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平成28年(2016年) 管理業務主任者 試験問題 及び 解説

ページ1(問1より問25まで)

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謝辞:問題文の作成には、 たむたむさまの協力を得ています。 たむたむ様、ご協力ありがとうございます。

※ 出題当時以後の法令等の改正には、一部は対応していません。

*試験に臨んで、お節介なアドバイス
  1.設問にあわせて、問題用紙に ○(まる)、X(ばつ)をつける。
    殆どの設問が、「正しい」か「間違い」かを訊いてきますので、設問により、問題の頭に、○かXをつけます。
    そして、各選択肢を読み、○かXをつけます。
    問題の○なりXと、選択肢の○かXが一致したものを、マークシートに記入してください。

  2.疑問な問題は、とりあえず飛ばす。
    解答の時間は限られています。
    そこで、解答として、○かXかはっきりしないものがでたら、「?」マークをつけて、次の問題に移ります。
    全部の解答が終わってから、再度戻って決定してください。

  3.複雑な問は、図を描く。
    甲、乙、A、B、Cなど対象が多い問題もでます。
    この場合、問題用紙の空いているところに、図を描いてください。
    重要な点が分かってきます。

(出題者からの注意) 1.答えは、各問題とも1つだけです。2つ以上の解答をしたもの、判読が困難なものは、正解としません。
              2.問題中法令に関する部分は、平成28年4月1日現在施行中の規定に基づいて出題されています。


解説者(マンション管理士 香川)からのコメント:あやふやな出題、適切でない出題もあって、解答ができないのもあります。

※  ・マンションの管理の適正化に関する指針(国土交通省告示第490号)及びマンション標準管理規約は、平成28年3月に改正があったので注意のこと。
   ・マンション標準管理委託契約書は、平成28年7月に改正があり、平成29年度の試験から出題適用となるので注意のこと。
   
   マンション標準管理規約は、平成16年に改正があった。また、平成23年7月にも小幅な改正があった。
   マンション標準管理委託契約書は、平成15年に改正があった。また、平成22年5月にも改正があった。

問1

[問 1] 被保佐人が所有するマンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下、「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号に規定するものをいう。以下同じ。)の一住戸甲(以下、本問において「甲」という。)の売却に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものの組み合わせはどれか。

ア 被保佐人が保佐人の同意を得ることなく甲を売却した場合、当該売買契約を取り消すことができる者は、被保佐人に限られている。

X 誤っている。 被保佐人(本人)以外にも、代理人・承継人・同意をすることができる者も取り消せる。

 まず、私の過去の年度の解説を読んでいる人には、度々となりますが、これは、受験での基本ですから、述べます。

 建物の区分所有等に関する法律(以下、当解説では、「区分所有法」といいます)では、法律用語として「マンション」の定義がありません。しかし、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下、当解説では、「マンション管理適正化法」といいます)第2条では、以下のように定義されていますので、マンションの用語を試験で使用する際には設問のような「マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号イに規定するマンションをいう」の表現が使用されます。
 
  そこで、マンション管理適正化法第2条とは、
 
「(定義) 
  第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
     一
 マンション 次に掲げるものをいう
       イ 
二以上の区分所有者(建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)第二条第二項 に規定する区分所有者をいう。以下同じ。)が存する建物で人の居住の用に供する専有部分(区分所有法第二条第三項 に規定する専有部分をいう。以下同じ。)のあるもの並びにその敷地及び附属施設」

 です。マンション管理適正化法第2条1号イによれば、「マンション」であるための要件は、
    ①2人以上の区分所有者 がいて、 
    ②人の居住用の専有部分が1つでもあればいい 
 です。マンションの建物には、専有部分と共用部分しかなく、そして、マンションは専有部分と共用部分を含んだ建物と敷地及び附属施設の全体的なものであることに注意してください。

 

 最初から、組み合わせ問題とは!
 平成23年 管理業務主任者試験 「問5」 、 平成17年 管理業務主任者試験 「問1」 、 平成15年 マンション管理士試験 「問12」 

 では、制限行為能力者の4種 ①未成年者、 ②成年被後見人、
③被保佐人、④被補助人 の法律行為は制限され、またこれらの者が単独でできない行為をした時には、取り消しができることになっています。
  ①未成年者...年齢が20歳未満の者
  ②被後見人...精神上の障害により、事理を弁識する能力を、欠く常況にある者
  ③被保佐人...精神上の障害により、事理を弁識する能力が、
著しく不十分である者 
  ④被補助人...精神上の障害により、事理を弁識する能力が、
不十分である者
 4種の内の1つ、被保佐人についてもその行為は制限されています。それが、民法第13条
 「(保佐人の同意を要する行為等)  
 第十三条  
被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
     一  元本を領収し、又は利用すること。
     二  借財又は保証をすること。
     
三  不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること
     四  訴訟行為をすること。
     五  贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法 (平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項 に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
     六  相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
     七  贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
     八  新築、改築、増築又は大修繕をすること。
     九  第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
 2  家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求により、被保佐人が前項各号に掲げる行為以外の行為をする場合であってもその保佐人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
 3  保佐人の同意を得なければならない行為について、保佐人が被保佐人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被保佐人の請求により、保佐人の同意に代わる許可を与えることができる。
 
4  保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。」

 です。
  被保佐人とは、精神上の障害により事理(法律行為の結果を判断するに足りるだけの精神能力)を弁識する能力が”
著しく不十分”である人(民法第11条参照)ですから、その人を保護するために保佐人が付けられ(民法第12条参照)、被保佐人の行為は原則:保佐人となった人が同意しなければなりません。(民法第13条1項)。

 そこで、設問の「被保佐人が保佐人の同意を得ることなく甲(マンションの一住戸)を売却した場合」は、民法第13条1項3号の「三  不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。」に該当しますから、被保佐人は、保佐人の同意が無ければ、単独には出来ませんので、同条4項「4  保佐人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる」により、被保佐人は、取り消すことができます。

 では、保佐人以外の他の取消し権者がいるのかということですが、います。
 それが、民法第120条
 
「(取消権者)
 第百二十条  
行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、制限行為能力者又はその代理人、承継人若しくは同意をすることができる者に限り、取り消すことができる。
 2  詐欺又は強迫によって取り消すことができる行為は、瑕疵ある意思表示をした者又はその代理人若しくは承継人に限り、取り消すことができる。」

 とあり、
 民法第120条1項によれば、行為能力の制限によって取り消すことができる行為は、
 ①制限行為能力者... 本人
 ②その代理人... 法定・任意代理共に
 ③承継人... 包括・特定承継人共に
 ④同意をすることができる者... 保佐人・補助人共に
 なら、取り消すことができますから、当該売買契約を取り消すことができる者は、被保佐人に限られているは、誤りです。



イ 保佐人の請求により、家庭裁判所が被保佐人のために甲の売却について当該保佐人に代理権を付与する旨の審判をするには、被保佐人の同意がなければならない。

〇 正しい。
 平成17年 管理業務主任者試験 「問1」

 選択肢アで述べました、保佐人は、このこのままでは、代理人ではないということが、設問の前提にあります。
 そこで、被保佐人のために甲の売却(特定の法律行為)について当該保佐人に代理権を付与するとなると、民法第876条の4
 「(保佐人に代理権を付与する旨の審判)
 第八百七十六条の四  
家庭裁判所は、第十一条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができる。
 2  本人以外の者の請求によって前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。

 3  家庭裁判所は、第一項に規定する者の請求によって、同項の審判の全部又は一部を取り消すことができる。」

 とあり、  
 民法第876条の4 1項及び2項により、保佐人の請求により、家庭裁判所が被保佐人のために甲の売却について当該保佐人に代理権を付与する旨の審判をするには、被保佐人の同意がなければならなりませんから、正しい。



ウ 被保佐人が、保佐人の同意を得ることなく甲を売却した場合、相手方が被保佐人に対し、1箇月以上の期間を定めて、保佐人の追認を得るべき旨の催告をしたときは、相手方がその期間内に追認を得た旨の通知を受けなくても、その行為を保佐人が追認したものとみなされる。

X 誤っている。 この場合は、追認ではなく、取り消したものとみなされる。
 制限行為能力者の行為の相手方は、制限行為能力者がその行為を取り消すのか、またそのままにするのか不安な状態にあります。そこで、相手方に催告権を与えて、どちらかにするのか決定させる必要があります。
 それが、民法第20条
 
「(制限行為能力者の相手方の催告権)
 第二十条  制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の相手方は、その制限行為能力者が行為能力者(行為能力の制限を受けない者をいう。以下同じ。)となった後、その者に対し、
一箇月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができる。この場合において、その者がその期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。
 2  制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。
 3  特別の方式を要する行為については、前二項の期間内にその方式を具備した旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。
 
4  制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第十七条第一項の審判を受けた被補助人に対しては、第一項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。

 とあり、
 民法第20条4項によれば、被保佐人が、保佐人の同意を得ることなく甲を売却した場合、相手方が被保佐人に対し、1箇月以上の期間を定めて(同条1項)、保佐人の追認を得るべき旨の催告をしたときは、相手方がその期間内に追認を得た旨の通知を受けなければ、”
その行為を取り消したものとみなす”となりますから、”追認したものとみなされる”は、誤りです。

 参考:民法第119条
 「(無効な行為の追認)
 第百十九条  無効な行為は、追認によっても、その効力を生じない。ただし、当事者がその行為の無効であることを知って追認をしたときは、新たな行為をしたものとみなす。」



エ 被保佐人が甲を売却する際に、自らが行為能力者であることを信じさせるため、被保佐人であることを黙秘していたことが、他の言動などと相まって、相手方を誤信させ、又は誤信を強めたものと認められる場合には、被保佐人はその行為を取り消すことができない。

〇 正しい。
 制限行為能力者が積極的に相手方に対して、制限行為能力者であることを誤信させるようにすると、相手方を保護する規定があります。
 それが、民法第21条
 
「(制限行為能力者の詐術)
 第二十一条  
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。」

 とあり、
  民法第21条によれば、被保佐人が甲を売却する際に、自らが行為能力者であることを信じさせるため、被保佐人であることを黙秘していたことが、他の言動などと相まって、相手方を誤信させ、又は誤信を強めたものと認められる場合には、被保佐人はその行為を取り消すことができませんから、正しい。

 また、最高裁判所:昭和44年2月13日の判例 もありますから、参考にしてください。
 裁判要旨:「無能力者であることを黙秘することは、無能力者の他の言動などと相まつて、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときには、民法二〇条にいう「詐術」にあたるが、黙秘することのみでは右詐術にあたらない。 」


  1 ア・ウ
  2 ア・エ
  3 イ・ウ
  4 イ・エ


答え:1 ア・ウ 誤っているもの 

《タグ》民法。 制限行為能力者の行為。 保佐人と被保佐人。 代理人。追認。取消し。

  平成28年の管理業務主任者試験は、問1から組み合わせ問題とは、実に不適切な出題方法です。
 ここは、かなり難しい。過去問題とは異なった箇所から出題された。

*ある受験生の感想:問1の保佐人に関する問題で出鼻をくじかれた人は多かったのではと思った。

問2

[問 2] マンションの管理組合A(以下、本問において「A」という。)の管理者B(以下、本問において「B」という。)が、その職務に関し、C会社(以下、本問において「C」という。)との間で取引行為(以下、本問において「本件取引行為」という。)をする場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 Bの本件取引行為に係る意思表示について要素の錯誤があった場合には、Aは、Cに対してその意思表示を取り消すことができる。  

X 誤っている。 要素の錯誤は、無効で取り消しではない。
 平成26年 管理業務主任者試験 「問1」 、 平成25年 管理業務主任者試験 「問1」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問1」 、  平成23年 管理業務主任者試験 「問1」 、平成23年 マンション管理士試験 「問18」 、平成22年 管理業務主任者試験 「問6」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問2」 、平成17年 管理業務主任者試験 「問2」 、 平成15年 管理業務主任者試験 「問2」 

 前問の「問1」 とは異なり、よくある出題。
 このような設問には、次のような図を問題用紙に書いてみましょう。 この図は、次の選択肢2も含めていますが。


 

 まず、この設問では、管理者Bは、管理組合Aの代理人であることが前提になっています
 それは、建物の区分所有等に関する法律(以下、この解説においては、「区分所有法」といいます)第26条
 「(権限)
 第二十六条  管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
 
2  管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
 3  管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
 4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
 5  管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。」

 とあり、
 区分所有法第26条2項により、管理者は「その職務に関し、区分所有者を代理する」ことになっています。
 そこで、設問の管理組合と区分所有者の関係となると、また面倒ですが、詳細は、「マンション管理士 香川事務所」が無料で提供しています、「超解説 区分所有法第3条」 に譲って、ここは、区分所有者の団体が一応、管理組合と理解して、管理者Bは管理組合Aを代理するとします。

 
 そこで、取引行為に係る意思表示について要素の錯誤があった場合となると、民法第95条
 
「(錯誤)
 第九十五条  
意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。」

 とあり、
  民法第95条によると、意思表示は、法律行為の
要素に錯誤(意思表示の内容で重要な部分に、内心の意思と一致しないこと)があったときは、無効となりますから、無効なら最初から効力がなく、取り消す必要もありませんので、管理組合Aは、相手方Cに対してその意思表示を取り消すことができるは、誤りです。
 また、代理人である管理者Bと本人である管理組合Aについては、民法第101条
 「(代理行為の瑕疵)
 第百一条  意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、
その事実の有無は、代理人について決するものとする
 2  特定の法律行為をすることを委託された場合において、代理人が本人の指図に従ってその行為をしたときは、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失によって知らなかった事情についても、同様とする。

 ともあります。

 なお、「取り消し」の場合は、その法律行為は取り消しがあるまでは、有効です。
 

2 第三者DがBに詐欺を行い、これによりBが本件取引行為に係る意思表示をした場合、Cがその事実を知っていたときに限り、Aはその意思表示を取り消すことができる。  

〇 正しい。 第三者による詐欺は、相手方が知っていれば、取り消せる。
 平成27年 管理業務主任者試験 「問1」 平成27年 マンション管理士試験 「問13」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問1」 、平成25年 管理業務主任者試験 「問1」 、 平成22年 管理業務主任者試験 「問3」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問5」 、 平成14年 管理業務主任者試験 「問5」

 詐欺や強迫は、民法第96条
 
「(詐欺又は強迫)
 第九十六条  
詐欺又は強迫による意思表示は、取り消すことができる。
 
2  相手方に対する意思表示について第三者が詐欺を行った場合においては、相手方がその事実を知っていたときに限り、その意思表示を取り消すことができる。
 3  前二項の規定による詐欺による意思表示の取消しは、善意の第三者に対抗することができない。 」

 とあり、
 民法第96条2項によれば、第三者Dが管理者Bに詐欺を行い、これにより管理者Bが本件取引行為に係る意思表示をした場合、相手方Cがその事実を知っていたときは、
管理者Bは、その意思表示を取り消すことができます
 なお、民法第96条2項では「詐欺」だけが明示されていますが、「強迫」は第三者が強迫しても、判例では、取り消せるとなっています。
 では、その場合代理人=管理者Bと本人=管理組合Aとの関係はどうなのかですが、これは、民法第99条
 
「(代理行為の要件及び効果)
 第九十九条  
代理人がその権限内において本人のためにすることを示してした意思表示は、本人に対して直接にその効力を生ずる。
 2  前項の規定は、第三者が代理人に対してした意思表示について準用する。」

 とあり、
  民法第99条1項により、代理人=管理者Bの行為は、管理組合Aに直接生じていますから、管理組合Aはその意思表示を取り消すことができるため、正しい。

 また、代理人に対する詐欺行為の有無については、選択肢1で引用しています、民法第101条も参考にしてください。


3 Bが、本件取引行為をする前に、補助開始の審判を受けていたときは、Bの代理権は消滅しているので、本件取引行為の効力は生じない。  

X 誤っている。 補助開始の審判を受けていたときでは、代理権の消滅事由ではない。効力は生じる。
 平成24年 管理業務主任者試験 「問1」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問5」 、 平成20年 マンション管理士試験 「問13」 

 補助開始の審判は、民法第15条
 
「(補助開始の審判)
 第十五条  
精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
 2  本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
 3  補助開始の審判は、第十七条第一項の審判又は第八百七十六条の九第一項の審判とともにしなければならない。」

 です。
 精神上の障害により事理を弁識する能力が
不十分である者に対しては、本人などが家庭裁判所に申し出てこの補助開始の審判の手続きを受けることができます。
 しかし、家庭裁判所の審判は民法第17条
 「 (補助人の同意を要する旨の審判等)
 第十七条  
家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。
 2  本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
 3  補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
 4  補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。」

 とあり、
 家庭裁判所の審判で、 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者に認定されないこともあり得ます。
 家庭裁判所の審判があってはじめて、被補助人の行為能力の制限が決まりますから、管理者Bが、本件取引行為をする前に、
補助開始の審判を受けていたときであっても、代理権の消滅事由に該当せず、まだ、管理者Bの代理権は存続していますので、本件取引行為の効力は生じますから、誤りです。
 参考:民法第111条
 
「(代理権の消滅事由)
 第百十一条  代理権は、次に掲げる事由によって消滅する。
     一  本人の死亡
     二  代理人の死亡又は代理人が破産手続開始の決定若しくは
後見開始の審判を受けたこと
 2  委任による代理権は、前項各号に掲げる事由のほか、委任の終了によって消滅する。」

 これをみると、出題意図としては、民法第111条1項2号での「後見開始の審判」と「補助開始の審判」との混同を狙ったものだと分かります。
 ・被後見人...精神上の障害により、事理を弁識する能力を、
欠く常況にある者
 ・被保佐人...精神上の障害により、事理を弁識する能力が、
著しく不十分である者 
 ・被補助人...精神上の障害により、事理を弁識する能力が、
不十分である者


4 Bが管理者を解任された後に本件取引行為をしていたとした場合、Cがその解任の事実を知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなかったときでも、本件取引行為の効力は生じない。

X 誤っている。 相手が善意無過失なら、表見代理が成立する。
 平成22年 管理業務主任者試験 「問6」 

  なにも代理権を持っていない人(無権代理人)が代理行為をしても、その効果は本人が追認しない限り、本人には及ばない(民法第113条参照)のですが、民法では、代理権のない者と本人との間に特殊の関係があるために、その者を本当の代理人と誤信して取引した相手方を保護するため、その代理行為を代理権のある行為として扱い、本人に対して効力を生じさせる制度があり、これを表見代理と呼んでいます。(民法第109条、第110条、第112条参照)
 その表見代理が成立するには、
 ①.本人が、本当は代理権を与えていないが、ある特定の者に対して他人に代理権を授与した旨を表示した場合(第109条)
 ②多少の代理権のある者が、その代理権の範囲を超えて代理行為をした場合(第110条)
 ③代理人が代理権の消滅した後に代理行為をした場合(第112条)
 です。
 
 そこで、設問の、管理者Bが管理者を解任された後に本件取引行為をしていた場合は、③の民法第112条に該当し、
 「(代理権消滅後の表見代理)
 第百十二条  
代理権の消滅は、善意の第三者に対抗することができない。ただし、第三者が過失によってその事実を知らなかったときは、この限りでない。

 とあり、相手方Cがその解任の事実を知らず、かつ知らなかったことにつき過失がなかったときとなると、相手方は、善意・無過失の第三者となり、代理権が消滅していても、管理組合Aは、相手方Cに対抗できず、本件取引行為の効力は生じますから、効力は生じないは、誤りです。



.答え:2

《タグ》民法。 代理。 要素の錯誤は無効。補助開始の審判。表見代理。

 ここは、設問の前に、管理組合と区分所有法第3条の区分所有者の団体の関係も規定が必要だ。
 かなり詳細に解説をしたので、2時間以上かかった。

問3

[問 3] 消滅時効及び除斥期間に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。  

1 売主の詐欺によりマンションの一住戸の売買契約が締結された場合、買主の意思表示の取消権は、追認をすることができる時から5年間行使しないとき、また意思表示の時から20年を経過したときは消滅する。  

〇 正しい。
 この出題も新しい。

 一般的な取消権は、民法第126条
 「
(取消権の期間の制限)
 第百二十六条  
取消権は、追認をすることができる時から五年間行使しないときは、時効によって消滅する。行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。」

 とあり、
 売主の詐欺であっても、買主が追認をすることができる時から5年間行使しないとき、または、詐欺により意思表示の時から20年を経過したときは、消滅しますから、正しい。

 そこで、出題にある「除斥期間」ですが、除斥期間とは、一定の期間が経過すれば、権利の行使ができなくなる期間と説明され、では消滅時効との違いは何かということですが、主な点は、除斥期間には、①時効のような中断がない、②当事者の援用が不要 などです。
 取消権の性質については、民法第126条後半の「行為の時から二十年を経過したときも、同様とする」について、時効期間か除斥期間かで論争があります。



2 管理組合の組合員に対する管理費支払請求権は、滞納の時から5年間行使しないときは消滅する。  

〇 正しい。 論争があったが、5年になった。
 平成26年 管理業務主任者試験 「問1」 、 平成25年 管理業務主任者試験 「問4」 、平成25年 マンション管理士試験 「問12」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問13」 、  平成23年 マンション管理士試験 「問16」 平成22年 マンション管理士試験 「問7」 、平成21年 管理業務主任者試験 「問39」  など。

 管理費等の消滅時効については、その消滅時効期間について定期給付債権(民法第169条)に該当し5年間とする考えと、一般債権(民法第167条1項)に該当して10年間とする考えがあり、裁判上でも争いがあったのですが、最高裁判所の平成16年4月23日の判決で、滞納管理費と修繕積立金は共に、5年の消滅時効となっていますから、誤りです。
 私は、管理費の消滅時効:5年は妥当ですが、修繕積立金は管理費とはその性格が異なっているため、共に 5年とする判決には疑問を抱いていますが。
 参考:民法第167条
 「(債権等の消滅時効)
  第百六十七条  債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
    2  債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。

 民法第169条
 
「(定期給付債権の短期消滅時効)
  第百六十九条  年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、
五年間行使しないときは、消滅する。 」



3 管理組合から請け負った工事に関する施工業者の報酬請求権は、工事に着手した時から3年間行使しないときは消滅する。  

X 誤っている。 工事に着手した時からではなく、工事が終了した時からである。
 
 選択肢2で引用しました、民法第167条での消滅時効の債券での10年間とか、同じく民法第169条での、定期給付債券の5年での消滅とか、民法では消滅時効の年数がまちまちで、また他にも医師や弁護士、飲食店など職業によっても3年とか2年とか、1年とか、変に差が設けられています。
 そこで、もう、こんな不統一な年数は合理的でないので、全部を統一しようという動きがあり、改正民法として、国会でも検討が始まっています。

 それはさておき、現在の民法で請負工事関係なら、民法第170条
 「
(三年の短期消滅時効)
 第百七十条  
次に掲げる債権は、三年間行使しないときは、消滅する。ただし、第二号に掲げる債権の時効は、同号の工事が終了した時から起算する
     一  医師、助産師又は薬剤師の診療、助産又は調剤に関する債権
     
二  工事の設計、施工又は監理を業とする者の工事に関する債権

 とあり、
  設問の、管理組合から請け負った工事に関する施工業者の報酬請求権は、民法第170条2号に該当し、3年間行使しなければ、消滅しますが、その起算時期は、ただしがき「第二号に掲げる債権の時効は、同号の”
工事が終了した時から”起算する」とありますから、”工事に着手した時からは、誤りです。


4 第三者の不法行為により管理組合に損害が生じた場合、管理組合の損害賠償請求権は、損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき、また不法行為の時から20年を経過したときは消滅する。  
 
〇 正しい。
 平成22年 マンション管理士試験 「問16」 平成21年 マンション管理士試験 「問12」 、平成14年 マンション管理士試験 「問16」 

 不法行為での損害賠償請求権の時効となると、条文が飛んで、民法第724条
 「(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
 第七百二十四条  
不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。」

