★★       条 文 の 解 説        ★★

建物の区分所有等に関する法律

(この解説においては、略称:区分所有法 と言う)

第1章 建物の区分所有 第5節 規約及び集会

第三十条 規約事項
第三十一条 規約の設定、変更及び廃止
第三十二条 公正証書による規約の設定
第三十三条 規約の保管及び閲覧
第三十四条 集会の招集
第三十五条 招集の通知
第三十六条 招集手続の省略
第三十七条 決議事項の制限
第三十八条 議決権
第三十九条 議事
第四十条 議決権行使者の指定
第四十一条 議長
第四十二条 議事録
第四十三条 事務の報告
第四十四条 占有者の意見陳述権
第四十五条 書面又は電磁的方法による決議
第四十六条 規約及び集会の決議の効力
   
*集会の進め方 
 
*マンション購入からの税について
*配偶者居住権について

X-ab.第35条(招集の通知)から 第39条(議事)まで

マンション管理士・管理業務主任者を目指す方のために、区分所有法を条文ごとに解説しました。

試験問題は、過去の問題から出されるのではありません。条文から出題されます。

条文を勉強することが、合格への道です。

 

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(招集の通知)

第三十五条

1項  集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。

過去出題 マンション管理士 H29年、H27年、H26年、H24年、H23年、H19年、H16年、H15年、
管理業務主任者 R05年、R04年、R02年、H30年、H26年、H24年、H23年、H21年、H18年、H17年、H16年、H15年、H14年、H13年

少なくとも1週間前に...通知を集会の最低7日前(前日までに7日間あること、初日不算入)には出しておくこと。

会日...集会の開催日のこと

★会議の目的をはっきりさせること

伸縮することができる...会日の1週間前に、「目的」を示して、通知を出す。この1週間の期間は伸ばしたり、また短めることが別途規約で定められる。(注意:これを受け標準管理規約(単棟型)では伸ばして「2週間前」としている(標準管理規約(単棟型)43条1項)

★集会招集通知の趣旨

 第35条は集会の招集の通知に関する規定です。

★集会の位置づけ 〜 最高の意思決定機関 〜

 集会(総会)は区分所有者が全員参加して区分所有法や規約で定める重要な事項を審議・決議し、また管理費や修繕積立金など会計関係も審議し、さらに建物や敷地などの管理方法を決定する区分所有者の団体(管理組合)での、法律による(法定の)最高の意思決定機関です。
 そして、集会では多数決の理論により、集会において決定した事項は反対した人を含めた全区分所有者を拘束し、更には、集会の開催後にマンションを買った特定承継人や専有部分を借りている占有者等決議に参加できない者に対してもその効力が及ぶなど多くの関係者に重大な影響を及ぼす集まりです。

 従って、その集まりの重大さに伴い、集会で決定される事項が法に沿ったもの、いいかえると適法であるべきことは勿論ですが、その前に、集会の招集の通知や手続き自体も法定化され、この規定に従った内容であることが要請されます。

 以前の区分所有法においては、これほど重要な意味を持つ集会の手続きが法定化されていなかったため、集会開催までの手続において瑕疵(キズ、欠陥)がある場合には、一度集会で決議された事項でも無効であるとして紛争になることが多くありましたので、集会開催までの手続を明確にしました。

 そこで、前条の第34条では、誰が、集会を招集するのかを定め、続く本第35条はその集会の始めとなる、集会を招集する通知手続きに関する規定です。

◎集会を開く準備として、まず、集会の主人公である区分所有者が必ず集会に参加できることがあり、同時に招集者の便宜を図り、手続きの瑕疵で会議全体が違法となることを阻止し、会議で決めた事柄の適法な成立を目指します。(集会の議題の通知がなかったために、決議が無効になった例があります。東京地裁: 昭和62年4月10日、東京高裁: 平成7年12月18日)

 この集会の招集手続を瑕疵なく実行するためには、集会が開催される一定期間前に通知すること(第35条1項)や適正な人宛の通知(第35条2項)、さらに通常議決事項の議題の通知や特別決議事項の議案の要領の通知(第35条5項)は、集会参加者の便宜をはかるためであり、一方、通知の期間計算が「到達主義」によらず「発信主義」によること(第35条1項)、住所不明時の探索責任を免除すること(第35条3項)、掲示による通知のみなし規定(第35条4項)があること等は集会招集者の便宜と会議の適法な成立の確保のためのものといえます。

  

★集会招集の原則


 第35条1項は集会招集の原則規定です。

★いつまでに、誰に通知するのか → 最低、集会の開催日の1週間前(初日不算入)に、議題を示して各区分所有者に出すこと 〜原則〜 発信主義の採用

 集会招集の通知はいわゆる一定の事実を通知する「観念の通知」で、通常、民法の意思表示の規定が準用されます。
 民法での法律効果の発生を意図した「意思表示」は、原則として、相手に通知が到着したときに効力を生じる「到達主義」(民法第97条)となりますが、マンションの区分所有者数のように通知すべき相手方が多数存在する場合には、到達時がバラバラとなり、これでは各人の到達時を揃えるのは事実上不可能ですから、区分所有法第35条1項の規定のように「発すればいい」という「発信主義」が取られます。

 注:2020年4月1日施行の改正民法:今まで遠隔地の人に対する意思表示(契約などの申込み)については、通知と承諾を分けて捉えていて、申し込んだ人が出した通知は相手に到達したときから効力を生じる「到達主義」で、申し込みを受けた相手方が発する承諾の意思表示については、その承諾の意思表示を発した時に効力を生ずる考え方、いわゆる「発信主義」と分けて採用していましたが、通信と配送手段が発達した現代では、遠隔地であっても申し込みと承諾の場合で効力の発生の時期を分ける必要がないとの考え方で、旧民法526条1項は、削除され、今は、「到達主義」(民法第97条)に統一され、意思表示の効力はその通知が相手方に到着したときから生じます。

<参照>民法第97条 (隔地者に対する意思表示)(一部改正。3項追加)

(意思表示の効力発生時期等)
第九十七条 隔地者に対する 意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる

2 相手方が正当な理由なく意思表示の通知が到達することを妨げたときは、その通知は、通常到達すべきであった時に到達したものとみなす。

3 意思表示は、表意者が通知を発した後に死亡し、意思能力を喪失し、又は行為能力の制限を受けたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。

 区分所有法第35条1項により、管理者等の集会の招集者は、集会の開催日の1週間前(中7日あること)に各区分所有者宛に「会議の目的たる事項」、即ち「議題」を明示した招集の通知を発信しさえすればよく、この場合の到達の危険(その早遅や事故による不到達)は受信者たる区分所有者が負担することになります。

 これで一部の者に対する通知の不到達があっても、招集手続きの瑕疵、ひいてはそのあとの集会決議が違法・無効になることを防止しています。

◎1週間前(初日不算入)は、参加者に集会の議事内容の検討と出席の準備のための猶予期間です。

 この通知期間・1週間前の厳密な計算方法は区分所有法には規定がありませんから、民法の期間の計算(第138条から第143条)の第140条により、会日(集会の開催日)である期間の初日は算入せず、通知日と集会日との間に中1週間(中7日)以上の期間を置くということになります。

<参照>民法 
第六章 期間の計算

(期間の計算の通則)
第百三十八条 期間の計算方法は、法令若しくは裁判上の命令に特別の定めがある場合又は法律行為に別段の定めがある場合を除き、この章の規定に従う。


(期間の起算)
第百三十九条 時間によって期間を定めたときは、その期間は、即時から起算する。

第百四十条 日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。


(暦による期間の計算)
第百四十三条 週、月又は年によって期間を定めたときは、その期間は、暦に従って計算する。
2 週、月又は年の初めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の週、月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、月又は年によって期間を定めた場合において、最後の月に応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

 例えば、会日(集会の開催日)を「3月20日」とすれば、20日から1日を引いた19日から1週間の7日を引いた、「3月12日」までに、会議の目的事項を示して、各区分所有者宛に集会開催の案内を出します。(20日 − 7日 の 3月13日ではありませんので、注意のこと。初日不算入。)

★1週間前は規約で、伸ばしたり短くできる 〜例外として〜 伸縮できる

 もとより、第35条1項で定める、会日の1週間前という通知期間も区分所有法の想定した決め事に過ぎません。
 従って、リゾートマンションのように区分所有者が各地に分散していたり、都会の賃貸用マンションなどで区分所有者がそのマンションに住んでいない場合など、個々の区分所有者の団体(管理組合)における構成員の住所地の分布状況に応じて1週間前という期間が短すぎたり長すぎたりすることもあるでしょうから、この期間を伸ばしたり縮めたりして適切な期間を規約で定めることができるものとされます。

 具体的な例としては、区分所有者の数が少なく、しかも全員が同じマンション内に住んでいて、通知先もそのマンション内として届け出ていれば、すぐに連絡ができますから、招集の通知期間を1週間前よりも短かくする規約も考えられます。

 ただし、区分所有者が参加できないような”余りにも短期間”を設定した規約の場合には、区分所有者の集会議決権を侵害するものとしてその規約は無効となることもあります。

 なお、第35条1項は、通知を出すのは「少なくとも1週間(7日)前」と規定しているので、これより長い期間、例えば、「10日前」や「2週間(14日)前」に通知を出すのは、規約がなくても可能です。

   ★集会に出席機会と準備のために、招集の通知を出すのは、最低1週間(初日不算入)は必要と見ている。発すればよく、到達は1週間よりも遅れてもいい。

       1週間前は規約で プラス・マイナスできる。

       ◎通知 ――  (原則:1週間前(中7日) プラス、マイナス可能)  ――――> ◎集会(会日)

 ◎ただし、マンション標準管理規約では、2週間前を推薦している。(混同しないように!)

<参考>標準管理規約(単棟型) 43条1項:招集手続) 

第43条 総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の2週間前(会議の目的が建替え決議又はマンション敷地売却決議であるときは2か月前)までに、会議の日時、場所(WEB会議システム等を用いて会議を開催するときは、その開催方法)及び目的を示して、組合員に通知を発しなければならない。

注:標準管理規約では、平成28年3月の改正で、区分所有法以外の「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」の改正により、マンション敷地売却決議も加えたので注意のこと。
 WEB会議も追加されている。

★集会の通知は、通常の集会と建替え集会では、異なることに注意!

