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平成28年(2016年) マンション管理士 試験問題 及び 解説

ページ1(問1より問25まで)

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謝辞:当問題の作成にあたっては、高井様及び吉田様のご協力を戴いております。
テキスト文への変更など、ご助力を心から感謝いたします。

「マンション管理士 香川事務所」 より。

※ 出題当時以後の法令等の改正には、一部は対応していません。

*試験に臨んで、お節介なアドバイス
  1.設問にあわせて、問題用紙に ○(まる)、X(ばつ)をつける。
    殆どの設問が、「正しい」か「間違い」かを訊いてきますので、設問により、問題の頭に、○かXをつけます。
    そして、各選択肢を読み、○かXをつけます。
    問題の○なりXと、選択肢の○かXが一致したものを、マークシートに記入してください。

  2.疑問な問題は、とりあえず飛ばす。
    解答の時間は限られています。
    そこで、解答として、○かXかはっきりしないものがでたら、「?」マークをつけて、次の問題に移ります。
    全部の解答が終わってから、再度戻って決定してください。

  3.複雑な問は、図を描く。
    甲、乙、A、B、Cなど対象が多い問題もでます。
    この場合、問題用紙の空いているところに、図を描いてください。
    重要な点が分かってきます。

(出題者からの注意) 

次の注意事項をよく読んでから、始めてください。
(注意)
1これは試験問題です。問題は、 1ページから 28 ページまでの 50 問です。
2 試験開始の合図と同時に、問題のページ数を確認してください。
 もし落Tや乱丁があった場合は、ただちに試験監督員に申し出てください。
 また、法律等の略称及び用語の定義について、裏面の記載を確認してください。
3 答は、別の解答用紙に記入してください。
 解答用紙に記入する際は、解答用紙の注意事項をよく読み、所定の要領で記入してください。
4 答は、各問題とも 1つだけです。
 2つ以上の解答をしたもの、判読が困難なものは、正解としません。
5 問題中法令等に関する部分は、平成 28 年4月1日現在施行中の規定に基づいて出題されています。

問題の中で使用している主な法律等の略称及び用語の定義については、以下のとおりとします。
・「区分所有法」………………… 建物の区分所有等に関する法律 (昭和 37 年法律第 69 号)
  ☆マンション管理士 香川より;この解説においては、私も略称「区分所有法」といいます。

・「マンション管理適正化法」… マンションの管理の適正化の推進に関する法律 (平成 12 年法律第 149 号)
 ☆マンション管理士 香川より;この解説においては、私も略称「マンション管理適正化法」といいます。

・「標準管理規約」……………… マンション標準管理規約(単棟型)及びマンション標準管理規約コメント(単棟型) (平成 28 年 3月14 日国士交通省土地建設産業局長・同住宅局長通知)
  ☆マンション管理士 香川より、この解説においては、私も略称「標準管理規約」といいます。

・「マンション」………………… 「マンション管理適正化法第 2条第 1号イに規定するマンション」をいう。
 ☆マンション管理士 香川より;
  初めての人には、分かり難い引用方法です。
  そこで、
私の過去の年度の解説を読んでいる人には、度々となりますが、これは、受験での基本ですから、解説します。

 建物の区分所有等に関する法律(以下、当解説では、「区分所有法」といいます)では、法律用語として「マンション」の定義がありません。しかし、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下、当解説では、「マンション管理適正化法」といいます)第2条では、以下のように定義されていますので、マンションの用語を試験で使用する際にはこのような「マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号イに規定するマンションをいう」の表現が使用されます。
 
  そこで、マンション管理適正化法第2条とは、
 
「(定義) 
  第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
     一
 マンション 次に掲げるものをいう
       イ 
二以上の区分所有者(建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)第二条第二項 に規定する区分所有者をいう。以下同じ。)が存する建物で人の居住の用に供する専有部分(区分所有法第二条第三項 に規定する専有部分をいう。以下同じ。)のあるもの並びにその敷地及び附属施設」

 です。マンション管理適正化法第2条1号イによれば、「マンション」であるための要件は、
    @2人以上の区分所有者 がいて、 
    A人の居住用の専有部分が1つでもあればいい 
 です。マンションの建物には、専有部分と共用部分しかなく、そして、マンションは専有部分と共用部分を含んだ建物と敷地及び附属施設の全体的なものであることに注意してください。
 
  区分所有法に規定される区分所有建物には、住居、店舗、事務所、倉庫なども含まれますが、マンション管理適正化法でのマンションは、居住用に限定しています。この規定は、大変に重要な規定です。


・「管理組合」…………………… 「区分所有法第 3条に規定する区分所有者の団体」をいう。
  ☆マンション管理士 香川より; この定義の仕方には問題があります。
  まず、区分所有法第3条とは、
 
 「(区分所有者の団体)
   
第三条  区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。 」
 です。

  このマンション管理士試験では、区分所有法第3条前半に規定される区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を”即=管理組合”に置き換えていますが、区分所有法では、法人化された場合には、「管理組合法人」の規定はありますが、管理組合だけの規定は1つも存在しません。
 法律で定義がされていない管理組合を国家試験として、直ちに「区分所有法第 3条に規定する区分所有者の団体をいう」は、適切ではありません。

 そして、平成28年 マンション管理士試験 「問2」 でも、区分所有法第3条の「団体」を管理組合と言っていません。この違いに気が付いてください。


解説者(マンション管理士 香川)からのコメント:あやふやな出題、適切でない出題もあって、解答ができないのもあります。

※  ・マンションの管理の適正化に関する指針(国土交通省告示第490号)及びマンション標準管理規約は、平成28年3月に改正があったので注意のこと。
   ・マンション標準管理委託契約書は、平成28年7月に改正があり、平成29年度の試験から出題適用となるので注意のこと。
   
   マンション標準管理規約は、平成16年に改正があった。また、平成23年7月にも小幅な改正があった。
   マンション標準管理委託契約書は、平成15年に改正があった。また、平成22年5月にも改正があった。

問1

[問 1]共用部分に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 各共有者は、共用部分の全部について、持分に応じて使用することができる。

X 誤っている。 持分の大小に関係なく、共用部分は全部使用できる。
 平成27年 マンション管理士試験 「問4」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問38」 、平成23年 管理業務主任者試験 「問34」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問5」 、 平成16年 マンション管理士試験 「問1」 、 平成15年 管理業務主任者試験 「問37」
 
 区分所有法における「共用部分」と「専有部分」の違いは、「マンション管理士 香川事務所」 が別途無料で提供しています 「超解説 区分所有法」 の最初の方を参考にしてください。
 
 共用部分の使用で、関係しているのは、区分所有法第13条です。
 「(共用部分の使用)
 第十三条  
各共有者は、共用部分をその用方に従つて使用することができる。」
 とあり、
 共用部分(エントランス、廊下、階段など)であれば、各共有者は、その持分の大小に関係なく、”用法に従って”全部使用できますから、”持分に応じて使用できる”は、誤りです。
 なお、民法での共有は、第249条
 
各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。 」
 とあり、これとの混同を狙った出題です。
 また、これが、民法の特別法である区分所有法の特徴ともなります。
 理解法としては、例えば、マンションでは共用部分(原則:専有部分の床面積比)の持分の少ない人は、エントランスの端しか歩けないのかを考えればいいでしょう。
 なお、共用部分の持分については、下の選択肢3を参照してください。


2 共有者の持分は、規約に別段の定めがない限り、その有する専有部分の処分に従う。

X 誤っている 共有者の持分は、”この法律に別段の定めがない限り”、専有部分と共に処分される。”規約”ではない?
 
平成21年 マンション管理士試験 「問5」 選択肢2、 平成22年 マンション管理士試験 「問1」 選択肢2 、平成20年 管理業務主任者試験 「問6」 、 平成18年 マンション管理士試験 「問4」 。
 
 出だしから、出題として、実に曖昧な出題です。
 共用部分の分離処分は、区分所有法第15条
 「(共用部分の持分の処分)
  第十五条  
共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う
  
2  共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。」

 とあり、
 基本的には、区分所有法第15条1項で規定されますように、共用部分の持分は、専有部分の処分に従いますが、この例外規定として2つが規定されています。
 この例外規定は、
  @第11条2項(第27条1項)の管理所有 と
  A第14条4項の規約 によってです。
  1番目は、規約によって他の区分所有者又は管理者を共用部分の所有者とする場合(区分所有法第11条2項、第27条1項参照)で、2番目は、規約の設定・変更によって共有持分の変更をする場合(同法第14条4項参照)です。
 1番目の場合には、実質的な処分とみなされないこともありますが、2番目の場合には、共有者の間で共用部分の持分の処分が規約により専有部分と分離してなされたことになります。
 そこで、区分所有法第15条2項の条文のままならば「区分所有法に別段の定めがある場合を除いて」とあり、「規約に別段の定めがない限り」は誤りですが、実際の規約があれば、共有者の持分が専有部分の処分に従わない場合もあり、出題として、不適切です。
 参考:このあたりの詳細な解説は、「マンション管理士 香川事務所」が無料で提供しています「超解説 区分所有法」の第15条を参考にしてください。


 
  

3 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合によるとされ、その床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積によるとされているが、これらは規約で別段の定めをすることもできる。

〇 正しい。 共用部分の持分は、原則:専有部分の床面積、内法計算、しかし、規約で別段可。
 平成27年 マンション管理士試験 「問8」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問4」 、 平成26年 マンション管理士試験 「問7」 、 平成25年 マンション管理士試験 「問32」 、平成22年 マンション管理士試験 「問4」 、 平成22年 管理業務主任者試験 「問1」 、平成20年 マンション管理士試験 「問1」 、 平成15年管理業務主任者試験 「問5」 、平成14年 マンション管理士試験 「問1」。 
 
 共有者の共用部分の持分の割合は、区分所有法第14条、
 「(共用部分の持分の割合)
 第十四条  
各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による
 2  前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。
 3  前二項の
床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による
 4  
前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
 とあり、
 区分所有法第14条1項によれば、原則:専有部分の床面積に応じ、3項によれば、その床面積の出し方は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積(内法計算。「壁芯計算」よりも、狭くなる)ですが、4項によれば、規約で別段の定めもできますから、正しい。

  
 
 注:不動産登記規則では、マンション(区分建物)だけが、内法計算で、他の建物の床面積は、壁芯計算ですから、注意してください。

 平成28年 管理業務主任者試験 「問43」 選択肢4 


4 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)を行う場合の議決権割合は、規約でその過半数まで減ずることができる。
 
X 誤っている。 区分所有者の”定数”の方は、規約で過半数まで減らせるが、”議決権”の方は、規約でも減らせられない。
 平成26年 管理業務主任者試験 「問30」 、平成26年 マンション管理士試験 「問5」 、平成25年 管理業務主任者試験 「問38」 、平成24年 マンション管理士試験 「問25」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問37」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問9」 、平成21年 マンション管理士試験 「問6」 、 平成18年 管理業務主任者試験 「問32」 、平成17年 マンション管理士試験 「問2」 など 他にも多数出ている問題。 
 
 共用部分の変更は、区分所有法第17条、
 「(共用部分の変更)
 第十七条  共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を
伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
 2  前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。 」 

 です。
 区分所有法第17条1項はかっこ書き(
その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)と”ないもの”を”除く”となっていて国語的にも難解で法律文章としても問題がある規定ですが、ここが重要です。
  ア.「その形状又は効用の著しい変更を
伴わないもの」;これは軽微の変更と呼ばれます。
  イ.逆に、「その形状又は効用の著しい変更を
伴うもの」;これは重大変更と呼ばれます。
  この面倒な表現は、平成14年の区分所有法の改正で、「その形状又は効用の著しい変更を”
伴わないものを除く(軽微な変更)”」は普通決議でできるようにしたため、面倒な表現になりました。
  第17条1項は、「共用部分の重大な変更(著しい変更を伴うもの=伴わないものを除いて)をするときには、特別な決議が必要。だけど、規約で定めれば、議決権の数の3/4以上は変えられないが、区分所有者の数の方は、3/4以上を、過半数まで減らすことができる」ということです。
 そこで、設問の「”議決権割合”は、規約でその過半数まで減ずることができる」は、誤りです。

 
 


答え:3

《タグ》区分所有法 共用部分。 共用部分の使用。共用部分の処分は、原則:専用部分の処分に従う。床面積は、原則:専有部分の割合。共用部分の重大変更の集会での定数は規約で減らせるが、議決権の方は減らせられない。

  第1問目ということで、かなり詳細に解説しました。
 区分所有法の解説については、マンション管理士 香川 が無料で提供しています「超解説 区分所有法」のサイトを参考にしてください。また、リンクされている過去問題の解説も参考に、勉強してください。

 *ある受験生の感想:選択肢2、3が正答候補。そこで、短文の肢2を選択したがなぜXか不明だ?

問2

〔問 2〕区分所有法第 3条に規定する区分所有者の団体(この問いにおいて「3条の団体」という。)又は管理者に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはいくつあるか。

ア 3条の団体は、区分所有法によって設立が認められる法人である。

X 誤っている。 区分所有者の団体を法人化するには、集会の決議等を経て、登記をしないとなれない。
 平成28年 管理業務主任者試験 「問36」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問7」 、平成26年 マンション管理士試験 「問5」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問2」 、 平成18年 マンション管理士試験 「問2」   。

 平成28年のマンション管理士試験の問題文をしっかり理解した人は、問題用紙の裏に「問題の中で使用している主な法律等の略称及び用語の定義については、以下のとおりとします。」 とあり、
  ・「管理組合」…………………… 「区分所有法第 3条に規定する区分所有者の団体」をいう。 とあります。

 区分所有法第3条は
 「(区分所有者の団体)
   
第三条  区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。 」
 です。
 問題用紙の裏で区分所有法第 3条に規定する”区分所有者の団体”を”管理組合”であると定義したのなら、この出題で、どうして”区分所有法第 3条に規定する区分所有者の団体(この問いにおいて「3条の団体」という。)”とまた、”3条の団体”と定義をし直しているのかおかしいと感じるでしょう。
 一度定義したなら、この設問でも、単純にこの区分所有者の団体は、”管理組合”という言葉に統一できないのか疑問を持つでしょう。
 その訳は、上の「問題の中で使用している主な法律等の略称及び用語の定義については、以下のとおりとします。」でも説明  しましたように、区分所有法では第3条での”区分所有者の団体”をそのまま”管理組合”に置き換える条文は無いのです。
区分所有法第3条に規定される区分所有者の団体は、法人化されれば初めて「管理組合法人」と「管理組合」の文言が使用されますから、このような設問になる訳です。
また、このままでは、区分所有者の団体は構成されますが、管理組合(団地管理組合も)という組織体は当然には創設(設立)されていないと解釈されています。

 それを踏まえ、設問の区分所有者の団体が法人となるのは、区分所有法第47条
 「(成立等)
 第四十七条  
第三条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法人となる。
 2  前項の規定による法人は、管理組合法人と称する。
 3  この法律に規定するもののほか、管理組合法人の登記に関して必要な事項は、政令で定める。
 4  管理組合法人に関して登記すべき事項は、登記した後でなければ、第三者に対抗することができない。
 5  管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき効力を生ずる。
 6  管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
 7  管理組合法人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
 8  管理組合法人は、規約又は集会の決議により、その事務(第六項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
 9  管理組合法人は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合においては、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。
 10  一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 (平成十八年法律第四十八号)第四条 及び第七十八条 の規定は管理組合法人に、破産法 (平成十六年法律第七十五号)第十六条第二項 の規定は存立中の管理組合法人に準用する。
 11  第四節及び第三十三条第一項ただし書(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。)の規定は、管理組合法人には、適用しない。
 12  管理組合法人について、第三十三条第一項本文(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定を適用する場合には第三十三条第一項本文中「管理者が」とあるのは「理事が管理組合法人の事務所において」と、第三十四条第一項から第三項まで及び第五項、第三十五条第三項、第四十一条並びに第四十三条の規定を適用する場合にはこれらの規定中「管理者」とあるのは「理事」とする。
 13  管理組合法人は、法人税法 (昭和四十年法律第三十四号)その他法人税に関する法令の規定の適用については、同法第二条第六号 に規定する公益法人等とみなす。この場合において、同法第三十七条 の規定を適用する場合には同条第四項 中「公益法人等(」とあるのは「公益法人等(管理組合法人並びに」と、同法第六十六条 の規定を適用する場合には同条第一項 及び第二項 中「普通法人」とあるのは「普通法人(管理組合法人を含む。)」と、同条第三項 中「公益法人等(」とあるのは「公益法人等(管理組合法人及び」とする。
 14  管理組合法人は、消費税法 (昭和六十三年法律第百八号)その他消費税に関する法令の規定の適用については、同法 別表第三に掲げる法人とみなす。 」

 とあり、
 出題文が分かり難く、”法人でない”の意図が曖昧ですが、ここは、区分所有者の団体は「最初から、法律上当然に、法人格を持つかどうか」と理解して、
 区分所有法第47条1項によれば、第3条で規定される「区分所有者の団体」は、「区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法人となる」ため、そのままでは、単なる団体(権利能力なき社団ということもできます)であり、法人ではないので、誤りとします。



イ 3条の団体は、区分所有法の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことが義務づけられている。

X 誤っている。 ”できる”と任意である。義務ではない。
 区分所有法第3条は

 「(区分所有者の団体)
   第三条  区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、
この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。 」
 です。
  集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことは、「できる」とあり任意ですから、設問の「義務づけられている」は、誤りです。



ウ 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。

〇 正しい。 
 平成27年 マンション管理士試験 「問3」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問42」 、平成26年 マンション管理士試験 「問14」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問7」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問1」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問6」 、 平成22年 管理業務主任者試験 「問3」 、平成22年 管理業務主任者試験 「問37」 、平成21年 マンション管理士試験 「問4」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問4」 など出題が多い。
  
 管理者の権限は、区分所有法第26条
 「(権限)
 第二十六条  管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
 
2  管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
 3  管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
 4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
 5  管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。」

 とあり、
 区分所有法第26条2項によれば、管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理するは、正しい。



 エ 管理者は、集会の決議により、その職務に関し、区分所有者のために、原告又は被告となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。

X 誤っている。 集会の場合には、区分所有者は知っているので通知はいらない。
  平成21年 マンション管理士試験 「問9」 、平成13年 マンション管理士試験 「問7」 。
  
 管理者の権限としては、選択肢ウで引用しました区分所有法第26条4項、5項

 「4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
  5 管理者は、
前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。」

 とあり、
 区分所有法第26条4項により、管理者は、
@規約 又は A集会の決議 によって、その職務に関し、区分所有者のために、原告又は被告となれます。
 そして、区分所有法第26条5項によれば、”@の
規約によって、原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。”とありますから、A集会の決議によるのであれば、区分所有者のために、原告又は被告となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならないは、誤りです。
 集会を開催していれば、区分所有者は、既にその内容を知っていますので、通知は除かれています。


  1一つ
  2 二つ
  3 三つ
  4 四つ


答え:1 正しいのは、ウ 1つだけ。

《タグ》区分所有法 第3条の団体。 法人格。管理者の権限。

 しかし、平成28年のマンション管理士試験の出題方法は、冒頭での管理組合の定義の仕方といい、選択肢アの出題文の曖昧さといい実によくない。
 また、「できる」と「義務づけられている」の違いなど、条文の基本から外れている出題は過去にもあるが、末梢的な出題方法で、適切ではない。
 余分な解説が必要で、時間がかかる!

問3

〔問 3〕区分所有法第 7条に規定する先取特権に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法(明治 29 年法律第 89 号)の規定によれば、正しいものはどれか。

1 管理者に対して支払うべき報酬が定められ、管理者が、管理組合に対して報酬請求権を有する場合には、管理者の報酬請求権は、先取特権によって担保される。

X 誤っている。  管理者の報酬請求権は、先取特権の対象にならない。
 平成27年 マンション管理士試験 「問26」 、 平成27年 管理業務主任者試験 「問2」 、平成25年 管理業務主任者試験 「問2」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問3」 、 平成17年 マンション管理士試験 「問6」 
 
 まず、先取特権とは、民法第303条に、次のように規定され、
 
「(先取特権の内容)
 第三百三条  先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その
債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。

 とあり、
 民法で定められた、10種の物権の一つです。
 抵当権と同様に担保物の価値で債権(財産権の1つ)を担保する方法の一つで、担保される債務の履行がないときに担保権を実行(民事執行法に基づく競売)して債権を他の債権者より優先的に回収することができます。他の債権者よりも先に債務を支払ってもらえることが特権たる所以です。

 その民法の先取特権を認めた規定が区分所有法第7条にあります。
 「(先取特権)
 第七条  区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に
先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。
 2  前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす。
 3  民法 (明治二十九年法律第八十九号)第三百十九条 の規定は、第一項の先取特権に準用する。 」

 とあり、
  区分所有関係によって生じた区分所有者間の債権なら、民法で規定される先取特権の制度を適用して、一般の債権の回収よりも優先してできると強い保護を与えた規定です。
 この区分所有法での先取特権をうけられる被担保債権は、
  @区分所有者が、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権、
  A規約又は集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権です。
  @の債権は保存行為等で個人の区分所有者が立替えた現在の債権をいい、
  Aの債権は管理費・修繕積立金・義務違反者の違約金等団体としての区分所有者の全員が共同して(または管理組合が)有する債権をいうとするのが一般のようです。
 そこで、
  該当する債権の例:
   ・ 規約により各区分所有者が共用部分に係る管理費を各自の共有持分に対して有する管理費の請求に係る債権
   ・管理者が、その職務を行うにつき必要な費用について、各区分所有者に対して共有持分に応じて分割的に有する費用償還債権。
 で、一方
 該当しない債権の例:
  ・管理者が、管理組合との間に報酬を受ける特約がある場合において、管理組合に対して有する報酬債権
  があげられます。
  この報酬債権は組合に対する
業務実施の対価であり、業務を行うにつき組合員に対して有する(費用 )債権に該当しないためです。
 そこで、設問の「管理者の報酬請求権は、先取特権によって担保される」は、誤りです。



2 区分所有法第 7条の先取特権は、共益費用の先取特権とみなされ、他の一般の先取特権と競合する場合にはそれらに劣後する。

X 誤っている。  共益費用の先取特権は他の一般の先取特権と競合する場合には、それらに”優先”する。 劣後しない。
 
 先取特権には、
 
@一般の先取特権
 A動産の先取特権
 B不動産の先取特権
 の3種があります。
 そして、一般の先取特権とは、民法第306条にあります。
 「(一般の先取特権)
 第三百六条  次に掲げる原因によって生じた債権を有する者は、債務者の総財産について先取特権を有する。
   
一  共益の費用
   二  雇用関係
   三  葬式の費用
   四  日用品の供給」

 です。
 設問は、選択肢1で引用しました、区分所有法第7条2項
 「2  前項の
先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす。」
 とあり、設問の前半は正しい。
 そこで、共益費用の先取特権とみなされた区分所有法での先取特権は、設問後半での、他の一般の先取特権間の優先順位の関係は、民法第329条
 
「(一般の先取特権の順位)
 「第三百二十九条  
一般の先取特権が互いに競合する場合には、その優先権の順位は、第三百六条各号に掲げる順序に従う
 2  一般の先取特権と特別の先取特権とが競合する場合には、特別の先取特権は、一般の先取特権に優先する。ただし、共益の費用の先取特権は、その利益を受けたすべての債権者に対して優先する効力を有する。 」

