| ◎はじめに *は、令和8年新規追加 | |
| 第一条 | 建物の区分所有 |
| 第二条 | 定義 |
| 第三条 | 区分所有者の団体 |
| 第四条 | 共用部分 |
| 第五条 | 規約による建物の敷地 |
| 第五条の二 | 区分所有者の責務 * |
| 第六条 | 区分所有者の権利義務 |
| 第六条の二 | 国内管理人 * |
| 第七条 | 先取特権 |
| 第八条 | 特定承継人の責任 |
| 第九条 | 物の設置又は保存の瑕疵に関する推定 |
| 第十条 | 区分所有権売渡請求権 |
マンション管理士・管理業務主任者を目指す方のために、区分所有法を条文ごとに解説しました。
試験問題は、過去の問題から出されるのではありません。条文から出題されます。
条文を勉強することが、合格への道です。
日本国民が守るべき最高法規である日本国憲法を始めとして、通常六法と言われる他の民法・商法・刑法・民事訴訟法・刑事訴訟法などは、訳もなく制定されるものでは有りません。
多くの人々が快適な共同生活・社会生活をおくる為には、多くの人々が納得した「決めごと」がなければならないことを、私たちは歴史を通じて学びました。
また、一度「決められたこと」は、守られることが必要で、守らない人には、罰を科してでも守らせる仕組みが必要です。
そこで、現在では、多くの人々が守るべき「決めごと」を、憲法に従って、国会の衆議院と参議院の議決を経て、「法律」として制定し、国家権力によって従うことを強制することにしています。
みんなが守るべき「決めごと」を法律として制定するには、そこにはその法律を制定しなければならない理由・必然性があったから、制定されたのです。
そこで、その法律の各条文を理解する前に、なぜその法律が制定されたのか、その理由を知ることは、条文を理解する上で役に立ちます。
ここで、区分所有法の解説をするのは、みなさんに各条文の制定の理由を分かってもらうためです。
しかし、一度制定されたからといってその法律は完璧なものではありません。おかしな内容や訳の分からない言葉、時代の変化・価値観の変化に対応していない条文も出てきます。
だからと言って、その規定を守らない態度は許されません。規定を変える手続きも必ずありますから、おかしな規定は、チャンとした手続きで変更出来ます。この方法に従うことが肝心です。
![]()
★民法で規定できない建物が出てきた 〜 一物一権主義の例外 〜
区分所有法が制定される前の話として、明治時代に制定され、度々改正されてきました民法で定める所有権とは土地や建物など「物」に対する全面的な支配権(これは物権と呼ばれます)で、所有権の目的・対象となる土地や建物(不動産)は1個の物であることが必要とされます。(一物一権主義)
そして、民法で定める所有権に基づき、各所有者は他の人に関係なく、自己の意志で自由に家や土地を売却したり、貸したりまた抵当にいれるなどの処分ができます。
所有者は建物全体を自由に使用し、改造も可能です。(得喪および変更)
この民法の考え方は、一つの建物(家)が、イコール=一つの棟であることを前提にしています。

この一物一権主義をもう少し細かく説明しますと、1つの物に対しては、1つの所有権しか存在しない、逆にいいますと、「複数の物の総体の上には1つの所有権は存在しない」ことで、つまり「一個の物権が成立していれば、これと同様の内容をもった他の物権の存在は許さない」ことを前提として、民法は構成されています。
しかしながら、建築技術の進歩により多数の中高層マンションが出現し、一個の建物である、一棟のマンション内には、室を中心にした複数の所有者(=所有権)が存在し、一物一権主義が成立しない状況が生まれ、また、一つの建物内の出入り口や廊下や階段等を所有者を含めて、他の人も使用することから、今までの民法で許されているように、ある特定の所有者が、自分が持っている所有権の行使として、自分の室の壁に勝手に穴をあけてその穴が隣室まで及んだり、自分の室の前の廊下に物置を作り、他の人の通行の妨げになるなど、自己の権利を行使すると他の人の所有権に多大の影響を与える状況が出現しました。
★区分所有権の創造 ⇒ 民法の所有権とは異なる
そこで、マンションでは今までの民法における建物についての所有権の理論を変更(制限の方が多い)した考えを取り入れる必要性が認識され、今までの民法に優先する法律(特別法)として「区分所有法」が制定されることになりました。
特別法である区分所有法と一般法である民法との関係は、区分所有法に規定されていれば、民法の規定は排除され、区分所有法の規定に従うということです。
それは、逆に、区分所有法に規定が無ければ、民法に従うともなります。

その区分所有法の特徴は、
まず、建物における所有権については、各自が1つの建物内で有している室の所有権を区分(区分け)して持つ内容の「”区分”所有権」なるものを考え出しました。
この区分所有権は、1つの物(一棟)の一部に対して所有権(物権です)を認めるという民法の原則である「一物一権主義」と異なった、”区分所有”という特別な法律上の構成をとっています。
区分所有法における建物の「区分所有権」の創設は、これからの解説で明らかになりますが、今までの民法での「所有権」という言葉を使用しながらも、民法の所有権を大幅に変更したものです。
★土地の所有形態も今までの民法と異なる ⇒敷地利用権の創造
また、1つの建物が、複数の人の権利を有していることにより、建物が建っている土地(敷地)の売却などの処分行為にも制限を加える必要が生まれました。
そこで、マンションの敷地に対して区分所有法が新しく考え出した概念が「敷地利用権」です。
この「敷地利用権」については、後ほど詳しく解説しますが、単に建物としてその土地(敷地)を利用できる権利で、この権利には今までの民法で規定される所有権や借地権(建物の所有を目的とした、地上権または土地の賃借権)などが入ることになります。しかし、民法で定めている所有権や借地権とは別の権利です。
この「敷地利用権」という土地についての概念を新しく創設したことにより、建物の専有部分(室)の権利移動があれば土地の権利移動も共に移動するという、これまた区分所有法独自の構成を採用しました。

★共同生活の規則=ルールが必要 〜規約の重要性〜
さらに、戸建てと異なりマンションでは、多くの人々が1つの建物内に生活しています。
そこで各自が夜遅くまで騒ぐとか、大型犬を室内に飼うとか好き勝手に行動するとすると、他の居住者に迷惑が及びます。
この実態から、マンションでは居住者全員が「団体」として守る共同生活の規則を定める必要性があります。
この規則を区分所有法では「規約(管理規約)」とよび、各マンションの状況に応じて制定することができるようにしました。
★民法での「共有」の制度を大幅に変更し、「多数決」の採用へ
ところで所有権において複数の所有権者が関係することを民法では「共有」と呼んでいます。(参照:民法 第三節第249条〜)
民法で規定する多数の人が1つの物を持つ「共有関係」での譲渡、抵当権の設定などの処分行為は、「共有者全員の合意(同意とも)」が基本です。(参照:民法第251条)
<参照> 民法 第251条
(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。
2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。
しかし、共有者が2,3名ならともかく、マンションのように共有者が30名や100名ともなるとその共有者の全員が合意して賛成することは、経験上、実社会では実現が不可能に近く、困難であるため、区分所有法では、民法の共有者の全員の合意の条件を緩和し、共同生活のルールを、権利者による「多数決の理論」を取り入れて決めることにしました。

区分所有法が、マンションにおける建物・敷地・共同生活での規則を規定しているという特異性が、民法の特別法(民法に優先する法律)として区分所有法が制定されている理由です。
重ねていいますが、区分所有法の特異性は、民法で定める「共有関係」と「土地と建物の一体性」について別に規定し、さらに「共同生活での規則」を定めていることです。
★民法と区分所有法(特別法)との優先順位
民法は、普通の生活をおくっている私たち私人の法律関係について規定する「一般法」です。
これに対して区分所有法は、民法での私人間の法律関係の内、区分所有されている建物と土地をめぐる法律関係を定めた「特別法」です。
法律の決まりとして、「特別法は一般法に優先します」。
これは、区分所有法に該当する規定があれば、特別法たる区分所有法が適用され、区分所有法に定めがない場合には、一般法の民法が適用されるということです。
★民法と区分所有法との共有関係の違い
民法と区分所有法の適用で、大きな相違点となるのは、「共有関係」です。
共有関係における区分所有法と民法の適用の大きな違いは、その行為が共有者の「多数決」でできるのか、それとも「全員の合意」が必要となるのかです。
区分所有法の適用となれば、そこでは共有者の過半数や3/4以上(規約の変更など)または4/5以上(建替え)などの多数決で決めることができますが、区分所有法に規定がない新しく敷地を購入するなど民法の適用となると「全員の合意」が必要となる点です。

これらを踏まえ、以下に解説しています区分所有法の各条文により、徐々に明確になると思いますが、この区分所有法の勉強での注意点は、
| 1. | 建物が専有部分と共用部分に分かれていること |
| 2. | 建物の専有部分と敷地の処分が一体化されていること |
| 3. | 多くの人が住む建物の利害関係を管理面でいかに調整するか |
です。

★マンションとは?
ところで、区分所有法内での条文においては「マンション」という言葉は出てきませんが、この解説では、既存のイメージに基づいて使用しています。
法律の解説において、イメージを持ち出すとは、定義としてかなり曖昧な表現と思いますが、
概要としては、
1つの建物の中に、複数の室(部屋)があり、そこに複数の人が暮らしているもの
です。

区分所有法を勉強し始めた初心者にとっては、この「マンション」という言葉の方が、堅苦しい「区分所有建物」というよりも分かり易いと思いますので、解説の当初はこのマンションという言葉を使用していきます。
なお、マンション管理士・管理業務主任者等を定めた「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」では、「マンション」が法律用語として定義されていますので、参考にしてください。
<参考>マンションの管理の適正化の推進に関する法律 第2条 (定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号の定めるところによる。
一 マンション 次に掲げるものをいう。
イ 二以上の区分所有者(建物の区分所有等に関する法律 (昭和三十七年法律第六十九号。以下「区分所有法」という。)第二条第二項 に規定する区分所有者をいう。以下同じ。)が存する建物で人の居住の用に供する専有部分(区分所有法第二条第三項 に規定する専有部分をいう。以下同じ。)のあるもの並びにその敷地及び附属施設
ロ 一団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)が当該団地内にあるイに掲げる建物を含む数棟の建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地及び附属施設
(以下、略)
この、マンション管理適正化法の要件として、マンションとは
@2人以上の区分所有者 がいて、
A人の居住用の専有部分が1つでもあればいい
です。
注意:マンション管理適正化法では、2人以上の区分所有者がいて、1つは居住用の専有部分であれば、マンション管理適正化法のマンションに該当しますが、区分所有法では、特に居住用に限らず、店舗や事務所も該当することに注意が必要です。

| 第一章 建物の区分所有 |
| 第一節 総則 |
| (建物の区分所有) |
| 第一条 |
| 一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。 |
| 過去出題 | マンション管理士 | R03年、H30年、H25年、H22年、H18年、H15年、H14年 |
| 管理業務主任者 | R07年、H25年、H20年、H16年、H13年 |
★まず、この「超解説 区分所有法」の解説方法について説明します。
解説は、区分所有法に記載されています第一条から始まり最終条文まで、順次条文ごとに解説しています。
上記のように、各条文は「黒字」で示します。
そして、条文の下にある「過去出題」の欄は、過去に「マンション管理士試験」または、「管理業務主任者試験」で出題があった場合、「H22年」、「R02年」などのように記入しています。
「H22年」は、平成22年を指し、「R02年」は、令和2年を指します。上の第一条の場合、「マンション管理士試験」で、令和3年、平成30年、平成25年、平成22年、平成18年、平成15年、平成14年に出題があったことを示します。
この、「過去出題」の欄で記入されている年数の多さで、その条文の重要度が分かりますので参考にしてください。
そして、解説の記述は、条文の下にあります。
★区分所有法の構成
まずは、区分所有法の全体がどうなっているのかを見てみましょう。
区分所有法とはどのような構成かといいますと、第1条から 第92条 第72条 まで、全部で 92条 72条 からできていて、その制定は、昭和37年というまだ出来てから新しい法律ですから、時代の要請に応じて今後も適時大幅な改正が予定される法律です。
令和8年4月1日施行で、第1章に所有者不明専有部分管理命令や管理不全専有部分管理命令及び管理不全共用部分管理命令が追加され、また、建替えのオプションとして、第3章に敷地の売却、建物の取壊しなどを追加して、72条から92条に増加されました。
条文としては、1条から92条までですが、詳細レベルでは、xx条の2とか、xx条の3 などの追加規定があり、実態は、92条構成ではありません。
現在の区分所有法は、以下のように、5つ 3つ の章から構成されています。
1)第1章「建物の区分所有」 (第1条から第64条の8まで)
1棟の建物の区分所有の関係について定めたもので、この法律の中核をなしています。
第1章は以下の 10節 8節 から成り立っています。
第1節 総則、・・・・・・・・ 第1条から第10条までは、区分所有法関係の基本的な用語の定義など
第2節 共用部分等・・・ 第11条から第21条までは、廊下・階段など建物の共用部分の共有関係など
第3節 敷地利用権・・・ 第22条から第24条までは、マンションの土地(敷地利用権)と専有部分との関係
第4節 管理者・・・・・ ・・ 第25条から第29条までは、団体生活をまとめる管理者の立場
第5節 規約及び集会・・・第30条から第46条までは、団体での生活規範となる規約及び集会のありかた
第6節 所有者不明専有部分管理命令・・・第46条の2から第46条の7 (新設)
第7節 管理不全専有部分管理命令及び管理不全共用部分管理命令・・・第46条の8から第46条の14 (新設)
第8節 第6節 管理組合法人・・・第47条から第56条の7までは、管理組合を法人とした場合
第9節 第7節 義務違反者に対する措置・・・第57条から第60条までは、マンションに住む人が義務違反をした場合にとれる措置
第10節 第8節 復旧及び建替え等・・・ 第61条から第64条の8 までは、建物が壊れたとき、老朽化した場合における所有者の選択
2)第2章「団地」 (第65条から第71条まで)
1団地内に数棟の建物があって、それらの建物の所有者が団地内の土地等を共有している場合、すなわち団地関係が構成されている場合における管理の方法、建替え等について規定。
3)第3章 建物が滅失(全部滅失)した場合における措置 (新設)
第1節 専有部分のある建物が滅失した場合における措置(第72条から第77条)
第2節 団地内の建物が滅失した場合における措置(第78条から第85条)
4)第4章 所在等不明区分所有者等の除外等に関する裁判手続(第86条から第90条) (新設)
5)第五章 第3章 罰則(第91条・第92条) (第71条、第72条)
管理者、管理組合が法人化した場合の理事、規約を保管する人、議長又は清算人が義務等を怠った時には、20万円以下の過料、または 10万円以下の過料が課せられます。
それでは、区分所有法の構成に従って、第1章「建物の区分所有」の「第1節 総則」の第1条「建物の区分所有」 から解説を始めます。
第1条は、
区分所有法 第1条
(建物の区分所有)
第一条
一棟の建物に構造上区分された数個の部分で独立して
住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができるものがあるときは、
その各部分は、この法律の定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができる。
です。
第1条の概説としては、
★今までの民法で定める一戸建の住戸なら1つの建物に対して1つの建物の所有権がある(一物一権主義)が、マンションには一棟内に多数の建物(室)の所有権が壁・床・天井を隔てて存在する。
そこでこの法律=区分所有法が民法の特別法として制定された。
「所有権の目的とすることができる」・・・基本的には、民法で定める建物に対する「所有権」ということですが、その実態は「区分所有権」と呼ばれ(区分所有法 第2条)、民法での所有権そのままではなく、かなり制限された所有権と考えるといいでしょう。
<参照> 民法 第206条 所有権の内容
第一款 所有権の内容及び範囲
(所有権の内容)
第二百六条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
★区分所有法での対象となるマンションやビルの建物部分を定義する。
民法で規定されている占有権や抵当権など各種権利の1つとして重要な権利である「所有権」の対象となる物に、不動産の
・建物 と
・土地 があります。
これを基本として、区分所有法では、まず、「建物」について条文が始まっています。
|
|
*所有権の目的とすることができる...この規定により、民法第206条以下に規定される「所有権」と同じ扱いをうけることになる。しかし、「できる」であり、要件を満たさないと法律上当然にはならない。
★区分所有とは...今後明らかになっていきますが、一個の物(建物、棟)の一部分だけを分けて(区分です)所有することです。
民法の所有権での基礎となるのは、土地と建物(不動産)の権利関係です。
民法の特別法である区分所有法も、所有について、この土地と建物の権利関係を規定していきます。
そこで、最初に「建物」の権利関係から入っています。
なお、「建物としての用途に供する」とは、通常、人が住んだり、仕事をするために建てられた物です。
特にマンションと呼ばれる居住用に限らず、店舗や事務所また倉庫なども入ることになります。
不動産登記法での「建物」とは、不動産登記規則第111条、
<参照> 不動産登記規則 第111条
第三款 建物の表示に関する登記
(建物)
第百十一条 建物は、屋根及び周壁又はこれらに類するものを有し、土地に定着した建造物であって、その目的とする用途に供し得る状態にあるものでなければならない。
また、建築基準法では、「建築物」として、第2条に、
<参照> 建築基準法 第2条
(用語の定義)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
一 建築物 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨こ線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。
とあります。

