平成27年(2015年) マンション管理士 試験問題 及び 解説
ページ1(問1より問25まで)
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謝辞:当問題の作成にあたっては、金井様、青木様のご協力を戴いております。
特に、青木様においては、試験問題のテキスト化で、多大なご助力をいただき、感謝いたしております。
ご質問は、 「マンション管理士 香川事務所」へ。
*注: マンション標準管理規約(単棟型、団地型、複合用途型)は、平成28年3月に改正があり、当解説においては、未対応ですから、注意してください。(2016年 5月 3日:下線や取消し線で対応した。)
また、「マンションの管理の適正化に関する指針」も平成28年3月に改正がありましたので、注意してください。
※ 出題当時以後の法令等の改正には、一部は対応していません。
*試験に臨んで、お節介なアドバイス
1.設問にあわせて、問題用紙に ○(まる)、X(ばつ)をつける。
殆どの設問が、「正しい」か「間違い」かを訊いてきますので、設問により、問題の頭に、○かXをつけます。
そして、各選択肢を読み、○かXをつけます。
問題の○なりXと、選択肢の○かXが一致したものを、マークシートに記入してください。
2.疑問な問題は、とりあえず飛ばす。
回答の時間は限られています。
そこで、回答として、○かXかはっきりしないものがでたら、「?」マークをつけて、次の問題に移ります。
全部の回答が終わってから、再度戻って決定してください。
3.複雑な問は、図を描く。
甲、乙、A、B、Cなど対象が多い問題もでます。
この場合、問題用紙の空いているところに、図を描いてください。
重要な点が分かってきます。
(出題者からの注意)
次の注意事項をよく読んでから、始めてください。
(注意)
1 これは試験問題です。問題は、1ページから28ページまでの50問です。
2 試験開始の合図と同時に、問題のページ数を確認してください。
もし落丁や乱丁があった場合は、ただちに試験監督員に申し出てください。
3 答は、別の解答用紙に記入してください。
解答用紙に記入する際は、解答用紙の注意事項をよく読み、所定の要領で記入してください。
4 答は、各問題とも1つだけです。
2つ以上の解答をしたもの、判読が困難なものは、正解としません。
5 問題中法令に関する部分は、平成27年4月1日現在施行中の規定に基づいて出題されています。
解説者からのコメント:あやふやな出題、適切でない出題もあって、解答ができないのもあります。
※ マンション標準管理規約は、平成16年に改正があった。また、平成23年7月にも小幅な改正があった。
マンション標準管理委託契約書は、平成15年に改正があった。また、平成22年5月にも改正があった。
問1
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[問 1〕 マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号イに規定するマンションをいう。以下同じ。)に関する次の記述のうち、建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)及び民法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 区分所有法第3条の区分所有者の団体(以下「管理組合」という。)が集会を開催する場合は、規約を定め管理者を置かなければならない。
X 誤っている。 区分所有者の団体は、集会の開催も、規約を定めるのも、管理者を置くのも、強制ではなく”任意”である。
まず、私の過去の年度の解説を読んでいる人には、度々となりますが、これは、受験での基本ですから、述べます。
建物の区分所有等に関する法律(以下、当解説では、「区分所有法」といいます)では、法律用語として「マンション」の定義がありません。しかし、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下、当解説では、「マンション管理適正化法」といいます)第2条では、以下のように定義されていますので、マンションの用語を試験で使用する際には設問のような「マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号イに規定するマンションをいう」の表現が使用されます。
そこで、マンション管理適正化法第2条とは、
「(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
一 マンション 次に掲げるものをいう。
イ 二以上の区分所有者(建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)第二条第二項 に規定する区分所有者をいう。以下同じ。)が存する建物で人の居住の用に供する専有部分(区分所有法第二条第三項 に規定する専有部分をいう。以下同じ。)のあるもの並びにその敷地及び附属施設」
です。マンション管理適正化法第2条1号イによれば、「マンション」であるための要件は、
@2人以上の区分所有者 がいて、
A人の居住用の専有部分が1つでもあればいい
です。マンションの建物には、専有部分と共用部分しかなく、そして、マンションは専有部分と共用部分を含んだ建物と敷地及び附属施設の全体的なものであることに注意してください。
この規定は、平成27年のマンション管理士試験 「問46」 でも出ています。大変に重要な規定です。
そこで、設問に関係するのは、区分所有法第3条
「(区分所有者の団体)
第三条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。」 とあり、
この区分所有法第3条によれば、区分所有者の団体は、「集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことが”できる”」 となっています。
そこで、集会を開催する場合でも、特に規約を定めることや、管理者を置くことは強制されていません。任意ですから、誤りとなります。
2 規約敷地については、区分所有者が有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権の分離処分禁止に係る区分所有法第22条第1項の規定は適用されない。
X 誤っている。 規約敷地となると法定敷地と同様に、専有部分と敷地利用権の分離処分は禁止され、区分所有法第22条1項が適用される。
平成26年マンション管理士試験 「問2」 、平成26年管理業務主任者試験 「問34」 、 平成25年マンション管理士試験 「問1」 、平成19年管理業務主任者試験 「問35」
まず、規約敷地の説明の前に、区分所有法で定める「建物の敷地」には、2種類あります。1番目は、区分所有法第2条5項
「(定義)
第二条
5 この法律において「建物の敷地」とは、建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により建物の敷地とされた土地をいう。」 とあり、
建物の敷地としては、@「建物が所在する土地」で、これは、現実に建物(マンション)が建っている土地が1番目の「建物の敷地」です。
建物が建っていれば、建物の下の土地(底地)は、一筆でも、数筆にまたがっていてもかまいません。
この土地は、他から見ても分かるため、「法定敷地」と呼ばれます。
2番目の「建物の敷地」は、同法第2条5項で引用されています、A「第5条1項の規定により建物の敷地とされた土地」です。
そこで、引用されています、区分所有法第5条とは、
「(規約による建物の敷地)
第五条 区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる。
2 建物が所在する土地が建物の一部の滅失により建物が所在する土地以外の土地となつたときは、その土地は、前項の規定により規約で建物の敷地と定められたものとみなす。建物が所在する土地の一部が分割により建物が所在する土地以外の土地となつたときも、同様とする。」 とあります。
そこで、区分所有法第5条1項によれば、その土地の上に実際の建物(マンション)は建っていませんが規約を定めて、建物(マンション)と共に管理・使用することにした庭、通路、駐車場、公園など地番が異なる土地でも、「建物の敷地」にするということです。
この土地が、出題の「規約敷地」と呼ばれています。
区分所有法では、第2条5項により、@法定敷地 も A規約敷地 も区別無く、同じ「建物の敷地」として扱われることになっています。
では、設問の「専有部分と敷地利用権の分離処分の禁止」は、区分所有法第22条にあります。
「(分離処分の禁止)
第二十二条
敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
2 前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第十四条第一項から第三項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。
3 前二項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。」 とあります。
区分所有法第22条1項によれば、「敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。」 です。
そこで、「敷地利用権」とは、何かということですが、これは、同法第2条6項
「(定義)
第二条
6 この法律において「敷地利用権」とは、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利をいう。」 です。
基本的な話ですが、民法においては、土地と建物を別個の不動産と規定し、土地と建物は各々が別の権利を持っています。
そこで、建物を所有するためには建物に対する権利の他、建物のために土地を使用する権利(所有権、地上権など)も必要となります。
戸建てであれば、土地の権利者と建物の権利者が分かれていても売買などでも問題が無かったのですが、区分所有建物(マンション)では、土地の所有権者と部屋(専有部分)の所有権者が別々であると、土地の所有権者から専有部分(部屋)の取り壊しを請求できる場合もあります。しかし、マンションは壁で隣室と繋がっていますから、取り壊しは、他の人の権利に多大の影響を及ぼします。
そこで、このような、事態を避けるために、区分所有法第2条6項では、このマンションにおける建物所有に必要な土地に対する権利を「敷地利用権」と定義し、民法で定める、一般の土地に対する権利とは別の概念を創設定義しました。
そこで、敷地利用権の対象となる「建物の敷地」には、上で説明しました、@「法定敷地」とA「規約敷地」が該当しますから、区分所有法第22条1項で定める、「区分所有者が有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権の分離処分禁止に係る規定」が、「規約敷地」にも適用されるため、誤りです。
3 一部共用部分については、それを共用する区分所有者によって構成される管理組合が管理しなければならない。
X 誤っている。 一部共用部分でも、全体の管理に入る場合、全体の規約で管理することがある。
平成26年マンション管理士試験 「問9」 、平成25年マンション管理士試験 「問9」 、平成26年管理業務主任者試験 「問37」 、 平成26年管理業務主任者試験 「問36」 、 平成23年マンション管理士試験 「問1」
まず、一部共用部分とは、区分所有法第3条
「(区分所有者の団体)
第三条
区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び
管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管 理するときも、同様とする。」 とあり、
「一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分」 です。
この文章を読んで、すぐ理解できる人はあまりいませんから、心配しないでください。
「一部共用部分」とは、具体的には、1棟のマンションで下が店舗、上が住居用の構造となっており、店舗部分には従業員専用入り口やお客を対象にした出入口があり、住居部に対しては住居部専用の出入口や居住階専用のエレベーターがある場合を考えてください。
この状況で店舗用の共用部分である従業員専用出入り口や店内にある廊下などの部分は、店舗部だけの「一部共用部分」となりますし、また、住居部専用の出入口や住居部だけが使用する廊下、居住階専用のエレベーターなどがあればその共用部分は、住居部だけの「一部共用部分」となります。
この場合、外壁など全体の共用部分を管理する団体(管理組合)が存在し、また、住宅部を管理する団体(管理組合)も店舗部を管理する団体(管理組合)も併存しています。
そして、一部共用部分の管理については、区分所有法第16条
「(一部共用部分の管理)
第十六条
一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するもの又は第三十一条第二項の規約に定めがあるものは区分所有者全員で、その他のものはこれを共用すべき区分所有者のみで行う。」 とあります。
この区分所有法第16条によれば、一部共用部分であっても、
@区分所有者全員の利害に関係するもの
A第三十一条第二項の規約に定めがあるもの
なら、その管理は、区分所有者全員で行い、
Bその他のものだけが、これを共用すべき区分所有者で構成される団体(管理組合)の管理になりますから、設問は、誤りです。
4 各共有者の持分の割合は、共用部分について規約に別段の定めがないときはその有する専有部分の床面積の割合により決められ、共用部分以外の附属施設については当事者の合意がないときは相等しいものと推定される。
○ 正しい。 共用部分なら区分所有法が適用され、共用部分以外では、民法の適用となる。
まず、マンションの廊下や階段室など共用部分(規約共用部分も含めて)の持分の割合は、区分所有法第14条
「(共用部分の持分の割合)
第十四条
各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
2 前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべ
き各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。
3 前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。
4 前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。」 とあります。
区分所有法第14条1項及び同4項により、規約が無ければ、共用部分の持分の割合は「その有する専有部分の床面積の割合」となりますから、設問の前半、「各共有者の持分の割合は、共用部分について規約に別段の定めがないときはその有する専有部分の床面積の割合により決められ」は正しい。
そして、設問の後半の、「共用部分以外の附属施設」については、区分所有法に規定される「共用部分でない」となっていますから、原則、当事者間の取決め(合意)が無いときは、民法の共有の規定第250条
「(共有持分の割合の推定)
第二百五十条 各共有者の持分は、相等しいものと推定する。 」 により、
相等しいものと推定されますから、正しい。
答え:4
「問1」の解説は、初めてマンション管理士の試験問題に接する人も考慮して、定義や条文の解説など、かなり詳細に記述しました。
なお、区分所有法の解説としては、「マンション管理士 香川事務所」 が無料で提供しています、「超解説 区分所有法」 のサイトもありますから、ご利用ください。
《タグ》 区分所有法 + 民法、 団体、規約敷地、分離処分の禁止、一部共用部分、共用部分の持分
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問2 |
〔問 2〕 管理組合と管埋組合法人に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。
1 管理組合の滞納管理費等に係る債権は、区分所有者全員に団体的に帰属する債権であり、区分所有者全員と当該滞納者との間の債権債務関係である。
○ 正しい。
債権と先取特権は、平成27年 管理業務主任者試験 「問38」でもでている。、平成25年 管理業務主任者試験 「問3」 、平成25年 管理業務主任者試験 「問2」 、平成25年 マンション管理士試験 「問4」 、平成23年 マンション管理士試験 「問16」 、平成21年 マンション管理士試験 「問3」 、平成19年 マンション管理士試験 「問4」 など多い。
滞納された管理費や修繕積立金などの債権と、区分所有法第3条で規定される区分所有者の団体(ここでは、この曖昧な団体を管理組合と一応、呼びますが)の関係は、区分所有法第7条の規定があります。
「(先取特権)
第七条 区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。
2 前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす。
3 民法 (明治二十九年法律第八十九号)第三百十九条 の規定は、第一項の先取特権に準用する。 」 です。
ここで、先取特権の対象となる債権を考えると、以下の2種類となります。
@区分所有者が、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権、
A規約又は集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権
です。
@の債権としては、保存行為等で個人の区分所有者が立替えた現在の債権をいい、
Aの債権は管理費・修繕積立金・義務違反者の違約金等団体としての区分所有者の全員が共同して(または管理組合が)有する債権をいうとするのが一般のようです。
これは、区分所有法を作成した法務省の役人の説明ですが、これによれば、滞納管理費等は、区分所有者の団体(管理組合)に帰属する債権となり、区分所有者全員と当該滞納者との間の債権債務関係は、正しいとなります。
2 管理組合の管理者が職務の範囲内において第三者との間でした行為については、区分所有者は共用部分の持分の割合でその責めに任ずる。
○ 正しい。
平成23年マンション管理士試験 「問2」 、 平成14年マンション管理士試験 「問2」
これは、区分所有法第29条に明示されています。
「(区分所有者の責任等)
第二十九条 管理者がその職務の範囲内において第三者との間にした行為につき区分所有者がその責めに任ずべき割合は、第十四条に定める割合と同一の割合とする。ただし、規約で建物並びにその敷地及び附属施設の管理に要する経費につき負担の割合が定められているときは、その割合による。
2 前項の行為により第三者が区分所有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行うことができる。 」 です。
区分所有法第29条1項によれば、管理者が、職務の範囲内で第三者とした行為であれば、設問のように、規約が無ければ区分所有者が、第14条で定める共用部分の持分の割合(専有部分の床面積)で負担(責めに任ずる)しますから、正しい。
参考:区分所有法第14条1項
「(共用部分の持分の割合)
第十四条 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。」
3 法人格取得前の管理組合の滞納管理費等に係る債権は、法人格取得後も管理組合法人に帰属することはなく、管理組合法人と当該滞納者との間の債権債務関係にはならない。
X 誤っている。 管理組合が法人化されても、以前の債権・債務はそのまま、承継する。
平成20年マンション管理士試験 「問8」 、 平成14年管理業務主任者試験 「問36」
管理組合が法人化されると、区分所有法第47条5項
「(成立等)
第四十七条
5 管理組合法人の成立前の集会の決議、規約及び管理者の職務の範囲内の行為は、管理組合法人につき効力を生ずる。 」 とあります。
この区分所有法第47条5項の意味は、管理組合が法人化されても、前の区分所有者の団体(管理組合)が持っていた事項をそのまま引き継ぐということですから、従前の滞納管理費等の債権も、管理組合法人に帰属しますから、管理組合法人と当該滞納者との間の債権債務関係となり、設問は誤りです。
4 管理組合法人の理事が職務の範囲内において第三者との間でした行為について当該法人の財産をもって債務を完済することができないときは、区分所有者は共用部分の持分の割合でその責めに任ずる。
○ 正しい。
平成27年管理業務主任者試験 「問37」 、 平成25年管理業務主任者試験 「問5」 、 平成24年マンション管理士試験 「問8」
ちょっとばかり出題が捻っていますが、管理組合が法人になると、区分所有法第53条
「(区分所有者の責任)
第五十三条 管理組合法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、区分所有者は、第十四条に定める割合と同一の割合で、その債務の弁済の責めに任ずる。ただし、第二十九条第一項ただし書に規定する負担の割合が定められているときは、その割合による。
2 管理組合法人の財産に対する強制執行がその効を奏しなかつたときも、前項と同様とする。
3 前項の規定は、区分所有者が管理組合法人に資力があり、かつ、執行が容易であることを証明したときは、適用しない。 」 があります。
区分所有法第53条1項は、選択肢2で引用しています、同法第29条1項
「(区分所有者の責任等)
第二十九条 管理者がその職務の範囲内において第三者との間にした行為につき区分所有者がその責めに任ずべき割合は、第十四条に定める割合と同一の割合とする。ただし、規約で建物並びにその敷地及び附属施設の管理に要する経費につき負担の割合が定められているときは、その割合による。」
と似ています。
管理組合が法人化されますと、管理者の規定(第4節:第25条から第29条まで)などが適用されなくなります(区分所有法第47条11項参照)。その補完策として、管理組合法人では、管理者の代わりに理事が置かれます(区分所有法第49条1項)。
そこで、管理組合法人の代表でもある理事(区分所有法第49条2項参照)が職務の範囲内において第三者との間でした行為で発生した債務があれば、まず、管理組合法人の財産から充当し、それでも足りないときは、規約がなければ、区分所有者が、第14条で定める共用部分の持分の割合(専有部分の床面積)で負担(責めに任ずる)しますから、正しい。
答え:3
選択肢1と3で少し悩むが、誤りとしては、選択肢3の方が、明確でしょう。
《タグ》 民法、区分所有法、 債権・債務の帰属、団体、法人格
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問3 |
〔問 3〕 次のア〜エの記述のうち、区分所有法に規定されておらず、マンション標準管理規約(単棟型)(以下「標準管理規約」という。)に定めがあるものは、いくつあるか。
*注: マンション標準管理規約(単棟型、団地型、複合用途型)は、平成28年3月に改正があり、対応した。(2016年 5月3日)
ア 管理組合が管理費等について有する債権は、区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。
区分所有法にも規定がある。標準管理規約にも規定がある。
平成27年マンション管理士試験 「問26」も、 平成27年管理業務主任者試験 「問38」 、平成26年管理業務主任者試験 「問10」 、平成25年マンション管理士試験 「問4」
大変に面倒な設問です。区分所有法の条文を覚えて、またマンション標準管理規約(単棟型)(以下この解説においては「標準管理規約」といいます)の条文も覚えていますかということです。
では、区分所有法では、該当の規定は、同法第8条です。
「(特定承継人の責任)
第八条 前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。 」
区分所有法第8条で引用されています、「前条第一項に規定する債権」が、設問の「管理組合が管理費等について有する債権」に該当します。(これは、「問2」の選択肢1 を参照してください。)
次に、標準管理規約では、26条が該当します。 (注:平成28年3月の改正点。)
「(承継人に対する債権の行使)
第26条 管理組合が管理費等について有する債権は、区分所有者の 包括承継人及び 特定承継人に対しても行うことができる。」 です。
ということで、区分所有法にも、標準管理規約にも規定があります。
なお、承継人とは、
イ 管理者は、管理組合が火災保険その他の損害保険の契約を締結した場合に、その契約に基づく保険金額の請求及び受領について、区分所有者を代理する。
区分所有法にも規定がある。標準管理規約にも規定がある。
平成27年管理業務主任者試験 「問1」 、 平成26年マンション管理士試験 「問4」 、 平成26年管理業務主任者試験 「問42」 、平成24年マンション管理士試験 「問7」 、 平成24年管理業務主任者試験 「問1」
まず、区分所有法第26条2項
「(権限)
第二十六条
2 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。 」 とあり
引用されています第18条4項は、
「(共用部分の管理)
第十八条
4 共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。 」
ですから、設問は、区分所有法では規定されています。
次に、標準管理規約では、24条 (注:平成28年3月の改正点。)
「(損害保険)
第24条 区分所有者は、共用部分等に関し、管理組合が火災保険 、地震保険 その他の損害保険の契約を締結することを承認する。
2 理事長は、前項の契約に基づく保険金額の請求及び受領について、区分所有者を代理する。」 とあります。
標準管理規約において、理事長は、38条2項
「(理事長)
第38条
2 理事長は、区分所有法に定める管理者とする。」 です。
ということで、区分所有法でも標準管理規約でも、設問は規定されています。
ウ 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。
区分所有法には規定がない。標準管理規約には規定がある。
区分所有法が対象にしていますのは、住居、店舗、事務所、倉庫などで、特に住宅に限定する規定はありません
そこで、区分所有法では、設問のような、「その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない」の規定はありません。
一方、 標準管理規約の単棟型が対象にしていますのは、一般分譲の住宅専用マンションです。そこで、標準管理規約12条
「(専有部分の用途) (注:平成28年3月で変更なし。)
第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし他の用途に供してはならない。」 と規定しています。
設問は、区分所有法には規定がありませんが、標準管理規約には規定があります。
エ 区分所有者は、その専有部分について、修繕を行おうとするときは、あらかじめ、管理者にその旨を申請し、書面による承認を受けなければならない。
区分所有法には規定がない。標準管理規約には規定がある。
区分所有法では、「専有部分の修繕の申請」についての規定はありません。
一方、標準管理規約では、細かく、17条1項に (注:平成28年3月の改正点。)
「(専有部分の修繕等)
第17条 区分所有者は、その専有部分について、修繕、模様替え又は建物に定着する物件の取付け若しくは取替え(以下「修繕等」という。) であって共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのあるもの を行おうとするときは、あらかじめ、理事長(第35条に定める理事長(注:区分所有法での管理者です。)をいう。以下同じ。)にその旨を申請し、書面による承認を受けなければならない。」 とあります。
設問は、区分所有法には規定がありませんが、標準管理規約には規定があります。
1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ
答え:2 二つ (区分所有法に規定がなく、標準管理規約に規定があるのは、ウとエ)
個数問題は、単なる4択よりも、精度が必要で、また面倒ですが、ここは、そんなに難しくはないでしょう。
《タグ》区分所有法と標準管理規約の違い。 特定承継人、管理者の権限、理事長とは、用途の制限
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問4
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〔問 4〕共用部分に関する次の記述のうち、区分所有法に「規約で別段の定めをすることを妨げない。」と規定されていないものはどれか。
1 共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。
規約で別段の定めができる。
平成22年マンション管理士試験 「問2」 、 平成21年マンション管理士試験 「問4」 、
「妨げない」と「規定されていないもの」とは、なんという出題のまずさでしょうか? 二重否定とは、出題として、誤解を招く恐れがあるため、止めるべきです。
それは、それとして、該当の条文は、区分所有法第11条にあります。
「(共用部分の共有関係)
第十一条 共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第二十七条第一項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。
3 民法第百七十七条 の規定は、共用部分には適用しない。 」 です。
区分所有法第11条の1項及び2項によれば、「共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。」の規定は、「規約で別段の定めができます」。
2 共用部分の各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
規約で別段の定めができる。
平成26マンション管理士試験 「問7」 、平成25年マンション管理士試験 「問32」 、
該当の条文は、区分所有法第14条です。
「(共用部分の持分の割合)
第十四条 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
2 前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。
3 前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。
4 前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。」 です。
区分所有法第14条の1項及び4項によれば、 「共用部分の各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による」の規定は、「規約で別段の定めができます」。
3 共用部分の管理に関する事項は、共用部分の変更(その形状又は効用の著し更を伴わないものを除く。)を除いて、集会の決議で決する。
規約で別段の定めができる。
平成27年管理業務主任者試験 「問29」 、平成26年マンション管理士試験 「問9」 、平成24年マンション管理士試験 「問16」
該当の条文は、区分所有法第18条にあります。
「(共用部分の管理)
第十八条 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
3 前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。
4 共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。 」 です。
第18条で引用されています、前条とは、第17条です。
「(共用部分の変更)
第十七条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。 」 です。
区分所有法第17条の「共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)」が、該当します。
そこで、区分所有法第18条の1項及び2項によれば、「共用部分の管理に関する事項は、共用部分の変更(その形状又は効用の著し更を伴わないものを除く。)を除いて、集会の決議で決する。」の規定は、「規約で別段の定めができます」。
4 共有者は、共用部分をその用方に従って使用することができる。
規約で別段の定めを認めていない。
平成24年管理業務主任者試験 「問38」 、 平成23年管理業務主任者試験 「問34」
