支障がないようにしなければならない。 」
 とあり、
 建築基準法で「非常用の照明装置」が定められています。


 では、誘導灯については、例えば、消防法施行令第26条
 「(誘導灯及び誘導標識に関する基準
 第二十六条  誘導灯及び誘導標識は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める防火対象物又はその部分に設置するものとする。ただし、避難が容易であると認められるもので総務省令で定めるものについては、この限りでない。
    一  避難口誘導灯 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物並びに同表(五)項ロ、(七)項、(八)項、(十)項から(十五)項まで及び(十六)項ロに掲げる防火対象物の地階、無窓階及び十一階以上の部分
    二  通路誘導灯 別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項、(十六)項イ、(十六の二)項及び(十六の三)項に掲げる防火対象物並びに同表(五)項ロ、(七)項、(八)項、(十)項から(十五)項まで及び(十六)項ロに掲げる防火対象物の地階、無窓階及び十一階以上の部分
    三  客席誘導灯 別表第一(一)項に掲げる防火対象物並びに同表(十六)項イ及び(十六の二)項に掲げる防火対象物の部分で、同表(一)項に掲げる防火対象物の用途に供されるもの
    四  誘導標識 別表第一(一)項から(十六)項までに掲げる防火対象物
 2  前項に規定するもののほか、誘導灯及び誘導標識の設置及び維持に関する技術上の基準は、次のとおりとする。
    一  避難口誘導灯は、避難口である旨を表示した緑色の灯火とし、防火対象物又はその部分の避難口に、避難上有効なものとなるように設けること。
    二  通路誘導灯は、避難の方向を明示した緑色の灯火とし、防火対象物又はその部分の廊下、階段、通路その他避難上の設備がある場所に、避難上有効なものとなるように設けること。ただし、階段に設けるものにあつては、避難の方向を明示したものとすることを要しない。
    三  客席誘導灯は、客席に、総務省令で定めるところにより計つた客席の照度が〇・二ルクス以上となるように設けること。
    四  誘導灯には、非常電源を附置すること。
    五  誘導標識は、避難口である旨又は避難の方向を明示した緑色の標識とし、多数の者の目に触れやすい箇所に、避難上有効なものとなるように設けること。
 3  第一項第四号に掲げる防火対象物又はその部分に避難口誘導灯又は通路誘導灯を前項に定める技術上の基準に従い、又は当該技術上の基準の例により設置したときは、第一項の規定にかかわらず、これらの誘導灯の有効範囲内の部分について誘導標識を設置しないことができる。 」 
とあり、
 誘導灯及び誘導標識に関する基準は、消防法関係に定められていますから、
 非常用照明装置については消防法、誘導灯については建築基準法により、それぞれ設置基準が定められている、は逆で、適切ではありません。


2 誘導灯については、光源の種類としては白熱灯と蛍光灯に限られ、LEDランプは認められていない。

X 適切ではない。 消防法では誘導灯については、LEDランプも認められている。
 まず、誘導灯については、消防法で定められています。
 とりあえず、誘導灯は、避難口と呼ばれる屋外に避難するための扉や、避難口に通じる通路に設置する箱型の照明器具です。建物から避難する方向を示すピクトグラム、内蔵バッテリー予備電源及び照明器具を内蔵している防災設備で、非常時には誘導灯を辿っていくことで、安全な屋外に避難することが可能です。
 劇場や病院、百貨店など、不特定多数が出入りする建物には、原則として全ての建物に誘導灯を設置します。
共同住宅(マンション)や工場など、特定の人が使用する建物の場合、地階・無窓階・11階以上の階で、誘導灯を設置する義務が発生します。

 誘導灯は設置対象となる防火対象物の用途によって、必要になる面積基準が変わります。不特定多数の人員を収容する百貨店や店舗等は設置基準が厳しくなっていたり、逆に事務所などは百貨店等と比べて基準が緩いなど、建物用途による違いがあります。
 誘導灯は、火災・停電などによって電源が遮断されても、避難が完了するまでの間は点灯していなければいけません。誘導灯本体内部には蓄電池が内蔵されており、
20分間以上の点灯を継続できるようになっています。誘導灯を設置する建物が大規模施設の場合には、避難に時間が掛かるため、60分以上の点灯を継続できる長時間型誘導灯が設置されます。
 誘導灯には避難口誘導灯、通路誘導灯、客席誘導灯の3種類があります。
それぞれの設置基準は消防法によって規定されています
 誘導灯には、避難口を示す表示と、避難方向とともに避難口を示す表示の二種類があります。方向表示が併記されている誘導灯は、有効距離が短く設定されています。小型のC級の誘導灯は避難方向を示す避難口誘導灯がありません。
 誘導灯は、表示面の大きい順に、A級・B級・C級の3種類で大きさが区別されています。
 コンパクト形誘導灯は従来、冷陰極管というランプが使用されていました。
 現在は冷陰極管の代替として、LED照明による誘導灯が普及しました。LEDは冷陰極管と同等以上の寿命を持ち、かつ冷陰極管よりも消費電力が小さいため、CO2の削減など、省エネルギーに貢献できることが注目されています。