*区分所有法の基本となっています民法では、所有権を以下のように定め、建物や土地の所有者は建物や土地を、他人の了解がなくても、個人で自由に使用でき、排他的に支配し、貸すことも(収益)、売ることも、抵当に入れること(処分)もできます。
<参照>民法 第三章 所有権
第一節 所有権の限界
第一款 所有権の内容及び範囲
第206条 (所有権の内容);
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
<参照>民法 第207条 (土地所有権の範囲);
土地の所有権は、法令の制限内において、その土地の上下に及ぶ。
★区分所有権が認められる要件
区分所有法では、民法とは扱いが異なることを理解して、区分所有法の第1条を注意して見ていきましょう。
区分所有法 第一条
一棟の建物に
構造上区分された数個の部分で
独立して 住居、 店舗、 事務所 又は 倉庫 その他 建物としての用途に 供することができるもの
があるときは、その各部分は、この法律の定めるところにより、
それぞれ所有権の目的とすることができる。
このように、区分所有法第1条では、条文の終りのほうで、以前から存在している民法で定める物権の1つであります「「所有権」の目的とすることができる」として民法の「所有権」との関連を付けています。
| 参考:物権と債権の違い | |
| 物権 | 物を直接支配する権利で、全ての人に対して権利を主張できる絶対的な支配権。 占有権・所有権・地上権・永小作権・地役権・入会権・留置権・先取特権・質権・抵当権に限る。 |
| 債権 | 特定の人に対してある要求をする権利。他の第三者に対しては主張できない相対的な請求権。 各種契約や不法行為、事務管理、不当利得等で発生する。限定されない。 |
しかし、区分所有法第1条では、民法の一つの物には一つの権利しか存在しないという一物一権主義と異なり、つまり、その1棟の建物全体が1個の権利(所有権)の対象になるのではなく、1棟内の「構造上区分された数個の部分」が、それぞれ民法での所有権という権利の目的になるとしています。
しかし、その民法での所有権との関係を満たすには、ある要件が必要ですともいっています。
この区分所有法に定める特別な所有権は、あとででてきます第2条1項により民法での所有権と異なった「区分所有権」と呼ばれることになるのですが、その民法の所有権の目的として、別々の不動産として所有できるための要件は、
まず、1棟の建物の部分が、”独立していること”です。
この建物の部分の「独立とは」...
@構造上の独立性 と
A利用上の独立性 の
2つの面で独立していることが必要と解釈されています。

具体的には、1棟の建物内にあって、
@構造上の独立性とは...建物の部分が、物理的に壁・扉・床・天井などで遮断されていること。
店舗のように正面がシャッターやガラスで遮断されていてもいい。
ふすまや障子で仕切られているのは部屋の区切りで構造上の独立性がなく、ここには入らない。
A利用上の独立性とは...建物の部分が、独立(単独で)して
@住居、A店舗、B事務所 又は C倉庫、Dその他建物 などに使え、住居なら風呂・トイレなどの設備も存在して、隣室を通らなくても直接外部にでられるようになっていること。
トイレや浴室は単独では区分所有権の目的にはなりません。
このうちの、独立して、出入り口があることは区分所有法の解釈において非常に重要です。
建物の用途として例示されています、@住居、A店舗、B事務所、C倉庫、そして
Dその他建物としては、医院や教室、劇場、教会なども考えられます。
また、これらの条件を満たすなら、車庫も区分所有権の対象にできます。
区分所有法がその適用の対象としているのは、この第1条の規定にあるように1棟が区分された住居専用のマンションだけでなく、店舗や事務所が入っているビル、そして1棟全体が倉庫でも
@構造上の独立性 と
A利用上の独立性
を備えていれば、区分所有法の対象になることに注意してください。また、住居と店舗が1棟で共存しているビル(いわゆる下駄ばきマンション)も区分所有法の対象です。
(注:過去のマンション管理士や管理業務主任者の試験問題などをやっていくと、今後説明します国土交通省が参考に定めた「マンション標準管理規約(以下、この解説では「標準管理規約」といいます)」が住居専用のマンションの規約である関係もあり、区分所有法が対象としているのは居住専用マンションだけと思うようになるので注意のこと。
店舗や事務所、そして倉庫であっても、この条件を満たせば、区分所有権の目的として該当する。)
◎「建物としての用途に供されるもの」に限られるので、「廊下、階段室、エレベーター室」のようなものは、後で出てくる「共用部分」となり、区分所有権の対象にはなりえないとも規定している。
◎ 最初は、定義関係の条文はその意図が分からない。定義している関係の条文(第1条から第5条まで)を読み、何を目的としているのかの概略を掴み、またここに戻ってくると、少しは理解しやすいかも。
区分所有法が目的としている、「建物の権利と土地の権利をどうしたら、分離処分させないことができるか」の苦労の定義です。
★マンション(区分所有建物)の成立要件 〜@構造上区分されていること、A独立して利用できること〜
本区分所有法第1条は建物が区分所有される要件(マンション:区分所有建物の成立要件)を規定しています。この条文によれば、マンションであるには、1棟の中の部分が、
@構造上区分されていること、 にプラスして、
A独立して利用できること の2つの要件が必要とされます。
これを一般に@構造上の独立性、A利用上の独立性 と称しています。
区分所有法上でマンション(区分所有建物)であるためには、その建物がコンクリート造か木造とかの建築材料や、また建物の大小、そして、後に定義されます建物の室(専有部分)を有する人を区分所有者と言いますが、その区分所有者の数は問われません。
通常みられる居住専用の建物に限らず、店舗だけが入っているビル、事務所だけのビル、また、居住用と店舗や、事務所と店舗などが混在したビルも区分所有法が対象とする建物に入りますし、建物の敷地である土地の権利は各自が別々に有していて上の建物だけが1棟として繋がっているいわゆるタウン・ハウスと呼ばれる建物なども入っています。
その建物の構造は、鉄筋コンクリート造だけに限定されず、ブロック造りでも木造でもかまいません。
しかし、この区分所有法の対象にできる、一棟の建物での二つの要件
@構造上の独立性と
A利用上の独立性は、
条文を読んでも分かりますように、具体的にはあまり明確ではなく、過去の判例や、法の解釈から規定されるに至ったのです。
例えば、1番目の要件とされる「構造上の独立性」については、建物を構成する隔壁、階層等で独立して物的支配に適した程度で他の部分と遮断されて、その範囲が明確であることが、要件とされますが、通りに面した店舗のように三方が壁で正面がシャッターやガラスで区切ることが可能な一角でも、区分所有権の対象になります。
2番目の要件の「利用上の独立性」は、その建物の区分けされた部分が独立して利用するに適しているかどうかが判断基準になりますが、具体的な判断としては、電気・水道・ガスなどの共用設備の有無、その利用方法、管理方法などを勘案してなされます。
そこでの「直接外部に通じる出入り口があるか、どうか」は重要な判断基準となっています。
過去の判例では、
@区分境界の明確性...その建物の部分がその他の建物の部分と明確に区分されていること
A遮断性...その建物の部分がその他の建物の部分と境界の壁・扉・天井・床などで遮断されていること
B通行の直接性...その建物の部分がその他の建物の部分を経由しないで直接外部に出入りできること
C専用設備の存在...その建物の部分には、使用目的や用途としてふさわしい専用の設備が設置されていること
D共用設備が存在しないこと...その建物の部分には、区分所有者全員または一部の区分所有者のための設備(共用設備)が存在しないこと
などが、争点として挙げられて、区分所有権の適用の有無が判断されていますが、いちがいに判断することは難しいのが現状です。
一応、最高裁判所の判例:昭和56年6月18日を参考例にあげます。なお、この判例には、後ででてきます「専有部分」や「共用部分」もでてきます。
事件名:建物所有権保存登記抹消登記手続
裁判年月日:昭和56年6月18日
法廷名:最高裁判所第一小法廷
判示事項:
一 建物の区分所有等に関する法律一条にいう構造上区分された建物部分の意義
二 構造上他の部分と区分されそれ自体として独立の建物としての用途に供することができるような外形を有する建物部分の一部に共用設備が設置されている場合と建物の区分所有等に関する法律にいう専有部分
三 共用設備が設置されている車庫が建物の区分所有等に関する法律にいう専有部分にあたるとされた事例
---------------------------------------------------
裁判要旨
一 建物の区分所有等に関する法律一条にいう構造上区分された建物部分とは、建物の構成部分である隔壁、階層等により独立した物的支配に適する程度に他の部分と遮断されており、その範囲が明確な建物部分をいい、必ずしも周囲すべてが完全に遮蔽されていることを要しない。
二 構造上他の部分と区分され、かつ、それ自体として独立の建物としての用途に供することができるような外形を有する建物部分は、そのうちの一部に他の区分所有者らの共用に供される設備が設置されていても、右の共用設備が当該建物部分の小部分を占めるにとどまり、その余の部分をもつて独立の建物の場合と実質的に異なるところのない態様の排他的使用に供することができ、かつ、他の区分所有者らによる右共用設備の利用、管理によつて右の排他的使用に格別の制限ないし障害を生ずることがなく、反面、かかる使用によつて共用設備の保存及び他の区分所有者らによる利用に影響を及ぼすこともない場合には、なお建物の区分所有等に関する法律にいう専有部分にあたる。
三 建物の一階部分にある車庫内に、建物の共有設備として、壁の内側付近二か所に臭気抜きの排気管が取りつけられ、出入口付近の床の三か所に排水用のマンホールが設置されていても、これらが車庫のうちのきわめて僅かな部分を占めるにすぎず、かつ、これらがあるために建物の管理人が日常車庫に出入りする必要が生ずるわけでもないなど、原判示の事実関係のもとにおいては、右車庫は、建物の区分所有等に関する法律にいう専有部分にあたる。
---------------------------------------------------
参照法条
建物の区分所有等に関する法律1条,建物の区分所有等に関する法律2条3項
★区分所有法の適用が開始されるのは
では、いつからこの区分所有法の適用が開始されのかといいますと、建物が完成して、後からでてきます「専有部分」について不動産登記法による「表示登記」がなされたときからとされています。
区分所有法の適用の開始にあたり、区分所有者の数には影響されません。

