マンション生活での相談は、「マンション管理士 香川事務所」へ。

平成23年 マンション管理士 試験問題 及び 解説

ページ1 (問1より問25まで)

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 謝辞:問題文の作成には、 山口さまの協力を得ています。

ご質問は、 「マンション管理士 香川事務所」へ。


*注: マンション標準管理規約(単棟型、団地型、複合用途型)は、平成28年3月に改正があり、当解説においては、未対応ですから、注意してください。

また、マンションの管理の適正化に関する指針も、平成28年3月に改正があり、解説においては、未対応ですから、注意してください。

※ 出題当時以後の法令等の改正には、一部は対応していません。

*試験に臨んで、お節介なアドバイス
  1.設問にあわせて、問題用紙に ○(まる)、X(ばつ)をつける。
    殆どの設問が、「正しい」か「間違い」かを訊いてきますので、設問により、問題の頭に、○かXをつけます。
    そして、各選択肢を読み、○かXをつけます。
    問題の○なりXと、選択肢の○かXが一致したものを、マークシートに記入してください。

  2.疑問な問題は、とりあえず飛ばす。
    回答の時間は限られています。
    そこで、回答として、○かXかはっきりしないものがでたら、「?」マークをつけて、次の問題に移ります。
    全部の回答が終わってから、再度戻って決定してください。

  3.複雑な問は、図を描く。
    甲、乙、A、B、Cなど対象が多い問題もでます。
    この場合、問題用紙の空いているところに、図を描いてください。
    重要な点が分かってきます。

(出題者からの注意) 1.答えは、各問題とも1つだけです。2つ以上の解答をしたもの、判読が困難なものは、正解としません。
              2.問題中法令に関する部分は、平成23年4月1日現在施行中の規定に基づいて出題されています。


解説者からのコメント:あやふやな出題、適切でない出題もあって、解答ができないのもあります。

※  マンション標準管理規約は、平成16年に改正があった。また、平成23年7月にも小幅な改正があった。
   マンション標準管理委託契約書は、平成15年に改正があった。また、平成22年5月にも改正があった。

問1

〔問 1〕マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号イに規定するマンションをいう。以下同じ。)の一部共用部分に関する次の記述のうち、建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。

1 区分所有者全員の規約で定めれば、共用部分の一部について、これを一部共用部分として、一部の区分所有者が管理するものとすることができる。

X 誤っている? 一部共用部分の出題は、平成22年 マンション管理士試験 「問2」平成17年 マンション管理士試験 「問2」平成15年 マンション管理士試験 「問5」にもある。

  まず、区分所有法では、法律用語として「マンション」の定義がありません。しかし、「マンション管理適正化法」第2条では、以下のように定義されていますので、マンションの用語を試験で使用する際には設問のような「マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号イに規定するマンションをいう」の表現が使用されます。
 そこで、マンション管理適正化法第2条とは、
 「(定義) 
  第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
     一  
マンション 次に掲げるものをいう。
       イ 二以上の区分所有者(建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)第二条第二項 に規定する区分所有者をいう。以下同じ。)が存する建物で人の居住の用に供する専有部分(区分所有法第二条第三項 に規定する専有部分をいう。以下同じ。)のあるもの並びにその敷地及び附属施設
       ロ 一団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)が当該団地内にあるイに掲げる建物を含む数棟の建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地及び附属施設」
 です。これによれば、「マンション」であるための要件は、
    @2人以上の区分所有者 がいて、 
    A人の居住用の専有部分が1つでもあればいい 
    です。
 また、区分所有法での一部共用部分とは、区分所有法第3条の後半に出てきます。
  「(区分所有者の団体)
   第三条  区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。
一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。」とあります。
 具体的には、1棟のマンションで下が店舗、上が住居用の構造となっており、店舗部分には従業員専用出入り口があり、その従業員専用出入り口を、住居部分の人は明らかに利用しない場合に、その部分は、「一部共用部分」となります。
 この場合「一部共用部分」は、まとめてそのマンションが全体として管理してもいいし、別の店舗部分だけの管理体制にしてもいいことになります。
 その規定は、区分所有法第16条
 「(一部共用部分の管理)
  第十六条  一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するもの又は第三十一条第二項の規約に定めがあるものは区分所有者全員で、その他のものはこれを共用すべき区分所有者のみで行う。 」とあり、
 一部共用部分の管理のうちから、除かれるのは、
  @区分所有者全員の利害に関係するもの 又は
  A第三十一条第二項の規約に定めがあるもの です。
  ここでの、「一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するもの」の例としては、店舗部分の外装を変更する場合に、建物全体の美観を損ねるような場合です。
 では、引用されています区分所有法第31条2項は、
  「(規約の設定、変更及び廃止)
   第三十一条  
    2  前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。 」です。
 またも引用されています、前条2項とは、第30条2項ですから、
  「(規約事項)
   第三十条
    2  一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。 」です。
  ここを解説しますと、区分所有者全員の利害に関係しない一部共用部分であっても、区分所有者全員での規約の定めがあれば、それが、一部共用部分であっても管理は、区分所有者全員で行うことができるということです。
  そこで、第16条に戻りますが、一部共用部分を共用すべき一部の区分所有者の規約で定めることのできるのは、
   @区分所有者全員の利害に関係しないもの でかつ
   A区分所有者全員の規約に定めがない ものとなります。

   設問の場合、「共用部分の一部について」とあり、これは、区分所有法第3条後半での「一部共用部分とは、一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分」ではありませんから、「これを一部共用部分として、一部の区分所有者が管理するものとすること」は、区分所有法上できません。

  *しかし、「共用部分の一部」と、区分所有法での「一部共用部分」とは別と出題者は言いたいのだろうが、ここは、区分所有法でいう”一部共用部分”が「明らかでないこと」が多い実態から、規約で明確にしておく必要性がある場合も考えられ、区分所有法第30条1項との関係で、区分所有者の総意があれば、許されるのではという問題がある設問だ。
  参考:区分所有法第30条1項
 「(規約事項)
   第三十条  建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。」




2 一部共用部分の管理は、区分所有者全員の規約に定めがあるものを除き、これを共用すべき区分所有者のみで行う。

○ 正しい?
   選択肢1で解説、引用しましたように、区分所有法第16条
  「(一部共用部分の管理)
  第十六条  一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するもの又は第三十一条第二項の規約に定めがあるものは区分所有者全員で、その他のものはこれを共用すべき区分所有者のみで行う。 」とあり、
  @区分所有者全員の利害に関係するもの と
  A区分所有者全員の規約に定めがある場合 を除いて、これを共用すべき区分所有者のみで行うことになります。(ここを、誤っているとするなら、@の区分所有者全員の利害に関係するもの がないとするのか?)



3 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものについての区分所有者全員の規約の設定は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の1/4を超える者が反対したときは、することができない。

○ 正しい。
   ここは、選択肢1で解説・引用しました、区分所有法第31条2項
 「(規約の設定、変更及び廃止)
  第三十一条 
    2  前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。 」
 そして、前条第二項とは、区分所有法第30条2項で、
  「(規約事項)
   第三十条
    2  一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。 」
 に該当しています。


4 一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するものについて、区分所有者全員で管理する場合は、その旨を区分所有者全員の規約で定めなければならない。

X 誤っている?
  選択肢1で解説しました、区分所有法第16条
 「(一部共用部分の管理)
  第十六条  一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するもの又は第三十一条第二項の規約に定めがあるものは区分所有者全員で、その他のものはこれを共用すべき区分所有者のみで行う。 」とあり、
同法第30条2項
 「(規約事項)
   第三十条
    2  一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。 」です。
  「一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するものについて」は、区分所有者全員の規約に入りますから、特に「その旨を区分所有者全員の規約で定めなければならない」とは明確に表現はされていません。しかし、この「区分所有者全員の利害に関係するかどうか」の判断においては、実態として区分が難しい場合もあり、「その旨を区分所有者全員の規約で定め」ておけば、トラブルが解消されますが。

答え:2、3。 (フーッ。まったく最初から、おかしな出題で作成に時間がかかる。なお、区分所有法の解説は、私の「超解説 区分所有法」もありますから、こちらも参考にしてください。)
マンション管理センターの解答:3

問2

〔問 2〕区分所有者の責任に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。

1 区分所有者は、管理者がその職務の範囲内において第三者との間にした行為につき、専有部分の床面積の割合に応じて責任を負う。

○ 正しい。
 管理者が正当な職務内でした行為での、区分所有者の負う責任の割合は、区分所有法第29条1項
 「(区分所有者の責任等)
  第二十九条  管理者がその職務の範囲内において第三者との間にした行為につき区分所有者がその責めに任ずべき割合は、第十四条に定める割合と同一の割合とする。ただし、規約で建物並びにその敷地及び附属施設の管理に要する経費につき負担の割合が定められているときは、その割合による。 」とあり、
 規約で別段の定めがないから、同法第14条1項の適用となり
 「(共用部分の持分の割合)
  第十四条  各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。」とあり、正しい。



2 区分所有者は、共用部分の設置又は保存の瑕疵により生じた損害賠償責任につき、共用部分の持分の割合に応じて責任を負う。

○ 正しい。 共用部分の設置又は保存の瑕疵により生じた損害賠償責任は、区分所有法第9条
 「(建物の設置又は保存の瑕疵に関する推定)
  第九条  建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する。 」とあり、
 「共用部分の設置又は保存にあるものと推定」されますから、共用部分の負担は、同法第19条
 「(共用部分の負担及び利益収取)
  第十九条  各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。」とありますから、
 ここも、規約に別段の定めがないので、共用部分の持分(その有する専有部分の床面積の割合)となり、正しい。



3 区分所有者は、その共用部分を保存するため他の区分所有者の専有部分を使用し、その結果、当該他の区分所有者に損害を与えた場合には、その償金につき、共用部分の持分の割合に応じて支払の責任を負う。

○ 正しい? 区分所有者は、その共用部分を保存するため他の区分所有者の専有部分を使用することができます。それは、区分所有法第6条2項
 「(区分所有者の権利義務等)
  2  区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。 」とあります。
 その結果損害を与えた場合には、その行為者だけの責任ではなく、規約に別段の定めがない場合には、共用部分の共有者全員が共同して責任を負うという説があります。
それによれば、同法第19条
 「(共用部分の負担及び利益収取)
  第十九条  各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。」とあり、
 その償金につき、共用部分の持分の割合に応じて支払の責任を負うことになります。
 (ここは、もっと明確に、「行為者に故意・過失がない場合」とかを加えてくれないと、曖昧な設問だ。)



4 区分所有者は、管理所有者が共用部分の管理に要した相当な費用及びそれとは別の管理所有者としての報酬につき、共用部分の持分の割合に応じて支払の責任を負う。

X 誤っている? 管理所有者が共用部分の管理に要した相当な費用の請求は区分所有法第20条1項
 「(管理所有者の権限)
  第二十条  第十一条第二項の規定により規約で共用部分の所有者と定められた区分所有者は、区分所有者全員(一部共用部分については、これを共用すべき区分所有者)のためにその共用部分を管理する義務を負う。この場合には、それらの区分所有者に対し、相当な管理費用を請求することができる。 」とあり、
 相当な管理費用は請求できますが、ここでの相当な管理費用の範囲としては、変更の費用や保存費用など一般に必要な費用で、報酬は入らないと考えられます。
 報酬を除いた相当な費用は、同法第19条
 「(共用部分の負担及び利益収取)
  第十九条  各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。」により、
 区分所有者は、共用部分の持分の割合に応じて支払の責任を負いますが、管理所有者としての報酬は、規約がなければ、責任はありません。
 参考:民法第648条1項 「(受任者の報酬) 第六百四十八条  受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。 」



答え:4   (本年の出題は、過去の出題と違って、どこか、明確でない?)

問3

〔問 3〕区分所有者又は管理者からの請求に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、正しいものはどれか。ただし、別段の慣習はないものとする。

1 区分所有者は、自己の専有部分を保存するために必要な範囲において、他の区分所有者の専有部分の使用を請求することができるが、自己の専有部分を改良するためには、このような請求をすることはできない。

X 誤っている。 できる。ここの主題は、「保存行為」と「改良行為」。
  この出題に対しては、区分所有法第6条2項
 「(区分所有者の権利義務等)
  2  区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、
又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。」とあり、
 前半により、「保存又は改良」において、他の区分所有者の専有部分の使用を請求することができます。
 なお、参考として、この条文の元になった民法第209条があります。
 「(隣地の使用請求)
  第二百九条  土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができる。ただし、隣人の承諾がなければ、その住家に立ち入ることはできない。
   2  前項の場合において、隣人が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。 」



2 管理者は、共用部分並びにマンションの敷地及び共用部分以外の附属施設の保存のために、必要な範囲において、区分所有者の専有部分の使用を請求することができる。

X 誤っている。 できない。
  こんどは、区分所有者でない管理者はどうかということです。
 管理者の権限は、区分所有法第26条
 「(権限)
  第二十六条  管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
   2  管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
   3  管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
   4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
   5  管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。」とあり、
 引用されています、第21条は、
 「(共用部分に関する規定の準用)
  第二十一条  建物の敷地又は共用部分以外の附属施設(これらに関する権利を含む。)が区分所有者の共有に属する場合には、第十七条から第十九条までの規定は、その敷地又は附属施設に準用する。 」です。
 これにより、管理者は、設問に関しては、@共用部分等の保存ができ、A職務に関し区分所有者を代理しています。
 そこで、管理者ができる共用部分等の保存行為の範囲の解釈になるわけですが、この場合、管理者ができる保存行為は、緊急を要するか、比較的軽い維持(タイルが欠けたときの補修とか)程度と考えられます。
 次に、区分所有者を代理している部分ですが、これも管理者ができる保存行為は狭いため、区分所有者の専有部分の使用を請求することまではできません。集会の決議が必要です。



3 区分所有者は、マンションの敷地の境界線から50cm以上で1m未満の距離において、外壁に特定の専有部分を見通すことができる窓を設けようとする者に対して、その建築の中止を請求することができる。

X 誤っている。 できない。 民法の全体を読んでいない人には、設問の意味さえ分からない文章です。
  この設問に関係していますのは、民法第234条、民法第235条そして民法第236条です。
 民法第234条
 「(境界線付近の建築の制限)
   第二百三十四条  建物を築造するには、境界線から五十センチメートル以上の距離を保たなければならない。
   2  前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から一年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。 」
 民法第235条
 「第二百三十五条  境界線から一メートル未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。
   2  前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。 」
 民法第236条
 「(境界線付近の建築に関する慣習)
  第二百三十六条  前二条の規定と異なる慣習があるときは、その慣習に従う。」
 設問では、「ただし、別段の慣習はないものとする。」とありますから、そのまま検討しましょう。境界線から50cm以上で1m未満ですから、50cm以上あるため、民法第234条は満たしていますから、建築の中止はできません。「外壁に特定の専有部分を見通すことができる窓を設けようとする者」に対しては、民法第235条により、「目隠しをつけろ」と請求はできます。



4 他の土地の排水設備の閉塞(へいそく)によりマンションの敷地に損害が及び、又は及ぶおそれがあっても、管理者は、他の土地の所有者に障害を除去させ又は必要な予防工事をさせることはできない。

○ 正しい? この設問に関しては、民法第216条
 「(水流に関する工作物の修繕等)
  第二百十六条  他の土地に貯水、排水又は引水のために設けられた工作物の破壊又は閉塞により、自己の土地に損害が及び、又は及ぶおそれがある場合には、その土地の所有者は、当該他の土地の所有者に、工作物の修繕若しくは障害の除去をさせ、又は必要があるときは予防工事をさせることができる。」
 同法によれば、土地の所有者であれば、設問のような請求ができますが、管理者の権限としては、 選択肢2で述べたように、狭いため、ここは、当然にはできず、集会の決議が必要と考えられます。