     (*注):普通の集会での、招集通知は1週間前で、伸長、短縮(プラス、マイナス)が出来るが、

          建替えでは、その重要性から、集会日の2ヶ月前に発し、説明会は1ヶ月前に発する。この2ヶ月前と1ヶ月前は伸長(プラスだけ)だけしかできない。

          ここらが、試験で狙われている。<参照>第62条4項、第62条7項

   

★通知の内容

 集会(総会)を招集するためには、まず各区分所有者に通知しなければなりません
 その通知の方法は、法律上は必ずしも書面による必要はなく、電話や口頭やFAXや、IT化によるEメールでも可能ですが、各区分所有者の受取側が、”聞いていない”とか、”届いていない”などで、後日の紛争を予防するためにも、書面によって通知することが適切といえましょう。

 通常、集会の通知には、集会の開催日時・場所の通知(区分所有法では規定されていませんが)はもとより、「会議の目的たる事項」をも通知することが必要です(第35条1項)。

★会議の目的たる事項(議題)を通知すること 〜必須事項〜
  1項でいう「会議の目的たる事項」とは、通常、集会(総会)にかけて討議・決議する題目で、具体的には、
   ・「決算案の承認」
   ・「予算案の承認」
   ・「役員の選任」
  など通常の事項のほか、
   ・「管理費や修繕積立金の値上げ」
   ・「給水管更生工事の実施」
   ・「マンション管理士 香川事務所との顧問契約」
   ・「規約の変更」
  というような議決の目的である事項を指しています。

★「会議の目的たる事項」の重要性に伴い「会議の目的たる事項」+「議案の要領」が求められることがある
 また、「会議の目的たる事項」が、重要な事項と考えられる区分所有者及び議決権の各3/4以上または4/5以上(建替え)の賛成を必要とする特別決議事項のうち、

    @「共用部分の重大な変更」(第17条1項)、
    A「規約の設定・変更・廃止」(第31条1項)、
    B「建物の価格の1/2超が消滅した場合(大規模滅失)の復旧」(第61条5項)、
    C「建替え」(第62条1項)、
    D「団地管理組合の規約の設定の特例」(第68条1項)、
    E「団地内の2以上の区分所有建物の一括建替え承認決議に付する旨」(第69条7項)

  この場合には、招集の通知に当たり、「会議の目的たる事項」のほかに、その「議案の要領」も通知する必要があります(第35条5項)。

  「共用部分の重大な変更」などの事項は、重要性が高いため、「会議の目的たる事項」のほかに、区分所有者に事前に充分な予備知識を与えて、集会に臨むように配慮したものです。

   (*注)多くは3/4以上の議決が必要な特別決議事項だけど、全部ではない。ここらも試験で狙われる。

   *特別決議事項であっても、入っていないもの(議案の要領が不要なもの)...法の担当者は、これらは会議の目的自体が議案なので、外したと説明している。

    @管理組合法人となること(第47条1項)
    A管理組合法人の解散(第55条2項)
    B使用禁止、競売または占有者に対する引渡しの訴えの提起(第58条2項、第59条2項、第60条2項)

★会議の目的たる事項、議案の要領とは
 会議の目的たる事項には、大きく分けると、
  @報告事項(会計報告、事業活動報告、監査結果報告など。区分所有法第43条参照) と、
  A討議だけする事項、そして、
  B討議して決議する決議事項があります。決議事項は、通常は「議案」とも呼ばれています。

<参照>区分所有法 第43条

(事務の報告)
第四十三条  管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。

(*注:多くの管理組合では、「会議の目的たる事項」を「議題」とよんだり、「議案」とよぶこともあり、議題と議案の区別がないこともあります。)

 区分所有法での議案とは、具体的には、規約の改正なら、『規約xxx条中「○○○」を「△△△」に改める』というように、討議して賛否を決議する内容の原案を示すものです。

 「議案の要領」とはそれを要約したものをいいます。
上の例での、規約改正なら、その理由を要約(例えば、区分所有法の改正とか)します。全文である必要はありません。
また、討議だけする事項では、議案の要領は、不要です。(つけてもかまいませんが)

 議案の要領の内容は、当然に議案によって異なりますが、区分所有者がその議案について予め賛成・反対の意思決定が可能である程度に具体的かつ理解可能であるように示すことが必要です。案が2つ以上あるときは、全部示すべきです。

 「議案の要領」を求める特別決議事項については、普通決議よりも区分所有者に充分な検討材料を提供させる趣旨です。

議案の要領が不十分だと、集会を開いて決議しても無効と判断されることもありますから、注意してください。

{判例}
「議案の要領」とは、事前に賛否の検討が可能な程度に具体的内容を明らかにしたものを要するが、最大58票を有する者がいたにも拘わらず、単に「議決権条項」とだけ通知してなされた1区分所有者1議決権への変更決議は、重大な手続き違背があり無効である。(東京高裁:平成7年12月18日)

 このような点を踏まえ、議案には、普通決議事項(規約で別段の定めがなければ、通常、区分所有者及び議決権の各過半数で決する事項)か特別決議事項(普通決議と異なり、区分所有者数び議決権の各3/4(各4/5)以上などで決する事項)なのかも議案ごとに明示することをお勧めします。


{設問-1}甲マンション管理組合が「現在の仕様に合わせた屋上防水補修工事の実施及びそれに係る修繕積立金の一部取崩しの件」を議案とする集会を5月25日に開催する場合おいて、管理者が行おうとしている集会の招集通知に関する次の記述は、区分所有法の規定に反するか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。

*集会の招集通知書を、同年5月17日に発信することとした。


答え:反しない。区分所有法第35条1項によれば、招集には1週間前(中7日あること)に通知を発することが必要で、5月25日の前日から7日は、5月24日 - 7日 = 5月17日 であり、反しない。


{設問-2}次の記述は正しいか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。

*集会のお知らせは、開催日の10日前に区分所有者の方々にお出しします。

答え:正しい。集会のお知らせは、区分所有法第35条1項により、少なくとも1週間前であればいいので、開催日の10日前に区分所有者の方々にお出しします、は、正しい。

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第三十五条

2項  専有部分が数人の共有に属するときは、前項の通知は、第四十条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の一人)にすれば足りる。

過去出題 マンション管理士 R04年、R01年、H22年、H16年、H15年、
管理業務主任者 R05年、R05年、R02年、H24年、

★また、後ろの条文(第40条)を引き出してくる構成とは、区分所有法の立法者は問題ありです。

<参照> 区分所有法 第40条:議決権行使者の指定

 専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない。

★専有部分に共有者がいる場合の集会の通知法 → 議決権者は、一人にすること
 建物の専有部分(室)が単独所有でなく夫婦名義など複数の人の共有関係にあれば、各共有者は、その各々が区分所有者ですから(区分所有法第2条2号)、単純に第35条1項の規定によると、集会の招集通知は各区分所有者あてに出すことになっていますから、その専有部分を共有している場合には、その共有者全員が招集通知の送付対象者となります。

 しかし、通常は専有部分1戸(1室)につき1区分所有者の場合が多く、議決権も区分所有者数を数える時には共有者全員を併せて1名としています(第40条参照)し、招集は議決権行使のためですから議決権を行う人に出せばいいことになります。

  

 このようなことから、専有部分が複数の者による共有の関係にある場合には、議決権を行使する者が決められていればその者に、もしも決められていなければ招集者が、共有者のだれか1名に通知を発すればよいとしたのが2項です。  

     ★共有:例えば専有部分の区分所有者の名義が夫婦二人の共有になっているとき。議決権行使者が決まっていなければ、妻でも夫でも、どちら宛でもいい。

         また、夫婦で持分が夫:2/3、妻:1/3でも、持分の少ない妻を議決権行使者にしても問題ない。

     ★ただし、共有者への通知は1人宛だけど、共有者は全員集会に出席ができて、発言も出来る。
      この場合、共有者同士で1つの議案について賛成・反対など異なった発言をすることは許されない。
      このようなことが起きないよう、共有者間で事前に発言者を一人に定めておくことが望ましい。

      議決権は、決められた数だけしか行使できない。
    
      共有関係がある場合、集会(総会)での、賛成・反対の決議での計算では、確認が必要です。


{設問-1}甲マンション管理組合が「現在の仕様に合わせた屋上防水補修工事の実施及びそれに係る修繕積立金の一部取崩しの件」を議案とする集会を5月25日に開催する場合おいて、管理者が行おうとしている集会の招集通知に関する次の記述は、区分所有法の規定に反するか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。

* 夫婦が共有する専有部分に係る議決権行使者の通知を受けていなかったため、妻に当てて集会の招集通知書を送付することとした。

答え:反しない。
 区分所有法第35条2項によれば、共有者に対する通知で議決権行使者が定められていない場合は、共有者の一名に通知すれば足る。この場合、妻宛でも夫宛でも許される。


{設問-2} A及びその妻Bは、甲マンション(その敷地を区分所有者が共有しているものとする。)の1室を共有しており、Aの持分は三分の一である。この場合のAに関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。

1 議決権を行使すべき者が定められていない場合には、持分の小さいAに対してした集会の招集通知は、有効である。

答え:正しい。
 共有で議決権を行使すべき者が定められていない場合には、区分所有法第35条2項括弧書きにより、持分に関係なく共有者の一人に出せばいいため、持分の小さいAに対して出した集会の招集通知も、有効である。

2 Aは、持分が小さいので、議決権を行使する者となることができない。

答え:間違いである。 
 区分所有法第40条によりAは、持分の多寡にかかわらず、共有者間で決めれば、議決権を行使する者となることができる。

3 甲マンションに管理組合法人が設立されている場合、持分の小さいAでも監事となることができる。

答え:正しい。
 甲マンションに管理組合法人が設立されている場合、区分所有法第49条、同法第50条でも理事・監事の資格要件は無いから持分の小さいAでも監事となることができる。

4 Aは、Aの持分を他に譲渡する場合は、その持分とその持分に係る敷地利用権とを分離して処分することはできない。

答え:正しい。
 共有持分といえども区分所有権である以上区分所有法第22条により、Aは、Aの専有部分の持分を他に譲渡する場合は、その持分とその持分に係る敷地利用権とを分離して処分することはできない。