★@構造上の独立性とA利用上の独立性について
後でも出てきますが、@構造上の独立性 と A利用上の独立性 を持つ建物の部分は、区分所有権の目的となり、区分所有法で別途規定される「専有部分」となるわけですが、この「専有部分」と建物での「専有部分以外の部分=共用部分」との区切りが実に難しいのです。
「専有部分」と「共用部分」との区分の判断においては、@構造上の独立性 と A利用上の独立性 の内、A利用上の独立性(単独で使用できるか)の有無 が中心になってきています。
★今後の解説の展開として、各所に、マンション管理士や管理業務主任者試験で出題された過去の問題を「設問」の形で載せています。
最初は、当然のことながら、答えは不明と思いますが、記憶の整理にしてください。
いきなり、試験問題ですが、基本となる「専有部分」「共用部分」の区分の明確化、また「法律上当然」は、必ず出題されますので、あとで戻ってきて、読んでください。また、何度も確認しておいてください。
{設問}1棟の建物に構造上区分され、独立して住居としての用途に供することができる数個の部分がある場合の区分所有権の成否及びその内容に関する次の記述のうち、建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。
(平成15年マンション管理士 問1)
1 この数個の部分は、法律上当然に専有部分となる。
答え:誤り。法律上当然には、専有部分とならない。 見た目は専有部分でも、規約により、共用部分にできることがある。
区分所有法で、「専有部分」とは、区分所有権の目的となり得る建物の部分をいう(2条3項)。そして、専有部分となりえても、規約によって共用部分とすることもできる(4条2項)。
よって、1棟の建物に構造上区分され、独立して住居としての用途に供することができる数個の部分は、すべてが法律上当然(そのまま当然に、なにもしなくても法律の定めによって)に専有部分となるものではない。
規約で専有部分も共用部分に変更できることもある。
例えば、建物内にある管理人室、集会室など専有部分となりうるものでも、規約で共用部分にすることができる。(この設問は、今後説明します「専有部分」と「規約共用部分」を理解する必要があります。)
2 この数個の部分は、その一つが法律上当然に共用部分となることはない。
答え:正しい。
言葉が分かり難い設問です。
区分所有法での建物は、必ず @専有部分か、A共用部分 のどちらかになる。
そして、共用部分は、ア.法定共用部分(廊下・階段室など)と、イ.規約共用部分に分かれる。
設問の独立して住居の用途に供することができる「数個の部分」は、本来なら専有部分であり、共用部分にするには、 区分所有法第4条第2項本文が、「第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。」 と定めている。
この数個の部分は、なにもしなければ(規約で定めなければ)、専有部分であり、その一つが法律上当然に共用部分となることはない。共用部分とするためには規約で共用部分と定めなければならない。
3 この数個の部分には、法律上当然に各別に1個の区分所有権が成立する。
答え:誤り。 区分所有法に規定がない。
専有部分とすることができる部分について、当然に各別に1個の区分所有権が成立するとする規定は、区分所有法にはない。
数個の専有部分がある場合でも、その専有部分の全部を1人で所有する場合は、数個をあわせて、1棟の建物全体で、1個の所有権とみることも可能である。各別に1個の区分所有権が法律上当然に成立しないこともある。
数個をあわせて1個の専有部分とすることができる場合がある。
4 この数個の部分の区分所有者の数は、法律上当然に2以上となる。
答え:誤り。 区分所有法に規定がない。
専有部分とすることができる部分について、その区分所有者の数が、当然に2以上であるとする規定は、区分所有法にない。
まだ分譲していないマンションのように、全ての専有部分を分譲業者一人(1社)で所有する場合は、区分所有者の数は1となる。一人でも複数の区分建物を所有することができる。
正解:2 (この設問は、専有部分とは何か、区分所有者の数とは等を聞いています。基本でありながら、区分所有法の全体をとらえてないとかなり難しい。)
| (定義) |
| 第二条 |
| 1項 この法律において「区分所有権」とは、前条に規定する建物の部分(第四条第二項の規定により共用部分とされたものを除く。)を目的とする所有権をいう。 |
| 過去出題 | マンション管理士 | H25年、H22年、H19年、H18年、H15年、H13年 |
| 管理業務主任者 | H28年、H25年、H19年、 |
<参照> 除かれるのは共用部分 区分所有法 第4条;(共用部分) 2項 とは、
1項 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。
2項 第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。
この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
*「区分所有権」とは...建物の専有部分(単独所有できる部分)を目的とした「所有権」のこと。 これで、民法とは異なる区分所有法独自の”区分”「所有権」が設定されたことになる。
<参考>民法での所有権:所有権とは、物を完全に支配し、利用することのできる物権の一種。
物権には、所有権のほかにも、占有権、地上権、留置権、抵当権など10種あり、一定の物についての権利をいいます。
物権と債権との違いは、物権は、物に対する直接の支配権で相手の行為を必要としないで、行うことができる点です。
一方、債権とは、人に対して一定の給付の請求をする内容の権利です。
◎法律の構成 〜 まず、用語の定義をする 〜
★定義条項とは
この解説をしています区分所有法にしろ、マンション管理士や管理業務主任者試験の出題範囲である建築基準法や都市計画法にしろ各種の法律は、その法文の中のいろいろな条項で一定の事項を繰り返し規定(表現)することがあるため、前提としてその法律で使用する特別な言葉が何を表しているかの「定義」が必要です。
また法律の条文による「定義」は、特別な意味を有することもあり、社会通念からも異なった解釈を生まなくするためにも、必要とされます。
そこで、新しく制定される法律には、その法律の構成として、条文の始めの部分に「定義」としてその法律内で使用される言葉の意味を説明した条文があります。しかし、古い法律の民法では原則の事柄は、一般原則なので、判例や学説に委ね柔軟性を持たせ、時代に適応させるためにあえて規定がないこともあります。
区分所有法では、第2条が区分所有法内で使用される特別な用語に意味を持たせる、つまり用語を定義する「定義条項」となり今後、区分所有法の条文内で使用される各用語がどのような意味をもつのかを説明しています。
基本的に定義条項は、その法律の立法者がこの後に規定する条文に対する解釈の疑義を生まないために、こう定めるというものですから、それは、私の解釈とは違うとか、世間的におかしいとか、疑問を持たないで、そういうものであると理解・記憶することです。
でも、この区分所有法第2条では、後の条文で記述される第4条も読まないと、区分所有権が分からないというのは、変な構成ですが、多くの法律体系では、このような条文の構成をとっています。
本第2条では、区分所有法において、基本としている民法に存在しない、つまり一般には分からない区分所有法独自の区分所有権や敷地利用権などの新しい権利を創設したことにより、
1.区分所有権
2.区分所有者
3.専有部分
4.共用部分
5.建物の敷地
6.敷地利用権
の6種について、各事項がこの区分所有法という法律の中で何を意味しているかを定義します。
★「区分所有権」はあくまでも「建物」が目的。
区分所有法だけを勉強していると混同し易いのですが、土地に関する権利と、建物に関する権利は民法と同じように、区分所有法でも別々な権利です。
「土地」の方の権利は敷地利用権で定義します。参照 第22条:分離処分の禁止。
ただ条文を読んでいくと、いつのまにか、それが建物の規定か土地の規定かの区別がつかなくなります。試験での出題もそのあたりを狙っていますので、注意してください。
<参照> 共用部分とは、 第4条 (共用部分)
第四条 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。
2 第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。
注:区分所有権から共用部分(2項の規約共用部分も含めて)は除かれる。(ここは、第4条まで読んでまた、戻ってくると理解し易い。)
*区分所有権とは
では、「区分所有権」とはなにかですが、第2条1項の定義条項によれば、第1条で規定した1棟の建物の部分(これを次の3項で「専有部分」と定義しています。)を目的とする所有権、すなわち建物の専有部分に対する所有権を区分所有法では「区分所有権」とよぶことにしたということです。
第1条の関連から言い換えると、一棟の建物内で
@構造上の独立性 と
A利用上の独立性を備えた部分
イコール = 専有部分で、
具体的には一棟内での各住戸、店舗、事務所などの建物の部分がこの区分所有権の目的となります。
ただし、注意しなければいけないのが、同じ建物の中にあっても、専有部分に通じる廊下や階段室等を別に「共用部分」とよび、また集会室や管理人室等は、その構造・利用性によって専有部分にもなり得ますが、規約で共用部分にすることができ、これらの建物内の部分「共用部分」は、専有部分ではなく区分所有権の目的にはできないとしています。
これが、面倒な規定ですが、「第四条第二項の規定により共用部分とされたものを除く」の意味です。
*まだ、勉強が始まったばかりでは、上のような専門的な言葉を理解することが難しいと思いますが、これからの解説で、徐々に理解できますから、投げ出さないでください。
法律を勉強するということは、条文を読み解き、その背景も分かると記憶し易いですよ。
★新しい所有権の創設 ― 区分所有権 ← 区分所有法で独自に創設された権利
区分所有法で新しく創設された定義「区分所有権」も民法で定められた物権である「所有権」の一種です。
第1条で規定される建物の数個の部分も不動産ですから、区分所有権であっても通常の不動産の所有権に変わりがありません。
従って、その権利関係の売買・譲渡などの処分行為による得喪変更は一般の物権と同じように当事者間では意思表示により効力を生じ、それを第三者に対抗するには登記が必要なことに変りはありませんが、特に区分所有法内で区分所有権と定義したのは単に目的物が物の一部(建物の一部)であるという特殊事情よりも、次の2項の区分所有者を定義する前提として必要だったものと思われます。
しかし、元々の民法で定める「所有権」と区分所有法の建物の「区分所有権」を比べると、「区分所有権」はその実態面では、民法での物権の「所有権」よりも、絶対性や排他性が弱められているなどの制限が多く、また区分所有法の特徴である多数決の原理も取り入れているなどからこれでは「所有権」というよりはかなり効力が弱くなった「専用使用権」だという説もあります。
| 第二条 |
|
2項 この法律において「区分所有者」とは、区分所有権を有する者をいう。 |
| 過去出題 | マンション管理士 | 未記入 |
| 管理業務主任者 | 未記入 |
*「区分所有者」とは...住居・店舗・事務所などで構成される1棟の建物の「専有部分」を区分(分けて)で所有している者。 平たく言うとマンションの室の持主。「者=もの」は法人でも自然人でも可能。また、店舗、事務所、倉庫なども含み居住用だけに限らないことに注意。
当初は、この区分所有法第2条2項の定義も何を言っているのか分からないと思います。これも、定義ですからそうなんだという認識でかまいません。
区分所有者とは、第2条1項から2項の規定により、「区分所有権を有する者」であり、またあとの3項ででてきます建物の「専有部分」の所有者である者ですが、専有部分がこれもあとの4項に規定する廊下や階段などの「共用部分」がなければ物理的にも機能的にも存在し得ないことから、必然的にマンション生活で共用部分の共同持主である他の区分所有者との関係が生じること、また自分の室(専有部分)の利用も他の人の室(専有部分)に対する影響を考慮せざるを得ないため、通常の民法で定める所有権の権能である「目的物を自由に使用収益する」ということに何らかの団体的な制約を設ける必要があるため、ここで民法の所有権者とはかなり違うということを認識させるために定義することの必要性があり、そこで「区分所有者とは」なにものかを定義しています。
この、民法で定められた、一般の所有権を別の法律で制約することが、区分所有法という民法の特別法を制定する理由でもあります。
この規定で、民法で規定される「所有者」と区分所有法での”「区分”所有者」は、異なっていることを認識させます。
なお、区分所有権を有していない(専有部分を持っていない)賃借人や使用借権者・占有者は、ここの「区分所有者」には該当しません。
★2項では、区分所有者の定義をしているだけです。
区分所有権(専有部分)を複数の区分所有者で有する、いわゆる「共有」の扱いは、民法やこの区分所有法での適用があります。

| 第二条 |
|
3項 この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。 |
| 過去出題 | マンション管理士 | H25年、H22年、H19年、H18年、 |
| 管理業務主任者 | H26年、H22年、H13年 |
*「専有部分」とは...各区分所有者が自由に使っていい建物内の自分の持ち物。マンションの各室内や、ビルなら各店舗・事務所。この建物の専有部分に対応する言葉として同じ建物での廊下や階段の「共用部分」がある。(4項参照)
マンションにおいて、単独で所有し処分ができる建物の一部分。この「専有部分」の権利がマンションでは中心になる。

◎ただし、建物内にある「廊下、階段室、エレベーター室」のようなもの(共用部分という)は、専有部分にはなりえない。
★ここ第2条3項も、定義ですので、区分所有権の目的になるとかならないとかを含めてとりあえず「専有部分」とは、「区分所有権の目的たる建物の部分」というものだと理解してください。
★専有部分は、本3項で、前の第2条1項で定義された「区分所有権」の目的となる”建物の部分”と定義されます。
区分所有者は、一戸建の家の所有者と同じように、自分の建物の「専有部分」を原則として、自由に売買したり、担保に入れたり、貸すなどの使用・収益・処分行為ができますが、他の区分所有者を害する権利行使に対しては、制限が後に規定されています。
なお、一般的に建物の専有部分内にある電気の配線やガス・水道の配管は専有部分に含まれますから、注意してください。
★区分所有権の目的となり得る建物の部分=専有部分とは、
第1条で規定される、
「一棟の建物のうち
@構造上区分され(構造上の独立性)
A独立して住居、店舗、事務所又は倉庫その他建物としての用途に供することができる(利用上の独立性)
数個の建物の部分で、
さらに、この部分であっても、規約により共用部分とされた部分(区分所有法第4条2項)を除いた物が、専有部分です。
そこで、「専有部分」となると、区分所有者が、排他的に支配し売買など権利の行使ができ、原則、専有部分内の修理などの管理も区分所有者が行いますが、あとで出てきます「共用部分」になると、共用部分は区分所有者たちの共有となり、区分所有法で定める管理方法に従うことになります。
| 第二条 |
| 4項 この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。 |
| 過去出題 | マンション管理士 | R05年、R04年、R03年、H30年、H26年、H25年、H22年、H19年、H18年、H16年、H15年、 |
| 管理業務主任者 | R02年、H14年、 |
*「共用部分」とは...まだ、あくまでも建物の部分での言葉です。土地については、まだ定義がでてきません。
建物の中で
◎出入り口(エントランス)、廊下や階段など「専有部分以外の部分」であり、さらに、この共用部分には
@「専有部分でない建物の附属の物」(電気の幹配線、ガス・水道の主配管、エレベーターなど)
A「専有部分になりえるが、規約でみんなの物とする附属の建物」(集会室、物置、倉庫など)
がある。

★「共用部分」とか後で出てくる「共有」の言葉の使い分けに注意。
共有を使用すると:民法で規定する「共有」の適用を受けるため、マンションでは法律上「共用部分」の概念を定義し創設した。
なお、共有とは、1個の所有権を複数の人で所有することです。
<参照>
・共有:民法 第249条〜
・準共有(所有権以外の財産権を複数の人で持つとき):民法 第264条
★この規定も建物が目的の定義。
区分所有法では建物においては「専有部分以外」は必ず「共用部分」となる。
また、当初は、専有部分以外の共用部分は土地にも及ぶと誤解し易いので注意のこと。
◎この条文により、区分所有法では、区分所有されている「建物」は、必ず
1.専有部分(単独所有部分) か
2.共用部分(みんなで使う部分)
のどちらかに属するとした。
★なお、共用部分には
@法定共用部分 と
A規約共用部分
がある。
「専有部分」に対応する。専有部分以外の建物の部分。
![]()
★共用部分とは
定義条項の第2条4項では、建物での共用部分とは何かを定義しています。
それによりますと、
@専有部分以外の建物の部分
A専有部分に属しない建物の附属物
B(専有部分にもなり得るが)規約により、共用部分とされた附属の建物
です。
また、共用部分は、面倒ですが別途第4条にも例示・規定されています。
その第4条によりますと、共用部分には、
@法定共用部分 と
A規約共用部分
があり、共に共用部分になると、専有部分ではないため区分所有権の目的にはできないともなります。(第2条1項)
@法定共用部分...第2条4項前半に明示されている、「共用部分」とは、「専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物」である。
具体的には、通常、建物の躯体、支柱、外壁、屋根、廊下、階段室、エレベーター室など。外部から見ても、構造上、使用上、法律上当然に居住者みんなが使う場所や構造物は共用部分となる。
◎建物の附属物...建物に附属して、効用上その建物と不可分の関係にあるもの。
外部にある電気の幹配線、ガス・水道の主配管、その建物全体で使うようになっている貯水槽、冷暖房設備、消防設備、昇降機設備、テレビ受信設備など。
これらは、法律上当然に共用部分となる。
ただし、一般的に専有部分内にある電気の枝配線やガス・水道の枝配管は専有部分に含まれる。
雑排水、水道の「本管=メインパイプ」も法律上当然に共用部分になる。しかし、「枝管」は本管と連続して室内に入るため、どこまでが、共用部分か専有部分かは議論が有る。<参照>第4条1項
A規約共用部分...第2条4項後半に規定される、「第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物」である。
それは、その用途・性質から、@構造の独立性とA利用上の独立性を備えた専有部分となりえるが、区分所有者達が規約で決めれば共用部分に変更できる。
その建物の部分は、他の人(外部の人)が見て、マンションの一室(専有部分)かどうか分からないものであるため規約で共用部分であることを明文化する必要がある。
例えば、同じ棟内にある集会室、管理事務室などは、「専有部分」のように、独立した出入り口を備え、水道・ガス設備を備え住むことができる構造もある。その為に規約でそこは室(専有部分)ではない「共用部分ですよ」と決める必要がある。<参照>第4条2項。このような建物の部分は”法律上当然”には共用部分にはならない。
◎附属の建物...区分所有建物に対して従物的な関係にあるもの(別棟の集会所、物置、倉庫、車庫など)は、法律上当然には共用部分にはならない。規約で共用部分にできることに注意。
<参照>区分所有法 共用部分 第4条 (共用部分)
第四条 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。
2 第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