該当の条文は、区分所有法第13条
「(共用部分の使用)
第十三条 各共有者は、共用部分をその用方に従つて使用することができる。 」 です。
区分所有法第13条では、「規約で別段の定めができる」の規定がありません。
答え:4
出題に、二重否定を使うとは、誤解を招くため適切ではありません。
マンション管理士及び管理業務主任者の受験生が弱いのが、この「規約で別段の定めができる」の箇所です。ちゃんと、ノートに纏めておくことです。
区分所有法第17条と第18条については、よく出題がありますので、マンション管理士 香川 が提供しています、「超解説 区分所有法」で、理解してください。
《タグ》区分所有法 、 規約、別段の定め
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問5 |
〔問 5〕 甲マシション管理組合法人(区分所有者数は30人)において、A、B及びCの3名が理事に、Dが監事にそれぞれ選任されている場合の事務の取扱いに関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。ただし、規約には、理事の員数は3と定められているものとし、集会にはA、B、C及びDのほか、区分所有者全員が出席したものとする。
1 規約に別段の定めがなくても、A、B及びCの3名の理事の互選によって管理組合法人を代表すべき理事を定めることができる。
X 誤っている。 代表理事の選任は、規約若しくは集会の決議が必要。
平成23年マンション管理士試験 「問6」 、平成23年管理業務主任者試験 「問37」
標準管理規約の知識が優先すると、間違えやすいのですが、区分所有法の規定だけによると、区分所有法第49条5項では、
「(理事)
第四十九条
5 前項の規定は、規約若しくは集会の決議によつて、管理組合法人を代表すべき理事を定め、若しくは数人の理事が共同して管理組合法人を代表すべきことを定め、又は規約の定めに基づき理事の互選によつて管理組合法人を代表すべき理事を定めることを妨げない。 」
とありますから、設問の「規約に別段の定めがなくても」は、誤りです。
管理組合法人では、原則;理事が数人あるときは、各理事が管理組合法人を代表している体制をとっています。(区分所有法第49条4項)。間違えないように。
2 Bが議長となって集会が開催されたときに、集会の議事録を書面で作成するには、A及びCが集会の議事録に署名押印をしなければならない。
X 誤っている。 集会の議事録署名人は、議長と集会に出席した区分所有者2名であって、特に理事とは強制されていない。
平成24年管理業務主任者試験 「問31」 、 平成22年マンション管理士試験 「問6」
管理組合が法人化されても、区分所有法の第5節の規定(規約及び集会)は、適用されます。その際に、管理者を理事と読み替える必要があります。
そこで、管理組合法人の集会の議事録の署名人に関する規定は、区分所有法第47条12項にあります。
「(成立等)
第四十七条
12 管理組合法人について、第三十三条第一項本文(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定を適用する場合には第三十三条第一項本文中「管理者が」とあるのは「理事が管理組合法人の事務所において」と、第三十四条第一項から第三項まで及び第五項、第三十五条第三項、第四十一条並びに第四十三条の規定を適用する場合にはこれらの規定中「管理者」とあるのは「理事」とする。
」 です。
第47条12項で準用されています、第42条が該当の規定です。
区分所有法第42条
「(議事録)
第四十二条 集会の議事については、議長は、書面又は電磁的記録により、議事録を作成しなければならない。
2 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、又は記録しなければならない。
3 前項の場合において、議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名押印しなければならない。
4 第二項の場合において、議事録が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報については、議長及び集会に出席した区分所有者の二人が行う法務省令で定める署名押印に代わる措置を執らなければならない。
5 第三十三条の規定は、議事録について準用する。 」 です。
区分所有法第47条12項で引用されています、第42条3項によれば、「議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名押印しなければならない。」とありますから、特に設問のように「A(理事)及びC(理事)が集会の議事録に署名押印をしなければならない」とは、規定されていませんから、誤りです。
3 Cが集会決議により解任された場合には、新たな理事が就任するまでの間、Cは理事の職務を行う必要がある。
X 誤っている。 理事の解任は、辞任ではない。解任では、理事職を継続できない。
平成25年マンション管理士試験 「問8」
キーワードは、「解任」です。参考になるのは、区分所有法第49条7項
「(理事)
第四十九条
7 理事が欠けた場合又は規約で定めた理事の員数が欠けた場合には、任期の満了又は辞任により退任した理事は、新たに選任された理事(第四十九条の四第一項の仮理事を含む。)が就任するまで、なおその職務を行う。 」 でしょうか。この規定との混同を狙った設問です。
しかし、集会で理事職を解かれた(解任)ということは、任期の満了や辞任・退任ではありません。もうその人は理事に相応しくないということですから、新たな理事が就任するまでその理事職を行ってはいけません。誤りです。
4 規約の定めにより、A、B及びCの任期は1年に、Dの任期は3年とすることができる。
○ 正しい。 規約があれば、3年以内で、理事と監事の任期を別々にはできる。
平成26年管理業務主任者試験 「問31」 、平成23年マンション管理士試験 「問6」
まず、理事の任期は、区分所有法第49条6項の規定、
「(理事)
第四十九条
6 理事の任期は、二年とする。ただし、規約で三年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。」 とあり、
管理組合法人の理事の任期は、原則;2年ですが、規約があれば、最長3年まで延長できますから、 理事である、A、B及びCの任期は、規約の定めにより、1年とすることは、正しい。
では、監事であるDの任期は、同法第50条4項
「(監事)
第五十条
4 第二十五条、第四十九条第六項及び第七項並びに前条の規定は、監事に準用する。」 とあり、
理事の任期の規定、区分所有法第49条6項が準用されていますから、監事の任期も、規約があれば最長3年まで可能ですから、こちらも正しい。
よって、選択肢4は、正しい。
答え:4
「問5」は、選択肢1も少し迷うかも知りませんが、選択肢4にはできるでしょう。
《タグ》区分所有法 、理事、監事、任期
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問6 |
〔問 6〕 区分所有者Aが甲マンションの管理者である場合の管理者の地位の喪失に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 集会の目的たる事項が、Aを管理者から解任する旨の議案であって、Aは、集会の決議において、議決権を行使することができる。
○ 正しい。 区分所有者である限り、議決権は奪えない。
管理者であっても、区分所有者であれば、たとえ「管理者から解任する旨の議案」であっても、その人から集会の議決権を奪う規定は、区分所有法にはありません。
区分所有法における議決権は、役職に付いている権利ではなく、区分所有者であれば、有する権利です。
参考;区分所有法第38条
「(議決権)
第三十八条 各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による。」
2 Aを管理者から解任する旨の議案が集会で否決されたときは、区分所有者Bは、Aにその職務を行うに適しない事情があることを理由とする管理者の解任を求める訴えを提起することはできない。
X 誤っている。 集会とは別に、裁判に訴えることができる。
平成23年管理業務主任者試験 「問34」 、 平成16年管理業務主任者試験 「問33」
管理者の選任又は解任は、区分所有法第25条
「(選任及び解任)
第二十五条 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。
2 管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。」 とあります。
区分所有法第25条1項によれば、管理者の選任又は解任は原則;集会で決めますが、多くの集会は、管理者(理事長)が中心となり開催されますから、自己に不利な議案の採用はしないとか、集会において区分所有者を自己に有利なように誘導し、解任案を否決させる恐れもあります。
しかし、管理者が不正な行為をしているのに、これを放置することは許されないことです。このような場合の救済策として、各区分所有者は個人で、裁判所に対して、管理者の解任を請求できるようになっているのが、第25条2項の規定ですから、設問は誤りです。
なお、裁判にするなら、「管理者に不正な行為」や「管理者がその業務を行うに適しない事情」がないといけません。
3 Aが集会の決議に基づいて管理者になっているときは、辞任によって管理者の地位から離れるためには、集会において辞任を承認する決議が必要である。
X 誤っている。 委任行為は、各当事者いつでもできる。集会の決議は不要。
平成24年管理業務主任者試験 「問4」 、平成16年管理業務主任者試験 「問2」 、 平成14年管理業務主任者試験 「問33」
まず、管理者になるということは、民法での「委任行為」であると解されます。
区分所有法第28条
「(委任の規定の準用)
第二十八条 この法律及び規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任に関する規定に従う。 」
参考;民法第643条
「(委任)
第六百四十三条 委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」
そこで、集会の決議に基づいて管理者になっても、管理者を辞めたければ、それは、民法での「委任の解除」となり、民法第651条
「(委任の解除)
第六百五十一条 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。
」 とあり、
民法第651条1項により、管理者は、いつでも、その職を辞することが可能ですから、「集会において辞任を承認する決議」は不要で、誤りです。
しかし、管理者を辞任するに際しては、「相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない」(2項)ともなりますから、ただ単に理事長職が嫌になったで辞めるなら、注意してください。
4 Aが死亡し、妻CがAのただ一人の相続人である場合には、CがAの管理者としての地位を承継して、管理者となる。
X 誤っている。 管理者の地位は死亡によって承継されない。
平成26年管理業務主任者試験 「問5」
選択肢3で述べましたように、管理者の地位は、民法の「委任契約」に基づいています。
そこで、受任者(管理者)が死亡すると、民法第653条
「(委任の終了事由)
第六百五十三条 委任は、次に掲げる事由によって終了する。
一 委任者又は受任者の死亡
二 委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと。
三 受任者が後見開始の審判を受けたこと。」 とあり、
民法第653条1号の規定により、死亡した管理者との委任関係が終了し、管理者の地位は、相続人には、承継されませんから、誤りです。
参考;区分所有法第25条
「(選任及び解任)
第二十五条 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。」
答え:1
選択肢1を選ぶのは、易しい。
《タグ》民法、区分所有法、 管理者の選任・解任、 地位の相続、委任
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問7
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〔問 7〕 集会に関する次の記述の[ ]の中の定数又は期間のうち、区分所有法の規定によれば、規約でその定数を増加することも減少することもいずれもできるもの、又はその期間を伸長することも短縮することもいずれもできるものはどれか。(解説者:マンション管理士 香川より注。正規の試験問題では、[ ]ではなく、□(四角)で表示されていますが、ネット言語では、四角の中に入れることが出来ないため、[ ]に変更しています。)
1 管理組合が管理組合法人となるためには、区分所有者及び議決権の各 [3/4以上] の多数による集会の決議によらなければならない。
X 区分所有者及び議決権の各 [3/4以上] の定数の変更は出来ない。定数の変更の規定がない。
平成26年マンション管理士試験 「問5」 、 平成21年マンション管理士試験 「問7」 、 平成21年管理業務主任者試験 「問33」
管理組合が管理組合法人となるための規定は、区分所有法第47条1項
「(成立等)
第四十七条 第三条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法人となる。」 とあります。
ただ、これだけですから、設問に対しては、定数の変更はできないとなります。
2. 区分所有者の [1/5以上] で議決権の1/5以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。
X [1/5以上]の定数は、減らせることはできるが、増加(加重)はできない。
平成26年マンション管理士試験 「問33」 、 平成24年管理業務主任者試験 「問31」 、 平成22年管理業務主任者試験 「問31」
該当の規定は、区分所有法第34条3項
「(集会の招集)
第三十四条
3 区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。 」 とあり、
規約があれば、区分所有者の数(定数)を減じること(1/6、とか1/7)はできますが、増やすことは出来ません。では、議決権の方は?
3 建替え決議を会議の目的としない集会の招集の通知は当該集会の会日より少なくとも [1週間前] に、各区分所有者に発しなければならない。
○ 建替えでなければ、集会の通知は、 [1週間前]の期間は、規約があれば、伸長も短縮もできる。
平成26年マンション管理士試験 「問30」 、 平成26年管理業務主任者試験 「問31」 、平成24年マンション管理士試験 「問25」
該当の規定は、区分所有法第35条1項
「(招集の通知)
第三十五条 集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。 」 とあり 、
この期間は、規約で伸ばしたり、短縮すること(伸縮)もできますから、正しい。
4 建替え決議を会議の目的とする集会の招集の通知は、当該集会の会日より少なくとも [2月前] に、各区分所有者に発しなければならない。
X 建替えなら、集会の通知の [2月前]は、規約があれば、伸ばすことだけができる。短くはできない。
平成26年管理業務主任者試験 「問31」 、平成20年マンション管理士試験 「問10」
該当の規定は、区分所有法第62条4項
「(建替え決議)
第六十二条
4 第一項に規定する決議事項を会議の目的とする集会を招集するときは、第三十五条第一項の通知は、同項の規定にかかわらず、当該集会の会日より少なくとも二月前に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸長することができる。 」 とあり、
伸ばすことだけが認められています。その理由は?
答え:3
期間や定数についての、まとめとして、いい出題です。基礎的な条文ですから、難しくは、ないでしょう。
《タグ》区分所有法 、 期間、定数、増減、伸長、短縮
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問8
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〔問 8〕 敷地が甲地、乙地及び丙地の3筆に分かれ、101号室、102号室及び103号室の3つの専有部分が存する区分所有建物がある。甲地及び甲地上の101号室はAが、乙地及び乙地上の102号室はBが、丙地及び丙地上の103号室はCが、それぞれ所有している(いわゆる分有形式)。この場合に関する次の記述のうち、区分所有法、民法及び不動産登記法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 Aが甲地及び101号室をDに譲渡した場合、101号室の権利の移転の登記がなされても、甲地の権利の移転の登記がなされなければ、Dは、甲地の権利を、第三者に対抗することができない。
○ 正しい。 分有形式なら、土地の権利と建物の権利は別々となる。
平成26年マンション管理士試験 「問26」 、平成26年管理業務主任者試験 「問1」 、平成25年マンション管理士試験 「問12」 、 平成24年マンション管理士試験 「問10」 、 平成22年マンション管理士試験 「問5」
まず、設問の分有形式であるということで、図を描いてみましょう。
設問のような3室からなる1つの建物は繋がっていますが、敷地が専有部分に対応して1筆ごとにあり、各区分所有者が、単独で敷地利用権を有する分有形式は、別にタウンハウスとも呼ばれ、今は珍しい存在ですが、昔の住宅公団等が販売していた方式です。
このような分有形式では、区分所有法第22条で定める専有部分と敷地利用権の分離処分の禁止(「問1」 選択肢2 参照)は、適用がないと解されます。それは、このような分有形式であれば、登記上も戸建てと変わりがないと立法担当者が判断したからです。
そのため、不動産登記法第44条1項9号に定める「敷地権」にも該当しなくなります。
そこで、土地の権利と建物の権利は、別々に処分(譲渡、贈与など)ができることになります。
参考:区分所有法第22条
「(分離処分の禁止)
第二十二条 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
2 前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第十四条第一項から第三項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。
3 前二項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。」
参考:不動産登記法第44条1項9号
「(建物の表示に関する登記の登記事項)
第四十四条 建物の表示に関する登記の登記事項は、第二十七条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
九 建物又は附属建物が区分建物である場合において、当該区分建物について区分所有法第二条第六項 に規定する敷地利用権(登記されたものに限る。)であって、区分所有法第二十二条第一項 本文(同条第三項 において準用する場合を含む。)の規定により区分所有者の有する専有部分と分離して処分することができないもの(以下「敷地権」という。)があるときは、その敷地権 」
では、設問に戻って、Aが甲地及び101号室をDに譲渡した場合で、建物の権利移転の登記は済んだが、土地の権利の移転登記が済まない場合の第三者への対抗となると、民法第177条
「(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。 」 とあり、
土地の登記をしていないと、第三者に対抗することができないため、正しい。
2 Bが死亡して相続人がないときに、遺贈を受けた者が存在せず、また特別の縁故があった者に対する相続財産の全部又は一部を分与する家庭裁判所の審判がない場合には、乙地及び102号室は国に帰属する。
○ 正しい。 区分所有法の適用外。
ある人が死亡して、相続人も、遺贈を受けた者も、また特別縁故者への財産分与もないとなると、民法第959条
「(残余財産の国庫への帰属)
第九百五十九条 前条の規定により処分されなかった相続財産は、国庫に帰属する。この場合においては、第九百五十六条第二項の規定を準用する。」 とあります。
ここでの、前条とは、特別縁故者への相続財産の分与の規定です。
この民法第959条の規定により、Bが所有していた、乙地と同じく102号室も、国庫のものとなりますから、正しい。
なお、区分所有法第24条で規定していますのは、敷地利用権が共有などの場合ですから、混乱しないように。
参考:区分所有法第24条
(民法第二百五十五条 の適用除外)
第二十四条 第二十二条第一項本文の場合には、民法第二百五十五条 (同法第二百六十四条 において準用する場合を含む。)の規定は、敷地利用権には適用しない。
民法第255条
(持分の放棄及び共有者の死亡)
第二百五十五条 共有者の一人が、その持分を放棄したとき、又は死亡して相続人がないときは、その持分は、他の共有者に帰属する。
3 管理組合が丙地の管理を行う旨の規約の定めがなくても管理組合は丙地の管理を行うことができる。
X 誤っている。 丙地は独立している。規約が必要。
丙地は、Cの単独所有地ですから、原則:丙地の管理は、持主であるCが行います。
そこで、ある団体=管理組合が丙地の管理を行うなら、お互いの取決め=規約が必要となり、誤りです。
4 区分所有建物の共用部分のA、B、Cの持分について、それぞれ甲地、乙地、丙地の面積の割合によることとする規約を定めることができる。
○ 正しい。 規約があれば、できる。
区分所有建物の共用部分であれば、その持分は、区分所有法第14条
「(共用部分の持分の割合)
第十四条 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。
2 前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。
3 前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。
4 前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。 」 とあり、
共用部分の持分は、区分所有法第14条1項により、原則;その有する専有部分の床面積の割合によりますが、4項により、規約で別段の定めを認めていますから、共用部分のA、B、Cの持分について、それぞれ甲地、乙地、丙地の面積の割合によることとする規約を定めることができ、正しい。
答え:3
分有を持ち出した、新しい出題方法です。基本が分かっていれば、難しくはない設問です。
《タグ》民法、区分所有法、 分有、タウンハウス、 登記と対抗要件、相続人不在、国庫、規約
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問9
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〔問 9〕 区分所有法第6条第1項の区分所有者の共同の利益に反する行為を行っている者(以下「義務違反者」という.)に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 専有部分で騒音や悪臭等を発生させる営業を行っている義務違反者に対しては、区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、区分所有法第59条による区分所有権及び敷地利用権の競売請求が認められる。
○ 正しい。
平成26年マンション管理士試験 「問4」 、 平成25年マンション管理士試験 「問2」 、平成24年マンション管理士試験 「問3」 、 平成23年マンション管理士試験 「問32」
まず、マンションで生活をするならルールを守らなければならないという規定が、区分所有法第6条1項にあります。
「(区分所有者の権利義務等)
第六条 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。 」 です。
区分所有者の共同の利益に反する行為といっても具体的ではありませんが、裁判によって、以下のような項目が、挙げられています。
★共同の利益に反する行為
{具体的な例-1}
・耐力壁の撤去、
・専有部分に爆発物(危険物)の持ち込み、
・住居専用使用と決めているのに事務所・店舗とする、
・廊下や階段室に私物を置く、
・勝手に自動車を停める、
・外壁やベランダに家庭教師の宣伝用看板を取り付ける、
・プライバシーの侵害、
・騒音、悪臭の発散
・猛獣や規約で禁止されているペットの飼育
{例-2}管理費等の滞納が原因で、建物の修繕に重大な支障が生ずるような状況に至っている場合は、こ の滞納は、建物の管理に関し区分所有者の共同の利益に反する行為に当たる。
{例-3}占有者が野鳩に餌付けをして、飼育をしていて他の居住者の迷惑になり、使用賃貸借契約の解除、占有者の退去、占有者に対する損害賠償請求が認められた。
{例-4}役員への誹謗・中傷でも共同の利益に反することもある。
そこで、設問の「専有部分で騒音や悪臭等を発生させる営業を行っている義務違反者」は、第6条1項に該当します。
すると、義務違反者に対しては、区分所有法第57条以下の規定があり、
第57条「行為の停止」、第58条「使用の禁止」、第59条「競売」、第60条「占有者に対する引渡し」となっています。
設問の区分所有法第59条は、
「(区分所有権の競売の請求)
第五十九条 第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。
2 第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
3 第一項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。
4 前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。」 です。
この区分所有法第59条によれば、 「第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるとき」に該当すれば、区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができますから、一応正しい。
一応”正しい”にしましたのは、設問の「専有部分で騒音や悪臭等を発生させる営業を行う」行為が、第三者が強権的にその人をマンションから追い出すまでの「共同利益違反」とまで言えるかどうか、かなり疑問があるためです。裁判で、競売が認められる例としては、マンションの1室が暴力団事務所だった場合です。
2 区分所有者の管理費等の滞納によって、共用部分等の管理に要する費用が不足し管理が不十分になったり、他の区分所有者の立替えの必要が生じたりする場合は、当該区分所有者の滞納は、区分所有者の共同の利益に反する行為に該当する。
○ 正しい。
管理費等の滞納は、選択肢1で挙げましたように、区分所有者の共同の利益に反する行為に該当しますから、正しい。
3 管理費等の滞納による義務違反者に対しては、区分所有法第57条の差止請求及び第58条の専有部分の使用禁止の請求を行った上で、それでも功を奏さない場合でなければ、同法第59条による区分所有権及び敷地利用権の競売請求は認められない。
X 誤っている。 設問のような規定はない。 区分所有法第59条は、第57条、第58条の請求がなくても請求できる。
管理費等の滞納で、マンションから追い出されるのかという問題はありますが、最近の判例では、滞納管理費で強制競売を認めた例もあります。
区分所有法第59条の「区分所有権等の競売の請求」は、第57条と第58条そして第59条と、順を追って請求するものではなく、それぞれの要件や効果を異にしていますから、互いに、どれかが認められる場合には他は認められないという排斥的な関係にありますから、誤りです。
参考;区分所有法第57条
(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
第五十七条 区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
2 前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
3 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
4 前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。
区分所有法第58条
(使用禁止の請求)
第五十八条 前条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、前条第一項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる。
2 前項の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。
3 第一項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。
4 前条第三項の規定は、第一項の訴えの提起に準用する。
区分所有法第59条
(区分所有権の競売の請求)
第五十九条 第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。
2 第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
3 第一項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。
4 前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。
4 管理費等を滞納している義務違反者に対して、管理費等の滞納の解消を図るため「管理者は、区分所有権及び敷地利用権の競売請求の訴えに関して、理事会の決議により、管理組合を代表して、原告となることができる。」旨規約に定めることはできない。
○ 正しい。 訴訟をするなら、事案ごとに集会を開いて決議すること。理事会の決議だけでは、できないため、規約も無効。
選択肢3でも引用していますように、区分所有法第59条2項では、
「2 第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。 」 とあります。
ここで準用されています、第五十七条第三項の規定は
「3 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。」
また、前条第二項及び第三項の規定とは、
「2 前項の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。
3 第一項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。 」 です。
区分所有法第59条で準用されています、第57条3項によれば、「管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。 」とあるだけで、設問の「管理者は、区分所有権及び敷地利用権の競売請求の訴えに関して、理事会の決議により、管理組合を代表して、原告となることができる。」旨規約に定めることは、認めていませんから、正しい。
ここで、標準管理規約に強い人なら、標準管理規約67条の規定とこの出題がどこかおかしいと気が付く。過去に私が問題があると指摘した箇所です。
答え:3
厳しく勉強していると、選択肢4も迷うかも。でも、選択肢3の関係は、明確で易しい。
《タグ》区分所有法 共同の利益違反、義務違反者、滞納、区分所有法第6条、第57条、第58条、第59条の関係。
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問10
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〔問 10〕 甲マンション管理組合(以下「甲」という。)の区分所有者Aに対する滞納管理費等の請求に関するマンション管理士の次の意見のうち、区分所有法及び民法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。ただし、甲の規約は、標準管理規約と同様であるものとする。
1 甲は、Aに対して未払金額とそれに対する規約所定の割合による遅延損害金、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して請求することができます。
○ 正しい?