答え:4 (民法のこの分野からの出題は、新しいが、出題の文が、今までとかなり違っている。)
マンション管理センターの解答:2 (ここを 2 とするのは、マンション管理センターは、管理者のできる保存行為での解釈が適切でない。)

問4

〔問 4〕次の集会に開する規約の定めのうち、区分所有法の規定によれば、その効力が生じないものはどれか。ただし、規約の定めは各区分所有者間の利害の衡平が図られているものとする。

1 管理者がないときは、区分所有者の1/6以上で議決権の1/6以上を有するものは、集会を招集することができる。

○ 生じる。 規約で別段の定めができるものと、できないものは、よく出るので、まとめておくこと。
   管理者がないときの集会の招集は、区分所有法第34条5項。
 「(集会の招集)
  第三十四条
   5  管理者がないときは、区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。 」とあり、
規約があれば減じることは可能です。ただし、引き上げることはできません。1/6(約17%)は、1/5(20%)より少なくなっています。


2 集会の招集の通知は、会日より少なくとも5日前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発する。

○ 生じる。 集会の招集の通知は、区分所有法第35条1項。 
 「(招集の通知)
  第三十五条  集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。 」とあり、
原則1週間前(会日の前日までに)までに出しますが、規約があれば、こちらは、選択肢1と違って、伸ばすことも、短くすることも可能です。



3 区分所有法に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を含めて、あらかじめ通知した事項以外の事項について、集会において決議することができる。

X 生じない。 集会での決議は、区分所有法第37条1項、2項。
 「(決議事項の制限)
  第三十七条  集会においては、第三十五条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。
   2  前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない。 」とあり、
「あらかじめ通知した事項についてのみ」決議できます(1項)が、その際に、「決議につき特別の定数が定められている事項を除いて」は規約で別段の定めができますが、設問のような「特別の定数が定められている事項を含めて」はできません。



4 各区分所有者の議決権は、共用部分の持分の割合にかかわらず、同一の割合とする。

○ 生じる。 各区分所有者の議決権は、区分所有法第38条。
 「(議決権)
  第三十八条  各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による。 」とあり、
原則、区分所有法第14条での「専有部分の床面積の割合」ですが、規約があれば、別途定めることができます。ただし、専有部分の持分に極端に差があるのに、同じにすると、無効になるので注意のこと。
ここが、設問で、「ただし、規約の定めは各区分所有者問の利害の衡平が図られているものとする。」の意味です。


答え:3  (ここは、急に、区分所有法の基本的な条文のままの出題だ。易しい。)

問5

〔問 5〕電磁的記録又は電磁的方法に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 議長は、規約又は集会の決議によらなくても、集会の議事について電磁的記録により議事録を作成することができる。

○ 正しい。 集会で何があったかを記録することは、重要なことですから、議長は議事録を作成することが義務付けられています。それが、区分所有法第42条1項。
 「(議事録)
  第四十二条  集会の議事については、議長は、書面又は電磁的記録により、議事録を作成しなければならない。 」です。
 この議事録は、規約又は集会の決議によらなくても、IT化の波により、電磁的記録(パソコン利用)が、当然に認められるようになっています



2 区分所有者は、規約又は集会の決議によらなくても、電磁的方法によって議決権を行使することができる。

X 誤っている。 いくらIT化が進んだといっても、まだ、区分所有者全員が、インターネットなどを利用できる環境にはありませんから、区分所有法第39条3項。
 「(議事)
  第三十九条
    3  区分所有者は、規約又は集会の決議により、前項の規定による書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)によつて議決権を行使することができる。 」とあり、
規約又は集会の決議が必要です。



3 管理者は、毎年1回一定の時期に行うべき管理者の事務に関する報告を、集会においてではなく、電磁的方法により行うことができる。

X 誤っている。 マンションの管理は基本的には、区分所有者達が行うものです。管理者を選任したら、その事務執行内容を、監督しなければなりません。そこで、区分所有法第43条。
 「(事務の報告)
  第四十三条  管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。 」とあり、
管理者に、必ず、集会で、区分所有者に向き合って、報告させるようにしています。書面や電磁的方法ではできなくしています。(しかし、現実の集会=総会 は、質問もなく形骸化していますが。)



4 区分所有法により集会において決議すべき場合において、規約の定め又は集会の決議があれば、集会においてではなく、電磁的方法によって決議をすることができる。

X 誤っている。 条文をしっかりと理解していないと、面倒な設問です。マンション生活では、様々な事項は、基本的には、集会を開いて決めるのですが、区分所有法第45条1項。 
 「(書面又は電磁的方法による決議)
  第四十五条  この法律又は規約により集会において決議をすべき場合において、
区分所有者全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。ただし、電磁的方法による決議に係る区分所有者の承諾については、法務省令で定めるところによらなければならない。 」とあり、
区分所有者全員の承諾があれば、書面又は電磁的方法による決議をすることができます。「規約の定め又は集会の決議があれば」ではありません



答え:1 (ここは、易しい。選択肢1をマークして、すぐ次の問題に移れる。ただし、解説は、そうはいかないですが。)

問6

〔問 6〕管理組合法人の理事に関する規約の定めについての次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 理事が数人ある場合の管理組合法人の事務について、規約によって、理事の過半数ではなく、理事全員の合意で決する旨を定めることはできない。

X 誤っている。 できる。 ここは、もう区分所有法第49条2項のまま。
 「(理事)
  第四十九条
   2  理事が数人ある場合において、規約に別段の定めがないときは、管理組合法人の事務は、理事の過半数で決する。」により、
原則、事務は、理事の過半数で決しますが、規約での別段の定めが可能なため、 理事の過半数ではなく、理事全員の合意で決する旨を定めることもできます。



2 理事が数人ある場合の管理組合法人を代表すべき理事の選定について、規約によって、理事の互選により選出する旨を定めることはできない。

X 誤っている。 できる。 法人を代表する理事(代表理事)については、区分所有法第49条5項。
 「(理事)
 第四十九条
   5  前項の規定は、規約若しくは集会の決議によつて、管理組合法人を代表すべき理事を定め、若しくは数人の理事が共同して管理組合法人を代表すべきことを定め、又は規約の定めに基づき理事の互選によつて管理組合法人を代表すべき理事を定めることを妨げない。」 とあり、
代表理事は、規約によって、理事の互選により選出する旨を定めることはできます。



3 理事が数人ある場合の理事の任期について、規約によって、半数の理事の任期を2年とし、残りの半数の理事の任期を3年とする旨を定めることはできない。

X 誤っている? できる? 理事の任期は、区分所有法第49条6項。
 「(理事)
  第四十九条
   6  理事の任期は、二年とする。ただし、規約で三年以内において別段の期間を定めたときは、その期間とする。 」とあり、
原則2年ですが、規約で3年まで伸ばすことができます。
 設問のような、理事の任期が2年の人と3年の人がいるという、バラバラの規約では、理論的には可能でも、実務においては、どのようになるのか非常に面倒で曖昧ですが、この出題者のレベルでは、そこまで検討されていないと判断します




4 理事の行為の委任について、規約によって、理事は包括的に理事の行為を他人に委任することができる旨を定めることはできない。

○ 正しい。 理事と区分所有者との関係は、民法の委任が原則です。 そこで、委任を受けた人(受任者=理事)は、原則として、自分で処理をするのが原則です。
 民法第644条
 「(受任者の注意義務)
  第六百四十四条  受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。」
 しかし、理事も多忙な時もあるでしょうから、区分所有法第49条の3。
 「(理事の代理行為の委任)
  第四十九条の三  理事は、規約又は集会の決議によつて禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができる。 」とあり、
規約又は集会の決議によつて禁止されていないときに限り、特定の行為の代理を他人に委任することができます。その場合、包括的に他人に委任することはできません。特定の行為だけです。



答え:4 (ここも、選択肢3は設問としてはあいまいだけど、選択肢4 は分かる?)

問7

〔問 7〕震災によるマンションの修繕工事が予算を大幅にオーバーし多額の債務を負担することとなった管理組合法人の理事会でのA〜Dの各理事の次の発言のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、正しいものはどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。

1 A理事「大変なことになりましたね。ただ、管理組合法人の場合は、法人としての責任ということになりますから、管理組合法人の総資産の有限責任の範囲での債務の負担ということになるでしょう。」

X 誤っている。 マンションの管理組合が法人化されていれば、債務は一次的にはその法人が負いますが、法人の財産でも負債を完済できない場合には、区分所有法第53条の規定があります。
 「(区分所有者の責任)
  第五十三条  管理組合法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、区分所有者は、第十四条に定める割合と同一の割合で、その債務の弁済の責めに任ずる。ただし、第二十九条第一項ただし書に規定する負担の割合が定められているときは、その割合による。 」です。
 設問のような場合には、正に、この第53条の適用となり、区分所有者が、原則、専有部分の床面積の割合(第14条)で負担し、規約で別の負担割合が決められていればその負担割合で(第29条)負担することになります。管理組合法人の総資産の有限責任の範囲での債務の負担ではありません。



2 B理事「いいえ、もし管理組合法人の総資産でも弁済額に足りない場合には、我々区分所有者の個人財産をもって、専有部分の床面積の割合で分割された責任範囲で負担しなけれぱならないですよ。」

○ 正しい。 これは、選択肢1で述べましたように、区分所有法第53条。
 「(区分所有者の責任)
  第五十三条  管理組合法人の財産をもつてその債務を完済することができないときは、区分所有者は、第十四条に定める割合と同一の割合で、その債務の弁済の責めに任ずる。ただし、第二十九条第一項ただし書に規定する負担の割合が定められているときは、その割合による。」とあり、
規約がないとの設問ですから、このとおりです。



3 C理事「いやいや、管理組合法人の場合は、総資産でも弁済額に足りない場合には、管理組合法人の解散ということになると思います。その場合は、区分所有者全員が連帯して債務を負担することになりますよ。」

X 誤っている。 総資産でも弁済額に足りない場合は、通常、破産で、多くの場合法人は、解散になりますが、管理組合の法人では解散事由にしていません。それは、まだ、建物が残っているので、別の扱いにしたとのことです。それでは、管理組合の法人の解散は、区分所有法第55条。 
 「(解散)
  第五十五条  管理組合法人は、次の事由によつて解散する。
    一  建物(一部共用部分を共用すべき区分所有者で構成する管理組合法人にあつては、その共用部分)の全部の滅失
    二  建物に専有部分がなくなつたこと。
    三  集会の決議
  2  前項第三号の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。」とだけあり、
総資産でも弁済額に足りない場合には、選択肢1で述べましたように、管理組合法人は解散せず存続し、その際の負担は、区分所有法第53条により、各区分所有者が、原則、その専有部分の床面積の割合のより負担します。区分所有者全員が連帯して債務を負担することにはなりません、



4 D理事「結論には時間がかかりそうですね。私は、近々、専有部分を売って引っ越しすることが決まっています。買受人には、十分伝えておきますので、もし、区分所有者が負担すると決まっても、その時は区分所有者ではないはずの私には責任はありません。」 

X 誤っている。 後からマンションを購入した人(買受人)は、特定承継人と呼ばれ、法人では、区分所有法第54条。 
 「(特定承継人の責任)
  第五十四条  区分所有者の特定承継人は、その承継前に生じた管理組合法人の債務についても、その区分所有者が前条(第53条)の規定により負う責任と同一の責任を負う。」 とあり、
マンションの売買契約で、債務が発生した後から購入した人(特定承継人)でも、この規定により、購入前に発生していた債務を負担します。
そして、この場合の元の区分所有者(売主)と後の特定承継人(購入者)の関係は、始めからは連帯の債務ではないが、同一の給付する債務を負担するという「不真正連帯債務」の関係にあると解釈されていますので、引っ越したあとでも、元の区分所有者も、また責任を負います。(先に特定承継人が支払えば、特定承継人は、元の売主に請求できます。)



答え:2 (震災などと、今年3月11日に発生した、東北地方太平洋沖地震をもってきているが、法人の規定の基礎で、ここも、易しい。)

問8

〔問 8〕マンションにおける紛争を解決するための訴訟の当事者に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 外壁の瑕疵により区分所有者がこうむった損害に係るマンション業者に対する賠償請求の訴えについては、規約で定めれば、専有部分の賃借人が区分所有者のために、訴訟の原告となることができる。

X 誤っている? 当事者適格は、 平成13年 マンション管理士試験 「問33」 もある。
  訴訟においては、裁判の前に、誰が適正な原告・被告(訴訟当事者)になれるか、また、裁判において、適正な判決を受けるために必要な資格(当事者適格)が与えられているかどうかが必要とされます。
  そこで、規約で定めれば、専有部分の賃借人であっても区分所有者のために、訴訟の原告になれるかるどうかです。
  まず、外壁の瑕疵により区分所有者がこうむった損害は、その被害を受けた区分所有者がマンション業者に対して訴訟を起こせる他に、外壁は共用部分ですから、共用部分での損害賠償請求として、管理者が、区分所有者のために、原告又は被告となることが区分所有法第26条2項及び4項に定められています。
 「(権限)
  第二十六条
    2  管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
    4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。」
 そこで、本題の占有者である、専有部分の賃借人が規約があれば、訴訟の原告になるれかですが、確かに、区分所有法第30条により、多くの事項は、規約があれば、規定が可能で、また占有者も区分所有者と同じように、共同の利益を守ること(第6条3項)や、規約や集会の決議を守ること(第46条2項)が義務付けられていますが、本来、マンション生活での管理の原点は、区分所有者達での管理であり、便宜上、管理者がいれば、管理者に代理権を与えているだけです(第26条1項、そして4項)。
 そこで、訴訟提起という重要性を考えた場合、これは、規約においても、区分所有者の他にできるのは、第三者であっても、管理者までで、専有部分の賃借人を規定することはできないと考ええることが妥当と判断します。
参考:区分所有法第57条3項
 「3  管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。 」



2 共用部分たるピロティ部分に壁を設置して物置としていた区分所有者に対して当該壁の撤去とその部分の明渡しを求める訴えについては、集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、訴訟の原告となることができる。

○ 正しい。 共用部分たるピロティ部分(1階の部分が柱になっている構造)に壁を設置して物置とする行為は、区分所有法第6条1項に規定される、「共同の利益に反する行為」となります。
 「(区分所有者の権利義務等)
  第六条  区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。」
すると、この排除は、区分所有法第57条。
 「(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
   第五十七条  区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
    2  前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
    3  管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
    4  前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。 」とあり、
3項により、集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、訴訟の原告となることができます。


3 専用使用権のない敷地部分につき有料駐車場として賃貸した区分所有者に対する賃料相当額の不当利得の返還を求める訴えについては、管理者が区分所有者でない第三者であっても、集会の決議により、訴訟の原告となることができる。

○ 正しい。  専用使用権のない敷地部分を有料駐車場として賃貸に出し、賃料を得た区分所有者は、権原のない共用部分での不当利得(民法第703条)を得たことになりますから、区分所有者の団体(管理組合)は、賃料を得た区分所有者に対して賃料相当額を返還請求ができます。 そして、不当利得の返還請求訴訟の提起は、管理者でも、区分所有法第26条2項及び4項。
 「(権限)
  第二十六条  管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
   2  管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
   3  管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
   4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
   5  管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。」とあり、
規約又は集会の決議で、訴訟の原告となることができます。(なお、区分所有法第26条が設けられたのは、区分所有者でない、第三者の管理者(理事長)が訴訟の原告になれるか、どうかで過去に争いがあったので、それらを明確にしたものです。)



4 管理組合法人と理事個人との売買契約に関する紛争については、監事が管理組合法人を代表して、管理組合法人の名において、訴訟を追行することができる。

○ 正しい。 通常、管理組合が法人化されていれば、紛争があって訴訟を提起するのは、管理組合法人ですが(区分所有法第47条6項参照)、紛争の相手が法人を代表する理事では、利益が相反する事項となり、区分所有者の利益が守られないおそれがありますので、その場合には、監事が理事の代わりに管理組合法人の代表となり、訴訟を提起することになります。
それは、区分所有法第51条
 「(監事の代表権)
  第五十一条  管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、監事が管理組合法人を代表する。」です。



答え:1  (ここの選択肢1は、法律の解釈として、さらに突っ込んだものを求めているのか、それとも、一般的な判断を求めているのか不明な出題だ。答え難い。)

問9

〔問 9〕建替え決議において、再建建物の敷地とすることができない土地は、区分所有法の規定によれば、次のうちどれか。

1 現在の建物の敷地(「甲地」という。以下この問いにおいて同じ。)の一部を売却し、残った土地

○ できる。 マンションの建替え決議は、区分所有法第62条1項。
 「(建替え決議)
  第六十二条  集会においては、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。 」とあり、
再建建物の敷地については、@単純に前と同じ敷地に建てる、A前の敷地の一部を売ったりして小さくなった前の敷地の一部に建てる、B前の敷地の全部に近隣の土地を加え広くして建てる、C前の敷地の一部は残し近隣の土地を加える の4つの方法が許されています。この基本は、どんな方法であっても、最低、元の敷地があった土地の上に、再建することです。
設問の、「現在の建物の敷地の一部を売却し、残った土地」は、A前の敷地の一部を売ったりして小さくなった前の敷地の一部に建てるに該当しています。






2 甲地の周囲の土地を購入して、甲地と新たに購入した土地を含む拡張された一体の土地

○ できる。 これは、選択肢1で述べましたように、区分所有法第62条1項での、B前の敷地の全部に近隣の土地を加え広くして建てるに該当します。


3 甲地と等価交換した甲地と同面積の隣接した土地

X できない。 等価交換した土地が例え隣接していても、選択肢1で述べましたように、元の敷地の上に再建されていませんから、区分所有法第62条1項に該当しません。


4 甲地の大部分を売却し、その代金で残った甲地に隣接する土地を購入し、甲地の残部と新たに購入した土地を含む一体の土地 

○ できる。 この場合は、選択肢1で述べましたように、元の敷地の一部が入っていますから、区分所有法第62条1項でのC前の敷地の一部は残し近隣の土地を加える に該当します。


答え:3 (ここは、私の「超解説 区分所有法」でイラストまで見ていた人にとっては、超簡単だった?)