★まとめ:1棟の建物は、必ず
@専有部分 か
A共用部分 のどちらかに分けられる。
共用部分というと、法定共用分だけでなく、規約共用部分を含むことに注意。
また、土地(敷地)は、入らないことにも注意のこと。
| 建物 | @専有部分 | @構造上、 A利用上の独立性があること |
住居、店舗、事務所、倉庫など | 住居に限らないことに注意 | 区分所有権の対象 |
| A共用部分 | @法定共用部分 | 廊下、階段室、エレベーター室など | 法律上当然 | 区分所有者全員の共有 | |
| A規約共用部分 | 本来は専有部分、物置、管理人室、集会室など | 登記をすれば、第三者に対抗できる。 |
★「専有」と「共用」という表現について
ところで、区分所有法をはじめて読む人は「専有部分」や「共用部分」という表現に戸惑うでしょう。これは発音してみると、専有(せんゆう)でも占有(せんゆう)と同じ発音であり、法律が文章の世界で規定されていることがわかります。
「専」と「共」、「有」と「用」という文字は、それを組み合わせることで、「専有」/「専用」、「共有」/「共用」ができます。
この4つの語は「専有」は特定の者の「所有」を、「専用」は特定の者の「使用」を、「共有」は複数の者の「所有」を、「共用」は複数の者の「使用」をそれぞれ意味すると考えてよいでしょう。
そこでこの語の相互の関係を考えてみますと、「専有部分」が「専用部分」であることは当然ですが、専用に使用できる「専用部分」は、例えば、各室にあるベランダ・バルコニー等のように、「共用部分」としたものを専用的に使用する場合がありますので、当然に「専有部分」であるとは限りません。
また同様に、多くの人が利用する「共用部分」が「共有部分」であることは当然ですが、「専有部分」の共有の場合のように「共有部分」が当然に「共用部分」であるとは限りません。
このような関係から、建物の一定部分を正確に定義する必要があるため、1棟の建物のうち区分所有権の目的たる建物の部分を「専有部分」といい、専有部分以外の建物の部分を「共用部分」と定義しました。
★共用部分の例
本第2条4項により専有部分のある1棟の建物のうち専有部分を除いた残りの部分、例えば、エントランス(出入口)、廊下、階段室、エレベーター・ホールや屋上、外壁等を「共用部分」といいますが、建物には建物本体のみならず、居住者の生活に必要な電気・ガス・空調・給排水設備などが附属しています。
これも附属物として(専有部分の附属物を除いたものが)共用部分となります。
★専有部分と共用部分の境界はどこか 〜区分が難しい〜
まず、簡単に条文の説明として、建物の専有部分と共用部分を説明しましたが、この2つの区分(区分け)は実務上は非常に難しいのです。
しかし、区分所有法の構成では、建物が「専有部分」か「共用部分」のどちらに属するかによって、その法的な扱い方が異なるため、建物においては「専有部分」か「共用部分」かをはっきりと決める必要性があります。
そこで、過去から裁判でも争われてきました。
★配管・配線
例えば、専有部分(各室)に入っていくガスの配管や電気の配線、水道の配管等は、まず、ガス供給企業や電気会社などの外部から建物全体に対して大きな配管や配線(本管=メインパイプとか本線と呼ばれます)がなされ、それから各室に枝分かれ(枝管とか枝線と呼ばれます)をしていきます。
この場合、通常、物理的に本管も別れた枝管も、1つの管(クダ)や線として連続したものであり、途中で区切られていませんから、これらについてはどこまでがみんなのものである共用部分でどこからが区分所有者のものである専有部分になるかは多くの論争があります。
常識的には、本管と枝管などは料金メーターなどの結点部分で分岐しているため、ここが責任分界点と思われますが、法律的にはその材質の物理的性質にはよらず専有部分と共用部分の接線で分けられます。
この専有部分と共用部分との境界を、建物で考えた場合、物理的に一体の壁の中心で専有部分の範囲を分ける「壁芯説」と同様の考え方です。もっとも、この点は法律の条文で明確には決まっておりませんから物理的な接点で分けるという規約上の合意をしておけばそこが専有部分と共用部分の責任分界点となります。
★附属の建物
共用部分の定義で残るのは第4条第2項の規定により共用部分とされた附属の建物です。
(注意:「附属の建物」と「建物の附属物」は、似たような言い方ですが、意味が違います。
「建物の附属物」は、専有部分に属さない電気の配線やエレベーターで、これらは、当然に共用部分(法定共用部分)です。
一方、「附属の建物」とは、マンション本体とは別棟として建てられた集会室(集会所)・車庫・倉庫・水道ポンプ室・下水道処理室等の本体建物に付随する建物をいいます。
これらは主たる建物から一応独立した建物ですから当然には共用部分とはなりませんが、規約で共用部分とすることができます。
なお、車庫は、屋根があったり、無かったり、その構造も各種あり、共用部分との判断が一概にはできませんが、下級審の判例では、専有部分と認められた例がかなりあります。
★規約共用部分とすべき場合
専有部分ともなりうる部分を規約で共用部分とした場合としない場合の違いは、適用される法律が民法か区分所有法かの違いとなって現れます。
規約で共用部分とした場合は区分所有法が適用されますからその扱いは他の共用部分と同じですが、規約で共用部分としない場合は民法が適用されます。
民法の適用となりますと、共用部分の扱いは「共有関係」となり、その施設の保存行為は単独で、管理行為は持分の過半数で、その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く変更行為は全員の合意で行い、各自の持分は全て登記され持分の処分や分割請求も自由となります。(参照 民法第249条以下)
従って、附属の建物の性格、用途にもよりますが、他の共用部分と同じようにマンションの全員が共同利用する施設である場合は規約を定めて共用部分とするべきでしょう。
特に、同じ棟内にある管理人室はその設備上からも、明らかに法定共用部分でない場合には、規約共用部分として、登記をして、法律上の争いを防ぐべきです。(現実には、小さなマンションや古いマンションでは、管理人室は登記をしていないために争いの元になる。)
★管理人室(管理事務所)が専有部分か共用部分かの判断
管理人室(管理事務所)はその構造上、専有部分か共用部分かについては、争いが多く裁判でも判断が分かれています。
その判断の要素となるのは、
@居室が大部分を占めるのか、あるいは単なる休憩室なのか
A独立的な出入り口があるか
B共用設備(消防設備、警報装置など)に簡単な補修工事を施せば、全体として居住専用の室にできるか、今のままでも居住専用として使えるか
です。
★バルコニー(ベランダ)
バルコニー(ベランダ)については、隣接した室で相互に非常の際の避難路として使われる場合があるため、共用部分ではありますが、法定共用部分かまた規約で定めて共用部分にすべきかの争いがあります。
★ピロティも争いが多い
通常、1階部分の柱と柱に囲まれた建物内の空間を「ピロティ」と呼びますが、ここを駐車場などにしている場合に専有部分か共用部分かの争いがあります。
ピロティは居住者の集会や避難通路として使われるなら、法定共用部分と考えられます。
★「標準管理規約」について 〜こちらも、令和8年4月1日施行の改正区分所有法に合わせて、最新版が、令和7年(2025年)10月17日付で出た〜
区分所有法が「マンションの管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項については個々のマンションで規約を定めることができる(第3条)」と認めていることに基づき、国土交通省が各マンションの「管理規約」の雛形としています「マンション標準管理規約(以下「標準管理規約」という)」があります。
「標準管理規約」は、マンション管理に対する指針として、昭和57年から、不動産の関係団体に活用するよう通達され、その後、何度かの改正を経ていますので、最新の標準管理規約であるかは、注意してください。
なお、「規約」を設定するかどうかは、そのマンションの区分所有者が自由にできるものであり、法律での強制ではありません。
しかし、現在では、多くのマンションの分譲時に、この国土交通省作成の「標準管理規約」に則った規約がマンション分譲会社により作成され、各マンションの「管理規約」として、採用されています。
注:法律でもないこの単に国土交通省の役人がマンション向けに参考として作成した「標準管理規約」なるものが国家資格である「マンション管理士試験・管理業務主任者試験」での出題範囲の一つとして扱われています。
おかしな話で、「マンション管理士 香川」としては、この「標準管理規約」が、出題範囲に入っていることには、大いに疑問があります。
それはおいといて、この「標準管理規約」には、
@1つの棟を想定した「単棟型」、
A複数の棟からなる「団地型」、
B下に店があり、上が住戸の場合の「複合用途型」 の3種類があります。
マンション管理における内容が、区分所有法より細かく、実例として定められていますので、初めてマンション管理に接する人には用語などの理解の参考になります。
その標準管理規約(単棟型)によりますと、上に述べた専有部分と共用部分の区分が明確でないのをうけ、専有部分と共用部分の具体的な範囲を、以下のように明記してます。
建物の各部分( エレベーターホールとエレベーター室の違い、床スラブ、屋上テラスなど)が読んだだけで、ピンと来ない人は、建物の構造を勉強しておいてください。
<参考>「標準管理規約(単棟型)」第7条:(専有部分の範囲)
(令和7年10月17日版でも変更なし)
第7条 対象物件のうち区分所有権の対象となる専有部分は、住戸番号を付した住戸とする。
2. 前項の専有部分を他から区分する構造物の帰属については、次のとおりとする。
一 天井、床及び壁は、躯体部分を除く部分を専有部分とする。
二 玄関扉は、錠及び内部塗装部分を専有部分とする。
三 窓枠及び窓ガラスは、専有部分に含まれないものとする。
3. 第1項又は前項の専有部分の専用に供される設備のうち共用部分内にある部分以外のものは、専有部分とする。
★標準管理規約には、必要に応じて「コメント」が付記されていて、これにより作成者の意図が具体的に分かります。
<参考>「標準管理規約(単棟型) 第7条関係コメント
@ 専有部分として倉庫又は車庫を設けるときは、「倉庫番号を付した倉庫」又は「車庫番号を付した車庫」を加える。また、全ての住戸に倉庫又は車庫が附属しているのではない場合は、管理組合と特定の者との使用契約により使用させることとする。
A 利用制限を付すべき部分及び複数の住戸によって利用される部分を共用部分とし、その他の部分を専有部分とした。
この区分は必ずしも費用の負担関係と連動するものではない。
利用制限の具体的内容は、建物の部位によって異なるが、外観を構成する部分については加工等外観を変更する行為を禁止し、主要構造部については構造的変更を禁止する趣旨である。
B 第1項は、区分所有権の対象となる専有部分を住戸部分に限定したが、この境界について疑義を生じることが多いので第2項で限界を明らかにしたものである。
C 雨戸又は網戸がある場合は、第2項第三号に追加する。
(第3項関係)
D 「専有部分の専用に供される」か否かは、設備機能に着目して決定する。
<参考>「標準管理規約(単棟型)」第8条:(共用部分の範囲)
第8条 対象物件のうち共用部分の範囲は、別表第2に掲げるとおりとする。
<参考>「標準管理規約(単棟型)」第8条、「別表第2」の共用部分の範囲
別表第2 共用部分の範囲
1 エントランスホール、廊下、階段、エレベーターホール、エレベーター室、共用トイレ、屋上、 屋根、塔屋、ポンプ室、自家用電気室、機械室、受水槽室、高置水槽室、パイプスペース、メータ
ーボックス(給湯器ボイラー等の設備を除く。)、内外壁、界壁、床スラブ、床、天井、柱、基礎 部分、バルコニー等専有部分に属さない「建物の部分」
2 エレベーター設備、電気設備、給水設備、排水設備、消防・防災設備、インターネット通信設備、 テレビ共同受信設備、オートロック設備、宅配ボックス、避雷設備、集合郵便受箱、各種の配線配管(給水管については、本管から各住戸メーターを含む部分、雑排水管及び汚水管については、配管継手及び立て管)等専有部分に属さない「建物の附属物」
3 管理事務室、管理用倉庫、清掃員控室、集会室、トランクルーム、倉庫及びそれらの附属物
(注)ベランダ(またはバルコニー)について
ベランダ(バルコニー)はその構造上、専用部分に附属しているため、専有部分か、また非常時の避難路としての役割から法定共用部分と解するか争いがあるが、標準管理規約では、共用部分としています。
そして、区分所有者に「専用使用権」を認めて、使わせることにしています。(専用使用権については、後述)
<参考>「標準管理規約(単棟型)」第8条、「別表第2」:別表第2関係コメント
@ ここでいう共用部分には、規約共用部分のみならず、法定共用部分も含む。
A 管理事務室等は、区分所有法上は専有部分の対象となるものであるが、区分所有者の共通の利益のために設置されるものであるから、これを規約により共用部分とすることとしたものである。
B 一部の区分所有者のみの共有とする共用部分があれば、その旨も記載する。
以下の図を参考にして、「専有部分」と「共用部分」の仕切り関係を理解してください。