 とあり、
 引用されています民法第306条での順序は
      1位...共益費用(各債権者の共同の利益のために使われた費用)
      2位...雇用関係債権(給料その他債務者と使用人との間の雇用関係で生じた債権)
      3位...葬式費用(葬式での費用)
      4位...日用品供給費用(生活に必要な飲食品、燃料、電気の供給で生じた費用) 
  ですから、区分所有法での共益費用の先取特権においても、他の一般の先取特権と競合する場合には、”それらに優先”しますから、設問の”それらに劣後する”は、誤りです。
 そこで、選択肢2は、全体として誤りとなります。



3 店舗を経営する区分所有者が、管理組合の承諾を得て、共用部分である廊下に自らの所有する動産であるショーケースを備え付けていた場合、このショーケースに対しては、先取特権の効力は及ばない。

X 誤っている。 動産であるショーケースにも先取特権は、及ぶ。

 ここは解釈が難しいのですが、選択肢1で引用しました区分所有法第7条1項
 「区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。」 
 とあり、 
 「建物に備え付けた動産」には、債務者の専有部分に備え付けられたものに限らず、共用部分である廊下や屋上に備え付けられた債務者のものも含まれると解釈されていますので、説問の場合の「共用部分である廊下に自らの所有する動産であるショーケース」にも、先取特権の効力は及びますから、誤りです。



4 区分所有者が、規約又は集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について先取特権を行使するに際しては、当該他の区分所有者が第三者から借り受けていた家具についても即時取得の規定の準用がある。

〇 正しい。 借用物にも、即時取得として先取特権は及ぶ。
 平成27年 管理業務主任者試験 「問2」 

 この設問も条件が欠けている点で、かなり適切ではありませんが、選択肢1で引用しました区分所有法第7条3項
 
「3  民法 (明治二十九年法律第八十九号)第三百十九条 の規定は、第一項の先取特権に準用する。」
 とあり、民法第319条は、
 
「(即時取得の規定の準用)
 第三百十九条  第百九十二条から第百九十五条までの規定は、第三百十二条から前条までの規定による先取特権について準用する。」

 で、 民法第192条から第195条とは
 「(即時取得)
 
第百九十二条  取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

 (盗品又は遺失物の回復)
 第百九十三条  前条の場合において、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から二年間、占有者に対してその物の回復を請求することができる。

 第百九十四条  占有者が、盗品又は遺失物を、競売若しくは公の市場において、又はその物と同種の物を販売する商人から、善意で買い受けたときは、被害者又は遺失者は、占有者が支払った代価を弁償しなければ、その物を回復することができない。

 (動物の占有による権利の取得)
第百九十五条  家畜以外の動物で他人が飼育していたものを占有する者は、その占有の開始の時に善意であり、かつ、その動物が飼主の占有を離れた時から一箇月以内に飼主から回復の請求を受けなかったときは、その動物について行使する権利を取得する。」

 です。
 そこで、民法第192条の規定により、厳密にいうと、債務者である区分所有者(他の区分所有者)が借りている動産(家具)を、債権者である区分所有者が債務者である区分所有者の所有物と誤信し、かつ誤信したことに過失がなかった時には、債権者である区分所有者は、その動産に対して区分所有法第7条1項の先取特権を取得するので、正しいとなります。



答え:4 

《タグ》区分所有法 + 民法。先取特権。優先順位。借用物
    この解説も、出題文がはっきりせず、時間がかかる。 平成28年のマンション管理士試験の問題文作成者は、選択肢2をまねればレベルがかなり”劣化”したようだ。

問4

〔問 4〕共用部分等の管理に関する次の記述のうち、標準管理規約によれば、正しいものはいくつあるか。

ア マンションの駐車場の管理については、駐車場を使用する区分所有者がその責任と負担において行わなければならない。

X 正しくもないし適切ではない。 駐車場の管理は、使用者ではなく、管理組合が行う。
 平成26年 マンション管理士試験 「問27」

  まず出題文での「標準管理規約によれば、正しいものはいくつあるか」という文言ですが、標準管理規約は、標準管理規約の コメント 全般関係@ にありますように、たかが国土交通省が推薦するマンションの管理規約の参考版にしかすぎません。
 基本的に標準管理規約は法律ではありません。この認識は、マンション管理士や管理業務主任者を目指す人にとっては、非常に重要なことです。
 法律であれば「正しい」とか「誤っている」とかの判断はありますが、参考版にしか過ぎない標準管理規約からの出題を、国家試験であるマンション管理士の試験問題で「正しいもの」と言い切る程の自信は「マンション管理士 香川」にはありませんので、ここは、「適切である」か「適切でない」に変更して解説します。
 なお、過去の出題においては、標準管理規約が参考版であることを自覚して「標準管理規約によれば、適切なものはどれか」または、「適切でないものはどれか」と表現されていました。
 また、平成28年のマンション管理士試験でも「問25」や「問26」では「標準管理規約によれば、
適切なものはどれか」となっています。

 マンションの駐車場の管理は、標準管理規約21条
 「(敷地及び共用部分等の管理)
 第21条 
敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。ただし、バルコニー等の保存行為(区分所有法第18条第1項ただし書の「保存行為」をいう。以下同じ。)管理のうち、通常の使用に伴うものについては、専用使用権を有する者がその責任と負担においてこれを行わなければならない。
 2  専有部分である設備のうち共用部分と構造上一体となった部分の管理を共用部分の管理と一体として行う必要があるときは、管理組合がこれを行うことができる。
 
3  区分所有者は、第1項ただし書の場合又はあらかじめ理事長に申請して書面による承認を受けた場合を除き、敷地及び共用部分等の保存行為を行うことができない。ただし、専有部分の使用に支障が生じている場合に、当該専有部分を所有する区分所有者が行う保存行為の実施が、緊急を要するものであるときは、この限りでない。
 4  前項の申請及び承認の手続については、第17条第2項、第3項、第5項及び第6項の規定を準用する。ただし、同条第5項中「修繕等」とあるのは「保存行為」と、同条第6項中「第1項の承認を受けた修繕等の工事後に、当該工事」とあるのは「第21条第3項の承認を受けた保存行為後に、当該保存行為」と読み替えるものとする。
 5  第3項の規定に違反して保存行為を行った場合には、当該保存行為に要した費用は、当該保存行為を行った区分所有者が負担する。
 6  理事長は、災害等の緊急時においては、総会又は理事会の決議によらずに、敷地及び共用部分等の必要な保存行為を行うことができる。
」 
 とあり、
 基本的には、標準管理規約21条1項「敷地及び共用部分等の管理については、管理組合がその責任と負担においてこれを行うものとする。」に該当しますから、「駐車場を使用する区分所有者がその責任と負担において行わなければならない」は、適切ではありません。
 なお、コメント 第21条関係
 
A 駐車場の管理は、管理組合がその責任と負担で行う。 
 もあります。

 注:緑字が平成28年3月の改正点です。


イ 管理組合は、管理を行うために必要な範囲内において、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができ、その請求を正当な理由なく拒否した者は、その結果生じた損害を賠償しなければならない。

〇 正しくはないが、適切ではある。
 平成24年 マンション管理士試験 「問28」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問30」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問29」  

 専有部分等への立入りは、標準管理規約23条
 「(必要箇所への立入り)
 第23条  前2条により
管理を行う者は、管理を行うために必要な範囲内において、他の者が管理する専有部分又は専用使用部分への立入りを請求することができる。
 2  前項により立入りを請求された者は、正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
 
3  前項の場合において、正当な理由なく立入りを拒否した者は、その結果生じた損害を賠償しなければならない。
 
4  前3項の規定にかかわらず、理事長は、災害、事故等が発生した場合であって、緊急に立ち入らないと共用部分等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときは、専有部分又は専用使用部分に自ら立ち入り、又は委任した者に立ち入らせることができる。
 5  立入りをした者は、速やかに立入りをした箇所を原状に復さなければならない。」
 とあり、
 標準管理規約23条1項及び3項によれば、適切である。

 注:緑字が平成28年3月の改正点です。


ウ 理事長は、災害や事故等により緊急に立ち入らないと共用部分等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときは、専有部分又は専用使用部分について、立ち入ることができるが、原状回復義務を負う。

〇 正しくはないが、適切ではある。
 
平成28年3月の改正点です。

  私が度々、ブログや「目指せ! マンション管理士・管理業務主任者」のサイトで標準管理規約は平成28年3月で改正があったので、必ず改正点は出題されると警告した箇所です。
 災害時の理事長の対応は、選択肢イで引用した標準管理規約23条4項及び5項
 「
4  前3項の規定にかかわらず、理事長は、災害、事故等が発生した場合であって、緊急に立ち入らないと共用部分等又は他の専有部分に対して物理的に又は機能上重大な影響を与えるおそれがあるときは、専有部分又は専用使用部分に自ら立ち入り、又は委任した者に立ち入らせることができる。
 
5  立入りをした者は、速やかに立入りをした箇所を原状に復さなければならない。
 とあり、
 標準管理規約23条4項及び5項によれば、適切である。



エ 計画修繕工事の実施に際し、区分所有者が、専有部分又は専用使用部分への立入りを正当な理由なく拒否し続け、計画修繕工事の円滑な実施を妨げる場合には、理事長は、理事会の決議を経て、その是正等のため必要な勧告、指示等を行うことができる。

〇 正しくはないが、適切ではある。
 平成24年 マンション管理士試験 「問28」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問34」 
 
 計画修繕工事の実施に際し、区分所有者が、専有部分又は専用使用部分への立入りを正当な理由なく拒否し続け、計画修繕工事の円滑な実施を妨げる場合となると、この区分所有者の行為はマンションでの「共同生活の秩序を乱す行為」に該当すると考えられます。
 すると、標準管理規約67条
 「(理事長の勧告及び指示等)
 第67条 
区分所有者若しくはその同居人又は専有部分の貸与を受けた者若しくはその同居人(以下「区分所有者等」という。)が、法令、規約又は使用細則等に違反したとき、又は対象物件内における共同生活の秩序を乱す行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経てその区分所有者等に対し、その是正等のため必要な勧告又は指示若しくは警告を行うことができる。
 2  区分所有者は、その同居人又はその所有する専有部分の貸与を受けた者若しくはその同居人が前項の行為を行った場合には、その是正等のため必要な措置を講じなければならない。
 3  区分所有者等がこの規約若しくは使用細則等に違反したとき、又は区分所有者等若しくは区分所有者等以外の第三者が敷地及び共用部分等において不法行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経て、次の措置を講ずることができる。
   一  行為の差止め、排除又は原状回復のための必要な措置の請求に関し、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行すること
   二  敷地及び共用部分等について生じた損害賠償金又は不当利得による返還金の請求又は受領に関し、区分所有者のために、訴訟において原告又は被告となること、その他法的措置をとること
 4  前項の訴えを提起する場合、理事長は、請求の相手方に対し、違約金としての弁護士費用及び差止め等の諸費用を請求することができる。
 5  前項に基づき請求した弁護士費用及び差止め等の諸費用に相当する収納金は、第27条に定める費用に充当する。
 6  理事長は、第3項の規定に基づき、区分所有者のために、原告又は被告となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第43条第2項及び第3項の規定を準用する。 」
 とあり、
 標準管理規約67条1項によれば、適切です。



  l 一つ
  2 二つ
  3 三つ
  4 四つ


答え:3  適切なものは、 イ、ウ、エ の3つ

《タグ》 改正点は必ず出題される。 標準管理規約 。 駐車場の管理。立入り。共同生活を乱す行為。

  たかがマンション管理での見本でしかない標準管理規約からの出題で、「
正しいものはいくつあるか」と聞く注意力の無い出題者のレベルは、国家資格問題作成者として不適格だ!
 また、そのミスに気が付かない出題元の「公益財団法人 マンション管理センター」は、もう機能していない。組織として改革が必要だ。
 まったく、「問2」といい、この「問4」といい、問題解説以外の”解説”が必要とされ、余分な時間がかかる。


 さらに、例年の出題傾向からいっても、この「問4」という試験問題の前半で、標準管理規約からの出題は異例だ。標準管理規約が平成28年3月に改正された点を受け、急遽、しかも強引に問題を作ったようだ。

問5

〔問 5〕共用部分の所有に関する次の記述のうち、区分所有法、民法及び不動産登記法(平成 16 年法律第 123 号)の規定によれば、正しいものはどれか。

1 共用部分は、規約の定めにより、区分所有者又は管理者でない者の所有に属させることができる。

X 誤っている。 共用部分を管理所有できるのは、区分所有者か管理者である。
 管理所有の出題は、平成24年 マンション管理士試験 「問6」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問30」 平成21年 マンション管理士試験 「問5」 、平成20年 マンション管理士試験 「問5」 、平成18年 管理業務主任者試験 「問38」 、 平成15年 マンション管理士試験 「問4」 など多いので、注意のこと。

 私の 「超解説 区分所有法」 をまだ読んでいない人には、質問の意図も分からないでしょう。
 この出題は区分所有法での「
管理所有」と呼ばれる分野からです。

 もともと、マンションの建物の共用部分となると、区分所有法第11条
 
「(共用部分の共有関係)
 第十一条  
共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。
 
2  前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第二十七条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。
 3  民法第百七十七条 の規定は、共用部分には適用しない。 」

 とあり、
 区分所有法第11条1項によれば、建物の共用部分は原則:区分所有者全員の共有に属するのですが、例外が2項にあります。
 規約で共有関係について別段の定めもできるということです。
 しかし、その別段の共有関係を定めた規約においても、但し書きにより、
  @区分所有者 と
  A区分所有法第27条1項の場合 
  でないと共用部分の所有者にしてはいけないということです。
 そこで、区分所有法第27条は
 「(管理所有)
 第二十七条  
管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。
 2  第六条第二項及び第二十条の規定は、前項の場合に準用する。 」

 とあり、
 区分所有法第27条1項により、管理者であれば、区分所有者でなくても、建物の共用部分の所有者になれますから、最終的に建物の共用部分を規約により所有できるのは、
 @区分所有者 と
 A管理に関わる管理者 となり、区分所有者又は
管理者でない者の所有に属させることは、誤りです。

 


2 規約で、共用部分を特定の区分所有者の所有に属させる場合、当該区分所有者の区分所有権に係る共有持分権に変動は生じない。

〇 正しい。 管理所有では、共用部分の持分の変動はない。
 規約で、建物の共用部分を特定の区分所有者の所有に属させる「管理所有」の場合は、あくまでも管理面で便宜的に認めたものであり、基本である共用部分の所有権には変動を及ぼさないと解されていますから、正しい。


3 規約により共用部分とした建物の部分を、区分所有者でない管理者の所有に属させる場合、管理者は当該共用部分の所有権を登記できる。

X 誤っている。 管理所有での共用部分の所有権は登記できない。
 
 規約により共用部分とした建物の部分(規約共用部分)は、登記しないと第三者には対抗できません(区分所有法第4条2項参照)が、規約共用部分であっても、共用部分ですから、区分所有者でない管理者の所有に属させることは、選択肢1で引用しました区分所有法第27条1項
 「二十七条  管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。」
 により可能ですが、
 マンションでの建物の共用部分の処分となると区分所有法第15条
 
「(共用部分の持分の処分)
 第十五条  
共有者の持分は、その有する専有部分の処分に従う。
 2  共有者は、この法律に別段の定めがある場合を除いて、その有する専有部分と分離して持分を処分することができない。 」

 とあり、
 共用部分は専有部分の処分に附随してのみ処分され、この規定により、不動産登記法においても建物の共用部分となると共用部分の所有者の登記や権利に関する登記は抹消されます(不動産登記法第58条4項参照)から、管理所有においても、管理者は当該共用部分の所有権を登記できないため、誤りです。

 
  


4 管理者が共用部分を所有する場合、共用部分に加え、規約による建物の敷地も所有することができる。

X 誤っている。 管理所有では、敷地は対象外。
  選択肢1でも説明しましたように、管理所有が認められているのは区分所有法第11条です。
 また、区分所有法第21条
 
「(共用部分に関する規定の準用)
 第二十一条  
建物の敷地又は共用部分以外の附属施設(これらに関する権利を含む。)が区分所有者の共有に属する場合には、第十七条から第十九条までの規定は、その敷地又は附属施設に準用する。 」

 により、
 規約による建物の敷地(規約敷地)にも、共用部分の規定が準用されますが、管理所有を定める区分所有法第11条の規定の準用はありませんから、規約による建物の敷地も所有することは出来ず、誤りです。



答え:2

《タグ》 この箇所は、「管理所有」と呼ばれ、区分所有法でも特殊な箇所ですから、私が無料で解説しています 「超解説 区分所有法」 を読んで、受験生はしっかり勉強しておいてください。
 少し難問か。

 区分所有法 管理所有。 管理所有できる人。 持分の変動。 敷地。

問6

〔問 6〕規約に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、規約の定めは、区分所有者間の利害の衡平が図られているものとする。

1 管理者が置かれていない管理組合が、規約を保管する者を集会で定める場合、区分所有者の代理人で建物を使用している者を、規約を保管する者として定めることができる。

〇 正しい。 規約の保管は、原則:管理者。 管理者がいないときは、建物を使用している区分所有者、又はその代理人。
 平成26年 マンション管理士試験 「問33」 、 平成25年 マンション管理士試験 「問7」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問30」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問8」
 
 規約の保管は、区分所有法第33条
 「(規約の保管及び閲覧)
 第三十三条  
規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。
 2  前項の規定により規約を保管する者は、利害関係人の請求があつたときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧(規約が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したものの当該規約の保管場所における閲覧)を拒んではならない。
 3  規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。 」

 とあり、
 区分所有法第33条1項によれば、規約の保管者は、
 管理者がいれば、管理者
 管理者がいないと、
 1.建物に住んでいる区分所有者
 2.又はその代理人
 ですから、管理者が置かれていない管理組合が、規約を保管する者を集会で定める場合、区分所有者の代理人で建物を使用している者を、規約を保管する者として定めることができますから、正しい。


 


2 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものについての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の 4分の 1を超える者又はその議決権の 4分の 1を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。

〇 正しい。 全員の利害に関係しない一部共用部分を全体の規約に取り組むなら、その規約の設定、変更等は、一部共用部分の4分の 1を超える者又はその議決権の 4分の 1を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。
 一部共用部分についての出題も多い。
 平成26年 マンション管理士試験 「問9」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問4」 、平成23年 マンション管理士試験 「問1」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問2」 、 平成22年 管理業務主任者試験 「問35」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問26」 、平成17年 マンション管理士試験 「問2」平成15年 マンション管理士試験 「問5」など。

 まず
一部共用部分とは、建物において、構造上明らかに一部の専有部分にのみ共用されている廊下や階段室のことをいいます。(区分所有法第3条後段参照)
 具体的には、1棟のマンションで下が店舗、上が住居用の構造となっており、店舗部分には従業員専用入り口やお客を対象にした出入口があり、住居部に対しては住居部専用の出入口や居住階専用のエレベーターがある場合を考えてください。
 この状況で店舗用の共用部分である従業員専用出入り口や店内にある廊下などの部分は、店舗部だけの「一部共用部分」となりますし、また、住居部専用の出入口や住居部だけが使用する廊下、居住階専用のエレベーターなどがあればその共用部分は、住居部だけの「一部共用部分」となります。

 
 

 そして、一部共用部分の規約の変更などは、区分所有法第31条
 「(規約の設定、変更及び廃止)
 第三十一条  規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
 
2  前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。」 

 とあり、
 第31条2項で引用されています、前条第2項とは、区分所有法第30条
 「(規約事項)
  第三十条  
   2  一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。 」

 です。
 区分所有法第30条2項及び第31条2項によれば、区分所有者全員の利害に関係しない一部共用部分を全体の規約に取り込むならその規約の設定、変更等は、一部共用部分の区分所有者の4分の 1を超える者又はその議決権の 4分の 1を超える議決権を有する者が反対したときは、することができず、正しい。


 


3 建物について規約で定めることができる事項は、共用部分の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項に限られ、専有部分の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は含まれない。

X 誤っている。 規約では、専有部分の用途、管理・使用の制限もできる。
 平成27年 管理業務主任者試験 「問33」 、  平成25年 マンション管理士試験 「問30」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問33」 、 平成23年 マンション管理士試験 「問1」 、平成22年 マンション管理士試験 「問1」 、平成21年 マンション管理士試験 「問4」 

 規約については、区分所有法第30条
 「(規約事項)
 第三十条  
建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
 2  一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。
 3  前二項に規定する規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払つた対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。
 4  第一項及び第二項の場合には、区分所有者以外の者の権利を害することができない。
 5  規約は、書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により、これを作成しなければならない。」 

 とあり、
 区分所有法第30条1項によれば、 「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる」により、専有部分の用途、管理・使用制限も規約に規定できると考えられており、専有部分においても「住居専用に限る」などの使用に関する事項も規約で規定できますから、誤りです。



4 数個の専有部分を所有する区分所有者が存在しない場合には、各区分所有者の議決権の割合について、規約で住戸一戸につき各一個の議決権と定めることにより、決議に必要な区分所有者の定数と一致させることができる。

〇 正しい。

 平成27年 管理業務主任者試験 「問33」 、 平成23年 マンション管理士試験 「問4」 、 平成22年 管理業務主任者試験 「問31」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問4」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問33」 
 
 設問の前半「数個の専有部分を所有する区分所有者が存在しない場合」が分かり難いのですが、これは、各専有部分は、異なった区分所有者によって所有されているということで、まず、区分所有者の数の数え方は、原則:専有部分の数(戸数)になりますが、一人で複数の専有部分を有していていると、その人は、1人と数えられます。所有している専有部分の数ではありません。
 一方、議決権は、区分所有法第38条
 「(議決権)
 第三十八条  各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による。」

 とあり、
 原則:その専有部分の床面積の割合(第14条参照)によりますが、あまり各戸の専有部分の床面積に差が無ければ、これが、設問にある「規約で、区分所有者間の利害の衡平が図られているもの」となります。
 そこで、設問のように、 住戸一戸につき各一個の議決権と定めることは可能です。
 よって、数個の専有部分を所有する区分所有者が存在しない場合なら、区分所有者の数は、イコール=専有部分の数となり、また議決権も各戸 一議決権であれば、議決権の個数も、イコール=専有部分の数となり、決議に必要な区分所有者の定数と一致させることができますから、正しい。



答え:3

《タグ》区分所有法。 規約保管者。 一部共用部分の規約と全体。 規約で設定できる事項。 区分所有者の数と議決権の数。

  一部共用部分につては、 出題もかなりありますから、ここも、私の「超解説 区分所有法」 の関係条文をよく読んでおいてください。

問7

〔問 7〕区分所有法第 32 条の規定に基づく公正証書による規約の設定に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 等価交換方式によって、分譲業者が、地主の土地上にマンションを建築し、建築したマンションの一部を地主に譲渡した場合には、分譲業者が一般の者に販売を行う前であれば、分譲業者と地主が共同で公正証書による規約を設定することができる。

X 誤っている。 共同では、公正証書による規約の設定はできない。
 平成18年 マンション管理士試験 「問8」 、 平成14年 マンション管理士試験 「問3」 。

 まず、等価交換方式とは、設問のように、マンションの建設にあたり、地主が土地を提供し、分譲業者がマンションの建設費を負担し、完成したマンションの専有部分を地主と分譲業者が出資した比率で、分け合う方式です。
 そして、区分所有法第32条は、
 「(公正証書による規約の設定)
 第三十二条  
最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、第四条第二項、第五条第一項並びに第二十二条第一項ただし書及び第二項ただし書(これらの規定を同条第三項において準用する場合を含む。)の規約を設定することができる。」 

 とあり、
 最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書で、
  @規約共用部分(第4条2項)、
  A規約敷地(第5条1項)、
  B専有部分と敷地利用権との分離処分を許す(第22条1項ただし書き)、
  C各専有部分に対応する敷地利用権の割合(第22条2項ただし書き) 
 について規約を設定することができます。
 これは、マンションの分譲前に管理人室や集会所、遊園地などをどのように扱うのか決めておく必要があるために認められています。
 この公正証書により規約の設定ができるのは、区分所有法第32条によれば、「最初に建物の専有部分の全部を所有する者(一人の者)」であり、設問のように、
分譲業者と地主が”共同”では認めていませんから、誤りです。
 なお、分譲業者と地主が
共有関係で全部の専有部分を原始的に所有していれば、 分譲業者と地主は、この規約を設定できます。このあたりの区別をしておいてください。

 


2 公正証書による規約を設定した者は、専有部分の全部を所有している間は、公正証書による規約の設定と同様の手続により、その規約を廃止することができる。

〇 正しい。
 選択肢1で引用しました、区分所有法第32条の「最初に建物の専有部分の全部を所有する者」は、まだ専有部分を1つも分譲していない間(専有部分の全部を所有している間)であれば、公正証書による規約の設定と同様の手続により、その規約を変更・廃止できますから、正しい。


3 建物が所在する土地以外の土地が、建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用されるものでなくても、公正証書による規約の設定をするのであれば、建物の敷地とすることができる。

X 誤っている。 規約敷地にするなら、建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用されるものでなければいけない
 平成27年 マンション管理士試験 「問1」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問34」 、 平成25年 マンション管理士試験 「問1」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問18」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問1」  

 規約敷地が認められるのは、区分所有法第5条
 「(規約による建物の敷地)
 第五条  
区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる。
 2  建物が所在する土地が建物の一部の滅失により建物が所在する土地以外の土地となつたときは、その土地は、前項の規定により規約で建物の敷地と定められたものとみなす。建物が所在する土地の一部が分割により建物が所在する土地以外の土地となつたときも、同様とする。」

 とあり、
 区分所有法第5条1項によれば、規約で建物の敷地とするには、その要件として、「建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする」がありますから、「建物が所在する土地以外の土地が、建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用されるもので
”なくても”」は、誤りです。


4 建物が完成する前に公正証書により規約が設定された場合には、建物の完成前で所有権が取得されていなくても、規約の効力が生じるのは公正証書を作成した時である。

X 誤っている。 効力は、建物完成時の区分所有権が発生した時に生じる。
 規約の効力は、通常、公正証書作成時に生じますが、この制度の趣旨から、建物が完成する前に公正証書が作成されていれば、建物完成時(区分所有権が成立したとき)と解されていますから、建物の完成前で所有権が取得されていなくても、規約の効力が生じるのは公正証書を作成した時は、誤りです。


答え:2

《タグ》区分所有法。 公正証書による規約の設定。 最初に建物の専有部分の全部を所有する者。

   少し、難問か。 *ある受験生の感想:細かい事務手続きで実務経験がないと無理?