問10

*注:被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法は平成25年6月に大幅な改正があったので注意の事。
    該当の条文は、必ず改正された被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法で確認のこと。


〔問 10〕大規模な火災、震災その他の災害で政令で定めるものにより区分所有建物の全部が滅失した場合における被災区分所有建物の再建に関する次の記述のうち、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 議決権の1/5以上を有する敷地共有者等は、再建の集会を招集することができる。

○ 正しい。 今年(平成23年)は、3月11日に、東北地方太平洋沖地震があったために、マンション管理士・管理業務主任者の試験では、出題の中心になるのではと予想した法律です。
  再建の集会を招集する規定は、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(以下:特別措置法という)第2条3項
 「(再建の集会)
  第二条  大規模な火災、震災その他の災害で政令で定めるものにより建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)第二条第三項 に規定する専有部分が属する一棟の建物(以下「区分所有建物」という。)の全部が滅失した場合において、その建物に係る同条第六項 に規定する敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利であったときは、その権利(以下「敷地共有持分等」という。)を有する者は、次条第一項の決議をするための集会を開くことができる。
   2  前項の規定による集会(以下「再建の集会」という。)における敷地共有持分等を有する者(以下「敷地共有者等」という。)の各自の議決権は、敷地共有持分等の価格の割合による。
   
3  再建の集会は、議決権の五分の一以上を有する敷地共有者等が招集する。
   4  再建の集会における招集の手続については区分所有法第三十五条第一項 本文、第二項及び第五項並びに第三十六条の規定を、議事及び議決権の行使については区分所有法第三十九条 及び第四十条 の規定を、議長については区分所有法第四十一条 の規定を、議事録の作成については区分所有法第四十二条第一項 から第四項 までの規定を、議事録並びにこの項において準用する区分所有法第四十五条第一項 及び第二項 に規定する書面又は電磁的方法による決議に係る書面並びに同条第一項 及び第二項 の電磁的方法が行われる場合に当該電磁的方法により作られる電磁的記録(以下「議事録等」という。)の保管及び閲覧については区分所有法第三十三条第一項 本文及び第二項 の規定を、書面又は電磁的方法による決議については区分所有法第四十五条第一項 から第三項 まで及び第五項 の規定を準用する。この場合において、区分所有法第三十三条第一項 本文中「管理者」とあるのは「敷地共有者等で再建の集会の決議で定める者」と、区分所有法第三十五条第一項 本文、第三十六条、第三十九条第三項、第四十二条第三項及び第四項並びに第四十五条第一項及び第二項中「区分所有者」とあるのは「敷地共有者等」と、区分所有法第三十五条第二項 及び第四十条 中「専有部分が数人の共有に属するとき」とあるのは「一の専有部分を所有するための敷地利用権に係る敷地共有持分等を数人で有するとき」と、区分所有法第三十五条第五項 中「場合において、会議の目的たる事項が第十七条第一項、第三十一条第一項、第六十一条第五項、第六十二条第一項、第六十八条第一項又は第六十九条第七項に規定する決議事項であるときは」とあるのは「場合においては」と、区分所有法第三十九条第一項 中「この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数」とあるのは「この法律に別段の定めがない限り、敷地共有者等の議決権の過半数」と、区分所有法第四十一条 中「規約に別段の定めがある場合及び別段の決議をした場合を除いて、管理者又は集会を招集した区分所有者の一人」とあるのは「別段の決議をした場合を除いて、再建の集会を招集した敷地共有者等の一人」と、区分所有法第四十二条第一項 中「電磁的記録」とあるのは「電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)」と、区分所有法第四十五条第一項 から第三項 まで中「この法律又は規約により」とあるのは「この法律により」と読み替えるものとする。」とあり、
 3項により、 議決権の1/5以上を有する敷地共有者等が招集します。



2 再建の集会における敷地共有者等の各自の議決権は、敷地共有持分等の価格の割合による。

○ 正しい。 議決権の割合は、選択肢1で引用しました、特別措置法第2条2項。
  「2  前項の規定による集会(以下「再建の集会」という。)における敷地共有持分等を有する者(以下「敷地共有者等」という。)の各自の議決権は、敷地共有持分等の価格の割合による。」とあり、正しい。



3 再建の集会における再建の決議は、敷地共有者等の議決権の3/4以上の多数でしなければならない。

X 誤っている。 4/5以上必要。 再建の集会における再建の決議は、特別措置法第3条1項。
 「(再建の決議等)
  第三条  再建の集会においては、敷地共有者等の議決権の五分の四以上の多数で、滅失した区分所有建物に係る区分所有法第二条第五項 に規定する建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に建物を建築する旨の決議(以下「再建の決議」という。)をすることができる。」とあり、
敷地共有者等の議決権の4/5以上が必要です。3/4以上ではありません。



4 再建の決議においては、新たに建築する建物の設計の概要、再建建物の建築に要する費用の概算額、費用の分担に関する事項及び再建建物の区分所有権の帰属に関する事項を定めなければならない。

○ 正しい。 再建の決議において定める事項は、特別措置法第3条2項。
 「(再建の決議等)
  第三条  
   2  再建の決議においては、次の事項を定めなければならない。
     一  新たに建築する建物(以下「再建建物」という。)の設計の概要
     二  再建建物の建築に要する費用の概算額
     三  前号に規定する費用の分担に関する事項
     四  再建建物の区分所有権の帰属に関する事項」とあり、
@新たに建築する建物の設計の概要、A再建建物の建築に要する費用の概算額、B費用の分担に関する事項 及び C再建建物の区分所有権の帰属に関する事項 を定めます。(ついでに、区分所有法での、建替え決議で定める事項もまとまておくこと。)



答え:3  (ここは、再建の決議は、区分所有法第62条での「建替え決議」での、4/5以上が浮かべば、後は簡単。)

問11

〔問 11〕下図のとおり、専有部分のある建物であるA〜D棟等がある場合において、区分所有法の規定によれば、団地関係(この問いにおいて、区分所有法 第65条の団地建物所有者の団体をいう。)はいくつ成立するか。ただし、規約に別段の定めはないものとし、団地関係は重層して成立するものとする。

*全体の解説をします。
 まず、区分所有法第65条の規定は、
 「(団地建物所有者の団体)
  第六十五条  一団地内に数棟の建物があつて、その団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)がそれらの建物の所有者(専有部分のある建物にあつては、区分所有者)の共有に属する場合には、それらの所有者(以下「団地建物所有者」という。)は、全員で、その団地内の土地、附属施設及び専有部分のある建物の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」です。
 ここでの、 団地の団体の構成要件は、
 @1団地内に数棟の建物があること、 
 Aその団地内での土地又は附属施設が、数棟の所有者の共有になっている 
 ことです。この2つの要件が満たされる必要があります。(この場合、マンション=区分所有建物 に限らず、戸建でもこの団地関係に入りますので、注意してください。)
 それでは、1つの区画(敷地)に、2つ以上の建物があり、土地なり附属施設(ごみ集積所や駐車場)が、数棟の建物の所有者全員の共有(賃借権や地上権でも可)になっているものを、以下の図で見ていきましょう。


 ア(Aのごみ集積所=附属施設)...これは、A棟、B棟の敷地上にあり、A棟だけの共有とありますから、団地関係にはありません。
 
イ(A、Bの敷地=土地)...これは、A、B、2棟という複数の建物があり、また、A、B、2棟の区分所有者全員の共有ですから、ABによる団地関係を構成します。
 
ウ(A、B、Cの立体駐車場)...これも、団地内に複数の建物があり、また、A、B、C 3棟の共有ですから、ABCによる団地関係を構成します。
 
エ(A、B、C、Dの通路=土地)...この通路(土地)も、1区画内に、A、B、C、D棟があり、A、B、C、D棟での共有ですから、ABCDによる団地関係を構成します。
 オ(C棟があるCの敷地)...ここは、C棟だけの共有ですから、団地関係は成立しません。これは、D棟があるDの敷地でも同様です。
 
カ(C、Dの立体駐車場=附属施設)...ここも、団地内に、C、D棟があり、C、D棟の共有関係がありますから、CDによる団地関係を構成します。
 
キ(B、C、Dのごみ集積場=附属施設)...ここも、団地内に、B,C、D棟があり、B、C、Dの共有関係がありますから、BCDによる団地関係を構成します。

1 二つ
2 三つ
3 四つ
4 五つ 


答え:4(5つ。イ、ウ、エ、カ、キ)  (団地からの新しい出題だ。分かり易くするため、図まで作ったので、時間がかかる。)

問12

〔問 12〕甲マンション(管理者A)の1室は、マンション業者BからCに分譲され、1年後、Dに転売された。Dは譲受後すぐに入居したが、その際、Bか らCへの分譲時にすでに存在していた隠れた瑕疵を発見した。この場合に関する次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 その瑕疵が共用部分にあるか、専有部分にあるか不明であるときは、共用部分にあるものと推定して、AがBに対して瑕疵担保責任を追及することとなる。

X 誤っている。
  分かったようで、分からない出題です。こんな設問は、図を書きましょう。 

 まず、民法での売主の瑕疵担保責任は、民法第570条
 「(売主の瑕疵担保責任)
  第五百七十条  売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。」です。
そして、準用されている、第566条は、
 「(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
  第五百六十六条  売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
   2  前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
   3  前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。」です。
 売買の目的物であるマンションの1室に、通常人の注意を払っても発見できない(隠れたる)、通常備えるべき性状や設備が欠けている場合(瑕疵がある)に、買主は、事実を知った時から一年以内に売主に対して、@損害賠償請求 A契約の解除(目的を達しないときだけ) ができます。ただし、修補請求はできません。これが、瑕疵担保責任の追及です。
 また、 多分、出題者がいいたいのは、区分所有法第9条
 「(建物の設置又は保存の瑕疵に関する推定)
  第九条  建物の設置又は保存に瑕疵があることにより他人に損害を生じたときは、その瑕疵は、共用部分の設置又は保存にあるものと推定する。」の規定ですが、
これは、他人に損害を与え、賠償責任を負う場合に適用される規定ですから、この設問では、適用がありません。
 あとは、管理者Aが、業者Bに対して、瑕疵担保責任を追及できるか、ですが、ここでは、共用部分か専有部分かが、不明確であり、共用部分であれば、区分所有法第26条2項
 「(権限)
  第二十六条
   2  管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。 」により、
最初の購入者Cが転売していなければ、管理者Aも購入者Cの代理として、業者Bに請求できるのですが、この設問では、Dに転売しています。すると、Dが瑕疵担保責任を追及できるのは、売主のCであり、Dから元の売主である業者Bには、契約関係がないため、直接、瑕疵担保責任を追及できない関係になります。

 設問のように、管理者Aが業者Bに対して、無条件には、瑕疵担保責任を追及できません。


2 その瑕疵が専有部分にあるときは、DはCに対し、CはBに対し、瑕疵担保責任を追及することとなる。

○ 正しい。 選択肢1で述べましたように、民法第570条により、専有部分に瑕疵があれば、売主の瑕疵担保責任として買った者が追及できます。設問の関係では、購入者Dは売主Cに対して瑕疵担保責任を追及し、そして、最初の買主Cは売主の業者Bに瑕疵担保責任を追及できます。


3 Dは、Cの特定承継人として、直接、Bに対し瑕疵担保責任を追及することはできない。

○ 正しい。 選択肢1でも述べましたように、元の業者Bと最初の購入者Cから購入したDには、直接の契約関係がありませんから、特定承継人の地位でも、瑕疵担保責任を追及することはできません。


4 その瑕疵が共用部分にあるときでも、Aは、法律上当然には、Cを代理して、Bに対して瑕疵担保責任を追及することができない。 

○ 正しい。 最初の購入者Cは、業者Bに対しては、もうそのマンションの区分所有者ではありませんから、共用部分での瑕疵担保責任を追及するなら、Cから管理人Aに別途、代理権を与える行為が必要となります。


答え:1  (選択肢1は、何を求めている出題か、悩む。 単純におかしいというだけで、いいのか? それとも、もっと深い考察、挙証責任まで、求めているのか? なお、売主の瑕疵担保責任は、過去から出題が多いので、まとめています。http://www20.tok2.com/home/tk4982/kashi-tanpo.htm ご利用ください。

順番に解説をしていくと時間がかかるので、次は、「問29」を解説します。

問13

〔問 13〕甲マンションの管理組合(区分所有法第3条に規定する区分所有者の団体をいう。以下同じ。)は、各戸の専有部分に立ち入り、専用使用権の設定されたベランダを修繕する予定であったが、301号室の区分所有者である一人住まいのAが、エ事予定時期に長期に出張することになった。Aは、管理組合と協議し、301号室の鍵を出張期間中管理組合に預けることとした。この場合の預かった鍵に関する次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 Aが出張している間に、Aの友人であるBが管理組合事務所を訪れ、「301号室の鍵を貸してくれ。」と言ってきたときは、管理組合は、Aに確認するまでもなく、Bに鍵を貸与しなければならない。

X 誤っている。 こんな常識的な問題を出されても、根拠を示す解説者は、困るけど、設問のような、鍵を預けると、民法第657条に規定される「寄託」があります。
 「(寄託)
  第六百五十七条  寄託は、当事者の一方が相手方のために保管をすることを約してある物を受け取ることによって、その効力を生ずる。」
ここでの、「保管をすること」とは、目的物を保持して、その滅失・損傷を防止する措置を講じることで、預かっている者(受寄者)には、目的物の所有権はありません。
そこで、第三者である、友人が、「301号室の鍵を貸してくれ。」と言ってきたときは、民法第658条に対応が規定されています。
 「(寄託物の使用及び第三者による保管)
  第六百五十八条  受寄者は、寄託者の承諾を得なければ、寄託物を使用し、又は第三者にこれを保管させることができない。
   2  第百五条及び第百七条第二項の規定は、受寄者が第三者に寄託物を保管させることができる場合について準用する。」とあり、
1項によれば、 寄託者(A)の承諾がないと、鍵は友人には貸せません。