正解: 2

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第三十五条

3項  第一項の通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかつたときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば足りる。この場合には、同項の通知は、通常それが到達すべき時に到達したものとみなす。

過去出題 マンション管理士 H20年、H16年、H15年、
管理業務主任者 R05年、R02年、

★集会開催の通知の宛先
 集会開催の通知を出すためには、その宛先が分からないと意味がありませんが、宛先は管理者等の招集権者が決めるよりも各区分所有者が届出るのが現実的ですから、宛先はまず、
  @区分所有者の届出た場所 とし、
  A届け出のない者については、その者の専有部分(室)宛に発信すれば充分 
 としました(3項)。

 この場合、通常の到着時により到達とみなされますから、発信しさえすればよく、現実には到達しなくとも招集手続きの瑕疵にはなりません。
「発信主義」を採用した当然の結果です。
 郵送方法を採用したなら、通常の配達必要日時後に到着したとみなされ、通知をする担当者が実際に各戸の郵便受けに入れる方法を採用すれば、郵便受けに入れた時点で直ちに到着とみなされます。

 届出された場所が曖昧であるとか、そのマンションに住んでいないことが明らかである時は、登記簿などから区分所有者の宛先を探して、現実の住所に送ることは、望ましいことではありますが、この場合には区分所有法における到達の擬制は受けられませんから集会の適法性保持の面ではかえって危険な行為といえます。

★区分所有者から通知場所の変更の届出がないかぎり、届出を受けた通知場所にあてて通知すれば、管理者は責任を免れることを意味します。
  したがって「転居先不明」等で通知書が戻ってきた場合でも、管理者は通知義務を果たしたことになります。

  ★マンションに住んでいないのが分かっていて、通知もないので、勝手に登記簿から調べて、そこに送っても適切な処置ではない!

★このような事態を避けるために、専有部分を賃貸に出している区分所有者は、必ず通知場所を届けるべきです。


{設問-1}甲マンション管理組合が「現在の仕様に合わせた屋上防水補修工事の実施及びそれに係る修繕積立金の一部取崩しの件」を議案とする集会を5月25日に開催する場合おいて、管理者が行おうとしている集会の招集通知に関する次の記述は、区分所有法の規定に反するか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。

* 長期の海外駐在中の区分所有者から、現在の居住地及び連絡先についての通知を受けていなかったため、マンション内の見やすい場所に集会の招集通知書を掲示することとした。

答え:反する。 
 区分所有者から通知を受けるべき場所の通知が無いときは、区分所有法第35条3項により、「区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば足りる。」 そして、区分所有法第35条4項によれば、通知のない区分所有者に対して「掲示」で代行できるのは、規約による特別の定めが必要。 住んでいないことが明らかでも、法に従わない行為はできない。


{設問-2}次の記述は正しいか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。

*  集会の招集通知は、あらかじめご連絡いただければ、ご親戚などの家にお届けすることもできます。

答え:正しい。 
 通知を貰っているので、区分所有法第35条3項により、親戚などの家に送ってもいい。

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第三十五条

4項  建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第一項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。この場合には、同項の通知は、その掲示をした時に到達したものとみなす。

過去出題 マンション管理士 R04年、H16年、H15年、
管理業務主任者 R05年、R02年、H23年、H17年、

規約に特別の定めがあれば、掲示でよい場合...規約で定めていなければ、郵便受けに入れるより、通知が不確実なので、掲示しても有効でない。

★通知の例外
 前の解説のように区分所有法第35条1項により、通常、集会招集の通知は、各区分所有者あてに発されます。
これは、具体的には、多くの場合、マンションの各戸の郵便受けに投函されることになります。

 郵便受けに投函する方法に際しては、通常は、郵便制度を利用した郵便配達の方法をとりますが、郵便代がかかるため、担当の理事または委託を受けた管理業者が直接マンションの郵便受けに入れます。
 集合ポストへの投函も面倒な作業です。

 *なお、集合ポストの設置は、2階以上だと、郵便法第43条がある。

参照:郵便法第34条  

第四十三条(高層建築物に係る郵便受箱の設置) 階数が三以上であり、かつ、その全部又は一部を住宅、事務所又は事業所の用に供する建築物で総務省令で定めるものには、総務省令の定めるところにより、
その建築物の出入口又はその付近に郵便受箱を設置するものとする。

そこで建物内ではもっと簡便な通知方法として、規約があれば掲示板での招集通知を認めたのが本4項です。

 掲示は建物内への通知である点で建物内にいる区分所有者(当然建物内の場所を宛先として届出した者です。)も、届出がないために専有部分宛通知される者と変わりがありませんから、その者も対象となります。

 ただし、この方法は個々の直接の通知ほど確実性がありませんから、この簡便な方法を取るためにはその旨の「規約の定め」が必要です。

★規約があれば、建物内の見やすい場所に掲示で通知は有効だけど、規約がないと通知にならない。

 これを受け、標準管理規約(単棟型)43条3項では、明確にマンション内に住んでいる区分所有者、届出のない区分所有者には、掲示板への案内でよいとしてます。

<参考>標準管理規約(単棟型): (招集手続) 

(招集手続)
第43条 総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の2週間前(会議の目的が建替え決議又はマンション敷地売却決議であるときは2か月前)までに、会議の日時、場所(WEB会議システム等を用いて会議を開催するときは、その開催方法)及び目的を示して、組合員に通知を発しなければならない。

2 前項の通知は、管理組合に対し組合員が届出をしたあて先に発するものとする。ただし、その届出のない組合員に対しては、対象物件内の専有部分の所在地あてに発するものとする。

3 第1項の通知は、対象物件内に居住する組合員及び前項の届出のない組合員に対しては、その内容を所定の掲示場所に掲示することをもって、これに代えることができる。

4 第1項の通知をする場合において、会議の目的が第47条第3項第一号、第二号若しくは第四号に掲げる事項の決議又は建替え決議若しくはマンション敷地売却決議であるときは、その議案の要領をも通知しなければなら
ない。


 (以下、略)

注:標準管理規約では、平成28年3月の改正で、区分所有法以外の「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」の改正により、マンション敷地売却決議も加えたので注意のこと。

★集会の招集通知は、各区分所有者に対して個別にするのが原則ですが、区分所有法においては、建物内の見やすい場所(建物の出入口の掲示場等)に掲示するものと規約で定めることができることとされています(区分所有法第35条4項前段)。ただし、それは建物内に住所を有する区分所有者又は管理者に通知場所の届出をしない区分所有者に対する通知に限られます。

 従って、この掲示板の規約の定めがあっても、マンション外に居住しており、そこを通知場所として管理者に届出ている区分所有者に対しては、個別に通知をしなければならないのは当然です。
 規約に基づいた掲示による通知は、その掲示をした時に到達したものとみなされます(第35条3項後段)。

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第三十五条

5項 第一項の通知をする場合において、会議の目的たる事項が第十七条第一項、第三十一条第一項、第六十一条第五項、第六十二条第一項、第六十八条第一項又は第六十九条第七項に規定する決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。

過去出題 マンション管理士 R05年、R04年、R02年、H29年、H26年、H20年、H16年、H15年、
管理業務主任者 R05年、R03年、R02年、H23年、H21年、H18年、H16年、H15年、H14年、H13年

★「会議の目的たる事項」の他に「議案の要領」の必要な場合
 集会の招集通知では、審議内容を事前に検討し会議の準備をさせるために「会議の目的たる事項」を示しますが、いわゆる区分所有者及び議決権の各3/4以上の賛成が必要な特別決議事項の内

   ア.管理組合法人となること(第47条1項)、
   イ.管理組合法人の解散(第55条2項)、
   ウ.義務違反者に対する処置の使用禁止(第58条)、競売(第59条)、占有者の引渡(第60条)
   を
除く

    @第17条第1項の共用部分の「重大な変更」、(軽微な変更は入っていない)

    A第31条第1項の規約の設定・変更・廃止、

    B第61条第5項の共用部分の大規模滅失(建物価格の1/2超)の場合における復旧、

    C第62条第1項の建替え、(ここは、区分所有者数および議決権の各 4/5以上 要)

    D第68条第1項の団地管理組合の規約の設定・変更・廃止

    E第69条7項の団地内の2以上の区分所有建物の一括承認に付する旨の承認の決議

 の場合にはその事項の重要性を考慮して、「会議の目的たる事項」に追加して「議案の要領(概略的な議案の内容)」も併せて通知するものとされます。
 

★特別決議事項と呼ばれる4分の3(75%)以上や5分の4以上(80%)の多数の決議が必要な(8の内6)。

★多数の決議が必要な内、管理組合の法人化(第47条1項など)、解散や義務違反者に対する措置(第58条2項)などが入っていないことに注意。

   

★これらはその重要性から、「会議の目的(議案)」のほかに「議案の要領」も通知して、前もって検討させる。

@区分所有法 第17条1項(共用部分の重大変更):

 共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。

A区分所有法 第31条1項(規約の設定・変更・廃止)

 規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によってする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。


B区分所有法 第61条5項(建物の大規模滅失の場合の復旧):

 第一項本文:(建物価格の2分の1以下に相当する部分が滅失したときは、各区分所有者は滅失した共用部分および自己の専有部分を復旧することができる)に規定する場合を除いて、建物の一部が滅失したときは、集会において、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数で、滅失した共用部分を復旧する旨の決議をすることができる。

C区分所有法 第62条1項(建物の建替): 

 集会においては、区分所有者及び議決権の五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、当該建物の敷地若しくはその一部の土地又は当該建物の敷地の全部若しくは一部を含む土地に新たに建物を建築する旨の決議(以下「建替え決議」という。)をすることができる。

★ただし、建替決議では、1.会議の目的、2.議案の要領 のほかに 
       一  建替えを必要とする理由
       二  建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
       三  建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
       四  建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
     も必要。(第62条5項)


D区分所有法 第68条1項(団地規約の設定):