 

 この誘導灯についての法的な根拠は、消防法施行規則第28条の3 
 「(誘導灯及び誘導標識に関する基準の細目)
 第二十八条の三  避難口誘導灯及び通路誘導灯(階段又は傾斜路に設けるものを除く。次項及び第三項において同じ。)は、次の表の上欄に掲げる区分に応じ、同表の中欄に掲げる表示面の縦寸法及び同表の下欄に掲げる表示面の明るさ(常用電源により点灯しているときの表示面の平均輝度と表示面の面積の積をいう。第四項第二号及び第三号において同じ。)を有するものとしなければならない。

区分 表示面の縦寸法(メートル) 表示面の明るさ(カンデラ)
避難口誘導灯 A級 〇・四以上 五十以上
B級 〇・二以上〇・四未満 十以上
C級 〇・一以上〇・二未満 一・五以上
通路誘導灯 A級 〇・四以上 六十以上
B級 〇・二以上〇・四未満 十三以上
C級 〇・一以上〇・二未満 五以上
 (以下、略) 」 とあり、
 防法施行規則第28条の3では、カンデラ(光源そのものの明るさを測る単位)だけが規定されていますから、光源の種類としては白熱灯と蛍光灯に限られておらず、、LEDランプでも可能ですから、適切ではありません。

 なお、カンデラに関係して、「ルクス」は照らされた面の明るさの単位です。 間違えないように。

 また、参考:平成22年4月9日付:消防予第177号 を見ても、
 「光源となる照明器具の種類:蛍光灯・白熱電球・
LED・その他 」 とあり、光源となる照明器具から、特にLEDランプを除外していませんから、適切ではありません。


3 非常用照明装置については、直接照明、間接照明を問わず、床面から1mの高さにおいて1ルクス以上の照度を確保しなければならない。

X 適切ではない。 建築基準法では、直接照明で、床面において、1ルクス以上の照度とあり、間接照明は認めず、また床面から1mの高さではない。

  平成19年 管理業務主任者試験 「問21」
 非常用照明装置については、今度は、建築基準法が定めています。

 非常用の照明装置は、不特定多数の人々が利用する特殊建築物および一定規模以上の建築物の居室、採光上の無窓の居室などとその避難経路に設けるもので、劇場、映画館、病院、ホテル、共同住宅、学校、百貨店などに設置することが義務づけられています。(建築基準法施行令、第126条の4参照)
 火災時等による断線や停電などの非常時には自動的に非常電源に切替わり、室内や通路を明るく照らします。

 そして、建築基準法施行令第126条の5

 「(構造)
 第百二十六条の五  前条の
非常用の照明装置は、次の各号のいずれかに定める構造としなければならない。
    一  次に定める構造とすること。
      
イ 照明は、直接照明とし、床面において一ルクス以上の照度を確保することができるものとすること。
      ロ 照明器具の構造は、火災時において温度が上昇した場合であつても著しく光度が低下しないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること。
      ハ 予備電源を設けること。
      ニ イからハまでに定めるもののほか、非常の場合の照明を確保するために必要があるものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとすること。
    二  火災時において、停電した場合に自動的に点灯し、かつ、避難するまでの間に、当該建築物の室内の温度が上昇した場合にあつても床面において一ルクス以上の照度を確保することができるものとして、
国土交通大臣の認定を受けたものとすること。 」 とあり、
 建築基準法施行令第126条の5 1号イ によれば、照明は、”直接照明”とし、床面において一ルクス以上の照度を確保することができるものとすることですから、非常用照明装置については、直接照明、間接照明を問わず、床面から1mの高さにおいて1ルクス以上の照度を確保しなければならないは、適切ではありません。

 

  なお、建築基準法においてLEDランプの使用は、非常用照明装置として以前は認められていませんでしたが、国土交通大臣の認定制度を利用して最近は、LEDランプも非常用照明装置として認められています。
  なお、蛍光灯や”国土交通大臣認定LEDランプ”を使用する場合では、2ルクス以上のようです。
 これは、白熱灯は周囲温度の変化による光束の変化を全く受けませんが、蛍光灯は周囲温度の上昇とともに光束が低下し、140℃程度の雰囲気では常温時の約半分に光束が低下しますので常温2ルクスとして計算します。
 参考: (昭和45年12月28日建設省告示第1830号) 最終改正。平成12年5月30日建設省告示第1405号
 「 非常用の照明装置の構造方法を定める件」
  第4 その他
    一 非常用の照明装置は、常温下で床面において水平面照度で1ルクス(蛍光灯を用いる場合にあつては、2ルクス)以上を確保することができるものとしなればならない。
    二 前号の水平面照度は、十分に補正された低照度測定用照度計を用いた物理測定方法によつて測定されたものとする。」