 とあり、
  第三者の不法行為により管理組合に損害が生じた場合、管理組合の損害賠償請求権は、損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき、また不法行為の時から20年を経過したときは消滅するは、正しい。
 ここでも、「また不法行為の時から20年を経過したときは消滅する」について、消滅時効期間か除斥期間かでの論争があります。



答え:3

《タグ》民法。 消滅時効。排斥期間。 取消権。 管理費の時効。

 時効の新しい出題方法だ。少し難しいか。

問4

[問 4] 甲マンションの一住戸乙(以下、本問において「乙」という。)を数人が共有する場合に関する次の記述のうち、民法及び建物の区分所有等に関する法律(以下、「区分所有法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。  

1 各共有者は、5年を超えない期間内は乙の分割をしない旨の契約をしない限りは、いつでも乙の分割を請求することができる。  

〇 正しい。
 平成26年 マンション管理士試験 「問7」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問4」 、平成19年 管理業務主任者試験 「問5」 、平成18年 マンション管理士試験 「問4」 、平成14年 管理業務主任者試験 「問3」 

 共有関係もよく出題がある。
 分割請求は、民法第256条
 
「(共有物の分割請求)
 第二百五十六条  
各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができる。ただし、五年を超えない期間内は分割をしない旨の契約をすることを妨げない
 2  前項ただし書の契約は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から五年を超えることができない。」

 とあり、
 民法第256条1項によれば、各共有者は、5年を超えない期間内は共有物乙の分割をしない旨の契約をしない限りは、いつでも乙の分割を請求することができますから、正しい。



2 各共有者は、規約に別段の定めがある場合は、甲マンションの集会で、乙に対するそれぞれの持分に応じて議決権を行使することができる。  

X 誤っている。 マンションで共有なら、議決権行使者を1人にすること。
 平成26年 マンション管理士試験 「問6」 、 平成25年 マンション管理士試験 「問7」 、平成24年 管理業務主任者試験 「問29」 、 平成22年 管理業務主任者試験 「問29」 、平成22年 マンション管理士試験 「問8」 、平成21年 管理業務主任者試験 「問5」 、平成20年 マンション管理士試験 「問7」 、平成18年 管理業務主任者試験 「問33」 、平成16年 管理業務主任者試験 「問32」 など。

 マンションでの議決権行使となると、民法から離れて区分所有法の世界になります。
 それは、区分所有法第40条
 「(議決権行使者の指定)
 第四十条  
専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない。 」

 とあり、
 区分所有法第40条によれば、共有なら、議決権行使者は、誰か1名にします。また、この条文では規約による別段の定めを認めていませんから、各共有者は、規約に別段の定めがある場合は、甲マンションの集会で、共有物乙に対するそれぞれの持分に応じて議決権を行使することができるは、誤りです。


 


3 各共有者は、他の共有者全員の同意を得なければ、乙についての自己の持分を処分することができない。

X 誤っている。 共有でも自分の持分の処分は、各自でできる。
 平成26年 管理業務主任者試験 「問3」 、  平成26年 マンション管理士試験 「問26」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問10」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問4」 、  平成17年 マンション管理士試験 「問5」  

 共有で自己の持分の処分なら、民法第251条
 「(共有物の変更)
 第二百五十一条  各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない。」

 がありますが、
 各共有者の持分は、一種の所有権ですから、各自が他の共有者の同意がなくても、自己の持分については自由に処分(譲渡や抵当権の設定)ができますから、誤りです。

 なお、民法第206条もあります。
 「(所有権の内容)
 第二百六条  所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。」



4 共有者全員の合意により乙が売却された場合、各共有者は、別段の意思表示がない限り、その買主に対して売却代金全額を請求することができる。

X 誤っている。 代金全額は請求できない。 持分だけ。
 
 これは、相続での例ですが、最高裁判所の昭和52年9月19日の判決
 「
共同相続人が全員の合意によつて遺産を構成する特定不動産を第三者に売却した場合における代金債権は、分割債権であり、各相続人は相続分に応じて個々にこれを行使することができる。 」
 を参考にしますと、相続財産の共有は、民法第249条以下の共有とその性質が異なってはいないということ(最高裁判所;昭和30年5月31日の判決 など)で、各共有者は、その買主に対しては、”持分”に応じてしか、請求できず、売却代金”全額”を請求することができるは、誤りです。

 

答え:1

《タグ》民法。 共有。 分割請求。議決権行使。持分の処分。 

  選択肢4は迷っても、選択肢1は選べた?

問5

[問 5] マンションの管理組合A(以下、本問において「A」という。)は、敷地に集会棟を新築する工事(以下、本問において「本件工事」という。)を行うため、建設会社B(以下、本問において「B」という。)との間で請負契約を締結した。この場合に関する次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。  

1 Bが本件工事を完成できない場合でも、それが当事者双方の責めに帰することができない事由によるものであったときは、BはAに対して報酬の支払いを請求することができる。

X 誤っている。 当事者双方の責めに帰することができない事由によるものであったときは、債務者Bは債権者Aに対して報酬の支払いを請求することができない。
 平成22年 管理業務主任者試験 「問2」 、平成19年 管理業務主任者試験 「問1」 

 

 請負契約といっても、この出題では、契約の効力の関係となり、民法第536条
 「(債務者の危険負担等)
 第五百三十六条  前二条に規定する場合を除き、
当事者双方の責めに帰することができない事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を有しない。
 2  債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。この場合において、自己の債務を免れたことによって利益を得たときは、これを債権者に償還しなければならない。 」

 とあり、
 この条文は、危険負担に関する「債務者主義」と呼ばれるものです。
 民法第536条1項によれば、両当事者の責めに帰すことの事由で債務が履行不能となった場合には、債務者(この場合、建設会社B)は、債権者A(管理組合)に対して、反対給付(報酬の支払い)を”請求することはできません”から、”支払いを請求することができる”は、誤りです。



2 Bが本件工事を完成したが、集会棟に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、Aは契約を解除して、Bに対し損害賠償を請求することができる。

X 誤っている。 建物や土地の工作物となると、注文主は、契約の解除ができない。
 平成24年 管理業務主任者試験 「問6」 、  平成22年 マンション管理士試験 「問14」 平成16年 マンション管理士試験 「問16」 

  完成した集会棟に瑕疵があると、民法第635条
 「第六百三十五条  
仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。」
 とあり、
 普通であれば、注文主である管理組合Aは、契約の解除ができるのですが、ただしがき「
建物その他の土地の工作物については、この限りでない
 とあり、
 集会棟となると「建物その他の土地の工作物」に該当し、注文主である管理組合Aは、契約の解除ができませんから、この部分は誤りです。
 もしも、契約の解除を認めると、請負人の損害が莫大になったり、社会経済上の損失も大きいためにこの規定があります。
 なお、注文主である管理組合Aは、建設会社Bに対し損害賠償を請求することはできます。


 参考:民法第634条
 
「(請負人の担保責任)
 第六百三十四条  仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
 2  
注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第五百三十三条の規定を準用する。」



3 本件工事に伴い既存の共用部分に生じた損害について、区分所有者全員のためにAの管理者が原告となってBに訴訟を提起するには、その旨の規約の定めによるのではなく、集会の決議が必要である。  

X 誤っている。 規約又は集会の決議で管理者は訴訟ができる。
 平成24年 マンション管理士試験 「問5」 、 平成23年 マンション管理士試験 「問8」 、平成21年 マンション管理士試験 「問9」 、平成19年 マンション管理士試験 「問5」  など。
 
 工事に伴い既存の共用部分に生じた損害について、マンションの管理者が訴訟を起こすとなると、管理者の権限が絡み、それは、区分所有法第26条
 「(権限)
 第二十六条  管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
 2  管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
 3  管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
 
4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
 5  管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。」

 とあり、
 区分所有法第26条4項によれば、管理者の職務として、訴訟を起こせます(原告となる)。
 その際には、「
規約又は集会の決議」があればいいとなっていますから、”規約の定めによるのではなく、集会の決議が必要”は、誤りです。


4 Bが本件工事を完成しない間は、Aは、いつでも損害を賠償して契約を解除することができる。

〇 正しい。 完成前なら、注文主は、いつでも損害を賠償して契約を解除することができる。
 平成25年 管理業務主任者試験 「問5」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問6」 、平成22年 マンション管理士試験 「問15」 、平成21年 管理業務主任者試験 「問2」 、平成15年 管理業務主任者試験 「問1」 

 また、区分所有法から民法に戻ります。
 注文主からの契約の解除は、民法第641条
 「(注文者による契約の解除)
 第六百四十一条  
請負人が仕事を完成しない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して契約の解除をすることができる。」

 とあり、
 完成前なら、注文主である管理組合Aは、いつでも損害を賠償して契約を解除することができますから、正しい。



答え:4

《タグ》民法。請負。完成の前・後。請負業者。注文主。

  ここは、過去問題をやっていれば、易しい。

問6

[問 6] マンションの一住戸甲(以下、本問において「甲」という。)の区分所有者A(以下、本問において「A」という。)の死亡により、法定相続人であるBとCが甲を相続分2分の1ずつで共同相続した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。  

1 BがCと協議で遺産分割をするときには、自己のために相続開始があったことを知った時から3箇月以内にしなければならない。  

X 誤っている。 遺産分割協議には、時間的な制限はない。

 平成23年 マンション管理士試験 「問15」 平成21年 マンション管理士試験 「問14」 、 平成18年 管理業務主任者試験 「問5」 、 平成16年 マンション管理士試験 「問14」

 

  遺産分割協議は、民法第907条
 「(遺産の分割の協議又は審判等)
 第九百七条  
共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
 2  遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
 3  前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。」

 とあり、
 民法第907条1項によれば「共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、”
いつでも”、その協議で、遺産の分割をすることができる」となっていて、自己のために相続開始があったことを”知った時から3箇月以内”にしなければならないの規定はありませんから、誤りです。

 なお、相続については、民法第915条
 
「(相続の承認又は放棄をすべき期間)
 第九百十五条  
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
 2  相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。」

 と、 自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内の制限はあります。

 *解説者:香川よりのアドバイス:
 遺産の分割協議はいつでもできますが、私の場合、曽祖父名義の不動産をそのままにしていたため、遺産相続人が多く存在し、登記簿の名義変更を行う際に、遺産分割協議書の作成と、証明用戸籍関係の書類や印鑑証明を集めるのに随分と時間がかかりました。
 遺産の分割協議は、トラブルが起きないように、早めにしておきましょう。また、後の面倒さを避けるために、共有関係にしないで、単独の名義にしましょう。



2 Bが、甲を単独相続するために、Aの死亡後、遺言書を偽造した場合でも、Bは、家庭裁判所がその欠格事由を認定しない限り、相続人としての資格を失わない。  

X 誤っている。 遺言書を偽造した場合なら、家庭裁判所の認定は不要。
 相続人の欠格事由は、民法第891条
 
「(相続人の欠格事由)
 第八百九十一条  
次に掲げる者は、相続人となることができない
     一  故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
     二  被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
     三  詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
     四  詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
     
五  相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

 とあり、
 遺言書を偽造した場合は、民法第891条5号に該当し、家庭裁判所の欠格事由の認定がなくても、当然に相続人になれませんから、家庭裁判所がその欠格事由を認定しない限り、相続人としての資格を失わないは、誤りです。



3 Bが、Cに無断で甲を単独で所有する旨の登記をした上で、Dに売却し、移転登記を完了させた場合でも、Cは、自らが相続した甲の持分について、登記がなくてもDに対抗することができる。

〇 正しい。 相続なら、無断の登記があっても、他の共同相続人は、自己の持分について、登記がなくても、対抗できる。
 
 

 読むだけでも、面倒な、設問です。
 このような入り組んだ設問は、出題者は独自には作成できませんから、きっとどこかに、最高裁判所の判例があるのでしょう。

 探しました。それは、最高裁判所の昭和38年2月22日の判例
 「要旨:
甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。」
 とありますから、
 共同相続人Bが、共同相続人Cに無断で甲を単独で所有する旨の登記をした上で、第三者Dに売却し、移転登記を完了させた場合でも、共同相続人Cは、自らが相続した甲の”持分”について、登記がなくても第三者Dに対抗することができますから、正しい。

 これは、登記簿を重要視するかどうかでの判断です。登記には、”公信力がない(真実を示していない)”、という判断での結論で、不動産では、第三者の取引の安全性よりも、共同相続人の権利の保護が優先された結果です。



4 Bの相続放棄によりCが甲を単独相続したが、その前に、Bが相続した甲の持分についてEが差押えをしていた場合には、CはEの権利を害することができない。  

X 誤っている。 相続放棄は、最初から効果があり、放棄した持分については、遡及効があり差押えをしても無効である。
  設問では、その前にとか、放棄したとか、単独相続の時間の経過がはっきりしません。
  共同相続人Bが相続した甲の持分とあるなら、Bは相続放棄をしていないのではないでしょうか。遡及の効果があるというのでしょうか。

 このような設問も、前の選択肢3のように、出題者は独自には作成できませんから、きっとどこかに、最高裁判所の判例があるのでしょう。


 

 探しました。 それは、昭和42年1月20日の最高裁判所の判決
 「民法九三九条一項(昭和三七年法律第四〇号による
改正前のもの)「放棄は、相続開始の時にさかのぼつてその効果を生ずる。」の規定は、相続放棄者に対する関係では、右改正後の現行規定「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初から相続人とならなかつたものとみなす。」と同趣旨と解すべきであり、民法が承認、放棄をなすべき期間(同法九一五条)を定めたのは、相続人に権利義務を無条件に承継することを強制しないこととして、相続人の利益を保護しようとしたものであり、同条所定期間内に家庭裁判所に放棄の申述をすると(同法九三八条)、相続人は相続開始時に遡ぼつて相続開始がなかつたと同じ地位におかれることとなり、この効力は絶対的で、何人に対しても、登記等なくしてその効力を生ずると解すべきである。」
 として、相続を放棄した共同相続人の一人の持分に対してなされた仮差押えの登記は無効としました。

 そこで、共同相続人Bの相続放棄により共同相続人Cが甲を単独相続したが、その前に、Bが相続した甲の持分について第三者Eが差押えをしていた場合でも、相続人Cは第三者Eの権利を無効にできますから、対抗を害することができないは、誤りです。

 参考:改正後の現在の民法第939条は、
 「(相続の放棄の効力)  
第九百三十九条  
相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。」
 です。


答え:3

《タグ》民法。判例。相続。遺産分割。遺言書の偽造。無断登記と持分。相続の放棄と差押え。

 設問が面倒。読み込むだけで時間がかかる。
 判例を探すのにも時間がかかった! (約3時間半もかかったぞ!) 難問だ。

問7

*注:マンション標準管理委託契約書は、平成28年7月29日付で、14条が改正されているので、平成29年の受験生はしっかり、改正箇所に注意のこと。


[問 7] 次の記述のうち、マンション標準管理委託契約書及びマンション標準管理委託契約書コメント(平成15年4月9日国総動第3号。国土交通省総合政策局長通知。以下、「標準管理委託契約書」という。)によれば、最も適切なものはどれか。  

1 マンション管理業者(マンション管理適正化法第2条第8号に規定する者をいう。以下同じ。)又は管理組合は、管理委託契約の更新について申出があった場合において、当該管理委託契約の有効期間が満了する日までに両者の間で更新に関する協議がととのう見込みがないときは、当該管理委託契約と同一の条件で暫定契約を締結することができるが、その暫定契約の期間は3月を超えることができない。

X 適切でない。 この場合、暫定契約の期間は”3ケ月”と限定されていない。
  平成26年 管理業務主任者試験 「問8」 平成23年 管理業務主任者試験 「問7」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問9」 

 まず、マンション標準管理委託契約書(以下、この解説においては、「標準管理委託契約書」といいます)の位置づけは、標準管理規約と同様に、国土交通省の役人が、マンションでの参考にすればいいという程度のものです。特に法律でもなく、拘束力もないということを理解しておいて下さい。
 しかし、この参考に過ぎない標準管理委託契約書も管理組合と管理業者の間で一度、締結されると、そこに記載されている条項は、契約内容として、互いに拘束力を持ちますから、注意が必要です。

 標準管理委託契約書の基になっているのは、選択肢1にありますように、マンション管理適正化法です。
このマンション管理適正化法に規定される事項を超えて標準管理委託契約書は作成できませんから、標準管理委託契約書を理解する前に、マンション関係者はマンション管理適正化法を知っておく必要があります。
 では、マンション管理業者とは...マンション管理適正化法第2条第8号によれば、
 「(定義) 
 第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
 八  
マンション管理業者 第四十四条の登録を受けてマンション管理業を営む者をいう。

 とあり、
 引用されています、マンション管理適正化法第44条は、
 「(登録) 
 第四十四条  
マンション管理業を営もうとする者は、国土交通省に備えるマンション管理業者登録簿に登録を受けなければならない
 (以下、略)」

 とあり、
 マンション管理業を営もうとする者は、登録制となっています。勝手に、マンションの管理業はできません。

 そこで、設問の暫定契約は、標準管理委託契約書21条
 「(契約の更新)
 第 21 条 甲(管理組合)又は乙(管理業者)は、本契約を更新しようとする場合、本契約の有効期間が満了する日の三月前までに、その相手方に対し、書面をもって、その旨を申し出るものとする。
 
2 本契約の更新について申出があった場合において、その有効期間が満了する日までに更新に関する協議がととのう見込みがないときは、甲及び乙は、本契約と同一の条件で、期間を定めて暫定契約を締結することができる。 」
 とあり、
 標準管理委託契約書21条2項によれば、管理委託契約の更新について申出があった場合において、当該管理委託契約の有効期間が満了する日までに両者の間で更新に関する協議がととのう見込みがないときは、当該管理委託契約と同一の条件で暫定契約を締結することができます。
 そこで、その暫定契約の期間は”3月を超えることができない”との期限を限った規定はありませんから、適切ではありません。
 標準管理委託契約書21条1項の契約の更新との混同を狙った出題です。

 なお、以前は、マンションの管理委託契約書は、自動更新が多かったのですが、自動更新では弊害が多くて、国土交通省は認めなくしました。



2 マンション管理業者は、管理員業務、清掃業務又は建物・設備管理業務について、それらの業務の一部を第三者に再委託することはできるが、当該業務の全部を第三者に再委託することはできない。  

X 適切でない。 管理員業務、清掃業務又は建物・設備管理業務なら、全部を第三者に再委託することはできる。
 平成24年 管理業務主任者試験 「問9」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問8」 

 まず、マンション管理業者は、マンション管理適正化法第74条により、
 「(再委託の制限)
 第七十四条  マンション管理業者は、管理組合から委託を受けた管理事務のうち
基幹事務については、これを一括して他人に委託してはならない。」

 と規定され、
 引用されています、管理事務や基幹事務とは、マンション管理適正化法第74条第2条6号
 
「六  管理事務 マンションの管理に関する事務であって、基幹事務(管理組合の会計の収入及び支出の調定及び出納並びにマンション(専有部分を除く。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整をいう。以下同じ。)を含むものをいう。」
 です。
 つまり、管理組合から委託をうけているマンションの管理において、 基幹事務である「管理組合の会計の収入及び支出の調定及び出納並びにマンション(専有部分を除く。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整をいう」については、これらの”一部は再委託ができます”が、”まるごと全部を再委託してはいけない”ということです。


 これを前提に、標準管理委託契約書4条、
 「(第三者への再委託)
 第4条 乙(管理業者)は、
前条第1号の管理事務の一部又は同条第2号、第3号若しくは第4号の 管理事務の全部若しくは一部を、第三者に再委託することができる
 2 乙(管理業者)が前項の規定に基づき管理事務を第三者に再委託した場合においては、乙は、再委託した管理事務の適正な処理について、甲(管理組合)に対して、責任を負う。 」
 とあり、
 標準管理委託契約書4条で引用されています、前条とは、
 「(管理事務の内容及び実施方法)
 第3条 管理事務の内容は、次のとおりとし、別表第1から第4に定めるところにより 実施する。       
    
 一 事務管理業務(別表第1に掲げる業務)
     二 管理員業務(別表第2に掲げる業務)
     三 清掃業務(別表第3に掲げる業務)
     四 建物・設備管理業務(別表第4に掲げる業務)」
 です。
 つまり、標準管理委託契約書3条1号の「事務管理業務」内に、マンション管理適正化法での「
基幹事務」が記載され、これは、一部だけなら再委託も可能ですが、全部の再委託は出来ないとなっていて、他の2号から4号なら、全部又は一部を、第三者に 再委託することができるという構成になっています。

 そこで、設問の「マンション管理業者は、管理員業務(2号)、清掃業務(3号)又は建物・設備管理業務(4号)について、それらの業務の一部を第三者に再委託することはできるが、当該業務の全部を第三者に再委託することはできない」に戻りますと、ここには、標準管理委託契約書3条1号の
「事務管理業務(1号)」は含まれていませんから、管理員業務、清掃業務又は建物・設備管理業務については、標準管理委託契約書4条1項により、管理事務の全部又は一部を、第三者に 再委託することができますから、全部を第三者に再委託することはできないは、適切ではありません。


3 マンション管理業者は、解約等により管理委託契約が終了した場合には、マンション管理業者が保管する設計図書、管理規約の原本、総会議事録、総会議案書等の図書等に加え、組合員等の名簿及び出納事務のためマンション管理業者が預かっている管理組合の口座の通帳、印鑑等を遅滞なく管理組合に引き渡さなければならない。  

〇 適切である。 当然。
  管理委託契約が終了した場合なら、標準管理委託契約書 表 (3)その他
  「③ 図書等の保管等
      一 乙(管理業者)は、本マンションに係る
設計図書を、甲(管理組合)の事務所で保管する。    
      二 乙は、甲の
管理規約の原本、総会議事録、総会議案書等を、甲の事務所で保管する。
      
三 乙は、解約等により本契約が終了した場合には、乙が保管する前2号の図書等、本表2 (1)①で整備する組合員等の名簿及び出納事務のため乙が預っている甲の口座の通帳、印鑑等を遅滞なく、甲に引き渡す。」
 とあり、
  適切です。



4 マンション管理業者は、定額委託業務費の内訳について、マンション管理適正化法第72条に基づく重要事項の説明の際に管理組合に対して見積書等であらかじめ明示している場合には、管理組合との合意を得ていなくても、管理委託契約に定額委託業務費の内訳を記載しないことができる。  

 適切ではない。 定額委託業務費の内訳を記載しないことができるには、当事者で合意が必要。
 平成20年 管理業務主任者試験 「問13」 、 平成18年 管理業務主任者試験 「問8」 

 まず、マンション管理適正化法第72条とは、
 
「(重要事項の説明等)
 第七十二条  マンション管理業者は、管理組合から管理事務の委託を受けることを内容とする契約(新たに建設されたマンションの当該建設工事の完了の日から国土交通省令で定める期間を経過する日までの間に契約期間が満了するものを除く。以下「管理受託契約」という。)を締結しようとするとき(次項に規定するときを除く。)は、
あらかじめ、国土交通省令で定めるところにより説明会を開催し、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等及び当該管理組合の管理者等に対し、管理業務主任者をして、管理受託契約の内容及びその履行に関する事項であって国土交通省令で定めるもの(以下「重要事項」という。)について説明をさせなければならない。この場合において、マンション管理業者は、当該説明会の日の一週間前までに、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等及び当該管理組合の管理者等の全員に対し、重要事項並びに説明会の日時及び場所を記載した書面を交付しなければならない。
 2  マンション管理業者は、従前の管理受託契約と同一の条件で管理組合との管理受託契約を更新しようとするときは、あらかじめ、当該管理組合を構成するマンションの区分所有者等全員に対し、重要事項を記載した書面を交付しなければならない。
 3  前項の場合において当該管理組合に管理者等が置かれているときは、マンション管理業者は、当該管理者等に対し、管理業務主任者をして、重要事項について、これを記載した書面を交付して説明をさせなければならない。
 4  管理業務主任者は、第一項又は前項の説明をするときは、説明の相手方に対し、管理業務主任者証を提示しなければならない。
 5  マンション管理業者は、第一項から第三項までの規定により交付すべき書面を作成するときは、管理業務主任者をして、当該書面に記名押印させなければならない。」