2 ベランダの工事の最中、管理組合は、301号室の鍵を側溝に落とし紛失してしまったが、その鍵を無償で預かっているときは、管理組合は鍵の交換等に要する費用は負担しなくてよい。

X 誤っている。 鍵を預かると、無報酬であっても、民法第659条
 「(無償受寄者の注意義務)
   第六百五十九条  無報酬で寄託を受けた者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。」とあり、
その人が普通に用いる注意義務で保管しなければなりません。 鍵を側溝に落とし紛失するのは、受託者に注意義務違反があったと判断され、管理組合は鍵の交換等に要する費用を負担することになります。



3 工事の着手が遅れ、Aが出張から戻った後にベランダの工事を行うことになったときは、管理組合は、工事の便宜のため、Aに断ることなく合い鍵を作ることができる。

X 誤っている。 Aの承諾がなくては、合い鍵は作れません。民法第658条1項
 「(寄託物の使用及び第三者による保管)
  第六百五十八条  受寄者は、寄託者の承諾を得なければ、寄託物を使用し、又は第三者にこれを保管させることができない。 」とあり、
寄託者であるAの承諾が必要です。



4 出張中に、AがCに301号室を譲渡した場合において、Cが鍵の返還を求めて訴えを提起した場合は、管理組合は、遅滞なくその事実をAに通知しなければならない。

○ 正しい。 これは、民法第660条。
 「(受寄者の通知義務)
  第六百六十条  寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し、又は差押え、仮差押え若しくは仮処分をしたときは、受寄者は、遅滞なくその事実を寄託者に通知しなければならない。」とあり、
「出張中に、AがCに301号室を譲渡した場合」とは、出張中に軽々しくマンションの譲渡をするのか、また、購入者が事前に話し合いもしないで鍵の返還を求めて、急に訴えまでするのかと、かなり突っ込める強引な設問ですが、鍵の権利は、Cに移っていますから、 受寄者である管理組合は、遅滞なくその事実を寄託者であるAに通知します。


答え:4  (常識でも正解肢の4は、分かる?)

問14

〔問 14〕甲マンションの202号室の区分所有者Aは、202号室(Aが専用使用権を有するベランダを含む。)をBに賃貸している。B宅を訪れたBの知人Cが、ベランダの手すりにつかまったところ、手すりと一緒に落下して負傷した。手すりの落下の原因は、ベランダの留め金部分の支持力の不足によるものであった。この場合の損害賠償責任に関する次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 Aは、損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたことを証明できなければ、土地工作物の占有者としての損害賠償責任を負う。

X 誤っている。 土地の工作物等の占有者及び所有者の責任については、平成22年 マンション管理士試験 「問17」選択肢3 がかなりもめた。
 そして、平成22年 マンション管理士試験 「問16」 も。 平成22年 管理業務主任者試験 「問5」 、平成17年 管理業務主任者試験 「問6」 。
  ベランダの留め金部分の支持力の不足で他人に損害をあたえますと、土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があるとして、一次的にその建物の占有者、そして、二次的に所有者が損害賠償の責任を負います。その規定が、民法第717条
 「(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
  第七百十七条  土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。
   2  前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。
   3  前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。 」です。
 設問においては、通常共用部分とされる、ベランダの事故ですが、マンションの共用部分の管理は、賃借人は関していないという説もありますが、事実上の管理は、賃借人が行っている以上、共用部分の占有者も賃借人と考えるのが妥当です。また、設問では、特に、「Aが専用使用権を有するベランダ」とあり、その賃借人を占有者ととらえる方向にもっていきたがっている?
そこで、民法第717条の賠償責任を負うのは、まず、占有者です。しかし、その占有者が、損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときには、次の段階として所有者が責任を負います。
設問ではAは(区分)所有者で、Bに賃貸していますから、この場合の占有者は賃借人であるBとなりますから、Aは土地工作物の占有者ではないため、誤っています。(最初に設問文を読むと、A、Bで条文が混乱する。)



2 Bは、損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたことを証明できなければ、土地工作物の占有者としての損害賠償責任を負う。

○ 正しい。 選択肢1で述べましたように、賃借人Bは、占有者の立場にありますから、共用部分であっても、民法第717条1項
 「(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
  第七百十七条  土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」とあり、
損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたことを証明できなければ、土地工作物の占有者としての損害賠償責任を負うことになります



3 甲マンションの管理組合は、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたことを証明できたときは、土地工作物の所有者に代わって損害賠償責任を負う。

○ 正しい。 選択肢1及び2で述べましたように、占有者が、損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたことを証明できると、民法第717条1項
 「(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
  第七百十七条  土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」とあり、
占有者の責任ではなくなり、つぎに所有者の責任となります。
 そこで、マンションでは共用部分は、区分所有者が原則、その有する専有部分の割合で持っていて(区分所有法第14条)、共用部分の管理は、区分所有者の集会の決議や規約(区分所有法18条)で行いますから、共用部分のベランダの所有者の団体(管理組合)が損害賠償責任を負うと考えていいでしょう。(ここでの、出題の疑問としては、区分所有法では、区分所有者の団体(同法第3条)とあるだけで、マンションの区分所有者の団体(通常は管理組合ですが)は、法的にもかなりその位置が不明確です。「土地工作物の所有者に代わって」が、どこまで、この曖昧な「管理組合」の存在を考えているのかです。管理組合は、団体であり所有者ではありませんが、管理においては、所有者に代わって「権利能力なき社団」として扱われることが可能です。例えば、区分所有者の団体が、損害賠償金を払いきれない場合には、その先の各区分所有者の責任となれば、また、突っ込んだ検討が必要な設問です。)(2011年12月20日:加筆)
 ここを、「誤っている」とするなら、平成17年 管理業務主任者試験 「問6」 選択肢3 を「正しい」とする出題機関の在り方が、問題だ。



4 甲マンションの区分所有者全員は、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたことを証明できたときは、土地工作物の所有者としての損害賠償責任を負う。

○ 正しい?
 ここは、選択肢3で述べましたように、共用部分は、区分所有者が、原則、その有する専有部分の割合で持っていますから(区分所有法第14条)、選択肢1及び2で引用しました民法第717条
 「(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
  第七百十七条  土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。」とあり、
占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしていたことを証明できたときは、占有者の責任ではなくなり、つぎに甲マンションの区分所有者全員の責任となります。(ここは、選択肢3と、同じような設問で、管理組合=区分所有者全員が加入した団体 ととらえれば、選択肢3と共に、正しいとなりますが、また、民法で土地工作物の所有者であるためには、団体は認めないといいたいのか、適切でない出題です。)



答え:1 (なんと、面倒な出題。 高等なレベルでの出題か? 区分所有法第3条の団体の議論までは、突っ込んでいないと判断します。)
マンション管理センターの解答:3


★どうして、ここで、判断が分かれるのか?
 区分所有者の団体をどうとらえるかです。また、管理組合という団体を、民法の土地の所有者と同じように扱う、平成23年 管理業務主任者試験 「問6」の出題をみれば、この出題が、いかに不適切かがわかります。また、平成23年 マンション管理士試験 「問25」 の管理組合と区分所有者の団体のとらえ方など、比較検討すれば、まだまだ出題者が民法と区分所有法の違いを認識していないこともわかります。
(2012年 3月 9日:追記)

問15

〔問 15〕甲マンションの405号室の区分所有者Aが死亡し、子B及びCが405号室を共同相続する場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。ただし、Aの遺言はないものとする。

1 B及びCの共有となった相続財産である405号室について、遺産分割の協議が調わないときは、B又はCは、その分割について、共有物分割の訴えを提起することとなる。

X 誤っている。 平成16年 マンション管理士試験 「問14」 
   まず、相続財産である遺産の扱い方は、相続人が複数存在するので、民法での共有(第249条以下)に近いのですが、法的には遺産分割と共有物分割は違う扱いとなることが設問の前提です。
 遺産分割は、共同相続人の共有に属する遺産を個々の相続人に分割する手続であり、 一方、共有物分割は、 共有者間においてその共有財産を分割する手続で、 いずれも最終的には共有関係の解消という共通点はありますが、遺産分割は遺産分割手続(民法第907条など)によりなされなければならず、 遺産分割前に相続人が遺産に属する個々の財産について共有物分割の訴訟を起こすことは許されないと解されています。
 参考になるのは、民法第907条
 「(遺産の分割の協議又は審判等)
  第九百七条  共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の分割をすることができる。
   
2  遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。
   3  前項の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。」とあり、
2項によれば、遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができるとなります。
また、同法第908条
 「(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)
  第九百八条  被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。」
注:この相続財産については、分割前の状態を、「合有」とみるか「共有」とみるかで、過去から解釈での論争があり、暇なときにでも、民法のテキストを読んでください。かなりのページをさいて、多くの学者が解説をしています。
そして、下の選択肢2のように、遺産分割をしたのちに、 個々の財産を相続人間の共有にしておくこととなった場合には、その共有関係の解消をするためには、今度は共有物分割訴訟を提起することとなります。


2 遺産分割の協議の結果、いったん405号室をB及びCの共有としたが、その後、Bの単独所有に変更し、CがBから代償金を受け取る場合は、再度の遺産分割の協議をしなければならない。

X 誤っている。 一度遺産分割をしますと、民法第909条
 「(遺産の分割の効力)
  第九百九条  遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。」とあり、
その分割の効力が、相続開始時に遡ります(遡及効)ので、選択肢1でも述べましたように、遺産分割の手続きから、共有物の分割に移ると考えられています。



3 B及びCの共有となった相続財産である405号室について、Bが単独で相続し、Cに対して代償金を支払う遺産分割の方法は、調停又は審判の手続によらなければならない。

X 誤っている。  設問が分かり難いのですが、Bが単独で相続し、Cに対して代償金を支払う遺産分割の方法は「代償分割」として、認めらた遺産分割の方法です。その協議が正当に調えば、調停や審判の手続きは不要です。協議が調わない場合に、「調停又は審判の手続き」ができるのです。
 民法第907条2項
 「 2  遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その分割を家庭裁判所に請求することができる。」



4 B及びCの遺産分割の協議中にCが405号室の共有持分権を第三者であるDに譲渡した場合、DがBとの405号室の共有関係解消のためにとるべき法的手続は、共有物分割の訴えの提起となる。

○ 正しい。 共同相続人の一人が、遺産分割がなされる前に自分の持分を第三者に譲渡することはできると考えられています。それは、民法第905条。
 「(相続分の取戻権)
  第九百五条  共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
   2  前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。 」とあり、
1項の、「共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したとき」の規定があるからです。すると、第三者は相続人の権利・義務を引き継ぐことになります。
そして、判例として、相続人の一人から遺産を構成する共有持分を譲渡された第三者がその共有関係を解消するためにとるべき手段は、民法第907条に基づく遺産分割審判ではなく、民法第258条に基づく共有物分割訴訟であると解するのが相当であるとし、遺産分割請求ではなく、共有物分割請求であるとしました。(最高裁:昭和50年11月7日
 なお、他人が相続の話に入ってくると面倒です。そこで、民法第905条1項により、「共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。」として第三者を排除できます。



答え:4  (これまた、過去の出題と異なった民法の箇所からの出題で、判例を探したりで解説に時間がかかった。)

問16

〔問 16〕Aは甲マンションの201号室を所有しているが、同マンションでは、管理規約に基づいて、各区分所有者は総会の決議により定められている管理費を支払わなければならないとされている。ところがAは、この管理費を滞納している。この場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1 Aの子B(40歳)が、滞納分の管理費額を管理組合の事務所に持参してきたので、理事長はこれを受領した。翌日、Aもこれを喜んでいる旨を管理組合に告げてきた。ところが、その後、AとBが仲違いし、Bは、管理組合に対してBが支払った管理費の返還を請求している。このとき、管理組合は返還に応じなくてよい。

○ 正しい。 本来、債務(滞納管理費)の支払いは債務者本人がするのが筋ですが、第三者であるAの子Bも支払い(弁済)はできます。それが、民法第474条
 「(第三者の弁済)
  第四百七十四条  債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、その債務の性質がこれを許さないとき、又は当事者が反対の意思を表示したときは、この限りでない。
   2  利害関係を有しない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。」 とあり、
子Bは、2項での利害関係者とされるかどうかについては、この場合、姻戚関係など事実上の利害関係は含まないとの解釈から、利害関係を有しない第三者となりますが、債務者である親Aも「これを喜んでいる」とのことですから、1項での債務者の意思に反した弁済ではありません。Bによる管理組合への弁済は有効です。
 そして、その後親子の仲違いで、子Bが返還を求めたとのことですが、これは、正当に第三者からの弁済がなされたあとは、弁済した第三者(B)は、代位弁済者の地位を得て、債務者に求償することになりますから、管理組合は返還をしなくて構いません。(2012年 3月 9日:一部変更)
 参考:民法第499条
 「(任意代位)
  第四百九十九条  債務者のために弁済をした者は、その弁済と同時に債権者の承諾を得て、債権者に代位することができる。
   2  第四百六十七条の規定は、前項の場合について準用する。」



2 Aが死亡し、Bが2分の1、C及びDがそれぞれ4分の1の割合で共同相続人となった。このとき、管理組合は、B、C及びDのいずれに対してもAが滞納している管理費の全額の支払を請求することができる。

X 誤っている。 相続財産の扱い方は、共有と絡んで、論争が多く設問としては適切でない。
  ここの出題に関しては、過去問も多い。平成21年マンション管理士試験 「問14」平成19年マンション管理士試験 「問17」平成17年マンション管理士試験 「問18」などで出ている。
 ここも、「問15」とからむ。分割前の相続財産は、民法第899条
 「第八百九十九条  各共同相続人は、その相続分に応じて被相続人の権利義務を承継する。」とあり、
遺産分割がされていないと、法定相続分として、Bが1/2、C・Dが各1/4を有するなら、滞納管理費は分割できる金銭債務(可分債務)として、相続の時に、当然に分割されると解されています(最高裁:昭和29年4月8日)から、Bが1/2、C・Dが各1/4の支払義務を負います。そこで、管理組合は、B、C及びDのいずれに対してもAが滞納している管理費の全額の支払を請求はできません。相続分に応じた金額だけの請求となります。金銭債権や金銭債務が相続された場合にも、当然に分割債権関係となる、というのが判例です。
 例えば、200万円の預金をしている人が死んで、相続人が2人いる場合には、各相続人は、100万円ずつ、銀行に預金の払戻を請求できます。それは、逆に200万円の借金をしている人が死んだ場合も同じで、2人の相続人は、それぞれ100万円ずつ返済すれば足りるということです。
ですが、遺産分割前の状態では、最終的な分割ではないため、相続分が後の遺産協議により変更の可能性が非常に強いことを考えると、遺産分割前の財産は、共同相続人が全員で持っていると考えて、管理組合は、B、C及びDのいずれに対してもAが滞納している管理費の全額の支払を請求することができるとする方が妥当です。最高裁の判断は誤っていますが、この設問では、仕方ないですね



3 Aは201号室を購入するにあたり、E銀行から融資を受け、同室にはE銀行のために抵当権が設定されその旨登記された。Aが融資金の返済を遅滞したため、E銀行はその抵当権に基づいて同室の競売手続をとった。この手続において、管理組合は滞納管理費分の金額について抵当権者に優先して配当を受けることができる。