4 非常用照明装置については、停電時の予備電源として蓄電池を用いる場合は、充電を行うことなく30分間継続して点灯するものでなければならない。

○ 適切である。
   平成26年 管理業務主任者試験 「問20」 、平成21年 管理業務主任者試験 「問24」 
 
  建築基準法が規定する、非常用の照明装置の予備電源は、建築基準法施行令126条の4
 「(設置)
 「第百二十六条の四  法別表第一(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物の居室、階数が三以上で延べ面積が五百平方メートルを超える建築物の居室、第百十六条の二第一項第一号に該当する窓その他の開口部を有しない居室又は延べ面積が千平方メートルを超える建築物の居室及びこれらの居室から地上に通ずる廊下、階段その他の通路(採光上有効に直接外気に開放された通路を除く。)並びにこれらに類する建築物の部分で照明装置の設置を通常要する部分には、
非常用の照明装置を設けなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物又は建築物の部分については、この限りでない。
     一  一戸建の住宅又は長屋若しくは
共同住宅の住戸
     二  病院の病室、下宿の宿泊室又は寄宿舎の寝室その他これらに類する居室
     三  学校等
     四  避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室で避難上支障がないものその他これらに類するものとして国土交通大臣が定めるもの」
 とあり
 これを受けた、
 「(昭和45年12月28日建設省告示第1830号) 最終改正 平成12年5月30日建設省告示第1405号
 「 非常用の照明装置の構造方法を定める件」第三
 第三電源
   一常用の電源は、蓄電池又は交流低圧屋内幹線によるものとし、その開閉器には非常用の照明装置用である旨を表示しなければならない。
   
二予備電源は、常用の電源が断たれた場合に自動的に切り替えられて接続され、かつ、常用の電源が復旧した場合に自動的に切り替えられて復帰するものとしなければならない。
   
三予備電源は、自動充電装置時限充電装置を有する蓄電池(開放型のものにあつては、予備電源室その他これに類する場所に定置されたもので、かつ、減液警報装置を有するものに限る。以下この号において同じ。)又は蓄電池と自家用発電装置を組み合わせたもの(常用の電源が断たれた場合に直ちに蓄電池により非常用の照明装置を点灯させるものに限る。)で充電を行うことなく三十分間継続して非常用の照明装置を点灯させることができるものその他これに類するものによるものとし、その開閉器には非常用の照明装置用である旨を表示しなければならない。」 とあり、
 非常用照明装置については、停電時の予備電源として蓄電池を用いる場合は、充電を行うことなく30分間継続して点灯するものでなければならないは、適切です。

  


答え:4

 
ここも、かなり時間をさいて、解説しました。 国土交通省(建築基準法)関係では、非常用照明装置にLEDランプを除外していましたが、国土交通大臣認定で、LEDランプも認められるようになりました。
 過去問題をやっていれば、選択肢4は、早く選べたようです。 難しくはありません。


《タグ》建築基準法 + 消防法。 非常用照明装置、誘導灯、光源の種類、LEDランプ、照度、予備電源

問24

【問 24】 エレベーターに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1 乗用エレベーター(人荷共用エレベーターを含み、寝台用エレベーターを除く。)は、かごの床面積が大きくなるほど、単位面積当たりの積載荷重が小さい値になるよう、建築基準法施行令で定められている。

X 適切でない。 かごの床面積が大きくなるほど、単位面積当たりの荷重面積が大きい値になるように、決められている。 小さい値ではない。
 
 平成19年 管理業務主任者試験 「問20」
 
 まず、
エレベーターのかごとは、人が乗る箱状のもので、積載荷重とは、構造物に乗せる可動の物体の重さによる力で、鉛直方向に加わる力です。
 具体的には、建築では人や家具など、土木では車や電車などの重さのことを示します。積載荷重は、常に変動しますから、最小の場合と最大の場合、もしくは、標準的に定められた値について計算します。

 そこで、建築基準法施行令第129条の5 
 「(エレベーターの荷重)
 第百二十九条の五  エレベーターの各部の固定荷重は、当該エレベーターの実況に応じて計算しなければならない。
 2  エレベーターの
かごの積載荷重は、当該エレベーターの実況に応じて定めなければならない。ただし、かごの種類に応じて、次の表に定める数値(用途が特殊なエレベーターで国土交通大臣が定めるものにあつては、当該用途に応じて国土交通大臣が定める数値)を下回つてはならない

かごの種類 積載荷重(単位 ニュートン)
乗用エレベーター(人荷共用エレベーターを含み、寝台用エレベーターを除く。以下この節において同じ。)のかご 床面積が一・五平方メートル以下のもの 床面積一平方メートルにつき三、六〇〇として計算した数値
床面積が一・五平方メートルを超え三平方メートル以下のもの 床面積の一・五平方メートルを超える面積に対して一平方メートルにつき四、九〇〇として計算した数値に五、四〇〇を加えた数値
床面積が三平方メートルを超えるもの 床面積の三平方メートルを超える面積に対して一平方メートルにつき五、九〇〇として計算した数値に一三、〇〇〇を加えた数値
乗用エレベーター以外のエレベーターのかご 床面積一平方メートルにつき二、五〇〇(自動車運搬用エレベーターにあつては、一、五〇〇)として計算した数値
 とあり、
 建築基準法施行令第129条の5 2項によれば、 乗用エレベーターのかごの
 