問8

〔問 8〕管理組合法人に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 区分所有法第 3条に規定する区分所有者の団体は、区分所有者及び議決権の各 4分の 3以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定めることで直ちに法人となることができる。

X 誤っている。 法人になるには”直ち”にではなく、登記をしないとだめ。
 平成27年 マンション管理士試験 「問7」 、平成26年 マンション管理士試験 「問5」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問33」  、平成21年 マンション管理士試験 「問2」  平成21年 管理業務主任者試験 「問1」 、平成19年 管理業務主任者試験 「問36」 、平成18年 マンション管理士試験 「問2」 、平成16年 マンション管理士試験 「問18」

 区分所有法第3条に規定する「区分所有者の団体」については、「問2」などを参考にしてください。

 区分所有者の団体が法人となるには、区分所有法第47条
 「(成立等)
 第四十七条  
第三条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法人となる。
 2  前項の規定による法人は、管理組合法人と称する。
 3  この法律に規定するもののほか、管理組合法人の登記に関して必要な事項は、政令で定める。
 4  管理組合法人に関して登記すべき事項は、登記した後でなければ、第三者に対抗することができない。
 5  管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき効力を生ずる。
 6  管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
 7  管理組合法人の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
 8  管理組合法人は、規約又は集会の決議により、その事務(第六項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
 9  管理組合法人は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合においては、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。
 10  一般社団法人及び一般財団法人に関する法律 (平成十八年法律第四十八号)第四条 及び第七十八条 の規定は管理組合法人に、破産法 (平成十六年法律第七十五号)第十六条第二項 の規定は存立中の管理組合法人に準用する。
 11  第四節及び第三十三条第一項ただし書(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。)の規定は、管理組合法人には、適用しない。
 12  管理組合法人について、第三十三条第一項本文(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定を適用する場合には第三十三条第一項本文中「管理者が」とあるのは「理事が管理組合法人の事務所において」と、第三十四条第一項から第三項まで及び第五項、第三十五条第三項、第四十一条並びに第四十三条の規定を適用する場合にはこれらの規定中「管理者」とあるのは「理事」とする。
 13  管理組合法人は、法人税法 (昭和四十年法律第三十四号)その他法人税に関する法令の規定の適用については、同法第二条第六号 に規定する公益法人等とみなす。この場合において、同法第三十七条 の規定を適用する場合には同条第四項 中「公益法人等(」とあるのは「公益法人等(管理組合法人並びに」と、同法第六十六条 の規定を適用する場合には同条第一項 及び第二項 中「普通法人」とあるのは「普通法人(管理組合法人を含む。)」と、同条第三項 中「公益法人等(」とあるのは「公益法人等(管理組合法人及び」とする。
 14  管理組合法人は、消費税法 (昭和六十三年法律第百八号)その他消費税に関する法令の規定の適用については、同法 別表第三に掲げる法人とみなす。」

 とあります。
 区分所有法第47条1項によれば、「第三条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、
かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法人となる。」とありますから、設問の後半の「直ちに法人となることができる」は、誤りです。集会の決議後、必要事項を登記をしないと法人にはなれません。
 
 


2 管理組合法人の成立前の管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人の成立後は、管理組合法人につき効力を有する。

〇 正しい。
 平成27年 マンション管理士試験 「問2」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問8」 、平成22年 マンション管理士試験 「問6」 。
 
 選択肢1で引用しました、区分所有法第47条5項
 「5  
管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき効力を生ずる
 とありますから、正しい。
 
 


3 管理組合法人は、区分所有者を代理して、損害保険契約に基づく保険金額の請求及び受領をすることができる。

〇 正しい。
 平成26年 管理業務主任者試験 「問32」 、 平成25年 管理業務主任者試験 「問1」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問34」

 選択肢1で引用しました、区分所有法第47条6項
 「6  管理組合法人は、その事務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。」 
 とあり、
 管理組合法人は、区分所有者を代理して、損害保険契約に基づく保険金額の請求及び受領をすることができる、は正しい。



4 管理組合法人の理事及び監事の任期は 2年とされているが、規約で 3年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。

〇 正しい。
 平成27年 マンション管理士試験 「問5」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問31」 、平成23年 マンション管理士試験 「問6」 、平成22年 マンション管理士試験 「問6」 、平成19年 マンション管理士試験 「問2」 
 
 理事、監事の任期は、まず理事の任期として区分所有法第49条
 
「(理事)
 第四十九条  管理組合法人には、理事を置かなければならない。
 2  理事が数人ある場合において、規約に別段の定めがないときは、管理組合法人の事務は、理事の過半数で決する。
 3  理事は、管理組合法人を代表する。
 4  理事が数人あるときは、各自管理組合法人を代表する。
 5  前項の規定は、規約若しくは集会の決議によつて、管理組合法人を代表すべき理事を定め、若しくは数人の理事が共同して管理組合法人を代表すべきことを定め、又は規約の定めに基づき理事の互選によつて管理組合法人を代表すべき理事を定めることを妨げない。
 
6  理事の任期は、二年とする。ただし、規約で三年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。
 7  理事が欠けた場合又は規約で定めた理事の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した理事は、新たに選任された理事(第四十九条の四第一項の仮理事を含む。)が就任するまで、なおその職務を行う。
 8  第二十五条の規定は、理事に準用する。 」

 とあり、
 区分所有法第49条6項によれば、理事の任期は原則:2年ですが、規約で3年以内の別段の定めができますから、理事の任期については、正しい。
 
 では、監事の任期は、区分所有法第50条
 「(監事)
 「第五十条  管理組合法人には、監事を置かなければならない。
 2  監事は、理事又は管理組合法人の使用人と兼ねてはならない。
 3  監事の職務は、次のとおりとする。
   一  管理組合法人の財産の状況を監査すること。
   二  理事の業務の執行の状況を監査すること。
   三  財産の状況又は業務の執行について、法令若しくは規約に違反し、又は著しく不当な事項があると認めるときは、集会に報告をすること。
   四  前号の報告をするため必要があるときは、集会を招集すること。
 4  第二十五条、
第四十九条第六項及び第七項並びに前条の規定は、監事に準用する。」
 
 とあり、
 区分所有法第50条4項により、理事の任期の規定:第49条6項が監事にも準用されていますから、監事の任期も正しい。
 よって、選択肢4は全部正しい。

 
 


答え:1

《タグ》区分所有法。 法人。 理事、監事の任期。

 ここは、条文のままで、易しい。

問9

〔問 9〕管理組合法人の事務に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 管理組合法人の事務のうちの保存行為について、複数の理事がいる場合、規約に別段の定めがないときは、各理事が単独で決することができる。

X 誤っている?  稲本洋之助・鎌野邦樹氏の解釈では、保存行為でも複数の理事がいれば、規約に別段の定めがないときは、理事の過半数で決する?
 平成23年 マンション管理士試験 「問6」 

 誤っているとする根拠が不明で、図書館に行って、区分所有法の基本となっている、今は削除された民法の法人の規定を、我妻 栄版や川島武則版など多くの参考書を読んだが、明確な解答は無かった。

 まずマンションでの保存行為とは、区分所有法第18条1項
 「(共用部分の管理)
 第十八条  共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。
ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。」

 とあるように、保存行為とは、共用部分ならびに建物の敷地および附属施設を維持する行為です。
 基本的に保存行為であれば、各共有者ができる程度のものです。

 そこで、管理組合が法人となると基本となるのは、区分所有法第49条2項
 
「(理事)
  2  
理事が数人ある場合において、規約に別段の定めがないときは、管理組合法人の事務は、理事の過半数で決する。 」

 この規定に、保存行為も入ると解釈されているのかどうかということです。

 参考になるのは、今は削除された、旧民法第52条2項に、
 
「1法人には、1人又は数人の理事を置かなければならない。
 
2  理事が数人ある場合において、定款又は寄附行為に別段の定めがないときは、法人の事務は、理事の過半数で決する。

 とあり、
 区分所有法第49条2項は、旧民法にあった法人の規定が削除されたことにより、以前は準用とあったものが、新設されたものです。
 そこで、旧民法第52条2項にある「法人の事務は、理事の過半数で決する」に、保存行為も入るかどうかを図書館などで調べたのですが、昔の民法の参考書にも明確にはないし、また新しい民法の参考書にも、法人での「保存行為」も理事の過半数を要するとはありませんでした。


 そして、一方、区分所有法第52条
 
「(事務の執行)
 第五十二条  管理組合法人の事務は、この法律に定めるもののほか、すべて集会の決議によつて行う。ただし、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項及び第五十七条第二項に規定する事項を除いて、規約で、理事その他の役員が決するものとすることができる。
 
2  前項の規定にかかわらず、保存行為は、理事が決することができる。」

 とあります。
 区分所有法第52条によれば、原則として管理組合法人の事務は、集会の決議に基づかなければならないが、2項では、保存行為の例外を認め、理事が決することができるとあります。
 
 では、区分所有法第49条2項の
 「2  理事が数人ある場合において、規約に別段の定めがないときは、
管理組合法人の事務は、理事の過半数で決する
 と区分所有法第52条2項の
 「2  前項の規定にかかわらず、
保存行為は、理事が決することができる
 との関係はどうなるかということです。

  マンション管理士 香川 としては、管理組合法人での「保存行為」は、その性質上、各共有者もできることなどから、法人においても各理事が、単独でできると解釈します。

 但し、「コンメンタール マンション区分所有法」:稲本洋之助・鎌野邦樹著(日本評論社版)によると、「保存行為の決定:理事が数人ある場合には、旧民法52条2項(区分所有法第49条2項)により、規約に別段の定めがない限り、理事の過半数をもって決定する」との記載があった。
 しかし、その「コンメンタール マンション区分所有法」においても、「管理組合法人の事務のうち、保存行為については、法律上当然に、理事が決することができる」とあり、それなら理事が複数であっても、保存行為は理事が単独でできると矛盾を感じる。

 出題としても、不適切だ。



2 管理組合法人が共用部分を管理者として所有することについて、規約で定めることはできない。

〇 正しい。 管理所有の規定は、管理組合法人には準用されていない。
 平成26年 管理業務主任者試験 「問37」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問7」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問8」 、 平成19年 管理業務主任者試験 「問36」 

 共用部分を管理者として所有するは、管理所有と呼ばれて、区分所有法第27条
 「(管理所有)
 第二十七条  管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。
 2  第六条第二項及び第二十条の規定は、前項の場合に準用する。

 とあります。
 管理所有の詳細については、「問5」 を参考にしてください。

 そこで、管理組合が法人になると、「問8」 で引用しました、区分所有法第47条11項
 「11  第四節及び第三十三条第一項ただし書(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。)の規定は、管理組合法人には、適用しない。
 とあり、具体的には、
 「第4節:管理者 第25条 〜 第29条の全部
   第25条:選任及び解任、
   第26条:権限、
 
   第27条:管理所有、 
   第28条:委任の規定の準用、 
   第29条:区分所有者の責任等
  と
  第33条1項但し書き:
 規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又は その代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。」
 が、管理組合法人には、適用しませんから、
第27条の管理所有の準用はなく、「共用部分を管理者として所有するについて、規約で定めることはできない」は正しい。


3 管理組合法人の事務のうち保存行為を除く事務に関しては、集会の決議につき特別の定数が定められている事項及び義務違反者に対する訴訟を提起するために集会決議が求められている事項を除き、規約の定めにより、理事その他の役員で決することができる。

〇 正しい?
 平成24年 管理業務主任者試験 「問34」
 
 選択肢1での設問と絡むと「保存行為」がかなり問題となるが、ここは単純に、区分所有法第52条
 
「(事務の執行)
 第五十二条  
管理組合法人の事務は、この法律に定めるもののほか、すべて集会の決議によつて行う。ただし、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項及び第五十七条第二項に規定する事項を除いて、規約で、理事その他の役員が決するものとすることができる。
 2  前項の規定にかかわらず、保存行為は、理事が決することができる。
」 

 とあり
 引用されている第57条2項は、
 
「(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
 第五十七条  区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
 2  前項の規定に基づき訴訟を提起するには、
集会の決議によらなければならない
 3  管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
 4  前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。」

 です。
 区分所有法第52条2項及び1項によれば、管理組合法人の事務のうち保存行為を除く事務に関しては、集会の決議につき特別の定数が定められている事項及び義務違反者に対する訴訟を提起するために集会決議が求められている事項を除き、規約の定めにより、理事その他の役員で決することができるは、正しいとなるが、選択肢1との関係で、おかしな設問ではある。



4 管理組合法人が、支払不能による破産手続開始を申し立てられても、それをもって直ちに解散する事由にはあたらない。

〇 正しい。
 平成28年 管理業務主任者試験 「問36」 、 平成26年 マンション管理士試験 「問3」 、 平成23年 マンション管理士試験 「問7」 、平成19年 マンション管理士試験 「問11」 

 管理組合法人の解散事由は、区分所有法第55条
 「(解散)
 第五十五条  管理組合法人は、次の事由によつて解散する。
   一  建物(一部共用部分を共用すべき区分所有者で構成する管理組合法人にあつては、その共用部分)の全部の滅失
   二  建物に専有部分がなくなつたこと。
   三  集会の決議
 2  前項第三号の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。」 
 
 とあり、
 単に、 支払不能による破産手続開始を申し立てられても、それをもって
直ちに解散する事由にはあたらないため、正しい

 


答え:1?

《タグ》区分所有法。 法人の保存行為と理事。管理者の規定の除外。解散事由。

 なるほど確かにある受験生がいうように、難しい。 選択肢1と選択肢3が矛盾している?
 古い民法のテキストも参考にしないと解説できない。図書館で勉強してきます。→ 勉強したが、法人で複数の理事がいても保存行為は、各理事が行えると考える方が自然だ。


 *ある受験生の感想:、何度読んでも、全てが「正しい」としか考えられず、出題ミスとさえ思ってしまいました。
  あえて言うなら、選択肢2、及び4は絶対正解ではないし、どれかと言われれば、選択肢1か3のどちらかでした。選択肢3の問題文が一番長いので、もしかしたら、その中の誤った点を見逃してしまったのか?と思い選択肢3を選んでしまいました。

問10

〔問 10〕マンション内で共同利益背反行為を行っている占有者に対して、区分所有者の全員が集会の決議により訴えを提起しようとする場合に関する次の記述のうち、区分所有法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 専有部分を賃借している占有者の共同利益背反行為による共同生活上の障害が著しく、行為の停止を求める請求によってはその障害を除去して共同生活の維持を図ることが困難であるときは、賃借人に対し、相当の期間の賃借人による専有部分の使用の禁止を請求することができる。

X 誤っている。 行為の停止等では問題が解決できない賃借人(占有者)に対しては、もう使用禁止はなく、専有部分の引渡ししかない。 
 平成26年 マンション管理士試験 「問8」 、平成24年 マンション管理士試験 「問26」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問10」 、 平成13年 マンション管理士試験 「問5」 。 平成28年 管理業務主任者試験 「38」 でも出ている。

  マンション生活では、戸建てと異なって密着した共同生活があるため、「共同の利益背反行為(区分所有法第6条参照)」をするとその義務違反者に対して
   @行為の停止等(区分所有法第57条参照)
   A使用の禁止(区分所有法第58条参照)
   B区分所有権の競売(区分所有法第59条参照)
  の請求が認められ、占有者に対しても、行為の停止を求めることはできますが(区分所有法第57条4項参照)、行為の停止を求める請求によってはその障害を除去して共同生活の維持を図ることが困難であるときとなると、区分所有者なら、使用の禁止の方法(区分所有法第58条)も認められていますが、占有者に対しては、使用の禁止の方法はなく、専有部分の引渡し請求(区分所有法第60条参照)となりますから、誤りです。

◎ 義 務 違 反 者 に 対 す る 措 置
条文 内容 対象者 裁判 訴えの決議 弁明の機会
第57条 行為の停止 区分所有者、占有者 外、上 過半数(普通決議) 共に与えなくていい
第58条 使用禁止 区分所有者 3/4以上(特別多数決議) 区分所有者に与える
第59条 競売 区分所有者 3/4以上(特別多数決議) 区分所有者に与える
第60条 引渡し 占有者 3/4以上(特別多数決議) 占有者に与える

 参考:、区分所有法第60条
 
「(占有者に対する引渡し請求)
 第六十条  
第五十七条第四項に規定する場合において、第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求することができる。
 2  第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、第五十八条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
 3  第一項の規定による判決に基づき専有部分の引渡しを受けた者は、遅滞なく、その専有部分を占有する権原を有する者にこれを引き渡さなければならない。」

 

2 占有者が専有部分の転借人であるときに、専有部分の賃貸借契約を解除し、専有部分の引渡しを請求するためには、転貸人と転借人に加え、原賃貸人である区分所有者を共同被告として、訴えを提起しなければならない。

X 誤っている。 正当な方法による転借契約なら、転貸人と転借人が共同被告で、原貸主である区分所有者は、被告にはならない。
 平成24年 マンション管理士試験 「問26」 。
 

 選択肢1で参考にしました、区分所有法第60条により、専有部分の賃貸借契約を解除し、専有部分の引渡しを請求するためには、転貸借(また貸し)の場合には、問題を起こしている占有者は、転借人となりますから、この場合には、転貸人と転借人との契約の解除が必要となります。そこで、共同被告は、転貸人と転借人になり、元の区分所有者(賃貸人)は、該当しませんから、誤りです。


3 専有部分を区分所有者から賃借している占有者に対して、原告ではなく、賃貸人である区分所有者に対して専有部分を直接に引き渡すよう求めることはできない。

〇 正しい。 
  裁判の判決で求めるのは、賃貸借契約の解除と、原告(管理組合等)に、その専有部分の引渡しを求めることになりますから、賃貸人である区分所有者に対して専有部分を直接に引き渡すよう求めることはできず、正しい。
  それでは、賃貸人である区分所有者に専有部分が戻ってこないではないかという疑念がわけば、あなたは、かなり勉強をしています。
 その疑念に対して、区分所有法第60条3項
 「3  第一項の規定による判決に基づき専有部分の引渡しを受けた者は、遅滞なく、その専有部分を占有する権原を有する者にこれを引き渡さなければならない。」
 とあり、
 この規定により、その専有部分を占有する権原を有する者である賃貸人(区分所有者)に専有部分が引き渡されます。
 なお、転貸借なら、転貸人に引き渡されます。



4 区分所有者及び区分所有者から専有部分を賃借している占有者に対して、専有部分の賃貸借契約を解除し、専有部分の引渡しを求める訴えを提起するための決議をするには、あらかじめ区分所有者に対して弁明の機会を与えなければならない。

X 誤っている。 弁明の機会は、問題を起こしている占有者与えればよく、区分所有者には与えなくてよい。
 平成28年 管理業務主任者試験 「問38」  、平成25年  管理業務主任者試験 「問39」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問26」  平成22年 管理業務主任者試験 「問30」 、 平成14年 マンション管理士試験 「問5」 。

 区分所有法第60条2項に
 「2  第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、第五十八条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
 とあり、
 準用されている第57条3項は
 「管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。」
 で、
 第58条2項及び3項とは
 「2 前項の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。
  
3 第一項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない
 です。
 弁明の機会は、第58条3項が該当します。
 この条文は、占有者が対象で、この決議(契約解除や室の引渡し)に際しては、占有者に弁明の機会はあたえても、義務違反をしていない区分所有者に弁明の機会を与える必要ない、というのが 昭和62年7月17日の最高裁判所の判例 ですから、あらかじめ区分所有者に対して弁明の機会を与える必要はなく、誤りです。



答え:3

《タグ》区分所有法。 共同利益背反。 賃貸借。 転貸借。 弁明の機会。
    ここは、過去問題をやっていれば、易しい


 *ある受験生の感想:選択肢4を選んだ。選択肢4で弁明の機会を与えるのは占有者。ケアレスミスに近い。

問11

〔問 11〕一団地内に専有部分のあるA棟及びB棟の2棟の建物がある。区分所有法 第 70 条に基づき、この団地内の建物の一括建替え決議を行おうとする場合に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、 A棟及びB棟が所在する土地は、団地建物所有者の共有に属しており、その共有者全員で構成する団地管理組合(区分所有法第 65 条の団地建物所有者の団体をいう。)において、団地管理組合の規約が定められているものとする。