X 誤っている。 この出題は、区分所有法第7条に規定される「先取特権」が、登記された抵当権よりも優先するか、どうかということです。
 まず先取特権とは、民法第303条
 「(先取特権の内容)
  第三百三条  先取特権者は、この法律その他の法律の規定に従い、その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利を有する。」とあり、
「その債務者の財産について、他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利」です。
 では、区分所有法第7条
 「(先取特権)
  第七条  区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。
   2  前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす。
   3  民法 (明治二十九年法律第八十九号)第三百十九条 の規定は、第一項の先取特権に準用する。」です。
これから先は、解釈上での解説ですが、
  1.抵当権が未登記であれば、区分所有法第7条の先取特権が未登記でも抵当権に優先します。 
  2.抵当権が登記されていて、区分所有法第7条の先取特権が未登記だと、抵当権が優先します。
  3.抵当権と区分所有法第7条の先取特権が共に登記されていると、優先順序は、その登記の前後によって決まります。(先に登記した方に優先権があります。)
 設問では、抵当権は登記されていて、区分所有法第7条の先取特権が未登記のようですから、管理組合は滞納管理費分の金額について抵当権者に優先して配当を受けることができませ
ん。


4 管理組合は、1年前にAに支払を催促したが、それ以外には支払の催促等を行っていない。管理組合は、ついにAを相手取って滞納管理費の支払を求める訴えを提起したが、その訴訟において、Aは5年よりも前に発生した管理費債権については、すでに時効により消滅していると主張したが、10年以内に発生した管理費債権については支払請求が認められる。

X 誤っている。 ここは、滞納管理費の消滅時効の年数が、5年か10年かでもめたことを取り上げています。ここの過去問題も多い。平成22年マンション管理士試験 「問7」 選択肢3、平成21年管理業務主任者試験 「問39」など。
  マンションでの管理費や修繕積立金の消滅時効については、定期金債権の10年かそれとも短期の5年かについては、過去から裁判でも争われ、最終的に、最高裁判決:平成16年4月23日は、基本権から派生する支分権として、民法第169条に定める
5年間での短期消滅時効としました。10年間ではありません。5年間となりましたから、設問の「10年以内に発生した 管理費債権については」支払請求は時効になっているものもあります。
しかし、この判決での、管理費はともかく、修繕積立金も5年の消滅時効でいいのかは、修繕積立金の内容から疑問がある点です。
参考:民法第169条
 「(定期給付債権の短期消滅時効)
  第百六十九条  年又はこれより短い時期によって定めた金銭その他の物の給付を目的とする債権は、五年間行使しないときは、消滅する。」
 民法第168条1項
 「(定期金債権の消滅時効)
 第百六十八条  定期金の債権は、第一回の弁済期から二十年間行使しないときは、消滅する。最後の弁済期から十年間行使しないときも、同様とする。」

 なお、管理組合が、1年前にAに支払を催促したことは、時効の中断にはなっていません。
参考:民法第147条(時効の中断事由)
  第百四十七条  時効は、次に掲げる事由によって中断する。
     一  請求
     二  差押え、仮差押え又は仮処分
     三  承認」
 民法第153条(催告)
  「第百五十三条  催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事審判法 による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。 」(2012年 3月 9日:追記)



答え:1 (この民法関係も、選択肢1は新しい。 しかし、他が誤っているのはすぐ分かる? なお、先取特権の解説は、私の「超解説 区分所有法」の第7条に滞納管理費の回収と合わせて載せていますから、参考にしてください。)

問17

〔問 17〕不動産の登記情報の提供に関する次の記述のうち、不動産登記法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 当該不動座の利害関係者でない者は、不動産の所有権や所有権以外の権利についての登記事項証明書の交付を請求することができない。

X 誤っている。 不動産登記法については、手数料などの改正もあったので、ここで、少し詳細に解説をしておきます。
  ここは、不動産登記の目的を規定した同法第1条
 「(目的)
  第一条  この法律は、不動産の表示及び不動産に関する権利を公示するための登記に関する制度について定めることにより、国民の権利の保全を図り、もって取引の安全と円滑に資することを目的とする。 」が分かっていれば、超簡単。
 不動産の所有権や抵当権など各種権利関係を明確にするために、登記記録や各種図面を公開し、広く情報を国民に提供することが登記所の役目です。そこで、登記事項証明書の交付は誰でも、手数料を払って交付申請ができます。根拠は、不動産登記法第119条
 「(登記事項証明書の交付等)
  第百十九条  
何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の全部又は一部を証明した書面(以下「登記事項証明書」という。)の交付を請求することができる。
   2  何人も、登記官に対し、手数料を納付して、登記記録に記録されている事項の概要を記載した書面の交付を請求することができる。
   3  前二項の手数料の額は、物価の状況、登記事項証明書の交付に要する実費その他一切の事情を考慮して政令で定める。
   4  第一項及び第二項の手数料の納付は、収入印紙をもってしなければならない。ただし、法務省令で定める方法で登記事項証明書の交付を請求するときは、法務省令で定めるところにより、現金をもってすることができる。
   5  第一項の交付の請求は、法務省令で定める場合を除き、請求に係る不動産の所在地を管轄する登記所以外の登記所の登記官に対してもすることができる。 」とあり、
1項により、該当の不動産の利害関係人でなくても、登記記録に記録されている事項の全部又は一部を証明した書面(「登記事項証明書」)は手数料を収めれば、交付申請ができます。
 また、「登記事項証明書」の交付請求は、閲覧と異なり、郵便による申請またオンラインによる交付請求(オンライン請求」)をすることができます。オンライン請求は,登記事項証明書等の交付の請求をオンラインでするだけです。発行された登記事項証明書等は現物を窓口で受け取るか、郵送を希望するかです。登記事項証明書等がオンラインによりE−メールや添付資料などとして電磁的に交付されるものではありません。また、登記事項要約書の請求は、以前あった「閲覧制度」に代わるもので、郵送やオンライン請求をすることができません。

注:平成23年4月1日から、登記事項証明書の交付請求の手数料の大改正があったので、注意が必要です。
 *以前は専用の登記印紙だったのが、通常の収入印紙になった。
 *書面で請求 (前) 1,000円 → (後)700円 (1通)
 *オンライン請求 (前) 700円 → (後)ア.570円 (送付で受領)
                       → イ.550円 (新規。窓口で受領)
 なお,書留,簡易書留又は速達による送付を請求した場合には、実費として、これらの費用が手数料に加算されます。



2 不動産の所有権や所有権以外の権利について、現に効力を有する主要な情報のみを知るには、登記事項証明書の現在事項証明書や登記事項要約書の交付請求の方法によることができる。

○ 正しい。 登記事項証明書の現在事項証明書の内容は、登記記録に記録されている事項のうち現に効力を有する部分を証明したものです。
 (不動産登記規則第196条1項2号)
 「(登記事項証明書の種類等)
  第百九十六条  登記事項証明書の記載事項は、次の各号の種類の区分に応じ、当該各号に掲げる事項とする。
     一  全部事項証明書 登記記録(閉鎖登記記録を除く。以下この項において同じ。)に記録されている事項の全部
     
二  現在事項証明書 登記記録に記録されている事項のうち現に効力を有するもの
     三  何区何番事項証明書 権利部の相当区に記録されている事項のうち請求に係る部分
     四  所有者証明書 登記記録に記録されている現在の所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所
     五  一棟建物全部事項証明書 一棟の建物に属するすべての区分建物である建物の登記記録に記録されている事項の全部
     六  一棟建物現在事項証明書 一棟の建物に属するすべての区分建物である建物の登記記録に記録されている事項のうち現に効力を有するもの
   2  前項第一号、第三号及び第五号の規定は、閉鎖登記記録に係る登記事項証明書の記載事項について準用する。」とあり、
不動産の所有権や所有権以外の権利について、現に効力を有する主要な情報を知ることができます。

また、登記事項要約書とは、不動産登記規則第27条1項2号
 「(請求書類つづり込み帳)
 第二十七条  請求書類つづり込み帳には、次に掲げる請求に係る書面をつづり込むものとする。
     一  登記事項証明書の交付の請求
     二  登記記録に記録されている事項の概要を記載した書面(以下「
登記事項要約書」という。)の交付の請求
     三  地図等の全部又は一部の写し(地図等が電磁的記録に記録されているときは、当該記録された情報の内容を証明した書面)の交付の請求
     四  地図等の閲覧の請求
     五  土地所在図等の全部又は一部の写し(土地所在図等が電磁的記録に記録されているときは、当該記録された情報の内容を証明した書面)の交付の請求
     六  登記簿の附属書類の閲覧の請求
     七  登記識別情報に関する証明の請求
     八  筆界特定書等の全部又は一部の写し(筆界特定書等が電磁的記録をもって作成されているときは、当該記録された情報の内容を証明した書面)の交付の請求
     九  筆界特定手続記録の閲覧の請求
   2  前項各号に掲げる請求が電子情報処理組織を使用する方法によりされた場合は、当該請求に係る情報の内容を書面に出力したものを請求書類つづり込み帳につづり込むものとする。」とあり、
1項2号により、登記記録に記録されている事項の概要を記載した書面です。
 登記事項要約書では、過去の権利の発生・移転・消滅の履歴や権利の発生原因(売買など)は省略されていますが、登記事項証明書の現在事項証明書と同じように不動産の所有権や所有権以外の権利など、現に効力を有する主要な情報を知ることができます。ただし、登記事項証明書には、下の方に証明文「登記簿に記録されている事項の全部を証明した書面である。登記官 印」がありますが、登記事項要約書にはその証明文はありません。概要だけです。
歴史的にみれば、従来は、登記記録(登記用紙)が紙で調製され、バインダー式の帳簿に閉じられてたので、これを登記所内の所定の場所で閲覧することができましたが、現在では登記所がコンピューター化されたため紙でないコンピューターの中に保存されていますファイルは閲覧できません。そこで閲覧に代わるものとして、磁気ディスク上の登記記録の要約を、希望者が入手できるようにしたものが登記事項要約書です。
登記事項要約書の記載内容は以下のものです。
  1、 不動産の表示に関する事項(所在、地番、地目、地積、家屋番号、床面積など)
  2、現在の所有者の住所、氏名及び申請書受付の年月日、受付番号
  3、甲区、乙区の登記のうち、現在も効力を有しているものの主な登記事項

なお、登記事項要約書の手数料は、500円で改正がありません。




3 登記事項証明書には交付年月日や登記官の認証文の記載があるが、登記事項要約書には交付年月日や登記官の認証文は記載されない。

○ 正しい。 選択肢1や2で述べましたように、登記事項証明書には、下の方に「交付年月日や登記官の認証文の記載」がされていますが、登記事項要約書には「交付年月日や登記官の認証文は記載」されていません。 上の2つの図面を良くみて違いを比べてください。
参考:不動産登記規則 第197条1項
 「(登記事項証明書の作成及び交付)
  第百九十七条  登記官は、登記事項証明書を作成するときは、請求に係る登記記録に記録された事項の全部又は一部である旨の
認証文を付した上で、作成の年月日及び職氏名を記載し、職印を押印しなければならない。この場合において、当該登記記録の甲区又は乙区の記録がないときは、認証文にその旨を付記しなければならない。
   2  前項の規定により作成する登記事項証明書は、次の各号の区分に応じ、当該各号に定める様式によるものとする。ただし、登記記録に記録した事項の一部についての登記事項証明書については適宜の様式によるものとする。
     一  土地の登記記録 別記第七号様式
     二  建物(次号の建物を除く。)の登記記録 別記第八号様式
     三  区分建物である建物に関する登記記録 別記第九号様式
     四  共同担保目録 別記第十号様式
     五  信託目録 別記第五号様式
   3  登記事項証明書を作成する場合において、第百九十三条第一項第五号に掲げる事項が請求情報の内容とされていないときは、共同担保目録又は信託目録に記録された事項の記載を省略するものとする。
   4  登記事項証明書に登記記録に記録した事項を記載するときは、その順位番号の順序に従って記載するものとする。
   5  登記記録に記録されている事項を抹消する記号が記録されている場合において、登記事項証明書に抹消する記号を表示するときは、抹消に係る事項の下に線を付して記載するものとする。
   6  登記事項証明書の交付は、請求人の申出により、送付の方法によりすることができる。

 不動産登記規則 第198条1項
 「(登記事項要約書の作成)
  第百九十八条  登記事項要約書は、別記第十一号様式により、不動産の表示に関する事項のほか、所有権の登記については申請の受付の年月日及び受付番号、所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所並びに登記名義人が二人以上であるときは当該所有権の登記名義人ごとの持分並びに所有権の登記以外の登記については現に効力を有するもののうち主要な事項を記載して作成するものとする。
   2  前項の規定にかかわらず、登記官は、請求人の申出により、不動産の表示に関する事項について現に効力を有しないものを省略し、かつ、所有権の登記以外の登記については現に効力を有するものの個数のみを記載した登記事項要約書を作成することができる。この場合には、前項の登記事項要約書を別記第十二号様式により作成するものとする。
   3  登記官は、請求人から別段の申出がない限り、一の用紙により二以上の不動産に関する事項を記載した登記事項要約書を作成することができる。」(2012年 3月 9日:条文追加)


4 登記事項証明書は、送付の方法により交付を請求することができるが、登記事項要約書は、送付の方法により交付を請求することができない。

○ 正しい。 選択肢1で述べましたように、「登記事項証明書」の交付請求は、郵便による申請(送付の方法)またオンラインによる交付請求(オンライン請求)]をすることができますが登記事項要約書の請求は、以前あった「閲覧制度」に代わるもので、郵便による申請(送付の方法)またオンラインによる交付請求(オンライン請求)]
をすることができません。

参考1:法務省のホームページより。
  コンピュータ庁では,従来の閲覧制度に代わるものとして,
   (1) 不動産の表示に関する事項(所在,地番,地目,地積,家屋番号,床面積など)
   (2) 現在の所有者の住所,氏名及び申請書受付の年月日,受付番号
   (3) 甲区,乙区の登記のうち,現在も効力を有しているものの主な登記事項
      例:差押,仮差押,処分禁止の仮処分:債権者の住所,氏名
        抵当権:債権額,抵当権者及び債務者の住所,氏名
        根抵当権:極度額,根抵当権者及び債務者の住所,氏名
        地役権:目的,要役地又は承役地の表示
    を記載した登記事項要約書を交付しています。

 *請求書の提出方法
  登記事項要約書の請求書は,管轄登記所に直接持参して提出してください。電話等で請求することはできません。なお,登記事項要約書は,郵送で請求することはできません。
  登記事項要約書は1通当たり500円です。手数料は,請求書に,収入印紙を貼る欄がありますので,そこに手数料額に相当する収入印紙を貼って納付してください(なお,登記印紙についても,これまでどおり使用することができますので,登記印紙を貼っていただいても差し支えありません。)。現金を添えて請求することはできません。