 次の物につき第六十六条において準用する第三十条第一項の規約を定めるには、第一号に掲げる土地又は附属施設にあっては当該土地の全部又は附属施設の全部につきそれぞれ共有者の四分の三以上でその持分の四分の三以上を有するものの同意、第二号に掲げる建物にあってはその全部につきそれぞれ第三十四条の規定による集会における区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による決議があることを要する。
      一  一団地内の土地又は附属施設(これらに関する権利を含む。)が当該団地内の一部の建物の所有者(専有部分のある建物にあっては、区分所有者)の共有に属する場合における当該土地又は附属施設(専有部分のある建物以外の建物の所有者のみの共有に属するものを除く。)
      二  当該団地内の専有部分のある建物

  <参照> 区分所有法 第30条1項:建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。

E区分所有法 第69条7項(団地内の2以上の特定の区分所有建物の建替について一括して建替承認決議に付す旨の決議):

 前項の場合において、当該特定建物が専有部分のある建物であるときは、当該特定建物の建替えを会議の目的とする第六十二条第一項の集会において、当該特定建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、当該二以上の特定建物の建替えについて一括して建替え承認決議に付する旨の決議をすることができる。この場合において、その決議があつたときは、当該特定建物の団地建物所有者(区分所有者に限る。)の前項に規定する合意があつたものとみなす。

  <参照> 前項=第69条6項 :第一項(団地内建物)の場合において、当該特定建物が二以上あるときは、当該二以上の特定建物の団地建物所有者は、各特定建物の団地建物所有者の合意により、当該二以上の特定建物の建替えについて一括して建替え承認決議に付することができる。

◎まとめ

◎集会の決議で「会議の目的」以外に「議案の要領」が必要なもの
番号 条文 内容  決議 さらに必要な「通知事項」
第17条1項 共用部分の重大変更  区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数、ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる  
第31条1項 規約の設定・変更・廃止  区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議  
第61条5項 建物の大規模滅失の場合の復旧  区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数  
第62条1項 建物の建替 

区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数

(*建替え決議は、4/5以上に注意)

一  建替えを必要とする理由
二  建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに 要する費用の額及びその内訳
三  建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
四  建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
第68条1項 団地規約の設定 土地または附属施設 共有者の四分の三以上でその持分の四分の三以上を有するものの同意  
専有部分のある建物 区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による決議  
第69条7項 団地内の2以上の特定の区分所有建物の建替について一括して建替承認決議に付す旨の決議  特定建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数
(建替え決議は、4/5以上に注意)
 

議案の要領とは 、「事前に賛否の検討が可能な程度に具体的内容を明らかにしたものであることを要する」。案が2つ以上あるときは、そのいずれも示すべきである。

 {判例-1} 
  判決趣旨:区分所有法第35条5項の定める「議案の要領」とは、事前に賛否の検討が可能な程度に具体的内容を明らかにしたものであることを要するが、最大58票を有するものがいたにもかかわらず、単に「議決権条項」とだけ通知してなされた1区分所有者1議決権への変更決議は、重大な手続き違背があり無効である。(平成7年12月18日:東京高裁)


★普通の決議事項であっても、「議案の要領」を示してもいい

  区分所有法第35条5項は、「共用部分の重大変更」の第17条1項など重要な事項の場合は法で必ず「議案の他に具体的な内容=議案の要領」をも通知しろと強制していますが、区分所有法に定められていない普通の決議事項についても、議案の他に具体的な内容を通知することは、区分所有者の判断材料の提供として許されます。


{設問-1}甲マンション管理組合が「現在の仕様に合わせた屋上防水補修工事の実施及びそれに係る修繕積立金の一部取崩しの件」を議案とする集会を5月25日に開催する場合おいて、管理者が行おうとしている集会の招集通知に関する次の記述は、区分所有法の規定に反するか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。

*  集会の招集通知書に、議案の要領を記載しないこととした。

答え:反しない。
 区分所有法第35条5項によれば、
   @共用部分の重大変更、
   A規約の設定・変更・廃止、
   B共用部分の大規模滅失の場合の復旧、
   C建替、
   D団地規約の設定・変更・廃止、
   E団地内建物の一括建替承認決議
  のような、特別決議事項を議案とする総会招集には議案の要領を通知する必要があるが、
「現在の仕様に合わせた屋上防水補修工事の実施及びそれに係る修繕積立金の一部取崩しの件」を議案とするものは、軽微な変更で、普通決議事項のため要領の記載は不要で、反しない。


{設問-2} 次の記述は正しいか。

* 集会の招集通知とともに、規約改正の議案の要領も通知いたしますから、あらかじめご検討ください。

答え:正しい。
 
規約の改正は区分所有法第31条に該当し、この場合、集会の招集通知とともに、同法第35条5項により規約改正の議案の要領も通知がいる。


{設問-3} 平成23年 管理業務主任者試験 「問31」

【問 31】 集会の招集及び決議に関する次の記述のうち、民法及び区分所有法の規定に反しないものはどれか。

1 「役員資格に関する規約の改正について」の議題を通知したが、資格の改正内容は通知しなかった。

X 反する。 
 
 集会の招集の通知に際して、会議の目的たる事項(議題)だけでいいものと、その議案の要領もプラスして通知しなければならない規定が、区分所有法第35条
 「(招集の通知)
  第三十五条  集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。
   2  専有部分が数人の共有に属するときは、前項の通知は、第四十条の規定により定められた議決権を行使すべき者(その者がないときは、共有者の一人)にすれば足りる。
   3  第一項の通知は、区分所有者が管理者に対して通知を受けるべき場所を通知したときはその場所に、これを通知しなかつたときは区分所有者の所有する専有部分が所在する場所にあててすれば足りる。この場合には、同項の通知は、通常それが到達すべき時に到達したものとみなす。
   4  建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第一項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。この場合には、同項の通知は、その掲示をした時に到達したものとみなす。
   5  第一項の通知をする場合において、会議の目的たる事項が第十七条第一項、第三十一条第一項、第六十一条第五項、第六十二条第一項、第六十八条第一項又は第六十九条第七項に規定する決議事項であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。 」とあり、
5項に該当すると、議題の他に、その議案の要領もプラスして通知しなければなりません。
そこで、設問の「役員資格に関する規約の改正について」は、規約の改正ですから、これは、区分所有法第31条1項に該当しますので、反します。

参考: 区分所有法第31条「(規約の設定、変更及び廃止)
  第三十一条  規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
   2  前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。」


2 平成23年1月20日を集会開催日とする招集通知を同年1月13日に発送した。

○ 反しない? 
 集会招集の通知の発送は、選択肢1で引用しました区分所有法第35条1項
 「集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる」とあり、
解釈として、少なくとも、開催日の7日前(1週間前)の前日までに(初日不算入で)、各区分所有者あてに出すことになっています。
そこで、集会開催日が、1月20日なら、 −8日 =1月12日に出すのが、正解です。しかし、ここで、「ただしがき」に注意してください。「ただし、この期間は、規約で伸縮すること」ができますから、ここを、反するとするなら、設問において、「ただし、規約では別段の定めをしていない」の文章がないとだめです。


3 「地震による外壁落下の補修工事の実施について」の議題に関連して、防災グッズを購入し各組合員に配布すべきとの緊急動議が出たので、その動議について決議した。

○ 反しない?
 
 集会では、あらかじめ通知していないことを決議することは、出席していない人にとって不利になるため、区分所有法第37条
 「(決議事項の制限)
  第三十七条  集会においては、第三十五条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。
   2  前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない。
   3  前二項の規定は、前条の規定による集会には適用しない。 」とあり、
1項により、原則できませんが、ここでも、2項により、「地震による外壁落下の補修工事の実施について」に関連した防災グッズを購入し各組合員に配布すべきとの緊急動議は、特別の定数が定められている特別決議事項ではないと考えられますから、規約があれば、可能です。


4 賃借人の居住が大半を占めるマンションで、「管理費を1戸当り2,000円値上げする件」の議題について、招集通知を発した後も、この議題を建物内の見やすい場所に掲示しなかった。

○ 反しない? 
 設問が下手な文章であるため、主旨がつかみ難いのですが、通常の区分所有者宛ての招集の通知には、区分所有法第35条4項
 「4  建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対する第一項の通知は、規約に特別の定めがあるときは、建物内の見やすい場所に掲示してすることができる。この場合には、同項の通知は、その掲示をした時に到達したものとみなす。」により、
規約で別に定めてあると、建物内に住所を有する区分所有者又は前項の通知を受けるべき場所を通知しない区分所有者に対しては、議題などの通知を、建物内の見やすい場所に掲示しなければなりません。
 多分、出題者の意図としては、この区分所有者に対する事項は、置いといて、議題である、「管理費の値上げ」が、区分所有法第44条
 「(占有者の意見陳述権)
  第四十四条  区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して意見を述べることができる。
   2  前項に規定する場合には、集会を招集する者は、第三十五条の規定により招集の通知を発した後遅滞なく、集会の日時、場所及び会議の目的たる事項を建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。 」での、
占有者(賃借人)が、会議の目的たる事項につき利害関係を有するか、どうかを聞きたいのではと推察しました。
そこで、ここでの占有者が利害関係を有する場合の解釈ですが、ペットの飼育の禁止や、専有部分の使用方法の変更などは占有者にも利害関係があると判断されますが、共用部分の修繕や管理費の値上げは、占有者には利害関係がないと判断されています。確かに、管理費が値上げされれば、賃借人の賃料も大家である区分所有者から値上げされる可能性はありますが、それは、大家と借主の関係で、間接的だということです。
そこで、設問が、単に区分所有法第44条をターゲットにした出題なら、この議題を建物内の見やすい場所に掲示しなくても、反しません。


答え:4? 高層住宅管理業協会:4 (本当に出題文がひどすぎる例です。)


{設問-4} 平成26年 マンション管理士試験 「問30」

〔問 30〕 管理組合の総会招集手続に関する次の記述のうち、区分所有法の規定並びにマンション標準管理規約(単棟型)及びマンション標準管理規約(複合用途型)によれば、適切なものはどれか。