1 一括建替え決議を行う場合の議決権割合は、団地管理組合の規約に議決権割合に関する別段の定めがある場合にはその定めによる。

X 誤っている。 議決権割合は、規約での別段の定めを認めていない。敷地の持分の割合による。
 平成19年 管理業務主任者試験 「問38」 、平成18年 マンション管理士試験 「問11」 、 平成17年 マンション管理士試験 「問12」 平成16年 マンション管理士試験 「問11」 。
 
 団地での建物の一括建替え決議は、区分所有法第70条
 「(団地内の建物の一括建替え決議)
 第七十条  団地内建物の全部が専有部分のある建物であり、かつ、当該団地内建物の敷地(団地内建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により団地内建物の敷地とされた土地をいい、これに関する権利を含む。以下この項及び次項において同じ。)が当該団地内建物の区分所有者の共有に属する場合において、当該団地内建物について第六十八条第一項(第一号を除く。)の規定により第六十六条において準用する第三十条第一項の規約が定められているときは、第六十二条第一項の規定にかかわらず、当該団地内建物の敷地の共有者である当該団地内建物の区分所有者で構成される第六十五条に規定する団体又は団地管理組合法人の集会において、
当該団地内建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、当該団地内建物につき一括して、その全部を取り壊し、かつ、当該団地内建物の敷地(これに関する権利を除く。以下この項において同じ。)若しくはその一部の土地又は当該団地内建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地(第三項第一号においてこれらの土地を「再建団地内敷地」という。)に新たに建物を建築する旨の決議(以下この条において「一括建替え決議」という。)をすることができる。ただし、当該集会において、当該各団地内建物ごとに、それぞれその区分所有者の三分の二以上の者であつて第三十八条に規定する議決権の合計の三分の二以上の議決権を有するものがその一括建替え決議に賛成した場合でなければならない。
 2  
前条第二項の規定は、前項本文の各区分所有者の議決権について準用する。この場合において、前条第二項中「当該特定建物の所在する土地(これに関する権利を含む。)」とあるのは、「当該団地内建物の敷地」と読み替えるものとする。
 3  団地内建物の一括建替え決議においては、次の事項を定めなければならない。
   一  再建団地内敷地の一体的な利用についての計画の概要
   二  新たに建築する建物(以下この項において「再建団地内建物」という。)の設計の概要
   三  団地内建物の全部の取壊し及び再建団地内建物の建築に要する費用の概算額
   四  前号に規定する費用の分担に関する事項
   五  再建団地内建物の区分所有権の帰属に関する事項
 4  第六十二条第三項から第八項まで、第六十三条及び第六十四条の規定は、団地内建物の一括建替え決議について準用する。この場合において、第六十二条第三項中「前項第三号及び第四号」とあるのは「第七十条第三項第四号及び第五号」と、同条第四項中「第一項に規定する」とあるのは「第七十条第一項に規定する」と、「第三十五条第一項」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項」と、「規約」とあるのは「第六十六条において準用する第三十条第一項の規約」と、同条第五項中「第三十五条第一項」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項」と、同条第七項中「第三十五条第一項から第四項まで及び第三十六条」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項から第四項まで及び第三十六条」と、「第三十五条第一項ただし書」とあるのは「第六十六条において準用する第三十五条第一項ただし書」と、同条第八項中「前条第六項」とあるのは「第六十一条第六項」と読み替えるものとする。」
 

 とあります。
 
 

 そこで設問の「議決権の割合」は、
 「当該団地内建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数」とあり、
 区分所有法第70条2項
 
「2  前条第二項の規定は、前項本文の各区分所有者の議決権について準用する。この場合において、前条第二項中「当該特定建物の所在する土地(これに関する権利を含む。)」とあるのは、「当該団地内建物の敷地」と読み替えるものとする。 」
 により、準用されています、前条の区分所有法第69条2項の規定は、
 「2  前項の集会における各団地建物所有者の議決権は、第六十六条において準用する第三十八条の規定にかかわらず、第六十六条において準用する第三十条第一項の規約に別段の定めがある場合であつても、当該特定建物の所在する土地(これに関する権利を含む。)の持分の割合によるものとする。
 とあり、
 規約での別段の定めを認めていませんから、誤りです。土地の持分の割合です。



2 A棟の区分所有者Cが一括建替え決議に賛成しなかったときには、一括建替決議に賛成した B棟の区分所有者Dは、 Cに対して、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。

〇 正しい。 別棟の区分所有者であっても、区分所有権等の売渡し請求はできる。

 選択肢1で引用しました、区分所有法第70条4項により、第62条と第63条及び第64条の数項が準用されています。
 具体的には、 

◎準用されている条文
No. 条文 内容
第62条3項〜8項 建替え決議の衡平、招集の通知、議案の要領、説明会の開催、議事録
第63条第64条 建替えの参加、売渡請求、建替えの合意
 です。

 設問の「区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきこと」は、第63条4項にあり、
 「4  第二項の期間が経過したときは、
建替え決議に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)又はこれらの者の全員の合意により区分所有権及び敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者(以下「買受指定者」という。)、同項の期間の満了の日から二月以内に、建替えに参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含む。)に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。建替え決議があつた後にこの区分所有者から敷地利用権のみを取得した者(その承継人を含む。)の敷地利用権についても、同様とする。」
 とあり、
 一括建替決議に賛成した B棟の区分所有者Dは、 棟が違うA棟の区分所有者Cに対しても、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができますから、正しい。 



3 団地建物所有者の集会において、団地内建物の区分所有者及び議決権の各 5 分の 4以上の多数の賛成を得るとともに、 A棟及びB棟ごとについて、区分所有者の 3分の 2以上の者であつて議決権の合計の 3分の 2以上の議決権を有するものが賛成することが必要である。

〇 正しい。
 選択肢1で引用しました区分所有法第70条1項によれば、団地内での建物の一括建替え決議には
 ・団地管理組合(法人を含む)の集会で全区分所有者およびその議決権(土地の持分の割合)の各 4/5以上の多数で一括の建替え決議を行うこと、
  かつ
 ・各棟ごとに区分所有者およびその議決権(その棟の専有部分の床面積割合)の2/3以上の賛成があること、
  が必要ですから、正しい。



4 一括建替え決議においては、団地内建物の全部の取壊し及び再建団地内建物の建築に要する費用の概算額に加え、その費用の分担に関する事項を定める必要がある。

〇 正しい。
 一括建替え決議において定める事項は、
 選択肢1で引用しました区分所有法第70条3項によれば、
 「3  団地内建物の一括建替え決議においては、次の事項を定めなければならない。
   一  再建団地内敷地の一体的な利用についての計画の概要
   二  新たに建築する建物(以下この項において「再建団地内建物」という。)の設計の概要
   
三  団地内建物の全部の取壊し及び再建団地内建物の建築に要する費用の概算額
   
四  前号に規定する費用の分担に関する事項
   五  再建団地内建物の区分所有権の帰属に関する事項 」

 とあり、
 区分所有法第70条3項3号及び4号により、団地内建物の全部の取壊し及び再建団地内建物の建築に要する費用の概算額に加え、その費用の分担に関する事項を定める必要があるので、正しい。



答え:1

《タグ》区分所有法。 団地。一括建替え決議。 議決権
    団地で第70条の一括建替え決議からの出題は、最近は無かった。 基本的な部分を抑えていれば、易しい?

 *ある受験生の感想:選択肢2は棟をまたがってはできないとかと考えた。考え過ぎ。
   選択肢1は、団地議決権は一括建替えの場合でも規約で別段の定めができないことを知らなかった。

問12

〔問 12〕A、 B及びCは、等しい持分の割合で、甲マンション 201 号室の区分所有権を共有している。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 AとBは、 A、B及びCの間の協議に基づかずに 201 号室を単独で占有しているCに対し、 AとBの持分の価格が 201 号室の価格の過半数を超えるからといって、当然に同室の明渡しを請求することはできない。

〇 正しい。 当然ではなく、”その明渡を求める理由を主張し立証”が必要。
  平成28年 管理業務主任者試験 「問37」 、 平成27年 マンション管理士試験 「問14」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問3」 、平成24年 マンション管理士試験 「問12」 、平成21年 管理業務主任者試験 「問4」 、平成20年 マンション管理士試験 「問15」 、平成19年 管理業務主任者試験 「問5」

 まず、このような設問に対しては、図を書きましょう。
 こんな感じです。

 

 共有物の管理は、民法第252条
 「(共有物の管理)
 第二百五十二条  共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。」
 
 とあり、
 前条とは、民法第251条
 「(共有物の変更)
 第二百五十一条  各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」

 です。
 共有関係にあると、
  @
変更行為…変更だけでなく、全体を処分する(譲渡、抵当権の設定など)なら、全員の同意(合意)が必要で、
  A
管理行為…利用、改良、賃貸借契約の解除なら、持分価格の過半数で行い
  B
保存行為…現状維持、修繕、無権限の第三者に対する共有物の返還請求、などなら、各人ができる
 ということですが、何が管理行為で何が保存行為かの判断が難しく、基準は裁判での判例によります。 

 そして、設問の、共有者の一人であるCが単独で占有している行為は、民法第249条
 「(共有物の使用)
 第二百四十九条  各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。」

 とあり、
 この”持分に応じた使用”の規定にも関係し、Cには、共有者の一人として持分がありそれに基づく占有権があるので、単に過半数を超えるというだけで、他の共有者が明渡し請求ができるのかどうかで、争いがあり、昭和41年5月19日:最高裁判所の判決があります。
 それによると、持分の価格の過半数を超える共有者(多数持分権者)であっても、少数の持分を持っている共有者(少数持分権者)が単独に目的物を占有していても、”当然”には明渡しを求めることはできないと いうことです。
 当然ではなく、多数持分権者が少数持分権者に対して共有物の明渡を求めることができるためには、”その明渡を求める理由を主張し立証”しなければいけないとあります。
 よって、当然に同室の明渡しを請求することはできないは、正しい。



2 Aが 201 号室の持分権を放棄した場合には、 Aの持分権はBとCに帰属し、 同室は BとCの共有となる。

〇 正しい。
 平成26年 管理業務主任者試験 「問3」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問4」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問3」 、平成19年マンション管理士試験 「問6」 、 平成17年 管理業務主任者試験 「問4」 。
 
 設問は、区分所有法には関係なく、民法だけの規定に注意。
 持分放棄は、民法第255条
 「(持分の放棄及び共有者の死亡)
 第二百五十五条  
共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。」

 とあり、
 Aが持分を放棄すれば、そのAの持分は、BとCに帰属し、 よって同室は BとCの共有となりますから、正しい。

 参考:区分所有法第24条
 「(民法第二百五十五条 の適用除外)
 第二十四条  第二十二条第一項本文の場合には、民法第二百五十五条 (同法第二百六十四条 において準用する場合を含む。)の規定は、敷地利用権には適用しない。 」



3 Dが不法に 201 号室を占有している場合には、 Bは、単独でDに対して同室の明渡しを請求することができる。

〇 正しい。 保存行為なら、単独でできる。
 平成24年 マンション管理士試験 「問11」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問4」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問15」 、平成19年 管理業務主任者試験 「問5」 、平成16年 マンション管理士試験 「問14」 。
 
 選択肢1で説明しましたように、無権限者Dの占有に対しては、民法第252条に定める「
保存行為」と解されていて、共有者の一人であるBが単独で明渡し請求ができますから、正しい。


4 A、B及びCが 201 号室を Eに賃貸している場合において、 Eとの賃貸借契約を解除するためには、 A、B及びC全員が同意した上で、共同で解除の意思表示をする必要がある。

X 誤りである。 賃貸借契約の解除は、管理行為で、過半数でいい。
 共有物を目的とした賃貸借契約の解除は、選択肢1で説明しました、「共有物の管理」に該当し(最高裁判所:昭和39年2月25日)、各共有者の持分の価格の過半数があればよく、全員の同意は不要ですから、誤りです。


答え:4

《タグ》民法。 共有。 変更行為、管理行為、保存行為の違いと判例。 放棄。

   少し選択肢1が難しい。

問13

〔問 13〕Aは、甲マンション 503 号室を購入するに当たり、購入資金に充てるため の金銭を B銀行から借り受けた。その際、この借入金債務について、 Aの姉Cが、Bとの間で、 Aと連帯して保証する旨の契約(以下「本件保証契約」という。)を書面で結んだ。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 Aの委託を受けないで本件保証契約を結んだCは、 Aの委託がないことを理由に本件保証契約を取り消すことはできない。

〇 正しい。
 平成24年 管理業務主任者試験 「問5」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問6」 。
 
 

 まず、保証人は、主たる債務者の委託がなくても保証人になれます。
 それは、民法第462条
 「(委託を受けない保証人の求償権)
 第四百六十二条  
主たる債務者の委託を受けないで保証をした者が弁済をし、その他自己の財産をもって主たる債務者にその債務を免れさせたときは、主たる債務者は、その当時利益を受けた限度において償還をしなければならない。
 2  主たる債務者の意思に反して保証をした者は、主たる債務者が現に利益を受けている限度においてのみ求償権を有する。この場合において、主たる債務者が求償の日以前に相殺の原因を有していたことを主張するときは、保証人は、債権者に対し、その相殺によって消滅すべきであった債務の履行を請求することができる。」

 とあり、
 民法第462条1項によります。
 そして、保証人となると、民法第446条
 
「(保証人の責任等)
 第四百四十六条  
保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。
 2  
保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。
 3  保証契約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。」

 とあり、
 多くの場合、保証人は債務者に頼まれて保証人になりますが、保証契約は、保証人Cと債権者B銀行との間の契約であり、本人Aと保証人Cとの委託関係は考慮されないと解されていますから、保証人Cは、Aの委託がないことを理由に本件保証契約を取り消すことはできず、正しい。

 なお、保証契約は、書面でなされていますから、有効です。


2 Bが本件保証契約に基づいて債務の履行を Cに対して請求した場合に、 C は、 Aに弁済をする資力があり、かつ、 Aの財産に対する執行が容易であることを証明することによって、 Bの請求を拒むことができる。

X 誤っている。 連帯保証人は、催告と検索の抗弁権がない。
 平成25年 マンション管理士試験 「問13」 、平成24年 管理業務主任者試験 「問5」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問5」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問6」 。
 
 よく出題されますように、単なる「保証人」と「連帯保証人」には違いがあります。
 それが、 民法第454条
 
「(連帯保証の場合の特則)
 第四百五十四条  
保証人は、主たる債務者と連帯して債務を負担したときは、前二条の権利を有しない。」

 とあり、
 前二条とは、民法第452条
 「(催告の抗弁
 第四百五十二条  債権者が保証人に債務の履行を請求したときは、保証人は、
まず主たる債務者に催告をすべき旨を請求することができる。ただし、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき、又はその行方が知れないときは、この限りでない。」

 と、
 民法第453条
 
「(検索の抗弁
 第四百五十三条  債権者が前条の規定に従い主たる債務者に催告をした後であっても、
保証人が主たる債務者に弁済をする資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、債権者は、まず主たる債務者の財産について執行をしなければならない。」

 です。
 つまり、連帯保証人となると、債権者は債務者:本人がいても、債務者に請求をしないで、連帯保証人の方に請求が可能だという制度です。
 連帯保証人は、
  @催告の抗弁権 と
  A検索の抗弁権
 を持っていないということです。

  そこで、連帯保証人Cは、検索の抗弁権がなく、本人Aに弁済をする資力があり、かつ、 Aの財産に対する執行が容易であることを証明することによっても、債権者Bの請求を拒むことができませんから、誤りです。



3 AがBに対する借入金債務を承認したことによる時効の中断は、 Cに対してもその効力を生じ、本件保証契約に基づくCの債務についても時効の中断の効力が生じる。

〇 正しい。
 平成24年 管理業務主任者試験 「問5」 。

 主たる債務者と保証人との関係は、民法第457条
 「(主たる債務者について生じた事由の効力)
 第四百五十七条  
主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の中断は、保証人に対しても、その効力を生ずる
 2  保証人は、主たる債務者の債権による相殺をもって債権者に対抗することができる。」

 とあり、
 民法第457条1項の保証人には、連帯保証人も含み、債務者本人:Aが債権者のB銀行に対する借入金債務を承認したことによる時効の中断は、連帯保証人であるCに対してもその効力を生じますから、本件保証契約に基づくCの債務についても時効の中断の効力が生じるは、正しい。



4 Cは、 Aの委託を受けて本件保証契約を結んだ場合において、 Aに代わって Bに弁済をしたときは、 Aに対して求償権を取得する。

〇 正しい。

 委託を受けて保証契約をすると、民法第459条
 「(委託を受けた保証人の求償権)
 第四百五十九条  
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受け、又は主たる債務者に代わって弁済をし、その他自己の財産をもって債務を消滅させるべき行為をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対して求償権を有する
 2  第四百四十二条第二項の規定は、前項の場合について準用する。」

 とあり、
 民法第459条1項によれば、連帯保証人Cが本人Aに代わって債権者 Bに弁済をしたときは、 Aに対して求償権を取得しますから、正しい。
 なお、保証人が債務者の委任を受けて保証人になったときは、「委任事務の費用」となり、債務者の委任が無くて保証人になると「事務管理者の費用」となります。



答え:2

《タグ》民法。 連帯保証人。 催告の抗弁。検索の抗弁。

  ここは、連帯保証人には、催告の抗弁権と検索の抗弁権がないことをしっていれば、易しい。
  以前は、管理業務主任者試験から出ていた問題でした。

問14

〔問 14〕Aが所有し Bに賃貸し、かつ、Bが居住している甲マンシヨンの 301 号 室を、 AがCに2,000 万円で売却する契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法及び借地借家法(平成 3年法律第 90 号)の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

1 Cが売買契約締結時に解約手付として 200 万円を Aに支払った後、中間金と して 1,000 万円を支払った後でも、 Aが契約の履行の着手前であれば、 Cは 200 万円の手付を放棄して売買契約を解除し、中間金 1,000 万円の返還を請求することができる。

〇 正しい。 相手が履行の着手前なら、中間金を払っても、解約はできる。
 平成25年 マンション管理士試験 「問14」  、 平成24年 管理業務主任者試験 「問45」

  

 売買での手付金などの規定は、民法第557条
 「(手付)
 第五百五十七条  
買主が売主に手付を交付したときは、当事者の一方が契約の履行に着手するまでは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を償還して、契約の解除をすることができる。
 2  第五百四十五条第三項の規定は、前項の場合には、適用しない。」

 とあり、
 契約の履行に着手するまでであれば、
 @買主は手付の放棄
 A売主は、倍額の償還
 で売買契約を解除でき、通常中間金の支払は、履行の着手と考えられますが、まだ相手方Aが履行に着手していないため、買主の自分Cからは手付の放棄だけで、売買契約の解除ができ、中間金の返還請求ができますから、正しい。



2 AとBの賃貸借契約に基づき、 Bから Aに差し入れられた敷金の返還債務 は、 Bの同意がなければCに承継されない。

X 誤っている。 貸主が変更になると、当事者間で特約の無い限り、敷金関係は、新しい貸主に承継される。
 平成13年 マンション管理士試験 「問14」 。平成28年 管理業務主任者試験 問40」 も参考に。
 
 敷金が差し入れられていて、貸主に変更があると、
 最高裁判所の判決;昭和44年7月17日; があります。また、最高裁判所の判例;昭和48年2月2日 も参考に。
 それによると、
 「建物賃貸借契約において、該建物の
所有権移転に伴い賃貸人たる地位に承継があつた場合には、旧賃貸人に差し入れられた敷金は未払賃料債務があればこれに当然充当され、残額についてその権利義務関係が新賃貸人に承継される。」
 とあり
 賃借人Bの同意を必要とせず、敷金の返還債務は、新しい賃貸人Cに承継されますから、誤りです。



3 Aが、 Bの承諾を得ずに、 Cとの売買契約を締結したときは、 Aから Cへの 賃貸人の地位の移転を Bに主張することができない。

X 誤っている。 新賃貸人は、賃借人の承諾がなくても、賃貸人の地位を承継している。

  出題の意図が分からない?
  具体的には、賃貸借契約の性格から、債権と債務を含む契約での解除などを行えるのは、契約の当事者であり、新しく買った人が賃貸人としての地位を承継するのかということです。
 また、債務を第三者に移転するには、債務の相手方である賃借人の同意が必要かということでもあります。
  それに対しては、最高裁判所の判決;昭和39年8月28日; があります。
  それによると、
 「
自己の所有建物を他に賃貸している者が賃貸借継続中に右建物を第三者に譲渡してその所有権を移転した場合には、特段の事情のないかぎり、借家法一条の規定により、賃貸人の地位もこれに伴つて右第三者に移転するものと解すべき
 とあり、賃貸人の地位は新しい賃貸人に移転していますから、元の賃貸人Aから新しい賃貸人Cへ地位の移転は主張できます。
 では、その際に、賃借人Bの承諾(同意)が必要とされるかですが、
 さらに、最高裁判所の判決;昭和46年4月23日; では、土地の賃貸借ですが、
 「土地の賃貸借契約における賃貸人の地位の譲渡は、賃貸人の義務の移転を伴なうものではあるけれども、賃貸人の義務は賃貸人が何ぴとであるかによつて履行方法が特に異なるわけのものではなく、また、土地所有権の移転があつたときに新所有者にその義務の承継を認めることが
むしろ賃借人にとつて有利であるというのを妨げないから、一般の債務の引受の場合と異なり、特段の事情のある場合を除き、新所有者が旧所有者の賃貸人としての権利義務を承継するには、”賃借人の承諾を必要とせず”、旧所有者と新所有者間の契約をもつてこれをなすことができると解するのが相当である。」
 とあり、
 賃借人の承諾を必要としませんから、選択肢3は誤りです。



4 Bが有益費を支出した後に、 301 号室の所有権移転により賃貸人がAから C に交替したときは、特段の事情のない限り、 Aがその有益費の償還義務を引き続き有し、 Cはその償還義務を負わない。 

X 誤っている。 建物が譲渡されれば、償還義務は新賃貸人に移転する。
  平成23年 管理業務主任者試験 「問3」 平成18年 管理業務主任者試験 「問4」 、平成17年 マンション管理士試験 「問14」 、平成13年 マンション管理士試験 「問14」 。
 
 賃借人が出した費用は、民法第608条
 「(賃借人による費用の償還請求)
 第六百八条  賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
 
2  賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第百九十六条第二項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。」

 とあり
 必要費とは、物を保存・管理するための費用で、現状の建物価値を維持するための費用です。雨漏りの修繕、備付け給湯器、エアコンなどの修繕にかかった費用です。
 また、有益費とは、物件の価値を増加させる費用です。クロスの張り替え、トイレのウォシュレットへの変更などにかかった費用です。
 
 そこで、最高裁判所の判決;昭和46年2月19日; 
 「建物の賃借人または占有者が、原則として、賃貸借の終了の時または占有物を返還する時に、賃貸人または占有回復者に対し自己の支出した有益費につき償還を請求しうることは、民法六〇八条二項、一九六条二項の定めるところであるが、
有益費支出後、賃貸人が交替したときは、特段の事情のないかぎり、新賃貸人において旧賃貸人の権利義務一切を承継し、新賃貸人は右償還義務者たる地位をも承継するのであつて、そこにいう賃貸人とは賃貸借終了当時の賃貸人を指し、民法一九六条二項にいう回復者とは占有の回復当時の回復者を指すものと解する」 
 とあり、
 賃借人Bが出した有益費は、新賃貸人Cが旧賃貸人の権利義務を承継していますから、新賃貸人Cに償還義務があり、誤りです。