★ここで、今までの内容を整理しましょう。
区分所有法の適用を受ける「建物」には、
1.専有部分(区分所有権の対象となる) と
2.共用部分(区分所有権の対象にならない) があるということ。
また、共用部分には、
1.法定共用部分 と
2.規約共用部分 があるということ。
これらは、あくまでも、「建物」についてです。「土地」については、これからの規定となります。
今後出てくる、「規約敷地」と「規約共用部分」との違いを明確にしておいてください。
{設問-1}区分所有建物に関する次の記述のうち、区分所有法及び判例によれば、最も適切なものはどれか。
1 区分所有建物の専有部分といえるためには、当該部分と外部との出入りが他の専有部分を通らずに直接に可能であることが必要である。
答え:適切である。
(区分所有法第1条)
一棟の建物に構造上区分された数個の部分で、(注:@構造上の独立性)
独立して住居、店舗、事務所、倉庫その他建物としての用途に供することができる(注:A利用上の独立性)ものがあるときは、その各部分は、この法律に定めるところにより、それぞれ所有権の目的とすることができるものとする。」
設問にあるように、区分所有建物の専有部分といえるためには、当該部分と外部との出入りが他の専有部分を通らずに直接に可能であることが必要である。(判例:最高裁昭和44年7月25日)
2 区分所有建物の専有部分は、建物の構成部分である隔壁等により他の専有部分又は共用部分と遮断され、周囲のすべてが完全に遮蔽されていることが必要である。
答え:適切ではない。
三方が壁で、前面がシャッターである駐車場の場合、シャッターは「周囲のすべてが完全に遮断されている」とは言えないが、専有部分であるとされた判例がある。
専有部分の用途に則した構造上の独立性が確保されていればよいものとされている。設問の「周囲のすべてが完全に遮蔽されていることが必要である。」は、必ずしも求められていない。
3 区分所有建物の建物部分に、他の区分所有者の共用に供される設備が設置されている場合は、その共用設備が当該建物部分のごく小部分を占めているにとどまるときであっても、当該建物部分は、専有部分として区分所有権の目的となることはない。
答え:適切ではない。
駐車場にメーター等、区分所有者の共用に属する設備がある駐車場が、その共用設備がごく一部で駐車場としての使用に支障がないとして、専有部分とされた判例がある。(東京地裁:平成5年9月30日)
設問の「共用設備が当該建物部分のごく小部分を占めているにとどまるときであっても、当該建物部分は、専有部分として区分所有権の目的となることはない。」とすることは必ずしも妥当とは言えない。
4 バルコニーやベランダは、構造上及び利用上の独立性が認められるから、専有部分として区分所有権の目的となる。
答え:適切ではない。
バルコニーやベランダは、避難経路として、区分所有者に共用される必要があり、利用上の独立性が確保されない。また、外部に通じる廊下等に接しておらず他の専有部分を通らなければならないことから、構造上の独立性も確保されていない。したがって、区分所有権の目的となる専有部分として必要な要件を満たしていない。法定共用部分と解された例もある(最高裁昭和50年4月10日)
設問の「バルコニーやベランダは、構造上及び利用上の独立性が認められるから、専有部分として区分所有権の目的となる。」とあるのは、適切ではない。
正解:1 (この設問は、判例として重要です。)
{設問-2}次の記述は正しいか。{平成15年マンション管理士 問2}
構造上区分所有者の共用に供されるべき建物の部分は、専有部分ではなく、法定共用部分である。
答え:正しい。 区分所有法第2条4項の規定によれば、
構造上区分所有者の共用に供されるべき建物の部分は、専有部分ではなく、法定共用部分である。
| 第二条 |
|
5項 この法律において「建物の敷地」とは、建物が所在する土地及び第五条第一項の規定により建物の敷地とされた土地をいう。 |
| 過去出題 | マンション管理士 | H30年、H25年、H21年、H15年、H13年、 |
| 管理業務主任者 | R02年、H26年、H19年、 |
★今までの定義は「建物」についてでしたが、この第2条5項は「土地」についての定義です。
<参照>引用されている区分所有法 第5条1項:
(規約による建物の敷地) ;
区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる。
*「建物の敷地」とは...マンションの建物の敷地は、区分所有者が使用するもので、この第2条5項の定義により
@法律上当然(「法定敷地」呼ばれる)として、他から見ても分かる、その土地の上に現実にマンションが建っている1筆の土地でも、数筆にまたがっていてもかまいません、の土地、と
A第5条1項で規定される(こちらは、「規約敷地」と呼ばれる)、その土地の上にマンションは建っていないが規約を定めて、マンションと共に管理・使用することにした土地、を合わせたもの。
ここも、実体が後で出てくる第5条を読まないと、分からないとは、変な構成だけど、仕方ない。
注:1区画の土地は「筆」ともよばれます。
★参考:「規約敷地」(第5条1項で規定)...その土地の上には、現実にはマンション(建物)が建っていないけど、規約を定めてマンションと一体的に管理や使用することにした土地。
例えば、登記上建物のある敷地とは別の地番の庭・広場・駐車場・テニスコートなどそのマンションで管理・使用することにした土地。
それらの土地は、マンションから離れていても(マンションに隣接していなくても)いい。登記の地番が別筆になっている土地。
![]() |
★建物(マンション)の敷地(土地) 〜法定敷地と規約敷地〜
今までの定義は、建物についてでしたが、定義条項である本第2条5項は建物の敷地(土地)を定義しています。
区分所有法において、建物の敷地を定義しなければならないのは、第2条3項で定義された建物の専有部分とこれから説明します土地における敷地利用権が分離して処分できないという区分所有法に特有な制度(区分所有法第22条参照)ができたために、不動産取引上の安全性から、該当のマンションの土地の範囲を明確にする必要があるためです。
なお、区分所有法での「建物の敷地」という概念は、ただ単にその建物の下にある土地であるというjことだけで、その土地に対して区分所有者が具体的に所有権を有しているとか、借地権を有しているとかとは無関係な表現です。
この第2条5項の規定によれば、マンションの敷地(底地ということもあります)には、
@法定敷地 と
A規約敷地
の2つがあるといっています。
1.法定敷地
第2条5項前半の規定「建物が所在する土地」とは、つまりその土地の上に建物(マンションとかビル))が所在する土地を建物の敷地としています。この条文に該当する土地は、区分所有者の意思とは無関係に法律上当然に建物の敷地(法定敷地)となります。
これは建物(マンション)を真上からみた水平投影にある下の土地をいいその土地の地番がここでいう建物の所在地となります。
この法定敷地となるには、広大な1筆の土地(地番)の1部にしか建物がない時でもかまいませんし、1つの地番に建物は1棟でも複数の棟が建っていてもかまいません。
また、複数の筆の土地(地番)の上に、1棟がまたがって建っていてもかまいません。この場合には、その数筆の土地全部が法定敷地となります。
(注:土地は、地番とも筆とも呼ばれます。)

2.規約敷地
また、「建物の敷地」は、本第2条5項後半の「(及び)第五条第一項の規定により建物の敷地とされた土地をいう」ともあります。
これは、例えば、そのマンションに附属した公園・遊園地・駐車場等、事実上そのマンションと一体として利用されていても、土地の地番が異なり且つそれがマンションの建物の水平投影下にない場合(地上にマンションが建っていない場合)には、当然には区分所有法上の建物の敷地とはなりません。
建物の敷地でなければ、区分所有法の定める、後述の専有部分と敷地利用権の分離処分禁止(第22条)の効果が及ばないこととなります。
マンションのような1棟に複数の専有部分(区分所有権)が存在しており、その専有部分と土地の敷地利用権が一体となっていないと、管理上面倒であるため、それなら地番が異なっても規約を設けて、「建物の敷地」にしてしまい、建物が存在する法定敷地と同様に管理をすることができるように区分所有法はしています。
この地番が異なった土地は、その土地の上に建物が存在しないため、法律上当然には「建物の敷地」ではないため、「規約での敷地(規約敷地)」と呼ばれます。
マンションに関係する敷地(土地)の範囲を一体化して、権利関係を効率よく行うための区分所有法の特異なやり方です。
★法定敷地と規約敷地を同じ建物の敷地とするメリット 〜建物の専有部分との分離処分が禁止される〜
今後明らかになりますが、区分所有法制定の目的の1つは、マンションの取引では土地の権利と建物の権利が別々であったため過去から不動産登記などが複雑で問題がありました。
このマンションにおける不動産取引を簡便化するために、建物である室(専有部分)の権利とマンションが建っている土地の権利(敷地利用権)を一体化して、建物である専有部分を中心に土地の権利も共に移動をさせることです。
しかし、この目的である建物の専有部分と土地の敷地利用権の分離処分禁止(第22条)の効果が及ばない土地(敷地)があると、折角区分所有法で建物と敷地を一体とした特別の権利関係を創造したにも拘わらず、区分所有法が適用できないという不都合が残りますから、それなら規約で建物の敷地と規定することにより区分所有法上の建物の敷地として、法定敷地も規約敷地も全部同じ権利関係に入るようにしたものです。
「規約敷地」であっても、区分所有法においては、法定敷地と同様に「建物の敷地」として扱われます。

★規約敷地はあくまでも、「土地の権利」を前提として規定したものです。管理とは違うものです。たとえば、駐車場の管理は「専有部分に属さない建物の施設」として、「共用部分等」として管理されます。
★「規約」の重要性に注意してください。
この部分の解説だけでも、建物での「規約共用部分」とか、土地の「規約敷地」とか「規約」が出ています。
何となく区分所有法では、「規約」がこれからもキーワードになりそうだと分かれば、理解が早いですよ。
| 第二条 |
| 6項 この法律において「敷地利用権」とは、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利をいう。 |
| 過去出題 | マンション管理士 | R05年、R03年、H30年、H27年、H26年、H25年、 |
| 管理業務主任者 | R07年、H14年、 |
*「敷地利用権」とは...マンションが建っている土地(法定敷地と規約敷地を含む)の利用権。民法で規定する所有権以外もある(地上権、賃借権、またほとんどないが使用貸借権でも可能。)。民法で規定していない新しい区分所有法独自の概念の創設。
土地に対して所有権、賃借権などの権利を複数の区分所有者で共有(所有権の時に使う法律上の言葉)または準共有(所有権以外で共有の時の言葉。地上権、賃借権で敷地を利用する場合は準共有となる)する。
★因みに、民法で規定される、所有権(物権)、地上権(物権)、賃借権(債権)とは、
<参照>民法
・所有権(物権):民法 第206条〜、
所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。
・地上権(物権):民法 第265条〜、
地上権者は、他人の土地において工作物又は竹木を所有するため、その土地を使用する権利を有する。
・賃借権(債権):民法 第601条〜
賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
また、民法での、共有、準共有の違いは、
*共有(所有権の時):民法 第249条〜
第三節 共有
(共有物の使用)
第二百四十九条 各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。
2 共有物を使用する共有者は、別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負う。
3 共有者は、善良な管理者の注意をもって、共有物の使用をしなければならない。
(以下、略)
---------------------------------------------------------------------------
*準共有(所有権以外の時):民法 第264条
(準共有)
第二百六十四条 この節(第二百六十二条の二及び第二百六十二条の三を除く。)の規定は、数人で所有権以外の財産権を有する場合について準用する。ただし、法令に特別の定めがあるときは、この限りでない。
★どうして、「敷地利用権」を区分所有法で定義(創設)する必要があるのか。 〜民法の処分規定を制限する 〜
区分所有法第2条の定義条項の最後の6項は、「敷地利用権」とは何かを定義しています。
「敷地利用権」の説明に入る前に、区分所有法の基本となっています、民法では、その制定以来、土地と建物を別個の不動産と規定し、土地と建物は各々が所有権など別の権利を持っています。
そこで、土地の上にある建物を所有するためには建物に対する権利の他、必ずその建物のために土地も使用する権利(所有権、地上権、賃借権など)が必要となります。
また、民法では、土地と建物の権利が別々であるため、土地の権利と建物の権利は別々に処分(売買、賃貸、抵当権の設定など)が可能です。この結果、土地の所有者と建物の所有者が異なる場合も多くあります。

マンションにおいても、できれば古くからある民法と同じように、土地の権利と建物の権利を別々に扱いたいのですが、戸建と異なり1棟内に複数の人の権利が存在しています。
もしも、民法の所有権に基づいた権利行使として、土地と建物の権利が別々の人に売買された場合、土地(敷地)の権利は持っているが、マンションの室(専有部分)の権利(区分所有権)は持っていない人や、逆にマンションの室の権利は持っていても、土地の権利は持っていない人が表れてしまい、これら、土地の権利者または建物の権利者が自己の権利を処分すると、該当するマンション内の1室だけを取り壊すことも可能となり、その実行は、権利関係が入り乱れるだけでなく、マンションでは隣の壁が無くなれば他の人の住み方に対する影響なども発生します。
そのような事態を避けるためには、どうすればいいのか。これは、土地の権利と建物の権利が別々であるため、つまり権利者が異なるためにこのような不都合な事態が起こるのです。
*土地の権利と建物の権利を一体化すると不都合な事態が防げる → 土地の権利と建物の権利の分離処分の禁止へ
そこで、1棟内に複数の権利があるマンションの実態を解決するために生まれた区分所有法では、建物と土地の権利が共に動く(一体化)という独自の権利を創設する必要がありました。
そのために民法から離れて、区分所有法独自の法体系として創設されたのが、建物では、区分所有法第2条1項で定義された「”区分”所有権(専有部分に対する所有権)」であり、土地については、本区分所有法第2条6項の「敷地利用権」という独創的な規定です。
本区分所有法第2条6項では、建物が正当にある土地の上に存在するために必要とされる土地に対する権利を「敷地利用権」と定義し、民法で定める、一般の土地に対する権利とは別の概念を創設し定義しました。
マンションの敷地に対する「敷地利用権」を創設する必要性は、建物に対する民法の「所有権」を制限して「区分所有権」を創設したのと同じように、マンションでの土地と建物の処分制限をするための、民法にはない区分所有法で生まれた独自の権利なのです。
![]() |
ただし、区分所有法第2条6項の規定は、敷地利用権を「専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利をいう。 」とだけ定め、 敷地利用権自体の権利の性質や発生原因・効果その他権利の創設に関する事項に何ら触れるところがありませんから、この6項は区分所有法として新たに各種の権利をもたらす規定ではなく建物を所有するための土地に対する権利の総称であると理解されます。
そうすると敷地利用権の種類は、今までの民法等の規定を受けることになり、
@所有権、
A地上権、
B賃借権(地上権、賃借権を総称して借地権といいます。参照:借地借家法;第2条1号)、
C使用借権(無償使用のことで現実にはありえません。また、登記は出来ません。)
の4種類をいうことになります。
所有権や借地権であっても、区分所有法では、敷地利用権という新しい概念に含まれるようになりました。
★敷地利用権となると、土地だけの権利の移転や担保の登記ができない制限を受ける(原則) 〜専有部分(区分所有権)と敷地利用権の分離処分の禁止〜
区分所有法が適用される敷地利用権の対象となる建物の敷地は、第2条5項で説明した
@法定敷地(建物が所在する土地=底地) と
A規約敷地(建物は所在していないが、建物や底地と一体的に管理・使用する土地)
の両方です。
またあとでも説明をしますが、区分所有法の特徴として、建物の専有部分とその専有部分に係わる土地の権利(敷地利用権)は、原則として分離処分の禁止(第22条)となり、 区分所有法での敷地利用権が不動産登記法により不動産登記簿で「敷地権」として登記 されると、その後は、土地の権利の移転の登記やその敷地権を目的とする担保の登記はできなくなります。(ただし、規約で認めたり、敷地利用権発生前の登記原因は可能です。)
なお、不動産登記法では、@所有権、 A地上権、 B賃借権 は登記できますが、C使用借権は登記できないことに注意のこと。(不動産登記法第3条参照)
これは、土地の敷地利用権も、建物の共用部分に対する権利と同じように、単独で処分することのできない共同的権利として扱われることを意味しています。
<参照> 不動産登記法 第73条2項(敷地権付き区分建物に関する登記等)
第七十三条
2項 第四十六条の規定により敷地権である旨の登記をした土地には、敷地権の移転の登記又は敷地権を目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない。
ただし、当該土地が敷地権の目的となった後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)又は敷地権についての仮登記若しくは質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって当該土地が敷地権の目的となる前にその登記原因が生じたものは、この限りでない。
3項 敷地権付き区分建物には、当該建物のみの所有権の移転を登記原因とする所有権の登記又は当該建物のみを目的とする担保権に係る権利に関する登記をすることができない。
ただし、当該建物の敷地権が生じた後にその登記原因が生じたもの(分離処分禁止の場合を除く。)又は当該建物のみの所有権についての仮登記若しくは当該建物のみを目的とする質権若しくは抵当権に係る権利に関する登記であって当該建物の敷地権が生ずる前にその登記原因が生じたものは、この限りでない。
〔設問−1〕 ちょっとばかり、この段階での出題例としては、難しいかもわかりませんが、参考までに、載せました。
敷地利用権の位置が図として分かると思います。民法で元々ある所有権などとマンションの敷地利用権との関係です。
平成26年 マンション管理士試験 「問2」
〔問 2〕 A所有の甲地に所在するマンションの専有部分をA及びBが所有している場合の敷地利用権に関する次の記述のうち、区分所有法、民法及び不動産登記法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。
1 Aが第三者Cのため甲地に賃借権を設定し、A及びBがCから賃借権の譲渡を受けその持分が各2分の1である場合、A及びBのそれぞれの賃借権の準共有持分が敷地利用権となる。
○ 正しい。 平成25年マンション管理士試験 「問1」 選択肢4、平成19年管理業務主任者試験 「問35」。
まず、解答にあたっては、出題文について、問題用紙の空いているところに、図を書いてみましょう。
こんな感じです。