平成26年 管理業務主任者試験 「問10」、 平成25年管理業務主任者試験 「問11」 、平成24年管理業務主任者試験 「問3」 、平成20年管理業務主任者試験 「問10」、平成19年 管理業務主任者試験 「問29] 。
まず、区分所有者は、管理費や修繕積立金などを滞納してはいけません。その根拠となるのは、区分所有法第19条があります。
「(共用部分の負担及び利益収取)
第十九条 各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。」
また、管理費等が滞納になった場合は、会計上は、未払金として処理がされています。
そこで、管理費等が滞納になると、管理組合は債務不履行として、滞納者に損害賠償金を請求できます。
民法第415条及び第416条
「(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。」
「(損害賠償の範囲)
第四百十六条 債務の不履行に対する損害賠償の請求は、これによって通常生ずべき損害の賠償をさせることをその目的とする。
2 特別の事情によって生じた損害であっても、当事者がその事情を予見し、又は予見することができたときは、債権者は、その賠償を請求することができる。
」
この民法第416条1項に規定される「債務の不履行に対する損害賠償」での範囲として、「通常生ずべき損害」には、遅延損害金は入るが、一般には損害賠償責任を生じる原因となる事実と相当因果関係にあるものに限られ、弁護士費用や回収費用などは入らないと解されていていて、不法行為などでの裁判では、弁護士報酬も、「相当と認められる額の範囲」で、損害の一部として相手方に請求できるとされていますが、金銭債務の争いまでに広げて含めることには、学説でも争いがあり、決着はしていません。
この点について、平成26年4月16日の東京高等裁判所の判決では、金銭債務である滞納管理費等の請求において、国土交通省が作成したマンション標準管理規約60条2項を根拠として、未払金額には”違約金の性格”があり、管理組合が支払う弁護士費用(着手金や報酬)など一切の費用を含むと判断しています。
「標準管理規約(単棟型)60条2項 (注:平成28年3月でも変更なし。)
「(管理費等の徴収)
第60条
2 組合員が前項の期日までに納付すべき金額を納付しない場合には、管理組合は、その未払金額について、年利○%の遅延損害金と、違約金としての弁護士費用並びに督促及び徴収の諸費用を加算して、その組合員に対して請求することができる。」
この判決によれば、選択肢1は、正しい、となりますが、まだ高等裁判所での判決であることを考えると、もっと多方面からの意見も必要で、出題としては、実に不適切です。
なお、判決文の詳細は、選択肢2にあります。
2 甲は、Aに対して違約金としての弁護士費用を請求することができますが、これは、契約上の金銭債務の不履行による損害賠償として弁護士費用を請求する場合と同様です。
X 誤っている。 違約金の弁護士費用請求と、債務不履行による損害賠償とは別途請求できる制裁金としてその性質が異なる。
違約金と債務不履行の損害賠償の区別や適用の法律の問題となると、大変説明が長くなりますが、選択肢1で引用した、平成26年4月16日の東京高等裁判所の判決では、
「そこで、判断するに、国土交通省の作成にかかるマンション標準管理規約は、管理費等の徴収について、組合員が期日までに納付すべき金額を納付しない場合に、管理組合が、未払金額について、「違約金としての弁護士費用」を加算して、その組合員に請求することができると定めているところ、本件管理規約もこれに依拠するものである。そして、違約金とは、一般に契約を締結する場合において、契約に違反したときに、債務者が一定の金員を債権者に支払う旨を約束し、それにより支払われるものである。債務不履行に基づく損害賠償請求をする際の弁護士費用については、その性質上、相手方に請求できないと解されるから、管理組合が区分所有者に対し、滞納管理費等を訴訟上請求し、それが認められた場合であっても、管理組合にとって、所要の弁護士費用や手続費用が持ち出しになってしまう事態が生じ得る。しかし、それは区分所有者は当然に負担すべき管理費等の支払義務を怠っているのに対し、管理組合は、その当然の義務の履行を求めているにすぎないことを考えると、衡平の観点からは問題である。そこで、本件管理規約36条3項により、本件のような場合について、弁護士費用を違約金として請求することができるように定めているのである。このような定めは合理的なものであり、違約金の性格は違約罰(制裁金)と解するのが相当である。したがって、違約金としての弁護士費用は、上記の趣旨からして、管理組合が弁護士に支払義務を負う一切の費用と解される(その趣旨を一義的に明確にするためには、管理規約の文言も「違約金としての弁護士費用」を「管理組合が負担することになる一切の弁護士費用(違約金)」と定めるのが望ましいといえよう。)。
これに対して、控訴人は、違反者に過度な負担を強いることになって不合理である旨主張するが、そのような事態は、自らの不払い等に起因するものであり、自ら回避することができるものであることを考えると、格別不合理なものとは解されない。(以下、略)」
この判決に依りますと、「違約金としての弁護士費用」と、「債務不履行に基づく損害賠償請求をする際の弁護士費用」はその性質が異なっていると判断していますから、誤りです。
この出題(債務不履行の損害賠償と違約金)を細かく検討すると、面白いが、時間がない。
「マンション管理士 香川」 が無償で提供しています、「超解説 区分所有法」の第19条 を参考にしてください。
3 Aが違約金としての弁護士費用の支払いを遅延したときは、甲は、Aに対して民法所定の割合による遅延損害金を請求することができます。
○ 正しい?
これも、選択肢1及び選択肢2で引用しました、平成26年4月16日の東京高等裁判所の判決での「違約金としての弁護士費用を請求することができる」を前提にすれば、民法第417条及び同第419条、
「(損害賠償の方法)
第四百十七条 損害賠償は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める。 」
「(金銭債務の特則)
第四百十九条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。」 により、
管理組合:甲は、管理費等の滞納者:Aに対して、 民法所定の割合による遅延損害金を請求することができますから、正しい。
なお、民法所定の割合による遅延損害金は、民法第404条
「(法定利率)
第四百四条 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。 」 です。
4 Aの滞納管理費等に係る債権の時効による権利消滅の効果は、5年の時効期間の経過とともに確定的に生ずるものではなく、時効が援用されたときにはじめて確定的に生じます。
○ 正しい。 時効は援用が必要。
平成18年 管理業務主任者試験 「問3」 、 平成14年 管理業務主任者試験 「問2」
時効は、民法第145条
「(時効の援用)
第百四十五条 時効は、当事者が援用しなければ、裁判所がこれによって裁判をすることができない。 」 とあり、
時効の利益を受けるかどうかは、時効の完成によって利益を受ける当事者の意思に依りますから、正しい。
なお、マンションの滞納管理費等の消滅時効については、10年か5年かで争いがありましたが、5年で決着しています。
参考:民法第169条
「(定期給付債権の短期消滅時効)
第百六十九条 年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。」
答え:2
この「問 10」の解説には、時間がかかった。 今回は、平成26年4月の東京高等裁判所の判決文を基に、説明していますが、常に弁護士費用を含めるかどうかは、かなり論争が必要な箇所です。
《タグ》民法 区分所有法 判例。 弁護士費用の負担、債務不履行、違約金、法定利率、時効、時効の援用
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問11
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〔問 11〕 一団地内に専有部分のある建物であるA棟及びB棟がある場合に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、団地の敷地はA棟及びB棟の各区分所有者の共有であるものとする。
1 団地管理組合(区分所有法第65条の団地建物所有者の団体をいう。以下この問いにおいて同じ。)において、A棟及びB棟の管理又は使用について団地規約(同法第66条において準用する第30条第1項の規約をいう。以下この問いにおいて同じ。)が定められている場合であっても、A棟の区分所有者の集会で、A棟の管理組合における管理者を定めることができる。
○ 正しい。 団地管理組合と棟管理組合は並存する。
平成26年マンション管理士試験 「問10」 、 平成25年管理業務主任者試験 「問31」 、平成23年マンション管理士試験 「問11」
設問を図にすると以下のようになります。
設問の区分所有法第66条の準用は、
「(建物の区分所有に関する規定の準用)
第六十六条 第七条、第八条、第十七条から第十九条まで、第二十五条、第二十六条、第二十八条、第二十九条、第三十条第一項及び第三項から第五項まで、第三十一条第一項並びに第三十三条から第五十六条の七までの規定は、前条の場合について準用する。この場合において、これらの規定(第五十五条第一項第一号を除く。)中「区分所有者」とあるのは「第六十五条に規定する団地建物所有者」と、「管理組合法人」とあるのは「団地管理組合法人」と、第七条第一項中「共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設」とあるのは「第六十五条に規定する場合における当該土地若しくは附属施設(以下「土地等」という。)」と、「区分所有権」とあるのは「土地等に関する権利、建物又は区分所有権」と、第十七条、第十八条第一項及び第四項並びに第十九条中「共用部分」とあり、第二十六条第一項中「共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設」とあり、並びに第二十九条第一項中「建物並びにその敷地及び附属施設」とあるのは「土地等並びに第六十八条の規定による規約により管理すべきものと定められた同条第一項第一号に掲げる土地及び附属施設並びに同項第二号に掲げる建物の共用部分」と、第十七条第二項、第三十五条第二項及び第三項、第四十条並びに第四十四条第一項中「専有部分」とあるのは「建物又は専有部分」と、第二十九条第一項、第三十八条、第五十三条第一項及び第五十六条中「第十四条に定める」とあるのは「土地等(これらに関する権利を含む。)の持分の」と、第三十条第一項及び第四十六条第二項中「建物又はその敷地若しくは附属施設」とあるのは「土地等又は第六十八条第一項各号に掲げる物」と、第三十条第三項中「専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)」とあるのは「建物若しくは専有部分若しくは土地等(土地等に関する権利を含む。)又は第六十八条の規定による規約により管理すべきものと定められた同条第一項第一号に掲げる土地若しくは附属施設(これらに関する権利を含む。)若しくは同項第二号に掲げる建物の共用部分」と、第三十三条第三項、第三十五条第四項及び第四十四条第二項中「建物内」とあるのは「団地内」と、第三十五条第五項中「第六十一条第五項、第六十二条第一項、第六十八条第一項又は第六十九条第七項」とあるのは「第六十九条第一項又は第七十条第一項」と、第四十六条第二項中「占有者」とあるのは「建物又は専有部分を占有する者で第六十五条に規定する団地建物所有者でないもの」と、第四十七条第一項中「第三条」とあるのは「第六十五条」と、第五十五条第一項第一号中「建物(一部共用部分を共用すべき区分所有者で構成する管理組合法人にあつては、その共用部分)」とあるのは「土地等(これらに関する権利を含む。)」と、同項第二号中「建物に専有部分が」とあるのは「土地等(これらに関する権利を含む。)が第六十五条に規定する団地建物所有者の共有で」と読み替えるものとする。
」 です。
こんなに、他の条文の準用やまた読み替えのある長文は、難解で非常に問題がある規定ですが、そこを出題者は狙ってきますから、受験生は、理解しておく必要があります。
基本的には、団地の管理も、1棟で規定された区分所有関係に従うが、団地全体に影響しないものや1棟ごとに処理すべきものなどは、準用されていないということです。詳細は、マンション管理士 香川が無料で提供しています、「超解説 区分所有法」の団地関係(第65条以下)を参照してください。
設問の「団地管理組合」の他に「A棟だけの管理組合」が並存できるかですが、これは、区分所有法第65条
「(団地建物所有者の団体)
第六十五条 一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあつては、区分所有者)の共有に属する場合には、それらの所有者(以下「団地建物所有者」という。)は、全員で、その団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。 」 とあります。
区分所有法第65条によれば、団地管理団体(組合)の成立の要件は、
@一団地内(1つの区画内)に数棟の建物があること、
Aその団地内の土地又は附属施設がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあつては、区分所有者)の共有に属すること とされています。
この場合、団地全体の管理組合と棟別の管理組合が並存していると考えられていますから、正しい。
2 団地管理組合においてA棟及びB棟の管理又は使用について団地規約が定められている場合、A棟の建物の保存に有害な行為をしているA棟の区分所有者に対し、団地管理組合の集会で、区分所有法第57条の行為の停止を請求する訴訟を提起するための決議ができる。
X 誤っている。 団地の規定には、義務違反者に対する措置(第57条〜第60条)の準用はない。
よく、出題がある箇所です。
選択肢1で述べています、区分所有法第66条において団地関係で準用される条文から、設問のような、建物の保存に有害な行為について、区分所有法第57条の行為の停止等の請求や同第58条、第59条などの準用がないのです。
そこで、団地管理組合の集会では、A棟の有害な行為をしている区分所有者に対しては、行為の停止を請求する訴訟を提起するための決議はできませんから、誤りです。
この場合、A棟の集会の決議となります。義務違反者に対する措置(第57条〜第60条)の準用がないのは、義務違反者の事情は、団地全体の問題ではなく、同じ棟の区分所有者たちがよく知っているという発想からきているようです。
3 団地管理組合においてA棟及びB棟の管理又は使用について団地規約が定められている場合、その規約で定めた事項については、団地規約を変更又は廃止しなければ、A棟の区分所有者の集会において、A棟の管理又は使用に関する規約を定めることはできない。
○ 正しい。
選択肢1で述べています、区分所有法第66条に、規約に関する第30条1項、3項から5項、また第31条1項が準用されています。
そこで、区分所有法第31条1項
「第三十一条 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者(読み替えー>第65条に規定する団地建物所有者)及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によってする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者(読み替えー>第65条に規定する団地建物所有者)の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。」 とあり、
一度、団地管理組合においてA棟及びB棟の管理又は使用について団地規約が定められている場合なら、団地規約を変更又は廃止しなければ、A棟の区分所有者の集会において、A棟の管理又は使用に関する規約を定めることはできませんから、正しい。
4 団地内にA棟の区分所有者が共有する倉庫が存する場合には、A棟の区分所有者の3/4以上でその共有持分の3/4以上を有するものの同意がなければ、団地管理組合がその倉庫を管理するための団地規約を定めることはできない。
○ 正しい。 A棟だけの管理を全体の管理に移すには、A棟の特別多数の同意が必要。
平成26年マンション管理士試験 「問10」 、 平成18年マンション管理士試験 「問11」
団地内にA棟の区分所有者たちだけが共有する倉庫(附属施設)が存する場合で、これを団地全体の管理に入れたいなら、区分所有法第68条があります。
「(規約の設定の特例)
第六十八条 次の物につき第六十六条において準用する第三十条第一項の規約を定めるには、第一号に掲げる土地又は附属施設にあつては当該土地の全部又は附属施設の全部につきそれぞれ共有者の四分の三以上でその持分の四分の三以上を有するものの同意、第二号に掲げる建物にあつてはその全部につきそれぞれ第三十四条の規定による集会における区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による決議があることを要する。
一 一団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)が当該団地内の一部の建物の所有者(専有部分のある建物にあつては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地又は附属施設(専有部分のある建物以外の建物の所有者のみの共有に属するものを除く。)
二 当該団地内の専有部分のある建物
2 第三十一条第二項の規定は、前項第二号に掲げる建物の一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものについての同項の集会の決議に準用する。
」 です。
区分所有法第68条1項によれば、一部の建物所有者の共有に属する団地内の土地や附属施設(倉庫や車庫など)は、当然には団地全体の管理対象にはできず、それを団地全体の管理にしたいのなら、団地全体管理組合の集会で団地建物区分所有者及びその議決権の各3/4以上の多数による決議を得る必要があり、それに加えて、一部の区分所有者及びその共有持分の3/4以上を有するものの同意がなければなりませんから、正しい。
答え:2
「問 11」は、解説は長くなったが、他の選択肢を考えずに、直ぐに、選択肢2は選べる。
《タグ》区分所有法。 団地、 管理組合の並存、義務違反者に対する措置(第57条〜第60条)の準用はない、全体の規約への取り込み、
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問12
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〔問 12〕 Aは、Bとの間で、自己の所有する甲マンションの301号室をAがBに贈与する旨の贈与契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。
1 贈与契約が書面によってなされていない場合には、贈与契約に基づいてAからBへの301号室の所有権移転登記がなされた後であっても、Aは、贈与契約を撤回して、その所有権移転登記の抹消をBに対して請求することができる。
X 誤っている。 履行が終わると撤回できない。
贈与は、平成27年 管理業務主任者試験 「問5」 も、 平成15年 マンション管理士試験 「問15」。
設問の書面によってなされていない贈与に該当するのは、民法第550条
「(書面によらない贈与の撤回)
第五百五十条 書面によらない贈与は、各当事者が撤回することができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。 」 とあり、
贈与契約が書面によってなされていない場合には、原則:各当事者が撤回(取り消しの解釈もあります)できますが、ただし書きで規定される、「履行の終わった部分については、この限りでない」により、動産では引渡しが履行の終了で、不動産では、争いがありましたが、引渡しがなくても、所有権移転登記があれば、履行を終わったとなります(最高裁:昭和40年3月26日 判決)から、Aは、贈与契約を撤回して、その所有権移転登記の抹消をBに対して請求することができず、誤りです。
参考:民法第177条
「(不動産に関する物権の変動の対抗要件)
第百七十七条 不動産に関する物権の得喪及び変更は、不動産登記法 (平成十六年法律第百二十三号)その他の登記に関する法律の定めるところに従いその登記をしなければ、第三者に対抗することができない。」
2 Aは、301号室をBに引き渡すまでの間、善良な管理者の注意をもって同室を保存する義務までは負わず、自己の財産に対するのと同一の注意をもって同室を保存すれば足りる。
X 誤っている。 贈与では、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。
贈与者の義務は、債務の一般原則に従うと考えられています。
そこで、民法第400条
「(特定物の引渡しの場合の注意義務)
第四百条 債権の目的が特定物の引渡しであるときは、債務者は、その引渡しをするまで、善良な管理者の注意をもって、その物を保存しなければならない。 」 とあり、
善良な管理者の注意をもって同室を保存する義務がありますから、誤りです。
なお、善良な管理者の注意義務(善管注意義務)とは、債務者の属する職業や社会的・経済的地位において取引上で抽象的な平均人として一般的に要求される注意をいう。
また、自己のためにするのと同一の注意とは、行為者自身の職業・性別・年齢など、個々の具体的注意能力に応じた注意です。
3 贈与契約の際に、Aが老人ホームに入居するための費用をBが負担する旨もあわせて合意されていたにもかかわらず、Bがこの費用を支払わない場合には、Aは、相当の期間を定めてその支払義務の履行をBに催告し、その期間内に履行がなければ贈与契約を解除することができる。
○ 正しい。 負担付贈与では、双務契約の条文が準用される。
平成22年マンション管理士試験 「問15」 、 平成21年管理業務主任者試験 「問6」 、平成20年管理業務主任者試験 「問2」
このような、負担付の贈与となると、民法第553条
「(負担付贈与)
「第五百五十三条 負担付贈与については、この節に定めるもののほか、その性質に反しない限り、双務契約に関する規定を準用する。 」 とあり、
同時履行の抗弁権(民法第533条)」、「危険負担(民法第534条以下)」なども、負担付贈与には、準用されます。
そこで、民法第541条
「(履行遅滞等による解除権)
第五百四十一条 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。」 とあり、
Bが老人ホームに入居するための費用を支払わない場合には、Aは、相当の期間を定めてその支払義務の履行をBに催告し、その期間内に履行がなければ贈与契約を解除することができますから、正しい。
4 贈与契約を締結する前から301号室には隠れた瑕疵があり、贈与契約を締結した後にこれが判明した場合には、Aは、当該瑕疵の存在を知っていたか知らなかったかにかかわらず、Bに対し、売主と同様の瑕疵担保責任を負う。
X 誤っている。 瑕疵の存在を知っていて、受贈者に告げなかったときは責任を負う。
平成27年管理業務主任者試験 「問5」 、平成20年マンション管理士試験 「問16」
贈与契約での瑕疵担保責任は、民法第551条
「(贈与者の担保責任)
第五百五十一条 贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について、その責任を負わない。ただし、贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは、この限りでない。
2 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。 」 です。
民法第551条1項によれば、原則:贈与者は担保責任を負いませんが、ただし書きにより、「贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときには、責任を負いますから、誤りです。
この場合の責任としては、売主と同様の瑕疵担保責任までとは、言えないようです。(厳密に言うと、信頼利益と履行利益の論争点です。)
なお、負担付贈与であれば、2項により、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負います。
答え:3
贈与契約とは、少し難問か? 条文のただし書きからの出題です。
《タグ》民法 判例。 贈与契約、負担付贈与、撤回、管理、瑕疵担保責任
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問13
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〔問 13〕 Aは、Bから代理権を与えられていないにもかかわらず、Bの代理人として、Cとの間で、Bの所有する甲マンションの401号室をCに売却する旨の売買契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。
1 表見代理の成立する要件が満たされている場合には、Cは、表見代理の主張をせずに、Aに対し、無権代理人としての責任を追及することができない。
X 誤っている。 相手方(C)は、本人に対する表見代理を主張することも、無権代理人に対して責任を追及することもできる。
平成27年 管理業務主任者試験 「問1」、平成17年 マンション管理士試験 「問 13」、平成16年 管理業務主任者試験 「問 1」
まず、表見代理とは、無権代理人と本人との間に外観上、代理権の存在があると信じさせるような特別の関係がある場合、無権代理人を真実の代理人と誤信した相手方が善意・無過失なら保護し、本人の責任を認めます。狭い意味での無権代理と考えていいでしょう。
そこで、表見代理が成立するには、以下の3つの場合があります。
@代理権授与の表見代理...本人(B)が、相手方(C)に対して、実際はある人(A)に代理権を与えていないにも係わらず、代理権を与えたと表示した場合(民法第109条)