答え:1

《タグ》民法 、借地借家法 、判例。 手付 買主放棄 売主倍返し 。敷金返還義務。 地位の移転。 有益費。

  ここは、かなり難問。民法は、各種判例があるため、判例の内容についても勉強をすること。 解説では、判例のチェックで、ずいぶん時間がかかった。約3時間。

問15

〔問 15〕Aは、その所有する甲マンションの 101 号室を、敷金を 24 万円、月額賃料を 8万円として、法人である B社に賃貸し引き渡したが、 B社が初めて 1ヵ月分 の賃料の支払いを失念したため、 B社に対し、相当の期間を定めて 1ヵ月分の賃料及びこれに対する遅延損害金の支払いを催告するとともにその支払いがない場合には契約を解除する旨の意思表示をした。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Aの催告後、当該「相当の期間」が経過しても賃料及び遅延損害金の支払いがない場合には、当然に賃貸借契約は解除される。

X 誤っている。 履行遅滞での契約の解除は、”当然”にはできない場合が多い。
 平成27年 マンション管理士試験 「問12」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問15」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問6」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問2」 、 平成19年 管理業務主任者試験 「問1」 、平成16年 管理業務主任者試験 「問5」 、平成13年 管理業務主任者試験 「問2」 。

 履行遅滞での契約の解除は、民法第541条
 「(履行遅滞等による解除権)
 第五百四十一条  当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。 」

 とあり、
 条文をそのまま適用すれば、「相当の期間」が経過しても賃料及び遅延損害金の支払いがない場合には、契約は解除できますが、その際に、判例として、最高裁判所の判決;昭和39年7月28日
 「賃料不払を理由とする家屋賃貸借契約の解除が
信義則に反し許されないものとされた事例。 」
 にあるように、信義則や諸所の要件が備わっていることも要求されていて、設問のように、B社が初めて1ヵ月分 の賃料の支払いを失念したのような場合には、「
”当然”に賃貸借契約は解除される」は、誤りです。


2 B社は支払いを怠った賃料及び遅延損害金につき、敷金から控除することを Aに対し主張できる。

X 誤っている。 敷金からの控除は、賃借人からは主張できない。
  この設問は、判例;大審院昭和5年3月10日;です。(裁判検索にはなし)
 「
賃貸人においては、敷金を滞納賃料に充当することは自由であるが、賃借人又はその保証人からは、充当を主張することはできない
 とあり、
 賃借人であるB社からは、支払いを怠った賃料及び遅延損害金につき、敷金から控除することは主張できませんから、誤りです。



3 Aの催告後、「相当の期間」が経過する前に、 B社が8万円を Aに支払ったとき、 A及びB社間において充当についての合意がなく、かつ、両者のいずれからも充当の指定がない場合には、 B社の支払額は、まず遅延損害金に充当され、残額が賃料元本に充当される。

〇 正しい。
 滞納金の支払いは、民法第491条
 「(元本、利息及び費用を支払うべき場合の充当)
 第四百九十一条  債務者が一個又は数個の債務について元本のほか利息及び費用を支払うべき場合において、弁済をする者がその債務の全部を消滅させるのに足りない給付をしたときは、
これを順次に費用、利息及び元本に充当しなければならない
 2  第四百八十九条の規定は、前項の場合について準用する。」

 とあり、
 弁済額は
  @費用
  A利息
  B元本 
 の順で充当されます。
 準用されている民法第489条は
 「(法定充当)
 第四百八十九条  弁済をする者及び弁済を受領する者がいずれも前条の規定による
弁済の充当の指定をしないときは、次の各号の定めるところに従い、その弁済を充当する。
   一  債務の中に弁済期にあるものと弁済期にないものとがあるときは、弁済期にあるものに先に充当する。
   二  すべての債務が弁済期にあるとき、又は弁済期にないときは、債務者のために弁済の利益が多いものに先に充当する。
   三  債務者のために弁済の利益が相等しいときは、弁済期が先に到来したもの又は先に到来すべきものに先に充当する。
   四  前二号に掲げる事項が相等しい債務の弁済は、各債務の額に応じて充当する。」

 でまた、 前条とは、民法第488条で
 「(弁済の充当の指定)
 第四百八十八条  債務者が同一の債権者に対して同種の給付を目的とする数個の債務を負担する場合において、弁済として提供した給付がすべての債務を消滅させるのに足りないときは、弁済をする者は、給付の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。
 2  弁済をする者が前項の規定による指定をしないときは、弁済を受領する者は、その受領の時に、その弁済を充当すべき債務を指定することができる。ただし、弁済をする者がその充当に対して直ちに異議を述べたときは、この限りでない。
 3  前二項の場合における弁済の充当の指定は、
相手方に対する意思表示によってする。」

 です。
 これらにより、
 A及びB社間において充当についての合意がなく、かつ、両者のいずれからも充当の指定がない場合には、 B社の支払額は、まず遅延損害金に充当され、残額が賃料元本に充当されるは、正しい。



4 AとB社間の賃貸借契約において、賃料の支払いに関し、年 30% の遅延損害金を定めていた場合、 B社は、遅延損害金全額の支払いを免れる。

X 誤っている。 高額の年30%でも認められる。
 平成26年 管理業務主任者試験 「問10」 、 平成14年 管理業務主任者試験 「問4」 。 平成28年 マンション管理士試験 「問33」 選択肢4 もあり。

 まず、損害賠償額の予定は、民法第420条
 
「(賠償額の予定)
 第四百二十条  
当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。この場合において、裁判所は、その額を増減することができない。
 2  賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
 3  違約金は、賠償額の予定と推定する。 」

 とあり、
 賃貸借契約においても、遅延損害金を定めることができます。
 基本的には、契約自由の原則と利息自由の原則により、利率は、当事者が自由に設定できます。
 そこで、設問の利息の30%ですが、これは、遅延損害金の最高金利は、消費者契約法では年14.6%(第9条2項)、利息制限法では年29.2%(第4条)との関係を聞いています。
 消費者契約法が対象としているのは、個人と事業者であり、
B社は、該当しません
 また、利息制限法は、金銭を目的とする消費貸借の場合に限り適用されますから、賃貸借契約には適用がありません。
 したがって、年30%の遅延損害金を定めても、B社は支払いを免れず、誤りです。
 参考:民法第404条
 「(法定利率)
 
第四百四条  利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。」
 とあり、別に決めていないと、年5%です。



答え:3

《タグ》民法。 遅延損害金。 敷金からの控除。 充当。 高額な利息。

    この設問も解説に時間がかかる! 約2時間。 1日に2問程度しか解説ができない。

問16

〔問 16〕Aがその所有する甲マンションの 301 号室を、 Bに事務所として賃貸した ところ、 Bの事業の執行中に従業員 Cの過失により同室で火災が発生し、当該火災により、同室及びその直下のD所有の 201 号室にそれぞれ損害が生じた。この場合 に関する次の記述のうち、民法及び失火ノ責任二関スル法律(明治 32 年法律第 40号)の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。

1 当該火災が成年 Cの重過失による場合には、 BのCに対する監督についての過失の有無にかかわらず、 Dは、 Cに対し、損害賠償を請求することができる。

〇 正しい。 重過失があれば、成年の失火者は責任を問われる。
 失火ノ責任二関スル法律と民法の不法行為の賠償の関係です。
 過去に出題例があります。 平成19年 マンション管理士試験 「問15」. 、 平成26年 マンション管理士試験 「問14」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問16」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問16」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問12」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問17」 他多数。不法行為と使用者責任を絡めた出題は毎年のように出題がある。


 
 
 まず、失火ノ責任二関スル法律 は、 1条だけで、
 
「民法第七百九条 ノ規定ハ失火ノ場合ニハ之ヲ適用セス但シ失火者ニ重大ナル過失アリタルトキハ此ノ限ニ在ラス」
 とあり、引用されています、民法第709条とは
 「(不法行為による損害賠償)
 第七百九条  
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

 です。
 つまり、 通常、故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負いますが、
失火については、重過失(重大な過失)があるときだけ、損害賠償の責任を負うということです。
 この規定は、火災に弱い木造家屋が多い日本では、火事による損害賠償は、個人の弁済能力を超えることが多いため、軽減しようとするものです。

 そして、設問では「使用者であるBのその従業員であるCに対する監督」との責任も聞いています。
 使用者責任ついては、民法第715条
 「(使用者等の責任)
 第七百十五条  
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
 2  使用者に代わって事業を監督する者も、前項の責任を負う。
 3  前二項の規定は、使用者又は監督者から被用者に対する求償権の行使を妨げない。 」

 です。
 使用者責任は、他人を使用して事業を営む者に対して、その被用者の加害行為について、賠償責任を負わせるものです。
 最近の判例では、第715条1項の「使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」の適用については、認めない傾向があります。

 そこで、設問の被用者Cの失火ですが、
被用者が「重大な過失によって失火」すれば、この場合には、使用者には、被用者の選任または監督について重大な過失がなくても賠償責任を負います。(最高裁判所の判決;昭和42年6月3日
 設問は、被害者Dが成年の加害者Cに対する損害賠償を聞いていますから、成年Cの重過失による場合には、 使用者BのCに対する監督についての過失の有無にかかわらず、 被害者Dは、 加害者Cに対し、損害賠償を請求することができますから、正しい。


 この設問は、最近は、平成28年12月22日に発生した新潟県は糸魚川市の駅前火災を考えると記憶に残りやすい。
 この火災での被害は約150棟、約4万uに及んでいる。火元は、中華店で、店主が鍋を空焚きして店を離れ、戻ってきたら火が出ていたという。
 そこで、中華店の店主に「重過失」があるのか、の検討と、あるなら不法行為としてその損害賠償額はどうなるのか、マンション管理士や管理業務主任者を志している人なら検討してください。


 


2 当該火災が 18 歳のCの重過失による場合において、 BのCに対する監督について重過失があるときは、 Dは、 Bに対し、損害賠償を請求することができる。

〇 正しい。
 つまらない引っ掛け的な「18歳」を出していますが、18歳の被用者Cの場合なら、使用者責任はあるのかということです。
 しかし、ここのポイントは「重過失の有無」です。
 通常、責任を弁識する知能の有無が問題とされるのは、12歳前後であり、18歳ならもう充分に責任を弁識する知能を有するとなります。
 設問は、選択肢1で説明しましたように、基本的に、被用者が「重大な過失によって失火」すれば、この場合には、使用者には、被用者の選任または監督について重大な過失がなくても賠償責任を負いますから、使用者Bが被用者Cに対する監督について重過失があるときとなると、完全に被害者Dは、使用者Bに対して、損害賠償を請求することができますから、正しい。



3 当該火災が成年 Cの重過失による場合には、 BのCに対する監督について重過失があるときに限り、 Dは、 Bに対し、損害賠償を請求することができる。

X 誤っている。 失火で被用者Cの重過失があれば、使用者責任は発生する。
 選択肢1で説明しましたように、失火が成年である被用者Cの重過失なら、使用者Bについて、重過失は必要とされていませんから、使用者Bの被用者Cに対する監督について重過失があるときに限りは、誤りです。


4 当該火災が成年Cの重大ではない過失による場合において、 BのCに対する監督について重大ではない過失があるときは、 Aは、 Bに対し、損害賠償を請求することができる。

〇 正しい。 失火では、賃貸人は、債務不履行を理由として、損害賠償の請求ができる。

 設問が変わって、今度は、賃貸人であるAが、賃借人Bの被用者Cの失火によって被った債務不履行による損害賠償ができるかということです。
 失火ノ責任二関スル法律は、不法行為に対して失火で「重大な過失」がなければ、下にある「201号室」に対する不法行為を理由とする損害賠償責任(第709条)を逃れられますが、損害が生じた「301号室」の賠償はどうなるのかということです。
  これに対しては、明治45年3月23日の大審院民事連合部判決で、
 「失火での責任はなくても、自己の過失によって賃貸人の所有権を侵害したものとして、民法第415条(債務不履行による損害賠償)
「 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。 」の適用をうける」
 とあります。
 そこで、被用者Cは賃借人Bの履行補助者となり、賃借人BのCの監督につき重大ではないが過失があれば、債務不履行となりますから、賃貸人Aは、賃借人Bに対し、損害賠償を請求することができるため、正しい



答え:3

《タグ》失火ノ責任二関スル法律 + 民法。 重過失の有無。 不法行為による損害賠償。 使用者責任。 債務不履行による損害賠償

  ここは、過去問題をやっていれば、解答は早い? でも、解説には時間がかかる!

問17

〔問 17〕甲マンションの 301 号室を所有する Aが死亡し、 Aの妻B及びAの子 Cが相続人である場合における次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 Bが、自己のためにAの相続の開始があったことを知った時から 3ヵ月(以下「熟慮期間」という。)以内に、相続の放棄をしても、熟慮期間内であれば相続の放棄を撤回することができる。

X 誤っている。 相続の承認や放棄は撤回できない。
 平成24年 マンション管理士試験 「問17」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問14」 、平成18年 管理業務主任者試験 「問5」 

  

 相続の承認、放棄は、民法第915条
 
「(相続の承認又は放棄をすべき期間)
 第九百十五条  
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
 2  相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。」

 とあり、
 相続人は、相続の開始があったことを知った時から三箇月以内(熟慮期間)に、
  @単純承認...無限に相続する。民法第920条
  A限定承認...相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をする。民法第922条
  B放棄......相続に関して、最初から相続人でなくなる。民法第938条
  をすることができます。
 そして、一度、単純承認、限定承認または放棄をしたならば、民法第919条
 「(相続の承認及び放棄の撤回及び取消し)
 第九百十九条  
相続の承認及び放棄は、第九百十五条第一項の期間内でも、撤回することができない。
 2  前項の規定は、第一編(総則)及び前編(親族)の規定により相続の承認又は放棄の取消しをすることを妨げない。
 3  前項の取消権は、追認をすることができる時から六箇月間行使しないときは、時効によって消滅する。相続の承認又は放棄の時から十年を経過したときも、同様とする。
 4  第二項の規定により限定承認又は相続の放棄の取消しをしようとする者は、その旨を家庭裁判所に申述しなければならない。」

 とあり、
 民法第919条1項により、相続の承認・放棄は「熟慮期間内(民法第915条1項)」でも撤回はできませんから、誤りです。



2 Cが、熟慮期間内に相続の承認又は放棄ができないときは、熟慮期間内に家庭裁判所に期間の伸長の届出をすれば、その期間は伸長される。

X 誤っている。 単に伸長の届出だけでは、熟慮期間は伸長されない。家庭裁判所の判断がある。
 選択肢1で引用しました民法第915条1項の但し書き
 「第九百十五条  相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。」
 とあり、
 利害関係人である相続人は、熟慮期間(自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月)の伸長を家庭裁判所に請求できますが、その伸長の判断は、家庭裁判所が行うため「期間の伸長の届出をすれば、その期間は伸長される」とはいえず、誤りです。



3 Bが、自らの熟慮期間内に甲マンションの 301 号室を、 Dに対して、賃貸期間を 2年とする定期建物賃貸借契約により賃貸したときには、熟慮期間内であっても相続の放棄をすることができない。

X 誤っている。 単純承認とみなされない行為がある。
 平成24年 マンション管理士試験 「問17」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問14」 
 
 相続人の行為によって単純承認とみなされる規定が、民法第921条
 
「(法定単純承認)
 第九百二十一条  
次に掲げる場合には、相続人は、単純承認をしたものとみなす。
   一  相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。
ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。
   二  相続人が第九百十五条第一項の期間内に限定承認又は相続の放棄をしなかったとき。
   三  相続人が、限定承認又は相続の放棄をした後であっても、相続財産の全部若しくは一部を隠匿し、私にこれを消費し、又は悪意でこれを相続財産の目録中に記載しなかったとき。ただし、その相続人が相続の放棄をしたことによって相続人となった者が相続の承認をした後は、この限りでない。」

 とあり、
 民法第921条1号で単純承認とみなされない第602条で定める期間を超えない賃貸とは、
 
「(短期賃貸借)
 第六百二条  処分につき行為能力の制限を受けた者又は処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。
   一  樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 十年
   二  前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 五年
   
三  建物の賃貸借 三年
   四  動産の賃貸借 六箇月」

 です。
 そこで、設問の相続人Bが熟慮期間内に相続財産である301号室を第三者であるDに賃貸期間を 2年とする定期建物賃貸借契約により賃貸したときは、民法第602条3号での「建物の賃貸借 三年」に該当し、この行為は第921条1号に規定する、「一  相続人が相続財産の全部又は一部を処分したとき。
ただし、保存行為及び第六百二条に定める期間を超えない賃貸をすることは、この限りでない。」の但し書きに該当していますから、相続人Bは、熟慮期間内であっても相続の放棄をすることができるため、誤りです。


4 Cは相続人として、その固有財産におけるのと同一の注意をもって甲マン ションの 301 号室を管理する義務を負うが、相続の承認をしたときは、この限りでない。

〇 正しい。
 相続財産の管理の注意義務なら、民法第918条
 
「(相続財産の管理)
 第九百十八条  
相続人は、その固有財産におけるのと同一の注意をもって、相続財産を管理しなければならない。ただし、相続の承認又は放棄をしたときは、この限りでない。
 2  家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。
 3  第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。」

 とあり、
 民法第918条1項によれば、 Cは相続人として、その固有財産におけるのと同一の注意をもって甲マン ションの 301 号室を管理する義務を負うが、相続の承認をしたときは、この限りでないは、正しい。
 注:「善良な管理者の注意義務(善管注意義務)」と「自己の財産に対するのと同一の注意義務」の違いは?



答え:4

《タグ》民法。 相続。 単純承認。限定承認。放棄。熟慮期間。 固有財産におけるのと同一の注意。

  かなりの難問。

 *ある受験生の感想:選択肢3を選んだ。選択肢4は自分のものになるので義務は負わないことは当たり前。選択肢3は相続と賃貸借契約は別物なのでこれも当たり前。ケアレスミスに近い。

問18

〔問 18〕区分建物の専有部分を規約による共用部分に変更した場合における、共用部分である旨の登記手続に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 共用部分である旨の登記は、当該共用部分である旨の登記をする区分建物の、所有権の登記名義人以外の者は申請することができない。

X 誤っている。 所有権の登記名義人以外にも、建物の表題部所有者も申請できる。

  平成26年 マンション管理士試験 「問18」 
 不動産登記法での用語を理解しておくこと。
 
 区分建物の専有部分であっても、規約があれば、共用部分(これは、規約共用部分と呼ばれます)として登記ができます。また登記をしていないと、第三者に対抗できません。
 なお、共用部分となると、規約共用部分であろうと、廊下や階段室のような法定共用部分であろうと個人での単独所有はできず、処分は専有部分と共になされます。
 その登記は、不動産登記法第58条
 「(共用部分である旨の登記等)
 第五十八条  
共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記に係る建物の表示に関する登記の登記事項は、第二十七条各号(第三号を除く。)及び第四十四条第一項各号(第六号を除く。)に掲げるもののほか、次のとおりとする。
   一  共用部分である旨の登記にあっては、当該共用部分である建物が当該建物の属する一棟の建物以外の一棟の建物に属する建物の区分所有者の共用に供されるものであるときは、その旨
   二  団地共用部分である旨の登記にあっては、当該団地共用部分を共用すべき者の所有する建物(当該建物が区分建物であるときは、当該建物が属する一棟の建物)
 
2  共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記は、当該共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記をする建物の表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。
 3  共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記は、当該共用部分又は団地共用部分である建物に所有権等の登記以外の権利に関する登記があるときは、当該権利に関する登記に係る権利の登記名義人(当該権利に関する登記が抵当権の登記である場合において、抵当証券が発行されているときは、当該抵当証券の所持人又は裏書人を含む。)の承諾があるとき(当該権利を目的とする第三者の権利に関する登記がある場合にあっては、当該第三者の承諾を得たときに限る。)でなければ、申請することができない。
 4  登記官は、共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記をするときは、職権で、当該建物について表題部所有者の登記又は権利に関する登記を抹消しなければならない。
 5  第一項各号に掲げる登記事項についての変更の登記又は更正の登記は、当該共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の所有者以外の者は、申請することができない。
 6  共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物について共用部分である旨又は団地共用部分である旨を定めた規約を廃止した場合には、当該建物の所有者は、当該規約の廃止の日から一月以内に、当該建物の表題登記を申請しなければならない。
 7  前項の規約を廃止した後に当該建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、当該建物の表題登記を申請しなければならない。」

 とあり、
 不動産登記法第58条2項によれば、 共用部分である旨の登記の申請ができるのは、
 @建物の表題部所有者 又は
 A所有権の登記名義人 
 ですから、所有権の登記名義人以外の者は申請することができないは、誤りです。


 
 なお、
 @建物の表題部所有者とは...一筆の土地または一個の建物ごとに作成される登記記録のにおいて、まだ所有権の保存の登記がされていない時点で、表題部に所有者として表示されている者が表題部所有者です。多くの場合、建築主が該当します。表題部には登記義務があります。表題部は物理的な現況を示しているだけで、権利関係を記録しませんから、所有者といってもこのままでは、原則;第三者に対抗はできません。
 A所有権の登記名義人とは...一筆の土地または一個の建物に関する登記記録において、不動産に関して”所有権を有する者”として記載されている者が所有権の登記名義人です。所有権は登記簿の「権利部」の甲区に記録されます。登記義務はなく、任意ですから、表題部所有者の名義とは異なることがあります。


2 共用部分である旨の登記は、当該共用部分である旨の登記をする区分建物に所有権の登記以外の権利に関する登記があるときでも、当該権利に関する登記に係る登記名義人の承諾を得ることなく申請することができる。

X 誤っている。 他人の権利を侵すことはことはできない。
 規約で共用部分の登記をする際に、登記簿に別の所有者が登記されていたり抵当権が記録されていると、選択肢1で引用しました、不動産登記法第58条3項
 「3  共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記は、当該共用部分又は団地共用部分である建物に所有権等の登記以外の権利に関する登記があるときは、当該権利に関する登記に係る権利の登記名義人(当該権利に関する登記が抵当権の登記である場合において、抵当証券が発行されているときは、当該抵当証券の所持人又は裏書人を含む。)の承諾があるとき(当該権利を目的とする第三者の権利に関する登記がある場合にあっては、当該第三者の承諾を得たときに限る。)でなければ、申請することができない。」 
 とあり、
  当該権利に関する登記に係る権利の登記名義人の承諾があるときでなければ、申請することができませんから、当該権利に関する登記に係る登記名義人の承諾を得ることなく申請することができるは、誤りです。



3 共用部分である旨の登記申請に際しては、当該区分建物について、表題部所有者の登記又は権利に関する登記の抹消についても申請しなければならない。

X 誤っている。 規約共用部分として登記されると、登記官が抹消する。
 規約共用部分として申請の際に、該当の登記の抹消手続きは、選択肢1で引用しました、不動産登記法第58条4項
 「4  登記官は、共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記をするときは、職権で、当該建物について表題部所有者の登記又は権利に関する登記を抹消しなければならない。 」
 とあり、
 該当の建物の表題部所有者の登記又は権利に関する抹消の登記は、登記官が行ってくれますから、申請は不要です。
 申請を忘れる人もいるでしょうから、この方が便利です。



4 共用部分である旨を定めた規約を廃止した場合には、当該区分建物の所有者は、当該規約の廃止の日から 1ヵ月以内に、当該区分建物の表題登記を申請しなければならない。

〇 正しい。
 共用部分である旨を定めた規約を廃止した場合も、選択肢1で引用しました、不動産登記法第58条6項
 「6  
共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物について共用部分である旨又は団地共用部分である旨を定めた規約を廃止した場合には、当該建物の所有者は、当該規約の廃止の日から一月以内に、当該建物の表題登記を申請しなければならない。」
 とあり、
 正しい。
 これでまた、建物の表題部が復活して、単独に処分できます。



答え:4

《タグ》不動産登記法。 規約共用部分の登記。 廃止。
    なお、このあたりの解説も、「マンション管理士 香川事務所」 が無料で提供しています、「超解説 区分所有法」第4条2項や、不動産登記法の概要にありますから、参考にしてください。

 *ある受験生の感想:選択肢3を選んだ。選択肢4は法律通り。選択肢3は権利の抹消は権利を持つ者の承認がない(抹消登記済み)でないと申請不可との条件あり?