*注:標準管理規約は平成28年3月に改正があり、解説において未対応がありますので、注意してください。

1 総会招集通知に、会議の目的を「管理組合を法人化する件」として組合員に通知したが、議案の要領は通知しなかった。


○ 適切である。 特別決議事項でも、議案の要領の通知はいらない。 平成23年管理業務主任者試験 「問31」平成21年管理業務主任者試験 「問33」平成20年マンション管理士試験 「問6」 など多い。
 まず、集会(総会)を招集する際には、会議の目的たる事項が、重要と考えられる場合には、区分所有者に事前に充分な予備知識を与えて、集会に臨むように配慮して、会議の目的たる事項にプラスして、議案の要領も通知することになっています。
 それが、区分所有法第35条5項
 「(招集の通知)
 5  第一項の通知をする場合において、会議の目的たる事項が第十七条第一項、第三十一条第一項、第六十一条第五項、第六十二条第一項、第六十八条第一項又は第六十九条第七項に規定する決議事項であるときは、
その議案の要領をも通知しなければならない。 」 です。
 その、各条文の内容は、
    @「共用部分の重大な変更」(第17条第1項)、
    A「規約の設定・変更・廃止」(第31条第1項)、
    B「建物の価格の1/2超が消滅した場合(大規模滅失)の復旧」(第61条第5項)、
    C「建替え」(第62条第1項)、
    D「団地管理組合の規約の設定の特例」(第68条第1項)、
    E「団地内の2以上の区分所有建物の一括建替え承認決議に付する旨」(第69条第7項) です。
 通常、区分所有者及び議決権の各3/4以上または4/5以上(建替え)の賛成を必要とする
特別決議事項と呼ばれる事項が、この議案の要領も通知するに該当していますが、その特別決議事項のうち、
入っていないもの(議案の要領が不要なもの)があります。

 それが、@管理組合法人となること(第47条1項)
      A管理組合法人の解散(第55条2項)
      B使用禁止、競売または占有者に対する引渡しの訴えの提起(第58条2項、第59条2項、第60条2項) です。
 これにより、設問の会議の目的を「管理組合を法人化する件」なら、議案の要領の通知は、いりませんから、適切です。
 これは、「管理組合を法人化する」というだけで、もう内容が分かると、区分所有法の草案者が判断したからです。

 
  これを受け、マンション標準管理規約(単棟型)43条 (平成28年3月の改正に該当しているが、4項の答えとしては変更なし)
 「(招集手続)
 第43条 総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の2週間前(会議の目的が建替え決議であるときは2か月前)までに、会議の日時、場所及び目的を示して、組合員に通知を発しなければならない。
   2 前項の通知は、管理組合に対し組合員が届出をしたあて先に発するものとする。ただし、その届出のない組合員に対しては、対象物件内の専有部分の所在地あてに発するものとする。
   3 第1項の通知は、対象物件内に居住する組合員及び前項の届出のない組合員に対しては、その内容を所定の掲示場所に掲示することをもって、これに代えることができる。
   
4 第1項の通知をする場合において、会議の目的が第47条第3項第一号、 第二号若しくは第四号に掲げる事項の決議又は建替え決議であるときは、 その議案の要領をも通知しなければならない。
   5 会議の目的が建替え決議であるときは、前項に定める議案の要領のほか、次の事項を通知しなければならない。
     一 建替えを必要とする理由
     二 建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持及び 回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用 の額及びその内訳
     三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容 四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
   6 建替え決議を目的とする総会を招集する場合、少なくとも会議を開く日の1か月前までに、当該招集の際に通知すべき事項について組合員に対し説明を行うための説明会を開催しなければならない。
   7 第45条第2項の場合には、第1項の通知を発した後遅滞なく、その通知の内容を、所定の掲示場所に掲示しなければならない。
   8 第1項(会議の目的が建替え決議であるときを除く。)にかかわらず、緊急を要する場合には、理事長は、理事会の承認を得て、5日間を下回ら ない範囲において、第1項の期間を短縮することができる。] 

 また、マンション標準管理規約(複合用途型)47条
 「(招集手続)
 第47条 総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の2週間前(会議の目的が建替え決議であるときは2か月前)までに、会議の日時、場所及び目的を示して、組合員に通知を発しなければならない。
   2 前項の通知は、管理組合に対し組合員が届出をしたあて先に発するものとする。ただし、その届出のない組合員に対しては、対象物件内の専有部分の所在地あてに発するものとする。
   3 第1項の通知は、対象物件内に居住する組合員及び前項の届出のない組合員に対しては、その内容を所定の掲示場所に掲示することをもって、これに代えることができる。
   
4 第1項の通知をする場合において、会議の目的が第51条第3項第一号、第二号若しくは第四号に掲げる事項の決議又は建替え決議であるときは、その議案の要領をも通知しなければならない。
   5 会議の目的が建替え決議であるときは、前項に定める議案の要領のほか、次の事項を通知しなければならない。
     一 建替えを必要とする理由
     二 建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持及び回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
     三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
     四 建物につき全体修繕積立金として積み立てられている金額
   6 建替え決議を目的とする総会を招集する場合、少なくとも会議を開く日の1か月前までに、当該招集の際に通知すべき事項について組合員に対し説明を行うための説明会を開催しなければならない。
   7 第49条第2項の場合には、第1項の通知を発した後遅滞なく、その通知の内容を、所定の掲示場所に掲示しなければならない。
  8 第1項(会議の目的が建替え決議であるときを除く。)にかかわらず、緊急を要する場合には、理事長は、理事会の承認を得て、5日間を下回らない範囲において、第1項の期間を短縮することができる。」

 となっています。



2 理事長は、緊急を要する場合だったので、理事会の承認を得た上で、総会招集通知を開催日の4日前に組合員に通知した。

X 適切でない。 4日前は規約で許された5日間を下回っている。 平成25年マンション管理士試験 「問25」、 平成24年管理業務主任者試験 「問36」 、 平成23年マンション管理士試験 「問4」、 平成23年管理業務主任者試験 「問31」 など。ここも多い
 まず、集会(総会)の招集の通知は、区分所有法第35条1項
 「(招集の通知)
 第三十五条  
集会の招集の通知は、会日より少なくとも一週間前に、会議の目的たる事項を示して、各区分所有者に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸縮することができる。
 (以下、略) 」
とあり、
 原則:会日よりも、少なくても一週間前(1週間の前日まで)に通知をすることになっていますが、規約で伸ばしたり、短くすることもできます。

 
 これを受け、選択肢1で引用しました、マンション標準管理規約(単棟型)43条1項及び8項 (平成28年3月の改正に該当しているが、1項及び8項の答えとしては変更なし)
 「(招集手続)
 第43条
総会を招集するには、少なくとも会議を開く日の2週間前(会議の目的が建替え決議であるときは2か月前)までに、会議の日時、場所及び目的を示して、組合員に通知を発しなければならない
   8 第1項(会議の目的が建替え決議であるときを除く。)にかかわらず、
緊急を要する場合には、理事長は、理事会の承認を得て、5日間を下回らない範囲において、第1項の期間を短縮することができる。」 とあり、
 1項により、区分所有法の原則であった、1間前を2週間前に変更し、また、緊急を要する場合には、理事長は、理事会の承認を得て、5日間を下回らない範 囲においてなら、短縮できますが、設問のように、「総会招集通知を開催日の4日前に組合員に通知」となると、適切ではありません。
 また、マンション標準管理規約(複合用途型)47条8項にも、
 「(招集手続)
  8 第1項(会議の目的が建替え決議であるときを除く。)にかかわらず、
緊急を要する場合には、理事長は、理事会の承認を得て、5日間を下回らない範囲において、第1項の期間を短縮することができる。 」 とありますから、
 共に適切ではありません。



3 店舗部分で賃借人が営業している場合において、店舗の業種制限に関する規約の変更の総会招集通知を組合員に対し発送したが、その通知内容を所定の場所に掲示しなかった。

X 適切でない。 利害関係人がいると、通知内容を見やすい場所に掲示しないといけない。 平成25年マンション管理士試験 「問3」、 平成25年管理業務主任者試験 「問38」 など。
 賃借人(占有者)が集会(総会)の目的たる事項に、利害関係を持っていますと、区分所有法第44条
 「(占有者の意見陳述権)
 第四十四条  
区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的たる事項につき利害関係を有する場合には、集会に出席して意見を述べることができる。
   
2  前項に規定する場合には、集会を招集する者は、第三十五条の規定により招集の通知を発した後遅滞なく、集会の日時、場所及び会議の目的たる事項を建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。」 とあり、
 1項により、利害関係人は、集会に出席して意見を述べることができます。そのためには、集会(総会の)あることを知らなければなりませんから、2項で、 集会の日時、場所及び会議の目的たる事項を建物内の見やすい場所に掲示することが、求められていますので、通知内容を所定の場所に掲示しなかったのは、適 切ではありません。


 これを受け、マンション標準管理規約(単棟型)43条 (平成28年3月の改正に該当しているが、7項(新しく6項が追加され、8項となっているが)答えとしては変更なし)
 「(招集手続)
 第43条
  
7 第45条第2項の場合には、第1項の通知を発した後遅滞なく、その通知の内容を、所定の掲示場所に掲示しなければならない。」 とあり、
 引用されています、45条は、
 「(出席資格)
 第45条 組合員のほか、理事会が必要と認めた者は、総会に出席すること ができる。
   
2 区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的につき利 害関係を有する場合には、総会に出席して意見を述べることができる。こ の場合において、総会に出席して意見を述べようとする者は、あらかじめ理事長にその旨を通知しなければならない。」 とあり、
 適切ではありません。


 また、マンション標準管理規約(複合用途型)47条でも、
 「(招集手続)
 第47条
  
7 第49条第2項の場合には、第1項の通知を発した後遅滞なく、その通知の内容を、所定の掲示場所に掲示しなければならない。」 とあり、
 引用されています、49条は、
 「(出席資格)
 第49条 組合員のほか、理事会が必要と認めた者は、総会に出席することができる。
   
2 区分所有者の承諾を得て専有部分を占有する者は、会議の目的につき利害関係を有する場合には、総会に出席して意見を述べることができる。この場合において、総会に出席して意見を述べようとする者は、あらかじめ理事長にその旨を通知しなければならない。」 と、
 マンション標準管理規約(単棟型)と同様の規定があり、この複合用途型においても、適切ではありません。