参考2: 不動産登記規則第193条
 「(登記事項証明書の交付の請求情報等)
  第百九十三条  登記事項証明書、登記事項要約書、地図等の全部若しくは一部の写し(地図等が電磁的記録に記録されているときは、当該記録された情報の内容を証明した書面。以下この条において同じ。)又は土地所在図等の全部若しくは一部の写し(土地所在図等が電磁的記録に記録されているときは、当該記録された情報の内容を証明した書面。以下この条において同じ。)の交付の請求をするときは、次に掲げる事項を内容とする情報(以下この章において「請求情報」という。)を提供しなければならない。地図等又は登記簿の附属書類の閲覧の請求をするときも、同様とする。
     一  請求人の氏名又は名称
     二  不動産所在事項又は不動産番号
     三  交付の請求をする場合にあっては、請求に係る書面の通数
     四  登記事項証明書の交付の請求をする場合にあっては、第百九十六条第一項各号(同条第二項において準用する場合を含む。)に掲げる登記事項証明書の区分
     五  登記事項証明書の交付の請求をする場合において、共同担保目録又は信託目録に記録された事項について証明を求めるときは、その旨
     六  地図等又は土地所在図等の一部の写しの交付の請求をするときは、請求する部分
     七  送付の方法により登記事項証明書、地図等の全部若しくは一部の写し又は土地所在図等の全部若しくは一部の写しの交付の請求をするときは、その旨及び送付先の住所
   2  法第百二十一条第二項 の規定により土地所在図等以外の登記簿の附属書類の閲覧の請求をするときは、前項第一号及び第二号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項を請求情報の内容とする。
     一  請求人の住所
     二  請求人が法人であるときは、その代表者の氏名
     三  代理人によって請求するときは、当該代理人の氏名又は名称及び住所並びに代理人が法人であるときはその代表者の氏名
     四  法第百二十一条第二項 ただし書の利害関係を有する理由及び閲覧する部分
   3  前項の閲覧の請求をするときは、同項第四号の利害関係がある理由を証する書面を提示しなければならない。
   4  第二項の閲覧の請求を代理人によってするときは、当該代理人の権限を証する書面を提示しなければならない。
   5  第二項の閲覧の請求をする場合において、請求人が法人であるときは、当該法人の代表者の資格を証する書面を提示しなければならない。ただし、次に掲げる場合は、この限りでない。
     一  請求を受ける登記所が、当該法人の登記を受けた登記所と同一であり、かつ、法務大臣が指定した登記所以外のものである場合
     二  請求を受ける登記所が、当該法人の登記を受けた登記所と同一である登記所に準ずるものとして法務大臣が指定した登記所である場合
   6  前項の指定は、告示してしなければならない。

  不動産登記規則第194条
 「(登記事項証明書等の交付の請求の方法等)
  第百九十四条  前条第一項の交付の請求又は同項若しくは同条第二項の閲覧の請求は、請求情報を記載した書面(第二百三条並びに第二百四条第一項及び第二項において「請求書」という。)を登記所に提出する方法によりしなければならない。
   2  登記事項証明書の交付(送付の方法による交付を除く。)の請求は、前項の方法のほか、法務大臣の定めるところにより、登記官が管理する入出力装置に請求情報を入力する方法によりすることができる。
   3  登記事項証明書の交付の請求は、前二項の方法のほか、法務大臣の定めるところにより、請求情報を電子情報処理組織を使用して登記所に提供する方法によりすることができる。この場合において、登記事項証明書を登記所で受領しようとするときは、その旨を請求情報の内容としなければならない。



答え:1 (ここは、常識的な解答だったが、解説は、図を探したり、条文を入れたりで、随分と時間がかかった!)

問18

〔問 18〕新築住宅の売買において、住宅の構造耐力上主要な部分等の隠れた瑕疵(この問いにおいて「瑕疵」という。)があった場合に関する次の記述のう ち、民法及び住宅の品質確保の促進等に関する法律(この問いにおいて「品確法」という。)の規定並びに判例によれば、正しいものはどれか。

1 品確法の対象となる新築住宅の売主の瑕疵担保責任の特例は、住宅の売買契約のみではなく、贈与契約にも準用される。

X 誤っている。 贈与契約は該当しない。まずは、品確法第95条
 「(新築住宅の売主の瑕疵担保責任の特例)
  第九十五条  新築住宅の売買契約においては、売主は、買主に引き渡した時(当該新築住宅が住宅新築請負契約に基づき請負人から当該売主に引き渡されたものである場合にあっては、その引渡しの時)から十年間、住宅の構造耐力上主要な部分等の隠れた瑕疵について、民法第五百七十条 において準用する同法第五百六十六条第一項 並びに同法第六百三十四条第一項 及び第二項 前段に規定する担保の責任を負う。この場合において、同条第一項 及び第二項 前段中「注文者」とあるのは「買主」と、同条第一項 中「請負人」とあるのは「売主」とする。
   2  前項の規定に反する特約で買主に不利なものは、無効とする。
   3  第一項の場合における民法第五百六十六条第三項 の規定の適用については、同項中「前二項」とあるのは「住宅の品質確保の促進等に関する法律第九十五条第一項」と、「又は」とあるのは「、瑕疵修補又は」とする。」とあります。
  この品確法の規定によりますと、新たに建築された住宅(マンションも含まれる)でまだ人の居住の用に供されたことのない住宅に限り(建築後1年を経過したものと中古住宅は除く)、その売買契約があると、売主は、買主に対して、引き渡した時(請負の住宅は、請負人から売主に引き渡した時)から、10年間(特約により、最長20年間まで可。第97条)、住宅の構造耐力上主要な部分(基礎、柱、梁、床、構造壁など)又は雨水の侵入を防止する部分(屋根、外壁、開口部に設ける戸、わくなど下地やサッシ)に、通常人の注意を払っても発見できない、その不動産が通常有している品質・性能を有していないこと、言い換えますと「キズ(瑕疵)」があった場合に、民法第570条(準用民法第566条)に規定されています売主の瑕疵担保責任を負います。しかし、民法では、@損害賠償請求 と A解約の解除 しか 規定しておらず、品確法の特例として、B修補 (3項)も請求できます。また、民法では、別途、瑕疵担保期間を2年とするなどの特約を認めていましたが、品確法により、買主にとって不利な特約は、無効です(2項)。(詳細は、別途、「隠れた瑕疵が存在する時の売主の責任」 も参照のこと。)
そこで設問に戻りますが、上で解説しましたように、品確法の目的は、売買契約(また請負契約でも)での売主に対する瑕疵担保責任を追及するのが目的で、贈与契約の場合には、準用がありません。



2 品確法により瑕疵担保責任を負う期間が引渡しから10年間であるとされた場合において、買主が当該建物を他に売り渡し建物の所有権を喪失したときでも、10年間の残存期間に限り、買主は、瑕疵担保責任を追及することができる。

○ 正しい。 選択肢1で引用しました品確法第95条1項により、新築住宅の買主は、引き渡しの後10年間は、その建物を転売しても、売主に品確法での「瑕疵担保責任」を追及できると解釈できます。なお、中古住宅として取得した人は、例え、完成後10年未満であっても、当初の売主には、品確法での瑕疵担保責任を追及することができないとなります。転売での取得者にも適用をするかどうかは、品確法設定の際に検討されたのですが、所有権が転々としたときに、使用方法がはっきりしないなどで、適用を見送ったとのことです。


3 品確法による売主の瑕疵担保責任は、買主に引き渡した時から10年間に限り負うものとされるから、買主が、瑕疵が存在したことを理由に契約に要素の錯誤があり無効であるとの主張も、この期間にしなければならない。

X 誤っている。 何を問いたいのか分からない。
  多分、品確法での瑕疵担保責任を追及すればいいのか、民法第95条での法律行為の要素の錯誤があったときは、無効であるとの条文に基づけばいいのか、2つの規定が適用される場合にどうしますか、とききたいのだろう。
  このような、2つの規定の適用が考えられる場合には、法律の世界においても、どちらを適用するかは、その人の価値観によるため、昔から判例も学説もその判断が別れます。
 といっては、答がでませんから、そこで、最高裁:昭和33年6月14日、「契約の要素に錯誤を来している場合には、民法瑕疵担保の規定は排除される」との判決をしています。
この判決は、民法での判決ですが、品確法の場合でも適用されると、出題者は言いたいのでしょう。そこで、契約に要素の錯誤があれば、品確法による売主の瑕疵担保責任による追及は排除されますから、買主に引き渡した時から10年間の適用はありません。
 しかし、判例を探していたら、最高裁:昭和41年4月14日;もありで、錯誤でも瑕疵担保責任でも、買主がどちらかを選べるようでもある。
参考:民法第95条(錯誤)
 「第九十五条  意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。 」



4 定められた権利行使期間内に瑕疵担保責任を追及するには、期間内に訴訟提起をするか、内容証明郵便により瑕疵担保責任を追及する旨を通知しなければならない。

X 誤っている。 この設問も何を聞きたいのか、分からない。
  前半の、「定められた権利行使期間内に瑕疵担保責任を追及するには、期間内に訴訟提起をする」は正しい。法的に責任を追及するには、消滅時効になる前に訴訟提起をしなければなりません。しかし、後半の「内容証明郵便により瑕疵担保責任を追及する旨を通知しなければならない」は、設問者が「定められた権利行使期間内に、訴訟提起の代わりに内容証明郵便により瑕疵担保責任を追及する旨を通知」すれば、それは裁判上も有効かと、時効中断も絡めた文章かと想定するなら、内容証明郵便は、単なる催告なので、民法第153条
 「(催告)
  第百五十三条  催告は、六箇月以内に、裁判上の請求、支払督促の申立て、和解の申立て、民事調停法 若しくは家事審判法 による調停の申立て、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加、差押え、仮差押え又は仮処分をしなければ、時効の中断の効力を生じない。 」により、
あくまでも裁判にするなら、内容証明郵便ではだめで、正式に裁判上の請求が必要となります。
 しかし、時効を考えずに、単に瑕疵担保責任を追及するだけなら、それは、口頭でも内容証明郵便によってでも、瑕疵担保責任を追及する旨を通知はできます。



答え:2  (この「問18」の解説は、やたら時間がかかった。というのは、設問の文章が分かり難くて、平成13年からのマンション管理士・管理業務主任者試験の解説に携わって問題文に関しては経験が豊富な私でも、出題文の意図を掴みかねる文章のためです。 今年の出題者の、過去の問題から離れた分野からの出題にしようとする努力は感じられますが、文章の構成が拙いと思います。
なお、売主の瑕疵担保責任は「問12」も参照のこと。)

問19

〔問 19〕マンション建替組合(この問いにおいて「建替組合」という。)が施行するマンション建替事業における権利変換計画に関する次の記述のうち、マンションの建替えの円滑化等に関する法律の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 建替組合は、権利変換計画の認可を申請しようとするときは、権利変換計画について、あらかじめ、総会の議決を経るとともに組合員以外の施行マンション又はその敷地について権利を有する者の同意を得なければならない。

○ 正しい。 マンションの建替えの円滑化等に関する法律(以下「マンション建替え法」という)からの出題も過去からかなりあるので、眼を通しておくこと。
  マンション建替え法の中でも、権利変換手続きは重要な箇所です。
 設問はマンション建替え法第57条2項
 「(権利変換計画の決定及び認可)
  第五十七条  施行者は、前条の規定による手続に必要な期間の経過後、遅滞なく、権利変換計画を定めなければならない。この場合においては、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事の認可を受けなければならない。
   2  施行者は、前項後段の規定による認可を申請しようとするときは、権利変換計画について、あらかじめ、組合にあっては総会の議決を経るとともに施行マンション又はその敷地について権利を有する者(組合員を除く。)及び隣接施行敷地がある場合における当該隣接施行敷地について権利を有する者の同意を得、個人施行者にあっては施行マンション又はその敷地(隣接施行敷地を含む。)について権利を有する者の同意を得なければならない。ただし、次に掲げる者については、この限りでない。
     一  区分所有法第六十九条 の規定により同条第一項 に規定する特定建物である施行マンションの建替えを行うことができるときは、当該施行マンションの所在する土地(これに関する権利を含む。)の共有者である団地内建物の区分所有法第六十五条 に規定する団地建物所有者(以下単に「団地建物所有者」という。)
     二  その権利をもって施行者に対抗することができない者
   3  前項の場合において、区分所有権等以外の権利を有する者から同意を得られないときは、その同意を得られない理由及び同意を得られない者の権利に関し損害を与えないようにするための措置を記載した書面を添えて、第一項後段の規定による認可を申請することができる。
   4  第二項の場合において、区分所有権等以外の権利を有する者を確知することができないときは、その確知することができない理由を記載した書面を添えて、第一項後段の規定による認可を申請することができる。」とあり、
 2項に該当しています。



2 建替組合は、権利変換計画について施行マンションの借家権を有する者から同意を得られないときは、同意を得られない理由及びその権利に関し損害を与えないようにするための措置を記載した書面を添えて、権利変換計画の認可を申請することができる。

○ 正しい? 設問は、選択肢1で引用しました、マンション建替え法第57条3項
 「3  前項の場合において、
区分所有権等以外の権利を有する者から同意を得られないときは、その同意を得られない理由及び同意を得られない者の権利に関し損害を与えないようにするための措置を記載した書面を添えて、第一項後段の規定による認可を申請することができる。」です。
 ここでの、
借家権とは、建物の賃借権です(同法2条15号)。また、区分所有権とは区分所有法第2条1項
 「1項 この法律において「区分所有権」とは、前条に規定する建物の部分(第四条第二項の規定により共用部分とされたものを除く。)を目的とする所有権をいう。」とあり、
「区分所有権」とは、建物の専有部分(単独所有できる部分)を目的とした「所有権」のことで、賃借を目的とした借家権ではありませんから、設問の箇所「区分所有権等以外の権利を有する者」に「借家権を有する者」は該当しますから、正しい。

X 誤っている。 マンション建替え法第57条3項
   「3  前項の場合において、
区分所有権等以外の権利を有する者から同意を得られないときは、その同意を得られない理由及び同意を得られない者の権利に関し損害を与えないようにするための措置を記載した書面を添えて、第一項後段の規定による認可を申請することができる。」とあり、
ここでの、「区分所有権等以外の権利」の定義として、同法第45条
 「(施行の認可)
  第四十五条
 第五条第二項の規定によりマンション建替事業を施行しようとする者は、一人で施行しようとする者にあっては規準及び事業計画を定め、数人共同して施行し ようとする者にあっては規約及び事業計画を定め、国土交通省令で定めるところにより、そのマンション建替事業について都道府県知事の認可を受けなければな らない。
   2 前項の規定による認可を申請しようとする者は、その者以外に施行マンションとなるべきマンション又はその敷地(隣接施行敷地を含む。)について権利を 有する者があるときは、事業計画についてこれらの者の同意を得なければならない。ただし、その権利をもって認可を申請しようとする者に対抗することができ ない者については、この限りでない。
   3 前項の場合において、
施行マンションとなるべきマンション又はその敷地(隣接施行敷地を含む。以下この項において同じ。)について権利を有する者のうち、区分所有権、敷地利用権、敷地の所有権及び借地権並びに借家権以外の権利(以下「区分所有権等以外の権利」という。)を有する者から同意を得られないとき、又はその者を確知することができないときは、その同意を得られない理由又は確知することができない理由を記載した書面を添えて、第一項の規定による認可を申請することができる。
   4 第九条第七項の規定は、第一項の規定による認可について準用する。」とあり、
3項によれば、「区分所有権等以外の権利」とは、「@区分所有権、A敷地利用権、B敷地の所有権 及び C借地権 並びに
 D借家権 以外の権利」で、設問の「借家権を有する者」は、区分所有権等の権利を有する者に該当し 区分所有権等以外の権利を有する者から除外されていますから、権利変換計画について同意が必要となり、間違いです。(2012年 1月24日、松本様のサゼッションにより、追記。松本様、有難うございました。)(しかし、個人施行者の条文(第45条)の途中にある定義条項から、建替組合の正誤を出題するとは、まったく、不適切な出題と言わざるを得ない!)