問19

〔問 19〕マンション敷地売却組合(この問いにおいて「組合」という。)が施行するマンション敷地売却事業に関する次の記述のうち、マンションの建替え等の円滑化に関する法律(平成 14 年法律第 78 号)の規定によれば、正しいものはどれか。

1 総会の決議において、定款の変更のうち政令で定める重要な事項及び組合の解散についての事項は、組合員の議決権及び敷地利用権の持分の価格の各 4分の 3以上で決する。

〇 正しい。
 平成27年 マンション管理士試験 「問19」 。
 
 マンションの建替え等の円滑化に関する法律は、平成26年に新しく、マンション敷地売却組合の規定等が追加されています。
 総会の決議は、マンションの建替え等の円滑化に関する法律第128条
 「
(総会の決議事項)
 第百二十八条  次に掲げる事項は、総会の議決を経なければならない。
   
一  定款の変更
   二  資金計画の変更
   三  借入金の借入れ及びその方法並びに借入金の利率及び償還方法
   四  経費の収支予算
   五  予算をもって定めるものを除くほか、組合の負担となるべき契約
   六  賦課金の額及び賦課徴収の方法
   七  分配金取得計画及びその変更
   八  組合の解散
   九  その他定款で定める事項 」

 とあり、第128条1号の「定款の変更」については、また別の規定 第130条があります。
 
「(特別の議決)
 第百三十条  
第百二十八条第一号に掲げる事項のうち政令で定める重要な事項及び同条第八号に掲げる事項は、組合員の議決権及び敷地利用権の持分の価格の各四分の三以上で決する。

 とあり、
 定款の変更のうち政令で定める重要な事項及び組合の解散についての事項は、組合員の議決権及び敷地利用権の持分の価格の各 4分の 3以上で決しますから、正しい。



2 審査委員は、土地及び建物の権利関係又は評価について特別の知識経験を有し、かつ、公正な判断をすることができる者のうちから都道府県知事(市の区域内にあっては、当該市の長。以下「都道府県知事等」という。)が選任する。

X 誤っている。 審査委員は総会で選任する。 都道府県知事ではない。
 こんな規定までは知りませんが、マンションの建替え等の円滑化に関する法律第136条に
 「(審査委員)
 第百三十六条  組合に、この法律及び定款で定める権限を行わせるため、審査委員三人以上を置く。
 
2  審査委員は、土地及び建物の権利関係又は評価について特別の知識経験を有し、かつ、公正な判断をすることができる者のうちから総会で選任する
 3  前二項に規定するもののほか、審査委員に関し必要な事項は、政令で定める。」

 とあり、
 第136条2項によれば、 審査委員は総会で選任するとのことで、都道府県知事(市の区域内にあっては、当該市の長。以下「都道府県知事等」という。)が選任するは、誤りです。



3 マンション敷地売却合意者は、 5人以上共同して、定款及び事業計画を定め、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事等の認可を受けて組合を設立することができる。

X 誤っている。 定款及び”事業計画”ではなく、定款及び”資金計画”。
 さらっと読むと、正しいと思えますが、マンションの建替え等の円滑化に関する法律第120条
 「(設立の認可)
 第百二十条  第百八条第十項において読み替えて準用する区分所有法第六十四条の規定によりマンション敷地売却決議の内容によりマンション敷地売却を行う旨の合意をしたものとみなされた者(マンションの区分所有権又は敷地利用権を有する者であってその後に当該マンション敷地売却決議の内容により当該マンション敷地売却を行う旨の同意をしたものを含む。以下「マンション敷地売却合意者」という。)は、
五人以上共同して、定款及び資金計画を定め、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事等の認可を受けて組合を設立することができる。
 2  前項の規定による認可を申請しようとするマンション敷地売却合意者は、組合の設立について、マンション敷地売却合意者の四分の三以上の同意(同意した者の区分所有法第三十八条の議決権の合計がマンション敷地売却合意者の同条の議決権の合計の四分の三以上であり、かつ、同意した者の敷地利用権の持分の価格の合計がマンション敷地売却合意者の敷地利用権の持分の価格の合計の四分の三以上となる場合に限る。)を得なければならない。
 3  前二項の場合において、マンションの一の専有部分が数人の共有に属するときは、その数人を一人のマンション敷地売却合意者とみなす。」

 とあり、
 第120条1項によれば、「五人以上共同して、定款及び
”資金計画”を定め」であり、「定款及び”事業計画”を定め」は、誤りです。


4 組合員及び総代は、書面又は代理人をもって、議決権及び選挙権を行使することができる。

X 誤りである。 総代は書面だけ。
 ここも、まったく正しいと思いますが、総代に代理人が認められるか、から少しは分かる。
 マンションの建替え等の円滑化に関する法律第133条
 「(議決権及び選挙権)
 第百三十三条  組合員及び総代は、定款に特別の定めがある場合を除き、各一個の議決権及び選挙権を有する。
 
2  組合員は書面又は代理人をもって、総代は書面をもって、議決権及び選挙権を行使することができる。
 3  組合と特定の組合員との関係について議決をする場合には、その組合員は、議決権を有しない。
 4  第二項の規定により議決権及び選挙権を行使する者は、第百二十九条及び第百三十一条第四項において準用する第二十九条第一項の規定の適用については、出席者とみなす。
 5  代理人は、同時に五人以上の組合員を代理することができない。
 6  代理人は、代理権を証する書面を組合に提出しなければならない。」

 とあり、
 第133条2項によれば、
 @組合員は書面又は代理人をもって、
 
A総代は書面をもって
 議決権及び選挙権を行使することができる、とあり、総代が議決権や選挙権を行使するには、書面だけで、代理人は認められていませんから、 組合員及び総代は、書面又は代理人をもって、議決権及び選挙権を行使することができるは、誤りです。



答え:1

《タグ》マンションの建替え等の円滑化に関する法律。 総会の決議。 審査委員の選任。 議決権の行使。
 知らない条文からの出題で、しかも、もっともらしい文章で正誤の判断が難しい。でも、選択肢3のような出題方法は、隅を突っつく出題で、出題者としてのプライドを欠いた方法で、実に不適切な出題です。

 *ある受験生の感想:選択肢4を選んだ。〇候補として選択肢1及び肢4があり肢4としたが肢1が正解。円滑化法では「組合員は書面又は代理人をもって、総代は書面をもって、議決権及び選挙権を行使することができる」とあり、総代は代理人を指定して議決権を行使できない。当たり前ではあるが見落とした。

問20

〔問 20〕都市計画法(昭和 43 年法律第 100 号)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 都道府県が定めた都市計画が、市町村が定めた都市計画と抵触するときは、その限りにおいて、市町村が定めた都市計画が優先するものとされている。

X 誤っている。 都道府県が定めた都市計画が優先する。 市町村ではない。
 都市計画法は改正が多く、そのために条文が体系だっていないので、勉強にあたってはノートでしっかりと纏めておくこと。
 また、例年1問はでます。 、参考:出題分析。  平成27年 マンション管理士試験 「問21」 平成26年マンション管理士試験 「問21」、 平成25年マンション管理士試験 「問21」平成24年マンション管理士試験 「問21」平成23年マンション管理士試験 「問21」、など。 

 まず、
「都市計画」とは、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画で、次章の規定に従い定められたものをいう。(第4条1項)
 そして、都市計画法第15条
 「(都市計画を定める者)
 第十五条  
次に掲げる都市計画は都道府県が、その他の都市計画は市町村が定める
   一  都市計画区域の整備、開発及び保全の方針に関する都市計画
   二  区域区分に関する都市計画
   三  都市再開発方針等に関する都市計画
   四  第八条第一項第四号の二、第九号から第十三号まで及び第十六号に掲げる地域地区(同項第四号の二に掲げる地区にあつては都市再生特別措置法第三十六条第一項の規定による都市再生特別地区に、第八条第一項第九号に掲げる地区にあつては港湾法 (昭和二十五年法律第二百十八号)第二条第二項 の国際戦略港湾、国際拠点港湾又は重要港湾に係るものに、第八条第一項第十二号に掲げる地区にあつては都市緑地法第五条 の規定による緑地保全地域(二以上の市町村の区域にわたるものに限る。)、首都圏近郊緑地保全法 (昭和四十一年法律第百一号)第四条第二項第三号 の近郊緑地特別保全地区及び近畿圏の保全区域の整備に関する法律(昭和四十二年法律第百三号)第六条第二項 の近郊緑地特別保全地区に限る。)に関する都市計画
   五  一の市町村の区域を超える広域の見地から決定すべき地域地区として政令で定めるもの又は一の市町村の区域を超える広域の見地から決定すべき都市施設若しくは根幹的都市施設として政令で定めるものに関する都市計画
   六  市街地開発事業(土地区画整理事業、市街地再開発事業、住宅街区整備事業及び防災街区整備事業にあつては、政令で定める大規模なものであつて、国の機関又は都道府県が施行すると見込まれるものに限る。)に関する都市計画
  七  市街地開発事業等予定区域(第十二条の二第一項第四号から第六号までに掲げる予定区域にあつては、一の市町村の区域を超える広域の見地から決定すべき都市施設又は根幹的都市施設の予定区域として政令で定めるものに限る。)に関する都市計画
 2  市町村の合併その他の理由により、前項第五号に該当する都市計画が同号に該当しないこととなつたとき、又は同号に該当しない都市計画が同号に該当することとなつたときは、当該都市計画は、それぞれ市町村又は都道府県が決定したものとみなす。
 3  市町村が定める都市計画は、議会の議決を経て定められた当該市町村の建設に関する基本構想に即し、かつ、都道府県が定めた都市計画に適合したものでなければならない。
 
4  市町村が定めた都市計画が、都道府県が定めた都市計画と抵触するときは、その限りにおいて、都道府県が定めた都市計画が優先するものとする。
 とあり、
 都市計画法第15条4項によれば、「市町村が定めた都市計画が、都道府県が定めた都市計画と抵触するときは、その限りにおいて、都道府県が定めた都市計画が優先するものとする」とあり、「市町村が定めた都市計画が優先するもの」とされていないため、誤りです。



2 都市計画区域のうち、市街化調整区域内においては、地区計画を定めることができない。

X 誤っている。 市街化調整区域内においても、地区計画を定めることができる。
 都市計画法等の改正(平成18年5月31日交付)に伴い、市街化調整区域における大規模開発の許可制度が見直され、市町村が定める地区計画に適合する場合に開発が許可されることになりました。

 まず、
地区計画とは、都市計画法第十二条の四 1項 1号 に定められている、住民の合意に基づいて、それぞれの地区の特性にふさわしいまちづくりを誘導するための計画です。
 地区計画制度は、地方自治体が条例を制定して運用することになっています。

 具体的には、都市計画法第13条14項
 
「(都市計画基準)
 第十三条
 十四 地区計画は、公共施設の整備、建築物の建築その他の土地利用の現状及び将来の見通しを勘案し、当該区域の各街区における防災、安全、衛生等に関する機能が確保され、かつ、その良好な環境の形成又は保持のためその区域の特性に応じて合理的な土地利用が行われることを目途として、当該計画に従つて秩序ある開発行為、建築又は施設の整備が行われることとなるように定めること。この場合において、次のイからハまでに掲げる地区計画については、当該イからハまでに定めるところによること。
  
イ 市街化調整区域における地区計画 市街化区域における市街化の状況等を勘案して、地区計画の区域の周辺における市街化を促進することがない等当該都市計画区域における計画的な市街化を図る上で支障がないように定めること。
 (以下略)」

 とあり、
 都市計画法第13条14項イ により、市街化調整区域内においても、地区計画を定めることができますから、市街化調整区域内においては、地区計画を定めることができないは、誤りです。



3 地区計画については、都市計画に、地区計画の名称、位置、区域の面積を定めなければならない。

X 誤っている。 ”務める”であり、”なければならない”ではない。

 まず、地区計画は、都市計画法第4条9項
 
「(定義)
 第四条
 9 この法律において「地区計画等」とは、第十二条の四第一項各号に掲げる計画をいう。」

 とあり、同法第12条の4
 
「(地区計画等)
 第十二条の四  
都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる計画を定めることができる
   
一  地区計画
   二  密集市街地整備法第三十二条第一項 の規定による防災街区整備地区計画
   三  地域における歴史的風致の維持及び向上に関する法律 (平成二十年法律第四十号)第三十一条第一項 の規定による歴史的風致維持向上地区計画
   四  幹線道路の沿道の整備に関する法律 (昭和五十五年法律第三十四号)第九条第一項 の規定による沿道地区計画
   五  集落地域整備法 (昭和六十二年法律第六十三号)第五条第一項 の規定による集落地区計画
 
2  地区計画等については、都市計画に、地区計画等の種類、名称、位置及び区域を定めるものとするとともに、区域の面積その他の政令で定める事項を定めるよう努めるものとする。」

 とあり、
  都市計画法第12条の4 2項によれば、”定めるよう努めるものとする”であり、地区計画については、都市計画に、地区計画の名称、位置、区域の面積を”定めなければならない”は、誤りです。

 
 *このような、”務める”とか”定めなければならない”といった、条文の隅の差異をつく設問は出題者として法の本質を捉えておらず、問題作成者として最低のレベルにあります。


4 市街地開発事業については、都市計画に、市街地開発事業の種類、名称及び施行区域を定めなければならず、土地区画整理事業については、これに加えて、公共施設の配置及び宅地の整備に関する事項を都市計画に定めなければならない。

〇 正しい。
 まず、都市計画法第4条7項
 「(定義)
 第四条
 7 この法律において「市街地開発事業」とは、第十二条第一項各号に掲げる事業をいう。」

 とあり、
 同法第12条2項及び3項
 
「(市街地開発事業)
 第十二条
 都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる事業を定めることができる。
 
2 市街地開発事業については、都市計画に、市街地開発事業の種類、名称及び施行区域を定めるものとするとともに、施行区域の面積その他の政令で定める事項を定めるよう努めるものとする。
 
3  土地区画整理事業については、前項に定めるもののほか、公共施設の配置及び宅地の整備に関する事項を都市計画に定めるものとする。 」

  とあり、
 都市計画法第12条2項によれば、街地開発事業については、都市計画に、市街地開発事業の種類、名称及び施行区域を定めなければならず、は正しい。
 そして、同条3項によれば、地区画整理事業については、これに加えて、公共施設の配置及び宅地の整備に関する事項を都市計画に定めなければならず、こちらも正しい。
 よって、選択肢4は全体として正しい。

 

答え:4

《タグ》 都市計画法。 都市計画の優先順序。 市街化調整区域内。 都市計画。 

 なんと細かい箇所からの適切ではない出題。難しい。いつもと出題傾向が違う。

 都市計画法も、必ず1問は出るので、「目指せ! マンション管理士・管理業務主任者」の過去問題解説において、下の方に 「都市計画法」 だけを取り出していますので、参考にしてください。

問21

〔問 21〕建築基準法(昭和 25 年法律第 201 号)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 準防火地域内にある地階を除く階数が4で延べ面積が 1,000 uの共同住宅は、耐火建築物としなければならない。

〇 正しい。 準防火地域内で階数が4階以上なら、面積に関係なく、耐火建築物にしなければならない。
 建築基準法も例年必ず1問は出題されます。 似たようなのは、平成25年 マンション管理士試験 「問20」 、平成19年 マンション管理士試験 「問21」 平成17年 マンション管理士試験 「問23」 。

 まず、用語定義として耐火建築物とは、建築基準法第2条 9の2項
 
「(用語の定義)
 第二条
 九の二 
耐火建築物 次に掲げる基準に適合する建築物をいう。
  イ その主要構造部が(1)又は(2)のいずれかに該当すること。
  (1) 耐火構造であること。
  (2) 次に掲げる性能(外壁以外の主要構造部にあつては、(i)に掲げる性能に限る。)に関して政令で定める技術的基準に適合するものであること。
    (i) 当該建築物の構造、建築設備及び用途に応じて屋内において発生が予測される火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。
    (ii) 当該建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱に当該火災が終了するまで耐えること。
  ロ その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に、防火戸その他の政令で定める防火設備(その構造が遮炎性能(通常の火災時における火炎を有効に遮るために防火設備に必要とされる性能をいう。第二十七条第一項において同じ。)に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものに限る。)を有すること。」


 そして、準防火地域内にある建築物なら、建築基準法第62条
 「(準防火地域内の建築物)
 第六十二条  
準防火地域内においては、地階を除く階数が四以上である建築物又は延べ面積が千五百平方メートルを超える建築物は耐火建築物とし、延べ面積が五百平方メートルを超え千五百平方メートル以下の建築物は耐火建築物又は準耐火建築物とし、地階を除く階数が三である建築物は耐火建築物、準耐火建築物又は外壁の開口部の構造及び面積、主要構造部の防火の措置その他の事項について防火上必要な政令で定める技術的基準に適合する建築物としなければならない。ただし、前条第二号に該当するものは、この限りでない。
   2  準防火地域内にある木造建築物等は、その外壁及び軒裏で延焼のおそれのある部分を防火構造とし、これに附属する高さ二メートルを超える門又は塀で当該門又は塀が建築物の一階であるとした場合に延焼のおそれのある部分に該当する部分を不燃材料で造り、又はおおわなければならない。 」

 とあり、
 建築基準法第62条1項により、準防火地域内にある地階を除く階数が4以上となると、延べ面積に関係なく耐火建築物にしなければなりませんから、正しい。


 


2 建築物の敷地が防火地域及び準防火地域にわたる場合においては、当該建築物又は当該建築物の敷地の全部について、敷地の過半に属する地域の建築物に関する建築基準法の規定又は建築基準法に基づく命令の規定を適用する。

X 誤っている。 全部について厳しい防火地域内の規定を適用する。 過半ではない。
 平成25年 マンション管理士試験 「問20」 、平成17年 マンション管理士試験 「問23」 。
 
 建築物の敷地が防火地域及び準防火地域にわたる場合は、建築基準法第67条
 「(建築物が防火地域又は準防火地域の内外にわたる場合の措置)
 第六十七条
 建築物が防火地域又は準防火地域とこれらの地域として指定されていない区域にわたる場合においては、その全部についてそれぞれ防火地域又は準防火地域内の建築物に関する規定を適用する。ただし、その建築物が防火地域又は準防火地域外において防火壁で区画されている場合においては、その防火壁外の部分については、この限りでない。
 
2 建築物が防火地域及び準防火地域にわたる場合においては、その全部について防火地域内の建築物に関する規定を適用する。ただし、建築物が防火地域外において防火壁で区画されている場合においては、その防火壁外の部分については、準防火地域内の建築物に関する規定を適用する。」 
 とあり、
 建築基準法第67条2項によれば、「建築物が防火地域及び準防火地域にわたる場合においては、その全部について防火地域内の建築物に関する規定を適用する」となっていますから、敷地の全部について、”敷地の過半に属する地域の建築物に関する”建築基準法の規定又は建築基準法に基づく命令の規定を適用するは、誤りです。



3 高さ 31 mを超える共同住宅で、高さ 31 mを超える部分の各階の床面積の合計が400uのものについては、非常用の昇降機を設ける必要はない。

〇 正しい。 原則:高さ31mを超える建築物なら、非常用の昇降機を設けるが、例外もある。

 平成27年 管理業務主任者試験 「問24」 、平成23年 管理業務主任者試験 「問20」 、平成19年 管理業務主任者試験 「問20」 、平成18年 マンション管理士試験 「問21」 平成18年 管理業務主任者試験 「問20」 、平成16年 管理業務主任者試験 「問20」 、平成14年 マンション管理士試験 「問20」 、平成13年 管理業務主任者試験 「問23」

 非常用の昇降機の設置は、建築基準法第34条
 
「(昇降機)
 第三十四条
 建築物に設ける昇降機は、安全な構造で、かつ、その昇降路の周壁及び開口部は、防火上支障がない構造でなければならない。
 
2 高さ三十一メートルをこえる建築物(政令で定めるものを除く。)には、非常用の昇降機を設けなければならない。

 とあり、
 建築基準法第34条2項によれば、原則;高さ31mを超える建築物なら、非常用の昇降機を設けることになりますが、そこで、政令の例外規定があります。
 政令は、建築基準法施行令第129条の13の2
 「(
非常用の昇降機の設置を要しない建築物
 第百二十九条の十三の二  法第三十四条第二項 の規定により政令で定める建築物は、次の各号のいずれかに該当するものとする。
   一  高さ三十一メートルを超える部分を階段室、昇降機その他の建築設備の機械室、装飾塔、物見塔、屋窓その他これらに類する用途に供する建築物
   
二  高さ三十一メートルを超える部分の各階の床面積の合計が五百平方メートル以下の建築物
   三  高さ三十一メートルを超える部分の階数が四以下の主要構造部を耐火構造とした建築物で、当該部分が床面積の合計百平方メートル以内ごとに耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備でその構造が第百十二条第十四項第一号イ、ロ及びニに掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたもの(廊下に面する窓で開口面積が一平方メートル以内のものに設けられる法第二条第九号の二 ロに規定する防火設備を含む。)で区画されているもの
   四  高さ三十一メートルを超える部分を機械製作工場、不燃性の物品を保管する倉庫その他これらに類する用途に供する建築物で主要構造部が不燃材料で造られたものその他これと同等以上に火災の発生のおそれの少ない構造のもの」

 とあり、
 高さが31mを超えても、建築基準法施行令第129条の13の2 2号によれば、「高さ31mを超える部分の各階の床面積の合計が500u以下の建築物」ならば、非常用のエレベーターの設置は不要ですから、 高さ 31 mを超える部分の各階の床面積の合計が400uのものについては、非常用の昇降機を設ける必要はなく、正しい。

 ★どうして、31mを越えると非常用エレベーターが必要か?
  31mは昔の尺貫法の約100尺(33m)に該当します。以前の高さ制限でもあります。
  消防用の避難はしご車もその高さにあわせて31mまでは、届きますがそれ以上は届きません。
  そこで、消防隊も消火活動に使える非常用エレベーターが必要とされます。
 


  (注:なお、避雷設備は、20mを超えると設けること。この非常用エレベーターの31m超と混同しないように。)

 


4 建築主は、共同住宅の用途に供する建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が 150 u であるものの大規模の模様替えをしようとする場合、建築確認を受けなければならない。

〇 正しい。 共同住宅なら、床面積の合計が100uを超えると大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合等では、建築確認が必要。
 平成25年 マンション管理士試験 「問41」 、平成14年 マンション管理士試験 「問21」平成13年 マンション管理士試験 「問25」

 建築確認は、建築確認第6条
 「(建築物の建築等に関する申請及び確認)
 第六条 建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは
大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。当該確認を受けた建築物の計画の変更(国土交通省令で定める軽微な変更を除く。)をして、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号から第三号までに掲げる規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合も、同様とする。
   