A権限踰越の表見代理...代理人(A)は、代理権をもっているが、その代理権の範囲を超えて代理行為をした場合(民法第110条)
B代理権消滅後の表見代理...代理人(A)が、代理権が消滅した後に、なお代理人として代理行為をした場合(民法第112条)
「(代理権授与の表示による表見代理)
第百九条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。
」
「(権限外の行為の表見代理)
第百十条 前条本文の規定は、代理人がその権限外の行為をした場合において、第三者が代理人の権限があると信ずべき正当な理由があるときについて準用する。
」
「(代理権消滅後の表見代理)
第百十二条 代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。
」
また、無権代理人の責任としては、民法第117条
「(無権代理人の責任)
第百十七条 他人の代理人として契約をした者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う。
2 前項の規定は、他人の代理人として契約をした者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき、若しくは過失によって知らなかったとき、又は他人の代理人として契約をした者が行為能力を有しなかったときは、適用しない。
」 とあります。
そこで、設問の、相手方(C)は、表見代理の成立要件が存在する場合でも、表見代理を主張しないで、無権代理人(A)に対して、第117条による無権代理人の責任を問うことができるか、ですが、これについては、最高裁:昭和33年6月17日の判決 があります。
趣旨としては、「表見代理は、善意の相手方を保護する制度であるから、表見代理が成立すると認められる場合であつても、この主張をすると否とは、相手方たる手形所持人の自由であり、所持人としては、表見代理を主張して本人の責任を問うことができるが、これを主張しないで、無権代理人に対し手形法八条の責任を問うこともできるものと解するのが相当である」 とあり、
この判例によりますと、相手方(C)は、表見代理の主張をせずに、無権代理人(A)に対し、無権代理人としての責任を追及することができますから、誤りです。
2 Cが売買契約の時にAに代理権が存在しないことを知っていた場合には、Cは、Aに対し、無権代理人としての責任を追及することができない。
○ 正しい。 無権代理を知っていたのでは、保護に値しない。
表見代理であっても、選択肢1で引用した、民法第109条
「(代理権授与の表示による表見代理)
第百九条 第三者に対して他人に代理権を与えた旨を表示した者は、その代理権の範囲内においてその他人が第三者との間でした行為について、その責任を負う。ただし、第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない。 」 とあり、
ただし書きによると、
「第三者が、その他人が代理権を与えられていないことを知り、又は過失によって知らなかったときは、この限りでない」 とありますから、
相手方(C)が売買契約の時に、無権代理人(A)に代理権が存在しないことを知っていた場合には、Cは、Aに対し、無権代理人としての責任を追及することができず、正しい。
3 売買契約の締結後にAが死亡し、BがAの地位を単独で相続した場合には、Bは、Aによる売買契約の締結について、追認を拒絶することができる。
○ 正しい。 本人が無権代理人の地位を相続した場合には、本人は、追認を拒絶できる。信義則に反しない。
この選択肢3と次の選択肢4の無権代理人と本人の相続については、実に複雑な問題が発生しています。
無権代理人(A)が死亡して、本人(B)が無権代理人の地位を相続した場合は、最高裁:昭和37年4月20日の判決、
「無権代理人が本人を相続した場合においては、自らした無権代理行為につき本人の資格において追認を拒絶する余地を認めるのは信義則に反するから、右無権代理行為は相続と共に当然有効となると解するのが相当であるけれども、本人が無権代理人を相続した場合は、これと同様に論ずることはできない。後者の場合においては、相続人たる本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはないから、被相続人の無権代理行為は一般に本人の相続により当然有効となるものではないと解するのが相当である。 」 とあり、
判決文の後半部分によれば、本人(B)が無権代理人(A)を相続した場合は、相続人たる本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはありませんから、正しい。
なお、最判昭和48年7月3日の判例があります。
「民法一一七条による無権代理人の債務が相続の対象となることは明らかであつて、 このことは本人が無権代理人を相続した場合でも異ならないから、本人は相続によ
り無権代理人の右債務を承継するのであり、本人として無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあつたからといつて右債務を免れることはできないと解すべきである。」
4 売買契約の締結後にBが死亡し、AがBの地位を単独で相続した場合には、Aは、Cからの401号室の所有権移転登記及び引渡しの請求を拒むことができない。
○ 正しい。 無権代理人が本人の地位を相続した場合は、契約は有効で、相手方の請求を拒めない。信義則に反する。
選択肢3とは逆に、本人(B)が死亡して、無権代理人(A)が、本人の地位を相続した場合も、
選択肢3で引用しました、最高裁:昭和37年4月20日の判決、の前半部分
「無権代理人が本人を相続した場合においては、自らした無権代理行為につき本人の資格において追認を拒絶する余地を認めるのは信義則に反するから、右無権代理行為は相続と共に当然有効となると解するのが相当であるけれども、本人が無権代理人を相続した場合は、これと同様に論ずることはできない。後者の場合においては、相続人たる本人が被相続人の無権代理行為の追認を拒絶しても、何ら信義に反するところはないから、被相続人の無権代理行為は一般に本人の相続により当然有効となるものではないと解するのが相当である。
」 あり、
売買契約の締結後に本人(B)が死亡し、無権代理人(A)が本人(B)の地位を単独で相続した場合には、Aは、Cからの401号室の所有権移転登記及び引渡しの請求を拒むことができませんから、正しい。
*ただし、学説と判例がいろいろある!
相続が単独相続でない場合(共同相続)などどうするか、追求すると面白い箇所です。
答え:1
*表見代理からの出題とは、珍しい。 少しばかり難問か。 解説にも時間がかかった。信義則が出てくるとは。 無権代理と相続は、学説と判例がいろいろとある!
相続が単独相続でない場合(共同相続)などどうするか、追求すると面白い箇所です。
《タグ》民法 判例 表見代理、無権代理、相続。
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問14
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〔問 14〕 夫A及び妻Bが、甲マンションの501号室の区分所有権を各1/2の持分割合で共有している場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。ただし、管理費の負担に関する合意を除き、共有者間において別段の特約はないものとする。
1 AB間において501号室の管理費の負担者をAと合意した場合、その合意が書面で行われ、その旨が甲マンションの管理者に通知されたときは、管理者はBに対して管理費を請求することができない。
X 誤っている。 管理費は、民法上の不可分債務である。管理者は共有の一人に対して管理費を請求できる。
平成24年管理業務主任者試験 「問5」 、 平成21年マンション管理士試験 「問16」
この設問では、管理者は、区分所有者の代理人であることが、前提です。
管理費等は民法の不可分債務と解されます。それは、共用部分の維持・管理に必要な経費である、管理費や修繕積立金(管理費等)は、その負担額の一部が支払われただけでは目的を達しないからです。
すると、民法第430条及び第432条
「(不可分債務)
第四百三十条 前条の規定及び次款(連帯債務)の規定(第四百三十四条から第四百四十条までの規定を除く。)は、数人が不可分債務を負担する場合について準用する。
」
「(履行の請求)
第四百三十二条 数人が連帯債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次にすべての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。 」 とあり、
夫A及び妻Bが、管理費の負担者をAと合意した場合、その合意が書面で行われ、その旨が甲マンションの管理者に通知されたときであっても、管理組合の合意がない以上、管理者は、AでもBにでも、管理費の請求ができますから、誤りです。
なお、共有者間で支払を特定の者とする合意書は、債権者である管理組合の合意があれば、有効です。これは、免責的債務引受となります。
2 501号室の上階である601号室の所有者Cが、不注意により浴室から溢水させ、501号室に損害を与えた場合、A及びBがCに損害賠償を求めるときは、それぞれの共有持分の割合に応じて請求しなければならず、自己の持分割合を超えて請求することはできない。
○ 正しい? 共有者は、共有物に対する不法行為によつて被つた損害について、自己の共有持分の割合に応じてのみ、その賠償を請求することができる。
共有関係はいろいろとトラブルが発生する関係です。
設問については、最高裁:昭和51年9月7日の判決 があります。
「共有にかかる土地が不法に占有されたことを理由として、共有者の全員又はその一部の者から右不法占有者に対してその損害賠償を求める場合には、右共有者は、それぞれその共有持分の割合に応じて請求をすべきものであり、その割合を超えて請求をすることは許されないものといわなければならない。 」
この判決によれば、共有者が損害賠償を求める場合には、その共有持分の割合を超えて請求が出来ませんから、正しい。
3 Aが、501号室の共有持分権をAB間の成人の子であるDに譲渡する場合は、Bの同意を得なければならない。
X 誤っている。 持分の譲渡・抵当権の設定などは、自由にできる。
平成26年 管理業務主任者試験 「問3」 、平成25年マンション管理士試験 「問15」 、 平成14年 管理業務主任者試験 「問 3」。
共有持分の使用となると、民法第249条
「(共有物の使用)
第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。 」 とあり、
共有持分権は、譲渡・抵当権の設定など、自由に処分できますから、Bの同意は不要で、誤りです。
4 Aが、自らの趣味で行っている日曜大工の作業中に、誤ってベランダから工具を落下させ、通行人Eが怪我をした場合、Bは自らに過失がなくても、区分所有権の共有者として、Aと連帯してEに対して損害賠償責任を負わなければならない。
X 誤っている。 責任が明確。責任は、Aだけが負う。
平成26年 マンション管理士試験 「問14」 、平成25年 管理業務主任者試験 「問6」 など
Aが誤ってベランダから工具を落下させ、通行人Eが怪我をした場合となると、民法第709条
「(不法行為による損害賠償)
第七百九条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。 」 とあり、
設問では、責任を負うのは、工具を落下させたAだけです。区分所有権が共有となっていても、Bは連帯責任を負いませんから、誤りです。
答え:2
共有関係も、よく出題がありますから、注意してください。
《タグ》民法 判例。 共有、不可分債務、持分の処分、不法行為
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問15
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〔問 15〕 Aがその所有する甲マンションの105号室に関し、Bとの間で使用貸借契約を締結しこれを引き渡した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 105号室に瑕疵があった場合、貸主Aはその瑕疵を知りかつこれを借主Bに告げなかったときには担保責任を負う。
○ 正しい。
平成19年 管理業務主任者試験 「問 3」、 平成16年 管理業務主任者試験 「問 3」。
使用貸借で、貸主の担保責任は、民法第596条
「(貸主の担保責任)
第五百九十六条 第五百五十一条の規定は、使用貸借について準用する。 」 とあり、
準用されている第551条は、
「(贈与者の担保責任)
第五百五十一条 贈与者は、贈与の目的である物又は権利の瑕疵又は不存在について、その責任を負わない。ただし、贈与者がその瑕疵又は不存在を知りながら受贈者に告げなかったときは、この限りでない。
2 負担付贈与については、贈与者は、その負担の限度において、売主と同じく担保の責任を負う。 」 とあり、
民法第551条1項ただしがきによれば、瑕疵があった場合に、「貸主(贈与者)がその瑕疵又は不存在を知りながら借主(受贈者)に告げなかったときは、この限りでない。」 により担保責任を負いますから、正しい。
2 Bが105号室に有益費を支出し、使用貸借契約終了時に同室の価格の増加が現存する場合には、Bは、支出した金額又はこれを支出したことによる同室の増加額のいずれかを選択してAに請求することができる。
X 誤っている。 選択権は、借主(B)でなく貸主(A)にある。
平成23年管理業務主任者試験 「問4」 、 平成19年管理業務主任者試験 「問3」
まず、「有益費」とは、物の保存のために必要な費用ではありませんが、物を改良し、物の価値を増加する費用です。
そして、「必要費」とは、他人の家屋を占有した人がする修繕費などをさします。
このほかに、「通常の必要費」として、家屋の修繕費のうち、大修繕費は入らず、普通の応急的な小修繕費をさす言葉もあります。
有益費は、必要費と違い必ず支出される費用ではありませんから、返還請求となると、常には認められません。
そこで、設問は、民法第595条
「(借用物の費用の負担)
第五百九十五条 借主は、借用物の通常の必要費を負担する。
2 第五百八十三条第二項の規定は、前項の通常の必要費以外の費用について準用する。 」 とあり、
準用されている、第583条2項は、
「(買戻しの実行)
第五百八十三条
2 買主又は転得者が不動産について費用を支出したときは、売主は、第百九十六条の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、有益費については、裁判所は、売主の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
」 とあり、
また、引用されている、第196条は、
「(占有者による費用の償還請求)
第百九十六条 占有者が占有物を返還する場合には、その物の保存のために支出した金額その他の必要費を回復者から償還させることができる。ただし、占有者が果実を取得したときは、通常の必要費は、占有者の負担に帰する。
2 占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。ただし、悪意の占有者に対しては、裁判所は、回復者の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。」 です。
ここでの、「回復者」とは、「占有の回復をしてもらう者=当該占有物の返還請求権を持つ者(大家など)」です。
最終的に、借主であるBが出した有益費で、使用貸借契約終了時に同室の価格の増加が現存する場合には、貸主A(回復者)の選択に従って、その支出した金額又は増価額が償還されますから、Bの選択は、誤りです。
この規定は、悪意の占有者が故意に多額の有益費を支出して償還請求し、回復者(貸主など)の無資力に乗じての留置権の行使を防ぐためです。
3 AとBが貸借の期間を定めた場合でも、その期間内にAが死亡したときは、Aの死亡時にAとBとの使用貸借契約は効力を失う。
X 誤っている。 使用貸借契約が効力を失うのは、借主(B)の死亡で、貸主(A)の死亡ではない。
平成21年管理業務主任者試験 「問2」 、 平成19年管理業務主任者試験 「問3」
使用貸借で存続期間が定められていると、民法第597条
「(借用物の返還の時期)
第五百九十七条 借主は、契約に定めた時期に、借用物の返還をしなければならない。
2 当事者が返還の時期を定めなかったときは、借主は、契約に定めた目的に従い使用及び収益を終わった時に、返還をしなければならない。ただし、その使用及び収益を終わる前であっても、使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、貸主は、直ちに返還を請求することができる。
3 当事者が返還の時期並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも返還を請求することができる。 」 とあり
民法第597条1項により、貸借の期間を定めると、期間が終了すれば、借りている部屋は返還しなければなりません。
また、借主が死亡すれば、民法第599条
「(借主の死亡による使用貸借の終了)
第五百九十九条 使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う。」
により、使用貸借契約は効力を失いますから、貸主(A)の死亡で、使用貸借契約は効力を失うは、誤りです。
4 105号室がBの居住を目的として使用貸借されている間は、Aが105号室をCに売却しても、Bは、Cに対し、引き続き借主であることを主張することができる。
X 誤っている。 居住目的でも、使用貸借では、貸主が代わると、新貸主に対しては、借主の主張はできない。
もともと、無償での使用貸借では、借主と貸主の緊密な信頼関係を前提としています。
そこで、新しい買主は、元の貸主との間で、従前の契約の履行をも引き受けるという合意がなされない限り、従前の使用貸借契約には全く拘束されませんから、たとえ居住を目的としていても、借主Bは、新しい所有者Cに対しては、引き続き借主であることを主張することは、できず、誤りです。
答え:1
使用貸借からのかなり面倒な出題です。 このあたりの出題は、管理業務主任者の方が多い。
《タグ》民法 使用貸借。 担保責任、有益費、契約の終了、新貸主との関係。
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問16
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〔問 16〕 Aがその所有する甲マンションの301号室をBに賃貸していたところ、Aは死亡し、Aの配偶者C並びに子D及びEはいずれも単純承認した。この場合に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。
1 遺産分割によってCが301号室を相続し、Aが死亡するまでに滞納した管理費の負担に関する合意がないときは、甲マンション管理組合の管理者Fは、遺産分割後において、Aが死亡するまでに滞納した管理費の1/4をDに対して請求できる。
○ 正しい? 死亡前なら、相続分の権利を有する。
平成26年 マンション管理士試験 「問16」、 平成26年 管理業務主任者試験 「問10」、 平成23年 マンション管理士試験 「問16」 選択肢3、 平成21年マンション管理士試験 「問14」、 平成17年マンション管理士試験 「問18」。
この設問では、管理者Fは、区分所有者の代理人であることが前提です。
遺産相続については、共有か合有かの議論があるので、出題として適切でないが、ここでは、単純に、共有説をとる最高裁の:昭和30年5月31日の判決:
「相続財産の共有(民法八九八条、旧法一〇〇二条)は、民法改正の前後を通じ、民法二四九条以下に規定する「共有」とその性質を異にするものではないと解すべきである。相続財産中に金銭その他の可分債権があるときは、その債権は法律上当然分割され、各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継するとした新法についての当裁判所の判例(昭和二七年(オ)一一一九号同二九年四月八日第一小法廷判決、集八巻八一九頁)及び旧法についての大審院の同趣旨の判例(大正九年一二月二二日判決、録二六輯二〇六二頁)は、いずれもこの解釈を前提とするものというべきである。それ故に、遺産の共有及び分割に関しては、共有に関する民法二五六条以下の規定が第一次的に適用せられ、遺産の分割は現物分割を原則とし、分割によつて著しくその価格を損する虞があるときは、その競売を命じて価格分割を行うことになるのであつて、民法九〇六条は、その場合にとるべき方針を明らかにしたものに外ならない」 と述べています。
この時点(昭和30年)での最高裁の判決によれば、滞納されている管理費等も「可分債務」であり、共同相続人は、その相続分に応じた支払義務を負うとする理論により、単純承認し、滞納した管理費の負担に対して特に合意の取決めもなければ、法定相続分として、配偶者が1/2、子は各1/4の支払義務があるから、管理者Fは、子Dに対して、滞納管理費の1/4を請求できるは、正しいとする。
参考;相続:民法第899条
第八百九十九条 各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。
法定相続分:民法第900条
第九百条 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。
一 子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各二分の一とする。
二 配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、三分の二とし、直系尊属の相続分は、三分の一とする。
三 配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、四分の三とし、兄弟姉妹の相続分は、四分の一とする。
四 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。
2 遺産分割によってDが301号室を相続し、Aが死亡するまでにBが滞納した賃料債権の帰属に関する合意がないときは、Dは、遺産分割後において、Aが死亡するまでにBが滞納した賃料債権の1/4をBに対して請求できる。
○ 正しい。 Aが死亡するまでの債権なら、可分債権で、1/4。
選択肢1で引用しました、最高裁の:昭和30年5月31日の判決:を基にしますと、Aが死亡するまでであれば、賃借人Bに対する権利も、その相続分に応じた権利、つまり、1/4 しか持ちませんから、正しい。 遺産分割によって、301号室を相続する前の話です。Aが死亡するまでの債権なら、可分債権で、1/4です。
3 遺産分割によってD及びEが301号室を持分1/2として相続し、Aの死亡後遺産分割までに滞納した管理費の負担に関する合意がないときは、甲マ
ンション管理組合の管理者Fは、遺産分割後において、Aの死亡後遺産分割までに滞納した管理費の全額をDに対して請求できる。
○ 正しい。 Aの死亡後なら、滞納管理費は、不可分債務。 全額可。
今度は、Aが死亡した後の債権・債務をどう見るかですが、死亡後となると、滞納管理費などは、不可分債務ととらえるという、選択肢1や2とは異なった理論構成をします。
そこで、相続人が確定するまでで、特にAの死亡後遺産分割までに滞納した管理費の負担に関する合意がないなら、共同相続人であれば、各自が滞納した管理費に対して全額支払い債務を負うと考えるのです。よって、正しいとなります。
4 遺産分割によってEが301号室を相続し、Aの死亡後遺産分割までにBが滞納していた賃料債権の帰属に関する合意がないときは、Eは、遺産分割後において、Aの死亡後遺産分割までにBが滞納した賃料債権の全額をBに対して請求できる。
X 誤っている。 Aの死亡後、遺産分割までにBが滞納した賃料債権なら、可分債権で法定相続分の1/4となる。
Aが死亡して、遺産分割がされるまででの共同相続人が有する債権は、まだ、法定相続分であると、 最高裁;平成17年9月8日の判決 は言っています。
「遺産は,相続人が数人あるときは,相続開始から遺産分割までの間,共同相続人の共有に属するものであるから,この間に遺産である賃貸不動産を使用管理した結果生ずる金銭債権たる賃料債権は,遺産とは別個の財産というべきであって,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得するものと解するのが相当である。遺産分割は,相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずるものであるが,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得した上記賃料債権の帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けないものというべきである。
したがって,相続開始から本件遺産分割決定が確定するまでの間に本件各不動産から生じた賃料債権は,被上告人及び上告人らがその相続分に応じて分割単独債権として取得したものであり,本件口座の残金は,これを前提として清算されるべきである。」
この判決によれば、「相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる金銭債権たる賃料債権は,各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し,その帰属は,後にされた遺産分割の影響を受けない。」 ですから、遺産分割によってEが、301号室を相続しても、相続開始(Aの死亡後)から遺産分割がされるまでのBの滞納金額については、全額ではなく、法定相続分、1/4ですから、全額をBに請求できるは誤りです。
答え:4
最高裁の判例も、マンションの管理費等の支払義務は不可分債務であるという認識が一般となっている現在、滞納管理費等の共同相続においては、合有的に相続するという検討がなされるべきです。
最初から、相続財産は、遺産分割までは共同相続人に合有的に帰属すると考えると、こんな面倒な判決もいらない。
遺産分割協議で、法定相続分の変更があったり、遺産放棄があれば、管理組合の請求はどうなるのでしょうか?