 とあり、
  マンション管理業者に対して、管理組合と管理受託契約を締結する際には管理業務主任者をして「契約内容の重要な事項の説明」を義務付けています。


 そして、費用の負担は、標準管理委託契約書6条
 「(管理事務に要する費用の負担及び支払方法)
 第6条 甲(管理組合)は、管理事務として乙(管理業者)に委託する事務(別表第1から別表第4までに定める 事務)のため、乙に委託業務費を支払うものとする。
 2 甲は、前項の委託業務費のうち、その負担方法が定額でかつ精算を要しない費用(以 下「
定額委託業務費」という。)を、乙に対し、毎月、次のとおり支払うものとする。
     一 定額委託業務費の額
       合計月額○○円
       消費税及び地方消費税抜き価格 ○○円
       消費税額及び地方消費税額(以下、本契約において「消費税額等」という。)○○円
       内訳は、別紙1のとおりとする。
     二 支払期日及び支払方法
       毎月○日までにその○月分を、乙が指定する口座に振り込む方法により支払う。
     三 日割計算
       期間が一月に満たない場合は当該月の暦日数によって日割計算を行う。(1円未満は四捨五入とする。)
 3 第1項の委託業務費のうち、定額委託業務費以外の費用の額(消費税額等を含む。) は別紙2のとおりとし、甲は、各業務終了後に、甲及び乙が別に定める方法により精算の上、乙が指定する口座に振り込む方法により支払うものとする。
 4 甲は、第1項の委託業務費のほか、乙が管理事務を実施するのに伴い必要となる水道光熱費、通信費、消耗品費等の諸費用を負担するものとする。」
 とあり、
 関係コメント
 「① 第二項で定額委託業務費の内訳を明示することにより、第三条に規定する管理事務の範囲・内容と定額委託業務費の関係を明確化することとしたものである。
  ただし、適正化法第七十二条に基づき管理委託契約締結前に行う重要事項説明等の際に、マンション管理業者が管理組合に対して見積書等であらかじめ定額委託業務費の内訳を明示している場合であって、
当事者間で合意しているときは、管理委託契約に定額委託業務費の内訳を記載しないことができる。」
 とあり、
 標準管理委託契約書6条関係のコメント①によれば、マンション管理業者は、定額委託業務費の内訳について、マンション管理適正化法第72条に基づく重要事項の説明の際に管理組合に対して見積書等であらかじめ明示している場合には、管理組合と
合意をしていれば、管理委託契約に定額委託業務費の内訳を記載しないことができますが、合意を得ていなくてもは、適切ではありません。


答え:3 

《タグ》標準管理委託契約書。 更新契約。業務の全部・一部の再委託。解約時の返還書類など。定額委託業務費の内訳。

  標準管理委託契約書関係の第1問ということで、かなり詳細に解説しました。(3時間以上かかった)

  設問としては、それほど難しくはありません。
  しかし、設問の文章が長すぎる。

問8

*注:マンション標準管理委託契約書は、平成28年7月29日付で、14条が改正されているので、平成29年の受験生はしっかり、改正箇所に注意のこと。


[問 8] 次の記述のうち、標準管理委託契約書によれば、適切なものの組み合わせはどれか。  

ア マンション管理業者は、管理委託契約の契約期間が1年である場合において、3年ごとに実施する特殊建築物定期調査のように、当該管理委託契約の契約期間をまたいで実施する管理事務(マンション管理適正化法第2条第6号に規定するものをいう。以下同じ。)を定額委託業務費に含める場合は、実施時期や費用を管理組合に明示するとともに、当該管理事務を実施しない場合の清算方法をあらかじめ明らかにすべきである。

〇 適切である。
 余り管理組合が気が付かない点を指摘した、いい設問です。
 管理委託契約は、原則として1年ごとに更新されますが、管理業者は、設問のような、3年ごとに実施する「特殊建築物定期調査費用」も、1年契約の定額委託業務費に分散して加えることが多くあります。
 素人である管理組合の人は、それを知らずに、管理業者からの請求額をそのまま支払っています。そこで、3年間、同じ管理業者と管理委託契約を締結していれば、3年ごとに実施する特殊建築物定期調査においても別段の費用が発生しませんが、管理会社を3年に満たないうちに変更すると、3年ごとに実施する特殊建築物定期調査の費用は、管理会社の不当利得となります。
 そこで、前問の「問7」でも引用しています、標準管理委託契約書6条「(管理事務に要する費用の負担及び支払方法)」のコメント⑤に、
 「
⑤ 契約期間が1年で3年ごとに実施する特殊建築物定期調査のように、契約期間をまたいで実施する管理事務の取扱いについては、
  本契約と別個の契約とする方法、
  定額委託業務費以外の業務費とする方法 又は
  定額委託業務費に含める方法 とし、
  定額委託業務費に含める場合は、実施時期や費用を明示し、管理事務を実施しない場合の精算方法をあらかじめ明らかにすべきである。

 とありますように、
 マンション管理業者は、管理委託契約の契約期間が1年である場合において、3年ごとに実施する特殊建築物定期調査のように、当該管理委託契約の契約期間をまたいで実施する管理事務を定額委託業務費に含める場合は、実施時期や費用を管理組合に明示するとともに、当該管理事務を実施しない場合の清算方法をあらかじめ明らかにすべきですから、適切です。



イ マンション管理業者が行う管理事務の内容に、警備業法に定める警備業務、消防法に定める防火管理者が行う業務及び浄化槽法に定める水質検査の業務は含まれない。

X 適切でない。 警備業法に定める警備業務、消防法に定める防火管理者が行う業務は含まれないが、浄化槽法に定める水質検査の業務は含まれる。
 平成21年 管理業務主任者試験 「問7」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問7」 

 まず、設問前半の「警備業法に定める警備業務、消防法に定める防火管理者が行う業務」については、標準管理委託契約書の全般関係のコメント③
 「
③ この契約では、適正化法第2条第6号に定める管理事務をマンション管理業者に委託する場合を想定しており、警備業法に定める警備業務、消防法に定める防火管理者が行う業務は、管理事務に含まれない。
 とあり、
 警備業法に定める警備業務、消防法に定める防火管理者が行う業務は含まれないは、適切です。

 では、後半の「浄化槽法に定める水質検査の業務」は、管理業者が行う管理事務の詳細として、標準管理委託契約書の別表にあります。
 「別表第4 建物・設備管理業務  
 4 浄化槽、排水設備
  
(1) 浄化槽法第7条及び第11条に規定する水質検査
   (以下、略)」
 とありますから、
 浄化槽法に定める水質検査の業務はマンション管理業者が行う管理事務の内容に含まれていますので、含まれないは、適切ではありません。
 よって、選択肢イ は全体として、適切ではありません。


 このような設問は、その法律の主管省庁まで分かると記憶する一助になります。
 では、
 ①警備業法の主管省庁は、警察庁
 ②消防法の主管省庁は、総務省消防庁
 ③浄化槽法の主管省庁は、建築基準法に関する部分は国土交通省、他は環境省又は国土交通省と環境省
 です。
 そこで、この標準管理委託契約書を作成したのは...国土交通省です。
 役所間の縄張りとして、警備業法や消防法のように完全に他の省庁に関係した内容にまで、国土交通省としては、口をはさむことはできません。
 でも、浄化槽法のように点検・検査なら国土交通省は干渉できます。



ウ マンション管理業者が行う管理事務の対象となる部分は、管理規約により管理組合が管理すべき部分のうち、マンション管理業者が受託して管理する部分であり、専用使用部分(バルコニー、トランクルーム、専用庭等)については、管理組合が行うべき管理業務の範囲内において、マンション管理業者が管理事務を行う。

〇 適切である。
 平成26年 管理業務主任者試験 「問9」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問7」 

 マンション管理業者が行う管理事務の対象となる部分は、標準管理委託契約書2条 5号
 「
五 管理対象部分
   イ 敷 地
   ロ 専有部分に属さない建物の部分(規約共用部分を除く。)
     エントランスホール、廊下、階段、エレベーターホール、共用トイレ、屋上、 屋根、塔屋、ポンプ室、自家用電気室、機械室、受水槽室、高置水槽室、パイプスペース、内外壁、床、天井、柱、バルコニー
   ハ 専有部分に属さない建物の附属物
     エレベーター設備、電気設備、給水設備、排水設備、テレビ共同受信設備、消防・防災設備、避雷設備、各種の配線・配管
   ニ 規約共用部分
     管理事務室、管理用倉庫、清掃員控室、集会室、トランクルーム、倉庫
   ホ 附属施設
     塀、フェンス、駐車場、通路、自転車置場、ゴミ集積所、排水溝、排水口、外灯設備、植栽、掲示板、専用庭、プレイロット 」
 です。
 この管理対象部分をよく読んで、該当の場所や設備をイメージできるようにしてください。

 そこで、専用使用部分である「バルコニー、トランクルーム、専用庭等」はどの程度、管理業者が管理するのかという判断は、同2条関係コメント②
 
「② 専用使用部分(バルコニー、トランクルーム、専用庭等)については、管理組合が行うべき管理業務の範囲内においてマンション管理業者が管理事務を行う。
 とあり、
 マンション管理業者が行う管理事務の対象となる部分は、管理規約により管理組合が管理すべき部分のうち、マンション管理業者が受託して管理する部分であり、専用使用部分(バルコニー、トランクルーム、専用庭等)については、管理組合が行うべき管理業務の範囲内において、マンション管理業者が管理事務を行うは、適切です。



エ マンション管理業者は、管理組合の債務不履行を理由に管理委託契約を解除する場合を除き、契約期間の中途において、管理委託契約を解約することはできない。

X 適切でない。 解約は、原則として自由にできる。
 平成26年 管理業務主任者試験 「問8」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問8」 、 平成23年 管理業務主任者試験 「問7」 

 管理組合の債務不履行を理由に管理委託契約を解除する場合なら、標準管理委託契約書18条
 「(契約の解除)
 第 18 条
甲(管理組合)及び乙(管理業者)は、その相手方が、本契約に定められた義務の履行を怠った場合は、相当の期間を定めてその履行を催告し、相手方が当該期間内に、その義務を履行しないときは、本契約を解除することができる。この場合、甲又は乙は、その相手方に対 し、損害賠償を請求することができる。
 2 甲は、乙が次の各号のいずれかに該当するときは、本契約を解除することができる。
     一 乙が銀行の取引を停止されたとき、若しくは破産、会社更生、民事再生の申立てをしたとき、又は乙が破産、会社更生、民事再生の申立てを受けたとき
     二 乙が合併又は破産以外の事由により解散したとき
     三 乙がマンション管理業の登録の取消しの処分を受けたとき」
 とあり、
  標準管理委託契約書18条1項により、マンション管理業者は、管理組合の債務不履行を理由に管理委託契約を解除する場合なら、契約期間の中途でも解約ができます。

 では、次に、他の場合での標準管理委託契約の解除は、標準管理委託契約書19条、
 「(解約の申入れ)
 第 19 条
前条の規定にかかわらず、甲(管理組合)及び乙(管理業者)は、その相手方に対し、少なくとも三月前に書面で解約の申入れを行うことにより、本契約を終了させることができる。」
 とあり、
 特に債務不履行以外でも、契約期間の中途でも、その相手方に対し、少なくとも三カ月前に書面で解約の申入れを行うことにより、本契約を終了させることができますから、全体として、適切です。



  1 ア・ウ
  2 ア・エ
  3 イ・ウ
  4 イ・エ


答え:1 適切なのは、ア と ウ 

《タグ》標準管理委託契約書。 3年ごとの特殊建築物定期調査費用。管理事務の詳細。浄化槽法。管理の範囲。契約の解除。

 ここも、難しくはない。

問9

*注:マンション標準管理委託契約書は、平成28年7月29日付で、14条が改正されているので、平成29年の受験生はしっかり、改正箇所に注意のこと。


[問 9] 次の記述のうち、標準管理委託契約書によれば、最も不適切なものはどれか。  

1 マンション管理業者及びその従業員は、管理委託契約が終了した後においても、正当な理由がなく、管理事務に関して知り得た管理組合及び当該管理組合の組合員等の秘密等を漏らしてはならない。

〇 適切である。
 平成21年 管理業務主任者試験 「問8」 、 平成17年 マンション管理士試験 「問33」 、平成16年 管理業務主任者試験 「問9」 
 
 標準管理委託契約書の基本となっているのは、マンション管理適正化法であることは、「問7」 でも説明しましたが、設問の規定は、マンション管理適正化法第80条
 
「(秘密保持義務)
 第八十条
 マンション管理業者は、正当な理由がなく、その業務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。マンション管理業者でなくなった後においても、同様とする。」

 です。
 また、マンション管理適正化法第87条
 「
(使用人等の秘密保持義務)
 第八十七条
 マンション管理業者の使用人その他の従業者は、正当な理由がなく、マンションの管理に関する事務を行ったことに関して知り得た秘密を漏らしてはならない。マンション管理業者の使用人その他の従業者でなくなった後においても、同様とする。」

 です。
 ただし、従業員が退職した後では、いつまで知りえた秘密を漏洩させないことを守らせることができるのか、規定としては曖昧です。

 これを受け、標準管理委託契約書16条
 「(守秘義務等)
 第 16 条
乙(管理業者)及び乙の従業員は、正当な理由がなく、管理事務に関して知り得た甲(管理組合)及び甲の組合員等の秘密を漏らしてはならない。この契約が終了した後においても、同様とする
 2 乙は、甲の組合員等に関する個人情報について、その適正な取扱いの確保に努めな ければならない。」
 とあり、
  標準管理委託契約書16条1項によれば、マンション管理業者及びその従業員は、管理委託契約が終了した後においても、正当な理由がなく、管理事務に関して知り得た管理組合及び当該管理組合の組合員等の秘密等を漏らしてはならないは、適切です。



2 マンション管理業者は、管理事務を通じて当該マンションの劣化等の状況を把握することができることから、長期修繕計画案の作成業務を実施する場合、当該業務に係る契約については、管理委託契約と別個の契約としてはならない。  

X 適切ではない。 長期修繕計画案の作成業務を実施する場合には、管理委託契約と別個の契約とする。
 平成22年 管理業務主任者試験 「問9」 、平成19年 管理業務主任者試験 「問9」 

 長期修繕計画案の作成業務は、平成21年に改正があり以前の標準管理委託契約書では、管理業者の業務に入っていましたが、作成に手間がかかることが分かり、別契約となりました。

 具体的には、標準管理委託契約書 別表第1 事務管理業務 1 基幹事務 
 「 (3)本マンション(専有部分 を除く。以下同じ。)の維持又は修繕に関する企画又は実施の調整
  一 乙(管理業者)は、甲(管理組合)の長期修繕計画の見直しのため、管理事務を実施する上で把握した本マンションの劣化等の状況に基づき、当該計画の修繕工事の内容、実施予定時期、工事の概算費用等に、改善の必要があると判断した場合には、書面をもって甲に助言する。
   
二 長期修繕計画案の作成業務及び建物・設備の劣化状況などを把握するための調査・診断を実施し、その結果に基づき行う当該計画の見直し業務を実施する場合は、本契約とは別個の契約とする
   三 乙は、甲が本マンションの維持又は修繕(大規模修繕を除く修繕又は保守点検等。)を外注により乙以外の業者に行わせる場合の見積書の受理、発注補助、実施の確認を行う。」
 とあり、
 二 によれば、長期修繕計画案の作成業務を実施する場合、当該業務に係る契約については、管理委託契約と別個の契約としますから、管理委託契約と別個の契約としてはならないは、適切ではありません。

 また、マンション標準管理委託契約書 別表第1 1(3)関係 コメント②
 「
② 長期修繕計画案の作成業務(長期修繕計画案の作成のための建物等劣化診断業務を含む。)以外にも、必要な年度に特別に行われ、業務内容の独立性が高いという業務の性格から、以下の業務をマンション管理業者に委託するときは、本契約とは別個の契約にすることが望ましい。
   一 修繕工事の前提としての建物等劣化診断業務
   二 大規模修繕工事実施設計及び工事監理業務
   三 マンション建替え支援業務 」
 もあります。



3 マンション管理業者は、管理組合の長期修繕計画の見直しのため、管理事務を実施する上で把握した当該マンションの劣化等の状況に基づき、当該計画の修繕工事の内容等について、改善の必要があると判断した場合には、書面をもって管理組合に助言するものとする。

〇 適切である。

 選択肢2で引用しました、標準管理委託契約書 別表第1 事務管理業務 1基幹事務  
 「 (3)本マンション(専有部分 を除く。以下同じ。)の維持 又は修繕に関する企画又は実 施の調整
  
一 乙(管理業者)は、甲(管理組合)の長期修繕計画の見直しのため、管理事務を実施する上で把握した本マンションの劣化等の状況に基づき、当該計画の修繕工事の内容、実施予定時期、工事の概算費用等に、改善の必要があると判断した場合には、書面をもって甲に助言する。 」
 とあり、
 適切です。
 


4 マンション管理業者が、理事会の設置する各種専門委員会の運営支援業務を実施する場合は、その業務内容、費用負担について、別途、管理組合とマンション管理業者が協議して定めるものとする。

〇 適切である。
 
 理事会が設置する各種専門委員会の運営支援業務は、標準管理委託契約書 別表第1 2 基幹事務以外の事務管理業務
 「(3) その他
    ① 各種点検、検査等に基づ く助言等
      管理対象部分に係る各種の点検、検査等の結果を甲に報告すると共に、改善等の必要がある事項については、具体的な方策を甲に助言する。この報告及び助言は、書面をもって行う。
    ② 甲の各種検査等の報告、 届出の補助
      一 甲に代わって、消防計画の届出、消防用設備等点検報告、特殊建築物定期調査又は建築設備定期検査の報告等に係る補助を行う。
      二 甲の指示に基づく甲の口座の変更に必要な事務を行う。
      三 諸官庁からの各種通知を、甲及び甲の組合員に通知する。
    ③ 図書等の保管等
      一 乙は、本マンションに係る設計図書を、甲の事務所で保管する。
      二 乙は、甲の管理規約の原本、総会議事録、総会議案書等を、甲の事務所で保管する。
      三 乙は、解約等により本契約が終了した場合には、乙が保管する前2号の図書等、本表2 (1)①で整備する組合員等の名簿及び出納事務のため乙が預っている甲の口座の通帳、印等を遅滞なく、甲に引き渡す。 」
 とあり、
 同 その他のコメント③
 「
③ 大規模修繕、規約改正等、理事会が設置する各種専門委員会の運営支援業務を実施する場合は、その業務内容、費用負担について、別途、管理組合とマンション管理業者が協議して定めるものとする。」
 とあり、
 マンション管理業者が、理事会の設置する各種専門委員会の運営支援業務を実施する場合は、その業務内容、費用負担について、別途、管理組合とマンション管理業者が協議して定めるものとするは、適切です。


答え:2

《タグ》標準管理委託契約書。 秘密保持。長期修繕計画案の作成業務は別契約。各種専門委員会の運営支援業務。

   標準管理委託契約書からのコメントからの出題とは、面倒。易しいけど。

問10

[問 10] マンションの管理費の滞納に関する次の記述のうち、民法、民事訴訟法及び区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。  

1 滞納額140万円の支払いを求める訴えを簡易裁判所に提起する場合には、民事訴訟法上の少額訴訟制度を利用することができる。  

X 誤っている。 少額訴訟制度は、訴額が60万円以下の支払いが対象。
 平成27年 管理業務主任者試験 「問11」, 、 平成24年 管理業務主任者試験 「10」  平成23年 管理業務主任者試験 「10」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問10」

 まず、少額訴訟の制度は、民事訴訟のうち,60万円以下の金銭の支払を求める訴えについて,原則として1回の審理で紛争解決を図る手続です。
 即時解決を目指すため,証拠書類や証人は,審理の日にその場ですぐに調べることができるものに限られます。
 原則、相手方の所在地を管轄する簡易裁判所に訴状を提出し、申請手数料は、訴額の約1%です。その法廷では,基本的には,裁判官と共に丸いテーブル(ラウンド・テーブル)に着席する形式で審理が進められます。
 なお、同一年内での、少額訴訟手続きの利用回数は、10回以内に制限されています。
 個人間で発生している小額の金銭トラブルなら、わざわざ裁判にしないで、解決しようとする制度です。

 
 

  少額訴訟は、具体的には、民事訴訟法第368条~第381条に定められています。
 そこで、設問は、民事訴訟法第368条
 
「(少額訴訟の要件等)
 第三百六十八条  
簡易裁判所においては、訴訟の目的の価額が六十万円以下の金銭の支払の請求を目的とする訴えについて、少額訴訟による審理及び裁判を求めることができる。ただし、同一の簡易裁判所において同一の年に最高裁判所規則で定める回数を超えてこれを求めることができない。
 2  少額訴訟による審理及び裁判を求める旨の申述は、訴えの提起の際にしなければならない。
 3  前項の申述をするには、当該訴えを提起する簡易裁判所においてその年に少額訴訟による審理及び裁判を求めた回数を届け出なければならない。」

 とあり、
  民事訴訟法第368条1項によれば、少額訴訟制度を利用するなら、訴額は”
60万円以下”でなければならず、”滞納額140万円”の支払いを求める訴えを簡易裁判所に提起する場合には、民事訴訟法上の少額訴訟制度を利用することができませんから、誤りです。

 なお、設問の、140万円は、相手方に求める価格が、原則:140万円以下なら...簡易裁判所へ
     140万円を超える場合...地方裁判所へ の訴え提起の際の裁判所の管轄基準です。



2 滞納者に対して、普通郵便による督促をした場合、その後6箇月以内に裁判上の請求をすれば、普通郵便が滞納者に到達した時に、管理費債権の消滅時効が中断したこととなる。  

〇 正しい。 催告となり、その後6カ月以内に裁判上の請求をすれば、時効の中断になる。
 平成26年 管理業務主任者試験 「問10」 、 平成24年管理業務主任者試験 「問3」 、  平成23年 管理業務主任者試験 「問20」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問7」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問13」 、 平成20年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成19年 管理業務主任者試験 「問10」 、 平成18年 管理業務主任者試験 「問10」 、 平成17年 管理業務主任者試験 「問10」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成15年 管理業務主任者試験 「問10」 、 平成14年 マンション管理士試験 「問11」 、平成14年 管理業務主任者試験 「問2」 

 滞納者に対して、普通郵便による督促をした場合は、民法上、債務者に対して履行を請求する債権者の意思の通知として「催告」に該当します。
 催告だけでは、時効を中断する効果はありませんが、民法第153条
 「
(催告)
 第百五十三条  
催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事事件手続法 による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。

 とあります。

 また、書面による意思の表示は民法第97条、
 
「(隔地者に対する意思表示)
 第九十七条  
隔地者に対する意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。
 2  隔地者に対する意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、又は行為能力を喪失したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

 とあり、
 民法第97条1項によれば、普通郵便なら、滞納者に到達した時から、効力を生じます。

 そこで、民法第153条及び民法第97条1項によれば、催告後、6箇月以内に裁判上の請求をすれば、普通郵便が滞納者に到達した時に、管理費債権の消滅時効が中断したこととなりますから、正しい。
 

 参考:
 「(時効の中断事由)
 第百四十七条  時効は、次に掲げる事由によって中断する。
     一  請求
     二  差押え、仮差押え又は仮処分
     三  承認 」