@床面積が1.5u以下なら、床面積 1uにつき 3,600ニュートン
 A床面積が1.5u超3u以下なら、床面積 1uにつき 4,900ニュートン + 5,400ニュートン
 
A床面積が3uを超えるなら、床面積 1uにつき 5,900ニュートン + 13,000ニュートン 
 とありますから、かごの面積が大きいほど、単位面積当たりの積載荷重が大きい値になりますから、単位面積当たりの積載荷重が小さい値になるよう、建築基準法施行令で定められているは、適切ではありません。



2 乗用のトラクション方式ロープ式で機械室がないエレベーターでは、定格速度が毎分600m以上の高速なものが既に普及している。

X 適切ではない。 まだ、定格速度が毎分600m以上のものは、普及段階にない?

 トラクション(Traction)とは、通常、トラクターなどの牽引とか、引っ張ることですが、ここでは、滑車を使用した昔の井戸水をかい出した「つるべ」と考えると分かり易い。

 まず、エレベーターの主な駆動方式として、@ロープ式と A油圧式があります。
 @ロープ式...昇降路の直上や昇降路内に設置された巻上機の駆動力を用い、ロープで接続されたかご(利用者・荷物が乗る部分)と釣り合いをとるおもり(つり合い重り)を、かごのレール、つり合い重りのガイドレールに沿って上下させるトラクション式(つるべ)が主流です。 つり合いおもりを使用している為、電動機容量が小さく省エネです。
  他には、巻胴(ドラム)にロープを巻き付ける「巻胴式」もあります。
  近年では、機械室に設置されていた各種の機器を、昇降路内に組み込んだ機械室なし(マシーン・ルームレス)エレベーターが主流となっています。
 A油圧式... 油圧ポンプを駆動させ、油圧シリンダー(又は油圧ジャッキ)に作動油を送り込んで、直接または間接でかごを持ち上げる方式です。油圧シリンダー(又は油圧ジャッキ)の油をタンクに戻すことによってかごを下降させています。
  ロープ(つるべ)式よりも大きな構造となり、消費電力も大きくなります。油圧式は機械室なし(マシーン・ルームレス)エレベーターの登場により、乗用の需要は減っています。


   

 そこで、乗用のトラクション方式ロープ式の設置状況を調べました。
 しかし、エレベーターの設置台数とか、速度での集計は見つかりませんでした。
 それで、推定ですが、分速:600mというのは、かなりの高速で、またこの速度を要求される超高層ビルは、池袋にあるサンシャイン60や東京スカイツリー程度のようで、まだまだ普及までは至っていないようですので、適切ではありません。
 現在は、480m/分程度が中心のようです。

  

 なお、エレベーターの定員を測る重さでは、人間1人は、65Kg として、定員を計算しますから注意してください。


3 近年の地震による閉じ込め事故の多発が契機となり、エレベーターの構造等に関する建築基準法施行令等の改正により、新築建物のエレベーターには地震時管制運転装置を設けなければならないこととなった。

○ 適切である。
 新築建物のエレベーターには”地震時管制運転装置”を設けなければならない。
 確かに、東日本大震災だけでなく、それ以前の平成17年7月の千葉県北西部地震において発生したエレベーターの閉じ込め事故、平成18年6月の港区シティハイツ竹芝のシンドラー社製エレベーターの戸開走行事故等を受け、国土交通省も動き出し、建築基準法施行令を改正して、平成21年(2009年)9月28日以降に設置されるエレベーターには、地震時管制運転装置の設置義務を規定しています。
 それが、 建築基準法施行令第129条の10 

 「(エレベーターの安全装置)
 第百二十九条の十  エレベーターには、制動装置を設けなければならない。
 2  前項のエレベーターの制動装置の構造は、次に掲げる基準に適合するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
    一  かごが昇降路の頂部又は底部に衝突するおそれがある場合に、自動的かつ段階的に作動し、これにより、かごに生ずる垂直方向の加速度が九・八メートル毎秒毎秒を、水平方向の加速度が五・〇メートル毎秒毎秒を超えることなく安全にかごを制止させることができるものであること。
    二  保守点検をかごの上に人が乗り行うエレベーターにあつては、点検を行う者が昇降路の頂部とかごの間に挟まれることのないよう自動的にかごを制止させることができるものであること。
 
3  エレベーターには、前項に定める制動装置のほか、次に掲げる安全装置を設けなければならない
    一  次に掲げる場合に自動的にかごを制止する装置
      イ 駆動装置又は制御器に故障が生じ、かごの停止位置が著しく移動した場合
      ロ 駆動装置又は制御器に故障が生じ、かご及び昇降路のすべての出入口の戸が閉じる前にかごが昇降した場合
    