3 建替組合において、権利変換計画について総会の議決があったときは、建替組合は、当該議決に賛成しなかった組合員に対し、当該議決があった日から2月以内に、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。

○ 正しい。 ここは、マンション建替え法第64条1項
 「(権利変換計画に関する総会の議決に賛成しなかった組合員に対する売渡し請求等)
  第六十四条  組合において、権利変換計画について総会の議決があったときは、組合は、当該議決があった日から二月以内に、当該議決に賛成しなかった組合員に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。 」とあり、該当しています。



4 権利変換期日において、権利変換計画の定めるところに従い、施行マンションの敷地利用権は失われ、施行再建マンションの敷地利用権は新たに当該敷地利用権を与えられるべき者が取得する。

○ 正しい。 ここは、マンション建替え法第70条1項 
 「(敷地に関する権利の変換等)
  第七十条  権利変換期日において、権利変換計画の定めるところに従い、施行マンションの敷地利用権は失われ、施行再建マンションの敷地利用権は新たに当該敷地利用権を与えられるべき者が取得する。
   2  権利変換期日において、権利変換計画の定めるところに従い、隣接施行敷地の所有権又は借地権は、失われ、又はその上に施行再建マンションの敷地利用権が設定される。
   3  権利変換期日において、権利変換計画の定めるところに従い、保留敷地に関しては、当該保留敷地についての従前の施行マンションの敷地利用権が所有権であるときはその所有権を、借地権であるときはその借地権を、施行者が取得する。
   4  施行マンションの敷地及び隣接施行敷地に関する権利で前三項及び第七十三条の規定により権利が変換されることのないものは、権利変換期日以後においても、なお従前の土地に存する。この場合において、権利変換期日前において、これらの権利のうち地役権又は地上権の登記に係る権利が存していた敷地利用権が担保権等の登記に係る権利の目的となっていたときは、権利変換期日以後においても、当該地役権又は地上権の登記に係る権利と当該担保権等の登記に係る権利との順位は、変わらないものとする。」とあり、
1項に該当しています。



答え:ない。 (選択肢2や、他の箇所を何度も読み返したが、誤っている選択肢がない! 2012年 1月24日: 2 に変更。根拠がやっと分かった。)  (マンション建替え法の概要は、私の別途「マンションの建替えの円滑化等に関する法律」の概要がありますので、こちらも参考にしてください。)
マンション管理センターの解答:2

問20

〔問 20〕違反建築物等に対する措置に関する次の記述のうち、建築基準法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 特定行政庁は、建築基準法令の規定に違反することが明らかな建築工事中の建築物については、緊急の必要があって通知、意見の聴取等の手続きによることができない場合に限って、これらの手続きによらないで、建築主、工事請負人又は工事現場管理者に対して工事の施工の停止を命ずることができる。

○ 正しい。 違反建築物については、建築基準法第9条
 「(違反建築物に対する措置)
  第九条
 特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。
   2 特定行政庁は、前項の措置を命じようとする場合においては、あらかじめ、その措置を命じようとする者に対して、その命じようとする措置及びその事由並びに意見書の提出先及び提出期限を記載した通知書を交付して、その措置を命じようとする者又はその代理人に意見書及び自己に有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。
   3 前項の通知書の交付を受けた者は、その交付を受けた日から三日以内に、特定行政庁に対して、意見書の提出に代えて公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。
   4 特定行政庁は、前項の規定による意見の聴取の請求があつた場合においては、第一項の措置を命じようとする者又はその代理人の出頭を求めて、公開による意見の聴取を行わなければならない。
   5 特定行政庁は、前項の規定による意見の聴取を行う場合においては、第一項の規定によつて命じようとする措置並びに意見の聴取の期日及び場所を、期日の二日前までに、前項に規定する者に通知するとともに、これを公告しなければならない。
   6 第四項に規定する者は、意見の聴取に際して、証人を出席させ、かつ、自己に有利な証拠を提出することができる。
   7 特定行政庁は、緊急の必要がある場合においては、前五項の規定にかかわらず、これらに定める手続によらないで、仮に、使用禁止又は使用制限の命令をすることができる。
   8 前項の命令を受けた者は、その命令を受けた日から三日以内に、特定行政庁に対して公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。この場合においては、第四項から第六項までの規定を準用する。ただし、意見の聴取は、その請求があつた日から五日以内に行わなければならない。
   9 特定行政庁は、前項の意見の聴取の結果に基づいて、第七項の規定によつて仮にした命令が不当でないと認めた場合においては、第一項の命令をすることができる。意見の聴取の結果、第七項の規定によつて仮にした命令が不当であると認めた場合においては、直ちに、その命令を取り消さなければならない。
   
10 特定行政庁は、建築基準法令の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反することが明らかな建築、修繕又は模様替の工事中の建築物については、緊急の必要があつて第二項から第六項までに定める手続によることができない場合に限り、これらの手続によらないで、当該建築物の建築主又は当該工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者に対して、当該工事の施工の停止を命ずることができる。この場合において、これらの者が当該工事の現場にいないときは、当該工事に従事する者に対して、当該工事に係る作業の停止を命ずることができる。
   11 第一項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができず、かつ、その違反を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、特定行政庁は、その者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、特定行政庁又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない。
   12 特定行政庁は、第一項の規定により必要な措置を命じた場合において、その措置を命ぜられた者がその措置を履行しないとき、履行しても十分でないとき、又は履行しても同項の期限までに完了する見込みがないときは、行政代執行法(昭和二十三年法律第四十三号)の定めるところに従い、みずから義務者のなすべき行為をし、又は第三者をしてこれをさせることができる。
   13 特定行政庁は、第一項又は第十項の規定による命令をした場合(建築監視員が第十項の規定による命令をした場合を含む。)においては、標識の設置その他国土交通省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。
   14 前項の標識は、第一項又は第十項の規定による命令に係る建築物又は建築物の敷地内に設置することができる。この場合においては、第一項又は第十項の規定による命令に係る建築物又は建築物の敷地の所有者、管理者又は占有者は、当該標識の設置を拒み、又は妨げてはならない。
   15 第一項、第七項又は第十項の規定による命令については、行政手続法(平成五年法律第八十八号)第三章(第十二条及び第十四条を除く。)の規定は、適用しない。」とあり、
違反建築物に対しては、違反の是正を命じることができますが、原則として、是正の通知書を出すなどの手続きが必要です。しかし、緊急の場合は、求められている手続きなしに、建築主、工事請負人又は工事現場管理者に対して工事の施工の停止を命ずることができる規定が10項にあります。



2 緊急の必要があり、特定行政庁より仮の使用禁止又は使用制限を受けた者は、当該命令を受けた日以後いつでも、特定行政庁に対して公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。

X 誤っている。 ここは、選択肢1で引用しました建築基準法第9条8項
 「8 前項の命令を受けた者は、その命令を受けた日から三日以内に、特定行政庁に対して公開による意見の聴取を行うことを請求することができる。この場合においては、第四項から第六項までの規定を準用する。ただし、意見の聴取は、その請求があつた日から五日以内に行わなければならない。」とあり、
「その命令を受けた日から三日以内」に請求します。「当該命令を受けた日以後いつでも」ではありません。大体、緊急で日にちを限定していないのは、おかしいと感じれば、正解。



3 特定行政庁は、違反建築物の除却を命じようとする場合において、過失がなくて当該建築物の除却を命ぜられるべき者を確知できず、かつ違反の放置が著しく公益に反すると認められるときは、その者の負担において当該建築物を除却することができる。

○ 正しい。 ここは、選択肢1で引用しました建築基準法第9条11項
 「11 第一項の規定により必要な措置を命じようとする場合において、過失がなくてその措置を命ぜられるべき者を確知することができず、かつ、その違反を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、特定行政庁は、その者の負担において、その措置を自ら行い、又はその命じた者若しくは委任した者に行わせることができる。この場合においては、相当の期限を定めて、その措置を行うべき旨及びその期限までにその措置を行わないときは、特定行政庁又はその命じた者若しくは委任した者がその措置を行うべき旨をあらかじめ公告しなければならない。」とあり、
前段に該当しています。



4 特定行政庁は、一定の建築物の敷地、構造、建築設備又は用途が、公益上著しく支障があると認める場合においては、当該建築物の所在地の市町村の議会の同意を得た場合に限り、当該建築物の所有者、管理者又は占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却等の措置を命ずることができる。

○ 正しい。 ここは、建築基準法第11条
 「(第三章の規定に適合しない建築物に対する措置)
  第十一条
   特定行政庁は、建築物の敷地、構造、建築設備又は用途(いずれも第三条第二項(第八十六条の九第一項において準用する場合を含む。)の規定により第三章の規定又はこれに基づく命令若しくは条例の規定の適用を受けないものに限る。)が公益上著しく支障があると認める場合においては、当該建築物の所在地の市町村の議会の同意を得た場合に限り、当該建築物の所有者、管理者又は占有者に対して、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、修繕、模様替、使用禁止又は使用制限を命ずることができる。この場合においては、当該建築物の所在地の市町村は、当該命令に基づく措置によつて通常生ずべき損害を時価によつて補償しなければならない。
   2 前項の規定によつて補償を受けることができる者は、その補償金額に不服がある場合においては、政令の定める手続によつて、その決定の通知を受けた日から一月以内に土地収用法(昭和二十六年法律第二百十九号)第九十四条第二項の規定による収用委員会の裁決を求めることができる。」とあり、
1項に該当しています。



答え:2  (ここの建築基準法からの出題も、新しい条文からで、該当の箇所を探すのに苦労したが、選択肢2 が誤っているのは、すぐ分かる?)

問21

〔問 21〕地域地区に関する次の記述のうち、都市計画法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 準住居地域は、道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域である。

○ 正しい。 都市計画法からも、1問はでますから、注意してください。大抵は、地域地区からですが。
  ここは、都市計画法第9条7項
 「7 準住居地域は、道路の沿道としての地域の特性にふさわしい業務の利便の増進を図りつつ、これと調和した住居の環境を保護するため定める地域とする。」とあります。



2 防火地域又は準防火地域は、市街地における火災の危険を防除するため定める地域である。

○ 正しい。 ここは、都市計画法第9条20項
 「20 防火地域又は準防火地域は、市街地における火災の危険を防除するため定める地域とする。」とあります。



3 準都市計画区域については、都市計画に、高度地区を定めることができるが、高度利用地区を定めることはできない。

○ 正しい。 ここは、都市計画法第8条2項
 「2 準都市計画区域については、都市計画に、前項第一号から第二号の二まで、
第三号(高度地区に係る部分に限る。)、第六号、第七号、第十二号(都市緑地法第五条の規定による緑地保全地域に係る部分に限る。)又は第十五号に掲げる地域又は地区を定めることができる。」とあり、
前項第1号から第2号の2、第3号は
 「一 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域、第二種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域又は工業専用地域(以下「用途地域」と総称する。)
  二 特別用途地区
  二の二 特定用途制限地域
  三 高度地区又は高度利用地区」であり、
第6号、第7号、第12号又は第15号は
 「六 景観法(平成十六年法律第百十号)第六十一条第一項の規定による景観地区
  七 風致地区
  十二 都市緑地法(昭和四十八年法律第七十二号)第五条の規定による緑地保全地域、同法第十二条の規定による特別緑地保全地区又は同法第三十四条第一項の規定による緑化地域
  十五 文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第百四十三条第一項の規定による伝統的建造物群保存地区」です。
該当の第3号のうち、「高度地区に係る部分に限る」とあるため、「高度利用地区」は、除かれます。



4 特定用途制限地域は、用途地域のうち、その良好な環境の形成又は保持のため当該地域の特性に応じて合理的な土地利用が行われるよう、制限すべき特定の建築物等の用途の概要を定める地域である。

X 誤っている。 ここは、都市計画法第9条14項
 「14 特定用途制限地域は、用途地域が定められていない土地の区域(市街化調整区域を除く。)内において、その良好な環境の形成又は保持のため当該地域の特性に応じて合理的な土地利用が行われるよう、制限すべき特定の建築物等の用途の概要を定める地域とする。」とあり、
「用途地域が定められていない」地域で、定められますから、「用途地域のうち」が誤っています。



答え:4 (地域地区の似たような言葉は、正確に記憶することしかない。 都市計画法は過去問題のまとめとして、別途作成していますから、利用してください。)

問22

〔問 22〕簡易専用水道に関する次の記述のうち、水道法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 簡易専用水道の貯水槽は定期的に掃除を行う必要があり、その間隔は1年以内であれば短くてもかまわない。

○ 正しい。 水道法からも、毎年1問は出題されます。平成22年マンション管理士試験 「問22」平成21年マンション管理士試験 「問22」 など。
  まず、簡易専用水道とは、水道法第3条7項
 「(用語の定義)
  第三条 
   7 この法律において「簡易専用水道」とは、水道事業の用に供する水道及び専用水道以外の水道であつて、水道事業の用に供する水道から供給を受ける水のみを水源とするものをいう。ただし、その用に供する施設の規模が政令で定める基準以下(水槽の有効容量の合計が10立方メーター)のものを除く。」とあり、
初めてこの条文を読んだ人だけでなく、多くの人がなかなか理解できない条文です。解説しますと、建築内に設けられた貯水槽から給水を受ける貯水槽水道(水道法14条2項5号)に含まれ、水道事業(上水道=地方自治体)から供給を受けますが、直接給水するのではなく、貯水槽から始まる建物内での水道です。井戸など自己の水源を利用したのは除かれます。
水道で貯水槽を利用しますから、その清掃や水の色、濁り、臭いなどの管理が必要です。そこで、水道法第34条の2
 「第三十四条の二  簡易専用水道の設置者は、厚生労働省令で定める基準に従い、その水道を管理しなければならない。
   2  簡易専用水道の設置者は、当該簡易専用水道の管理について、厚生労働省令の定めるところにより、定期に、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない。 」とあり、
1項の厚生労働省令で定める基準は、水道法施行規則第55条
 「(管理基準)
  第五十五条
  法第三十四条の二第一項に規定する厚生労働省令で定める基準は、次の各号に掲げるものとする。
     
一 水槽の掃除を一年以内ごとに一回、定期に、行うこと。
     二 水槽の点検等有害物、汚水等によつて水が汚染されるのを防止するために必要な措置を講ずること。
     三 給水栓における水の色、濁り、臭い、味その他の状態により供給する水に異常を認めたときは、水質基準に関する省令の表の上欄に掲げる事項のうち必要なものについて検査を行うこと。
     四 供給する水が人の健康を害するおそれがあることを知つたときは、直ちに給水を停止し、かつ、その水を使用することが危険である旨を関係者に周知させる措置を講ずること。」とあり、
1号に「水槽の掃除を一年以内ごとに一回、定期に、行うこと。」とあり、1年以内であれば規定を満たしていますから、「その間隔は1年以内であれば短くても」かまいません。





2 簡易専用水道の水の色や臭いに異常を認めた時は、水質基準に関する省令の表に掲げる50の水質基準項目のうち、必要なものについて検査を行う必要がある。

○ 正しい。 選択肢1で引用しました、水道法施行規則第55条3号
 「三 給水栓における水の色、濁り、臭い、味その他の状態により供給する水に異常を認めたときは、水質基準に関する省令の表の上欄に掲げる事項のうち必要なものについて検査を行うこと。」とあり、
水質基準に関する省令の表は、(平成十五年五月三十日厚生労働省令第百一号)で、この表には、一般細菌(一mlの検水で形成される集落数が一〇〇以下であること)、大腸菌(検出されないこと)、カドミウム及びその化合物(カドミウムの量に関して、〇・〇〇三mg/l以下であること)、水銀及びその化合物(水銀の量に関して、〇・〇〇〇五mg/l以下であること)など50の項目が列挙されています。(しかし、50の項目と具体的に出題されると、そこまでは、知らないので、正しいと判断するのは、難しい。)



3 簡易専用水道の管理についての検査は、設置者の義務ではあるが、当該義務に違反した場合の罰則はない。

X 誤っている。 選択肢1で引用しましたように、水道法第34条の2 により、簡易専用水道の管理についての検査は、設置者の義務です。そして、その義務違反は、水道法第54条8号
 「第五十四条  次の各号のいずれかに該当する者は、百万円以下の罰金に処する。
  八  第三十四条の二第二項の規定に違反した者 」とあり、
なんと、100万円以下の罰金がかされます。