そこで、敷地利用権とは、区分所有法第2条6項
「(定義)
第二条
6 この法律において「敷地利用権」とは、専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利をいう。」 とあり、
設問のように、建物の専有部分をA及びBが所有し、Cから賃借権の譲渡を受けていれば、A及びBの敷地に関する権利は、区分所有法での敷地利用権となります。

なぜ、区分所有法では聞きなれない「敷地利用権」という権利があるかといいますと、日本の民法では、土地の権利と建物の権利は別々であると規定していますから、正当に建物の権利を所有するためには、建物の下にある土地の権利も正当に持っていなければいけません。そこで、区分所有法では、建物所有に必要な土地に対する権利を「敷地利用権」と定義し、民法で定める、一般の土地に対する権利とは別の概念を創設定義しました。
では、敷地利用権になる得る権利関係は民法によると、どのようなものがあるかといいますと、
@所有権...敷地の権利を専有部分の所有者が直接所有する場合(多くの場合。マンションでは複数の所有権者がいますから、共有となります。)(民法第206条以下参照)
A地上権...他人の土地を利用する権利を持ってマンションを建てた場合。(民法第265条以下参照)
B賃借権...他人の土地を賃料を支払って借りる場合。(民法第601条以下参照)
C使用貸借権...他人の土地を無償で借りる場合。(民法第593条以下参照)。この使用賃借は、論理的にはあり得るということですが、無償ですから、現実としては稀な場合です。
地上権(物権)と賃借権(債権)との違いなどは、解説すると長くなりますので別途勉強してください。
そこで、設問に戻りますが、A及びBはCから各2分の1を持分とする土地の賃借権の譲渡を受けたとありますから、A及びBは、土地に対する賃借権を有します。
準共有とは、複数の人が所有権以外の権利を有する場合に使用されます(民法第264条参照)から、賃借権をA及びBが各々持っていますとこれは、準共有となり、A及びBがCから賃借権の譲渡を受けその持分が各2分の1である場合、A及びBのそれぞれの賃借権の準共有持分が敷地利用権となりますから、正しい。
なお、Aは地主であっても、この設問では、建物の敷地利用権としては、賃借権の準共有持分の2分の1を有することになります。
2 AがBのため甲地に地上権を設定し、BがAの専有部分所有のための甲地の使用を認容する場合は、Aの敷地利用権は、地上権者Bとの間の契約上の利用権である。
○ 正しい。
選択肢1では、敷地利用権は、賃借権でしたが、今度は地上権です。

選択肢1で説明しましたように、マンションの専有部分を所有するための建物の敷地に関する敷地利用権には、地上権も可能です。
設問の場合、地上権は、Bが持っていますから、地主であるAであっても、Aの敷地利用権は、地上権者Bとの間の契約上の利用権となり、正しい。
参考:法定地上権(民法第388条)という言葉もありますから、別途勉強しておいてください。
3 AB間の使用貸借契約により、AがBの専有部分所有のための甲地の使用を認容する場合のBの敷地利用権は、使用借権であるが、登記することにより敷地権となる。
X 誤っている。 使用借権は登記できない。 平成25年マンション管理士試験 「問18」も参考に。
選択肢1で説明しましたように、マンションの専有部分を所有するための建物の敷地に関する敷地利用権には、設問の無償の使用貸借契約による使用借権も論理的には該当していますが、これが登記となるとまた別です。

まず、登記上の「敷地権とは、不動産登記法第44条1項
「(建物の表示に関する登記の登記事項)
第四十四条 建物の表示に関する登記の登記事項は、第二十七条各号に掲げるもののほか、次のとおりとする。
一 建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番(区分建物である建物にあっては、当該建物が属する一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番)
二 家屋番号
三 建物の種類、構造及び床面積
四 建物の名称があるときは、その名称
五 附属建物があるときは、その所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番(区分建物である附属建物にあっては、当該附属建物が属する一棟の建物の所在する市、区、郡、町、村、字及び土地の地番)並びに種類、構造及び床面積
六 建物が共用部分又は団地共用部分であるときは、その旨
七 建物又は附属建物が区分建物であるときは、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の構造及び床面積
八 建物又は附属建物が区分建物である場合であって、当該建物又は附属建物が属する一棟の建物の名称があるときは、その名称
九 建物又は附属建物が区分建物である場合において、当該区分建物について区分所有法第二条第六項 に規定する敷地利用権(登記されたものに限る。)であって、区分所有法第二十二条第一項 本文(同条第三項 において準用する場合を含む。)の規定により区分所有者の有する専有部分と分離して処分することができないもの(以下「敷地権」という。)があるときは、その敷地権
2 前項第三号、第五号及び第七号の建物の種類、構造及び床面積に関し必要な事項は、法務省令で定める。」 とあります。
この不動産登記法第44条1項9号により、区分所有法第2条6項の「敷地利用権」は、登記することにより、「敷地権」となり、専有部分と分離処分ができなくなります。
そこで、この「敷地利用権」が登記できるかとなると、不動産登記法第3条
「(登記することができる権利等)
第三条 登記は、不動産の表示又は不動産についての次に掲げる権利の保存等(保存、設定、移転、変更、処分の制限又は消滅をいう。次条第二項及び第百五条第一号において同じ。)についてする。
一 所有権
二 地上権
三 永小作権
四 地役権
五 先取特権
六 質権
七 抵当権
八 賃借権
九 採石権(採石法 (昭和二十五年法律第二百九十一号)に規定する採石権をいう。第五十条及び第八十二条において同じ。)」 とあり、
登記できる権利は、所有権や抵当権、賃借権など9つの権利に限定されていて、設問の「使用借権」は登記できないのです。
そこで、敷地利用権は使用借権ではありますが、登記できないので、「敷地権」になるは、誤りとなります。(注:令和2年4月1日施行の民法の改正に伴い、建物について 配偶者居住権 が追加された。)
4 Aが甲地をA及びBの所有する各専有部分の底地ごとに区画して分筆し、Bの専有部分の底地部分に賃借権を設定し敷地利用権とした場合、Bは、専有部分と敷地利用権とを分離して処分することができる。
○ 正しい。 平成24年マンション管理士試験 「問10」、 平成22年マンション管理士試験 「問5」、 平成20年マンション管理士試験 「問3」、 平成20年管理業務主任者試験 「問5」 など
分かりにくい出題ですね。設問を図にしましょう。

建物は繋がっていますが、敷地(底地)は各々別れているということです。
マンションの専有部分を所有するための敷地に関する権利として、Bは分筆された土地に対して敷地利用権として賃借権を有していますが、Aは地主であり、Aのマンションの専有部分を所有するための敷地に関する権利は、分筆された土地に対しては、単独の所有権であるということです。
そこで、設問の「専有部分と敷地利用権とを分離して処分できるか」に対しては、区分所有法第22条があります。
「(分離処分の禁止)
第二十二条 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。
2 前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第十四条第一項から第三項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。
3 前二項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。」です。
区分所有法第22条1項によれば、「敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。」 とあり、
敷地利用権を数人で有する場合には、専有部分と敷地利用権とを分離して処分することができないのですが、設問のように、土地が分筆されていて、建物は繋がっていても、建物の下の土地(底地)が各々建物によって区画されている(参考:「超解説区分所有法」 の第22条の解説のテラス・ハウスの分有)と、この区分所有法第22条の規定は適用がないと解されています。それは、建物と土地を一体的に捉えるほどでもないためです。そこで、Bは、専有部分と敷地利用権とを分離して処分することができますから、正しい。
答え:3。
| * 定義のまとめ | ||
| 1 | 区分所有権とは | 建物の専有部分を目的とする権利 |
| 2 | 区分所有者とは | 区分所有権を有する者 |
| 3 | 専有部分とは | 建物の共用部分を除いた部分 |
| 4 | 共用部分とは | 専有部分以外の建物の部分 ・法定と規約がある |
| 5 | 建物の敷地とは | 建物がある土地及び共に管理する土地 ・法定と規約がある |
| 6 | 敷地利用権とは | 建物の専有部分所有に必要な土地の権利 |
| 第三条 |
| 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。 一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。 |
| 過去出題 | マンション管理士 | R07年、R06年、R03年、R01年、H28年、H27年、H26年、H25年、H22年、H21年、H19年、H18年、H17年、H16年、H14年、H13年 |
| 管理業務主任者 | R07年、R02年、H28年、H26年、H24年、H23年、H22年、H21年、 |
*団体を構成する...法律上”当然に”自動的に団体ができる(任意ではない)。設立の手続きもいらないが、このままでは法人格はない。「管理組合法人」になるには別途登記が必要で、第47条以下の規定がある。
またこの団体には区分所有者(マンション購入者)全員が強制的に参加する。参加を嫌とはいえない。また区分所有者である限り脱退もできない。(逆に、除名処分もないわけです。)
この団体の構成員には賃借人(占有者)は入らない。区分所有者(マンションの持ち主)だけで構成される。
この「団体」は、区分所有法第3条では「区分所有者の団体」とあるだけで呼び名の規定がないが、通常「管理組合」と呼ばれる。そして、各区分所有者は「組合員」と呼ばれる。(ただし、法人にしたら「管理組合法人」の呼び名がある。)
*できる...この管理団体の区分所有者の団体は、当然にできるが、
・集会の開催
・規約を定める
・管理者を置くこと
は、絶対しなくてはならないものではない。強制ではなく、集会は開かなくてもいいし、規約がなくてもいいし、管理者がいなくてもいい。これらは、任意である。ただし、規約を定めたり、管理者を設置すると、この区分所有法の該当の規定の適用を受けることになる。
*「できる」としたのは、今日では稀ですが、古いマンションで少人数で構成されて、何もしないマンションも存在するからです。
なお、土地が借地であっても、この第3条の「区分所有者の団体」は構成されます。
★この段階で、区分所有法の「団体」をもっと追究したいなら。
この第3条の「区分所有者の団体」の規定は、区分所有者間に具体的に組合とか社団など共同の目的を持った団体的な関係が創設・結成されるための規定ではなく、区分所有関係が成立したことにより、
当然に建物・敷地・附属施設を管理する区分所有者の団体が単に「存在」するということを、区分所有法が「確認し、宣言しているだけ」と解されます。
それが、「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し」の意味合いです。
面倒な解釈ですが、このままでは、区分所有者全員で当然に構成される、建物および敷地等の管理を行うための団体(集合体)は構成されますが、明確な規約などで動く管理組合(団地管理組合も)という強い意味合いを持つ組織体は当然には創設(設立)されていないということです。
また、この第3条の規定は、マンションのように1棟の中で複数の人が権利を持ち生活する状況においては、民法で定める共有の関係で要求される変更行為に「全員の合意」を得ることの難しさを体験した結果、3/4とか過半数の「多数決の決定が支配する団体」の存在を認め、区分所有法での要件を満たすなら、多数決で区分所有者全員を拘束できることを明らかにし、また後述の「管理組合法人(第47条〜)」が成り立つための団体が存在していることを明記しています。
(注:この条文の読み方;「団体を構成し」で完結する。団体の構成はされる。言葉の「できる」は集会...」にかかるだけ。)

★区分所有者の団体 〜民法とは異なった団体〜
区分所有法第3条では、分譲マンションを購入すること等で区分所有者になった者は、強制的に区分所有関係に入ることになり、「全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成する」としています。
これは、マンションのような区分所有建物となれば、マンションを買った区分所有者は当然に団体を構成すること、そして、その団体は、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うため、
・集会を開き、
・規約を定め、及び
・管理者を置くこと
が”できる”ということです。
このことは、今後明らかになりますが、民法で規定する共有関係とは違った性格を持つ共有団体がマンションなどの区分所有建物では存在し、そこでは、民法の共有では変更行為が「全員の合意(同意)」を必要としたのに対して、区分所有法では、多くの事柄は「多数で決め」一度決まった事柄は、反対者を含めて区分所有者全員を拘束するという団体法の理論が適用されることを規定しています。

★マンションには多くの人が生活をしているので
1.集会を開く...多くのことは、居住者(区分所有者)が集まって決めなさい、ということ。(詳細は第35条以下)
2.規約を定めろ...多くの居住者が住む以上、団体としてのルール(規約)がないと統一できないという、発想。(詳細は第30条以下)
*特に管理組合法人にしなくても、規約は作成していい。しかし、規約の作成は、法律上の義務・強制ではなく、任意である。(詳細は第25条以下)
古い小さなマンションでは、規約もなく管理者(多くは理事長とよばれる)もいないことが多い。これが、「団体」と呼べるかは、また別の議論点。
3.管理者にやらせてもいい...本当は、区分所有者が各自責任をもって、マンションの維持・管理をすべきだが、多忙な人もいるだろうから、誰かに任せてもいい。
* 管理者は管理人(管理員)のおじさん、おばさんとは、当然異なる。
*注;マンションの「管理者」と「管理人」は違う...管理者は区分所有法上の規定ですが、管理人(管理員ともいう)はマンションの受付や清掃を行い、管理組合や管理会社に雇われた人です。
ただし、管理会社が管理者になっていることはあります。
*管理者について =理事長です
もうすでにマンションに住んでいれば、管理組合ができていて、理事(役員)も選任されていて、その中から理事長も任命されていることでしょう。
でも、理事長という言葉には馴染みがあっても、管理者という言葉は、窓口の管理人と同じ程度の認識しかないのが実情です。
区分所有法での管理者は、管理組合における理事長ですから、管理人とは明確に違うことに注意してください。