3 専有部分について賃貸借契約がなされた場合、管理組合は滞納管理費について、規約に別段の定めがなくても、貸主である区分所有者又は賃借人である占有者のいずれに対しても訴えを提起することができる。  

X 誤っている。 規約に別段の定めがない限り、管理費等の支払い義務は、区分所有者(貸主)にあり、賃借人である占有者にはない。
  平成24年 管理業務主任者試験 「問36」 、平成23年 管理業務主任者試験 「問10」 、 同「問35」 、 平成22年 マンション管理士試験 「問4」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問4」 、 同「問5」 、 平成14年 管理業務主任者試験 「問42」 、 平成13年 マンション管理士試験 「問10」 、 同「問36」

 管理費等の支払いとなると、今度は、区分所有法第19条
 「(共用部分の負担及び利益収取)
 第十九条
各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。」
 とあり、
 共用部分の負担とは、玄関や廊下など共用部分の清掃費・照明代・動力費・管理員人件費・エレベーターその他機器の保守・点検費等からなる
管理費と、大規模・計画修繕費からなる修繕積立金のように共用部分を維持・保全・修繕・改良するための費用および共用部分に起因する不法行為の賠償金その他共用部分に関して発生する一切の責任をいいます。
 そこで、原則:管理費等の支払い義務は、各共有者(区分所有者)にありますから、専有部分について賃貸借契約がなされた場合でも、規約に別段の定めがなければ、管理組合は貸主である区分所有者にしか、滞納管理費についての訴えを提起することができず、賃借人である占有者のいずれに対しても訴えを提起することができるは、誤りです。



4 債務者に対して、訴えを提起したところ、「必ず払います。」との誓約書を提出したため、終局判決の前に訴えを取り下げた場合は、その後、支払いがなされなかったときでも再び訴えを提起することはできない。  

X 誤っている。 終局判決の前に訴えを取り下げた場合なら、再び訴えを提起することはできる。
 
 終局判決の前に訴えを取り下げた場合は、民亊訴訟法第262条
 「
(訴えの取下げの効果)
 第二百六十二条  訴訟は、訴えの取下げがあった部分については、初めから係属していなかったものとみなす。
 
2  本案について終局判決があった後に訴えを取り下げた者は、同一の訴えを提起することができない。

 とあり、
 民亊訴訟法第262条2項によれば、終局判決があった後に訴えを取り下げた者は、同一の訴えを提起することができませんが、終局判決の前に訴えを取り下げた場合は、その後、支払いがなされなかったときなら、再び訴えを提起することはできますから、誤りです。



答え:2

《タグ》民亊訴訟法。 区分所有法。 少額訴訟制度。 催告と時効の中断。 滞納管理費等の支払い義務者。 裁判の取り下げ。

 ここも、それほど難しくはない。

問11

[問 11] マンションの管理費の滞納に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。  

1 管理費を滞納している区分所有者が、当該住戸を売却した場合、買主は、売買契約の締結時に滞納の事実を知らなかったとしても、当該滞納管理費の支払義務を負う。

〇 正しい。(適切である)  特定承継人には、善意(知らなかった)も入る。
 平成27年 マンション管理士試験 「問26」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問11」 、  平成21年 マンション管理士試験 「問3」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問11」 、平成20年 マンション管理士試験 「問2」 、平成20年 管理業務主任者試験 「問10」 、平成19年 管理業務主任者試験 「問10」 、 平成18年 マンション管理士試験 「問14」 、 平成17年 マンション管理士試験 「問15」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成15年 管理業務主任者試験 「問9」 、 平成14年 マンション管理士試験 「問31」 、 平成13年 管理業務主任者試験 「問9」

 マンションでの滞納については、前の「問10」 も参考に。
 どうして、この設問では法が絡むのに「最も適切なものはどれか」として「正しいものはどれか」になっていないのだろうか?


 マンションにおいて、管理費や修繕積立金は、マンションの管理・運営の根幹をなしていますから、その滞納があるとマンションの管理・運営ができなくなります。
 そこで、区分所有法の立法者は、区分所有法第8条
 「(特定承継人の責任)
 第八条  
前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。

 としています。
 前条1項とは、区分所有法第7条
 「(先取特権)
 第七条  区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。」

 です。

 通常の民法での債権関係なら、滞納した管理費等の支払い義務は、滞納した人(前の区分所有者)にあり後にその専有部分を購入した人(買主)にはありませんが、区分所有法では、売買で買った人(特定承継人)にも、前の区分所有者が滞納した管理費等が請求できるとしています。この特定承継人に対する請求は、その特定承継人が滞納の事実を知らなく(善意)ても可能ですから、正しい(適切です)。

 


2 規約に管理費に関する遅延損害金を定める場合は、民法所定の法定利率である年5%を超えて定めることはできない。

X 適切でない。(誤っている)  約定利率があれば、法定利率である年5%を超えてもいい。
 平成28年 マンション管理士試験 「問33」 選択肢4 、 平成27年 マンション管理士試験 「問10」 、平成26年 管理業務主任者試験 「問10」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問13」 、  平成21年 マンション管理士試験 「問12」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問6」 、 平成19年 管理業務主任者試験 「問10」 、 平成16年 管理業務主任者試験 「問11」 、 平成15年 管理業務主任者試験 「問9」 

 決められた管理費等を期日までに納めないと、これは金銭債務の不履行となり、その場合の損害賠償の額は、民法第419条
 「(金銭債務の特則)
 第四百十九条  
金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
 2  前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。
 3  第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。 」

 とあり、
 民法第419条1項ただしがきによれば、「約定利率が法定利率((年 5%) を超えるときは、約定利率による」とありますから、規約に管理費に関する遅延損害金を定める場合は、民法所定の法定利率である年5%を超えて定めることもできますから、適切ではありません。


 法定利率:民法第404条 5%/年
 「(法定利率)
 第四百四条  利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年五分とする。」


 参考:平成28年3月改正の標準管理規約60条、コメント④
 「④ 滞納管理費等に係る遅延損害金の利率の水準については、管理費等は、マンションの日々の維持管理のために必要不可欠なものであり、その滞納はマンションの資産価値や居住環境に影響し得ること、管理組合による滞納管理費等の回収は、専門的な知識・ノウハウを有し大数の法則が働く金融機関等の事業者による債権回収とは違い、
手間や時間コストなどの回収コストが膨大となり得ること等から、利息制限法や消費者契約法等における遅延損害金利率よりも高く設定することも考えられる。」


3 管理費を滞納している区分所有者が、裁判所に民事再生手続開始の申立てをした場合、当該区分所有者はその申立てにより滞納管理費の支払義務を免れる。  

X 適切でない。(誤っている) 申立てでは、棄却もあるし、民事再生手続では、債務が減額されるだけで、支払の義務はある。
  平成22年 管理業務主任者試験 「問10」 選択肢ウ
 
 まず、民事再生手続とは、民事再生法にあり、経済的に窮境にある債務者について、その債権者の多数の同意を得、かつ、裁判所の認可を受けた再生計画を定めること等により、当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し、もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的としています。
 民事再生法は破産法の1種で、再生の見込みがあれば、完全に経済状態が破綻する前に再建が図れます。
 再生手続を利用できる債務者の範囲については法律上の制限はなく、個人(外国人も)、株式会社その他の法人などが利用できます。
 設問の区分所有者ような、個人であれば、
 ①
小規模個人再生として、再生債権の総額が5,000万円を超えなければ、民亊再生法第221条以下により、また、
 ②給与所得者等なら、民事再生法第239条以下により、小規模個人再生の特則として、
給与所得者等再生の手続きができます。

 しかし、小規模個人再生も給与所得者等再生も手続きでの審査要件があり、裁判所から民事再生手続開始の申立てが棄却されることもあります
 また、小規模個人再生も給与所得者等再生においても、認められる再生計画は、
債務の減額と原則3年での分割払いであり、滞納管理費の支払義務そのものは免れられません。ただし、再生手続開始決定後の利息や遅延損害金は免除されることになります。

 参考:民事再生法第221条
 
「(手続開始の要件等)
 第二百二十一条  
個人である債務者のうち、将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり、かつ、再生債権の総額(住宅資金貸付債権の額、別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び再生手続開始前の罰金等の額を除く。)が五千万円を超えないものは、この節に規定する特則の適用を受ける再生手続(以下「小規模個人再生」という。)を行うことを求めることができる
 2  小規模個人再生を行うことを求める旨の申述は、再生手続開始の申立ての際(債権者が再生手続開始の申立てをした場合にあっては、再生手続開始の決定があるまで)にしなければならない。
 3  前項の申述をするには、次に掲げる事項を記載した書面(以下「債権者一覧表」という。)を提出しなければならない。
     一  再生債権者の氏名又は名称並びに各再生債権の額及び原因
     二  別除権者については、その別除権の目的である財産及び別除権の行使によって弁済を受けることができないと見込まれる再生債権の額(以下「担保不足見込額」という。)
     三  住宅資金貸付債権については、その旨
     四  住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思があるときは、その旨
     五  その他最高裁判所規則で定める事項
 4  再生債務者は、債権者一覧表に各再生債権についての再生債権の額及び担保不足見込額を記載するに当たっては、当該額の全部又は一部につき異議を述べることがある旨をも記載することができる。
 5  第一項に規定する再生債権の総額の算定及び債権者一覧表への再生債権の額の記載に関しては、第八十七条第一項第一号から第三号までに掲げる再生債権は、当該各号に掲げる債権の区分に従い、それぞれ当該各号に定める金額の債権として取り扱うものとする。
 6  再生債務者は、第二項の申述をするときは、当該申述が第一項又は第三項に規定する要件に該当しないことが明らかになった場合においても再生手続の開始を求める意思があるか否かを明らかにしなければならない。ただし、債権者が再生手続開始の申立てをした場合については、この限りでない。
 7  裁判所は、第二項の申述が前項本文に規定する要件に該当しないことが明らかであると認めるときは、再生手続開始の決定前に限り、再生事件を通常の再生手続により行う旨の決定をする。ただし、再生債務者が前項本文の規定により再生手続の開始を求める意思がない旨を明らかにしていたときは、
裁判所は、再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。

 
 そこで、管理費を滞納している区分所有者が、裁判所に民事再生手続開始の”申立てをした場合”であっても、その申立てだけでは、当然には、滞納管理費の支払義務を免れませんから、誤りです。


4 管理費を滞納している区分所有者が、当該住戸を贈与した場合、受贈者が滞納管理費の支払義務を負い、当該区分所有者はその義務を免れる。

X 適切でない。(誤っている) 贈与でも、受贈者と元の区分所有者は、滞納管理費の支払い義務がある。

 選択肢1で引用しました、区分所有法第8条
 「
(特定承継人の責任)
 第八条  
前条第一項に規定する債権は、債務者たる区分所有者の特定承継人に対しても行うことができる。」

 の特定承継人に、贈与関係は入るかということですが、
 特定承継人とは... 他人の権利義務を個別的に取得することを特定承継といい、承継する者を特定承継人といいます。
 売買、交換、贈与などによる普通の権利の承継は、みな特定承継で、売買契約の譲受人(買主)などが特定承継人の典型例です。
 また、抵当権の実行により競売物件を競落して所有権を取得した競落人(買受人)も、特定承継人に該当します。


 

 そこで、管理費を滞納している区分所有者が、当該住戸を贈与した場合、受贈者(もらった人)も滞納管理費の支払義務を負い、当該区分所有者(贈与者)も滞納管理費の支払義務を負いますから、当該区分所有者はその義務を免れるは、誤りです。


答え:1

《タグ》区分所有法。民事再生法。滞納管理費等。特定承継人の範囲。

 ここは、すぐに、選択肢1は選べるが、解説では、民事再生法まで調べたので、時間がかかった。

問12

[問 12] 建物の建替えに係る経費及び修繕積立金に関する次の記述のうち、マンション標準管理規約及びマンション標準管理規約コメント(単棟型)(平成16年1月23日国総動第232号、国住マ第37号。国土交通省総合政策局長・同住宅局長通知。以下、「標準管理規約」という。)によれば、最も不適切なものはどれか。  

1 建替え決議の前に、建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査に要する経費に充当するために修繕積立金を取り崩すには、総会の決議を経なければならない。  

〇 適切である。
 平成27年管理業務主任者試験 「問13」 、 平成26年管理業務主任者試験 「問12」 、平成20年管理業務主任者試験 「問12」

 まず、修繕積立金とは、何かですが、マンション標準管理規約(単棟型)(以下、当解説では、「標準管理規約」といいます)28条によれば、
 「(修繕積立金)
 第28条 
管理組合は、各区分所有者が納入する修繕積立金を積み立てるものとし、積み立てた修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる
     一  一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
     二  不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
     三  敷地及び共用部分等の変更
     
四  建物の建替え及びマンション敷地売却(以下「建替え等」という。)に係る合意形成に必要となる事項の調査
     五  その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理
 2  前項にかかわらず、区分所有法第62条第1項の建替え決議(以下「建替え決議」という。)又は建替えに関する区分所有者全員の合意の後であっても、マンションの建替え等の円滑化に関する法律(
平成14年法律第 78号。以下「円滑化法」という。)第9条のマンション建替組合の設立の認可又は円滑化法第45条のマンション建替事業の認可までの間において、建物の建替えに係る計画又は設計等に必要がある場合には、その経費に充当するため、管理組合は、修繕積立金から管理組合の消滅時に建替え不参加者に帰属する修繕積立金相当額を除いた金額を限度として、修繕積立金を取り崩すことができる。
 
3  第1項にかかわらず、円滑化法第108条第1項のマンション敷地売却決議(以下「マンション敷地売却決議」という。)の後であっても、円滑化法第120条のマンション敷地売却組合の設立の認可までの間において、マンション敷地売却に係る計画等に必要がある場合には、その経費に充当するため、管理組合は、修繕積立金から管理組合の消滅時にマンション敷地売却不参加者に帰属する修繕積立金相当額を除いた金額を限度として、修繕積立金を取り崩すことができる。
 4 管理組合は、第1項各号の経費に充てるため借入れをしたときは、修繕積立金をもってその償還に充てることができる。
 5  修繕積立金については、管理費とは区分して経理しなければならない。」
 とあり、
 建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査に要する経費なら、標準管理規約28条1項4号に該当しますから、修繕積立金から取り崩せます。

 
 そこで、修繕積立金からの取り崩しは、標準管理規約48条
 「(議決事項)
 第48条 
次の各号に掲げる事項については、総会の決議を経なければならない
     一  収支決算及び事業報告
     二  収支予算及び事業計画
     三  管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
     四  規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止
     五  長期修繕計画の作成又は変更
     
六  第28条第1項に定める特別の管理の実施並びにそれに充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し
     七  第28条第2項
及び第3項に定める建替えに係る計画又は設計等の経費のための修繕積立金の取崩し
     八  修繕積立金の保管及び運用方法
     九  第21条第2項に定める管理の実施
     十  区分所有法第57条第2項及び前条第3項第三号の訴えの提起並びにこれらの訴えを提起すべき者の選任
     十一  建物の一部が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
     十二  区分所有法第62条第1項の場合の建替え
及び円滑化法第108条第1項の場合のマンション敷地売却
     十三  役員の選任及び解任並びに役員活動費の額及び支払方法
     十四  組合管理部分に関する管理委託契約の締結
     十五  その他管理組合の業務に関する重要事項」
 とあり、
  標準管理規約28条1項4号は、標準管理規約48条6号に該当していますから、建替え決議の前に、建物の建替えに係る合意形成に必要となる事項の調査に要する経費に充当するために修繕積立金を取り崩すには、総会の決議を経なければならないは、適切です。

  注:標準管理規約は平成28年3月に改正がありました(
緑字参照)が、ここは、影響がありません。


2 分譲会社が分譲時において将来の計画修繕に要する経費に充当するため、一括して購入者より修繕積立基金を徴収している場合には、当該金銭についても修繕積立金として区分経理すべきである。

〇 適切である。

 マンションを購入する際に、分譲会社が徴収する金額に 「修繕積立基金」が入っていることに気が付いた人は少ないでしょう。
 修繕積立基金とは、毎月管理組合に管理費と共に納入する修繕積立金の金額を少なく見せかけるために、分譲会社が先にかなりの金額を、販売金額と共に徴収しているものです。
 
 修繕積立基金は、経理処理上、管理費とは別の修繕積立金勘定に、管理組合設立の当初から、計上される性格のものです。
 もしも、修繕積立基金が分譲時に徴収されているにも関わらず、修繕積立金勘定に計上されていない場合には、分譲会社が横領していますので、早急に取り戻すことが必要です。

 そこで、設問が生まれます。
 これは、標準管理規約28条関係 コメント②
 「
② 分譲会社が分譲時において将来の計画修繕に要する経費に充当していくため、一括して購入者より修繕積立基金として徴収している場合や、修繕時に、既存の修繕積立金の額が修繕費用に不足すること等から、一時負担金が区分所有者から徴収される場合があるが、これらについても修繕積立金として積み立てられ、区分経理されるべきものである。」
 とあり、
 分譲会社が分譲時において将来の計画修繕に要する経費に充当するため、一括して購入者より修繕積立基金を徴収している場合には、当該金銭についても修繕積立金として区分経理すべきであるは、適切です。


3 建替え決議の後であっても、建物の建替えに係る計画又は設計等に必要がある場合には、その経費に充当するため、総会の決議を経て修繕積立金を取り崩すことができる場合がある。

〇 適切である。
  平成24年管理業務主任者試験 「問13」

 設問は、選択肢1で引用しました、標準管理規約28条2項
 「
2  前項にかかわらず、区分所有法第62条第1項の建替え決議(以下「建替え決議」という。)又は建替えに関する区分所有者全員の合意の後であっても、マンションの建替え等の円滑化に関する法律(平成14年法律第 78号。以下「円滑化法」という。)第9条のマンション建替組合の設立の認可又は円滑化法第45条のマンション建替事業の認可までの間において、建物の建替えに係る計画又は設計等に必要がある場合には、その経費に充当するため、管理組合は、修繕積立金から管理組合の消滅時に建替え不参加者に帰属する修繕積立金相当額を除いた金額を限度として、修繕積立金を取り崩すことができる。
 とあり、
 建替え決議の後であっても、建物の建替えに係る計画又は設計等に必要がある場合には、その経費に充当するため、総会の決議を経て修繕積立金を取り崩すことができる場合があるは、適切です。
 
 注:このコメントの「建替え決議後の建替え不参加者に対する処置うんぬん」については、検討が必要だと感じた人は、建替え決議後の管理組合という団体の存続についてかなり勉強しています。



4 建替えに係る調査に必要な経費の支出は、マンションの実態にかかわらず、管理費から支出する旨を管理規約に規定することはできない。

X 適切でない。 マンションの実態に応じて、修繕積立金からも、管理費から支出する旨管理規約に規定することもできる。

 通常、建替えに係る調査に必要な経費の支出は、選択肢1で引用しました 標準管理規約28条1項4号
 「四  建物の建替え及びマンション敷地売却(以下「建替え等」という。)に係る合意形成に必要となる事項の調査」
 に該当し、修繕積立金からの取り崩しとなりますが、
 同28条関係コメント⑧
 「
⑧ 建替え等に係る調査に必要な経費の支出は、各マンションの実態に応じて、管理費から支出する旨管理規約に規定することもできる。」
 とありますから、
 建替えに係る調査に必要な経費の支出は、標準管理規約28条 コメント⑧によれば、マンションの実態にかかわらず、管理費から支出する旨を管理規約に規定することはできないは、適切ではありません。



答え:4

《タグ》標準管理規約。同コメント。 修繕積立金。 総会の決議。修繕積立基金。 建替え決議の後。

 国土交通省がマンション管理の参考版として作成しています法律ではない標準管理規約のしかも、国土交通省の役人の独自のコメントからの出題は、民法や区分所有法などとの関係法からその適切さの検討が必要で、出題としては適切ではありませんが、易しい問題です。 

問13

*当問題の解説は、高井憲彦様のご協力によるものです。高井様、ありがとうございます。


[問 13] 管理組合の会計等に関する次の記述のうち、標準管理規約の定めによれば、最も不適切なものはどれか。  

1 管理組合は、その会計処理に関する規約及び細則を変更するためには、いずれも総会の決議を経なければならない。
 
〇 適切である。 規約と細則の変更は、総会での決議がいる。
 平成27年 管理業務主任者試験 「問12」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問12」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問35」 、 平成24年 管理業務主任者試験 「問13」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問29」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問13」 など 多数あり。

 規約や細則の変更となると、標準管理規約第48条(議決事項)四号に
 「
規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止は総会の決議を経なければならない
 と規定されており設問は適切です。
 ただし、同規約第47条 (総会の会議及び議事の第3項に
 「規約の制定、変更又は廃止は組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する」
 と規定されておりますので注意ください。
 
ここは、平成28年3月の標準管理規約の改正に関係しません。

 参考:標準管理規約47条
 「(総会の会議及び議事)
 第47条  総会の会議は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。
 2  総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。
 3 
次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する
     
一  規約の制定、変更又は廃止
     二  敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの及び建築物の耐震改修の促進に関する法律第25条第2項に基づく認定を受けた建物の耐震改修を除く。)
     三  区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴えの提起
     四  建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
     五  その他総会において本項の方法により決議することとした事項
 4  建替え決議は、第2項にかかわらず、組合員総数の5分の4以上及び議決権総数の5分の4以上で行う。
 5  マンション敷地売却決議は、第2項にかかわらず、組合員総数、議決権総数及び敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上で行う。」


 標準管理規約48条、
 「(議決事項) 第48条 次の各号に掲げる事項については、総会の決議を経なければならない。      
     一 収支決算及び事業報告   
     二 収支予算及び事業計画
     三 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
    
 四 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止
     五 長期修繕計画の作成又は変更
     六 第28条第1項に定める特別の管理の実施並びにそれに充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し
     七 第28条第2項及び第3項に定める建替え等に係る計画又は設計等の経費のための修繕積立金の取崩し
     八 修繕積立金の保管及び運用方法
     九 第21条第2項に定める管理の実施
     十 区分所有法第57条第2項及び前条第3項第三号の訴えの提起並びにこれらの訴えを提起すべき者の選任
     十一 建物の一部が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
     十二 区分所有法第62条第1項の場合の建替え及び円滑化法第108条第1項の場合のマンション敷地売却
     十三 役員の選任及び解任並びに役員活動費の額及び支払方法
     十四 組合管理部分に関する管理委託契約の締結
     十五 その他管理組合の業務に関する重要事項」



2 管理組合は、収支決算の結果、管理費に余剰が生じた場合、その余剰を翌年度における管理費に充当する。

〇 適切である。 基本的に、管理費勘定と修繕積立金勘定は別にする。
 平成24年 管理業務主任者試験 「問13」 、 平成21年 管理業務主任者試験 「問36」

 管理費の余剰となると、標準管理規約第61条第1項(管理費等の過不足)に
 「
収支決算の結果、管理費に余剰を生じた場合には、その余剰は翌年度における管理費に充当する
 と規定されており設問は適切です。
 
ここは、平成28年3月の標準管理規約の改正に関係しません。

 参考:標準管理規約第61条
 「(管理費等の過不足)
 第61条 
収支決算の結果、管理費に余剰を生じた場合には、その余剰は翌年度における管理費に充当する。
 2  管理費等に不足を生じた場合には、管理組合は組合員に対して第25条第2項に定める管理費等の負担割合により、その都度必要な金額の負担を求めることができる。」


3 管理組合は、計画修繕に要する経費に充てるために借入れをしたときは、管理費をもってその償還に充てるものとする。  

X 不適切である(正解)。 借り入れは修繕積立金から償還すること。 管理費からではない。
 平成23年 管理業務主任者試験 「問12」 

 まず、計画修繕に要する経費は、標準管理規約第28条(修繕積立金)第1項に
 「一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕」
  とあり、修繕積立金勘定から取り崩し、不足する場合は、借り入れもできます。
 それが、同規約第28条
第4項に
 「
管理組合は、第1項各号の経費に充てるため借入れをしたときは、修繕積立金をもってその償還に充てることができる
 と規定されており設問は不適切です。