4 理事長は、新会計年度開始後3ヵ月してから通常総会を招集した。

X 適切でない。 規約では新会計年度開始後2ヶ月以内に総会を招集すること。 平成26年マンション管理士試験 「問6」、 同「問25」、 平成25年管理業務主任者試験 「問38」、 平成23年マンション管理士試験 「問5」、 平成23年管理業務主任者試験 「問30」、 など。
 区分所有法では、会計年度という規定はありませんが、管理者(理事長)は、せめて年1回は一定の時期に集会を開いて、その事務の報告をしなさいという規定があります。
 それが、区分所有法第43条
 「(事務の報告)
 第四十三条  
管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。 」 です。

 この規定を受け、規約では、集会を総会とし、また会計年度と組み合わせて、通常総会と呼ばれる形で開催するようにしています。
 例えば、マンション標準管理規約(単棟型)42条 (平成28年3月の改正でも変更なし)
 「(総会)
 第42条 管理組合の総会は、総組合員で組織する。
   2 総会は、通常総会及び臨時総会とし、区分所有法に定める集会とする。
   
3 理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後2ケ月以内に招集しなければならない。
   4 理事長は、必要と認める場合には、理事会の決議を経て、いつでも臨時総会を招集することができる。
   5 総会の議長は、理事長が務める。」 
であり、
 マンション標準管理規約(複合用途型)なら46条
 「(総会)
 第46条 管理組合の総会は、総組合員で組織する。
   2 総会は、通常総会及び臨時総会とし、区分所有法に定める集会とする。
   
3 理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後2か月以内に招集しなければならない
   4 理事長は、必要と認める場合には、理事会の決議を経て、いつでも臨時総会を招集することができる。
   5 総会の議長は、理事長が務める。 」の規定です。
 これら、2つの標準管理規約によりますと、通常総会の開始は、共に3項に
 「3 理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後2ケ月以内に招集しなければならない。」
 とありますから、
 理事長が、新会計年度開始後3ヵ月してから通常総会を招集するのは、適切ではありません。



答え:1   議案の要領は、よく出題されるパターンでした。
        でも、マンション標準管理規約(単棟型)とマンション標準管理規約(複合用途型)の2つを出す必要性がまったくない!
        解説では、単棟型と複合用途型の根拠を示す必要性があるため、時間がかかる。
        これは、出題範囲に、無理にマンション標準管理規約(複合用途型)も入っているせいです。まったく、無駄な出題方法です。

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(招集手続の省略)

第三十六条

1項  集会は、区分所有者全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで開くことができる。

過去出題 マンション管理士 H25年、H22年、H17年、H16年、
管理業務主任者 R05年、R04年、R02年、H29年、H24年、

全員の同意があるとき...区分所有者”全員”が同意してなければ無効。ただし、ここで省略できるのは、招集の手続きだけ。

 本第36条は、前の第35条で定める集会の招集手続きを省略できる場合の規定です。

★招集手続きの省略化
  集会は区分所有者の権利義務に影響を与える重要な会議ですから、会議の構成員である各区分所有者の会議への準備およびその出席の機会が保証されなければなりません。

 そこで、重要な前の第35条「招集の通知」規定は、各区分所有者に対する集会参加への準備、およびその出席の機会の確保を目的とした、法が保護したことの表れです。

 しかし、このように集会の招集手続きを規定するのは、各区分所有者の集会出席権を法的に保護する目的ですから、その保護を受ける区分所有者が保護をいらないといえば集会の招集手続きは不要としてもいいはずです。
 従って、「区分所有者”全員が承諾”すれば、法が定める招集手続きが不要」になり、招集手続きなしで集会が開催できるというのがこの趣旨です。

  

★規定の対象
 この第36条1項の規定が本来対象とするのは少人数の管理組合で、区分所有者相互の連絡が電話やメールで出来るとか、1週間前の集会の開催事前予告が長すぎるくらい速やかに取れる場合を想定しているようです。

 しかし、大規模な管理組合においてもこの規定は当然に有効です。
ただ、多人数の管理組合では区分所有者全員が招集手続きの省略を承諾することは事実上無いでしょうから、この規定が意味を持つのは少数の招集通知洩れの瑕疵をその者の承諾を得て集会開催前に補完することくらいでしょう。

 ただし、手続きに瑕疵があるままで集会が開催された場合にはその集会は違法なものであり、集会が開催された後に区分所有者全員の承諾を得ても集会の違法性を阻却するものとは原則として考えられません。
この規定の文言からも、全員の「同意」は集会の開催前のものであることを前提とした表現となっています。

★省略される手続き
 この「週j会の招集手続の省略」の規定が適用される場合には、招集権者による招集、招集通知の期間、議題や議案の要領などその他招集に必要な諸手続きが不要となります。(第35条参照)
もっとも、承諾権者は一括して招集の利益を放棄する義務はありませんから、どの手続きを不要とし、どの手続きを必要とするかも自由であり、例えば、招集の通知期間については妥協するが、議題や議案の要領の通知は必要だと主張することも当然可能です。

★あらかじめ通知されない事項も、決議ができる。
  集会では、次の第37条1項によって、「あらかじめ通知した事項」のみが、決議の対象になりますが、この第36条の「区分所有者全員の同意で開催された集会」においては、「あらかじめ通知していない事項」であっても、決議できますので、注意してください。(参照:第37条3項)

<参照>区分所有法 第37条 (決議事項の制限)

第三十七条  集会においては、第三十五条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。
2  前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない。

3  前二項の規定は、前条の規定による集会には適用しない。

★区分所有者の全員出席集会の場合には
 ところで、区分所有者全員の同意があるという場合は、事実上は少人数の管理組合に限られるでしょうが、この規定が適用される典型的な場合は、何らかのかたちであれ、いわゆる区分所有者全員が出席した集会です。

 忘年会その他の懇親会や町内の他の会合等で区分所有者の全員がたまたま集まった場合などで、管理組合の集会で決議すべき事項についてこの機会に決議しようと、区分所有者の全員が合意(同意)すればこの規定の適用により、適法な集会を開くことができます。

 ただし、この規定は「招集手続きの省略」を認めるだけにすぎませんから、特別決議や普通決議に必要な定数を満たすことや建替え決議等の特殊な決議を行う場合の決議内容の具備、利害関係人の意見聴取が必要な場合の当該人の出席確保等招集手続き以外の要件を満たす必要があることは勿論です。  

 ★小さなマンションなどでは、面倒な招集手続きは区分所有者全員が同意すれば、省ける

    ただし、招集手続きだけが、省けるだけで、他の規定による定数や議決内容が必要なものは別の話になる。


{設問}甲マンション管理組合において規約を変更する場合、規約で定めることができるものとして、区分所有法の規定によれば、次の記述は正しいか。

*集会の招集について、区分所有法の規定により集会の目的たる決議事項が議案の要領の通知をしなければならないものを除き、招集手続きを省略することができると定めること。

答え:間違いである。 
 区分所有法第36条は、「集会は、区分所有者全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで開くことができる。」だけである。 招集手続きの例外を定めるのはこれだけであり、本肢のように集会の招集について、区分所有法の規定により集会の目的たる決議事項が議案の要領の通知をしなければならないものを除き、招集手続を省略することができると定めることはできない。

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(決議事項の制限)

第三十七条

1項  集会においては、第三十五条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる。

過去出題 マンション管理士 H26年、H24年、H23年、H19年、H14年、
管理業務主任者 R04年、H24年、H23年、H16年、

決議をすることができる...あらかじめ通知しなかったことは、集会では決められない。ただし、特別決議でない事項は、規約があれば、別段の定め可能(2項)
    また、区分所有者全員の同意があり、招集手続きのない集会では可能(3項)
    集会に不参加で、書面決議や代理人での決議をする区分所有者の権利を守るための規定。

   

★第37条の趣旨
 第37条は決議事項の制限の規定です。

 何度も言いますが、集会は区分所有者で構成される団体(管理組合)の最高の意思決定機関であり、各区分所有者は集会での討論や表決で各々の意思を表明することにより各自の利益を守ることができることになっています。これは、通常「審議権」と呼ばれます。

 この「審議権」を確保するために、前の第35条で集会が何時どこで開催されるかの他、何について審議するのか(会議の目的たる事項)をあらかじめ通知することが招集手続きとして要求されていますが、あらかじめ通知された事項以外が、集会で審議・議決されたのでは第35条の定めは骨抜きとなってしまいます。

 そこで第35条に定める招集手続きを実効性のあるものにして、各区分所有者の審議権を保証するのが本第37条1項の趣旨です。

*集会で、決議できるのは「あらかじめ通知した事項」だけ
 集会(総会)においては、区分所有法第35条1項と同5項の規定により「あらかじめ通知した事項」、すなわち、集会(総会)の招集通知に会議の目的たる事項として示された事項及び議案の要領についてのみ決議できるのが原則です(区分所有法第37条1項)。

 この趣旨は、区分所有者が集会(総会)に出席するかどうかは、その会議の目的たる事項の重要性又は自分が利害関係を有するかどうかによって判断するのが普通ですから、「不意打ちにならないように」という考慮から、あらかじめ招集の通知に会議の目的たる事項及び議案の要領として示された事項についてのみ、決議することができるのを原則としたのです。

 会議の目的たる事項は、報告事項を含めて、その会議にかけて討論する問題のことで、会議で討論・決議すべき事柄の概要を表したものです。
たとえば「管理費値上げの件」「共用部分変更の件」等です。
 したがって、
「その他」という事項はその内容が不明ですから第37条第1項により有効ではないと解されております。

 ただし、この決議事項の制限は、下記の2つの場合は適用されません。

◎ 決議制限が適用されない場合

    1.普通決議事項であって規約に決議できる旨別段の定めがある場合(第37条第2項)
      (特別決議事項については認められません)

    2..区分所有者全員の同意により招集手続を経ないで開かれる集会(第36条)の場合(第37条第3項)。

   なお、この場合でも、集会(総会)は、会議の目的たる事項によって特定されるものと考えるべきですから、区分所有者全員が出席していればいかなる事項をも決議できるのは当然ですが、欠席者との関係においては、会議の目的たる事項を特定して集会招集の同意を得なければならないと解されています(濱崎恭生「建物区分所有法の改正」法曹会発行)。ご注意ください。