解説をしていますマンション管理士 香川 の手間も時間も、かなり省けます。
なお、民法での「可分債権」「不可分債権」、「共有」「合有」の争いについては、「マンション管理士 香川事務所」が無料で提供しています「超解説 区分所有法」の第8条「特定承継人の責任」のあとの方にありますので、参考にしてください。
《タグ》民法 区分所有法 判例。 滞納管理費等の共同相続、死亡前、死亡後、遺産分割まで、不可分債務、可分債務。
*2017年 4月13日追記:この、マンション管理士 香川の主張を取り入れて、平成28年12月19日の最高裁判所の判決 で、過去の判例が変更になりましたので、受験生は注意してください。
今までは、共同相続の場合、被相続人が死亡すれば、その遺産である預貯金は可分債権として”当然”に、他の相続人の同意がなくても、各相続人は単独で、その相続分に応じて預貯金の引き出し(払い戻し)ができていたのを変更し、預貯金を遺産分割の対象にして、各相続人が単独では、預貯金の引き出しができなくしたものです。
上の問題の解説でも分かりますように、この、判例の変更は重大です。
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問17
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〔問 17〕 分譲業者Aが、Bに新築建物である甲マンションの101号室を売却し、建物に隠れた瑕疵が発見された場合の瑕疵担保責任に関する次の記述の
うち、民法及び住宅の品質確保の促進等に関する法律の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。ただし、売買契約に瑕疵担保責任についての特約はなかったものとする。
1 AからBに店舗である101号室が引き渡された1年後に、内壁の塗装に隠れた瑕疵が発見された場合、Bは、Aに対し、損害賠償請求をすることはできない。
X 誤っている。 店舗に係わらず、瑕疵を発見して1年以内なら、買主は売主に対して、損害賠償請求をすることができる。
平成27年 管理業務主任者試験 「問40」、 平成26年 管理業務主任者試験 「問40」 、 平成26年マンション管理士試験 「問17」、平成25年マンション管理士試験 「問17」 、平成25年管理業務主任者試験 「問40」、 平成24年マンション管理士試験 「問14」 、平成24年管理業務主任者試験 「問40」、 平成23年 マンション管理士試験 「問12」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問41」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問13」 、 平成22年 管理業務主任者試験 「問42」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問4」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問41」 「問42」 、平成20年 マンション管理士試験 「問16」 、平成20年 管理業務主任者試験 「問41」 など。
売主の瑕疵担保責任も例年必ず出題されます。そこで。別サイト 「瑕疵担保責任のまとめ」 も作成していますから、利用してください。
まず、売買の対象物に通常の注意を払っても発見できない品質や性能の不備があれば、買主が支払った金額は公平でありません。そこで、民法では売主に対して、故意や過失がなくても、契約の解除や損害賠償などの責任を負わせることにしています。それが、売主の瑕疵担保責任と呼ばれています。規定は、民法第570条
「(売主の瑕疵担保責任)
第五百七十条 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。」 とあり、
準用されています、民法第566条
「(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
第五百六十六条 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3 前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。 」 です。
民法第566条では、売買の目的物に瑕疵があれば、買主は、売主に対して、
@損害賠償の請求
A目的を達することができない時は、契約の解除
ができるとしています。
これらの規定によれば、内壁の塗装に隠れた瑕疵が発見された場合なら、それが引渡し後1年が過ぎていても、買主が事実を知った時(瑕疵を発見した時)から1年以内であれば、買主は、損害賠償の請求ができますから、誤りです。なお、建物が店舗であっても、住宅であっても適用は、同様にされます。
2 AからBに住宅である101号室が引き渡された5年後に、構造耐力上主要な部分としての柱に隠れた瑕疵が発見された場合、その瑕疵が重要でなく、その修補に過分の費用を要するときは、Bは、Aに対し、柱の瑕疵を修補するよう請求することができない。
○ 正しい。 柱など構造耐力上主要な部分で、瑕疵が重要でなく、修補に過分に費用を要するなら、もう修補ではなく損害賠償の請求となる。
まず、構造耐力上主要な部分などの規定は、住宅の品質確保の促進等に関する法律第95条
「(新築住宅の売主の瑕疵担保責任の特例)
第九十五条 新築住宅の売買契約においては、売主は、買主に引き渡した時(当該新築住宅が住宅新築請負契約に基づき請負人から当該売主に引き渡されたものである場合にあっては、その引渡しの時)から十年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の隠れた瑕疵について、民法第五百七十条 において準用する同法第五百六十六条第一項 並びに同法第六百三十四条第一項
及び第二項 前段に規定する担保の責任を負う。この場合において、同条第一項 及び第二項 前段中「注文者」とあるのは「買主」と、同条第一項 中「請負人」とあるのは「売主」とする。
2 前項の規定に反する特約で買主に不利なものは、無効とする。
3 第一項の場合における民法第五百六十六条第三項 の規定の適用については、同項 中「前二項」とあるのは「住宅の品質確保の促進等に関する法律第九十五条第一項」と、「又は」とあるのは「、瑕疵修補又は」とする。 」 とあり、
使用されています、「住宅の構造耐力上主要な部分等」とは、住宅の品質確保の促進等に関する法律施行令第5条
「(住宅の構造耐力上主要な部分等)
第五条 法第九十四条第一項 の住宅のうち構造耐力上主要な部分として政令で定めるものは、住宅の基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材(筋かい、方づえ、火打材その他これらに類するものをいう。)、床版、屋根版又は横架材(はり、けたその他これらに類するものをいう。)で、当該住宅の自重若しくは積載荷重、積雪、風圧、土圧若しくは水圧又は地震その他の震動若しくは衝撃を支えるものとする。
2 法第九十四条第一項 の住宅のうち雨水の浸入を防止する部分として政令で定めるものは、次に掲げるものとする。
一 住宅の屋根若しくは外壁又はこれらの開口部に設ける戸、わくその他の建具
二 雨水を排除するため住宅に設ける排水管のうち、当該住宅の屋根若しくは外壁の内部又は屋内にある部分 」 とあり、
住宅の基礎、基礎ぐい、壁、柱、小屋組、土台、斜材床版、屋根版又は横架材等ですから、設問の「柱」も「住宅の構造耐力上主要な部分等」に該当し、住宅の品質確保の促進等に関する法律第95条により、売主から買主に引き渡された時から、10年間は、売主に瑕疵担保責任があります。
なお、民法上は売買契約について瑕疵修補請求は認められていませんが、住宅の品質確保の促進等に関する法律では認められてい ます。
そこで、「構造耐力上主要な部分としての柱に隠れた瑕疵が発見された場合に、その瑕疵が重要でなく、その修補に過分の費用を要するとき」となると、「瑕疵がたいして重要でないのに、必要以上に費用がかかる場合」ということです。
この規定は、民法第634条にあります。
「(請負人の担保責任)
第六百三十四条 仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
2 注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第五百三十三条の規定を準用する。
」 です。
この民法第634条は、基本的には請負人の担保責任ですが、住宅の品質確保の促進等に関する法律第95条によって、「同法(民法)第六百三十四条第一項
及び第二項 前段に規定する担保の責任を負う」とあり、その際、「注文主」は「買主」、「請負人」は「売主」と、読み替えられて適用があります。
よって、構造耐力上主要な部分としての柱に隠れた瑕疵が発見された場合、その瑕疵が重要でなく、その修補に過分の費用を要するときは、買主Bは、売主Aに対し、柱の瑕疵を修補するよう請求することができず、正しい。
このときは、もう修補の請求でなく、損害賠償だけを認めるということです。
3 AからBに住宅である101号室が引き渡された5年後に、構造耐力上主要な部分としての柱に隠れた瑕疵が発見され、Bが、Aに対し、柱の瑕疵の修補請求を行い、Aがこれを完了したときは、修補完了後もBに損害が残存していたとしても、Bは、Aに対する損害賠償請求をすることはできない。
X 誤っている。 修補請求と、損害賠償の請求は併存する。
選択肢1及び2で説明しましたように、「構造耐力上主要な部分としての柱に隠れた瑕疵」があれば、売主から買主に引き渡されて10年間は、売主に瑕疵担保責任がありますから、買主は、
@損害賠償の請求
A目的を達することができない時は、契約の解除
そして、B瑕疵の修補 もできるです。
そこで、設問のような買主Bが売主Aに対して修補をさせて、修補が終わった場合には、選択肢2で説明した住宅の品質確保の促進等に関する法律第95条で規定されています民法第634条2項前段
「2 買主(注文者)は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。 この場合においては、第五百三十三条の規定を準用する。 」 です。
この規定によれば、瑕疵の修補が完了しても、まだ、損害が残っていれば、損害賠償の請求ができますから、誤りです。
なお、民法第634条2項で準用のある民法第533条は、
「(同時履行の抗弁)
第五百三十三条 双務契約の当事者の一方は、相手方がその債務の履行を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができる。ただし、相手方の債務が弁済期にないときは、この限りでない。」
です。
4 AからBに住宅である101号室が引き渡された1年後に、建物の浴槽に隠れた瑕疵が発見された場合、BがAに対し損害賠償請求を行うには、瑕疵の発見から1年以内に裁判上の権利行使をしなければならない。
X 誤っている。 裁判上でなくても、売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げれば、損害賠償の請求はできる。
キーワードは「瑕疵の発見から1年以内に”裁判上の権利行使”をしなければならない。」です。
選択肢1及び2で説明しましたように、建物の浴槽に隠れた瑕疵が発見された場合なら、民法第570条→第566条の適用となります。
そこで、第566条3項
「3 前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。」においては、最高裁;平成4年10月20日 の判決があります。
「商法五二六条は、商人間の売買における目的物に瑕疵又は数量不足がある場合に、買主が売主に対して損害賠償請求権等の権利を行使するための前提要件を規定したにとどまり、同条所定の義務を履行することにより買主が行使し得る権利の内容及びその消長については、民法の一般原則の定めるところによるべきである。したがって、右の損害賠償請求権は、民法五七〇条、五六六条三項により、買主が瑕疵又は数量不足を発見した時から一年の経過により消滅すると解すべきであり、このことは、商法五二六条の規定による右要件が充足されたこととは関わりがない。そして、この一年の期間制限は、除斥期間を規定したものと解すべきであり、また、右各法条の文言に照らすと、この損害賠償請求権を保存するには、後記のように、売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げることをもって足り、裁判上の権利行使をするまでの必要はないと解するのが相当である。」 です。
裁判は、商法に関係して行われたのですが、この判決内で、民法第566条3項の規定は、「売主の担保責任を問う意思を裁判外で明確に告げることをもって足り、裁判上の権利行使をするまでの必要はない」とありますから、誤りです。
なお、判決文にあります、「除斥期間」とは、消滅時効に似ていますが、この期間を過ぎると権利の行使ができなくなるという、解釈上の期間です。時効のような中断などがありません。
答え:2
少しばかり難しいか。でも、このあたりは、基本として勉強をした記憶がある。過去の売主の瑕疵担保責任で使用した条文と異なった、「瑕疵が重要でなく、その修補に過分の費用を要するとき」とか、「瑕疵の発見から1年以内に裁判上の権利行使」とか出題の方法が変わった。
《タグ》民法 住宅の品質確保の促進等に関する法律。 売主の瑕疵担保責任、買主が事実を知った時から一年以内、裁判外の請求、構造耐力上主要な部分。
*2015年 12月 17日:これまでは、問題番号順に解説をやってきましたが、なにやら「設備関係」がもめているようですので、マンション管理士試験 「問36」 から、先にやります。 |
問18
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〔問 18〕 区分建物の登記に関する次の記述のうち、不動産登記法及び区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 建物の区分の登記は、一棟の建物である甲建物を物理的に区分して二棟の建物とし、既登記の建物の登記の登記記録から区分して新たに一個の区分建物とする登記である。
X 誤っている。 一棟の建物を、構造上及び利用上独立して利用できるなら、登記上区分して、登記する。物理的に一棟を二棟に分けないし、既登記の建物の登記の登記記録から区分して新たに一個の区分建物とする登記もしない。
平成26年マンション管理士試験 「問18」、 平成25年マンション管理士試験 「問18」、 平成25年管理業務主任者試験 「問43」、 平成24年マンション管理士試験 「問18」、 平成23年管理業務主任者試験 「問45」
区分とはなにかを訊くなかなか、面白い出題です。
具体的には、不動産登記法第54条
「(建物の分割、区分又は合併の登記)
第五十四条
次に掲げる登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。
一 建物の分割の登記(表題登記がある建物の附属建物を当該表題登記がある建物の登記記録から分割して登記記録上別の一個の建物とする登記をいう。以下同じ。)
二 建物の区分の登記(表題登記がある建物又は附属建物の部分であって区分建物に該当するものを登記記録上区分建物とする登記をいう。以下同じ。)
三 建物の合併の登記(表題登記がある建物を登記記録上他の表題登記がある建物の附属建物とする登記又は表題登記がある区分建物を登記記録上これと接続する他の区分建物である表題登記がある建物若しくは附属建物に合併して一個の建物とする登記をいう。以下同じ。)
2 共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物についての建物の分割の登記又は建物の区分の登記は、所有者以外の者は、申請することができない。
3 第四十条の規定は、所有権等の登記以外の権利に関する登記がある建物についての建物の分割の登記又は建物の区分の登記をするときについて準用する。」 とあり、
不動産登記法第54条1項2号によれば、「建物の区分の登記:表題登記がある建物又は附属建物の部分であって区分建物に該当するものを登記記録上区分建物とする登記をいう」です。
これを、区分所有法第1条の解釈とも合わせると、1棟の建物を物理的に分けて2棟にするわけではなく、一棟の建物である甲建物を、区分建物として必要な要件である、
@構造上 及び
A利用上独立して利用できるなら
登記上区分して、登記するので、誤りとなります。 いわば、法的に区分しているだけです。
なお、区分建物では、各専有部分が1個の建物として扱われ、専有部分ごとに登記記録が作成されています。
参考:区分所有法第1条
「一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。 」
2 敷地権付き区分建物についての一般の先取特権に係る権利に関する登記であって、敷地権が生ずる前に登記原因が生じ、区分建物に関する敷地権の登記後に登記がされるものは、建物についてのみ効力を有する登記として登記することができる。
X 誤っている。 分離処分の禁止が適用され、建物だけでなく、その敷地権にも効力が及ぶ。
問題文がかなり込み入っていて面倒です。
まず、先取特権とは、法律に定められた一定の債権を有している者は、債務者の全財産又は特定の財産に対して、他の一般債権者に優先して、弁済を受けられる権利です。(民法第303条以下)
民法で規定される共益の費用や雇用関係などの他に、国税、地方税なども該当し、また区分所有法第7条でも区分所有者間の債権を民法の共益費用とする先取特権を認めています。
民法上の先取特権には、
1.一般の先取特権...債務者の総財産について優先弁済権を付与される、民法第306条以下(共益の費用、雇用関係、葬式の費用、日用品の供給の4種)、
2.動産の先取特権....債務者の特定の財産について優先弁済権を付与される、民法第311条以下(不動産の賃貸借、旅館の宿泊、旅客又は荷物の運輸など全部で8種)
3.不動産の先取特権...債務者の特定の不動産について優先弁済権を付与される、民法第325条以下。(不動産の保存、不動産の工事、不動産の売買の3種) があります。
また、敷地権付き区分建物として登記がなされると、建物の権利(区分所有権=専有部分)とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができないということになります。(区分所有法第22条)
そこで、設問に戻ると、該当するのは、不動産登記法第73条
「(敷地権付き区分建物に関する登記等)
第七十三条
敷地権付き区分建物についての所有権又は担保権(一般の先取特権、質権又は抵当権をいう。以下この条において同じ。)に係る権利に関する登記は、第四十六条の規定により敷地権である旨の登記をした土地の敷地権についてされた登記としての効力を有する。ただし、次に掲げる登記は、この限りでない。
一 敷地権付き区分建物についての所有権又は担保権に係る権利に関する登記であって、区分建物に関する敷地権の登記をする前に登記されたもの(担保権に係る権利に関する登記にあっては、当該登記の目的等(登記の目的、申請の受付の年月日及び受付番号並びに登記原因及びその日付をいう。以下この号において同じ。)が当該敷地権となった土地の権利についてされた担保権に係る権利に関する登記の目的等と同一であるものを除く。)
二 敷地権付き区分建物についての所有権に係る仮登記であって、区分建物に関する敷地権の登記をした後に登記されたものであり、かつ、その登記原因が当該建物の当該敷地権が生ずる前に生じたもの
三 敷地権付き区分建物についての質権又は抵当権に係る権利に関する登記であって、区分建物に関する敷地権の登記をした後に登記されたものであり、かつ、その登記原因が当該建物の当該敷地権が生ずる前に生じたもの
四 敷地権付き区分建物についての所有権又は質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって、区分建物に関する敷地権の登記をした後に登記されたものであり、かつ、その登記原因が当該建物の当該敷地権が生じた後に生じたもの(区分所有法第二十二条第一項本文(同条第三項において準用する場合を含む。)の規定により区分所有者の有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない場合(以下この条において「分離処分禁止の場合」という。)を除く。)
2 第四十六条の規定により敷地権である旨の登記をした土地には、敷地権の移転の登記又は敷地権を目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない。ただし、当該土地が敷地権の目的となった後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)又は敷地権についての仮登記若しくは質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって当該土地が敷地権の目的となる前にその登記原因が生じたものは、この限りでない。
3 敷地権付き区分建物には、当該建物のみの所有権の移転を登記原因とする所有権の登記又は当該建物のみを目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない。ただし、当該建物の敷地権が生じた後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)又は当該建物のみの所有権についての仮登記若しくは当該建物のみを目的とする質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって当該建物の敷地権が生ずる前にその登記原因が生じたものは、この限りでない。」 とあります。
不動産登記法第73条1項によれば、担保権として一般の先取特権も、敷地権が生じる前から登記原因があれば、区分建物に関する敷地権の登記後に登記がされても、これは、分離処分の禁止が適用され、建物だけでなく、その敷地権についても効力を有しますから、誤りです。
2016年 3月12日:追記
設問がはっきりしないが、この設問の主題は、一般の先取特権ではなく、不動産登記法第73条1項の但し書きで3号の「三 敷地権付き区分建物についての質権又は抵当権に係る権利に関する登記であって、区分建物に関する敷地権の登記をした後に登記されたものであり、かつ、その登記原因が当該建物の当該敷地権が生ずる前に生じたもの」であれば、建物についてのみの効力を生じるため、誤りともとれる。
3 区分建物である建物を新築して所有者となった者が死亡し、表題登記のない当該区分建物の所有権を相続した者は、被相続人を表題部所有者とする当該区分建物についての表題登記を申請しなければならない。
X 誤っている。 ”申請できる”であり、”申請しなければならない”ではない。
平成24年 マンション管理士試験 「問18」
建物の表題登記の申請は、不動産登記法第47条
「(建物の表題登記の申請)
第四十七条
新築した建物又は区分建物以外の表題登記がない建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、表題登記を申請しなければならない。
2 区分建物である建物を新築した場合において、その所有者について相続その他の一般承継があったときは、相続人その他の一般承継人も、被承継人を表題部所有者とする当該建物についての表題登記を申請することができる。」 とあり、
不動産登記法第47条2項によれば、区分建物である建物を新築して所有者となった者が死亡し、表題登記のない当該区分建物の所有権を相続した者は、被相続人(=被承継人)を表題部所有者とする当該区分建物についての表題登記を”申請することができる”であり、”申請しなければならない”は誤りです。
なお、被承継人は、権利義務を承継される者で、例えば、被相続人(死亡した人)があげられます。
4 区分建物の合併の登記は表題登記がある区分建物を登記記録上これと接続する他の区分建物である表題登記がある建物に合併し、これらを同一の登記記録に記録することによって、一個の建物とする登記である。
○ 正しい。
選択肢1でも引用しました、不動産登記法第54条
「(建物の分割、区分又は合併の登記)
第五十四条
次に掲げる登記は、表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。
一 建物の分割の登記(表題登記がある建物の附属建物を当該表題登記がある建物の登記記録から分割して登記記録上別の一個の建物とする登記をいう。以下同じ。)
二 建物の区分の登記(表題登記がある建物又は附属建物の部分であって区分建物に該当するものを登記記録上区分建物とする登記をいう。以下同じ。)
三 建物の合併の登記(表題登記がある建物を登記記録上他の表題登記がある建物の附属建物とする登記又は表題登記がある区分建物を登記記録上これと接続する他の区分建物である表題登記がある建物若しくは附属建物に合併して一個の建物とする登記をいう。以下同じ。)
2 共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物についての建物の分割の登記又は建物の区分の登記は、所有者以外の者は、申請することができない。
3 第四十条の規定は、所有権等の登記以外の権利に関する登記がある建物についての建物の分割の登記又は建物の区分の登記をするときについて準用する。」 とあり、
不動産登記第54条1項3号によれば、正しい。
答え:4
不動産登記法の過去問題とは、ちょっとばかり、違う観点からの出題だ。 選択肢2は、文章が複雑で少しばかり悩ましいが、ここは、選択肢4は、かなりの確率で選べるか?