★マンションの管理は本来、区分所有者全員が参加して行うべきだが、それが困難なときは特定の者(管理者)に任せることができる。
マンションではこの共同生活のルールを定めた「規約」(一般には「管理規約」と呼ばれています)が中心になる。
規約は、多くの項目はそのマンションで勝手に決めていいが、多数の持ち主(区分所有者)に影響する項目 (重大な変更、規約の変更、組合としての登記、大規模な復旧、建替えなど)は、区分所有法の規定に従うこと。
★規約について
参考:国土交通省が定めた「マンション標準管理規約」が雛形として存在し、多くのマンションの規約はこれに基づき新規分譲時に、分譲会社がそのマンションの独自性があれば標準管理規約を変更して作成しています。
(注:出題の対象ですので、この 「マンション標準管理規約」は、必ず、読んでください。
その「マンション標準管理規約」には、
@単棟型・・・1棟の居住用マンションが対象、
A団地型・・・複数のマンションが団地として存在している場合、
B複合用途型・・・1棟で下がスーパー等の店舗部で上が住居部の場合
の3種があり、必要に応じて使われます。
この解説のなかでは、標準管理規約(単棟型)」を中心に使用しています。 (以下「標準管理規約」という)
その標準管理規約(単棟型)での、組合員(=区分所有者)の規定は具体的です。
マンションを購入したら(区分所有者となります)組合員になり、マンションを売却したら、組合員の資格を失います。
この方が、分かりやすいですね。
なお、マンション標準管理規約は、度々改正がありますので、最新版に注意してください。
また、標準管理規約では、終わりの方に「コメント」として「…条関係」として、条文の解説もありますから、それも参考にしてください。
<参考>標準管理規約(単棟型)30条:(組合員の資格)
(令和7年10月17日版でも変更なし)
第30条 組合員の資格は、区分所有者となったときに取得し、区分所有者でなくなったときに喪失する。
---------------------------------------------------------------------
<参考>標準管理規約(単棟型)31条:(届出義務)
(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合
第31条 新たに組合員の資格を取得し又は喪失した者は、直ちにその旨を書面により管理組合に届け出なければならない。
2 組合員は、前項で届け出た内容に変更がある場合には、直ちにその旨を書面により届け出なければならない。(令和6年6月7日:新設)
<参考>「標準管理規約(単棟型) 第31条関係コメント
@ 第1項の 届出書の様式は、次のとおりとする。 緊急連絡先は、氏名、届出者との関係及び電話番号等が考えられる。
---------------------------------------------------------------------
区 分 所 有 権 取 得 ・ 喪 失 届 出 書
年 月 日
○○マンション管理組合
理事長 ○○○○ 殿
○○マンションにおける区分所有権の取得及び喪失について、下記のとおり届け出ます。
記
1 対象住戸 ○○号室
2 区分所有権を取得した者 氏名
現に居住する住所
電話番号
緊急連絡先
3 区分所有権を喪失した者 氏名
住所(移転先)
4 区分所有権の変動の年月日 年 月 日
5 区分所有権の変動の原因
以上
---------------------------------------------------------------------
A 専有部分を第三者に譲渡等した場合のみならず、相続によって区分所有権を取得した場合においても、当該包括承継人は第1項の届出を提出する必要がある。
なお、遺産分割協議に時間を要する場合などやむを得ない事情により直ちに届出を提出することができない場合には、管理組合の事務の円滑化の観点から、届出が行われるまでの当面の連絡先として、包括承継人の代表者等の連絡先を把握しておくことも考えられる。(令和6年6月7日:新設)
★「一部共用部分」:一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分
また、本第3条後段では、「一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする」と規定しています。
この規定文章も、一度読んだだけで分かりますか?
実に分かり難い表現です。文章は明らかでないのに「明らか」と使っているのかと、突っ込める条文です。
★全体と一部の捉え方 〜1棟での二重構造〜
「一部共用部分」とは、共用部分ではありますが、その性質・構造・利用目的から見て、全区分所有者は使用せず、特定の区分所有者だけが共同で利用することが予定されている共用部分です。
つまり、使用する人が限定されている「共用部分」です。
具体的には、1棟のマンション内で下がスーパーのような店舗で上が住居用の構造となっており、店舗部分には、居住部分とは明らかに別途の従業員専用入り口やお客を対象にした出入口があり、一方、住居部分に対しては、店舗部分とは明らかに別途に住居者専用の出入口や居住階専用のエレベーターがある場合を考えてください。
通称、「下駄ばきマンション」ともよばれることのあるマンションを想定しています。

ある1棟のマンションなどの区分所有建物がこのような状況である時、店舗用の共用部分と呼ばれる店舗専用の出入り口、従業員専用出入り口や店内にある廊下などの部分は、店舗部だけの「一部共用部分」となります。
一方、住居部専用の出入口や住居部だけが使用する廊下、居住階専用のエレベーターなどがあればその共用部分は、住居部だけの「一部共用部分」となります。
この場合、第3条によれば、その「一部共用部分」を管理する各々の団体(「店舗部の団体」と「住居部の団体」の2つの団体)が当然に構成されます。
そして、その「一部共用部分」を管理する
・店舗部の団体と
・居住部の団体
は各々の団体において、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができるとしています。
*一部共用部分は、全体でも管理できる
なお、一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分とされる「一部共用部分」は、「一部共用部分」を共用しています、上の例であれば、店舗部だけ、また居住部だけの別々の管理体制とすることができますが、1棟をまとめてそのマンション全体として管理することもできます。(参照:第16条:一部共用部分の管理、第30条2項:規約事項、第31条2項:規約の設定・変更・廃止)
* 一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが「明らか」
一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが「明らかに」とは、この条文では、その構造上や使用形態から、その棟において、全部の区分所有者が利用せず、限られた一部の区分所有者しか利用できないことが明確であるということですが、これだけの説明文では、現実には多くの場合明確(明らか)ではありません。
1棟内における室である専有部分と共用部分と呼ばれるエントランスや廊下などの位置関係、その使用度、その必要性などからみて、また建物全体の保全や、全区分所有者の利益とも関係して、ある共用部分が、構造上特に一部の区分所有者のみに共用されている場合に限ってこれが、一部共用部分となります。
そして、使用・利用が一部の区分所有者だけかどうか「明らかでない場合」には、その共用部分は全体の「共用部分」となりますから注意してください。
(出題者は、このあたりの設問が好きです。)
なお、この場合の一部の区分所有者は同時に、1棟の区分所有者の全体の団体の構成員でもあることにも注意してください。
一部の区分所有者で構成される団体と、棟全体の区分所有者で構成される団体の2つの団体が存在します。
<参照> 区分所有法 管理組合法人:第47条〜
★「区分所有者の団体」とは法的にあいまいだけど
★その前に 〜 なぜ、団体だとか、法人が問題となるのか? 〜
もともと、法律的な関係で権利と義務の能力を持つのは、人(ひと=自然人)だけでしたが、近代では、自然人以外の団体が法律関係の権利・義務を有することが多くなり、これらの団体にも自然人と同様な法規範を適用する必要性が生まれてきました。
そこで、法律により、それらの団体にも自然人に似た人格を与えて、法の中に取り組むようになりました。その団体が「法人」と呼ばれます。
しかし、全ての団体が「法人」として扱われる訳ではなく、改正前(平成20年12月1日以前)の民法(旧第34条)では、「社団法人」とか「財団法人」になるには、主務官庁の許可が必要で、営利を目的とする団体の場合には当初は商法により規定されていましたが、平成18年5月1日施行の「会社法」により、株式会社や合同会社として設立できます。
また、営利を目的としない社団法人と財団法人が行政官庁(主務官庁)の許可制という裁量で法人化されることには反対が多くて、平成20年12月1日施行の「一般社団法人及び一般財団法人に関する法律」により、許可主義から簡便に設立できる登記による準則主義が採用されました
★では、区分所有法での団体は?
普通、民法や会社法など法が団体の結成を強制し法人とする場合は、団体の性格や組織・代表の方法等実際に活動しうるだけの事項を法で定めるのが通常ですが、この区分所有者の団体の場合はそうではありません。
これは区分所有者の団体があまりにも小規模であったり、団体としての活動をしていないなど、一律に組織・代表の方法等を法定化することが困難だったためと思われます。
また、あるマンションでは区分所有者の数が2名から始まり、あるマンションでは100名を超えるような大規模のマンションがあったりで、多種多様なマンションの団体について、区分所有法で規定を設けて画一的な運営を強制することは、私的自治の観点から問題が多いと、平成14年の改正にあたって法改正の担当者が説明をしています。
★区分所有法で正式に「管理組合」の名称を使用していないわけ
民法や特別法など、今までの法律上「法人や組合」と定義すると、該当の規定(民法での法人や組合の規定や、労働組合、農業協同組合など)に入ってしまいます。
例えば、組合なら
・加入は任意
・設立行為が必要
・構成員の合意で成立
などのイメージがあります。
区分所有法で規定するマンションにおける区分所有者の団体も人の集合体であり、 ほぼ民法で定める「社団法人・組合」に近い存在ですが、区分所有者の団体は、
・強制加入である・・・マンションを買ったら当然に構成員になる。加入・脱退の自由はない。
・規約などがなくても成立する
また、法で必要とされる、管理者がいない場合や、多数決の原理によってその団体が動いていない場合などもあるため、明確に法律で規定の対象にできない実態から、区分所有法の創案者は抽象的に「区分所有者の団体」と規定したようです。
しかし、この団体は通常「管理組合」と呼ばれます。
この第3条に区分所有者の「団体」が構成されると規定することにより、法律の手続き上次の段階として「法人格」を与えることができます。(第47条以下参照)
★「権利能力なき社団」が認められている 〜団体が法人でなくても〜
人が多数集まって、特定の目的(マンションではマンション管理)のために結合するとその集団は「団体」と呼ばれます。
この団体が民法や会社法などの法令で定めた手続きを経て許可を得れば、法的な人格「法人格」を得てあとは、民法や会社法の規定に従って権利や行為能力を自然人と同じように取得します。
しかし、世の中には、真面目に法定の手続きをとらない、またとれない団体もあり、この団体が社会生活において、多くの取引を行い、権利を持ち義務を負っています。
これらの関係が裁判所に昔から持ち込まれて、民法での規定がないため判例ができました。
その概念が「権利能力なき社団」と言われているものです。
以下の要件を満たす場合には法人化していなくても、法人と同様に扱いその規定により、裁判を行うものです。
★「権利能力なき社団」といえる要件は(最高裁判所の判例)
@団体としての組織を備え、
A多数決の原則が行われ、
B構成員の変更にかかわらず団体が存在し、
Cその組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等、団体としての主要な点が確立していること
です。(最高裁:昭和39年10月15日)
★第3条の「区分所有者の団体」は、「権利能力なき社団」といえる
区分所有法第3条で規定される区分所有者の団体は、「権利能力なき社団」の要件のうち、
「Cその組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等、団体としての主要な点が確立していること」については疑問がありますが、ほぼ該当していますので、一般に法人化していない「区分所有者の団体」の場合でも、「権利能力なき社団」として扱われます。
★訴訟法上は、「権利能力なき社団」も当事者能力を有する。(民事訴訟法第29条)
法人格がなくても、代表者や管理人(区分所有法での管理者)が定められていれば、訴訟での当事者能力が認められていますから、裁判を起こせます。
<参照> 民事訴訟法 第29条 (法人でない社団等の当事者能力)
第二十九条 法人でない社団又は財団で代表者又は管理人の定めがあるものは、その名において訴え、又は訴えられることができる。
法人化されていないマンションの区分所有者の団体にとって、この「権利能力なき社団」という概念は、内部的には管理費や修繕積立金などの滞納者の訴訟、また外部との関係において、訴えられたり、訴えるのに重要ですので、留意してください。
★この区分所有者の団体はいつから成立するのか
不動産登記法での専有部分の表示登記がなされたときから、区分所有者は一人でも区分所有法の適用が始まり、そして、区分所有者が複数(2人以上)になった時に、区分所有者の「団体の成立」となります。これは、その瞬間から、法律上、当然に全区分所有者を構成員とした団体として成立します。
特に、区分所有者の設立の合意は必要とされていません。
★一部共用部分(建物の上が住居、下が店舗などの場合)があって、一部共用部分を共有者たる一部の区分所有者が管理する場合は、その一部部分を管理する団体が形成され、その関係は全体共用部分の場合と同様になります。
(つまり、一部の区分所有者は、全体の団体と、住居部の団体または店舗部の団体の2つの団体に入る場合もあります。)
★区分所有者の団体は、町内会や自治会とは違う
団体といっても、町内会や自治会と呼ばれている組織とマンションの区分所有者の団体は違います。
町内会や自治会は、その地域内に住んでいる住民が中心となって、祭りなどの親睦を図ったり、災害時での行政の補助を行う、地域における生活上での自治組織です。
その区域に住所を有する者たちの「地縁」に基づいて形成された団体です。
具体的には、ゴミ置き場の清掃やゴミ出しのルールの徹底、生活道路や水路の清掃、地域の防犯・防災活動、親睦のための祭りなど行事の開催、またその地域で抱える課題への取り組みなど、個人で解決できない事柄を円滑に運営したり、解決していくのが町内会(自治会)です。
町内会(自治会)への加入は任意であるため、加入率は減少化しています。
一方、マンションの区分所有者で構成される団体は、マンションという建物と土地の維持管理を目的とし、区分所有者間の利害の調整をします。
明確な違いは、マンションを借りている人(賃借人)もその地域の町内会や自治会の構成員になりますが、マンションの区分所有者の団体の構成員は区分所有者(マンション・オーナー)だけで、賃借人は規約などを守る義務はありますが、構成員にはなれません。
また、マンションの区分所有者の団体では、区分所有者の意志に関係なく、区分所有者全員がマンションの区分所有者の団体の構成員(組合員)になりますが、町内会や自治会への加入は、その人の任意であることです。
*管理費や修繕積立金と自治会費(町会費)について
マンションの建物及び附属施設などの共用部分また、敷地を維持していくには、当然に費用がかかります。
そこで、マンションでは、日常的な管理や設備の維持(管理組合の運営、共用部分の清掃や小修繕・電気代・保険料など)にかかる経費を「管理費」とし、一方、外壁の修理、屋上防水工事など、10年とか20年とか一定の年数の経過により計画的に共用部分の修繕の為に積み立てる「修繕積立金」が、通常、毎月徴収されます。
そこで、一部の管理組合では、これら管理費と修繕積立金と共に、その地域の町会の活動費である自治会費(町会費)をも、同時に代行徴収していたために、その徴収について争いがありました。(平成19年8月7日:東京簡易裁判所、平成19年9月20日:東京高等裁判所、平成28年7月20日:東京高等裁判所、判例検索には該当なし。参考:平成17年4月26日:最高裁判所。))
これらの判決文では、マンションの管理組合と自治会(町会)は、その性格が異なるため、管理組合の管理費・修繕積立金と自治会費(町会費)は、別の扱いとしなければいけないというものです。
これを受け、国土交通省では、「標準管理規約」第27条関係で、以下のようなコメントを載せています。
<参照> 標準管理規約 第27(管理費)関係 コメントB
B 管理組合は、区分所有法第3条に基づき、区分所有者全員で構成される強制加入の団体であり、居住者が任意加入する地縁団体である自治会、町内会等とは異なる性格の団体であることから、管理組合と自治会、町内会等との活動を混同することのないよう注意する必要がある。
各居住者が各自の判断で自治会又は町内会等に加入する場合に支払うこととなる自治会費又は町内会費等は、地域住民相互の親睦や福祉、助け合い等を図るために居住者が任意に負担するものであり、マンションを維持・管理していくための費用である管理費等とは別のものである。
自治会費又は町内会費等を管理費等と一体で徴収している場合には、以下の点に留意すべきである。
ア 自治会又は町内会等への加入を強制するものとならないようにすること。
イ 自治会又は町内会等への加入を希望しない者から自治会費又は町内会費等の徴収を行わないこと。
ウ 自治会費又は町内会費等を管理費とは区分経理すること。
エ 管理組合による自治会費又は町内会費等の代行徴収に係る負担について整理すること。
★それでも、マンションの団体の説明に納得しない人へ
マンションでの生活は、戸建と違うことは理解されていると思います。
これからの説明でも分かってきますが、マンションと戸建の基本的な違いは、今までの民法第251条で規定されている「共有」での変更行為の「全員の合意(同意)」の理論が、マンションという多くの人々が共同生活をおくっている建物内では採用できない現実が分かったことです。
いいかえますと、民法の「全員の合意を得る」という規定は、100人の区分所有者がいて、その内の99人が賛成していても、たった1人が反対すれば、何もできなくなるということです。これでは、多くの人が望む事柄が、先送りされたり放置された状態となり、実務上不都合なことがありました。
そこで、区分所有法では「多数決による決定」を採用しました。
少し、難しい言い方をすれば、区分所有建物では、建物並びにその敷地および附属施設という共有財産の管理については、全員の合意を排除して、3/4とか過半数の多数決で行い、一度決まったことには、例え反対であっても、区分所有者全員が拘束されるという、区分所有者の共同管理意識を徹底させるために「団体」という概念の導入が必要なのです。