 以下に標準管理規約第28条(修繕積立金)全文を掲載します。
緑色の箇所は、平成28年3月の改正で追加された事項ですが上記設問には関係しません。

 「第28条  管理組合は、各区分所有者が納入する修繕積立金を積み立てるものとし、積み立てた修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる。
   
一  一定年数の経過ごとに計画的に行う修繕
   二  不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕
   三  敷地及び共用部分等の変更
   四  建物の建替え
及びマンション敷地売却(以下「建替え等」という。)に係る合意形成に必要となる事項の調査
   五  その他敷地及び共用部分等の管理に関し、区分所有者全体の利益のために特別に必要となる管理
 2  前項にかかわらず、区分所有法第62条第1項の建替え決議(以下「建替え決議」という。)又は建替えに関する区分所有者全員の合意の後であっても、マンションの建替え等の円滑化等に関する法律(
平成14年法律第 78号。以下本項において「円滑化法」という。)第9条のマンション建替組合(以下「建替組合」という。)の設立の認可又は円滑化法第45条のマンション建替事業の認可までの間において、建物の建替えに係る計画又は設計等に必要がある場合には、その経費に充当するため、管理組合は、修繕積立金から管理組合の消滅時に建替え不参加者に帰属する修繕積立金相当額を除いた金額を限度として、修繕積立金を取り崩すことができる。
 
3  第1項にかかわらず、円滑化法第108条第1項のマンション敷地売却決議(以下「マンション敷地売却決議」という。)の後であっても、円滑化法第120条のマンション敷地売却組合の設立の認可までの間において、マンション敷地売却に係る計画等に必要がある場合には、その経費に充当するため、管理組合は、修繕積立金から管理組合の消滅時にマンション敷地売却不参加者に帰属する修繕積立金相当額を除いた金額を限度として、修繕積立金を取り崩すことができる。
 
4  管理組合は、第1項各号の経費に充てるため借入れをしたときは、修繕積立金をもってその償還に充てることができる。
 5  修繕積立金については、管理費とは区分して経理しなければならない。

 (注:緑字は平成28年3月の標準管理規約の改正箇所です。)

 参考:標準管理規約63条
 「(借入れ)
 第63条  管理組合は、第28条第1項に定める業務を行うため必要な範囲内において、借入れをすることができる。」



4 管理組合は、不測の事故により必要となる修繕に要する経費に充てるため、修繕積立金を取り崩すことができる。

〇 適切である。
 平成24年 管理業務主任者試験 「問30」 

 選択肢3解説で引用した標準管理規約第28条(修繕積立金)の第1項二号で
 「
不測の事故その他特別の事由により必要となる修繕は修繕積立金を取り崩すことができる
 と規定されており設問は適切です。
 
ここは、平成28年3月の標準管理規約の改正に関係しません。


答え:3

《タグ》標準管理規約。 会計処理の規約や細則の変更。管理費の余剰。 借入の償還。 修繕積立金の取り崩し。

 ここも易しい。

問14

[問 14] 管理組合の活動における以下の取引に関して、平成28年3月分の仕訳として最も適切なものは次のうちどれか。ただし、この管理組合の会計年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までとし、期中の取引において、企業会計原則に基づき厳格な発生主義によって経理しているものとする。  

 
 

*私の過去問題の解説を読んでいる人には、度々の重なる説明で恐縮ですが、マンションの管理組合では、明確な会計基準がありません。
 でも、営利を目的とした企業活動ではないことは明らかです。そこで、非営利団体と似ている公益法人の会計方法を基にしています。
 その最大の特徴が、「
発生主義」の採用です。
 
 
★マンションの会計処理で発生主義ということの重要性は、
   まず、発生主義とは、全ての費用・収益は、その支出・収入に基づいて計上し、その発生した期間
     *収入については、請求権が生じた月、
     *支出については、支出が労役などの提供又は工事などである場合は、その労役などの提供又は工事等が完了した月、物品の購入なら、その物品が納入された月に正しく割り当てるように処理すること です。

 この発生主義により、管理費や修繕積立金は該当月に徴収することになっているなら、未収入金(滞納)があっても、全額計上されている。
 この辺りが、企業の会計処理を知っている人には、なかなか理解できない個所です。
 
 また、「資金の範囲は、現金預金、未収金、未払金、前受金及び前払金とする」も、重要な前提です。資金の範囲同士の取引は、「収支計算書」には、反映されません。
 
収支決算書に反映されるのは、収入の発生と費用の発生です。

 会計処理は、以下の原則があります。

仕訳での記帳の仕方    
 勘定科目など 借方   貸方
 資産勘定     現金預金 増加  減少 
未収金 
前払金
損害保険の積立部分
 負債勘定  未払金  減少 増加
前受金など
 費用の発生   管理業務費 支払有     
修繕費
保険料 など
 収入の発生   管理費収入   収入有  
修繕積立金収入
駐車場使用料など

  管理業務主任者試験においては、例年2問、仕訳の出題があります。2問を落とすと全体の得点に大きく響きますよ!
 平成27年 管理業務主任者試験 「問14」 、 同「問15」 など。

 
  では、取引をみていきましょう。

 *仕訳は、平成28年3月です。
 ①3月の入金総額は、1,000,000円である
  これにより、普通(現金)預金(資産勘定)の増加として、 借方に 1,000,000円が記帳されます。

借方  貸方 
普通預金 1,000,000  

 ・内訳は
  ②3月分の駐車場使用料 が 100,000円
   これは、当月の収入の発生として、 駐車場使用料収入として、貸方へ 100,000円が記帳されます。 
   

借方  貸方 
普通預金 1,000,000 駐車場使用収入 100,000

  ③4月分の駐車場使用料 が 850,000円
   これは、4月分で 3月の仕訳では、まだ発生していないため、翌年度の収入の 前受金(負債勘定)の増加として、 貸方へ 850,000円を記帳します。
借方  貸方 
普通預金 1,000,000 駐車場使用収入 100,000
前受金       850,000
   なお、この前受金は、4月には、駐車場使用料収入として、逆仕訳されます。

  ④新規契約分敷金 が 50,000円
   ここで、敷金の性格はどうかをきいています。
  通常、敷金は、駐車場契約の終了時に契約者へ返還される性格だと判断して、ここでは、預り金(負債勘定)の増加とし、貸方へ 50,000円を記帳します。
 
借方  貸方 
普通預金 1,000,000 駐車場使用収入 100,000
前受金       850,000
預り金        50,000

  ⑤ここで、注意が必要なのが、取引の文中にある、「なお、3月分駐車場使用料のうち 20,000円については、3月末現在、入金されていない」です。
 出題傾向として、必ず、うっかりしやすい本文にこのような記述を潜ませますので、注意してください。

  3月分駐車場使用料のうち 20,000円については、3月末現在、入金されていないなら、これも
発生主義の原則により、駐車場使用収入 として、貸方に記帳します
 しかし、相手科目は、まだ、収入がないので、未収入金 とします。
借方  貸方 
普通預金 1,000,000
未収入金    20,000
駐車場使用収入 100,000
前受金       850,000
預り金        50,000
駐車場使用収入  20,000

 最後に、貸方の駐車場使用収入 の 100,000円 と 20,000円 合計 120,000円 をまとめると、

借方  貸方 
普通預金 1,000,000
未収入金    20,000
駐車場使用収入 120,000
前受金       850,000
預り金        50,000

 となり、答えは 1  です。

答え:1

《タグ》会計。仕訳。発生主義。借方・貸方の仕方。勘定科目。普通預金。未収入金 。駐車場使用収入。前受金。預り金。

  この仕訳もかなり詳細に説明しましたが、本文中にも注意すれば、易しい出題です。

問15

[問 15] 管理組合の活動における以下の取引に関して、平成28年3月分の仕訳として最も適切なものは次のうちどれか。ただし、この管理組合の会計年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までとし、期中の取引において、企業会計原則に基づき厳格な発生主義によって経理しているものとする。  

 
 

 *発生主義の重要性や勘定科目については、前問 「問14」 を参照。
  平成27年 管理業務主任者試験 「問14」 、 平成26年 管理業務主任者試験 「問14」 など。


  「企業会計原則」なんて余分なものが設問にあります。
  これは、選択肢を見ていると、「塗装工事」の勘定科目を「建物」にするのか「修繕費」にするのか、決めてくれとのことです。
 そこで、企業会計原則で使用される勘定科目
 ①
建物...有形固定資産:建物の他、構築物、機械装置、船舶、車両運搬具、工具器具備品、土地、建設仮勘定等も入る。
         建物とは、店舗、事務所、工場、倉庫など、事業の用に供するために所有する建物及び暖房、照明、通風等の附属設備をいう。減価償却資産になる。
 ②
修繕費...業務用の固定資産の維持、修理、改良等のために支出した金額のうち、当該固定資産の通常の維持管理のため、または、災害等によりき損した固定資産につき、その原状を回復するために要したと認められる部分の金額を管理するための費用科目をいう。
 ですから、
 設問の場合の「共用部分の外階段の塗装の塗り直し」なら、勘定科目としては、「建物」よりも「修繕費」が妥当でしょう。


 それでは、平成28年3月での取引を見て行きましょう。
 ①平成28年2月に、3月の完成工事 1,500,000円 に対して、着手金 500,000円を支払った。
  これは、2月度処理ですから、2月には、前払金 で 500,000円 を処理をしたことが分かります。
 この仕訳は、通常、銀行預金からの支払いと考えられますから、以下のような仕訳でしょう。

 借方 貸方 
 前払金 500,000 普通預金 500,000


 ②平成28年3月に、1,500,000円の工事が完成したが、着手金を除いた、残金 1,000,000円は、3月には支払ずに、翌月:4月に払う約束である。
 
これが、発生主義に関係します
 3月に完成すれば、3月で全額を計上します。
  ア.完成しましたので、上で説明した 修繕費 (費用の発生) として 借方に 1,500,000円を記帳します。
   

借方  貸方 
修繕費 1,5000、000  

 イ.しかし、支払は、3月には、していないにより、 貸方に 未払金 で記帳しますが、金額については、もう既に2月に、着手金として、前払金で 500,000円を処理したことを思い出してください。

 そこで、 工事代金合計 1,500、000円 - 500,000円 =1,000,000円 が 未払金の金額です。2月に処理をした、前払金はここで減少させるために逆の仕訳になります。

 よって、最終仕訳は、

借方  貸方 
修繕費 1,5000、000 未払金 1,000、000
前払金   500,000
 
となり、答えは、4 です。



答え:4 

《タグ》会計。仕訳。勘定科目の選択。建物。修繕費。未払金。前払金。

  ここも、勘定科目の選択で建物か修繕費かが少し悩むが、難しくはない。 

問16

[問 16] 管理組合の活動に係る税務の取扱いに関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。  

1 法人税法上、人格のない社団である管理組合においても、組合員から徴収する専用使用料収入については課税対象である収入となる。  

X 適切でない。 組合員から徴収する場合なら、収益事業に該当せず法人税の課税対象とならない。
  平成27年 マンション管理士 「問35」 、平成26年 管理業務主任者試験 「問16」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問34」 、平成23年 管理業務主任者試験 「問16」 、 平成22年 管理業務主任者試験 「問16」 、 平成19年 管理業務主任者試験 「問16」 など。 税は管理業務主任者試験で出題が多い個所です。

  設問の解説の前に、法人化されていないマンションの管理組合という区分所有者の団体の扱い方は、民法上でも明確でないために、過去の判例(最高裁:昭和39年10月15日)によって、「法人格のない社団・財団」とか「権利能力のない社団・財団」と呼ばれることになります。
 この詳細は、「マンション管理士 香川事務所」が無料で提供しています、「超解説 区分所有法」の第3条にありますから、参考にしてください。


 そこで、税法においても、法人でない管理組合から徴収できるのかどうかで、その扱いを明確に決めておく必要があります。
 まず、法人税法では、法人税法第2条8号
 「(定義)
 第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
  
八  人格のない社団等 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものをいう
 (以下、略)」
 とあり、
 法人化されていないマンションの管理組合は、「人格のない社団等」として扱われます。

 すると、納税義務者として法人税を納めるのは、法人税法第4条1項
 「第四条  内国法人は、この法律により、法人税を納める義務がある。
ただし、公益法人等又は人格のない社団等については、収益事業を行う場合、法人課税信託の引受けを行う場合又は第八十四条第一項(退職年金等積立金の額の計算)に規定する退職年金業務等を行う場合に限る 
 (以下、略)」
 とあり、
 人格のない社団等に該当する法人化されていないマンションの管理組合は、収益事業を行う場合なら、法人税を納める義務がありますが、その他なら法人税を納める義務はないとなります。
 では、次に収益事業とは何かの判断が難しく、これは、もう税務署に聞かないと分かりません。


  これは、駐車場の使用料についてですが、平成24年2月3日付で国土交通省住宅局長が国税庁に聞いたところ、回答がありました。この質問内容は複雑ですが、
   マンションの管理組合で、駐車場使用料と収益事業の関係は、、
  
①組合員のみが駐車場使用料を納める場合...収益事業に該当しない。
  ②駐車場の使用において、組合員と外部使用者を区別しないで募集する...全体が収益事業の駐車場業に該当する。
  ③駐車場の使用において、まず組合員の使用を優先して募集し、空きがでれば、外部使用者にも募集をかける...組合員の使用については、管理業務の一環としての「共済的事業」であり、収益事業たる「駐車場業」には該当しない。しかし、外部使用者部分については、収益事業の駐車場業に該当する。
 と認定されました。

 そこで、法人税法上、人格のない社団である管理組合においても、組合員から徴収する専用使用料収入については課税対象である収入となりませんから、課税対象である収入となるは、適切ではありません。
 注:どうしてこの設問では、駐車場使用料としないで、
専用使用料としてあるのか疑念はあるが、どこかに、国税庁の判断基準が発表されているのかも? NETで調べたが、分からない。

 2017年 2月21日追記:どこかに、根拠があったと思って調べると、やはり駐車場使用料はあるが、専用使用料と限っていない。
 国家試験での出題なら、幅の広い「専用使用料」ではなく、ここは、明確な国税庁の回答としてある、「駐車場使用料」に限定すべきだ!

 他の参考判断:国税庁のホームページより。

  団地管理組合等が行う駐車場の収益事業判定
 これによりますと、
  【照会要旨】
  団地管理組合又は団地管理組合法人(以下「管理組合」といいます。)が、その業務の一環として、その区分所有者(入居者)を対象として行っている
駐車場業は、収益事業に該当するでしょうか
  (事業の概要)
  駐車場業は、その区分所有者を対象として行われています。
  駐車場の敷地は、その区分所有者が所有しています。
  その収入は、通常の管理費等と区分することなく、一体として運用されています。
  駐車料金は、付近の駐車場と比較し低額です。

  【回答要旨】
  照会の事実関係を前提とする限り、
収益事業に該当しません
 (理由)
  管理組合という地域自治会が、その自治会の構成員を対象として行う共済的な事業であること。
  駐車料金は、区分所有者が所有している共有物たる駐車場の敷地を特別に利用したことによる「管理費の割増金」と考えられること。
  その収入は、区分所有者に分配されることなく、管理組合において運営費又は修繕積立金の一部に充当されていること。
  (注)
   団地管理組合…………人格のない社団等
   団地管理組合法人……法人税法第2条第6号の公益法人等とみなされます。ただし、寄附金、法人税率については、普通法人と同様に取り扱われます(建物の区分所有等に関する法律第47条第13項)。」
 とあり、
 法人税法上、人格のない社団である管理組合においても、組合員から徴収する専用使用料収入については課税対象である収入とはなりませんから、適切ではありません。



2 消費税法上、管理組合が共用部分である駐車場を有償で使用させる場合、使用者が組合員であっても使用料は課税の対象となる。  

X 適切でない。 マンションの駐車場使用料は、組合員が使用するなら、消費税は不課税となる。
 平成26年 管理業務主任者試験 「問16」 、 平成23年管理業務主任者試験 「問16」、 平成22年管理業務主任者試験 「問16」平成18年管理業務主任者試験 「問16」平成16年管理業務主任者試験 「問16」。

  選択肢1の法人税と異なり今度は、消費税での設問です。
 この回答は、国税庁のQ&Aより、(消費税法第2条第1項第8号)
 「マンション管理組合は、その居住者である区分所有者を構成員とする組合であり、その組合員との間で行う取引は営業に該当しません。
 したがって、マンション管理組合が収受する金銭に対する消費税の課税関係は次のとおりとなります。
  
イ 駐車場の貸付け………組合員である区分所有者に対する貸付けに係る対価は不課税となりますが、組合員以外の者に対する貸付けに係る対価は消費税の課税対象となります
  ロ 管理費等の収受………不課税となります。」
 とあり、
 消費税法上、管理組合が共用部分である駐車場を有償で使用させる場合、使用者が組合員であれば、使用料は課税の対象となりませんから、適切ではありません。



3 消費税法上、管理組合が金融機関から借入れをした場合に生じる借入金の利子は課税取引であり消費税の課税対象となる。  

X 適切でない。 消費税法上、預貯金や貸付金の利子は、非課税である。
 
 多くの項目で消費税が課税されるかどうかは、判断が難しいので、具体的には、税務署の判断基準があります。
  https://www.nta.go.jp/taxanswer/shohi/6221.htm

 それによると、
 「消費税は、財貨やサービスの流れを通して消費に負担を求める税です。したがって、消費税の課税の対象になじまない資金の流れに関する取引などは非課税とされています。
 
具体的には、次のものを対価とする金融取引などが非課税とされています
  
1 預貯金や貸付金の利子 とあり、
 利息には、消費税は課税されませんから、誤りです。

  なお、弁済金の元金部分は、不課税取引に該当して消費税は課税されません。


4 消費税法上、基準期間における課税売上高が1,000万円以下となる場合であっても、特定期間の課税売上高によっては、消費税の納税義務が免除されない場合がある。  

〇 適切である。 特定期間の制度が改正で追加された。
  まず、課税売上高とは、輸出などの免税取引を含め、返品、値引き、割戻しをした対価の返還等の金額を差し引いた額(税抜き)です。
 そして、消費税法の基準期間は、消費税法第2条1項14号
 「十四  
基準期間 個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人についてはその事業年度の前々事業年度(当該前々事業年度が一年未満である法人については、その事業年度開始の日の二年前の日の前日から同日以後一年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間)をいう。
 とあり、
 基準期間は、原則、個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人の場合は原則として前々事業年度のことをいいます。
 そして、課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税の義務が免除されます。
 消費税法第9条
 「(小規模事業者に係る納税義務の免除)
 第九条  事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における
課税売上高が千万円以下である者については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない
 (以下、略)」
 とあり、
 原則:2年前の課税売上額が、1,000万円を超えると、2年後には、納税の義務があるという、通常なら、税は翌年が対象なのに、他と比べて、おかしな制度です。

 

 

  この消費税法では原則:前々年が基準期間となっているため、資本金1,000万円未満の新設法人では基準期間の課税売上額がないことを悪用して、新設法人の設立事業年度と翌事業年度に売り上げを計上して消費税を逃れ、設立3年目には廃業するという事態が多く発生しました。

 そこで、平成23年6月の消費税の改正で、特定期間という制度を新しく設けました。
 それが、消費税法第9条の2
 「(前年又は前事業年度等における課税売上高による納税義務の免除の特例)
 第九条の二  個人事業者のその年又は法人のその事業年度の基準期間における課税売上高が千万円以下である場合において、当該個人事業者又は法人(前条第四項の規定による届出書の提出により消費税を納める義務が免除されないものを除く。)のうち、当該
個人事業者のその年又は法人のその事業年度に係る特定期間における課税売上高が千万円を超えるときは、当該個人事業者のその年又は法人のその事業年度における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、同条第一項本文の規定は、適用しない
 (以下、略)」
 とあり、
 特定期間は、具体的には、個人事業者の場合は、その年の前年の1月1日から6月30日までの期間をいい、法人の場合は、原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6ヶ月の期間をいいます。消費税法第9条の2 4項)
 改正前の2年後から消費税を納める期間を早めています。


 

  特定期間の計算例
  ・個人事業者の特定期間は、その年の前年1月1日から6月30日までの期間ですので、例えば、事業を行っていない個人の方が3月1日に開業した場合には、3月1日から6月30日までの期間の課税売上高(又は給与等支払額)で判定することとなります。
 
 また、その前年7月1日から12月31日までの間に開業した場合には、特定期間の課税売上高(又は給与等支払額)がないため判定不要です。

  そこで、平成25年1月1日以後に開始する年又は事業年度については、その課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても特定期間における課税売上高が1,000万円を超えた場合、当課税期間から課税事業者となりますから、適切です。

  香川注:平成23年6月で消費税が改正された訳ですが、これも判定や前々年との関係において制度が分かり難くて不評です。


答え:4

《タグ》税。 法人税。消費税。 管理組合での課税・非課税。 基準期間と課税期間。特定期間の創設。

 特定期間の図を作成するために、時間がかかった。過去問題をやっていれば、選択肢4は知らなくても、選択肢1~3は不適切と分かる。

*ある受験生の感想:選択肢4に関しては「場合がある」とかいう言い回しは大抵その可能性が1%でもある時を指してる気がして選択肢4にした。

問17

[問 17] 建ぺい率、容積率などに関する次の記述のうち、建築基準法によれば、誤っているものはどれか。  

1 建ぺい率とは、建築物の建築面積(同一敷地内に2以上の建築物がある場合においては、その建築面積の合計)の敷地面積に対する割合をいう。  

〇 正しい。
 建ぺい率や容積率など建築基準法の基本からの出題は珍しい。

 建ぺい率とは、建築基準法第53条
 「(建ぺい率)
 第五十三条  
建築物の建築面積(同一敷地内に二以上の建築物がある場合においては、その建築面積の合計)の敷地面積に対する割合(以下「建ぺい率」という。)は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める数値を超えてはならない。
 (以下、略)」
 とあり、
 建築物の建築面積(同一敷地内に2以上の建築物がある場合においては、その建築面積の合計)の敷地面積に対する割合ですから、正しい。


 建築面積や敷地面積が分からない人は、下の選択肢2を参考にしてください。
 



2 建築面積の算定には、地階の面積はすべて含まれない。

X 誤っている。 地階なら、地盤面上1m以下の部分は除かれるが、全てではない。
 平成26年 管理業務主任者試験 「問22」 

  建築面積の算定は、建築基準法施行令第2条1項ニ号
 「(面積、高さ等の算定方法)
 第二条  次の各号に掲げる面積、高さ及び階数の算定方法は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
 二  
建築面積 建築物(地階で地盤面上一メートル以下にある部分を除く。以下この号において同じ。)の外壁又はこれに代わる柱の中心線(軒、ひさし、はね出し縁その他これらに類するもので当該中心線から水平距離一メートル以上突き出たものがある場合においては、その端から水平距離一メートル後退した線)で囲まれた部分の水平投影面積による。ただし、国土交通大臣が高い開放性を有すると認めて指定する構造の建築物又はその部分については、その端から水平距離一メートル以内の部分の水平投影面積は、当該建築物の建築面積に算入しない。
 (以下、略)」
 とあり、
 建築面積とは、建築物の外壁又は柱の中心線(ただし、軒やひさしなどが1m以上突き出ているとその先端から1m後退した線で囲まれた部分の水平投影面積のことですが、地階があれば、地盤面上1m以下にある部分は、建築面積から除かれますから、建築面積の算定には、地階の面積は”すべて”含まれないは、誤りです。


参考:建築基準法第52条3項
  床面積の合計の1/3を限度として、地下室の床面積が容積率に不算入となっています。


 