なお、不動産登記法についても、マンション管理士 香川 が無料で提供しています、「超解説 区分所有法」内 にありますから、参考にして下さい。
《タグ》不動産登記法、 民法 区分所有法 。区分の登記、合併の登記、先取特権、表題登記。
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問19
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● マンションの建替え等の円滑化に関する法律は、平成26年12月24日施行で、出題のマンション敷地売却組合などの規定の改正(追加)があったので、注意のこと。
〔問 19〕 マンション敷地売却組合(この問いにおいて「組合」という。)が施行するマンション敷地売却事業に関する次の記述のうち、マンションの建替え等の円滑化に関する法律の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 組合設立の認可を申請しようとするマンション敷地売却合意者は、組合の設立について、マンション敷地売却合意者の4/5以上の同意を得なければならない。
X 誤っている。 マンション敷地売却組合の設立では、3/4 の同意でいい。4/5は不要。
平成26年 マンション管理士試験 「問19」 など、マンションの建替えの円滑化等に関する法律からも例年1問は出題されるから、眼を通しておくこと。
別途、マンションの建替えの円滑化等に関する法律を要約したサイトもありますから、利用してください。
区分所有法による「建替え決議」の後を受けて、マンションの建替え等の円滑化に関する法律が制定されていましたが、地震大国:日本では過去だけでなく、将来大きな地震が起きることが想定されています。
そこで、平成25年には、「建築物の耐震改修の促進に関する法律」が改正され、また、平成26年6月25日交付、平成26年12月24日施行で「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」を一部改正して、この法律内に、耐震性不足のマンションの建替え等の円滑化を図るべく、多数決によりマンション及びその敷地を売却することを可能とする制度を創設する等の措置を講じています。
改正の概要は、以下のとおりです。
(1) 耐震性不足の認定を受けたマンションについては、区分所有者等の4/5以上の賛成で、マンション及びその敷地の売却を行う旨を決議できることとする。
(2) 決議に係るマンションを買い受けようとする者は、決議前に、当該マンションに係る買受計画を作成し、都道府県知事等の認定を受けることができることとし、決議で定める買受人は、当該認定を受けた者でなければならないこととする。
(3) 決議合意者は、決議合意者等の3/4以上の同意で、都道府県知事等の認可を受けてマンション及びその敷地の売却を行う組合を設立できることとする。
(4) 組合は、決議に反対した区分所有者に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すことを請求できることとする。
(5) 都道府県知事等の認可を受けた分配金取得計画で定める権利消滅期日に、マンション及びその敷地利用権は組合に帰属し、当該マンション及びその敷地利用権に係る借家権及び担保権は消滅することとする。
(6) 組合は、権利消滅期日までに、決議に合意した区分所有者に分配金を支払うとともに、借家権者に対して補償金を支払うこととする。
(7) 耐震性不足の認定を受けたマンションの建替えにより新たに建築されるマンションで、一定の敷地面積を有し、市街地環境の整備・改善に資するものについて、特定行政庁の許可により容積率制限を緩和することとする。
大きな特徴としては、区分所有者等の4/5以上の賛成で、マンション及びその敷地の売却を行う旨を決議できること と、特定行政庁の許可により容積率制限を緩和すること でしょうか。
これを踏まえ、設問は、マンションの建替え等の円滑化に関する法律第120条
「(設立の認可)
第百二十条 第百八条第十項において読み替えて準用する区分所有法第六十四条の規定によりマンション敷地売却決議の内容によりマンション敷地売却を行う旨の合意をしたものとみなされた者(マンションの区分所有権又は敷地利用権を有する者であってその後に当該マンション敷地売却決議の内容により当該マンション敷地売却を行う旨の同意をしたものを含む。以下「マンション敷地売却合意者」という。)は、五人以上共同して、定款及び資金計画を定め、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事等の認可を受けて組合を設立することができる。
2 前項の規定による認可を申請しようとするマンション敷地売却合意者は、組合の設立について、マンション敷地売却合意者の四分の三以上の同意(同意した者の区分所有法第三十八条の議決権の合計がマンション敷地売却合意者の同条の議決権の合計の四分の三以上であり、かつ、同意した者の敷地利用権の持分の価格の合計がマンション敷地売却合意者の敷地利用権の持分の価格の合計の四分の三以上となる場合に限る。)を得なければならない。
3 前二項の場合において、マンションの一の専有部分が数人の共有に属するときは、その数人を一人のマンション敷地売却合意者とみなす。 」 とあり、
マンションの建替え等の円滑化に関する法律第120条2項によれば、マンション敷地売却組合の設立は、マンション敷地売却合意者の3/4以上の同意でできますから、4/5以上の同意を得なければならないは誤りです。
2 マンションの一つの専有部分が数人の共有に属するときは、その数人を1人の組合員とみなす。
○ 正しい。
組合員については、マンションの建替え等の円滑化に関する法律第125条
「(組合員)
第百二十五条 売却マンションのマンション敷地売却合意者(その承継人(組合を除く。)を含む。)は、全て組合の組合員とする。
2 マンションの一の専有部分が数人の共有に属するときは、その数人を一人の組合員とみなす。
3 第十八条及び第十九条の規定は、組合の組合員について準用する。この場合において、第十八条第一項及び第二項中「第九条第一項」とあるのは「第百二十条第一項」と、同条第一項中「第十四条第一項」とあるのは「第百二十三条第一項」と、「並びに建替え合意者等である組合員又は参加組合員の別その他」とあるのは「その他」と、第十九条中「施行マンション」とあるのは「売却マンション」と読み替えるものとする。
」 とあり、
マンションの建替え等の円滑化に関する法律第125条2項によれば、マンションの一の専有部分が数人の共有に属するときは、その数人を一人の組合員とみなす、は正しい。
この規定は、区分所有法でも同様です。
3 組合には、役員として、理事3人以上及び監事2人以上を置く。
○ 正しい。 理事は3人以上、監事は2人以上。
組合の役員は、マンションの建替え等の円滑化に関する法律第126条
「(役員)
第百二十六条 組合に、役員として、理事三人以上及び監事二人以上を置く。
2 組合に、役員として、理事長一人を置き、理事の互選によりこれを定める。
第二十一条から第二十五条まで(同条第一項後段を除く。)の規定は、組合の役員について準用する。この場合において、第二十二条第一項中「三年」とあるのは、「一年」と読み替えるものとする。
」 とあり、
マンションの建替え等の円滑化に関する法律第126条1項によれば、組合には、役員として、理事3人以上及び監事2人以上を置く、は正しい。
監事の数が2人以上に注意。
4 組合員の数が50人を超える組合は、総会に代わってその権限を行わせるために総代会を設けることができる。
○ 正しい。
組合員が多いときは、マンションの建替え等の円滑化に関する法律第131条
「(総代会)
第百三十一条 組合員の数が五十人を超える組合は、総会に代わってその権限を行わせるために総代会を設けることができる。
2 総代会は、総代をもって組織するものとし、総代の定数は、組合員の総数の十分の一を下らない範囲内において定款で定める。ただし、組合員の総数が二百人を超える組合にあっては、二十人以上であることをもって足りる。
3 総代会が総会に代わって行う権限は、次の各号のいずれかに該当する事項以外の事項に関する総会の権限とする。
一 理事及び監事の選挙又は選任
二 前条の規定に従って議決しなければならない事項
4 第二十八条第一項から第四項まで及び第六項並びに第二十九条(第三項ただし書を除く。)の規定は組合の総代会について、第三十一条第五項の規定は総代会が設けられた組合について、それぞれ準用する。」 とあり、
マンションの建替え等の円滑化に関する法律第131条1項によれば、 組合員の数が50人を超える組合は、総会に代わってその権限を行わせるために総代会を設けることができる、は正しい。
答え:1
マンションの建替え等の円滑化に関する法律の改正された条文からの出題です。 改正点を知らなくても、区分所有法やマンションの建替え等の円滑化に関する法律での組合の設立から、決議合意者等の3/4以上の同意で可能は、選べたか?
《タグ》マンションの建替え等の円滑化に関する法律。 敷地売却組合、設立、役員、総代会
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問20
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〔問 20〕 共同住宅に関する次の記述のうち、建築基準法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 共同住宅の敷地内には、屋外への出口から道又は公園、広場その他の空地に通ずる幅員が1.5m以上の通路を設けなければならない。
○ 正しい。
平成24年 マンション管理士試験 「問41」 選択肢3
敷地内からの通路の規定は、建築基準法施行令128条
「(敷地内の通路)
第百二十八条
敷地内には、第百二十三条第二項の屋外に設ける避難階段及び第百二十五条第一項の出口から道又は公園、広場その他の空地に通ずる幅員が一・五メートル以上の通路を設けなければならない。」 とあり、
正しい。
2 共同住宅の地上階における居室には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して1/7以上としなければならない。
○ 正しい。
平成22年 マンション管理士試験 「問20」 選択肢3 など
地上の居室の採光は、建築基準法第28条1項
「(居室の採光及び換気)
第二十八条 住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室(居住のための居室、学校の教室、病院の病室その他これらに類するものとして政令で定めるものに限る。)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては七分の一以上、その他の建築物にあつては五分の一から十分の一までの間において政令で定める割合以上としなければならない。ただし、地階若しくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室又は温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りでない。
」 とあり、
住宅の地上階の居室では、窓その他の開口部は、居室の床面積の1/7以上が必要ですから、正しい。
3 高さ15mの共同住宅には、避雷設備を設けなければならない。
X 誤っている。 避雷設備は、高さが20m超で設置する。 15mではない。
平成22年 マンション管理士試験 「問20」 選択肢1 など
避雷設備は、建築基準法第33条
「(避雷設備)
第三十三条 高さ二十メートルをこえる建築物には、有効に避雷設備を設けなければならない。ただし、周囲の状況によつて安全上支障がない場合においては、この限りでない。 」 とあり、
高さは、20mを超えると、避雷設備の設置が必要となりますので、15mは、誤りです。
4 共同住宅の2階以上にあるバルコニーの周囲には、安全上必要な高さが1.1m以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない。
○ 正しい。
平成16年 マンション管理士試験 「問20」
2階以上にあるバルコニーの周囲は、建築基準法施行令第126条
「(屋上広場等)
第百二十六条
屋上広場又は二階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが一・一メートル以上の手すり壁、さく又は金網を設けなければならない。
2 建築物の五階以上の階を百貨店の売場の用途に供する場合においては、避難の用に供することができる屋上広場を設けなければならない。」 とあり、
建築基準法施行令第126条1項により、正しい。
答え:3
ここは、過去問題をやっていれば、正解は速い。
参考:過去問題の 「建築基準法」 のまとめ あり。
《タグ》建築基準法 建築基準法施行令。 通路の幅員、採光、避雷設備、手すり
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問21
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〔問 21〕 都市計画法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 市街化区域については、少なくとも用途地域を定めるものとされており、市街化調整区域については、用途地域を定めてはならないものとされている。
X 誤っている。 市街化調整区域については、”原則として”、用途地域を定めない。 例外もある。
都市計画法からも毎年1問はでます。参考:出題分析。 平成26年マンション管理士試験 「問21」、 平成25年マンション管理士試験 「問21」、平成24年マンション管理士試験 「問21」、平成23年マンション管理士試験 「問21」、など。
地域地区での市街化区域とか市街化調整区域とか、用途地域の説明となると、マンション管理士 香川 が解説しています、「目指せ! マンション管理士・管理業務主任者」の過去問題の下の方に 「都市計画法」 だけを纏めていますから、ここから、勉強してください。
そこで、設問は、都市計画法第13条1項7号
「 (都市計画基準)
第十三条
七 地域地区は、土地の自然的条件及び土地利用の動向を勘案して、住居、商業、工業その他の用途を適正に配分することにより、都市機能を維持増進し、かつ、住居の環境を保護し、商業、工業等の利便を増進し、良好な景観を形成し、風致を維持し、公害を防止する等適正な都市環境を保持するように定めること。この場合において、市街化区域については、少なくとも用途地域を定めるものとし、市街化調整区域については、原則として用途地域を定めないものとする。」 とあり、
都市計画法第13条1項7号によれば、市街化区域については、少なくとも用途地域を定めるものとされていますが、市街化調整区域については、”原則として”用途地域を定めないものとしますから、設問の「市街化調整区域については、用途地域を定めてはならないものとされている」は、誤りです。
参考:市街化区域と市街化調整区域の違い
都市計画法第7条2項及び3項
「(区域区分)
第七条
2 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。
3 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。 」
用途地域とは、都市計画法第8条
「(地域地区)
第八条
都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる地域、地区又は街区を定めることができる。
一 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域又は工業専用地域(以下「用途地域」と総称する。)」
2 市街地開発事業の都市計画は、市街化調整区域内において定めることはできないが、準都市計画区域内において定めることはできる。
X 誤っている。 市街地開発事業の都市計画は、市街化調整区域内においても、準都市計画区域内においても定められない。
まず、都市計画とか市街地開発事業とは、都市計画法第4条1号及び7号
「(定義)
第四条
この法律において「都市計画」とは、都市の健全な発展と秩序ある整備を図るための土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する計画で、次章の規定に従い定められたものをいう。
7 この法律において「市街地開発事業」とは、第十二条第一項各号に掲げる事業をいう。」 とあり、
都市計画法第第12条は、
「(市街地開発事業)
第十二条 都市計画区域については、都市計画に、次に掲げる事業を定めることができる。
一 土地区画整理法 (昭和二十九年法律第百十九号)による土地区画整理事業
二 新住宅市街地開発法 (昭和三十八年法律第百三十四号)による新住宅市街地開発事業
三 首都圏の近郊整備地帯及び都市開発区域の整備に関する法律(昭和三十三年法律第九十八号)による工業団地造成事業又は近畿圏の近郊整備区域及び都市開発区域の整備及び開発に関する法律
(昭和三十九年法律第百四十五号)による工業団地造成事業
四 都市再開発法 による市街地再開発事業
五 新都市基盤整備法 (昭和四十七年法律第八十六号)による新都市基盤整備事業
六 大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法 による住宅街区整備事業
七 密集市街地整備法 による防災街区整備事業
2 市街地開発事業については、都市計画に、市街地開発事業の種類、名称及び施行区域を定めるものとするとともに、施行区域の面積その他の政令で定める事項を定めるよう努めるものとする。
(以下、略) 」 です。
都市計画区域として指定するには、要件が厳しくあります。
市街地開発事業は、地方公共団体や土地区画整理組合等が市街化区域(既成市街地)又は今後市街化が予想される区域について、都市施設(道路、公園、学校など公共施設)の整備改善を図るとともに、宅地の利用増進等を行い、健全な都市生活を営める良好な市街地の形成を行う事業です。都市施設の整備が点と線であるのに対し、市街地開発事業は面的な整備をするものです。
そこで、都市計画において市街地開発事業が定められるのは、都市計画法第13条1項12号
「(都市計画基準)
第十三条
十二 市街地開発事業は、市街化区域又は区域区分が定められていない都市計画区域内において、一体的に開発し、又は整備する必要がある土地の区域について定めること。
」 とあり、
市街地開発事業が定められるのは、市街化区域又は区域区分が定められていない都市計画区域内ですから、市街化を抑制する区域である市街化調整区域(都市計画法第7条3項)では、定められず、設問の前半は正しい。
そして、設問の後半の「準都市計画区域」は、都市計画法第5条の2
「(準都市計画区域)
第五条の二
都道府県は、都市計画区域外の区域のうち、相当数の建築物その他の工作物(以下「建築物等」という。)の建築若しくは建設又はこれらの敷地の造成が現に行われ、又は行われると見込まれる区域を含み、かつ、自然的及び社会的条件並びに農業振興地域の整備に関する法律(昭和四十四年法律第五十八号)その他の法令による土地利用の規制の状況その他国土交通省令で定める事項に関する現況及び推移を勘案して、そのまま土地利用を整序し、又は環境を保全するための措置を講ずることなく放置すれば、将来における一体の都市としての整備、開発及び保全に支障が生じるおそれがあると認められる一定の区域を、準都市計画区域として指定することができる。」 です。
準都市計画区域は、一定の要件がないと指定することができない都市計画区域の指定がない区域であっても、相当数の建築物等の建築又はこれらの敷地の造成が現に行われていたり、または将来行われると見込まれる区域で、そのまま土地利用を整序し、又は環境を保全するための措置を講ずることなく放置すれば、将来における一体の都市としての整備、開発及び保全に支障が生じるおそれがあると認められる一定の区域を、あらかじめ「準都市計画区域」として指定し、土地の利用などで規制の網をかけるものです。
平成12年から創設された制度です。
そこで、準都市計画区域は都市計画区域ではないため、たとえ用途地域が定められていたとしても、市街地開発事業を定めることはできませんから、設問は、後半が誤りです。
なお、準都市計画区域に指定されている区域が都市計画区域に指定されれば、その準都市計画区域は廃止されたものとみなされます(都市計画法第5条の2 5項)
3 地方自治法に規定する指定都市及び中核市の土地の区域の全部又は一部を含む都市計画区域については、市街化区域と市街化調整区域との区分を定めなければならない。
X 誤りである。 こんな規定はない? 指定都市は入っているが、中核市は入っていない。
まず、地方自治法に規定する指定都市とは、地方自治法第252条の19
「 (指定都市の権能)
第二百五十二条の十九 政令で指定する人口五十万以上の市(以下「指定都市」という。)は、次に掲げる事務のうち都道府県が法律又はこれに基づく政令の定めるところにより処理することとされているものの全部又は一部で政令で定めるものを、政令で定めるところにより、処理することができる。 」 です。
人口50万以上の市で政令で指定された指定都市は、現在(2015年)、大阪市 名古屋市 京都市 横浜市 神戸市 北九州市 札幌市 川崎市 福岡市 広島市 仙台市 千葉市 さいたま市 静岡市 堺市 新潟市 浜松市 岡山市 相模原市 熊本市 の20市があります。
また、中核市とは、地方自治法第252条の22
「(中核市の権能)
第二百五十二条の二十二 政令で指定する人口二十万以上の市(以下「中核市」という。)は、第二百五十二条の十九第一項の規定により指定都市が処理することができる事務のうち、都道府県がその区域にわたり一体的に処理することが中核市が処理することに比して効率的な事務その他の中核市において処理することが適当でない事務以外の事務で政令で定めるものを、政令で定めるところにより、処理することができる。
2 中核市がその事務を処理するに当たつて、法律又はこれに基づく政令の定めるところにより都道府県知事の改善、停止、制限、禁止その他これらに類する指示その他の命令を受けるものとされている事項で政令で定めるものについては、政令の定めるところにより、これらの指示その他の命令に関する法令の規定を適用せず、又は都道府県知事の指示その他の命令に代えて、各大臣の指示その他の命令を受けるものとする。 」 です。
平成26年から、前は人口30万以上が、人口20万以上に改正されています。
政令指定都市が処理することができる事務のうち、都道府県がその区域にわたり一体的に処理することが中核市が処理することに比して効率的な事務を除き、中核市に対して移譲したものです。
現在(2015年)、45市が、政令で指定されています。
宇都宮市 金沢市 岐阜市 姫路市 鹿児島市 秋田市 郡山市 和歌山市 長崎市 大分市 豊田市 福山市 高知市 宮崎市 いわき市 長野市 豊橋市 高松市 旭川市 松山市 横須賀市 奈良市 倉敷市 川越市 船橋市 岡崎市 高槻市 東大阪市 富山市 函館市 下関市 青森市 盛岡市 柏市 西宮市 久留米市 前橋市 大津市 尼崎市 高崎市 豊中市 那覇市 枚方市 八王子市 越谷市。
このように、指定都市の権能は都道府県が行うことになっている全部または一部の事務処理を行い、中核市は、指定都市が処理することができる事務のうち、都道府県がその区域にわたり一体的に処理することが中核市が処理することに比して効率的な事務を除き、中核市に対して移譲したものです。
指定都市にせよ、中核市にせよ行政上の権限委譲の規定はあっても、設問のような、「指定都市及び中核市の土地の区域の全部又は一部を含む都市計画区域については、市街化区域と市街化調整区域との区分を定めなければならない」の規定はありませんから、誤りです。
2016年 3月12日:訂正
該当するのは、都市計画法7条
「(区域区分)
第七条 都市計画区域について無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため必要があるときは、都市計画に、市街化区域と市街化調整区域との区分(以下「区域区分」という。)を定めることができる。ただし、次に掲げる都市計画区域については、区域区分を定めるものとする。
一 次に掲げる土地の区域の全部又は一部を含む都市計画区域