★次に規定されています第37条2項に基づいて、規約に「あらかじめ通知した事項以外の事項をも決議することのできる」旨の定めがあり、通知もれした会議の目的たる事項が規約の定めに反しないかぎり(たとえば、特別決議事項は第37条第2項で認められていない)、通知もれの会議の目的たる事項も決議できます。

 しかし、規約に別段の定めがない場合は、決議できないことはもとより、よく集会(総会)の通知として見かけますが「その他」という内容の不明な事項は上記のとおり無効と解されていますので、招集通知に会議の目的たる事項として提示することは避けてください。

★通知がない事項は、集会に出席しなかった人が不利益になるので決議を禁止しているが、規約があれば普通決議事項に関してのみ「あらかじめ議題」となっていなくても、決議できる。(第37条2項)。なお、特別決議事項は、規約があっても、「あらかじめ通知」していないと、決議できない。


{設問-1}この間の総会で、前から何度も問題になっていた共用庭の手直しについての緊急提案が出されて、そのまま賛成多数で可決されてしまいました。問題はないのでしょうか

答え:ご質問のような緊急提案は可決できないのが原則です。したがって、法的にも無効です。

   前もって知らされていない緊急提案は、その内容について総会出席者が事前に自分の意見を整理するだけの用意ができていませんから、望ましい議決ができないことを考えて、このような定めになっているのです。


{設問-2}甲マンション管理組合でア〜エを議題とする総会が開催され、その席上、 組合員から出た意見のうち、議長が取り上げてこの総会に諮らなければならないものは、標準管理規約によれば、次のうちどれか。

*注:標準管理規約は平成28年3月に改正があり、解説において未対応がありますので、注意してください。

ア 大規模修繕工事の実施
イ 玄関の階段への車椅子用スロープの併設
ウ 共用廊下等への手すりの設置
エ ア〜ウの費用についての修繕積立金の取崩し

1 高齢者対策のみでなく、盗難防止対策こそ急を要するものであり、玄関等に防犯カメラを設置すべきであるという意見。

答え議長が取り上げて決議できない。
 標準管理規約(単棟型)47条9項(10項に変更)「 総会においては、第43条 第1項によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる。」とあり、総会では「あらかじめ通知した事項についてのみしか、決議することできない」。「盗難防止対策こそ急を要するものであり、玄関等に防犯カメラを設置すべきであるという意見」は、今回の通知した事項から外れた新しい提案であるため、議長が取り上げて決議できない。

2 この議題が可決されると修繕積立金が少なくなるから、修繕積立金を1割値上げすべきであるという意見。

答え議長が取り上げて決議できない。 
 これも、選択肢1で述べた、標準管理規約(単棟型)47条9項
(10項に変更)で通知した内容(エ:取崩し)とは異なり、値上げという新しい提案であり、議長が取り上げて決議できない。

3 スロープの併設と手すりの設置によりマンションの形状が変わるし多額の修繕積立金を取崩すのであるから、特別多数決議をすべきであるという意見。

答え議長が取り上げて決議できない。 
 これは、標準管理規約(単棟型)47条関係のコメント「Dこのような規定の下で、各工事に必要な総会の決議に関しては、例えば次のように考えられる。ただし、基本的には各工事の具体的内容に基づく個別の判断によることとなる。
   ア)バリアフリー化の工事に関し、建物の基本的構造部分を取り壊す等の加工を伴わずに階段にスロープを併設し、手すりを追加する工事は普通決議により、階段室部分を改造したり、建物の外壁に新たに外付けしたりして、エレベーターを新たに設置する工事は特別多数決議により実施可能と考えられる。」
  とあり、普通決議で可能と考えられ、特別多数決議は不要であるが、個々の内容から検討して、特別多数決議となることもあり得る。

4 この議題が可決されると修繕積立金が少なくなるから、手すりの設置箇所を半分に減らすべきであるという意見。

答え議長が取り上げて決議できる。 
 これは、選択肢1で述べた、「
あらかじめ通知した事項」内での具体的な意見であるため、議長が取り上げてこの総会に諮らなければならない

正解:4  (これも3の場合、内容によっては、判断が異なるので、設問が悪い。)  マンション管理センターの正解:4


★あらかじめ通知した事項の変更の範囲 〜修正も同一性があれば可能〜
 「あらかじめ通知した事項」といっても、一字一句同じのものを議決しなければならないというわけではありません。
集会(総会)は上程された議題ないし議案について出席者の様々な意見を集約して区分所有者の総意を形成する場ですから、この意見の中には当然議案の修正ないし変更というものも含まれます。

 集会(総会)で諸々の事項に関し討議検討されることは常識であり、このことは欠席者も当然予測できることですから、修正ないし変更がこの予測の範囲内であるならこれも実質的に予め通知した事項に包含されると考えられます。

 従って、あらかじめ通知した事項と「同一性のある範囲内」であれば、この判定もかなり難しいですが、集会は原案を変更・修正することができ、1項に違反するものではありません。

あらかじめ通知した事項以外でも、「討議」はできる。
 区分所有法第37条1項は、集会に出席しなかった人が不利益になるので、あらかじめ通知した事項以外の「決議」を禁止していますが、決議を禁止しているだけで、集会での討議までは禁止していませんので、ご注意ください。

★「議決」と「決議」の違い
  集会(総会)では、各区分所有者が意思を表示して、多数者によって支持された意思表示が、全区分所有者を拘束する「多数決の支配」がなされます。
  このような、
多数決をつくる行為を「議決」とよび、多数決によってつくられた意思表示を「決議」と呼びます。

 また、標準管理規約(単棟型)47条10項は、決議事項での別段の規定は定めずに、「あらかじめ通知した事項だけ、決議できる」としています。

<参考>標準管理規約(単棟型)47条10項: 

10 総会においては、第43条 第1項によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる

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第三十七条

2項  前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない。

過去出題 マンション管理士 H26年、H23年、
管理業務主任者 R01年

特別の定数の定め...特別決議事項で4分の3(75%)以上とか、5分の4(80%)以上の決議が必要なもの。

★規約で定めれば、あらかじめ通知していない事項も、内容により決議できる事項もある。

★通知事項以外の決議の制限の緩和

 前の第37条1項で定める「あらかじめ通知した事項」という決議事項の制限は、何かを決める場合に集会を開くには、常に第35条に定める1週間前(中7日、初日不算入)または規約に定める招集期間(プラス、マイナスが可能)が必要ということですから、招集通知後に判明した緊急議題や集会での変更が通知事項の同一性を超えるような場合には、再度招集する必要があります。

 しかし、欠席者の意向がどうであれ出席者で議決要件に満ちる賛成があればその議案は可決されるわけですから、再度招集する時間がないような場合には出席者のみで議決できる方が便宜に感じられることがあります。

 このような場合に備えて決議事項の制限を緩和することを認めたのが本2項の規定です。

★規約で別段の定めができる

 決議事項の制限は区分所有者の利益を守る重要な制度である一方、欠席者の意見が集会の議決を左右することもありうるわけですから、決議事項の制限を緩和するためには、その旨が規約で定められて予め参加者に予告されている必要があり、且つ特別決議事項に関する内容ならそれほどの緊急性も考えにくく緩和による集会参加者の便宜より欠席した区分所有者個人の利益保護の要請が勝りますから緩和を認めないこととしています。

★第37条2項に基づいて、規約に「あらかじめ通知した事項以外の事項をも決議することのできる」旨の定めがあり、通知もれした議題が規約の定めに反しないかぎり(たとえば、特別決議事項は第37条2項で認められていない)、通知もれの事項も決議できます
 しかし、規約に別段の定めがない場合は、決議できないことはもとより、「その他」の事項は無効と解されています。

  ★通知がない事項は、出席しなかった人が不利益になるので決議を禁止したが、規約があれば、普通決議事項は「あらかじめの通知事項」となっていなくても、決議できる

<参照> 第35条5項(議案の要領も必ず通知する決議事項)

◎集会の決議で「会議の目的」以外に「議案の要領」が必要なもの
番号 条文 内容  決議 さらに必要な「通知事項」
第17条1項 共用部分の重大変更  区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数、ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる  
第31条1項 規約の設定・変更・廃止  区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議  
第61条5項 建物の大規模滅失の場合の復旧  区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数  
第62条1項 建物の建替 

区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数

(*建替え決議は、4/5以上に注意)

一  建替えを必要とする理由
二  建物の建替えをしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに 要する費用の額及びその内訳
三  建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
四  建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
第68条1項 団地規約の設定 土地または附属施設 共有者の四分の三以上でその持分の四分の三以上を有するものの同意  
専有部分のある建物 区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による決議  
第69条7項 団地内の2以上の特定の区分所有建物の建替について一括して建替承認決議に付す旨の決議  特定建物の区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数
(建替え決議は、4/5以上に注意)
 

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第三十七条

3項  前二項の規定は、前条の規定による集会には適用しない。

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 未記入

<参照> 前条の規定=第36条:

集会は、区分所有者全員の同意があるときは、招集の手続を経ないで開くことができる。

★3項の趣旨
 区分所有法第37条の「あらかじめ通知した事項しか決議できない」の決議事項の制限は区分所有者の権利・利益を守るための規定ですから、その利益の帰属主体がその利益を放棄するときは適用する必要がないことになります。

 この点は招集手続きの場合と同様ですから、区分所有者全員の同意で招集の手続きを省いて開かれる集会の第36条の場合には、
 @第37条1項の「あらかじめ通知した事項しか決議できない」 と
 A同2項の「規約で別段の定めができる」 の規定の適用もありません。

 ★集会の手続きを経ていなくて開催された集会なので、当然「あらかじめ通知した事項」はない事が普通である。


{設問−1} 平成26年 マンション管理士試験 「問6」

[問 6] 集会に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 区分所有者は、規約の定めによらない限り、書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法によって議決権を行使することはできない。


X 誤っている。 規約以外、集会の決議でもできる。 平成23年マンション管理士試験 「問5」平成21年管理業務主任者試験 「問5」平成20年管理業務主任者試験 「問35」 など。
 議決権の行使は、区分所有法第39条
 「(議事)
 第三十九条  集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。
   2  議決権は、書面で、又は代理人によつて行使することができる。
   