しかし、このマンションの団体の中には、区分所有法が整備される前からある小規模なマンションや古いマンションがあり、そこでは、
@集会を開催していない
A管理規約がない
B管理者が選任されていない
などの団体が存在したために、区分所有法でそれらの法律的な立場や訴訟上の当事者能力を論じることができなかったのです。
今日では、マンション関係での意識が向上して、多くのマンションでは管理規約も入居時から存在し、管理者である理事長も選任され、管理組合と呼べる団体になっていますが平成14年の区分所有法の改正では、この「団体」には手をつけませんでした。
それは、依然として区分所有者の怠慢や無関心から
@集会を開催していない、
A管理規約がない、
B管理者が選任されていない、
など管理組合と呼べる組織のないマンションが存在しているためです。
このような、区分所有法制定の歴史が条文として残っているわけです。
★試験での問題点(初心者には分からないでしょうが、この問題もまた、振り返ってきて検討してください。)
★一度、区分所有者の団体が成立した後に、区分所有者の数が1名になっても、区分所有者の団体は、当然には消滅しない。
団体という以上、区分所有者の数は、複数(2名以上)必要となることは、普通の考え方ですが、区分所有法の解釈として、物理的に地震や爆発でマンションが滅失したとか、今まで数個の室があったが、改造して1つの室にしたなどの事由では、団体は消滅しますが、一度、複数の区分所有者が存在して、後に区分所有者の数が1名になっても、団体は当然には消滅しないと解釈されています。
この、分かり難い内容の説明として、複数の室(専有部分)がある以上、潜在的に団体に戻る可能性があるためとのことです。
過去にも、何度か出題されています。納得できますか?
(これは、民法の法人での解散論議で、社員(組合員)がいなくなっても、その社団法人は存続する。それは、また社員が入れば復活すると解釈されていることによるようです。)
★さて、区分所有法で規定するマンションの持つ特異な概要が少しはつかめましたか。
当然ながら区分所有法の各規定に従って、マンションの販売条件も記載されています。
販売パフレットの下の方に小さな字で載っています、敷地、建物、駐車場の構造、管理費、修繕積立金の額など、これからは注意して読んでください。
マンション管理士や管理業務主任者にとっては、販売価格よりもマンション管理において重要な内容です。
<参考>あるマンションの販売条件;(注:面積、金額、戸数は実数値ではありません。サンプルです。)
・所在地: 東京都AA区x丁目y番地(登記簿)
・交通: 東西線「XX」駅徒歩12分
・建物竣工予定日
完成予定年月: 平成28年2月下旬予定
入居予定日: 平成28年3月予定
・敷地面積: 3,500.50u
・分譲後の権利形態 :
敷地: 専有面積割合による所有権(敷地権)の共有
建物: 専有部分は区分所有、共用部分は専有面積割合による所有権の共有
・地目: 宅地
・地域地区 :第一種住居地域・防火地域
・建蔽率 : 60%
・容積率: 300%
・総戸数 : 120戸 (住戸)
・販売戸数:110戸
・構造・階数: 鉄筋コンクリート造・地下1階地上14階
・間取り: 2LDK〜3LDK
・専有面積: 71.83u〜86.13u
・バルコニー面積:11.07u〜12.05u
・建築確認番号 :東防建確第yyyy号
・販売価格: 3,500万円〜4,500万円
・最多価格帯: 4,000万円台(10戸)
・管理会社 :株式会社XXX
・管理形態: 区分所有者全員により管理組合を結成し、管理会社に委託予定
・管理費(月額): 16,500円〜17,500円
・修繕積立金(月額): 7,300円 〜7,800円
・修繕積立基金(引渡し時一括払い): 400,000円〜500,000円
(注:修繕積立基金を取る訳:毎月管理費と共に修繕積立金をとると、購入者が月の費用が高いと感じるため、分譲会社の策略)
・駐車場台数: 合計 71台
平置 41台 料金(月額) 16,000円/台 (内1台は身体障害者優先区画)
屋外機械式地上2段地下1段駐車場(ピット式)30台 料金(月額) 12,000円/台
(注: 平置より機械式の方が維持費が高くかかるが、出し入れの便利さから、使用料金は平置の方が高い。)
・駐輪場台数 :240台 料金(年額) 1,200円/台
屋内2段式 120台 屋外2段式 120台
・バイク置場台数 : 屋内 20台 料金(月額) 1,000円/台
*マンションを取りまく法律
上の「あるマンションの販売条件」をよく見て、マンションに関係する法律の多さに気が付けばあなたは、かなり勉強をしています。
通常の戸建てと同様に適用される法律は、
◎マンションの購入にあたって、
・民法や民事訴訟法 の他に
・住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)、
・建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律、
・建築物の耐震改修の促進に関する法律(耐震改修促進法)
・長期優良住宅の普及の促進に関する法律、
・地震保険に関する法律、
・水道法、
・下水道法、
・浄化槽法、
・消防法、
・警備業法、
・税法
などがあり、販売会社が宅地建物取引業者なら
・宅地建物取引業法(宅建業法)
土地や建物については、
・都市計画法...地域地区 :第一種住居地域・防火地域
・建築基準法...建蔽率 : 60% 、容積率: 300%、建築確認番号 :東防建確第yyyy号
・不動産登記法...所在地: 東京都AA区x丁目y番地(登記簿)、敷地面積: 3,500.50u 、構造・階数: 鉄筋コンクリート造・地下1階地上14階、専有面積: 71.83u〜86.13u
・借地借家法
があります。
◎さらに、マンションに特有な法律としては、
・建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)...分譲後の権利形態 、
敷地: 専有面積割合による所有権(敷地権)の共有
建物: 専有部分は区分所有、共用部分は専有面積割合による所有権の共有、
そして、他にも
・被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法、
・マンションの建替え等の円滑化に関する法律(建替え円滑化法)、
・マンションの管理の適正化の推進に関する法律(適正化法)、
・個人情報保護法、
などもあります。

また、この他にも、
・管理はどうなっているのか...管理会社 :株式会社XXX
・管理形態: 区分所有者全員により管理組合を結成し、管理会社に委託予定
・管理費(月額): 16,500円〜17,500円
・修繕積立金(月額): 7,300円 〜7,800円
・修繕積立基金(引渡し時一括払い): 400,000円〜500,000円
・建物としてマンションの構造・設備がどうなっているか、
・その修理はどうするのか、
・長期修繕計画はあるのか、
・劣化していく建物の診断や大規模修繕の時期をどうするのか、
などもあります。
マンションを購入するということは、こんなに面倒な法体系やルールに縛られる環境に入るという自覚も必要ですよ。
【設問−1】区分所有法第3条に規定する区分所有者によって構成される団体に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。
1 団体は、法人とならない場合も、規約を定めなければならない。
答え:間違い。 規約の設定は任意。
区分所有法第3条前段「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」の規定により「できる」とあり、法人に関係なく規約作成は任意である。定めなくてもいい。
2 団体は、区分所有関係が成立したときに当然に成立し、その後区分所有者が一人で全部の専有部分を所有することになったときに当然に消滅する。
答え-1:正しい? 区分所有法第3条前段「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成...、」の規定により、団体であるためには当然複数の区分所有者が必要である。
答え-2:間違い? 団体は、区分所有法第3条前段「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成...」により、区分所有関係が成立したときに当然成立するが、この団体が消滅するのは、区分所有建物の全部の滅失や建物に専有部分がなくなったことで(区分所有法第55条1項: 管理組合法人は、次の事由によつて解散する。
一 建物(一部共用部分を共用すべき区分所有者で構成する管理組合法人にあつては、その共用部分)の全部の滅失
二 建物に専有部分がなくなつたこと。
三 集会の決議
参照)ある。
このときでも、清算手続きが必要である。(区分所有法旧第55条3項による民法関係の準用あり)
よって、この設問のように、団体が成立した後で区分所有者が一人で全部の専有部分を所有することになっても、清算手続きが必要で、「当然には消滅」しない。
答え-3:間違い。 前半は正しいが、後半の、一度区分所有関係が成立すれば後で、区分所有者の数が、 1名になっても専有部分が存在する以上、後に増加することが考えられるので、当然には消滅しないと解釈されている。
3 団体は、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うため、常に区分所有者全員で構成される。
答え-1:間違い? 区分所有法第3条後段「一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする」の規定により、一部の者の団体で構成される場合がある。
答え-2: 正しい? 区分所有法第3条前段「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し...」だけを考え、一部の者は考えなければ、正しい。上の説明の後段は考えない。
4 団体は、区分所有者の数が30人以上であるものは、区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議で法人となることができる。
答え:間違い。 区分所有法第47条1項「第三条に規定する団体は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で法人となる旨並びにその名称及び事務所を定め、かつ、その主たる事務所の所在地において登記をすることによつて法人となる」の規定により、以前は要件としてあった「区分所有者の数が30人以上」は現在は必要なくなり、かつ登記が必要。
(しかし、ここも、単純に設問のとおりに読めば、 30人以上いるのだから法人となれるという解釈が可能? 登記までは必要と考えないで。)
正解:2 又は 3 または 4。 設問が悪い。マンション管理センターの正解 3。
この設問のように、マンション管理士および管理業務主任者の試験には、曖昧な出題が多々ありますので、注意が必要です。
〔設問−2〕 平成21年 マンション管理士試験 「問2」
区分所有法第3条に規定する区分所有者の団体(この問において「3条の団体」という。)に関するア〜エの記述のうち、区分所有法及び民法の規定並びに判例によれば、誤っているものの組合わせは次のうちどれか。
ア 3条の団体は、設立のための手続きを要することもなく、区分所有者全員のために法律上当然に認められる。
○ 正しい。 区分所有法第3条の規定は(区分所有者の団体)
「第三条 区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。
」です。
この解釈としては、うしろに、「できる」がありますが、前半の「区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成」するで一応区切ることになっています。そこで、区分所有者(マンションのオーナー)になったら、法律上当然に否応なくこの団体に加入します。任意に団体ができる訳ではありません。そして、この団体は特に設立の手続を要さなくても成立します。
イ 3条の団体は、規約を設定しない場合であっても、法律の定めにより、集会を開くことができる。
○ 正しい。 選択肢1で引用しましたように、区分所有法第3条の規定では、「集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。」で、規約を定めたり管理者を置くことは任意(できる)ですから、規約がなくても、集会は開催できます。
ウ 3条の団体は、管理組合法人として成立しない限り、その名において区分所有者全員のため権利を取得し、義務を負うことはない。
X 誤っている。 ある団体(組織)が法人として登記すると、権利・義務関係がはっきりしますが、世の中には、法人となっていない団体が多く存在し、それらの団体について、権利・義務で争いが発生していますので、判例で「権利能力なき社団」という概念が生まれ、この概念に該当すると法人でなくても権利・義務の対象となります。この「権利能力なき社団」とは、@団体としての組織をそなえ、Aそこには多数決の原則が行われ、B構成員の変更にもかかわらず団体そのものが存続し、Cしかして、その組織によって代表の方法、総会の運営、財産の管理その他団体としての主要な点が確定していることです。(昭和39年:最高裁) 区分所有法第3条で定める団体(通常、管理組合と呼ばれます)もほぼこの「権利能力なき社団」に該当しますから、法人としなくても「その名において区分所有者全員のため権利を取得し、義務を負うこと」があります。
エ 3条の団体は、団体の代表者としての管理者を置かなければならない。
X 誤っている。 選択肢1で引用しましたように、区分所有法第3条では、管理者を置くことは任意(できる)となっています。置かないことも可能です。
1 アとイ
2 イとウ
3 ウとエ
4 エとア
答え:3 (誤っているのは、ウとエ)
| ページ終わり |
謝辞:Kzさんの了解により一部転用・編集をしています。
最終更新日:
2026年 1月 1日:令和8年4月1日施行に合わせた。
2025年 5月31日〜:令和8年4月1日施行版に移行中
2025年 2月21日:標準管理規約を令和6年6月7日版にした。
2025年 2月11日:令和6年(2024年)の出題年を入れた。
2024年 7月27日:少し見直した。
2024年 2月 4日:令和5年(2023年)の出題年を入れた。
2923年12月30日:見直して、加筆。第2条のまとめも入れた。
2023年 2月23日:令和4年(2022年)の出題年を入れた。
2022年 8月29日:文章を見直した。
2021年12月26日〜12月29日:見直して、加筆、標準管理規約等を最新にした、
2021年12月16日:令和3年(2021年)の出題年を入れた。
2021年 3月 7日:令和2年(2020年)の出題年を入れた。
2020年 3月29日:令和元年(2019年)の出題年を入れた。
2019年 7月15日:第3条に管理費・修繕積立金と自治会費(町会費)の違いを入れた。
2019年 4月17日:平成30年の出題年を入れた。
2018年 8月14日:マンションを取りまく法律を入れた。
2018年 8月 3日:文章を見直した。
2018年 3月13日:平成29年の出題を入れた。
2017年 7月22日:文章を一部見直した。
2017年 3月11日:平成28年の出題年を入れた。また、文章を一部見直した。
2016年10月28日:一部文章を見直し加筆した。
2016年 4月 8日:3月14日付の標準管理規約の改正に対応した。
2016年 2月24日; 平成27年の出題年を入れた。
2015年 3月4日:平成26年の出題年を入れた。また、文章を見直した。
2014年 2月23日:平成25年の出題年を入れた。
2013年 8月 9日:見直して追記した。
特に「一部共用部分」第3条は分かり難くそうなので、図を入れ替え、加筆した。
2013年 4月 6日:専有部分や共用部分で追記した。
2013年 3月24日:平成24年の出題年を入れた。
2013年 2月 2日:第1条の前に、適正化法での図入れた。
2012年 2月20日:平成23年の出題年と「標準管理規約」の改正(別表2 共用部分の範囲)に対応した。
2011年 8月10日:民法の土地と建物の図入。
2011年 5月21日:ちょろちょろと
2011年 1月15日:H22年の出題年記入
2010年11月 2日:第3条に追記
2010年 5月31日:ちょろちょろと
2010年1月30日:第2条5項;法定敷地のイラスト作成
2010年 1月23日:H21年の出題年記入
2009年10月27日加筆
2009年10月6日:加筆
2009年 9月22日:加筆
2009年 7月 2日:加筆