一  別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が百平方メートルを超えるもの
   二  木造の建築物で三以上の階数を有し、又は延べ面積が五百平方メートル、高さが十三メートル若しくは軒の高さが九メートルを超えるもの
   三  木造以外の建築物で二以上の階数を有し、又は延べ面積が二百平方メートルを超えるもの
   四  前三号に掲げる建築物を除くほか、都市計画区域若しくは準都市計画区域(いずれも都道府県知事が都道府県都市計画審議会の意見を聴いて指定する区域を除く。)若しくは景観法 (平成十六年法律第百十号)第七十四条第一項 の準景観地区(市町村長が指定する区域を除く。)内又は都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部について指定する区域内における建築物
  (以下略)」

 とあり、
 建築基準法第6条1項1号の 別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物 とは、「病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)ホテル、旅館、下宿、
共同住宅、寄宿舎その他これらに類するもので政令で定めるもの」
 とあり、
 設問の共同住宅も該当しますから、床面積の合計が 150 u であるものの大規模の模様替えをしようとする場合は、床面積の合計が100uを超えていますから、建築確認が必要で、正しい。



答え:2

《タグ》 建築基準法。 準防火地域内と耐火建築物。 敷地が防火地域及び準防火地域にわたる場合。 非常用昇降機の設置。 模様替えと建築確認。

 ここは、選択肢2の厳しい方の適用を覚えていれば、他は消せる? 非常用エレベーターの設置で例外(政令)からの出題は、珍しい。

 建築基準法も良く出題がありますから、「「目指せ! マンション管理士・管理業務主任者」の過去問題解説において、下の方に 「建築基準法」 だけを取り出していますので、参考にしてください。 
 また、「要約 建築基準法」 で、建築基準法の解説もしていますから、ご利用ください。

問22

〔問 22〕簡易専用水道に関する次の記述のうち、水道法(昭和 32 年法律第 177 号)の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 簡易専用水道の設置者は、給水栓における水質について、 1年以内ごとに 1回、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない。

〇 正しい。 
 平成26年 マンション管理士試験 「問22」 、平成23年 マンション管理士試験 「問22」 、平成21年 マンション管理士試験 「問22」 、 平成16年 マンション管理士試験 「問23」 

 どうして、いつも水道法では「簡易専用水道」がよく出題されるのか。
 簡易専用水道とは、都や市町村など地方公共団体の水道から供給される水だけを水源として、その水をいったん受水槽にためてから給水する水道のうち、受水槽の有効容量の合計が10m3を超えるもの(受水槽の有効容量の合計が10m3以下なら該当しません)を「簡易専用水道」といいます。ただし、工場に設置しているなど、全く飲み水として使用しない場合も、簡易専用水道には該当しません。
 貯水槽水道の管理は、設置者(建物所有者や分譲マンションでは管理組合等)が行うこととされています。
 ビル、マンション等の貯水槽水道の管理について、その設置者の責任を水道事業者が定める供給規定上明確にし、その管理の徹底を図るために平成13年の改正水道法で設けられました。


 

  そこで、簡易専用水道の設置者は、水道法第34条の2
 「第三十四条の二
 簡易専用水道の設置者は、厚生労働省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならない。
 2 簡易専用水道の設置者は、当該簡易専用水道の管理について、厚生労働省令の定めるところにより、定期に、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない。」

 とあり、
 検査を定める政令は、水道法施行規則第56条
 「(検査)
 第五十六条  
法第三十四条の二第二項 の規定による検査は、一年以内ごとに一回とする
 
2  検査の方法その他必要な事項については、厚生労働大臣が定めるところによるものとする。 」

 とあり、
 水道法施行規則第56条2項を受けた厚生労働大臣が定めたところは、
 厚生労働省告示第二百六十二号です。

 ○簡易専用水道の管理に係る検査の方法その他必要な事項(厚生労働省告示第二百六十二号)

 
水道法施行規則(昭和三十二年厚生省令第四十五号)第五十六条第二項の規定に基づき、簡易専用水道の管理に係る検査の方法その他必要な事項を次のように定め、平成十五年十月一日から適用する
 改正文(平成一六年三月八日厚生労働省告示第八七号) 抄 平成一六年四月一日から適用する。
 改正文 (平成二六年三月三一日厚生労働省告示第一四八号) 抄 平成二六年三月三一日から適用する。

 簡易専用水道の管理に係る検査の方法その他必要な事項
 第一 総則的事項
   一
水道法(昭和三十二年法律第百七十七号)第三十四条の二第二項の規定に基づく簡易専用水道 の管理に係る検査は、当該簡易専用水道の設置者(以下「設置者」という。)の依頼に基づき実施すること
   二 検査は、清潔な作業衣を着用する等の衛生的な配慮の下に行うこと。
   三 検査に際しては、検査者は別記様式による身分証明書を携帯し、かつ、関係者の請求があった ときは、これを提示すること。
 第二 検査項目
   検査項目は、原則として、簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態に関する検査、給水栓における水質の検査及び書類の整理等に関する検査とする。
 第三 簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態に関する検査
   一 簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態に関する検査は、簡易専用水道に係る施設及びその管理の状態が、当該簡易専用水道の水質に害を及ぼすおそれのあるものであるか否かを検査するものであり、当該簡易専用水道に設置された水槽(以下「水槽」という。)の水を抜かずに、 次に掲げる検査を行うものとする。
     1 水槽その他当該簡易専用水道に係る施設の中に汚水等の衛生上有害なものが混入するおそれの有無についての検査
     2 水槽及びその周辺の清潔の保持についての検査
     3 水槽内における沈積物、浮遊物質等の異常な物の有無についての検査
   二 一に関して必要な検査事項及び判定基準は、別表第一に定めるところによる。
 
第四 給水栓における水質の検査
   一 給水栓における水質について、次に掲げる検査を行うものとする。
     1 臭気、味、色及び濁りに関する検査
     2 残留塩素に関する検査

    二 一に関して必要な検査事項及び判定基準は、別表第二に定めるところによる。
 第五 書類の整理等に関する検査
   一 次に掲げる書類の整理及び保存の状況について、検査を行うものとする。
     1 簡易専用水道の設備の配置及び系統を明らかにした図面
     2 受水槽の周囲の構造物の配置を明らかにした平面図
     3 水槽の掃除の記録
     4 その他の管理についての記録
   二 一に関して必要な検査事項及び判定基準は、別表第三に定めるところによる。
 第六 建築物における衛生的環境の確保に関する法律の適用がある簡易専用水道の検査
   建築物における衛生的環境の確保に関する法律(昭和四十五年法律第二十号。以下「建築物衛生 法」という。)の適用がある簡易専用水道については、第二の規定にかかわらず、水道法第三十四条の二第二項の規定に基づく簡易専用水道の管理に係る検査の検査項目は、書類検査とすることが できる。この場合において、当該書類検査に係る書類は、設置者が別表第一から別表第三までに掲 げる検査事項がこれらの表に掲げる判定基準を満たすか否かについて作成するものとし、建築物衛 生法第十条に規定する帳簿書類を添えて、検査者に提出するものとする。
 第七 検査後の措置
   一 検査者は、検査終了後、次に掲げる措置を行うものとする。
     1 設置者に検査済みを証する書類を交付すること。この場合において、当該書類には次に掲げ る事項を記載すること。
       (一) 検査機関の名称及び所在地
       (二) 検査員の氏名
       (三) 簡易専用水道を有する施設の名称及び所在地
       (四) 設置者の氏名又は名称
       (五) 簡易専用水道を有する施設の概要
       (六) 水槽の数、有効容量、形状、設置場所及び材質
       (七) 検査の結果
       (八) その他必要な事項
    2 検査の結果、別表第一から別表第三までに掲げる判定基準に適合しなかった事項がある場合には、設置者に対し、当該事項について速やかに対策を講じるよう助言を行うこと。
   3 検査の結果、水の供給について特に衛生上問題があるとして次のいずれかに該当すると認め られた場合には、設置者に対し、2に掲げるもののほか、直ちに当該簡易専用水道の所在地を 管轄する都道府県知事(市又は特別区にあっては、市長又は区長)にその旨を報告するよう助言を行うこと。ただし、当該簡易専用水道が国の設置するものである場合にあっては、厚生労働大臣に報告するよう助言を行うこと。
      (一) 汚水槽その他排水設備から水槽に汚水若しくは排水が流入し、又はそのおそれがある場合
      (二) 水槽内に動物等の死骸がある場合
      (三) 給水栓における水質の検査において、異常が認められる場合
      (四) 水槽の上部が清潔に保たれず、又はマンホール面が槽上面から衛生上有効に立ち上がっ ていないため、汚水等が水槽に流入するおそれがある場合  
      (五) マンホール、通気管等が著しく破損し、又は汚水若しくは雨水が水槽に流入するおそれ がある場合
      (六) その他検査者が水の供給について特に衛生上問題があると認める場合
     (表は省略)」
 とあり、
 給水栓は水道の蛇口のことです。

 そこで、水道法第34条の2 2項 及び 水道法施行規則第56条1項及び厚生労働省告示第二百六十二号によれば、簡易専用水道の設置者は、給水栓(蛇口)における水質について、 1年以内ごとに 1回、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならないは、正しい。



2 簡易専用水道の設置者は、給水栓における水質の検査事項として、臭気、味、色、色度、濁度及び残留塩素についての検査を受けなければならない。

〇 正しい。 
 それでは具体的な検査事項は、選択肢1で引用しました、水道法第34条の2 2項
 「 2 簡易専用水道の設置者は、当該簡易専用水道の管理について、厚生労働省令の定めるところにより、定期に、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない。」
 とあり、
 これを受けた政令は、これも選択肢1で引用しました、水道法施行規則第56条2項
 「2  検査の方法その他必要な事項については、厚生労働大臣が定めるところによるものとする。 」
   です。
 
 これを受けた告示は、厚生労働省告示第二百六十二号 でその
 「第四 給水栓における水質の検査
   
一 給水栓における水質について、次に掲げる検査を行うものとする。
     1 臭気、味、色及び濁りに関する検査
     2 残留塩素に関する検査

 とあり、
 簡易専用水道の設置者は、給水栓における水質の検査事項として、臭気、味、色、色度、濁度(濁り)及び残留塩素についての検査を受けなければならないため、正しい。



3 簡易専用水道の設置者は、給水栓における水の色、濁り、臭い、味その他の状態により供給する水に異常を認めたときは、水道水質基準の項目のうち必要なもの及び残留塩素について検査を行わなければならない。

X 誤っている。 水質基準には、残留塩素の検査は入っていない。 
  選択肢2との関係で実に紛らわしい、不適切な出題です。
 平成28年 管理業務主任者試験 「問21」 でも出ている。

  選択肢2で引用しました、水道法施行規則第55条
 「
(管理基準)
 第五十五条  法第三十四条の二第一項 に規定する厚生労働省令で定める基準は、次の各号に掲げるものとする。
   一  水槽の掃除を一年以内ごとに一回、定期に、行うこと。
   二  水槽の点検等有害物、汚水等によつて水が汚染されるのを防止するために必要な措置を講ずること。
   
三  給水栓における水の色、濁り、臭い、味その他の状態により供給する水に異常を認めたときは、水質基準に関する省令の表の上欄に掲げる事項のうち必要なものについて検査を行うこと。
   四  供給する水が人の健康を害するおそれがあることを知つたときは、直ちに給水を停止し、かつ、その水を使用することが危険である旨を関係者に周知させる措置を講ずること。

  とあり、
 水道法施行規則第55条3号の「供給する水に異常を認めたときは、”水質基準に関する省令 の表の上欄に掲げる事項のうち必要なもの”について検査を行うこと」
 は、

 「水質基準に関する省令 (平成十五年五月三十日厚生労働省令第百一号)
   最終改正:平成二七年三月二日厚生労働省令第二九号
 
 水道法 (昭和三十二年法律第百七十七号)第四条第二項 の規定に基づき、水質基準に関する省令を次のように定める。
 水道により供給される水は、
次の表の上欄に掲げる事項につき厚生労働大臣が定める方法によって行う検査において、同表の下欄に掲げる基準に適合するものでなければならない。」
 とあり、
 現在(平成27年4月1日)、表の上欄には、一般細菌、大腸菌、カドミウム及びその化合物、水銀及びその化合物など51項目が水道法第4条の規定に基づき、「水質基準に関する省令」で規定する水質基準に適合することが必要ですが、設問の
「残留塩素」は該当しないため、誤りです。

 2017年 2月21日 追記:水道法施行規則第55条3号で規定される「管理基準」には、「残留塩素についての検査」は、単に入っていないが、正解のようです。選択肢2の「給水栓における水質の検査事項」とは別と考えること。


4 簡易専用水道の設置者は、供給する水が人の健康を害するおそれがあることを知ったときは、直ちに給水を停止し、かつ、その水を使用することが危険である旨を関係者に周知させる措置を講じなければならない。

〇 正しい。
  選択肢3で引用しました、水道法施行規則第55条4号
 「四  供給する水が人の健康を害するおそれがあることを知つたときは、直ちに給水を停止し、かつ、その水を使用することが危険である旨を関係者に周知させる措置を講ずること。」
 とあり、
 簡易専用水道の設置者は、供給する水が人の健康を害するおそれがあることを知ったときは、直ちに給水を停止し、かつ、その水を使用することが危険である旨を関係者に周知させる措置を講じなければならないは、正しい。



答え:3

《タグ》 水道法。 簡易専用水道。 検査。 残留塩素。 
    細かい! 選択肢3の出題意図が分からない。 告示などの根拠を探し出すのに、約3時間もかかっている。
 難問と言える。
 
 水道法も必ず1問は出題がありますから、「「目指せ! マンション管理士・管理業務主任者」の過去問題解説において、下の方に 水道法 だけを取り出していますので、参考にしてください。 

問23

〔問 23〕共同住宅における防炎物品又は消防用設備等に関する次の記述のうち、消防法(昭和 23 年法律第 186 号)の規定によれば、正しいものはどれか。ただし、いずれも無窓階はないものとし、危険物及び指定可燃物の貯蔵及び取扱いはないものとする。また、消防用設備等については、消防長又は消防署長が、防火対象物の位置、構造又は設備の状況から判断して、同法の規定する基準を適用しないと認める場合を除くものとする。

1 高さ 31 mを超える共同住宅の 1階の住戸で使用されるじゅうたん(織りカーペット(だん通を除く。)をいう。)については、政令で定める基準以上の防炎性能を有するものでなくともよい。

X 誤っている。 高層建築物(高さ31m超)では、階数に関係なく、政令で定める基準以上の防炎性能を有するものが必要。
 平成26年 マンション管理士試験 「問23」 、平成25年マンション管理士試験 「問23」、 平成24年マンション管理士試験 「問23」平成19年マンション管理士試験 「問24」
 
 高層マンション(建物の高さが31メートル(約10階建て)を超えるもの)は、避難に時間を要すること、火災拡大時の人命危険が大きいことから、消防法により、居住している階に関係なく、使用するカーテンやじゅうたん等火が広がるもととなるものを、防炎(燃えにくい)物品にしなければならないとの規制ができました。
 カーテンやじゅたんなど燃えやすい繊維製品を燃えにくくすることによって、これらが「もえぐさ」となって発生する火災を予防します。また、燃えにくくすることによって初期消火や避難など、貴重な時間を稼ぐことができます。そこで、防炎(燃えにくさ)処理又は防炎加工された防炎対象物品は、法で定められた試験に適合することが必要です。
 ということで、まず、高さ 31 mを超える共同住宅は、消防法第8条の2
 「第八条の二  高層建築物(高さ三十一メートルを超える建築物をいう。(以下、略)」
 とあり、消防法上高層建築物となります。
 そして、求められる防火性能は、消防法第8条の3
 
「第八条の三
 
高層建築物若しくは地下街又は劇場、キャバレー、旅館、病院その他の政令で定める防火対象物において使用する防炎対象物品どん帳、カーテン、展示用合板その他これらに類する物品で政令で定めるものをいう。以下同じ。)は、政令で定める基準以上の防炎性能を有するものでなければならない
○2 防炎対象物品又はその材料で前項の防炎性能を有するもの(以下この条において「防炎物品」という。)には、総務省令で定めるところにより、同項の防炎性能を有するものである旨の表示を附することができる。
○3 何人も、防炎対象物品又はその材料に、前項の規定により表示を附する場合及び工業標準化法(昭和二十四年法律第百八十五号)その他政令で定める法律の規定により防炎対象物品又はその材料の防炎性能に関する表示で総務省令で定めるもの(以下この条において「指定表示」という。)を附する場合を除くほか、同項の表示又はこれと紛らわしい表示を附してはならない。
○4 防炎対象物品又はその材料は、第二項の表示又は指定表示が附されているものでなければ、防炎物品として販売し、又は販売のために陳列してはならない。
○5 第一項の防火対象物の関係者は、当該防火対象物において使用する防炎対象物品について、当該防炎対象物品若しくはその材料に同項の防炎性能を与えるための処理をさせ、又は第二項の表示若しくは指定表示が附されている生地その他の材料からカーテンその他の防炎対象物品を作製させたときは、総務省令で定めるところにより、その旨を明らかにしておかなければならない。」

 とあり、
 消防法第8条の3 1項での防炎対象物品を定める政令は、消防法施行令第4条の3 3項
 
「(防炎防火対象物の指定等)
 第四条の三
 3 法第八条の三第一項の
政令で定める物品は、カーテン、布製のブラインド、暗幕、じゆうたん等(じゆうたん、毛せんその他の床敷物で総務省令で定めるものをいう。次項において同じ。)、展示用の合板、どん帳その他舞台において使用する幕及び舞台において使用する大道具用の合板並びに工事用シートとする。」

 とあり、
 設問の「じゅうたん(織りカーペット(だん通を除く。)をいう。)」も防炎対象物品に入っていますから、1階の住戸であっても消防法第8条の3 1項 により、政令で定める基準以上の防炎性能を有するものでなければならないため、誤りです。


 

 
2 地上 2階建、延べ面積 500 uの共同住宅においては、消火器又は簡易消火用具(以下「消火器具」という。)を、階ごとに、当該共同住宅の各部分から一の消火器具に至る歩行距離が 20 m以下となるように配置しなければならない。

〇 正しい。
 新しい条文からの出題で、根拠を探すのに時間がかかる。
 消火器具の配置は、まず、消防法施行令第10条1項
 「消火器具に関する基準)
 第十条  
消火器又は簡易消火用具(以下「消火器具」という。)は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする
   一  別表第一(一)項イ、(二)項、(六)項イ(1)から(3)まで及びロ、(十六の二)項、(十六の三)項、(十七)項並びに(二十)項に掲げる防火対象物
   
二  別表第一(一)項ロ、(三)項から(五)項まで、(六)項イ(4)、ハ及びニ、(九)項並びに(十二)項から(十四)項までに掲げる防火対象物で、延べ面積が百五十平方メートル以上のもの
   三  別表第一(七)項、(八)項、(十)項、(十一)項及び(十五)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が三百平方メートル以上のもの
   四  前三号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる建築物その他の工作物で、少量危険物(危険物のうち、危険物の規制に関する政令 (昭和三十四年政令第三百六号)第一条の十一 に規定する指定数量の五分の一以上で指定数量未満のものをいう。)又は指定可燃物(同令 別表第四の品名欄に掲げる物品で、同表の数量欄に定める数量以上のものをいう。以下同じ。)を貯蔵し、又は取り扱うもの
   五  前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一に掲げる
建築物の地階(地下建築物にあつては、その各階をいう。以下同じ。)、無窓階(建築物の地上階のうち、総務省令で定める避難上又は消火活動上有効な開口部を有しない階をいう。以下同じ。)又は三階以上の階で、床面積が五十平方メートル以上のもの
 (以下、略)」

 とあり、
 共同住宅は、「
別表第一(五)項ロ 寄宿舎、下宿又は共同住宅」 に該当しますので、消火器の設置が必要なものは、消防法施行令第10条1項二号の「延べ面積が150u以上のもの」となります。
 すると、その消火器の配置は、消防法施行規則第6条6項
 「(大型消火器以外の消火器具の設置)
 第六条
 6 前五項の規定により設ける
消火器具は、防火対象物の階ごとに、第一項及び第五項に規定するものにあつては防火対象物の各部分から、第三項に規定するものにあつては危険物又は指定可燃物を貯蔵し、又は取り扱う場所の各部分から、第四項に規定するものにあつては電気設備のある場所の各部分から、それぞれ一の消火器具に至る歩行距離が二十メートル以下となるように配置しなければならない。」

 とあり、
 地上 2階建、延べ面積 500 uの共同住宅においては、消火器又は簡易消火用具を、階ごとに、当該共同住宅の各部分から一の消火器具に至る歩行距離が 20 m以下となるように配置しなければならないは、正しい


 参考:消防用設備等の特例基準に関する規程 平成9年6月12日 消防本部規程第2号 (平成15年3月26日施行)
   消火器具は、消防法施行規則(昭和36年自治省令第6号。以下「規則」という。)第6条の規定の例により設置するものとする。
 ただし、次によることができるものとする。
  (ア) 住戸、共用室及び管理人室に次により消火器を設置した場合にあっては、当該住戸、共用室及び管理人室が直接面する廊下及び階段室等に消火器具を設置しないことができること。
    a 住戸、共用室及び管理人室ごとに設置するものであること。
    b 住戸、共用室及び管理人室内に設置する消火器は、住宅用消火器とすること。
  (イ) 階ごとの共用部分(消火器が設置された住戸、共用室及び管理人室が直接面する廊下及び階段室等を除く。)及び住戸等(住戸、共用室及び管理人室を除く。)の部分にあっては、当該部分の各部分から一の消火器具に至る歩行距離が20メートル以下となるように消火器具を設置すること。


 


3 共同住宅の地階であって、駐車の用に供する部分の存する階(駐車するすべての車両が同時に屋外に出ることができる構造の階を除く。)で、当該部分の床面積が 100 u以上のものには、自動火災報知設備を設置しなければならない。

X 誤っている。 地階、2階以上にある駐車場なら、床面積が 200u以上となると、自動火災報知設備を設置しなければならない。100u以上ではない。
 ここも、新しい条文からの出題。
 地下の駐車場の自動火災報知設備となると、消防法施行令第21条
 
「(自動火災報知設備に関する基準)
 第二十一条
  
自動火災報知設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする
   一 次に掲げる防火対象物
      イ 別表第一(二)項ニ、(五)項イ、(六)項イ(1)から(3)まで並びにロ、(十三)項ロ及び(十七)項に掲げる防火対象物
      ロ 別表第一(六)項ハに掲げる防火対象物(利用者を入居させ、又は宿泊させるものに限る。)
   二 別表第一(九)項イに掲げる防火対象物で、延べ面積が二百平方メートル以上のもの
   三 次に掲げる防火対象物で、延べ面積が三百平方メートル以上のもの
      イ 別表第一(一)項、(二)項イからハまで、(三)項、(四)項、(六)項イ(4)及びニ、(十六)項イ並びに(十六の二)項に掲げる防火対象物
      ロ 別表第一(六)項ハに掲げる防火対象物(利用者を入居させ、又は宿泊させるものを除く。)
   