イ 首都圏整備法第二条第三項 に規定する既成市街地又は同条第四項 に規定する近郊整備地帯
ロ 近畿圏整備法第二条第三項 に規定する既成都市区域又は同条第四項 に規定する近郊整備区域
ハ 中部圏開発整備法第二条第三項 に規定する都市整備区域
二 前号に掲げるもののほか、大都市に係る都市計画区域として政令で定めるもの
2 市街化区域は、すでに市街地を形成している区域及びおおむね十年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域とする。
3 市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とする。 」 とあり、
都市計画法第7条1項2号の政令は、都市計画法施行令第3条
「(大都市に係る都市計画区域)
第三条 法第七条第一項第二号 の大都市に係る都市計画区域として政令で定めるものは、地方自治法 (昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項 の指定都市(以下単に「指定都市」という。)の区域の全部又は一部を含む都市計画区域(指定都市の区域の一部を含む都市計画区域にあつては、その区域内の人口が五十万未満であるものを除く。)とする。 」 とあり、
設問の「地方自治法に規定する指定都市”及び中核市”」のうち、”及び中核市”は該当していないため、誤りです。
4 都市計画区域に定められる都市計画は、都道府県が定める都市計画のみならず、市町村が定めるものについても、当該都市計画区域の整備、開発及び保全の方針に即したものでなければならない。
○ 正しい。
都市計画を定めるにあたっては、都市計画法第15条1項1号
「(都市計画を定める者)
第十五条
次に掲げる都市計画は都道府県が、その他の都市計画は市町村が定める。
一 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針に関する都市計画
(以下、略) 」 とあり、
正しい。
また、都市計画法第6条の2
「(都市計画区域の整備、開発及び保全の方針)
第六条の二 都市計画区域については、都市計画に、当該都市計画区域の整備、開発及び保全の方針を定めるものとする。
2 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針には、第一号に掲げる事項を定めるものとするとともに、第二号及び第三号に掲げる事項を定めるよう努めるものとする。
一 次条第一項に規定する区域区分の決定の有無及び当該区域区分を定めるときはその方針
二 都市計画の目標
三 第一号に掲げるもののほか、土地利用、都市施設の整備及び市街地開発事業に関する主要な都市計画の決定の方針
3 都市計画区域について定められる都市計画(第十一条第一項後段の規定により都市計画区域外において定められる都市施設(以下「区域外都市施設」という。)に関するものを含む。)は、当該都市計画区域の整備、開発及び保全の方針に即したものでなければならない。 」 ともあります。
答え:4
都市計画法は、次々と変更があり、最初から統一がとれた法律でないため、自分なりにちゃんと整備したノートを作って纏めることが肝心です。
選択肢3の地方自治法での政令指定都市や中核市の解説で、随分と時間をとられた。 この選択肢3の地方自治法からの出題法は、マンション管理士の出題範囲からも逸脱した、実に不適切な設問です。
参考:過去問題の 「都市計画法」 のまとめ あり。
《タグ》都市計画法 地方自治法。 市街化区域、市街化調整区域、用途地区、準都市計画区域、指定都市、中核市、都市計画。
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問22
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〔問 22〕 貯水槽水道に関する次の記述のうち、水道法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とする水道は、水槽の有効容量を問わず、貯水槽水道である。
X 誤っている。 水槽の有効容量の合計が100m3を超えると、専用水道となる。
平成26年マンション管理士試験 「問22」 、平成25年マンション管理士試験 「問22」、 平成23年 マンション管理士 「問22」選択肢3 、平成22年 マンション管理士試験 「問22」 など。
設問が分かり難いのですが、まず、「水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とする水道」には、@専用水道 と A簡易専用水道 が該当します。
専用水道は、 水道法第3条6項
「(用語の定義)
第三条
6 この法律において「専用水道」とは、寄宿舎、社宅、療養所等における自家用の水道その他水道事業の用に供する水道以外の水道であつて、次の各号のいずれかに該当するものをいう。ただし、他の水道から供給を受ける水のみを水源とし、かつ、その水道施設のうち地中又は地表に施設されている部分の規模が政令で定める基準以下である水道を除く。
一 百人を超える者にその居住に必要な水を供給するもの
二 その水道施設の一日最大給水量(一日に給水することができる最大の水量をいう。以下同じ。)が政令で定める基準を超えるもの」 とあり、
ただし書きの政令は、水道法施行令第1条
「(専用水道の基準)
第一条 水道法 (以下「法」という。)第三条第六項 ただし書に規定する政令で定める基準は、次のとおりとする。
一 口径二十五ミリメートル以上の導管の全長 千五百メートル
二 水槽の有効容量の合計 百立方メートル
2 法第三条第六項第二号 に規定する政令で定める基準は、人の飲用その他の厚生労働省令で定める目的のために使用する水量が二十立方メートルであることとする。」 です。
水道法第3条6項は、「その他」と「以外の」などがどこにかかるのか、かなり分かり難い規定です。
「自家用の水道」は、社宅、療養所、学校、事務所、レジャー施設等の管理者が、その用に供するため自ら施設する水道です。
「水道事業の用に供する水道以外の水道」は、一般の需要に応じて水を供給する水道事業の概念にあてはまらない水道のすべてを包含します。水道事業の概念にあてはまるものは、専用水道の取扱いをすることができません。
で、専用水道を纏めると、以下のようになります。
専用水道は、常に101人以上の居住者に対して、飲用、炊事、洗濯などの水を供給する水道又は1日最大給水量が20m3を超える水道で、次のいずれかに該当するもの。
1.自己水源の水(井戸水等)のみを供給するもの...寄宿舎、社宅、療養所、学校、事務所、病院、レジャー施設等施設の管理者が、その施設に供給するために自ら施設する水道です。
2.自己水源の水と他の水道(水道局の水道等)から供給を受ける水を混合して供給するもの
3.他の水道(水道局の水道等)から供給を受ける水のみを水源とし、次のいずれかに該当するもの
ア 水槽の有効容量の合計が100m3を超えるもの
イ 口径25mm以上の導管の全長が1,500mを超えるもの
(ただし地表から汚染の影響を受けない程度に高く設けられた水槽や導管の容量や延長は算入しません。)
そして、簡易専用水道は、水道法第3条7項
「(用語の定義)
第三条
7 この法律において「簡易専用水道」とは、水道事業の用に供する水道及び専用水道以外の水道であつて、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするものをいう。ただし、その用に供する施設の規模が政令で定める基準以下のものを除く。
」 です。
ただし書きの政令は、水道法施行令第2条
「(簡易専用水道の適用除外の基準)
第二条 法第三条第七項 ただし書に規定する政令で定める基準は、水道事業の用に供する水道から水の供給を受けるために設けられる水槽の有効容量の合計が十立方メートルであることとする。」 です。
また、 「貯水槽水道」という用語は、ビルやマンション等の建物内に設置されている受水槽以降の給水設備の総称として、平成13年に改正された水道法で定められたものです。
貯水槽水道は、水道局からのみ給水を受ける受水槽式の水道であり、水槽内で井戸水等と混合されて使用される施設は該当しません。また、規模等が一定の要件を超えるものについても貯水槽水道からは除外されます。
貯水槽(受水槽)や高置水槽を用いる水道施設を貯水槽水道といいます。
法的に貯水槽水道とは、水道法第14条2項5号
「五 貯水槽水道(水道事業の用に供する水道及び専用水道以外の水道であつて、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするものをいう。以下この号において同じ。)が設置される場合においては、貯水槽水道に関し、水道事業者及び当該貯水槽水道の設置者の責任に関する事項が、適正かつ明確に定められていること。」 とあります。
そして、貯水槽水道には,以下の2つの水道があります。
1.「簡易専用水道」(受水槽の有効容量が10m3を超えるもの) 水道法の規制がある と
2.「小規模貯水槽水道」(受水槽の有効容量が10m3以下のもの) 条例の規制がある があります。
貯水槽水道は、簡易専用水道を含んでいます。
そこで、設問の「水槽の有効容量」をみますと、100m3超となると、専用水道が該当し、10m3超から100m3以下までが、貯水槽水道となりますから、水槽の有効容量を問わず、貯水槽水道となるは、誤りです。
2 貯水槽水道のうち、水槽の有効容量の合計が10m3を超えるものは、簡易専用水道となる。
○ 正しい。
まず、選択肢1でも説明しましたが、簡易専用水道とは、都や市町村など地方公共団体の水道から供給される水だけを水源として、その水をいったん受水槽にためてから給水する水道のうち、受水槽の有効容量の合計が10m3を超えるもの(受水槽の有効容量の合計が10m3以下なら該当しません)を「簡易専用水道」といいます。ただし、工場に設置しているなど、全く飲み水として使用しない場合も、簡易専用水道には該当しません。
貯水槽水道の管理は、設置者(建物所有者や分譲マンションでは管理組合等)が行うこととされています。
ビル、マンション等の貯水槽水道の管理について、その設置者の責任を水道事業者が定める供給規定上明確にし、その管理の徹底を図るために平成13年の改正水道法で設けられました。
水道法施行規則で、1年以内ごとに1回の水槽の清掃と厚生労働大臣の登録を受けた者の検査を受ける義務が規定されています。
簡易専用水道の設置者はその水道を管理し、1年以内ごとに1回の清掃及び厚生労働大臣登録検査機関で検査を受けることが水道法で義務付けられていますので必ず行ってください。
3 貯水槽水道のうち、水槽の有効容量の合計が100m3を超えるものは、専用水道となる。
X 誤っている? 貯水槽水道と専用水道とは、最初から別のもの? こんな規定はない? しかし、水槽の有効容量が100m3以上なら、専用水道では?
どうも、水槽の有効容量に関して、貯水槽水道と専用水道の区別がどこにあるのか、法的にはっきりしない。
貯水槽水道とは、水道法第14条2項5号
「五 貯水槽水道(水道事業の用に供する水道及び専用水道以外の水道であつて、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするものをいう。以下この号において同じ。)が設置される場合においては、貯水槽水道に関し、水道事業者及び当該貯水槽水道の設置者の責任に関する事項が、適正かつ明確に定められていること。」 であり、
専用水道は、選択肢1で説明したように、寄宿舎・社宅・療養所等において、井戸水等の自家用の水道もしくは入居者等へ供給する特定の需要者専用の水道であって、100人を超える者にその居住に必要な水を供給するもの、または、その水道施設において、人の飲用・炊事・その他生活の用に供する水としての1日最大給水量が20m3を超えるものを「専用水道」といいます。
しかし、専用水道の適用除外として、
他の水道から供給を受ける水のみを水源とする水道であって、口径25o以上の導管の全長が1,500m以下であり、かつ、水槽の有効容量の合計が100m3以下である水道については、専用水道から除外されます。(※導管延長及び水槽容量の算定にあたっては、地表からの浸水等による汚染のおそれのないように設置されているものについては除きます。)
ということだけど、これなら、選択肢1との関係において、水槽の有効容量の合計が10m3超から、100m3以下までが、貯水槽水道で、100m3超となると、専用水道では?
4 水道事業の用に供する水道から供給を受ける水に加えて自家用の井戸を水源とし、水槽の有効容量の合計が10m3以下のものは、貯水槽水道である。
X 誤っている。 貯水槽水道では、水源は、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみで、自家用の井戸水が入ると貯水槽水道でない。
選択肢1でも引用しましたが、貯水槽水道は、水道法第14条2項5号
「五 貯水槽水道(水道事業の用に供する水道及び専用水道以外の水道であつて、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするものをいう。以下この号において同じ。)が設置される場合においては、貯水槽水道に関し、水道事業者及び当該貯水槽水道の設置者の責任に関する事項が、適正かつ明確に定められていること。」 とあり、
水道事業の用に供する水道から供給を受ける水に加えて自家用の井戸を水源とすると、該当しませんから、誤りです。
答え:2 ?
水道法を追求していくと、水槽の有効容量での貯水槽水道と専用水道の区別がどこにあるのか、法的にどうもはっきりしない。チョット図書館で勉強してきます。
図書館でも水道法の参考書を探したが、水道法の解説本はなかった。そこで、給水なども探したが、どうもはっきりしない。
すっきりと、解説できる方がおられたら、 「マンション管理士 香川事務所」 まで、連絡ください。
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《タグ》水道法。 貯水槽水道、専用水道、簡易専用水道、水槽の有効容量
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問23
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● 消防法は、平成26年4月1日施行で、防火・防災管理体制を強化するために改正があったので、注意のこと。
〔問 23〕 共同住宅の防火管理に関する次の記述のうち、消防法の規定によれば、誤っているものはどれか。
1 100人が居住する共同住宅では、防火管理者は、消防計画に基づき、消火、通報及び避難の訓練を行わなければならない。
○ 正しい。 共同住宅で収容人員が50人以上となると、防火管理者を定めること。
平成26年マンション管理士試験 「問23」 、平成25年マンション管理士試験 「問23」、 平成24年マンション管理士試験 「問23」、平成19年マンション管理士試験 「問24」。
防火管理者の規定は、消防法第8条
「第八条
学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店(これに準ずるものとして政令で定める大規模な小売店舗を含む。以下同じ。)、複合用途防火対象物(防火対象物で政令で定める二以上の用途に供されるものをいう。以下同じ。)その他多数の者が出入し、勤務し、又は居住する防火対象物で政令で定めるものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちから防火管理者を定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
2 前項の権原を有する者は、同項の規定により防火管理者を定めたときは、遅滞なくその旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
3 消防長又は消防署長は、第一項の防火管理者が定められていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、同項の規定により防火管理者を定めるべきことを命ずることができる。
4 消防長又は消防署長は、第一項の規定により同項の防火対象物について同項の防火管理者の行うべき防火管理上必要な業務が法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、当該業務が当該法令の規定又は消防計画に従つて行われるように必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
5 第五条第三項及び第四項の規定は、前二項の規定による命令について準用する。」 とあり、
第8条1項の政令は、消防法施行令第1条の2 3項1号ハ
「(防火管理者を定めなければならない防火対象物等)
第一条の二 3項1号
ハ 別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項から(十五)項まで、(十六)項ロ及び(十七)項に掲げる防火対象物で、収容人員が五十人以上のもの 」 とあり、
消防法では、マンションは、「寄宿舎、下宿又は共同住宅」として、別表第一「(五)項ロ」に該当しますから、収容人員が50人以上では、防火管理者を定めて、防火管理者は、防火対象物について消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わなければなりませんから、正しい。
また、消防法施行令第3条の2 もあります。
「(防火管理者の責務)
第三条の二 防火管理者は、総務省令で定めるところにより、当該防火対象物についての防火管理に係る消防計画を作成し、所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。
2 防火管理者は、前項の消防計画に基づいて、当該防火対象物について消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わなければならない。
3 防火管理者は、防火管理上必要な業務を行うときは、必要に応じて当該防火対象物の管理について権原を有する者の指示を求め、誠実にその職務を遂行しなければならない。
4 防火管理者は、消防の用に供する設備、消防用水若しくは消火活動上必要な施設の点検及び整備又は火気の使用若しくは取扱いに関する監督を行うときは、火元責任者その他の防火管理の業務に従事する者に対し、必要な指示を与えなければならない。
」
2 高さ50mの共同住宅であって、その管理について権原が分かれているものの管理について権原を有する者は、統括防火管理者を協議して定めなけれぱならない。
○ 正しい。 建築物で高さ31mを超えて、管理が分かれていると、統括防火管理者を定めること。
高層建築物(高さ31m超)における統括防火管理者の規定は、消防法第8条の2
「第八条の二 高層建築物(高さ三十一メートルを超える建築物をいう。第八条の三第一項において同じ。)その他政令で定める防火対象物で、その管理について権原が分かれているもの又は地下街(地下の工作物内に設けられた店舗、事務所その他これらに類する施設で、連続して地下道に面して設けられたものと当該地下道とを合わせたものをいう。以下同じ。)でその管理について権原が分かれているもののうち消防長若しくは消防署長が指定するものの管理について権原を有する者は、政令で定める資格を有する者のうちからこれらの防火対象物の全体について防火管理上必要な業務を統括する防火管理者(以下この条において「統括防火管理者」という。)を協議して定め、政令で定めるところにより、当該防火対象物の全体についての消防計画の作成、当該消防計画に基づく消火、通報及び避難の訓練の実施、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設の管理その他当該防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務を行わせなければならない。
2 統括防火管理者は、前項の規定により同項の防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務を行う場合において必要があると認めるときは、同項の権原を有する者が前条第一項の規定によりその権原に属する当該防火対象物の部分ごとに定めた同項の防火管理者に対し、当該業務の実施のために必要な措置を講ずることを指示することができる。
3 前条第一項の規定により前項に規定する防火管理者が作成する消防計画は、第一項の規定により統括防火管理者が作成する防火対象物の全体についての消防計画に適合するものでなければならない。
4 第一項の権原を有する者は、同項の規定により統括防火管理者を定めたときは、遅滞なく、その旨を所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。
5 消防長又は消防署長は、第一項の防火対象物について統括防火管理者が定められていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、同項の規定により統括防火管理者を定めるべきことを命ずることができる。
6 消防長又は消防署長は、第一項の規定により同項の防火対象物の全体について統括防火管理者の行うべき防火管理上必要な業務が法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われていないと認める場合には、同項の権原を有する者に対し、当該業務が当該法令の規定又は同項の消防計画に従つて行われるように必要な措置を講ずべきことを命ずることができる。
7 第五条第三項及び第四項の規定は、前二項の規定による命令について準用する。 」 とあり、
消防法第8条の2 1項によれば、高さ50mの共同住宅であって、その管理について権原が分かれているものの管理について権原を有する者は、統括防火管理者を協議して定めなけれぱならない、は正しい。
なお、この場合の「その管理について権原が分かれているもの」とは、雑居ビルがその例です。各テナントの防火管理者を統括するのが、統括防火管理者です。単に居住専用のマンションの高層ビルなら、あまり該当はしないと思われます。
3 管理について権原が分かれており、統括防火管理者を定めなければならない共同住宅において必要な消防計画は、統括防火管理者が消防計画を作成すれば、それぞれの防火管理者は消防計画の作成が不要となる。
X 誤っている。 統括防火管理者が作成するのは、防火対象物の”全体についての防火管理に係る消防計画”であって、それぞれの防火管理者にはそれぞれの消防計画の作成が必要。
統括防火管理者は、選択肢2で引用しました消防法第8条の2 1項により、全体についての防火管理に係る消防計画を作成しますが、管理について権原が分かれていますから、個々の管理部分での防火管理者は、それぞれ消防計画の作成は必要ですから、誤りです。
参考:消防法施行令第4条の2
「(統括防火管理者の責務)
第四条の二
統括防火管理者は、総務省令で定めるところにより、当該防火対象物の全体についての防火管理に係る消防計画を作成し、所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。
2 統括防火管理者は、前項の消防計画に基づいて、消火、通報及び避難の訓練の実施、当該防火対象物の廊下、階段、避難口その他の避難上必要な施設の管理その他当該防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務を行わなければならない。
3 統括防火管理者は、防火対象物の全体についての防火管理上必要な業務を行うときは、必要に応じて当該防火対象物の管理について権原を有する者の指示を求め、誠実にその職務を遂行しなければならない。
4 100人が居住する共同住宅の防火管理者は、消防計画を作成するとともに、当該消防計画を所轄消防長(消防本部を置かない市町村においては、市町村長)又は消防署長に届け出なければならない。
○ 正しい。
選択肢1でも説明しましたように、50人以上収容人員がいる共同住宅では、防火管理者を設置し、防火管理者として消防計画を作成することが規定されています。
それが、消防法施行令第3条の2
「(防火管理者の責務)
第三条の二
防火管理者は、総務省令で定めるところにより、当該防火対象物についての防火管理に係る消防計画を作成し、所轄消防長又は消防署長に届け出なければならない。