3 容積率とは、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合をいう。

〇 正しい。

 容積率とは、建築基準法第52条
 
「(容積率)
 第五十二条  
建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合(以下「容積率」という。)は、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める数値以下でなければならない。ただし、当該建築物が第五号に掲げる建築物である場合において、第三項の規定により建築物の延べ面積の算定に当たりその床面積が当該建築物の延べ面積に算入されない部分を有するときは、当該部分の床面積を含む当該建築物の容積率は、当該建築物がある第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域又は準工業地域に関する都市計画において定められた第二号に定める数値の一・五倍以下でなければならない。

 (以下、略)」
 とあり、
 建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合ですから、正しい。


 

  *計算例
 容積率=建築物の延べ面積/敷地面積 x 100 (%)  (これが規定の限度を超えてはいけない)
 
 2階建の上の例ですと、(1階の床面積 + 2階の床面積)=A  これを、「延べ面積」 といいます。
   そして、延べ面積=A を 敷地の面積で 割(÷)り、 その結果に 100 をかけて パーセント (%) となります。 

★延べ面積とは...1階、2階など、各階の床面積を合計したものです。
             各階の床面積とは外壁または柱の中心線で囲まれた面積のことです。(建築基準法施行令2条4号)



4 容積率の上限値には、前面道路の幅員による制限が加わる場合がある。

〇 正しい。
 
 容積率の上限値なら、建築基準法第52条2項
 「2 前項に定めるもののほか、
前面道路(前面道路が二以上あるときは、その幅員の最大のもの。以下この項及び第十二項において同じ。)の幅員が十二メートル未満である建築物の容積率は、当該前面道路の幅員のメートルの数値に、次の各号に掲げる区分に従い、当該各号に定める数値を乗じたもの以下でなければならない。
     一 第一種低層住居専用地域又は第二種低層住居専用地域内の建築物
       十分の四
     二 第一種中高層住居専用地域若しくは第二種中高層住居専用地域内の建築物又は第一種住居地域、第二種住居地域若しくは準住居地域内の建築物(高層住居誘導地区内の建築物であつて、その住宅の用途に供する部分の床面積の合計がその延べ面積の三分の二以上であるもの(当該高層住居誘導地区に関する都市計画において建築物の敷地面積の最低限度が定められたときは、その敷地面積が当該最低限度以上のものに限る。第五十六条第一項第二号ハ及び別表第三の四の項において同じ。)を除く。)
       十分の四(特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内の建築物にあつては、十分の六)
     三 その他の建築物
      十分の六(特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内の建築物にあつては、十分の四又は十分の八のうち特定行政庁が都道府県都市計画審議会の議を経て定めるもの)

(以下、略)」
 とあり、
 前面道路の幅員が12m未満だと、前面道路の幅から計算された容積率と、都市計画において定められられた容積率の数値を比較して、低い方がその建築物の容積率となりますから、容積率の上限値には、前面道路の幅員による制限が加わる場合があり、正しい。



 *容積率の計算例
 (1)各部分の容積率制限
  1.近隣商業地域部分(S1)
  指定容積率400%>前面道路による容積率制限
  6mX6/10=36/10→S1の容積率制限36/10

  2.第二種住居地域部分(S2)
  指定容積率200%<前面道路による容積率制限
  6m×4/10=24/10→S2の容積率制限20/10
 
 (2)許容限度延べ面積 
   =S1(600㎡)×36/10+S2(400㎡)x20/10=2,960㎡
 (3)当該敷地の容積率制限値
   =2,960㎡/1,000㎡×lOO%=296%


答え:2

《タグ》建築基準法。建ぺい率。容積率。地階の例外。
   ここは、選択肢2は、過去問題をやっていれば、すぐ分かる。

  建築基準法については、「マンション管理士 香川事務所」が無料で提供しています別途 「要約 建築基準法」 もありますから、利用してください。

問18

[問 18] マンションの廊下及び屋内階段に関する次の記述のうち、建築基準法によれば、正しいものはどれか。なお、避難上の安全の検証は行わず、国土交通大臣が定めた構造方法については考慮しないものとする。

1 その階の住戸面積の合計が100㎡を超える場合の廊下の幅は、廊下の両側に居室がある場合には、1.5m以上、その他の場合には1.0m以上としなければならない。  

X 誤っている。 共同住宅で住戸若しくは住室の床面積の合計が100㎡を超える階の廊下の幅は、①両側に居室があれば、1.6m以上、②その他は、1.2m以上。

 こんな、細かな点まではなかなか探しきれませんが、廊下の幅は、建築基準法施行令第119条
 「
(廊下の幅)
 第百十九条  廊下の幅は、それぞれ次の表に掲げる数値以上としなければならない。

 

廊下の配置 両側に居室がある廊下における場合(単位 メートル) その他の廊下における場合(単位 メートル)
廊下の用途
小学校、中学校、義務教育学校、高等学校又は中等教育学校における児童用又は生徒用のもの 二・三 一・八
病院における患者用のもの、共同住宅の住戸若しくは住室の床面積の合計が百平方メートルを超える階における共用のもの又は三室以下の専用のものを除き居室の床面積の合計が二百平方メートル(地階にあつては、百平方メートル)を超える階におけるもの 一・六 一・二

 とあり、
 共同住宅で住戸若しくは住室の床面積の合計が100㎡を超える階の廊下の幅は、
両側に居室があれば、1.6m以上その他は、1.2m以上ですから、廊下の両側に居室がある場合には、1.5m以上、その他の場合には1.0m以上としなければならないは、誤りです。

 


2 直上階の居室の床面積の合計が200㎡を超える地上階に設ける階段のけあげは24cm以下、踏面は20cm以上でなければならない。  

X 誤りである。 けあげは、20cm以下、踏面(ふみづら)は、24cm以上。
  平成15年 管理業務主任者試験 「問16」 

  こんなものまで出題される。
 たいたい、踏面をちゃんと読めれば、私の過去問題をやったことが分かります。


 ★踏面とは、階段で足をのせる踏み板のこと。段板も同じ意味。段鼻から上の段鼻まで(垂直線を降ろしたところまで)を、踏み面寸法という。住宅の階段の寸法は、建築基準法施行令により、最低、15cm以上にできると定められているが、20cm前後がのりやすい。

 
 
 蹴上(けあげ)や踏面の規定は、建築基準法施行令第23条
 
「(階段及びその踊場の幅並びに階段の蹴上げ及び踏面の寸法)
 第二十三条  階段及びその踊場の幅並びに階段の
蹴上げ及び踏面の寸法は、次の表によらなければならない。ただし、屋外階段の幅は、第百二十条又は第百二十一条の規定による直通階段にあつては九十センチメートル以上、その他のものにあつては六十センチメートル以上、住宅の階段(共同住宅の共用の階段を除く。)の蹴上げは二十三センチメートル以下、踏面は十五センチメートル以上とすることができる。

 

階段の種別 階段及びその踊場の幅
(単位 センチメートル)
蹴上げの寸法
(単位 センチメートル)
踏面の寸法
(単位 センチメートル)
(一) 小学校(義務教育学校の前期課程を含む。)における児童用のもの 一四〇以上 一六以下 二六以上
(二) 中学校(義務教育学校の後期課程を含む。)、高等学校若しくは中等教育学校における生徒用のもの又は物品販売業(物品加工修理業を含む。第百三十条の五の三を除き、以下同じ。)を営む店舗で床面積の合計が千五百平方メートルを超えるもの、劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂若しくは集会場における客用のもの 一四〇以上 一八以下 二六以上
(三) 直上階の居室の床面積の合計が二百平方メートルを超える地上階又は居室の床面積の合計が百平方メートルを超える地階若しくは地下工作物内におけるもの 一二〇以上 二〇以下 二四以上
(四) (一)から(三)までに掲げる階段以外のもの 七五以上 二二以下 二一以上

 とあり、
 直上階の居室の床面積の合計が200㎡を超える地上階又は居室の床面積の合計が100㎡を超える地階若しくは地下工作物内におけるものなら、
蹴上げの寸法は、”20cm”以下で、踏面の寸法は、”24cm”以上ですから、けあげは”24cm”以下、踏面は”20cm”以上でなければならないは、誤りです。


3 回り階段の踏面の寸法は、階段の幅の中央において測るものとする。  

X 誤っている。 狭い方の端から30cmで測る。

 平成15年 管理業務主任者試験 「問16」 

 過去問題をやっていたからわかりますが、回り階段の踏面の寸法の測り方は、建築基準法施行令 23 条2項、
 
「2  回り階段の部分における踏面の寸法は、踏面の狭い方の端から三十センチメートルの位置において測るものとする。 」
 とあり、
 回り階段の部分における踏面の寸法は、踏面の狭い方の端から30cmの位置において測りますから、階段の幅の中央において測るものとするは、誤りです。

 
 


4 階段の幅は、階段に設ける手すりの幅が10cm以下である場合、手すりの幅がないものとみなして算定する。  

〇 正しい。
 平成15年 管理業務主任者試験 「問16」

  階段の幅は、建築基準法施行令 23 条3項、
 
「3  階段及びその踊場に手すり及び階段の昇降を安全に行うための設備でその高さが五十センチメートル以下のもの(以下この項において「手すり等」という。)が設けられた場合における第一項の階段及びその踊場の幅は、手すり等の幅が十センチメートルを限度として、ないものとみなして算定する。」
 とあり、
 階段の幅は、階段に設ける手すりの幅が10cm以下である場合、手すりの幅がないものとみなして算定するは、正しい。

 逆に、10cm以上突出する場合は、10cmを超える寸法分を階段の幅から差し引く必要があります。


 


答え:4


《タグ》建築基準法施行令。 廊下の幅。階段のけあげ、踏面。回り階段。階段の幅と手すり。

 こんな細かな箇所からの、これまた細かな数字からの出題は、実に不適切です。
 平成15年の問題をやっていたから、どうにか分かった。知らないと、難しい。

問19

[問 19] エレベーターの安全装置に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。  

1 戸開走行保護装置とは、駆動装置又は制御器に故障が生じ、かご及び昇降路のすべての出入口の戸が閉じる前にかごが昇降したときなどに、自動的にかごを制止する装置をいう。  

〇 適切である。
 平成28年 マンション管理士試験 「問45」 、 平成27年 管理業務主任者試験 「問24」 

 戸開(とびらき?)走行保護装置の読み方が分からないが。
 まず、平成18年の東京の港区の公共賃貸住宅で利用者がエレベーターと天井に挟まった事故が発端となり、平成21年9月28日付でに建築基準法が改正・施行され、戸開走行保護装置(UCMP)構造と選択肢2にあります地震時等管制運転装置の導入が新設エレベーターに義務付けられました。


 建築基準法施行令の一部を改正する政令 (平成20年政令第290号)

 基本的には、建築基準法施行令第129条の10
 「(エレベーターの安全装置)
 第百二十九条の十  
エレベーターには、制動装置を設けなければならない
 2  前項のエレベーターの制動装置の構造は、次に掲げる基準に適合するものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。
     一  かごが昇降路の頂部又は底部に衝突するおそれがある場合に、自動的かつ段階的に作動し、これにより、かごに生ずる垂直方向の加速度が九・八メートル毎秒毎秒を、水平方向の加速度が五・〇メートル毎秒毎秒を超えることなく安全にかごを制止させることができるものであること。
     二  保守点検をかごの上に人が乗り行うエレベーターにあつては、点検を行う者が昇降路の頂部とかごの間に挟まれることのないよう自動的にかごを制止させることができるものであること。
 
3  エレベーターには、前項に定める制動装置のほか、次に掲げる安全装置を設けなければならない
     
一  次に掲げる場合に自動的にかごを制止する装置
       イ 駆動装置又は制御器に故障が生じ、かごの停止位置が著しく移動した場合
       ロ 駆動装置又は制御器に故障が生じ、かご及び昇降路のすべての出入口の戸が閉じる前にかごが昇降した場合

     二  地震その他の衝撃により生じた国土交通大臣が定める加速度を検知し、自動的に、かごを昇降路の出入口の戸の位置に停止させ、かつ、当該かごの出入口の戸及び昇降路の出入口の戸を開き、又はかご内の人がこれらの戸を開くことができることとする装置
     三  停電等の非常の場合においてかご内からかご外に連絡することができる装置
     四  乗用エレベーター又は寝台用エレベーターにあつては、次に掲げる安全装置
       イ 積載荷重に一・一を乗じて得た数値を超えた荷重が作用した場合において警報を発し、かつ、出入口の戸の閉鎖を自動的に制止する装置
       ロ 停電の場合においても、床面で一ルクス以上の照度を確保することができる照明装置
 4  前項第一号及び第二号に掲げる装置の構造は、それぞれ、その機能を確保することができるものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。

 とあり、
 建築基準法施行令第129条の10 3項1号 イ の
 「一  次に掲げる場合に自動的にかごを制止する装置
       イ 駆動装置又は制御器に故障が生じ、かごの停止位置が著しく移動した場合
       ロ 駆動装置又は制御器に故障が生じ、かご及び昇降路のすべての出入口の戸が閉じる前にかごが昇降した場合」
 を国土交通省では、
  政令改正の概要として、
 「(1)
戸開走行保護装置の設置義務付け(令第129条の10第3項第1号関係)
   エレベーターの駆動装置や制御器に故障が生じ、かご及び昇降路のすべての出入口の戸が閉じる前にかごが昇降したときなどに自動的にかごを制止する安全装置の設置を義務付ける。」
 とあり、
 戸開走行保護装置とは、駆動装置又は制御器に故障が生じ、かご及び昇降路のすべての出入口の戸が閉じる前にかごが昇降したときなどに、自動的にかごを制止する装置をいうは、適切です。


 具体的には、
 ①2個の独立したブレーキ、
 ②かごの移動を感知する装置(特定距離感知装置等)、
 ③通常の制御回路とは独立した制御回路 の
 3要件をすべて 満たした装置のことです。

  「戸開走行保護装置」は、万が一、エレベーターのドアが開いた状態で動き出した場合に、すばやくそれを検知してエレベーターのかごのドアが開いた状態で動かないようにするための安全装置です。かごと床との間が1m以上あいているうちにエレベーターを制止させ「挟まれ」を防止し、また、上昇時には、敷居とエプロンの間が11cm以下の範囲でエレベーターを制止させ「落下」を防止します。



2 地震時等管制運転装置とは、地震等の加速度を検知し、自動的に、かごを昇降路の避難階の出入口の戸の位置に停止させ、かごと昇降路の各出入口の戸を開くことなどができる装置をいう。  

X 適切でない。 地震時には、かごを昇降路の”避難階”の出入口の戸の位置に停止でなく、かごを”最寄階”の昇降路の出入口の戸の位置に停止させる。

 まったく、分かり難い設問です。
 地震時等管制運転装置は、選択肢1で引用しました、建築基準法施行令第129条の10 3項2号
 「
二  地震その他の衝撃により生じた国土交通大臣が定める加速度を検知し、自動的に、かごを昇降路の出入口の戸の位置に停止させ、かつ、当該かごの出入口の戸及び昇降路の出入口の戸を開き、又はかご内の人がこれらの戸を開くことができることとする装置 」
 とあり、
 関係の建築基準法施行令の一部を改正する政令 (平成20年政令第290号)
 「(2)地震時管制運転装置の設置義務付け(令第129条の10第3項第2号関係)
  エレベーターについて、地震等の加速度を検知して、自動的にかごを昇降路の出入口の戸の位置に停止させ、かつ、当該かごの出入口の戸及び昇降路の出入口の戸を開くことなどができることとする安全装置の設置を義務付ける。」
 とあり、
 よく読まないと分からないのですが、設問は「かごを昇降路の”
避難階”の出入口の戸の位置に停止させ」とありますが、政令では「かごを昇降路の出入口の戸の位置に停止させ」とあり、これは、「最寄階」に停止させることです。「避難階(通常1階)の」ではありませんから、適切ではありません。

 また、地震時等管制運転装置については、平成20年12月26日国土交通省告示第1536号 もあります。


3 火災時管制運転装置とは、防災センター等の火災管制スイッチの操作や自動火災報知器からの信号により、エレベーターを一斉に避難階に呼び戻す装置をいう。  

〇 適切である。 エレベーターは、火災時には、避難階に停まり、地震時には、最寄階に停まる。

 根拠の政令などは、探したのですが、分かりませんでした。
 しかし、火災管制運転装置は防災設備との連動によって火災発生時に自動的にエレベーターのかごを避難階(1階)へ直通運転させて、ドアを開き乗客の避難を行うものは、適切です。


 なお、31mを超える建物には、非常用エレベーターの設置が義務付けられています。非常用エレベーターは非常時の避難に使うものでなく、消防隊の消火活動のためのものです。平常時には乗荷用として使用して差し支えありませんが、災害の起こった時には消防隊が専用に使用します。そのため、停電時にも使用できるだけの予備電源が設けられ、さらに使用中のエレベーターであっても避難階(通常1階)へ呼び戻すことができ、かごを開いたまま昇降させる装置もついています。
 ・火災が発生した場合
 「火災時管制運転機能」が付いていれば、火災時には火災管制スイッチの操作や自動火災報知器等の防災設備と連動して二次災害を防ぐための運転に切り替わります。この場合、降りたい階の操作ボタンを押してもキャンセルされてしまいます。そして、
最寄り階ではなく避難階(通常は1階)へ自動的に直行運転で着床させて、乗客の迅速な避難を促すと共に閉じ込められるのを防ぎます。乗客が降りた後には扉が閉まって、エレベーターを使えなくします。


4 建築基準法によれば、戸開走行保護装置及び地震時等管制運転装置の設置義務がある。

〇 適切である。

 選択肢1で引用しました、平成21年9月28日施行の建築基準法施行令129条の10 で戸開走行保護装置及び地震時等管制運転装置の設置が義務付けられましたから、適切です。 


答え:2

《タグ》建築基準法施行令。 エレベーター。戸開走行保護装置。地震時等管制運転装置。火災時管制運転装置。エレベーターは、火災時には、避難階に停まり、地震時には、最寄階に停まる

  選択肢2が何となく不適切と感じたが、完全に適切でないと分かった人は、すごい。難しい。

問20

[問 20] マンションの屋上、バルコニー等の防水に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

1 メンブレン防水とは、被膜を形成して防水層を作る工法の総称で、アスファルト防水を含めない。  

X 適切でない。 メンブレン防水には、アスファルト防水も含まれる。

 メンブレン(Membrane)とは、「膜」「薄い皮膚」という意味で、メンブレン防水とは、薄い膜状の防水層で屋根や屋上などの広い面積を全面的に覆う防水工法の”総称”です
 屋根、屋上、ひさし、開放廊下、浴室の床などで使われ水が漏れないようにします。
 その種類としては、
 ①アスファルト防水...現場でアスファルトを加熱・溶融し、溶けたアスファルトを下地に流しながらルーフィング類を張り付ける工法。
                通常この工程を2~4回程度繰り返します。国内では明治時代から施工されています。
 ②シート防水...加硫ゴムシートや塩化ビニル系シートを下地に張り付ける工法。
            張り付け方には、接着剤を使用する方法、機械的に下地に固定する方法等がある。
 ③塗膜防水...ウレタン等の液状の樹脂を下地に塗布し、硬化させて防水層とする工法。
           通常、不織布などを補強材として併用する。
 などがありますから、
 メンブレン防水とは、被膜を形成して防水層を作る工法の総称は適切ですが、アスファルト防水も含まれますから、アスファルト防水を含めないは、適切ではありません。



2 アスファルト防水以外のシート防水、塗膜防水などに用いられる防水材の日本工業規格(JIS)のすべてが、1990年代になってから制定されたものである。  

X 適切ではない。 防水材の日本工業規格は、昭和の時代からある。

 防水材と日本工業規格(JIS)との歴史は、
 例えば、シート防水は、昭和27年(1952年)に難燃性の塩化ビニル樹脂系シートが国鉄車輌屋根材として採用されたのを始めとし、昭和45年(1970年)には、JIS A 6009「基布その他を積層した合成高分子ルーフィング」が制定され、昭和52年(1977年)にもJIS規格がなされています。
 また、塗膜防水についても、塗膜防水工事に使用するウレタンゴム系・アクリルゴム系・クロロプレンゴム系・アクリル樹脂系およびゴムアスファルト系の防水用塗膜材料の品質が,JIS A 6021- 1976(屋根防水用塗膜材)と制定されていますように、シート防水と同様に昭和時代からの歴史がありますから、アスファルト防水以外のシート防水、塗膜防水などに用いられる防水材の日本工業規格(JIS)のすべてが、1990年代(平成)になってから制定されたものであるは、適切ではありません。



3 防水施工に関わる者には、国による技能検定制度があり、技能検定に合格した者は、技能士と称することができる。  

〇 適切である。 厚生労働省主催の国家資格:「防水施工技能士」がある。

 防水施工で、国による技能検定制度があるとは知らなかったが、厚生労働省主催の技能検定制度の1資格として、「1級、及び 2級の防水施工技能士」があります。
 防水の作業に応じて、
 1.アスファルト防水工事作業
 2.ウレタンゴム系塗膜防水工事作業
 3.アクリルゴム系塗膜防水工事作業
 4.合成ゴム系シート防水工事作業
 5.塩化ビニル系シート防水工事作業
 6.セメント系防水工事作業
 7.シーリング防水工事作業
 8.改質アスファルトシートトーチ工法防水工事作業
 9.FRP防水工事作業
 ごとに、共通科目と、決められた学科試験及び実技試験を受験します。
 防水施工技能士は、厚生労働省主催で、都道府県職業能力開発協会(問題作成等は中央職業能力開発協会)が実施する、防水施工に関する学科及び実技試験に合格した者ですから、適切です。



4 日本建築学会の建築工事標準仕様書・同解説(JASS 8)に示されている仕様であれば、シート防水層、塗膜防水層は、仕上げの種類にかかわらず通常の歩行に耐えうる。  

X 適切でない。 防水の仕上げの仕様により、通常の歩行に耐えないものもある。

 平成21年 管理業務主任者試験 「問18」 

 まず、JASS 8 とは、一般社団法人「日本建築学会」が作成する、建築の質的向上と合理化を図るための適切な施工標準を作ることを目的として体系づけられた建築の仕様書です。
 「JASS」の後に番号付(ナンバリング)がなされ、工事の種類ごとに仕様書があります。
 例えば、JASS 1は一般共通事項、JASS 2は仮設工事などです。
 そして、
防水工事はJASS 8 になっています。
 正式な名称としては、「建築工事標準仕様書・同解説 JASS 8 防水工事」となります。
多くの民間建築物がこの仕様にそった工事を行っています。

 そこで、防水の仕上げの種類となりますと
 ①シート防水のゴム系...柔らかくて
非歩行用。厚塗り塗装材を保護層とすれば、軽歩行も可。
 ②シート防水の塩ビ系...表面に強度があり、軽歩行用
 ③塗膜防水...硬く、断熱効果もあり、軽歩行用
 ですから、シート防水のゴム系のように仕様によっては、非歩行であったり、軽歩行程度であり、多くは、通常の歩行に耐えられないものもありますから、シート防水層、塗膜防水層は、仕上げの種類にかかわらず通常の歩行に耐えうるは、適切ではありません。



答え:3

《タグ》設備。防水。メンブレン防水。アスファルト防水。シート防水。塗膜防水。防水施工技能士。歩行。

 防水施工技能士とは、まったく、知らない資格で、調べるのに、時間がかかった。実に細かな出題で、解説者泣かせだ。


 選択肢3か4かで迷った人は、多いようだ。

問21

[問 21] 次の記述のうち、水道法及び「水質基準に関する省令」によれば、誤っているものはどれか。  

1 「給水装置」とは、需要者に水を供給するために水道事業者の施設した配水管から分岐して設けられた給水管及びこれに直結する給水用具をいう。  

〇 正しい。
 出題傾向が変わったのか、今まで、管理業務主任者試験では、水道法からの出題はなかったのに。

 水道法での給水装置の定義は、水道法第3条9号
 「(用語の定義)
 第三条
 9 
この法律において「給水装置」とは、需要者に水を供給するために水道事業者の施設した配水管から分岐して設けられた給水管及びこれに直結する給水用具をいう。
 とあり、
 正しい。



2 「水質基準に関する省令」では、水道水の水質基準として、26の検査項目が示されている。  

X 誤っている。 検査項目は、全部で51ある。26ではない。
  平成28年 マンション管理士試験 「問22」

 水質基準に関する省令 (平成十五年五月三十日厚生労働省令第百一号)
   最終改正:平成二七年三月二日厚生労働省令第二九号
 は、度々改正されていて、平成27年の改正によると、
 「水道法 (昭和三十二年法律第百七十七号)第四条第二項 の規定に基づき、
水質基準に関する省令を次のように定める。
 水道により供給される水は、次の表の上欄に掲げる事項につき厚生労働大臣が定める方法によって行う検査において、同表の下欄に掲げる基準に適合するものでなければならない。
 1.一般細菌
 2.大腸菌
  ...(途中略)
 50.色度
 51.濁度」
 とあり、
 全部で、健康関連 31項目、+ 生活上支障関連 20項目 計
 51 の検査項目がありますので、水道水の水質基準として、26の検査項目が示されているは、誤りです。


3 「水質基準に関する省令」では、塩素は検査項目に含まれていない。  

〇 正しい。 塩素は、検査項目に含まれていない。
 
 選択肢2の「水質基準に関する省令 (平成十五年五月三十日厚生労働省令第百一号)
   最終改正:平成二七年三月二日厚生労働省令第二九号
 によりますと、
 検査項目の51項目中、塩素は含まれていませんから、正しい。(どうして、塩素が入っていないのか?)