二  地震その他の衝撃により生じた国土交通大臣が定める加速度を検知し、自動的に、かごを昇降路の出入口の戸の位置に停止させ、かつ、当該かごの出入口の戸及び昇降路の出入口の戸を開き、又はかご内の人がこれらの戸を開くことができることとする装置
    三  停電等の非常の場合においてかご内からかご外に連絡することができる装置
    四  乗用エレベーター又は寝台用エレベーターにあつては、次に掲げる安全装置
      イ 積載荷重に一・一を乗じて得た数値を超えた荷重が作用した場合において警報を発し、かつ、出入口の戸の閉鎖を自動的に制止する装置
      ロ 停電の場合においても、床面で一ルクス以上の照度を確保することができる照明装置
 4  前項第一号及び第二号に掲げる装置の構造は、それぞれ、その機能を確保することができるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。 」 
です。

 建築基準法施行令第129条の10 3項1号では、戸開走行保護装置の設置義務付けをし、
 同3項2号では、地震時管制運転装置の設置義務付けをしています。
 
地震時管制運転装置とは、エレベーターについて、地震等の加速度を検知して、自動的にかごを昇降路の出入口の戸の位置に停止させ、かつ、当該かごの出入口の戸及び昇降路の出入口の戸を開くことなどができることとする安全装置で、これの設置を義務付けたものです。

 地震時管制運転装置に関しては、「地震その他の衝撃により生じた国土交通大臣が定める加速度並びに当該加速度を検知し、自動的に、かごを昇降路の出入口の戸の位置に停止させ、かつ、当該かごの出入口の戸及び昇降路の出入口の戸を開き、又はかご内の人がこれらの戸を開くことができることとする装置の構造方法を定める件(平成20年12月26日国土交通省告示第1536号 」 もありますから参考にしてください。ここで、「出入口の戸及び昇降路の出入口の戸を開き、又はかご内の人がこれらの戸を開くことができることとする装置(
以下「地震時等管制運転装置」という。)」の定義があります。

 具体的には、地震時管制運転装置は一定の強さの揺れを感知したら、最寄り階で着床し、閉じ込めを抑止します。
 その仕組みは、まず、地震動には初期微動(P波=Primary wave)と大きな地震波である主要動(S波=Secondary wave(第二波))があります。
 それぞれに地震加速度の設定値(加速度の単位:ガル Gal=1cm/秒)が定められており、さらに建物の高さ等により設定値は異なります。
標準型エレベーターの場合、初期微動のP波感知器は2.5Gal、主要動のS波感知器は80Gal(およそ震度5弱以上の揺れ)で設定しており、これを感知すると地震時管制運転に移行します。
 地震はまず、初期微動であるP波から伝わり、その後、破壊力のある本震(S波)が到達します。このP波をいち早くキャッチすることで、大きな揺れが到達する前に、利用者を最寄階へと避難させることができます。



4 エレベーターの保守契約にはFM(フルメンテナンス)契約とPOG(パーツ・オイル・グリース)契約があるが、マンション標準管理委託契約書では、FM契約によることとされている。

X 適切でない。 マンション標準管理委託契約書では、エレベーターの保守契約を特に決めていない。
  平成21年 マンション管理士試験 「問45」

  まず、エレベーターの保守契約にはFM(フルメンテナンス)契約とPOG(パーツ・オイル・グリース)契約があるは、適切です。
 そこで、
   @POG(パーツ・オイル・グリース)とは、その名の通り、電球類などの消耗部品(パーツ)・潤滑油(オイル・グリース)の取り替え及び補給のみを保証範囲とする保守契約で、主要部品の取り替えは、個別に別途、必要に応じて有償にて取り替えを発注することになります。
  AFM(フルメンテナンス)とは、上のPOG契約に加えて、意匠部品以外の主要部品も保証範囲としている保守契約です。上のPOG契約では個別の有償対応となる主要部品の取り替えを、保守会社側の立案する保全計画に基づいて定期的に取替えを実施することにより、各機器の状態の悪化を抑えられるというメリットがありますが、POG契約に比べて、高くなります。

 そして、マンション標準管理委託契約書 コメント
 「別表第4関係
 A エレベーター設備の保守管理方式については、一般的にフルメンテナンス方式とPOG方式の2種類があるため、
両方式のいずれかを選択する。」 とあり、
 FM契約によることとされていませんから、適切ではありません。



答え:3

 
過去問題をやっていれば、易しい出題でした。 でも、初めての人用に、図を入れたりして、かなり詳細に解説をしたので、4時間あまりかかっている。

《タグ》建築基準法施行令 + マンション標準管理委託契約書。 エレベーター、単位面積当たりの積載荷重、エレベーターの主な駆動方式として、@ロープ式と A油圧式、、地震時管制運転装置、レベーターの保守契約のFM(フルメンテナンス)契約とPOG(パーツ・オイル・グリース)契約