2 防火管理者は、前項の消防計画に基づいて、当該防火対象物について消火、通報及び避難の訓練の実施、消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設の点検及び整備、火気の使用又は取扱いに関する監督、避難又は防火上必要な構造及び設備の維持管理並びに収容人員の管理その他防火管理上必要な業務を行わなければならない。
3 防火管理者は、防火管理上必要な業務を行うときは、必要に応じて当該防火対象物の管理について権原を有する者の指示を求め、誠実にその職務を遂行しなければならない。
4 防火管理者は、消防の用に供する設備、消防用水若しくは消火活動上必要な施設の点検及び整備又は火気の使用若しくは取扱いに関する監督を行うときは、火元責任者その他の防火管理の業務に従事する者に対し、必要な指示を与えなければならない。」 です。
消防法施行令第3条の2 1項によれば、防火管理者が作成した消防計画は、所轄消防長又は消防署長に届け出ますが、消防本部を置かない市町村においては、市町村長となりますから、正しい。
参考:消防法施行令第3条によれば、防火管理者が作成する消防計画が膨大なものになっている。
「(防火管理に係る消防計画)
第三条
防火管理者は、令第三条の二第一項の規定により、防火対象物の位置、構造及び設備の状況並びにその使用状況に応じ、次の各号に掲げる区分に従い、おおむね次の各号に掲げる事項について、当該防火対象物の管理について権原を有する者の指示を受けて防火管理に係る消防計画を作成し、別記様式第一号の二の届出書によりその旨を所轄消防長(消防本部を置かない市町村においては、市町村長。以下同じ。)又は消防署長に届け出なければならない。防火管理に係る消防計画を変更するときも、同様とする。
一 令第一条の二第三項第一号に掲げる防火対象物及び同項第二号に掲げる防火対象物(仮使用認定を受けたもの又はその部分に限る。)
イ 自衛消防の組織に関すること。
ロ 防火対象物についての火災予防上の自主検査に関すること。
ハ 消防用設備等又は法第十七条第三項に規定する特殊消防用設備等(以下「特殊消防用設備等」という。)の点検及び整備に関すること。
ニ 避難通路、避難口、安全区画、防煙区画その他の避難施設の維持管理及びその案内に関すること。
ホ 防火壁、内装その他の防火上の構造の維持管理に関すること。
ヘ 定員の遵守その他収容人員の適正化に関すること。
ト 防火管理上必要な教育に関すること。
チ 消火、通報及び避難の訓練その他防火管理上必要な訓練の定期的な実施に関すること。
リ 火災、地震その他の災害が発生した場合における消火活動、通報連絡及び避難誘導に関すること。
ヌ 防火管理についての消防機関との連絡に関すること。
ル 増築、改築、移転、修繕又は模様替えの工事中の防火対象物における防火管理者又はその補助者の立会いその他火気の使用又は取扱いの監督に関すること。
ヲ イからルまでに掲げるもののほか、防火対象物における防火管理に関し必要な事項
二 令第一条の二第三項第二号に掲げる防火対象物(仮使用認定を受けたもの又はその部分を除く。)及び同項第三号に掲げる防火対象物
イ 消火器等の点検及び整備に関すること。
ロ 避難経路の維持管理及びその案内に関すること。
ハ 火気の使用又は取扱いの監督に関すること。
ニ 工事中に使用する危険物等の管理に関すること。
ホ 前号イ及びトからヌまでに掲げる事項
ヘ イからホまでに掲げるもののほか、防火対象物における防火管理に関し必要な事項
2 防火管理上必要な業務の一部が当該防火対象物の関係者(所有者、管理者又は占有者をいう。以下同じ。)及び関係者に雇用されている者(当該防火対象物で勤務している者に限る。第四条第一項第二号、第二十八条の三第四項第二号ハ及び第二十九条第二号において同じ。)以外の者に委託されている防火対象物にあつては、当該防火対象物の防火管理者は、前項の消防計画に、当該防火管理上必要な業務(法第十七条の三の三の規定による消防用設備等又は特殊消防用設備等についての点検を除く。以下この項において同じ。)の受託者の氏名及び住所(法人にあつては、名称及び主たる事務所の所在地。第四条第一項第二号において同じ。)並びに当該受託者の行う防火管理上必要な業務の範囲及び方法を定めなければならない。
3 その管理について権原が分かれている防火対象物にあつては、当該防火対象物の防火管理者は、第一項の消防計画に、当該防火対象物の当該権原の範囲を定めなければならない。
4 大規模地震対策特別措置法(昭和五十三年法律第七十三号)第三条第一項の規定により地震防災対策強化地域として指定された地域(以下「強化地域」という。)に所在する令第一条の二第三項第一号に規定する防火対象物のうち、大規模地震対策特別措置法施行令(昭和五十三年政令第三百八十五号)第四条第一号、第二号、第十三号、第十四号及び第二十三号に規定する施設(同法第六条第一項に規定する者が管理するものを除く。)の防火管理者は、第一項の消防計画に次に掲げる事項を定めなければならない。
一 大規模地震対策特別措置法第二条第十三号に規定する警戒宣言(以下「警戒宣言」という。)が発せられた場合における自衛消防の組織に関すること。
二 大規模地震対策特別措置法第二条第三号に規定する地震予知情報及び警戒宣言の伝達に関すること。
三 警戒宣言が発せられた場合における避難誘導に関すること。
四 警戒宣言が発せられた場合における施設及び設備の点検及び整備その他地震による被害の発生の防止又は軽減を図るための応急対策に関すること。
五 大規模な地震に係る防災訓練の実施に関すること。
六 大規模な地震による被害の発生の防止又は軽減を図るために必要な教育及び広報に関すること。
5 強化地域の指定の際現に当該地域に所在する前項の施設の防火管理者は、当該指定があつた日から六月以内に、第一項の消防計画に前項各号に掲げる事項を定めるものとする。
6 南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成十四年法律第九十二号)第三条第一項の規定により南海トラフ地震防災対策推進地域として指定された地域(次項及び第四条第四項において「推進地域」という。)に所在する令第一条の二第三項第一号に規定する防火対象物のうち、南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法施行令(平成十五年政令第三百二十四号)第三条第一号、第二号、第十三号、第十四号及び第二十四号に規定する施設(同法第五条第一項に規定する者が管理するものを除き、同法第二条第二項に規定する南海トラフ地震(以下「南海トラフ地震」という。)に伴い発生する津波に係る地震防災対策を講ずべき者として同法第四条第一項に規定する南海トラフ地震防災対策推進基本計画で定める者が管理するものに限る。)の防火管理者は、第一項の消防計画に次に掲げる事項を定めなければならない。
一 南海トラフ地震に伴い発生する津波からの円滑な避難の確保に関すること。
二 南海トラフ地震に係る防災訓練の実施に関すること。
三 南海トラフ地震による被害の発生の防止又は軽減を図るために必要な教育及び広報に関すること。
7 推進地域の指定の際現に当該地域に所在する前項の施設の防火管理者は、当該指定があつた日から六月以内に、第一項の消防計画に前項各号に掲げる事項を定めるものとする。
8 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法(平成十六年法律第二十七号)第三条第一項の規定により日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進地域として指定された地域(次項及び第四条第六項において「推進地域」という。)に所在する令第一条の二第三項第一号に規定する防火対象物のうち、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法施行令(平成十七年政令第二百八十二号)第三条第一号、第二号、第十三号、第十四号及び第二十四号に規定する施設(同法第六条第一項に規定する者が管理するものを除き、同法第二条第一項に規定する日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震(以下「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震」という。)に伴い発生する津波に係る地震防災対策を講ずべき者として同法第五条第一項に規定する日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震防災対策推進基本計画で定める者が管理するものに限る。)の防火管理者は、第一項の消防計画に次に掲げる事項を定めなければならない。
一 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に伴い発生する津波からの円滑な避難の確保に関すること。
二 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る防災訓練の実施に関すること。
三 日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震による被害の発生の防止又は軽減を図るために必要な教育及び広報に関すること。
9 推進地域の指定の際現に当該地域に所在する前項の施設の防火管理者は、当該指定があつた日から六月以内に、第一項の消防計画に前項各号に掲げる事項を定めるものとする。
10 令別表第一(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項、(九)項イ、(十六)項イ又は(十六の二)項に掲げる防火対象物の防火管理者は、令第三条の二第二項の消火訓練及び避難訓練を年二回以上実施しなければならない。
11 前項の防火管理者は、同項の消火訓練及び避難訓練を実施する場合には、あらかじめ、その旨を消防機関に通報しなければならない。
答え:3
ここは、易しい出題でした。 消防法からの過去の出題については、マンション管理士 香川 が無料で提供しています、「目指せ! マンション管理士・管理業務主任者」 の過去問題 の解説の下の方に纏めていますから、これも利用して下さい。
《タグ》消防法。 防火管理者、収容人員50人以上、高層マンション(31m超)、統括防火管理者、消防計画の作成。
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問24
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〔問 24〕 警備業務に関する次の記述のうち、警備業法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 機械警備業を営む警備業者が機械警備業を行おうとするときは、当該機械警備業務に係る基地局又は送信機器を設置する警備業務対象施設の所在する都道府県の区域ごとに、当該区域を管轄する公安委員会に届け出なければならない。
○ 正しい。
平成26年マンション管理士試験 「問24」 、 平成25年マンション管理士試験 「問24」 、平成19年マンション管理士試験 「問23」。
警備業法を管轄しているのは、各都道府県の警察と同じ組織である。
機械警備業を営む警備業者が機械警備業を行おうとするときは、警備業法第40条
「(機械警備業務の届出)
第四十条
機械警備業を営む警備業者(以下「機械警備業者」という。)は、機械警備業務を行おうとするときは、当該機械警備業務に係る受信機器を設置する施設(以下「基地局」という。)又は送信機器を設置する警備業務対象施設の所在する都道府県の区域ごとに、当該区域を管轄する公安委員会に、次の事項を記載した届出書を提出しなければならない。この場合において、当該届出書には、内閣府令で定める書類を添付しなければならない。
一 氏名又は名称及び住所並びに法人にあつては、その代表者の氏名
二 当該機械警備業務に係る基地局の名称及び所在地並びに第四十二条第一項の規定により選任する機械警備業務管理者の氏名及び住所
三 前二号に掲げるもののほか、内閣府令で定める事項」 とあり、
警備業法第40条1項によれば、「当該機械警備業務に係る基地局又は送信機器を設置する警備業務対象施設の所在する都道府県の区域ごとに、当該区域を管轄する公安委員会に届け出なければならない、は正しい。
2 警備業務対象施設に各種のセンサー等を設置し、それらの端末機器が感知した情報をその施設内に設けた受信機で受信することで、警備員が対応するシステムは、機械警備業務である。
X 誤っている。 その施設内に設けた受信機で受信するのは、機械警備業務ではなく「施設警備業務」に該当する。
機械警備業務とは、警備業法第2条5項
「(定義)
第二条
5 この法律において「機械警備業務」とは、警備業務用機械装置(警備業務対象施設に設置する機器により感知した盗難等の事故の発生に関する情報を当該警備業務対象施設以外の施設に設置する機器に送信し、及び受信するための装置で内閣府令で定めるものをいう。)を使用して行う第一項第一号の警備業務をいう。」 とあり、
そこで、引用されています、内閣府令で定めるものとは、警備業法施行規則第2条
「(警備業務用機械装置)
第二条 法第二条第五項 の内閣府令で定める装置は、電話その他送信者の音声を送信し、及び受信するための装置以外の装置とする。 」 です。
警備業法第2条5項によれば、機械警備業務とは、対象施設に各種のセンサー等を設置して、そのセンサーが発する盗難情報等を、警備業務対象施設”以外の施設”に設置する機器に送信して、警備員が対応しますから、「その施設内に設けた受信機で受信する」は誤りです。
なお、警備対象敷地にセンサーが設置してあっても警備員や警備業者が警備対象敷地内に配置または常駐している場合は機械警備業務ではなく施設警備業務に該当します。
参考;*機械警備業務のメリット
警備対象施設に警備員を常駐させる必要が無いため人件費に対する費用対効果が高い
感知器やセンサーによる監視のため、人間による目視の見逃しやミスが発生しにくい
*機械警備業務のデメリット
基地局の設置や通信回線など業務としての初期投資コストが掛かる
感知器やセンサーによる監視だけでは的確に判断できないケースが考えられる
感知器やセンサーの感度、正確度などの性能に左右される
3 警備業者は、20歳未溝の者を警備員として警備業務に従事させてはならない。
X 誤っている。 18歳未満だと警備員になれない。20歳未満ではない。
警備員になるには、警備業法第14条
「(警備員の制限)
第十四条
十八歳未満の者又は第三条第一号から第七号までのいずれかに該当する者は、警備員となつてはならない。
2 警備業者は、前項に規定する者を警備業務に従事させてはならない。」 とあり、
警備業法第14条1項及び2項によれば、18歳未満では警備員として警備業務に従事できませんから、20歳未満の者を警備員として警備業務に従事させてはならない、は誤りです。
4 警備業者は、警備業務を行うに当たって携帯しようとする護身用具については、警備業者の主たる営業所の所在地を管轄する公安委員会に届け出なければならない。
X 誤っている。 警備業者の主たる営業所の所在地ではなく、警備業務を行おうとする都道府県の区域を管轄する公安委員会に届け出る。
携帯しようとする護身用具は、警備業法第17条
「(護身用具)
第十七条
警備業者及び警備員が警備業務を行うに当たつて携帯する護身用具については、公安委員会は、公共の安全を維持するため必要があると認めるときは、都道府県公安委員会規則を定めて、警備業者及び警備員に対して、その携帯を禁止し、又は制限することができる。
2 前条第二項の規定は警備業務を行うに当たつて携帯しようとする護身用具の届出について、第十一条第一項の規定は当該届出に係る事項の変更について準用する。この場合において、前条第二項中「用いようとする服装の色、型式」とあるのは「携帯しようとする護身用具の種類、規格」と、第十一条第一項中「主たる営業所の所在地を管轄する公安委員会」とあるのは「当該変更に係る公安委員会」と読み替えるものとする。」 とあり、
届出で2項で準用されているのは、同法第16条2項
「(服装)
第十六条 警備業者及び警備員は、警備業務を行うに当たつては、内閣府令で定める公務員の法令に基づいて定められた制服と、色、型式又は標章により、明確に識別することができる服装を用いなければならない。
2 警備業者は、警備業務(内閣府令で定めるものを除く。以下この項及び次条第二項において同じ。)を行おうとする都道府県の区域を管轄する公安委員会に、当該公安委員会の管轄区域内において警備業務を行うに当たつて用いようとする服装の色、型式その他内閣府令で定める事項を記載した届出書を提出しなければならない。この場合において、当該届出書には、内閣府令で定める書類を添付しなければならない。
3 第十一条第一項の規定は、前項の規定により届け出るべき事項の変更について準用する。この場合において、「主たる営業所の所在地を管轄する公安委員会」とあるのは、「当該変更に係る公安委員会」と読み替えるものとする。
」 です。
そこで、警備業者は、警備業務を行うに当たって携帯しようとする護身用具については、警備業務を行おうとする都道府県の区域を管轄する公安委員会に届け出ますから、警備業者の”主たる営業所”の所在地を管轄する公安委員会に届け出る、は誤りです。
答え:1
余り警備業法を知らなくても、何となく分かる? このところ、警備業からの出題が続いている。
《タグ》警備業法。 機械警備、施設内外、届出先、警備員の年齢
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問25
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〔問 25〕 集会に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、適切なものはどれか。
1 集会を開催したところ議長の他に出席者が1人しかいない場合でも、委任状及び議決権行使書の数が規約で定めた定足数に達していれば集会は成立するし、議案を決議することもできる。
○ 適切である。 区分所有法では、集会での出席定足数は定めていない。
集会の議事は、区分所有法第39条
「(議事)
第三十九条 集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。
2 議決権は、書面で、又は代理人によつて行使することができる。
3 区分所有者は、規約又は集会の決議により、前項の規定による書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)によつて議決権を行使することができる。
」 とあり、
区分所有法第39条2項によれば、議決権の行使は書面(議決権行使書)でも委任状でも出来ます。そこで、委任状や議決権行使書が提出されていれば、その数は実際に集会に出席がなくても、出席数として扱われます。
そこで、議長の他に出席者が1人しかいない場合でも、委任状と議決権行使書を加えて規約で定めた集会が成立する定足数に達していれば、集会は成立しますし、要件を備えていれば議案も決議することが出来ますから、正しい。
しかし、この場合、出席者不足ですね。その際に議事録署名人はどうするか、考えてください。
「(議事録)
第四十二条 集会の議事については、議長は、書面又は電磁的記録により、議事録を作成しなければならない。
2 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、又は記録しなければならない。
3 前項の場合において、議事録が書面で作成されているときは、議長及び集会に出席した区分所有者の二人がこれに署名押印しなければならない。
4 第二項の場合において、議事録が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報については、議長及び集会に出席した区分所有者の二人が行う法務省令で定める署名押印に代わる措置を執らなければならない。
5 第三十三条の規定は、議事録について準用する。 」
2 集会に欠席のつもりで委任状を提出していた区分所有者が予定を変更して途中から集会に出席し、残りの議案について自ら議決権を行使しようとするときは、受任者の同意を得なければならない。
X 誤っている。 受任者の同意は、不要。
委任をした本人が途中から集会に出席した時点で、告知するかどうかの論点はありますが、委任は解除されたと解されますから、受任者の同意は、不要で、誤りです。
参考:委任の解除は、民法第651条
「(委任の解除)
第六百五十一条 委任は、各当事者がいつでもその解除をすることができる。
2 当事者の一方が相手方に不利な時期に委任の解除をしたときは、その当事者の一方は、相手方の損害を賠償しなければならない。ただし、やむを得ない事由があったときは、この限りでない。」
3 共用部分の管理(共用部分の変更及び保存行為を除く。)に関する事項を議題とする集会において、規約で定めた集会の定足数を満たせずに流会となった場合には、管理者が決することができる旨の規約の定めは無効である。
X 誤っている。 共用部分の管理だけなら、規約で別段の定めができる。有効。
平成26年管理業務主任者試験 「問42」 、 平成25年マンション管理士試験 「問5」
共用部分の管理(共用部分の変更及び保存行為を除く。)なら、区分所有法第18条
「(共用部分の管理)
第十八条 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
3 前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。
4 共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。 」 とあります。
第17条1項で引用されています、前条は、区分所有法第17条
「(共用部分の変更)
第十七条 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
2 前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。」 です。
区分所有法第18条及び第17条によれば、共用部分の重大な変更( その形状又は効用の著しい変更をともなうもの)については、集会の決議が必要ですが、共用部分の管理に関する事項であれば、規約で別段の定めをすることが認められていますから、共用部分の管理(共用部分の変更及び保存行為を除く。)に関する事項を議題とする集会において、規約で定めた集会の定足数を満たせずに流会となった場合には、管理者が決することができる旨の規約の定めは、有効ですから、誤りです。
4 継続して3年間、集会に出席せず委任状も議決権行使書も提出しない区分所有者は、その意思決定を管理者に委ねたものとみなす旨の規約の定めは有効である。
X 誤っている。 こんな規約は定められない。無効。
理事会の役員としては、管理組合の活動に無関心な組合員に対しては、規定したい事項ですが、区分所有法では、区分所有者である限り、継続して3年間、集会に出席せず委任状も議決権行使書も提出しなくてもその意思決定を管理者に委ねたものとみなす旨の規定を規約で許す規定はありませんから、誤りです。
大体、個人の意思決定権を奪うなんてことは、民主主義国家においては、やってはいけません!
答え:1
それほど難しくはない、出題です。
《タグ》区分所有法、 民法。 委任状、議決権行使書、定数、規約
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2016年 5月 3日:平成28年3月の標準管理規約の改正に対応した。
2016年 3月12日:〔問18」の選択肢2、「問21」の選択肢3に追記した。
2016年 2月29日;民法の過去問題とのリンクを入れた。
2016年 2月26日;区分所有法の過去問題とのリンクを入れた。
2016年 2月 6日:「問24」の警備業法に図など入れた。
2016年 1月29日:「問17」から「問25」まで、校正終わり。
2016年 1月28日:「問1」から「問16」まで、校正済み。
2016年 1月 6日;一応 「問50」 まで解説終わり。
解説:2015年12月31日;第1稿 終了。 年末の忙しい中、かなりの時間を割いて、解説をした。
解説開始:2015年12月 4日から
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