4 「水質基準に関する省令」では、一般細菌の基準値は、「1ミリリットルの検水で形成される集落数が100以下」である。

〇 正しい。

 選択肢2の「水質基準に関する省令 (平成十五年五月三十日厚生労働省令第百一号)
   最終改正:平成二七年三月二日厚生労働省令第二九号
 によりますと、
 「1.一般細菌...一mlの検水で形成される集落数が一〇〇以下であること。」
 とあり、
 正しい。

 なお、一般細菌というのは特定の細菌を指すのではなく、いわゆる雑菌をいいます。
 検査する水を培地に1 mL加えて人の体温に近い36℃付近で培養し、培地に生える細菌の個数が100以下であることを基準値としています。これにより水の汚染状況が分かります。
 一般細菌は、河川や土壌、食品や空気中、そして私たちの体にも広く存在しています。病原性がないものがほとんどで、汚物や異物が混入した水などでは明らかにその数が増えます。病原菌は通常、他の細菌に比較して、塩素に対する抵抗力が弱いので、一般細菌を汚染の指標としています。地下水の中の一般細菌数はあまり変化しないので、急に増えた時は、異物の混入や貯水槽なら清掃が悪いなどで汚染されたおそれがあるといえます。



答え:2

《タグ》水道法。 水質基準に関する省令。 検査項目。 

  管理業務主任者試験での、水道法からの出題は珍しい。

 選択肢2の検査項目51を知っている人は、少ない。 難問。


  平成28年 マンション管理士試験 「問22」 との関係や、本問の選択肢3の「塩素が含まれていない理由」が分かる人は、 「マンション管理士 香川事務所」 まで連絡ください。

問22

[問 22] 共同住宅の消防用設備等の設置の特例を認める「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。  

1 特定共同住宅等は、二方向避難型、開放型、二方向避難・開放型、その他の4つの構造類型に分けられる。

〇 正しい。

  前問 「問21」の「水質基準に関する省令」 といい、この 「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」も知らない。

  そこで、調べました。平成16年まで、消防用設備等に係る技術上の基準は、材料・寸法などを仕様書的に規定しているものが多かったため、十分な性能を有する場合であっても、新たな技術を受け入れにくいという面がありました。そこで消防庁では、消防防災分野における技術開発を促進するとともに、一層効果的な防火安全対策を構築するために、平成15年6月に消防法を、平成16年2月に消防法施行令を改正し、消防用設備等に係る技術上の基準に性能規定を導入しています。
 消防用設備等の技術基準に性能規定を導入するに当たっての基本的な考え方は、従来の技術基準に基づき設置されている消防用設備等と同等以上の性能を有するかどうかについて判断し、同等以上の性能を有していると確認できた設備については、それらの消防用設備等に代えて、その設置を認めることとしたものです。
 だそうで、
 具体的には、消防法施行令第29条の4 
 「
必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する基準
 第二十九条の四  法第十七条第一項 の関係者は、この節の第二款から前款までの規定により設置し、及び維持しなければならない同項 に規定する消防用設備等(以下この条において「
通常用いられる消防用設備等」という。)に代えて、総務省令で定めるところにより消防長又は消防署長が、その防火安全性能(火災の拡大を初期に抑制する性能、火災時に安全に避難することを支援する性能又は消防隊による活動を支援する性能をいう。以下この条において同じ。)が当該通常用いられる消防用設備等の防火安全性能と同等以上であると認める消防の用に供する設備、消防用水又は消火活動上必要な施設(以下この条、第三十四条第七号及び第三十六条の二において「必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等」という。)を用いることができる
 2  前項の場合においては、同項の関係者は、必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等について、通常用いられる消防用設備等と同等以上の防火安全性能を有するように設置し、及び維持しなければならない。
 3  通常用いられる消防用設備等(それに代えて必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等が用いられるものに限る。)については、この節の第二款から前款までの規定は、適用しない
。」
 とあり、
 消防法施行令第29条の4 1項により、「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」が、平成17年3月25日に公布されました。


特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令
(平成十七年三月二十五日総務省令第四十号) 最終改正:平成二七年二月二七日総務省令第一〇号
  
 概要は、以下のとおりです。

 

 明細は、消防法施行令 (昭和三十六年政令第三十七号)第二十九条の四第一項 の規定に基づき、特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令を次のように定める。  「(趣旨)
 第一条  この省令は、消防法施行令 (昭和三十六年政令第三十七号。以下「令」という。)第二十九条の四第一項 の規定に基づき、
特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等(令第二十九条の四第一項 に規定するものをいう。以下同じ。)に関し必要な事項を定めるものとする
 
 (用語の意義)
 第二条  この省令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
     一  
特定共同住宅等 令別表第一(五)項ロに掲げる防火対象物及び同表(十六)項イに掲げる防火対象物(同表(五)項ロ並びに(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物(同表(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物にあっては、有料老人ホーム、福祉ホーム、老人福祉法 (昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の二第六項 に規定する認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設又は障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (平成十七年法律第百二十三号)第五条第十五項 に規定する共同生活援助を行う施設に限る。以下同じ。)の用途以外の用途に供される部分が存せず、かつ、同表(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物の用途に供する各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分で独立して住居その他の用途に供されることができるものをいう。以下同じ。)の床面積がいずれも百平方メートル以下であるものに限る。)であって、火災の発生又は延焼のおそれが少ないものとして、その位置、構造及び設備について消防庁長官が定める基準に適合するものをいう。
     一の二  福祉施設等 特定共同住宅等の部分であって、令別表第一(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物の用途に供されるものをいう。
     一の三  特定福祉施設等 福祉施設等のうち、次に掲げる部分で、消防法施行規則 (昭和三十六年自治省令第六号。以下「規則」という。)第十二条の二第一項 又は第三項 に規定する構造を有するもの以外のものをいう。
       イ 令別表第一(六)項ロ(1)に掲げる防火対象物の用途に供される部分
       ロ 令別表第一(六)項ロ(5)に掲げる防火対象物の用途に供される部分(規則第十二条の三 に規定する者を主として入所させるもの以外のものにあっては、床面積が二百七十五平方メートル以上のものに限る。)
     二  住戸等 特定共同住宅等の住戸(下宿の宿泊室、寄宿舎の寝室及び各独立部分で令別表第一(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物の用途に供されるものを含む。以下同じ。)、共用室、管理人室、倉庫、機械室その他これらに類する室をいう。
     三  共用室 特定共同住宅等において、居住者が集会、談話等の用に供する室をいう。
     四  共用部分 特定共同住宅等の廊下、階段、エレベーターホール、エントランスホール、駐車場その他これらに類する特定共同住宅等の部分であって、住戸等以外の部分をいう。
     五  階段室等 避難階又は地上に通ずる直通階段の階段室(当該階段が壁、床又は防火設備(建築基準法 (昭和二十五年法律第二百一号)第二条第九号の二 ロに規定するものをいう。)等で区画されていない場合にあっては当該階段)をいう。
     六  開放型廊下 直接外気に開放され、かつ、特定共同住宅等における火災時に生ずる煙を有効に排出することができる廊下をいう。
     七  開放型階段 直接外気に開放され、かつ、特定共同住宅等における火災時に生ずる煙を有効に排出することができる階段をいう。
     
八  二方向避難型特定共同住宅等 特定共同住宅等における火災時に、すべての住戸、共用室及び管理人室から、少なくとも一以上の避難経路を利用して安全に避難できるようにするため、避難階又は地上に通ずる二以上の異なった避難経路を確保している特定共同住宅等として消防庁長官が定める構造を有するものをいう。
     
九  開放型特定共同住宅等 すべての住戸、共用室及び管理人室について、その主たる出入口が開放型廊下又は開放型階段に面していることにより、特定共同住宅等における火災時に生ずる煙を有効に排出することができる特定共同住宅等として消防庁長官が定める構造を有するものをいう。
     
十  二方向避難・開放型特定共同住宅等 特定共同住宅等における火災時に、すべての住戸、共用室及び管理人室から、少なくとも一以上の避難経路を利用して安全に避難できるようにするため、避難階又は地上に通ずる二以上の異なった避難経路を確保し、かつ、その主たる出入口が開放型廊下又は開放型階段に面していることにより、特定共同住宅等における火災時に生ずる煙を有効に排出することができる特定共同住宅等として消防庁長官が定める構造を有するものをいう。
     
十一  その他の特定共同住宅等 前三号に掲げるもの以外の特定共同住宅等をいう。
 (以下、略)」
 とあり、
  別表第1(5)項ロとは、 「寄宿舎、下宿又は共同住宅」 のことです。
  「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」2条 8号、9号、10号及び11号によると、特定共同住宅等は、二方向避難型、開放型、二方向避難・開放型、その他の4つの構造類型に分けられますから、正しい。



2 特定共同住宅等には、1階が飲食店、2階以上が住戸になっている建物は含まれない。  

〇 正しい。
 
 選択肢1で引用しました、「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」第2条1号
 「一  
特定共同住宅等 令別表第一(五)項ロ(注:寄宿舎、下宿又は共同住宅)に掲げる防火対象物及び同表(十六)項イ(注:複合用途防火対象物のうち、その一部が(一)項から(四)項まで、(五)項イ、(六)項又は(九)項イに掲げる防火対象物の用途に供されているもの)に掲げる防火対象物(同表(五)項ロ並びに(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物(同表(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物にあっては、有料老人ホーム、福祉ホーム、老人福祉法 (昭和三十八年法律第百三十三号)第五条の二第六項 に規定する認知症対応型老人共同生活援助事業を行う施設又は障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律 (平成十七年法律第百二十三号)第五条第十五項 に規定する共同生活援助を行う施設に限る。以下同じ。)の用途以外の用途に供される部分が存せず、かつ、同表(六)項ロ及びハに掲げる防火対象物の用途に供する各独立部分(構造上区分された数個の部分の各部分で独立して住居その他の用途に供されることができるものをいう。以下同じ。)の床面積がいずれも百平方メートル以下であるものに限る。)であって、火災の発生又は延焼のおそれが少ないものとして、その位置、構造及び設備について消防庁長官が定める基準に適合するものをいう。 」
 とあり、
 これだけでは、確かに分かり難いのですが、
 特定共同住宅等とは、原則;令別表第一(五)項ロ(寄宿舎、下宿又は共同住宅)に掲げる防火対象物などを指し、特定共同住宅等には、1階が飲食店、2階以上が住戸になっている建物は含まれないは、正しい。

 
 なお、こんな質問もあります。
 質問:消防法で特定共同住宅と共同住宅の違いを教えてください。
 回答:現役の消防職員です。
     特定共同住宅とは、普通の共同住宅より建物構造、二方向避難、開放性等の一定条件で規制する事により、法令設置する消防用設備を緩和するものです。
  例えば、屋内消火栓設備やスプリンクラー設備を免除したり、消火器や自動火災報知設備、スプリンクラー設備等を共同住宅専用の設備で設置できます。
 簡単に言えば、普通のマンションよりも建物を延焼し難く、避難し易い構造にして、消防用設備を免除したり、緩和したマンションの事を特定共同住宅と言います。



3 特定共同住宅等に、「通常用いる消防用設備等」に代えて設置できる「必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等」は、特定共同住宅等の構造類型、階数により決められている。

〇 正しい。

 設問は、「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」第3条にあります。
 「(必要とされる初期拡大抑制性能を有する消防の用に供する設備等に関する基準)
 第三条  特定共同住宅等(福祉施設等を除く。)において、火災の拡大を初期に抑制する性能(以下「
初期拡大抑制性能」という。)を主として有する通常用いられる消防用設備等に代えて用いることができる必要とされる初期拡大抑制性能を主として有する消防の用に供する設備等は、次の表の上欄に掲げる特定共同住宅等の種類及び同表中欄に掲げる通常用いられる消防用設備等の区分に応じ、同表下欄に掲げる必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等とする。
 
 (以下、略)」
 とあり、
 特定共同住宅等に、「通常用いる消防用設備等」に代えて設置できる「必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等」は、特定共同住宅等の構造類型、階数により決められているは、正しい。



4 特定共同住宅等における、「必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等」は、火災時に安全に避難することを支援する性能を有する消防用設備に限られている。

X 誤っている。 初期拡大抑制性能、避難安全支援性能、消防活動支援性能が入っている。
 
 用語が面倒ですが、消防用設備等に求められる性能は、
 ①火災の拡大を初期に抑制する性能である「
初期拡大抑制性能」...消火器、スプリンクラー等、
 ②火災時に安全に避難することを支援する性能である「
避難安全支援性能」...自動火災報知設備、避難器具等、
 ③消防隊による活動を支援する性能である「
消防活動支援性能」...連結送水管、消防用水等
 に分けられます。


 

  そこで、選択肢3でも引用しました、「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」第3条
 「(
必要とされる初期拡大抑制性能を有する消防の用に供する設備等に関する基準)
 第三条  特定共同住宅等(福祉施設等を除く。)において、
火災の拡大を初期に抑制する性能(以下「初期拡大抑制性能」という。)を主として有する通常用いられる消防用設備等に代えて用いることができる必要とされる初期拡大抑制性能を主として有する消防の用に供する設備等は、次の表の上欄に掲げる特定共同住宅等の種類及び同表中欄に掲げる通常用いられる消防用設備等の区分に応じ、同表下欄に掲げる必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等とする。
 (以下、略)」
 とあり、
 特定共同住宅等における、①初期拡大抑制性能、が定められており、
 同省令第4条では、
 「(
必要とされる避難安全支援性能を有する消防の用に供する設備等に関する基準
 第四条  特定共同住宅等(福祉施設等を除く。)において、
火災時に安全に避難することを支援する性能(以下「避難安全支援性能」という。)を主として有する通常用いられる消防用設備等に代えて用いることができる必要とされる避難安全支援性能を主として有する消防の用に供する設備等は、次の表の上欄に掲げる特定共同住宅等の種類及び同表中欄に掲げる通常用いられる消防用設備等の区分に応じ、同表下欄に掲げる必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等とする。
 (以下、略)」
 とあり、
 ②避難安全支援性能 が定められており、
 そして、同省令第5条では、
 「(
必要とされる消防活動支援性能を有する消防の用に供する設備等に関する基準
 第五条  特定共同住宅等(住戸、共用室及び管理人室について、その主たる出入口が階段室等に面する特定共同住宅等に限る。)において、
消防隊による活動を支援する性能(以下「消防活動支援性能」という。)を主として有する通常用いられる消防用設備等(連結送水管及び非常コンセント設備に限る。)に代えて用いることができる必要とされる消防活動支援性能を主として有する消防の用に供する設備等は、共同住宅用連結送水管及び共同住宅用非常コンセント設備とする。
  (以下、略)」
 とあり、
 ③消防活動支援性能も定められていますから、「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」第4条の火災時に安全に避難することを支援する性能(避難安全支援性能)を有する消防用設備に限られているは、誤りです。


 なお、選択肢1も参考にしてください。基本的に「代えて用いることができる」です。


答え:4 

《タグ》消防法。特定共同住宅。特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令。

 難しい。「特定共同住宅等における必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等に関する省令」なんて、まったく、知らない。解説にも約4時間もかかっている。

 この設問で、選択肢4を自信をもって選んだ受験生は、凄い!

問23

[問 23] 「建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための基本的な方針」(平成18年国土交通省告示第184号)に示された建築物の耐震診断の指針(以下、本問において「本指針」という。)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。  

1 本指針は、建築物に対するものであり、敷地に関する基準等は含まれていない。

X 誤っている。 建築物とその敷地に関する基準もある。
 平成24年 マンション管理士試験 「問42」 平成23年 管理業務主任者試験 「問21」 、平成20年 管理業務主任者試験 「問22」 

 建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための基本的な方針 は、設問のように、平成18年に、平成7年の阪神・淡路大震災、平成16年の新潟県中越地震などの地震の被害を受けて国土交通省から出されています。

 そこで、
 「建築物の耐震診断及び耐震改修の実施について技術上の指針となるべき事項
 第一 建築物の耐震診断の指針
 建築物の耐震診断は、当該建築物の構造耐力上主要な部分(建築基準法施行令(昭和二十五年政令第三百三十八号。以下「令」という。)第一条第三号に規定するものをいう。
以下同じ。)の配置、形状、寸法、接合の緊結の度、腐食、腐朽又は摩損の度、材料強度等に関する実地調査、
当該建築物の敷地の状況に関する実地調査等の結果に基づき、次の各号によりそれぞれ地震に対する安全性を評価するものとする。
 (以下、中略)

  三 建築物の敷地については、次に掲げる基準に適合すること
     イ 高さが二メートルを超える擁壁を設けた建築物の敷地にあっては、当該擁壁が次の基準に適合すること。
      ただし、当該擁壁の崩壊が、周囲の建築物に被害を与えるおそれがなく、かつ、当該擁壁が崩壊する場合においても当該敷地内の建築物の基礎が地震時に生じる力を地盤に安全に伝えることができることを確かめられる場合は、この限りでない。       
       (1) 材料の腐食、腐朽等により、構造耐力上支障となる損傷、変形等が生じていないこと。
       (2) 石造の擁壁にあっては、裏込めにコンクリートを用いること等により、石と石とを充分に結合したものであること。
       (3) 擁壁の裏面の排水をよくするために水抜穴を設け、擁壁の裏面で水抜穴の周辺に砂利等を詰めること等の措置が講じられていること。
       (4) 擁壁が垂直方向に増設されている場合にあっては、当該擁壁全体が地震時に生 じる土圧等により崩壊しないことが構造計算等により確かめられたものであること。
     ロ がけ崩れ等による被害を受けるおそれのある建築物の敷地にあっては、次のいずれかの基準に適合すること。       
       (1) イ(1)から(4)までに掲げる基準に適合する擁壁の設置その他安全上適当な措置が講じられていること。
       (2) 当該敷地内の建築物について、がけから安全上支障のない距離が確保されていること等により、被害を受けるおそれのないことが確かめられること。
     ハ 地震時に液状化するおそれのある地盤の土地である建築物の敷地にあっては、当該地盤の液状化により建築物に構造耐力上著しい支障が生じることがないよう適当な地盤の改良等が行われていること。」
 とあり、
 建築物だけでなく、建築物の敷地の擁壁や地盤の液状化などについても基準を示していますから、本指針は、建築物に対するものであり、敷地に関する基準等は含まれていないは、誤りです。



2 構造耐力上主要な部分の地震に対する安全性の評価に用いられる指標にはIsとqがあり、Isは建築物の各階の構造耐震指標をいい、qは建築物の各階の保有水平耐力に係る指標をいう。  

〇 正しい。  Isとは、建築物の各階の構造耐震指標、 qは、建築物の各階の保有水平耐力に係る指標。
 平成20年 管理業務主任者試験 「28」 、平成18年 マンション管理士試験 「40」

 構造耐力上主要な部分の地震に対する安全性の評価に用いられる指標は、以下のように示されています。


 

 
 

 そこで、Isは建築物の各階の構造耐震指標をいい、qは建築物の各階の保有水平耐力に係る指標ですから、正しい。 


3 鉄筋コンクリート造のマンションでは、構造耐力上主要な部分が地震の振動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する危険性が低いと判断されるのは、Isが0.6以上の場合で、かつ、qが1.0以上の場合である。

〇 正しい。 Is値は、0.6以上、q値は1.0以上欲しい。

 別表第六によると、
 

 とあり、
 鉄筋コンクリート造のマンションでは、構造耐力上主要な部分が地震の振動及び衝撃に対して倒壊し、又は崩壊する
危険性が低いと判断されるのは、Isが0.6以上の場合で、かつ、qが1.0以上の場合であるは、正しい。

 


4 国土交通大臣が本指針の一部又は全部と同等以上の効力を有するものと認める方法によって耐震診断を行う場合においては、当該方法によることができる。  

〇 正しい。

 建築物の耐震診断及び耐震改修の実施について技術上の指針となるべき事項
 第一 建築物の耐震診断の指針
 後半部
 「
ただし、国土交通大臣がこの指針の一部又は全部と同等以上の効力を有すると認める方法によって耐震診断を行う場合においては、当該方法によることができる。」
 とあり、
 正しい。



答え:1

《タグ》耐震診断。建築物の耐震診断及び耐震改修の促進を図るための基本的な方針。建築物と敷地。 Is値(0.6以上)とq値(1.0以上)は欲しい。

 まったく、根拠を探すのに、時間がかかる。

*ある受験生の感想:選択肢3はこのサイトの過去問解説で Isが0.6未満は危険と言ってたのを思い出して助かったがqに関しては完全に忘れていた。

  過去問題をやっていても、選択肢1は簡単には答えられない。難問だ。

問24

[問 24] 住宅の品質確保の促進等に関する法律に基づく住宅性能表示制度における新築住宅に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。  

1 住宅性能の評価結果をまとめた性能評価書には、設計図書の段階の評価結果をまとめた「設計住宅性能評価書」と、施工・完成段階の検査を経た評価結果をまとめた「建設住宅性能評価書」の2種類がある。  

〇 正しい。 性能評価書には、建物の設計段階での①「設計住宅性能評価書」 と、 建設後の②「建設住宅性能評価書」がある。
 平成28年 マンション管理士試験 「問41」 選択肢2

 住宅の品質確保の促進等に関する法律は、民法での瑕疵担保責任での例外規定の他にも、日本住宅性能表示基準も定めています。平成12年から開始しています。

 まず、日本住宅性能表示基準は、住宅の品質確保の促進等に関する法律第3条以下に規定されています。
 「(日本住宅性能表示基準)
 第三条  国土交通大臣及び内閣総理大臣は、住宅の性能に関する表示の適正化を図るため、
日本住宅性能表示基準を定めなければならない
 2  日本住宅性能表示基準は、利害関係人の意向を適切に反映するように、かつ、その適用に当たって同様な条件の下にある者に対して不公正に差別を付することがないように定め、又は変更しなければならない。
 3  国土交通大臣又は内閣総理大臣は、日本住宅性能表示基準を定め、又は変更しようとする場合において、必要があると認めるときは、当該日本住宅性能表示基準又はその変更の案について、公聴会を開いて利害関係人の意見を聴くことができる。
 4  国土交通大臣及び内閣総理大臣は、日本住宅性能表示基準を定め、又は変更しようとするときは、あらかじめ、国土交通大臣にあっては社会資本整備審議会の議決を、内閣総理大臣にあっては消費者委員会の議決を、それぞれ経なければならない。
 5  国土交通大臣及び内閣総理大臣は、日本住宅性能表示基準を定め、又は変更したときは、遅滞なく、これを告示しなければならない。