問25

【問 25】 エネルギーの使用の合理化等に関する法律(昭和54年法律第49号)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 建築物の所有者(所有者と管理者が異なる場合にあっては、管理者)は、建築物に係るエネルギーの使用の合理化に資するよう努めるとともに、電気の需要の平準化に資するよう努めなければならない。

○ 正しい。
  平成25年 マンション管理士試験 「問39

  エネルギーの使用の合理化等に関する法律は、昭和54年に石油危機を契機として制定されましたが、その後東日本大震災(平成23年)での電力の需給危機に遭遇し、平成25年に大幅に改正がなされています。
 建物を新築したり、修繕や模様替えをする人には、電気の需要の平準化(季節や時間帯による変動を少なくする)などエネルギーの使用の合理化をしてもらおうというのが、趣旨です。
 規制する分野としては、@工場等(事業者)、A輸送、B住宅・建築物 C機械器具等 です。

 そこで、設問の「努力をする人」は、エネルギーの使用の合理化等に関する法律第72条
 「(建築物の建築をしようとする者等の努力)
 第七十二条  次に掲げる者は、基本方針の定めるところに留意して、
建築物の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止及び建築物に設ける空気調和設備その他の政令で定める建築設備(以下「空気調和設備等」という。)に係るエネルギーの効率的利用のための措置を適確に実施することにより、建築物に係るエネルギーの使用の合理化に資するよう努めるとともに、建築物に設ける電気を消費する機械器具に係る電気の需要の平準化に資する電気の利用のための措置を適確に実施することにより、電気の需要の平準化に資するよう努めなければならない。
    
一  建築物の建築をしようとする者
    二  建築物の所有者(所有者と管理者が異なる場合にあつては、管理者。以下同じ。)

    三  建築物の直接外気に接する屋根、壁又は床(これらに設ける窓その他の開口部を含む。以下同じ。)の修繕又は模様替をしようとする者
    四  建築物への空気調和設備等の設置又は建築物に設けた空気調和設備等の改修をしようとする者 」 
とあり、
 エネルギーの使用の合理化等に関する法律第72条2号によれば、建築物の所有者(所有者と管理者が異なる場合にあっては、管理者)は、建築物に係るエネルギーの使用の合理化に資するよう努めるとともに、電気の需要の平準化に資するよう努めなければならなりませんから、正しい。



2 特定建築物の改築を行おうとする者は、エネルギーの使用の合理化等に関する措置について、第1種特定建築物に限り、当該改築に係る部分の床面積にかかわらず所管行政庁への届出が定められている。

X 誤っている。 第1種特定建築物以外の第2種特定建築物にも所管行政庁への届出が定められている。
 まず、特定建築物とは、エネルギーの使用の合理化等に関する法律第73条にあります。
 「(建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準となるべき事項)
 第七十三条  経済産業大臣及び国土交通大臣は、建築物に係るエネルギーの使用の合理化の適切かつ有効な実施を図るため、建築物の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止及び建築物に設ける空気調和設備等に係るエネルギーの効率的利用のための措置に関し建築主等(前条第一号、第三号及び第四号に掲げる者をいう。以下同じ。)及び建築物に係るエネルギーの使用の合理化を図る必要がある規模の建築物として政令で定める規模以上のもの(以下「
特定建築物」という。)の所有者の判断の基準となるべき事項(住宅の建築を業として行う建築主(以下「住宅事業建築主」という。)が住宅であつて政令で定めるもの(以下「特定住宅」という。)を新築する場合に係るものを除く。)を定め、これを公表するものとする。
 2  前項に規定する判断の基準となるべき事項は、エネルギー需給の長期見通し、エネルギーの使用の合理化に関する技術水準その他の事情を勘案して定めるものとし、これらの事情の変動に応じて必要な改定をするものとする。 」 
です。
 ここで、特定建築物とは、建築物に係るエネルギーの使用の合理化を図る必要がある規模の建築物として政令で定める規模以上のもの で
 これを受けた政令は、エネルギーの使用の合理化等に関する法律施行令第18条

 「(第一種特定建築物の直接外気に接する屋根等について行う修繕等の規模)
 第十八条  法第七十五条第一項第二号 の政令で定める規模は、
修繕若しくは模様替に係る部分の面積の合計が二千平方メートルであること又は当該面積の合計が二千平方メートルに満たない修繕若しくは模様替であつて次の各号に掲げるものについて当該各号に定める規模であることとする。
    一  第一種特定建築物の直接外気に接する屋根(これに設ける窓その他の開口部を含む。)について行う修繕又は模様替 当該修繕又は模様替に係る部分の面積の合計が当該屋根の面積の合計の二分の一
    二  第一種特定建築物の直接外気に接する壁(これに設ける窓その他の開口部を含む。)について行う修繕又は模様替 当該修繕又は模様替に係る部分の面積の合計が当該壁(当該第一種特定建築物の敷地境界線(建築基準法第四十二条 に規定する道路に接する部分を除く。)からの水平距離が一・五メートル以下の部分を除く。)の面積の合計の二分の一
    三  第一種特定建築物の直接外気に接する床(これに設ける窓その他の開口部を含む。)について行う修繕又は模様替 当該修繕又は模様替に係る部分の面積の合計が当該床の面積の合計の二分の一」 
とあり、
 