四 別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項、(十二)項、(十三)項イ及び(十四)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が五百平方メートル以上のもの
   五 別表第一(十六の三)項に掲げる防火対象物のうち、延べ面積が五百平方メートル以上で、かつ、同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分の床面積の合計が三百平方メートル以上のもの
   六 別表第一(十一)項及び(十五)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの
   七 前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一に掲げる防火対象物のうち、同表(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供される部分が避難階以外の階に存する防火対象物で、当該避難階以外の階から避難階又は地上に直通する階段が二(当該階段が屋外に設けられ、又は総務省令で定める避難上有効な構造を有する場合にあつては、一)以上設けられていないもの
   八 前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一に掲げる建築物その他の工作物で、指定可燃物を危険物の規制に関する政令別表第四で定める数量の五百倍以上貯蔵し、又は取り扱うもの
   九 別表第一(十六の二)項に掲げる防火対象物(第三号及び前二号に掲げるものを除く。)の部分で、次に掲げる防火対象物の用途に供されるもの
     イ 別表第一(二)項ニ、(五)項イ並びに(六)項イ(1)から(3)まで及びロに掲げる防火対象物
     ロ 別表第一(六)項ハに掲げる防火対象物(利用者を入居させ、又は宿泊させるものに限る。)
   十 別表第一(二)項イからハまで、(三)項及び(十六)項イに掲げる防火対象物(第三号、第七号及び第八号に掲げるものを除く。)の地階又は無窓階(同表(十六)項イに掲げる防火対象物の地階又は無窓階にあつては、同表(二)項又は(三)項に掲げる防火対象物の用途に供される部分が存するものに限る。)で、床面積が百平方メートル(同表(十六)項イに掲げる防火対象物の地階又は無窓階にあつては、当該用途に供される部分の床面積の合計が百平方メートル)以上のもの
   十一 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる建築物の地階、無窓階又は三階以上の階で、床面積が三百平方メートル以上のもの
   十二 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる防火対象物の道路の用に供される部分で、床面積が、屋上部分にあつては六百平方メートル以上、それ以外の部分にあつては四百平方メートル以上のもの
   
十三 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる防火対象物の地階又は二階以上の階のうち、駐車の用に供する部分の存する階(駐車するすべての車両が同時に屋外に出ることができる構造の階を除く。)で、当該部分の床面積が二百平方メートル以上のもの
   十四 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる防火対象物の十一階以上の階
   十五 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる防火対象物の通信機器室で床面積が五百平方メートル以上のもの 
  (以下略)」

 とあり、
 「十三 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる防火対象物の
地階又は二階以上の階のうち、駐車の用に供する部分の存する階(駐車するすべての車両が同時に屋外に出ることができる構造の階を除く。)で、当該部分の床面積が二百平方メートル以上のもの」 によれば、
 共同住宅(別表第一(五)項ロ に該当する) の地階であって、駐車の用に供する部分の存する階(駐車するすべての車両が同時に屋外に出ることができる構造の階を除く。)で、当該部分の
床面積が 200 u以上のものなら、自動火災報知設備を設置しなければなりませんが、当該部分の床面積が 100 u以上では、不要ですから、誤りです。


4 地上 3階建、延べ面積 500 uの共同住宅においては、屋内消火栓を階ごとに設けなければならない。

X 誤っている。 屋内消火栓は延べ面積が700u以上のものなら、階ごとに設けるが、500uではいらない。
 共同住宅は、消防法では、
別表第一(五)項ロ に該当することが前提です。
 屋内消火栓の設置は、消防法施行令第11条
 「屋内消火栓設備に関する基準)
 第十一条
 
屋内消火栓設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。
     一 別表第一(一)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が五百平方メートル以上のもの
     
二 別表第一(二)項から(十)項まで、(十二)項及び(十四)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が七百平方メートル以上のもの
     三 別表第一(十一)項及び(十五)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの
     四 別表第一(十六の二)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が百五十平方メートル以上のもの
     五 前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる建築物その他の工作物で、指定可燃物(可燃性液体類に係るものを除く。)を危険物の規制に関する政令別表第四で定める数量の七百五十倍以上貯蔵し、又は取り扱うもの
     六 前各号に掲げる防火対象物以外の別表第一(一)項から(十二)項まで、(十四)項及び(十五)項に掲げる防火対象物の地階、無窓階又は四階以上の階で、床面積が、同表(一)項に掲げる防火対象物にあつては百平方メートル以上、同表(二)項から(十)項まで、(十二)項及び(十四)項に掲げる防火対象物にあつては百五十平方メートル以上、同表(十一)項及び(十五)項に掲げる防火対象物にあつては二百平方メートル以上のもの

  (以下略)」

 とあり、
 共同住宅は、別表第一(五)項ロ に該当し、消防法施行令第11条2号によれば、延べ面積が700u以上のものであれば、屋内消火栓を階ごとに設けなければなりませんので、延べ面積 500 uは誤りです。


 
 



答え:2 

《タグ》 消防法。 防災性能。 消火器具の配置。 駐車場と自動火災報知設備。 屋内消火栓の設置。
     細かい! 選択肢2、選択肢3や選択肢4の数字を出すとは、不適切な出題だ。 ここも、新しい条文からの出題で難しい。

  
 消防法も必ず1問は出題がありますから、「「目指せ! マンション管理士・管理業務主任者」の過去問題解説において、下の方に 消防法 だけを取り出していますので、参考にしてください。 

 *ある受験生の感想:選択肢2と肢4は似ているが選択肢2は歩行距離まで指定されているので選択肢4を選んだ。教科書レベルの知識では回答不可か?

問24

〔問 24〕警備業務に関する次の記述のうち、警備業法(昭和 47 年法律第 117 号)の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 警備業者は、警備業務の依頼者と警備業務を行う契約を締結しようとするときは、当該契約をするまでに、当該契約の概要について記載した書面をその者に交付(電磁的方法による提供を含む。)しなければならない。

〇 正しい。

 警備業法からの出題も最近は多くなった。
 平成27年 マンション管理士試験 「問24」 、平成26年マンション管理士試験 「問24」 、 平成25年マンション管理士試験 「問24」 、平成19年マンション管理士試験 「問23」。
 
 契約の概要について記載した書面の交付は、警備業法第19条
 
「(書面の交付)
 第十九条  
警備業者は、警備業務の依頼者と警備業務を行う契約を締結しようとするときは、当該契約を締結するまでに、内閣府令で定めるところにより、当該契約の概要について記載した書面をその者に交付しなければならない。
 2  警備業者は、警備業務を行う契約を締結したときは、遅滞なく、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる事項について当該契約の内容を明らかにする書面を当該警備業務の依頼者に交付しなければならない。
   一  警備業務の内容として内閣府令で定める事項
   二  警備業務の対価その他の当該警備業務の依頼者が支払わなければならない金銭の額
   三  前号の金銭の支払の時期及び方法
   四  警備業務を行う期間
   五  契約の解除に関する事項
   六  前各号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項
 3  警備業者は、前二項の規定による書面の交付に代えて、政令で定めるところにより、当該警備業務の依頼者の承諾を得て、当該書面に記載すべき事項を
電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて内閣府令で定めるものにより提供することができる。この場合において、当該警備業者は、当該書面を交付したものとみなす。」

 とあり、
 警備業法第19条1項及び3項によれば、 警備業者は、警備業務の依頼者と警備業務を行う契約を締結しようとするときは、当該契約をするまでに、当該契約の概要について記載した書面をその者に交付(電磁的方法による提供を含む。)しなければならないは、正しい。



2 警備業者が機械警備業務を行おうとするときは、基地局又は警備対象施設の所在する都道府県の区域ごとに、当該区域を管轄する公安委員会の許可を受けなければならない。

X 誤っている。 届出でいい。 許可は不要。
 まず、機械警備業務とは、警備業法第2条5項
 
「(定義)
 第二条
5 この法律において「
機械警備業務」とは、警備業務用機械装置(警備業務対象施設に設置する機器により感知した盗難等の事故の発生に関する情報を当該警備業務対象施設以外の施設に設置する機器に送信し、及び受信するための装置で内閣府令で定めるものをいう。)を使用して行う第一項第一号の警備業務をいう。」

 です。


 
 
 警備対象敷地にセンサーが設置してあっても警備員や警備業者が警備対象敷地内に配置または常駐している場合は機械警備業務ではなく施設警備業務に該当しますから注意が必要です。
 そして、 機械警備業務を行おうとするときは、警備業法第40条
 
「(機械警備業務の届出)
 第四十条  
機械警備業を営む警備業者(以下「機械警備業者」という。)は、機械警備業務を行おうとするときは、当該機械警備業務に係る受信機器を設置する施設(以下「基地局」という。)又は送信機器を設置する警備業務対象施設の所在する都道府県の区域ごとに、当該区域を管轄する公安委員会に、次の事項を記載した届出書を提出しなければならない。この場合において、当該届出書には、内閣府令で定める書類を添付しなければならない。
   一  氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
   二  当該機械警備業務に係る基地局の名称及び所在地並びに第四十二条第一項の規定により選任する機械警備業務管理者の氏名及び住所
   三  前二号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項」

 とあり、
  基本的に警備業を営む際には、都道府県公安委員会の認定を受けなければなりません(第4条参照)が、警備業法第40条によれば、機械警備業を営む警備業者は、機械警備業務を行おうとするときは、当該区域を管轄する公安委員会に”
届出書を提出しなければならない”とあり、許可は不要ですから、誤りです。


3 機械警備業者は、基地局ごとに、警備業務用機械装置の運用等の管理監督を行う機械警備業務管理者を、機械警備業務管理者資格者証の交付を受けている者のうちから、選任しなければならない。

〇 正しい。
 管理監督を行う機械警備業務管理者の規定は、警備業法第42条
 「(機械警備業務管理者)
 第四十二条  
機械警備業者は、基地局ごとに、警備業務用機械装置の運用を監督し、警備員に対する指令業務を統制し、その他機械警備業務を管理する業務で内閣府令で定めるものを行う機械警備業務管理者を、次項の機械警備業務管理者資格者証の交付を受けている者のうちから、選任しなければならない。
 2  公安委員会は、次の各号のいずれかに該当する者に対し、機械警備業務管理者資格者証を交付する。
   一  公安委員会が国家公安委員会規則で定めるところにより機械警備業務の管理に関する業務について行う機械警備業務管理者講習を受け、その課程を修了した者
   二  公安委員会が国家公安委員会規則で定めるところにより機械警備業務の管理に関する業務に関し前号に掲げる者と同等以上の知識及び能力を有すると認める者
 3  第二十二条第一項ただし書の規定は基地局の機械警備業務管理者として選任した者が欠けるに至つた場合について、同条第四項から第六項までの規定は機械警備業務管理者資格者証の交付、書換え及び再交付について、同条第七項の規定は機械警備業務管理者資格者証の交付を受けた者について準用する。この場合において、同条第四項中「第二項」とあるのは「第四十二条第二項」と、同項第二号中「該当する者」とあるのは「該当する者又は心身の障害により機械警備業務管理者の業務を適正に行うことができない者として国家公安委員会規則で定めるもの」と、同項第三号中「第七項第二号」とあるのは「第四十二条第三項において読み替えて準用する第七項第二号」と、「警備員指導教育責任者資格者証の返納」とあるのは「機械警備業務管理者資格者証の返納」と、同条第七項第一号中「いずれか」とあるのは「いずれか又は第四十二条第三項において読み替えて準用する第四項第二号に規定する国家公安委員会規則で定める者」と、同項第三号中「警備員指導教育責任者」とあるのは「機械警備業務管理者」と読み替えるものとする。」

 とあり、
 警備業法第42条1項によれば、械警備業者は、基地局ごとに、警備業務用機械装置の運用等の管理監督を行う機械警備業務管理者を、機械警備業務管理者資格者証の交付を受けている者のうちから、選任しなければならないは、正しい。

 

4 警備業者は、自己の名義をもつて、他人に警備業を営ませてはならず、これに違反した場合は、 100 万円以下の罰金に処される。

〇 正しい。
 マンション管理士試験において、警備業法の罰則まで出題するとは、出題者ももうネタが切れたようで、適切ではない。

 まず、名義貸しの禁止は、警備業法第13条
 
「(名義貸しの禁止)
 
第十三条  警備業者は、自己の名義をもつて、他人に警備業を営ませてはならない。

 とあり、
  名義貸しは禁止されています。
 では、その違反行為については、警備業法第57条
 「第五十七条  次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する
   一  第五条第一項の規定による認定の申請をしないで、又はこれに係る同条第二項若しくは第三項の規定による通知を受ける前に警備業を営んだ者
   二  第七条第一項の規定による認定証の有効期間の更新の申請をしないで、認定証の有効期間の満了後引き続き警備業を営んだ者
   
三  第十三条の規定に違反して他人に警備業を営ませた者
   四  第十九条の規定に違反して、書面を交付せず、又は同条に規定する事項が記載されていない書面若しくは虚偽の記載のある書面を交付した者
   五  第二十二条第一項の規定に違反して警備員指導教育責任者を選任しなかつた者
   六  第四十条の規定に違反して届出をしなかつた者
   七  第四十八条の規定による指示に違反した者
   八  偽りその他不正の手段により第四条の認定又は第七条第一項の認定証の有効期間の更新を受けた者」

 とあり、
  警備業法第57条3号によれば、第13条の名義貸しは、罰金100万円以下ですから、正しい。



答え:2

《タグ》 警備業法。 契約の概要について記載した書面の交付。 機械警備業務。 機械警備業務管理者。 名義貸しの禁止と罰金。

  細かい。しかし、選択肢2は、なんとなくわかるか? 出題傾向としてどうして、機械警備業務に拘るのか分からないけど。

問25

*本問の解説においては、高井憲彦様のご協力を得ています。高井様有り難うございます。


〔問 25〕マンションの駐車場に関し、マンション管理士が理事会で行った次の助言のうち、標準管理規約によれば、適切なものはどれか。

1 今後、駐車場に空き区画が出るようになった場合、組合員以外の方に外部貸しする方法がありますが、その駐車場使用料収入は、駐車場の管理に要する費用に充当した後に管理費全体の不足額に充当することができるため、管理費不足への対策として有効な方法です。

X 適切でない。 駐車場使用料収入に余剰がでれば、管理費勘定に充当ではなく、修繕積立金勘定にいれる。
 平成27年 管理業務主任者試験 「問12」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問35」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問12」 、平成21年 マンション管理士試験 「問29」 。 
 
 最近は、若者の車離れがあり、マンションに限らず、駐車場の使用率が減っています。そこで、敷地内の駐車場に空がでれば組合員以外の外部の人に貸し出す方法も検討が必要です。しかし、駐車場の収入は、組合員に貸す場合には、収益事業となりませんが、外部の人からの駐車場使用料は、収益事業となりますので、注意が必要です。
 それが、標準管理規約29条
 「(使用料)
 第29条 
駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料(以下「使用料」という。)は、それらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる。」
 とあり、
 駐車場使用料収入は、駐車場の管理に要する費用に充当した後に管理費全体の不足額に充当するのは、適切ではありません。
 
 参考:標準管理規約15条及び コメント@
 「(駐車場の使用)
 第15条  管理組合は、別添の図に示す駐車場について、特定の区分所有者に駐車場使用契約により使用させることができる。
 2  前項により駐車場を使用している者は、別に定めるところにより、管理組合に駐車場使用料を納入しなければならない。
 3  区分所有者がその所有する専有部分を、他の区分所有者又は第三者に譲渡又は貸与したときは、その区分所有者の駐車場使用契約は効力を失う。
 コメント 第15条関係
 @ 本条は、マンションの住戸の数に比べて駐車場の収容台数が不足しており、駐車場の利用希望者(空き待ち)が多い場合を前提としている。
 
近時、駐車場の需要が減少しており、空き区画が生じているケースもある。駐車場収入は駐車場の管理に要する費用に充てられるほか、修繕積立金として積み立てられるため(第29条)、修繕積立金不足への対策等の観点から組合員以外の者に使用料を徴収して使用させることも考えられる。その場合、税務上、全てが収益事業として課税されるケースもあるが、区分所有者を優先する条件を設定している等のケースでは、外部貸しのみが課税対象となり区分所有者が支払う使用料は共済事業として非課税とする旨の国税庁の見解(「マンション管理組合が区分所有者以外の者へのマンション駐車場の使用を認めた場合の収益事業の判定について(照会)」(平成24年2月3日国住マ第43号)及びこれに対する回答(平成24年2月13日))が公表されているため、参照されたい。

 なお、標準管理規約19条は、従来から規定されている事項であり平成28年3月の改正はありませんが、15条のコメントに関しては、追加されています。

 高井様の解説:
 × 不適切である。
 標準管理規約第29条(使用料)で「駐車場使用料その他の敷地及び共用部分等に係る使用料は、それらの管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる」と規定されており管理費の不足額に充当することはできないので設問は不適切です。



2 駐車場が不足している場合には、駐車場使用料を近傍の駐車場料金と均衡を失しないよう設定することが必要ですが、利便性の差異を加味して考えることも必要です。

〇 適切である。
 平成26年 マンション管理士試験 「問27」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問35」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問28」 。
 平成28年3月の改正点。

 選択肢1でも引用しました、標準管理規約15条の コメントG
 「G 駐車場が全戸分ない場合等には、駐車場使用料を近傍の同種の駐車場料金と均衡を失しないよう設定すること等により、区分所有者間の公平を確保することが必要である。
なお、近傍の同種の駐車場料金との均衡については、利便性の差異も加味して考えることが必要である。
また、平置きか機械式か、屋根付きの区画があるかなど駐車場区画の位置等による利便性・機能性の差異や、使用料が高額になっても特定の位置の駐車場区画を希望する者がいる等の状況に応じて、柔軟な料金設定を行うことも考えられる。

 とあり、
 適切です。
 
緑字の箇所が平成28年3月の改正で追加されたコメントです。

 高井様の解説:
 〇 適切である。正解
  以前の標準管理規約第15条のコメントGでは「駐車場使用料を近傍の同種の駐車場料金と均衡を失しないよう設定し、区分所有者間の公平を確保することが必要である」とのコメントであったが、平成28年3月に改正された標準管理規約第15条のコメントGに「利便性の差異も加味して考えることが必要である」とのコメントが追加されており設問は適切です。



3 管理費、修繕積立金の滞納等の規約違反の場合は、駐車場使用契約に、次回の選定時の参加資格をはく奪することができる旨の規定を定めることはできません。

X 適切でない。 滞納者に対しては、駐車場使用契約の解除や選定から外すことを考えること。
 平成23年 マンション管理士試験 「問32」 選択肢4 。
 

 選択肢1でも引用しました、標準管理規約15条の コメントE
 「E
駐車場使用細則、駐車場使用契約等に、管理費、修繕積立金の滞納等の規約違反の場合は、契約を解除できるか又は次回の選定時の参加資格をはく奪することができる旨の規定を定めることもできる。 」
 とあり、
 次回の選定時の参加資格をはく奪することができる旨の規定を定めることもできますから、適切ではありません。
 マンションの管理費や修繕積立金と異なり、滞納された駐車場使用料は、承継人には請求できないという判断もありますから、滞納金が増えないうちに、駐車場使用契約を解除することをお勧めします。

 高井様の解説:
 × 不適切である。
 標準管理規約第15条のコメントEで「駐車場使用細則、駐車場使用契約等に管理費、修繕積立金の滞納等の規約違反の場合は、契約を解除できるか又は次回の選定時の参加資格をはく奪することができる旨の規定を定めることもできる」とコメントされており設問は不適切です。 
 平成28年3月の改正に関係しません。


4 今後、機械式駐車場から平置きの駐車場に変更しようとするときは、総会で出席組合員の議決権の過半数の決議があれば実施が可能です。

X 適切でない。 重大変更は、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。出席組合員の議決権の過半数ではできない。 
 平成26年 マンション管理士試験 「問31」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問32」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問32」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問31」 。
 
 まず、総会の決議は、標準管理規約47条
 「(総会の会議及び議事)
 第47条  総会の会議は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。
 2  総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。
 3  次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、
前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。
   一  規約の制定、変更又は廃止
   
二  敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの及び建築物の耐震改修の促進に関する法律第25条第2項に基づく認定を受けた建物の耐震改修を除く。
   三  区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴えの提起
   四  建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
   五  その他総会において本項の方法により決議することとした事項
 4  建替え決議は、第2項にかかわらず、組合員総数の5分の4以上及び議決権総数の5分の4以上で行う。
 5  マンション敷地売却決議は、第2項にかかわらず、組合員総数、議決権総数及び敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上で行う。
 〔※管理組合における電磁的方法の利用状況に応じて、次のように規定〕
 (ア)電磁的方法が利用可能ではない場合
 6 前5項の場合において、書面又は代理人によって議決権を行使する者は、出席組合員とみなす。

 (イ)電磁的方法が利用可能な場合
 6 前5項の場合において、書面、電磁的方法又は代理人によって議決権を行使する者は、出席組合員とみなす。

 7  第3項第一号において、規約の制定、変更又は廃止が一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。この場合において、その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
 8  第3項第二号において、敷地及び共用部分等の変更が、専有部分又は専用使用部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分を所有する組合員又はその専用使用部分の専用使用を認められている組合員の承諾を得なければならない。この場合において、その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはならない。
 9  第3項第三号に掲げる事項の決議を行うには、あらかじめ当該組合員又は占有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。
 10 総会においては、第43条第1項によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる。 」
 です。
 そこで、設問の「機械式駐車場から平置きの駐車場に変更」は、標準管理規約47条3項二号の「敷地及び共用部分等の変更(重大変更)」に該当し、同条3項の規定のとおり「組合員総数の3/4以上及び議決権総数の3/4以上で決する(特別多数決議)」が必要となるため、出席組合員の議決権の過半数の決議は適切ではありません。
 なお、47条関係のコメントのD
 カ)では「集会室、駐車場、駐輪場の増改築工事などで、大規模なものや著しい加工を伴うものは特別多数決議」が必要とされています。

  なお、標準管理規約47条で
緑字の箇所は平成28年3月の改正箇所ですが、この設問には関係していません。

 高井様の解説:

 X 不適切である。 
 設問の「機械式駐車場から平置きの駐車場に変更する場合」は標準管理規約第47条第3項二号の「敷地及び共用部分等の変更」に相当し、同条第3項の規定のとおり「組合員総数の3/4以上及び議決権総数の3/4以上で決する(特別多数決議)」が必要となる」ので設問は不適切です。
 また、同第47条コメントのDのカ)では「集会室、駐車場、駐輪場の増改築工事などで、大規模なものや著しい加工を伴うものは特別多数決議が必要」とコメントされており設問はこれに該当します。
 平成28年3月の改正に関係しません。



答え:2

《タグ》標準管理規約。 駐車場使用料の余剰は、修繕積立金へ。 滞納の場合。 普通決議と特別多数決議。

  高井様のコメント:駐車場に関する設問はほとんど毎年出題されており判例を含めて注意が必要です。平成28年度の出題は選択肢2を除いて、平成28年3月の改正に関係する箇所はなかった。

   平成28年3月の標準管理規約の改正は大幅であるため全体を確認するため当サイトの 「改正標準管理規約(単棟型)」 や国交省の 「マンション管理について」 から全文をプリントしたり別ウインドウで開き参照したりしてください。

ここまで、問25


次へ次へ

2017年 3月 4日;再度、「問22」の水道法を見直した。
2017年 2月17日:再チェックして、リンクなども入れた。
本当に、マンション管理士試験では、出題者のレベルが低下している。
もっと、高邁な出題を期待する。
解説第1稿済:2016年12月25日:ここまでの感想:出題者のレベルが落ちている。
法の本質から外れた”できる”とか”できない”からの出題は、簡単な問題作りで、能がない。
解説開始:2016年11月29日

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