 とあります。
 そこで、これを受け、住宅流通の円滑化と合理化を図る「住宅性能表示制度」ができています。
 その制度の概要は、
  ・新築住宅と既存住宅(中古住宅)の両方に適用することができる
  ・共通基準には、構造、防火、劣化軽減、維持管理・更新への配慮、温熱環境・エネルギー消費量、空気環境、光・視環境、音環境、高齢者等への配慮、防犯 の10分野がある
  ・国に登録された第三者機関が共通の表示基準で評価して住宅性能を評価書として表示する
  ・評価書の内容は契約書に添付できる
  ・事後にトラブルが発生しても円滑で迅速な紛争処理を行える 
 です。
  なお、等級では「5など」(4や3が最高もある)が一番よくて、→ 1、又は 0 と性能が落ちます。

 住宅性能表示制度における性能表示事項(必須/選択項目の範囲)は、見直されていますので注意してください。(平成27年4月1日施行)

 
 そこで、設問に戻りますと、まず、住宅性能評価書は、住宅の品質確保の促進等に関する法律第5条
 「(住宅性能評価)
 第五条  第七条から第十条までの規定の定めるところにより国土交通大臣の登録を受けた者(以下「登録住宅性能評価機関」という。)は、申請により、住宅性能評価(設計された住宅又は建設された住宅について、日本住宅性能表示基準に従って表示すべき性能に関し、評価方法基準(第五十八条第一項の特別評価方法認定を受けた方法を用いる場合における当該方法を含む。第三十一条第一項において同じ。)に従って評価することをいう。以下同じ。)を行い、国土交通省令・内閣府令で定める事項を記載し、国土交通省令・内閣府令で定める標章を付した評価書(以下「
住宅性能評価書」という。)を交付することができる。
 2  前項の申請の手続その他住宅性能評価及び住宅性能評価書の交付に関し必要な事項は、国土交通省令・内閣府令で定める。
 3  何人も、第一項の場合を除き、住宅の性能に関する評価書、住宅の建設工事の請負契約若しくは売買契約に係る契約書又はこれらに添付する書類に、同項の標章又はこれと紛らわしい標章を付してはならない。

 とあり、
 住宅の品質確保の促進等に関する法律第5条1項によれば、設計された住宅又は建設された住宅について、日本住宅性能表示基準に適合すれば、住宅性能評価書を交付できます。
 そして、設計住宅性能評価書は、同法第6条
 「(住宅性能評価書等と契約内容)
 第六条  住宅の建設工事の請負人は、設計された住宅に係る住宅性能評価書(以下「
設計住宅性能評価書」という。)若しくはその写しを請負契約書に添付し、又は注文者に対し設計住宅性能評価書若しくはその写しを交付した場合においては、当該設計住宅性能評価書又はその写しに表示された性能を有する住宅の建設工事を行うことを契約したものとみなす。
 2  新築住宅の建設工事の完了前に当該新築住宅の売買契約を締結した売主は、設計住宅性能評価書若しくはその写しを売買契約書に添付し、又は買主に対し設計住宅性能評価書若しくはその写しを交付した場合においては、当該設計住宅性能評価書又はその写しに表示された性能を有する新築住宅を引き渡すことを契約したものとみなす。
 3  新築住宅の建設工事の完了後に当該新築住宅の売買契約を締結した売主は、建設された住宅に係る住宅性能評価書(以下「
建設住宅性能評価書」という。)若しくはその写しを売買契約書に添付し、又は買主に対し建設住宅性能評価書若しくはその写しを交付した場合においては、当該建設住宅性能評価書又はその写しに表示された性能を有する新築住宅を引き渡すことを契約したものとみなす。
 4  前三項の規定は、請負人又は売主が、請負契約書又は売買契約書において反対の意思を表示しているときは、適用しない
。」
 とあり、
 住宅の品質確保の促進等に関する法律第6条1項によりますと、住宅の建設工事の請負人から、設計された住宅に係る住宅性能評価書として「設計住宅性能評価書」があり、
 同法同条3項によれば、新築住宅の建設工事の完了後なら、建設された住宅に係る住宅性能評価書として「建設住宅性能評価書」がありますから、住宅性能の評価結果をまとめた性能評価書には、設計図書の段階の評価結果をまとめた「設計住宅性能評価書」と、施工・完成段階の検査を経た評価結果をまとめた「建設住宅性能評価書」の2種類があるは、正しい。



2 新築住宅の請負契約書や売買契約書には、住宅性能評価書やその写しを添付することが義務づけられている。  

X 誤っている。 添付は義務ではない。 添付すれば、その性能で契約したものとみなされるだけ。
 
 選択肢1で引用しました住宅の品質確保の促進等に関する法律第6条1項及び3項
 「1 (前略) 
請負契約書に添付し、又は注文者に対し設計住宅性能評価書若しくはその写しを交付した場合においては、当該設計住宅性能評価書又はその写しに表示された性能を有する住宅の建設工事を行うことを契約したものとみなす
 3 (前略) 
売買契約書に添付し、又は買主に対し建設住宅性能評価書若しくはその写しを交付した場合においては、当該建設住宅性能評価書又はその写しに表示された性能を有する新築住宅を引き渡すことを契約したものとみなす。」
 とあり、
 設計住宅性能評価書や建設住宅性能評価書(写しも可)を新築住宅の請負契約書や売買契約書に添付すれば、その内容の性能で契約したとみなされるだけで、特に、添付することが義務づけられていませんから、誤りです。



3 性能表示事項は必須と選択に区分され、そのうち「空気環境に関すること」、「光・視環境に関すること」、「高齢者等への配慮に関すること」については、選択分野に含まれる。

〇 正しい。 性能表示事項は必須と選択がある。

  
 平成27年4月1日施行で改正された、 住宅性能表示制度における性能表示事項  によれば、
 性能表示事項は、以下の10項目があり、
  1.構造の安定に関すること(必須/選択あり)
  2.火災時の安全に関すること(全部選択へ)
  3.劣化の軽減に関すること(必須のみ)
  4.維持管理・更新への配慮に関すること(多くは必須)
  5.温熱環境・エネルギー消費量に関すること(旧 温熱環境に関すること)(必須のみ)
  
6.空気環境に関すること(全部選択へ)
  
7.光・視環境に関すること(全部選択へ)
  8.音環境に関すること(選択)
  
9.高齢者等への配慮に関すること(選択)
 10.防犯に関すること(全部選択へ)
 となっています。
 そこで、設問の前半の「性能表示事項は必須と選択に区分され」は、正しい。
 後半の「そのうち「空気環境に関すること」、「光・視環境に関すること」、「高齢者等への配慮に関すること」については、選択分野に含まれるも正しいですから、選択肢3は全体として、正しい。

 


4 性能表示事項は、等級や数値などで表示され、等級では、数字が大きいものほど性能が高いことを表す。  

〇 正しい。 等級の数字が高いほど、性能がいい。
 
 性能表示事項の内、例えば、
 1 構造の 安定に 関する こと
 1-1 耐震等級(構造く 躯体の倒壊等防止 では、表示の方法は、等級(1、2又は3)による。
 となっていて、
 
等級3...極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力(建築基準法施行令第88条第3項に定 めるもの)の1.5倍の力に対して倒壊、崩壊等し ない程度
 等級2...極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震 による力(建築基準法施行令第88条第3項に定 めるもの)の
1.25倍の力に対して倒壊、崩壊等 しない程度
 
等級1...極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震 による力(建築基準法施行令第88条第3項に定 めるもの)に対して倒壊、崩壊等しない程度
 とあり、
 等級3の方が、等級1よりも性能が高く、性能表示事項は、等級や数値などで表示され、等級では、数字が大きいものほど性能が高いことを表すは、正しい。



答え:2

《タグ》住宅の品質確保の促進等に関する法律。住宅性能表示制度。 「設計住宅性能評価書」 と「建設住宅性能評価書」。性能表示事項。 等級の数字が高いほど、性能がいい。

 かなり詳細に解説したので、時間がかかった。 何となく、選択肢2 が分かれば、いいが、難しい。

問25

[問 25] 消費生活用製品安全法等に基づく長期使用製品安全点検制度に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。  

1 本制度は、消費生活用製品のうち、長期間の使用に伴い生ずる劣化により安全上支障が生じ、一般消費者の生命又は身体に対して特に重大な危害を及ぼすおそれが多いと認められる製品の適切な保守を促進するために設けられたものである。  

〇 適切である。

 長期使用製品安全点検制度 とは、新しい分野からの出題。

 まず、消費生活用製品安全法(消安法)第1条
 「(目的)
 第一条  
この法律は、消費生活用製品による一般消費者の生命又は身体に対する危害の防止を図るため、特定製品の製造及び販売を規制するとともに、特定保守製品の適切な保守を促進し、併せて製品事故に関する情報の収集及び提供等の措置を講じ、もつて一般消費者の利益を保護することを目的とする
 です。

 昭和48年からあった消費生活用製品安全法が大幅に改正された背景は、平成19年2月の小型ガス湯沸器に係る死亡事故等、製品の長期使用に伴う劣化(経年劣化)が主因となる重大な事故の発生を受けたもので、平成21年4月1日施行で、製品の経年劣化による事故を未然に防止するため、特に重大な危害を及ぼす恐れの多い以下の9品目について「
長期使用製品安全”点検”制度」を設けています。
 1.屋内式ガス瞬間湯沸器(都市ガス用)、
 2.屋内式ガス瞬間湯沸器(LP=液化石油ガス用)、
 3.石油給湯機、
 4.屋内式ガスバーナー付きふろがま(都市ガス用)、
 5.屋内式ガスバーナー付きふろがま(LP=液化石油ガス用)
 6.石油ふろがま、
 7.ビルトイン式電気食器洗機、
 8.密閉燃焼(FF)式石油温風暖房機、
 9.浴室用電気乾燥機、
 長期使用製品安全点検制度は、平成21年4月1日以降に製造または輸入し販売される「特定保守製品」の対象製品9品目に対して、製造又は輸入事業者に加えて、小売販売事業者、不動産販売事業者、建築事業者、ガス・電気・石油供給 事業者などの事業者、さらには消費者等、それぞれが適切に役割を果たして経年劣化による事故を防止するための制度です。


 また、経年劣化による重大事故発生率は高くないものの、事故件数が多い製品について、設計上の標準使用期間と経年劣化についての消費者等に注意喚起を促すために「長期使用製品安全”表示”制度」として義務化されました。
 対象電気製品は、以下の5品目です。
 1.扇風機、
 2.エアコン、
 3.換気扇、
 4.洗濯機(洗濯乾燥機を除く)、
 5.ブラウン管テレビ


 なお、対象となる消費生活用製品とは、 同法第2条1項
 「(定義)
 第二条  この法律において「
消費生活用製品」とは、主として一般消費者の生活の用に供される製品(別表に掲げるものを除く。)をいう
 とあり、
 一般消費者の生活の用に供される製品をいいますが、船舶、消火器具等、食品、毒物・劇物、自動車・原動機付自転車などの道路運送車両、高圧ガス容器、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療器具など他の法令で個別に安全規制が図られている製品については、法令で除外しているものがあります。

 この消費生活用製品安全法を受け、長期使用製品安全点検制度が設けられましたから、消費生活用製品のうち、長期間の使用に伴い生ずる劣化により安全上支障が生じ、一般消費者の生命又は身体に対して特に重大な危害を及ぼすおそれが多いと認められる製品の適切な保守を促進するために設けられたものであるは、適切です。

 「消費生活用製品安全法等に基づく長期使用製品安全点検制度及び 期使用製品安全表示制度の解説 ~ガイドライン~ 」 もある。


2 特定保守製品には、屋内式の都市ガス用及び液化石油ガス用の瞬間湯沸器及びふろがま、屋内式及び屋外式の石油ふろがま、密閉燃焼式の石油温風暖房機、ビルトイン式の電気食器洗機が含まれる。  

〇 適切である。

 特定保守製品とは、消費生活用製品安全法第2条4号
 「(定義)
  第二条
  4  この法律において「
特定保守製品」とは、消費生活用製品のうち、長期間の使用に伴い生ずる劣化(以下「経年劣化」という。)により安全上支障が生じ、一般消費者の生命又は身体に対して特に重大な危害を及ぼすおそれが多いと認められる製品であつて、使用状況等からみてその適切な保守を促進することが適当なものとして政令で定めるものをいう
 とあり、

 これを受けた政令は、消費生活用製品安全法施行令第3条
 「
特定保守製品
 第三条  法第二条第四項 の特定保守製品は、別表第三に掲げるとおりとする。

 そして、
 「別表第三 (第三条関係)
     一 ガス事業法施行令(昭和二十九年政令第六十八号)別表第一第一号に掲げる
ガス瞬間湯沸器(屋外式(屋外に設置され、風雨の影響に耐える構造を有する方式をいう。以下同じ。)のものを除く。)
     二 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行令(昭和四十三年政令第十四号)別表第一第三号に掲げる
液化石油ガス用瞬間湯沸器(屋外式のものを除く。)
     三 
石油給湯機
     四 ガス事業法施行令別表第一第三号に掲げる
ガスバーナー付ふろがま(屋外式のものを除く。)
     五 液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律施行令別表第一第五号に掲げる
液化石油ガス用バーナー付ふろがま(屋外式のものを除く。)
     六 
石油ふろがま
     七 電気用品安全法施行令(昭和三十七年政令第三百二十四号)別表第二第八号(二七)に掲げる
電気食器洗機(システムキッチン(台所流し、調理用の台、食器棚その他調理のために必要な器具又は設備が一体として製造される製品をいう。)に組み込むことができるように設計したものであつて、熱源として電気を使用するものに限る。)
     八 電気用品安全法施行令別表第二第八号(四八)に掲げる
温風暖房機(密閉燃焼式のものであつて、灯油の消費量が十二キロワット以下のものに限る。)
     九 電気用品安全法施行令別表第二第八号(六〇)に掲げる
電気乾燥機(浴室用のものであつて、電熱装置を有するものに限る。)」
 とあり、
 分かりやすくすると、選択肢1でも説明しました、特定保守製品:9品目
 1.屋内式ガス瞬間湯沸器(都市ガス用)、
 2.屋内式ガス瞬間湯沸器(LP=液化石油ガス用)、
 3.石油給湯機、
 4.屋内式ガスバーナー付きふろがま(都市ガス用)、
 5.屋内式ガスバーナー付きふろがま(LP=液化石油ガス用)
 6.石油ふろがま、
 7.ビルトイン式電気食器洗機、
 8.密閉燃焼(FF)式石油温風暖房機、
 9.浴室用電気乾燥機、
 ですから、
 特定保守製品には、屋内式の都市ガス用及び液化石油ガス用の瞬間湯沸器及びふろがま、屋内式及び屋外式の石油ふろがま(
石油ふろがまは、屋内・外を問わず)、密閉燃焼式の石油温風暖房機、ビルトイン式の電気食器洗機が含まれるは、適切です。

 対象製品を購入した際は、所有者登録を行って下さい。登録すると適切な時期にメーカーから点検通知が届きますので、点検を受けましょう。


 


3 特定保守製品には、製造年月を始期とし、経年劣化により安全上支障が生じるそおれが著しく少ないことを確認した時期を終期とした設計標準使用期間などを表示しなければならない。  

〇 適切である。
 
 まず、設計標準使用期間とは、消費生活用製品安全法第32条の3
 「(点検期間等の設定)
  第三十二条の三  特定製造事業者等は、その製造又は輸入に係る特定保守製品について、主務省令で定める基準に従つて、次の事項を定めなければならない。ただし、輸出用の特定保守製品については、この限りでない。
     一  
標準的な使用条件の下で使用した場合に安全上支障がなく使用することができる標準的な期間として設計上設定される期間(次号及び次条において「設計標準使用期間」という。
     二  設計標準使用期間の経過に伴い必要となる経年劣化による危害の発生を防止するための点検(以下この節において単に「点検」という。)を行うべき期間(以下「点検期間」という。)

 とあり、

 これを受けた主務省令は、 経済産業省関係特定保守製品に関する省令 (平成二十年三月二十八日経済産業省令第二十六号) 最終改正:平成二二年一一月一日経済産業省令第五五号
 の第5条
 「(設計標準使用期間及び点検期間の設定に関する基準)
  第五条  法第三十二条の三 の主務省令で定める基準は、次の各号に掲げる期間につき、それぞれ当該各号に定めるものとする。
     一  
設計標準使用期間 製造年月を始期とし、温度、湿度その他の使用環境、電源電圧、運転負荷、運転時間その他の使用条件及び運転回数その他の使用頻度につき標準的な数値を基礎として、加速試験、耐久試験その他の科学的試験を行った結果算出された数値(以下この項において「試験結果数値」という。)に基づき、経年劣化により安全上支障が生ずるおそれが著しく少ないことを確認し、又はその旨を判断することができなくなる時期を終期として設定するものとする。ただし、当該特定保守製品の主要部品と同様のものを使用している製品に関する科学的試験の結果算出された数値が存する場合には、当該数値及び部品の仕様又は素材その他の部品に関する資料に基づき合理的に算出された数値をもって試験結果数値に代えることができる。
     二  点検期間 設計標準使用期間の終期前六月以上一年六月以内の期間のうちいずれかの時期を始期とし、設計標準使用期間の終期後六月以上一年六月以内の期間のうちいずれかの時期を終期として設定するものとする。」
 とあり、

 消費生活用製品安全法第32条の4 
 「(製品への表示等)
 第三十二条の四  特定製造事業者等は、その製造又は輸入に係る特定保守製品を販売する時までに、主務省令で定めるところにより、当該特定保守製品に次の事項を表示しなければならない。
     一  特定製造事業者等の氏名又は名称及び住所
     二  製造年月
    
 三  設計標準使用期間
     四  点検期間の始期及び終期
     五  点検その他の保守に関する問合せを受けるための連絡先
     六  特定保守製品を特定するに足りる事項として主務省令で定める事項

  (以下、略)」
 とありますから、特定保守製品には、製造年月を始期とし、経年劣化により安全上支障が生じるそおれが著しく少ないことを確認した時期を終期とした設計標準使用期間などを表示しなければならないは、適切です。

 


4 特定保守製品取引事業者とは、特定保守製品の取得者に対し適切な保守の必要性や所有者情報の提供の必要性などを理解させるために、正当な理由のない限り説明義務のある事業者をいい、特定保守製品の付属する建物の販売を行う事業者は含まれない。

X 適切でない。 特定保守製品の付属する建物の販売を行う事業者も含まれる。

 特定保守製品取引事業者とは、消費生活用製品安全法第32条の5 
 「(引渡時の説明等)
 第三十二条の五  特定保守製品を、売買その他の取引により、又は特定保守製品以外の物に関する取引に付随して取得しようとする者(特定保守製品を再度譲渡することを目的として取得しようとする者及び主務省令で定める者を除く。第三十二条の八第三項において「取得者」という。)に対し、当該取引の相手方たる事業者(以下「
特定保守製品取引事業者」という。)は、当該特定保守製品の引渡しに際し、次の事項について説明しなければならない。ただし、当該特定保守製品の点検期間が経過している場合その他正当な理由がある場合は、この限りでない。
     一  特定保守製品は、経年劣化により危害を及ぼすおそれが多く、適切な保守がなされる必要がある旨
     二  当該特定保守製品に係る特定製造事業者等に対して所有者情報を提供した場合には第三十二条の十二第一項に規定する点検通知事項の通知がある旨
     三  その他特定保守製品の点検その他の保守に関し主務省令で定める事項
 2  特定保守製品取引事業者は、前項の規定により説明するに当たつては、特定保守製品に所有者票が添付されているときは、その旨を併せて説明しなければならない。

 とあり、

 特定保守製品取引事業者とは、消費生活用製品安全法第32条の5 1項によれば、
 「特定保守製品を、売買その他の取引により、又は特定保守製品以外の物に関する取引に付随して取得しようとする者に対し、当該取引の相手方たる事業者です。
 特定保守製品取引事業者であれば、特定保守製品の引渡しに際して説明をしなければなりません。

 
 これを受けた、経済産業省関係特定保守製品に関する省令第9条
 「(引渡時の説明に関する事項等)
 第九条  
法第三十二条の五第一項 本文に規定する主務省令で定める者は、次の者とする
     一  当該特定保守製品取引事業者に対して当該特定保守製品又は当該特定保守製品の付属する建物を賃貸することを約してこれを取得しようとする者
     二  特定保守製品につき十分な知識を有しており、特定保守製品の保守を的確に遂行することができる者に当該特定保守製品の管理(当該特定保守製品の付属する建物の居住部分の管理を含む。)を委託することとして、当該特定保守製品又は当該特定保守製品の付属する建物を取得しようとする者
     三  売買その他の取引に先立って当該特定保守製品取引事業者に当該特定保守製品を廃棄する旨を申し出て、当該特定保守製品の付属する建物を取得しようとする者
     四  建物に特定保守製品を付属させ、当該建物の所有権を移転させる目的で特定保守製品を取得しようとする者(当該建物を一定期間保有し、又は管理した後に譲渡することを目的として取得する場合を除く。)
     五  特定保守製品の付属する建物の所有権を移転させる目的で特定保守製品の付属する建物を取得しようとする者(当該建物を一定期間保有し、又は管理した後に再度譲渡することを目的として取得する場合を除く。)
 2  法第三十二条の五第一項第三号 に規定する主務省令で定める事項は、次の事項とする。
     一  特定保守製品の所有者は、法律上特定保守製品に表示された点検期間内に当該特定保守製品の点検を行うことが求められている旨
     二  特定保守製品の所有者は、法律上その変更がある場合を含め所有者情報を特定製造事業者等に提供することが求められている旨
     三  特定保守製品取引事業者は、取得者から所有者情報の提供を受けた場合には、当該所有者情報を速やかに特定製造事業者等に提供する旨 」
  とあり、

 特定保守製品取引事業者とは、該当製品の販売店だけでなく、工務店や不動産販売業者の場合もあります
 ・特定保守製品の販売事業者
 ・特定保守製品を設置している不動産の販売事業者
 ・特定保守製品を設置している建物建築請負事業者 等
 ですから、特定保守製品取引事業者とは、特定保守製品の取得者に対し適切な保守の必要性や所有者情報の提供の必要性などを理解させるために、正当な理由のない限り説明義務のある事業者であり、そこには、特定保守製品の付属する建物の販売を行う事業者も含まれますから、設問は、適切ではありません。



答え:4

《タグ》消費生活用製品安全法。長期使用製品安全点検制度。長期使用製品安全点検制度。長期使用製品安全表示制度。特定保守製品。設計標準使用期間。特定保守製品取引事業者。

 消費生活用製品安全法や長期使用製品安全点検制度とは、全く知らない世界で、根拠を探すだけで、無茶苦茶時間がかかった。

  何となく、正解は、選択肢4 とは想定できたが、難問である。

 「問21」の水質基準に関する省令から始まり、この「問25」の長期使用製品安全点検制度まで、平成28年度の管理業務主任者試験問題の作成者は、マンション管理士試験の作成者と異なり、出題方法に創意を加え知恵を出している。
 細かな出題ではあるが、その出題態度は、大いに評価します。
 しかし、「問21」から「問25」は、解答としては、大変に難しい。解説者(マンション管理士 香川)も苦労しています!

ここまで、問25


次へ次へ

2017年 2月21日:再度見直した。
2017年 1月27日:第1稿Up。時間がかかる!
解説開始:2016年12月12日

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