第一種特定建築物の規模は、修繕若しくは模様替に係る部分の面積の合計が2,000u以上でしたが、 
 平成21年に法の改正があり、第一種特定建築物以外の特定建築物として「第二種特定建築物」が規制の対象として追加されました。
 それが、エネルギーの使用の合理化等に関する法律第75条の2 です。

 「(第二種特定建築物に係る届出、勧告等)
 第七十五条の二  
第一種特定建築物以外の特定建築物(以下「第二種特定建築物」という。)の新築(住宅事業建築主が第二種特定建築物である特定住宅を新築する場合を除く。)若しくは政令で定める規模以上の改築又は建築物の政令で定める規模以上の増築(前条第一項第一号に規定する増築を除く。)をしようとする者(以下「第二種特定建築主」という。)は、国土交通省令で定めるところにより、当該建築物の設計及び施工に係る事項のうち当該建築物の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止及び当該建築物に設ける空気調和設備等に係るエネルギーの効率的利用のための措置に関するものを所管行政庁に届け出なければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
 2  所管行政庁は、前項の規定による届出があつた場合において、当該届出に係る事項が第七十三条第一項に規定する判断の基準となるべき事項に照らして著しく不十分であると認めるときは、当該届出をした者に対し、その判断の根拠を示して、当該届出に係る事項に関し必要な措置をとるべき旨の勧告をすることができる。
 3  第一項の規定による届出をした者(届出をした者と当該届出に係る建築物の管理者が異なる場合にあつては管理者とし、当該建築物が譲り渡された場合にあつては譲り受けた者(譲り受けた者と当該建築物の管理者が異なる場合にあつては管理者)とする。)は、国土交通省令で定めるところにより、定期に、その届出に係る事項(当該建築物の設計及び施工に係る事項のうち当該建築物に設ける空気調和設備等に係るエネルギーの効率的利用のための措置に関するものに限る。)に関する当該建築物の維持保全の状況について、所管行政庁に報告しなければならない。ただし、同項の届出に係る建築物が住宅である場合は、この限りでない。
 4  前条第六項の規定は、前項の報告に準用する。
 5  前各項の規定は、法令若しくは条例の定める現状変更の規制及び保存のための措置その他の措置がとられていることにより第七十三条第一項に規定する措置をとることが困難なものとして前条第七項の政令で定める建築物又は仮設の建築物であつて同項の政令で定めるものには、適用しない。 」 
とあり、
 第一種特定建築物以外の特定建築物として「第二種特定建築物」が出てきました。
 では、第二種特定建築物の規模はとなりますが、これも、「 政令で定める規模以上」は、エネルギーの使用の合理化等に関する法律施行令第20条の2 として追加されました。

 「(第二種特定建築物の改築等の規模)
 第二十条の二  法第七十五条の二第一項 の政令で定める改築の規模は、
当該改築に係る部分の床面積の合計が三百平方メートルで、かつ、当該床面積の合計が当該改築に係る第二種特定建築物の床面積の合計の二分の一であることとする。
 2  法第七十五条の二第一項 の政令で定める増築の規模は、当該増築に係る部分の床面積の合計が三百平方メートルで、かつ、当該床面積の合計が増築前の建築物の床面積の合計であることとする。 」 
です。
 
第二種特定建築物の規模は、該改築に係る部分の床面積の合計が、300u以上となります。
 
 これらにより、第一種特定建築物(2,000u以上)だけでなく、第二種特定建築物(300u以上)を、新築若しくは政令で定める規模以上の改築又は建築物の政令で定める規模以上の増築をしようとすると、国土交通省令で定めるところにより、当該建築物の設計及び施工に係る事項のうち当該建築物の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止及び当該建築物に設ける空気調和設備等に係るエネルギーの効率的利用のための措置に関するものを所管行政庁に届け出なければならないため、設問の、第1種特定建築物に限りは、誤りです。


 


3 エネルギーの使用の合理化を図ることが必要な特定熱損失防止建築材料(いわゆる建材トップランナー制度の対象の建築材料)として、断熱材、サッシ、複層ガラスが定められている。

○ 正しい。 
 建材トップランナー制度とは、製造事業者等に対し、現存する最も効率の良い建材を基に設定した目標年度(3〜10年程度先)における性能(トップランナー性能)を満たすことを求める制度です。
 平成26年11月30日から、エネルギーの使用の合理化等に関する法律が改正されています。
 そこでは、エネルギーの使用の合理化を図ることが特に必要な熱損失防止建築材料として、以前から規定されていた断熱材に加えて、新たに窓(サッシ及び複層ガラス)を追加しています。