4 簡易専用水道の検査の登録を受けた検査機関は、検査を行うことを求められた場合は、正当な理由がある場合を除き、遅滞なく、検査を行わなければならない。

○ 正しい。 検査を行うのは、選択肢1で引用しました、水道法第34条の2 2項
 「2  簡易専用水道の設置者は、当該簡易専用水道の管理について、厚生労働省令の定めるところにより、定期に、地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者の検査を受けなければならない。 」とあり、
地方公共団体の機関又は厚生労働大臣の登録を受けた者が行いますが、その者は、水道法第34条の3 
 「(検査の義務)
  第三十四条の三  前条第二項の登録を受けた者は、簡易専用水道の管理の検査を行うことを求められたときは、正当な理由がある場合を除き、遅滞なく、簡易専用水道の管理の検査を行わなければならない。」とあり、
該当しています。(これは、水道の重要性から、当然でしょう。)



答え:3 (水道法での罰則の規定の有無までは、覚えていなくても、水道の重要性から、正解3 は分かった?  ここは、私の過去問題で「水道法」だけをまとめていますので、ご利用ください。

問23

〔問 23〕地階のない4階建てのマンションにおける消防法第17条第1項に規定する消防用設備等の設置の義務に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1 延べ面積が500u以上のものには、自動火災報知設備を設置しなければならない。

○ 正しい。 消防法第17条1項は、
 「第四章 消防の設備等
  第十七条  学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設(以下「消防用設備等」という。)について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない。 」とあり、
政令において、自動火災報知設備の設置は、消防法施行令第21条ですが、その前に、ここで引用される別表第一があり、
マンションは、共同住宅として、別表第一「(五)項ロ 寄宿舎、下宿又は共同住宅」(=別表第一(五)項ロ)に該当することを覚えておいてください。
  「(自動火災報知設備に関する基準)
   第二十一条  自動火災報知設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。
    四  
別表第一(五)項ロ、(七)項、(八)項、(九)項ロ、(十)項、(十二)項、(十三)項イ及び(十四)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が五百平方メートル以上のもの」とあり、
該当しています。



2 延べ面積が1,000u以上のものには、連結送水管を設置しなければならない。

X 誤っている。 連結送水管の設置は、消防法施行令第29条1項
 「(連結送水管に関する基準)
  第二十九条  連結送水管は、次の各号に掲げる防火対象物に設置するものとする。
     一  別表第一に掲げる建築物で、地階を除く階数が七以上のもの
     二  前号に掲げるもののほか、地階を除く階数が五以上の別表第一に掲げる建築物で、延べ面積が六千平方メートル以上のもの
     三  別表第一(十六の二)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの
     四  別表第一(十八)項に掲げる防火対象物
     五  前各号に掲げるもののほか、別表第一に掲げる防火対象物で、道路の用に供される部分を有するもの」とあり、
@地階を除く階数が7以上のものは、延べ面積に関係なく設置(1号)、A地階を除く階数が5以上で延べ面積が、6,000u以上なら設置です(2号)。設問では、地階のない4階建てで延べ面積が1,000u以上ですから、該当しません。なお、連結送水管は、1階の送水口から消防隊が上の階へ水を送るようにした配管です。





3 延べ面積が1,500u以上のものには、屋外消火栓設備を設置しなければならない。

X 誤っている。 屋外消火栓設備の設置は、消防法施行令第19条1項
 「(屋外消火栓設備に関する基準)
  第十九条  屋外消火栓設備は、別表第一(一)項から(十五)項まで、(十七)項及び(十八)項に掲げる建築物で、床面積(地階を除く階数が一であるものにあつては一階の床面積を、地階を除く階数が二以上であるものにあつては一階及び二階の部分の床面積の合計をいう。第二十七条において同じ。)が、耐火建築物にあつては九千平方メートル以上、準耐火建築物(建築基準法第二条第九号の三 に規定する準耐火建築物をいう。以下同じ。)にあつては六千平方メートル以上、その他の建築物にあつては三千平方メートル以上のものについて設置するものとする。」とあり、
別表第一(五)項ロのマンションでは、延べ面積が1,500u以上、4階建てでは、該当しません。


4 延べ面積が2,000u以上のものには、排煙設備を設置しなければならない。

X 誤っている。 排煙設備の設置は、消防法施行令第28条1項
 「(排煙設備に関する基準)
  第二十八条  排煙設備は、次に掲げる防火対象物又はその部分に設置するものとする。
     一  別表第一(十六の二)項に掲げる防火対象物で、延べ面積が千平方メートル以上のもの
     二  別表第一(一)項に掲げる防火対象物の舞台部で、床面積が五百平方メートル以上のもの
     三  別表第一(二)項、(四)項、(十)項及び(十三)項に掲げる防火対象物の地階又は無窓階で、床面積が千平方メートル以上のもの」とあり、
マンションは別表第一(五)項ロ」で、該当しません。



答え:1 (消防法からの、新しい出題方法だ。 なお、消防法の過去問題も、別途にまとめていますから、ご利用ください。)

問24

〔問 24〕甲マンションの管理組合から、改修計画において、防犯性を向上させる上で留意すべきことに関する相談を受けたマンション管理士の発言として適切でないものは、次のうちどれか。

1 改修を計画するにあたっては、監視性の確保、領域性の強化、接近の抑制、被害対象の強化・回避という4つの基本原則を踏まえることが重要です。

○ 適切である。 似たような出題は、平成20年マンション管理士試験 「問42」 にもある。
  設問の防犯計画については、「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」があります。その中で、 
 「2 防犯に配慮した企画・計画・設計の基本原則  住宅の周辺地域の状況、入居者属性、管理体制、時間帯による状況の変化等に応じて、次の4つの基本原則から住宅の防犯性の向上のあり方を検討し、企画・計画・設計を行う。
   (1) 周囲からの見通しを確保する(
監視性の確保
     ・敷地内の屋外各部及び住棟内の共用部分等は、周囲からの見通しが確保されるように、敷地内の配置計画、動線計画、住棟計画、各部位の設計等を工夫するとともに、必要に応じて防犯カメラの設置等の措置を講じたものとする。
  (2) 居住者の帰属意識の向上、コミュニティ形成の促進を図る(
領域性の強化
     ・共同住宅に対する居住者の帰属意識が高まるように、住棟の形態や意匠、共用部分の管理方法等を工夫する。また、共用部分の利用機会が増え、コミュニティ形成が促進されるように、敷地内の配置計画、動線計画、住棟計画、共用部分の維持管理計画及び利用計画等を工夫する。
  (3) 犯罪企図者の動きを限定し、接近を妨げる(
接近の制御
     ・住戸の玄関扉、窓、バルコニー等は、犯罪企図者が接近しにくいように、敷地内の配置計画、動線計画、住棟計画、各部位の設計等を工夫したものとするとともに、必要に応じてオートロックシステムの導入等の措置を講じたものとする。
  (4) 部材や設備等を破壊されにくいものとする(
被害対象の強化・回避
    ・住戸の玄関扉、窓等は、侵入盗等の被害に遭いにくいように、破壊等が行われにくい構造等とするとともに、必要に応じて補助錠や面格子の設置等の措置を講じたものものとする。」とあり、
監視性の確保、領域性の強化、接近の抑制、被害対象の強化・回避という4つの基本原則は該当しています。


2 マンションの防犯性の向上のあり方の一つとして監視性を確保するためには、住棟内の共用部分等は必要に応じて防犯カメラを設置することも企画されるべきです。

○ 適切である。 選択肢1で述べました、「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」の
 「(11)防犯カメラ
    ア 防犯カメラの設置
      ・防犯カメラを設置する場合には、有効な監視体制のあり方を併せて検討するとともに、記録装置を設置することが望ましい。
    イ 防犯カメラの配置等
      ・防犯カメラを設置する場合には、見通しの補完、犯意の抑制等の観点から有効な位置、台数等を検討し適切に配置する。
      ・防犯カメラを設置する部分の照明設備は、照度の確保に関する規定のある各項目に掲げるもののほか、当該防犯カメラが有効に機能するため必要となる照度を確保したものとする。」とあり、
適切です。



3 防犯カメラを設置すれば、共用部分の照明設備の照度不足を補完することができます。

X 適切でない。 これは、もう常識的な判断です。
  防犯カメラは、映す機能はありますが、照明の機能はありませんから、照度不足を補完はしません。


4 エレベーターのかご内の照明設備は、床面において概ね50ルクス以上の平均水平面照度を確保するとともに、かご内に防犯カメラを設置することが望まれます。

○ 適切である。 ここも、「防犯に配慮した共同住宅に係る設計指針」の、
 「(5) エレベーター
    ア エレベーターの防犯カメラ
      ・エレベーターのかご内には、防犯カメラ等の設備を設置することが望ましい。 
    イ エレベーターの連絡及び警報装置
      ・エレベーターは、非常時において押しボタン、インターホン等によりかご内から外部に連絡又は吹鳴する装置が設置されたものとする。 
    ウ エレベーターの扉
      ・エレベーターのかご及び昇降路の出入口の扉は、エレベーターホールからかご内を見通せる構造の窓が設置されたものとする。
    エ エレベーターの照明設備
      ・エレベーターのかご内の照明設備は、
床面において概ね50ルクス以上の平均水平面照度を確保することができるものとする。」とあり、
エ及びアに該当しています。



答え:3 (ここは、過去問題を知らなくても、選択肢3は分かる。)

問25

*注:標準管理規約は平成28年3月に改正があったので注意の事。
    該当の条文は、必ず改正された標準管理規約で確認のこと。


〔問 25〕地震によるマンションの被害の復旧等を検討する緊急の理事会における理事長の説明について、区分所有法の規定によれば、誤っているものは、次のうちどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとし、管理費の支出については総会から理事会に付託されているものとする。

1 高置水槽の支柱が破損し傾いて給水できなくなりました。本日の理事会で決議し、管理費の経常的な補修費を使って工事業者に発注し、早急に修理することとします。

○ 正しい。 ここの「区分所有法の規定によれば」は、おかしい出題です。というのは、区分所有法では、設問の「理事会」も「理事長」も定義がなく、区分所有法では検討ができないためです。ここは、「標準管理規約」によらないと、理事長は何者なのか不明で解答ができません。そこで、ここでは、解答のために標準管理規約(単棟型)38条2項
「(理事長)
 第38条 
   2 理事長は、区分所有法に定める管理者とする。」の規定により、区分所有法での管理者の権限から、検討します。
 管理者の一般的な権限としては、区分所有法第26条1項
 「(権限)
  第二十六条  管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。」があります。
 他にも管理者は訴追をしたり、集会を招集したりしますが、設問においては、第26条の 「共用部分等の保存行為」に該当するか、どうかでいいと思います。
 区分所有法第26条での「保存行為」は、利用・改良行為と軽微な変更、また緊急時の対応と考えられ、設問の「地震による高置水槽の支柱が破損し傾いて給水できなくなった」は、破損個所の修繕で、また緊急時での対応ですから管理者の保存行為内と判断できます。また、その費用を管理費から支出するのは、区分所有法では、補修費をどの費用項目から支出する(管理費か修繕積立金かなど)かの規定はないので、区分所有法によれば、どこからでも問題はありません。なお、標準管理規約(単棟型)によれば、27条6号
 「(管理費)
  第27条 管理費は、次の各号に掲げる通常の管理に要する経費に充当する。
      六 経常的な補修費」とあり、
管理費からの支出は妥当です。



2 敷地内の排水管が土砂で詰まりましたが、区分所有者Aさんが自分で土砂を取り除きました。多少の費用はかかったようですが、理事会には事前に連絡がなかったので、管理組合では負担しません。

X 誤っている。 敷地内の排水管が土砂で詰まり、区分所有者が自分で土砂を取り除く行為も保存行為と判断できます。すると、
区分所有法第18条
 「(共用部分の管理)
  第十八条  共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
   2  前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。
   3  前条第二項の規定は、第一項本文の場合に準用する。
   4  共用部分につき損害保険契約をすることは、共用部分の管理に関する事項とみなす。」とあり、前条は、区分所有法第17条です。
 「 (共用部分の変更)
  第十七条  共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
   2  前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。 」とあり、
共用部分の変更の内その形状又は効用の著しい変更を伴うものを除いて、集会の決議で決しますが、区分所有者も個人で共用部分の保存行為はできますから、そこでかかった費用の請求は、区分所有法第19条
 「(共用部分の負担及び利益収取)
  第十九条  各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。」とあり、
各共有者が原則共用部分の共有持分(有する専有部分の床面積)に応じて負担することになります。設問では、管理組合が負担といっていますが、一次的には、区分所有者の団体である管理組合が負担すると考えていいでしょう。



3 敷地上のアスファルト舗装の歩道に亀裂が入りましたが、この際、歩道を彩色レンガ舗装に変更したいと考えております。これは理事会だけではできないので、次回、総会に諮ることとします。

○ 正しい。 ここも、理事会の存在が区分所有法には規定されていないため、「理事会だけではできない」とは無茶な出題ですが、区分所有法では、建物の敷地にも、共用部分の変更や管理の規定が準用されます。区分所有法第21条
 「(共用部分に関する規定の準用)
  第二十一条  建物の敷地又は共用部分以外の附属施設(これらに関する権利を含む。)が区分所有者の共有に属する場合には、第十七条から第十九条までの規定は、その敷地又は附属施設に準用する。 」とあります。
そこで、「アスファルト舗装を彩色レンガ舗装にすること」は、外観や構造が大幅に変わるため、区分所有法第17条
 「(共用部分の変更)
  第十七条  共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。
   2  前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。」とあり、
1項のかっこ書きの( その形状又は効用の著しい変更を伴うもの)に該当しますから、原則;区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議が必要です。



4 建物や共用設備の被害状況の調査、安全点検を早急に実施する必要があります。本日の理事会で決議し、管理費の予備費を使って専門業者に依頼して調査・点検を実施いたします。

○ 正しい? 選択肢1でも述べましたように、区分所有法第26条の管理者の保存行為として、建物や共用設備の被害状況の調査、安全点検を早急に行うことは入っていると考えられます。次に、「理事会で決議し、管理費の予備費を使って専門業者に依頼して調査・点検を実施」は、くどいようですが、区分所有法では、このような場合での理事会の決議が必要とか、管理費の予備費を使うなどの規定はありませんから、判断できません。なお、標準管理規約(単棟型)54条によれば、理事会で決議できるのは、
 「(議決事項)
  第54条 理事会は、この規約に別に定めるもののほか、次の各号に掲げる事項を決議する。
     一 収支決算案、事業報告案、収支予算案及び事業計画案
     二 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止に関する案
     三 長期修繕計画の作成又は変更に関する案
     四 その他の総会提出議案
     五 第17条に定める承認又は不承認
     六 第67条に定める勧告又は指示等
     七 総会から付託された事項」とあり、
7号のように、設問では、「管理費の支出については総会から理事会に付託されているものとする」とありますから、理事会の決議で可能です。



答え:2 (ここの出題での「区分所有法によれば」は、まったくひどい出題だ。どこかで、「区分所有法および”マンション標準管理規約(単棟型)”の規定によれば」が抜けたのか? 解答に無駄な時間がかかる。 下手な出題が、平成23年管理業務主任者試験 「問31」 にもある!)


★選択肢2について:まず、区分所有者の団体である管理組合負担とするなら、平成23年 マンション管理士試験 「問14」 や 平成23年 管理業務主任者試験 「問6」 との関係はどうなりますか?

ここまで、問25


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最終更新日:
2014年 6月19日:「問19」 選択肢2 に追記した。
2012年 6月22日:平成23年の標準管理規約の改正で、確認した。
2012年 3月 9日:「問14」、「問16」、「問17」、「問25」など追記。
2012年 2月12日:再度、図など校正した。
2012年 1月28日:誤植を訂正した。
2012年 1月24日:「問19」の根拠が分かり、修正した。
2012年 1月14日:マンション管理センターの解答入れた。
2011年12月23日:「問25」まで解説した。
2011年12月 3日:解説開始
2011年12月 1日:問題文Up

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