 それが、エネルギーの使用の合理化等に関する法律第81条の3 

 「(熱損失防止建築材料製造事業者等の判断の基準となるべき事項)
 第八十一条の三  熱損失防止建築材料のうち、我が国において大量に使用され、かつ、建築物において熱の損失が相当程度発生する部分に主として用いられるものであつて前条に規定する性能の向上を図ることが特に必要なものとして政令で定めるもの(以下「特定熱損失防止建築材料」という。)については、経済産業大臣は、特定熱損失防止建築材料ごとに、当該性能の向上に関し熱損失防止建築材料製造事業者等の判断の基準となるべき事項を定め、これを公表するものとする。
 2  前項に規定する判断の基準となるべき事項は、当該特定熱損失防止建築材料のうち前条に規定する性能が最も優れているものの当該性能、当該特定熱損失防止建築材料に関する技術開発の将来の見通しその他の事情を勘案して定めるものとし、これらの事情の変動に応じて必要な改定をするものとする。 」 
とあり、
 これを受けた政令は、エネルギーの使用の合理化等に関する法律施行令第23条の2

 「(特定熱損失防止建築材料)
 第二十三条の二  法第八十一条の三第一項 の政令で定める
熱損失防止建築材料は、次のとおりとする
    一  
断熱材(押出法ポリスチレンフォーム、ガラス繊維(グラスウールを含む。)又はスラグウール若しくはロックウールを用いたものに限り、真空断熱材その他経済産業省令で定めるものを除く。)
    二  
サッシ(鉄製又は木製のものその他経済産業省令で定めるものを除く。)
    三  
複層ガラス(ステンドグラスを用いたものその他経済産業省令で定めるものを除く。) 」 
とあり、
 エネルギーの使用の合理化を図ることが必要な特定熱損失防止建築材料(いわゆる建材トップランナー制度の対象の建築材料)として、断熱材、サッシ、複層ガラスが定められていますから、正しい。
 また、トップランナー制度には、三相誘導電動機と電球形LEDランプも入っています。


 


4 一戸建ての住宅及び共同住宅等については、建築主等に対して、「外壁、窓等を通しての熱の損失の防止に関する基準」並びに「単位住戸及び共同住宅等全体の一次エネルギー消費量の基準」へ適合する措置を講ずることが定められている。

○ 正しい。

 まず、エネルギーの使用の合理化等に関する法律第4条
 「(エネルギー使用者の努力)
 第四条  エネルギーを使用する者は、基本方針の定めるところに留意して、エネルギーの使用の合理化に努めるとともに、電気の需要の平準化に資する措置を講ずるよう努めなければならない。 」 
とあり
 選択肢2でも引用しました、エネルギーの使用の合理化等に関する法律第73条を受けた、「エネルギーの使用の合理化に関する建築主等及び特定建築物の所有者の判断の基準」 平成25年経済産業省・国土交通省告示第 1号、最終改正 平成25年経済産業省・国土交通省告示第10号 

 によれば、
 「第2 住宅に係る判断の基準
  住宅の建築主等は、次の1及び2に適合する措置を講ずるものとする。
   
1 外壁、窓等を通しての熱の損失の防止に関する基準
   
2 一次エネルギー消費量に関する基準
    2―1
住宅の建築主等は、当該住宅における全ての単位住戸及び共同住宅等全体の設計一次エネルギー消費量(2―3に定める方法により算出した数値をいう。)が、それぞれ当該住宅の基準一次エネルギー消費量(2―2に定める方法により算出した数値をいう。)を上回らないようにするものとする。
ただし、特別な調査又は研究の結果に基づき、2―2及び2―3に定める方法による計算と同等以上に当該住宅がエネルギーの使用上効率的であることを確かめることができる計算による場合においては、この限りでない。」 とあり、
 設問は、正しい。



答え:2

 
珍しい、エネルギーの使用の合理化等に関する法律からの出題で、ここもかなり詳細に解説をしました。
 選択肢2については、平成25年のマンション管理士試験 「問39」 をやった人は、正解が早かった? 易しい出題でした。

《タグ》エネルギーの使用の合理化等に関する法律。 第1種特定建築物(2,000u以上)、第2種特定建築物(3000u以上)、建材トップランナー制度、外壁、窓等を通しての熱の損失の防止に関する基準、単位住戸及び共同住宅等全体の一次エネルギー消費量の基準

ここまで、問25


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2016年 8月28日:標準管理規約の改正に合わせた。問12、問13。
2016年 3月15日;再度見直した。
2016年 3月 3日;設備のリンクを入れた。
2016年 2月29日;民法の過去問題とのリンクを入れた。
2016年 2月26日;区分所有法の過去問題とのリンクを入れた。
2016年 2月 7日;第2稿終了。「問7」選択肢4の管理委託契約の条文変更。
解説の第1稿終了:2016年 1月28日
解説開始:2015年12月26日

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