3  区分所有者は、規約又は集会の決議により、前項の規定による書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であつて法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)によつて議決権を行使することができる。」
 とあり、
 3項によれば、「規約”又は集会の決議”」で、電磁的方法で議決権を行使することができますから、規約の定めによらない限りは、誤りです。



2 専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならないが、共有者がそのための協議をしないとき、又は協議が調わないときであっても、管理者が指定することはできない。

○ 正しい。 管理者の権限を越えている。 平成25年マンション管理士試験 「問7」、 平成24年管理業務主任者試験 「問29」、 平成22年マンション管理士試験 「問8」平成21年マンション管理士試験 「問5」 など。
 区分所有法では、専有部分が数人の共有になっていると、議決権行使者は一人にしなさいという規定があります。それは、区分所有法第40条
 
「(議決権行使者の指定)
 第四十条  
専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない。 」
 です。
 設問の前半「専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない」は、正しい。
 そこで、共有者が議決権行使者を決めない(決まらない)場合ですが、この場合に、管理者の職務権限として与えられている共用部分の保存(区分所有法第26条参照)を中心とした内容に、議決権行使者を指定することまでは含まれていないと判断されますから、選択肢2は全体として、正しい。

 なお、議決権行使者が共有者の協議で調わないときは、専有部分の持分の過半数を有する人が議決権行使者と解され、また、共有者の持分が等しい場合や、議決権を行使すべき者一人を決めない場合には、共有者は、議決権を行使できないとも解されます。


3 集会においては、招集の通知によりあらかじめ通知した事項についてのみ決議をすることができ、規約で別段の取扱いをすることはできない。

X 誤っている。 特別多数決議事項でなければ、規約で別段の定めができる。 平成24年マンション管理士試験 「問25」、 平成24年管理業務主任者試験 「問32」平成23年マンション管理士試験 「問4」 など。
 集会は、全員出席が望ましいのですが、不参加の区分所有者もいます。そこで、集会で決議できる規定として区分所有法第37条
 「(決議事項の制限)
 第三十七条  
集会においては、第三十五条の規定によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議をすることができる
   
2  前項の規定は、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項を除いて、規約で別段の定めをすることを妨げない
   3  前二項の規定は、前条の規定による集会には適用しない。」
 です。
 1項により、原則: あらかじめ通知した事項についてのみ決議をしますが、2項では、「この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項(特別多数決議事項といいます)でなければ、規約で別段の定めを認めていますから、誤りです。



4 管理者は、集会において、毎年1回一定の時期に、その事務に関する報告をする必要があるとともに、個々の区分所有者の請求がある場合にも、これに応じることができない正当な理由がない限り、報告をする必要がある。

X 誤っている。 管理者の事務報告は、集会においてすれば、足りる。 平成25年管理業務主任者試験 「問38」、 平成23年マンション管理士試験 「問5」平成23年管理業務主任者試験 「問30」平成21年マンション管理士試験 「問8」 など。
 管理者の事務報告は、区分所有法第43条
 
「(事務の報告)
 第四十三条  
管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。 」
 です。
 これにより、設問の前半「管理者は、集会において、毎年1回一定の時期に、その事務に関する報告をする必要がある」は、正しい。
 そこで、後半の「個々の区分所有者の請求がある場合にも、これに応じることができない正当な理由がない限り、報告をする必要がある」ですが、判例で「事務報告は、集会において行えば足りるのであって、個々の区分所有者の要求に直接的かつその都度、応じる義務はない(東京地裁;平成4年5月22日 判決)」とされていますから、選択肢4は、後半が、誤りです。



答え:2  (まだ、勉強していない、第39条も入っていますが。)

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(議決権)

第三十八条

1項  各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による。

過去出題 マンション管理士 H29年、H28年、H23年、H22年、H20年、H19年、H16年、H15年、H14年、
管理業務主任者 H27年、H24年、H22年、H20年、H13年

★議決権は、規約が無ければ、専有部分の床面積の割合となる。

  ただし、専有部分の床面積の持分の割合では、 12345分の678 の様に複雑になるので、 1戸 = 1議決権のように、規約で定めても、公正であること。

 <参照> 区分所有法 第14条:

各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。


   

★議決権の割合を定める趣旨
 第38条は議決権に関する規定です。

 議決権とは文字通り議題の決議に参加する権利を言いますが、この区分所有法第38条の規定では、議決権は普通の選挙の投票権のように1人1票のような平等なものではなく、規約がなければ、建物の専有部分の床面積の割合であるため、区分所有者によって大小の割合による差があるものとされています。

 議決権を建物の専有部分の床面積の割合によるということは、区分所有者の団体(管理組合)で問題となる事項の多くが議決権者たる区分所有者の各個人にかかわるものというより、建物を共有している人たちの共有物の管理方法という色彩が濃厚のため、その発言権たる議決権も「財産の持分」という専有部分の床面積に比例することが公平であるという考えによります。

 しかし、マンションは、個人の生活の本拠たる住居を目的としていますから、財産面のほかに個人の人格の平等という点も全く無視することはできません。

 そこで区分所有法では、この持分権者と個人の平等との公平さを、
  @区分所有者数 と 
  A議決権 
 の双方を要件とする次の第39条の議決要件で調整しているものと考えられます。

★議決権の割合 〜 規約で別段の規定が無ければ、専有部分の床面積の割合 〜  
 本第38条で規定する、「第14条に定める割合」とは、共有持分の割合であり「内法(うちのり)計算」で算定される専有部分の床面積の割合に比例しています。

 しかし、同じく第38条で議決権割合は規約での別段の定めを許していますから、持分を内法面積基準以外の壁芯面積基準とした場合の持分割合や、考え方としてはマンションの階別や南向き等の方位別の効用比を加味した「価値基準による持分割合」とすることも規約に定めれば可能です。


 ◎超高層マンションの場合

 

 最近の超高層マンション(タワー・マンション。大体20階(60m)以上)では、同じ床面積であっても下層階と上層階では、極端に分譲価格に差がありますから、単に専有部分の床面積の割合では、平等とはいえない状況もありますので、規約で別段の定めも検討が必要です。

 同じ床面積でありながら、東京23区では最上階の分譲価格が1階と比べて4倍、時には10倍にも及ぶという現状があります。(2022年現在)
 そこで、上層階の居住者から、こんなに高い金額を払って購入したのに、床面積が同じだという理由でマンションの総会における議決権が下層階の居住者と同じというのでは、不公平だという声が、多くなってきています。
 今までの床面積で議決権の割合を決めているのは、納得がいかないという、当然な不満です。

 ◎床面積から分譲価格へ
 このような、状況なら、議決権の割合も、価格も考慮した内容にすべきです。
 そこで、議決権の割合を、具体的には不動産業者が決めた分譲価格を元にするのも一案ですが、不動産業者が決めた分譲価格には、売れなければ、当初の分譲価格を下げるなど、かなり業者の思惑(恣意)が入っているため、客観性の面では、疑問があります。分譲価格に極端な差があるマンションでの議決権の割合を決めるには、実情に合わせた慎重さが求められます。


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*マンション(特にタワー・マンション)購入からの税について

 タワー・マンションの節税問題などにインスパイアされて、税を解説!

 

  世間から、通常タワー・マンション(タワマン)と呼ばれている、おおよそ20階建て(60m)超の高層マンションの上層階を購入すると税金、特に相続税での優遇が問題となっていましたので、マンションを購入した時から、購入後(維持時)、売却、相続税についての考察です。
  購入時に必要な金額には、購入金額は当然のことながら、税のほかにも仲介料、登記手数料などもありますが、今回は、税についてだけです。

●税の概要
 税を課す(税金をとられる)根拠。
  日本国憲法第30条に、

 <参照> 憲法 第30条

 第三十条 国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ。

 とあり、また 同第84条に、

<参照> 憲法 第84条

第八十四条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

  この規定により、日本に住む以上、税金はとられます。そして、税を取る法律が明確に存在することが必要です。

  現在の日本の税は、国がかける(国に収める) 
   ・国税 と 
    地方自治体がかける(市町村に収める)
   ・地方税 があり、地方税には、
     ・道府県税 と
     ・市町村税 があります。

   注:東京都23区(特別区)の場合...特別に道府県税や市町村税の一部を都民税として課税する。
  
 国税と地方税には数多くの税がありますが、主な種類は以下のようになります。

国税(主な)  地方税(主な)
 所得税
 法人税
 相続税
 贈与税
 消費税
 印紙税
 酒税
 登録免許税
 自動車重量税
 個人住民税
 法人住民税
 事業税
 地方消費税
 固定資産税
 都市計画税
 不動産取得税
 自動車税
 軽自動車税 

  この前提から、以下に

   ・マンション新規購入時の税金
   ・マンション購入後(維持)の税金
   ・マンション売却時の税金
   ・マンション相続時の税金
  
   について、解説します。

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 ◎マンション新規購入時の税金

  マンションに限らず、新しく土地・建物を購入すると、かかってくる税は、
   @消費税・・・原則: 物品、サービスの売り上げ価格 x 10/100 (10%) 
             内訳:国税部分:7.8%、
             内訳:都道府県税部分:2.2%
          
          ただし、住宅の取得については、経過措置として、 8%の税率が適用される。
          建物部分の代金 x 8/100 (8%

          *注:土地の部分には消費税はかからない!
          土地は、商品やサービスの提供というよりも所有権や借地権などの権利の譲渡と考えられているため非課税でかからない

   A不動産取得税・・・課税標準額(固定資産評価基準による評価額=固定資産税評価額)x税率
      固定資産税評価額・・・土地の有効度(固定資産税路線価=公示価格の70%程度)と建物の構造(建築費の70%程度)について各市町村が定める。3年ごとにその評価を見直す
      税率・・・原則:4%。その時代を反映した住宅用地特例や新築軽減措置がある
           例:令和9年3月31日までは、土地・住宅用家屋なら、3/100(3%).
 
   B登録免許税・・・登記は、第三者に対抗するために必要。
       不動産登記法による土地・建物の所有権保存登記や所有権移転登記、また住宅ローンがあれば抵当権設定登記にかかる税
       課税標準には固定資産税評価額を使う。住宅には特例措置もある
       新築建物の場合:登記官が、新築建物価格認定基準表を基に計算する

{例}   登録免許税 
 土地売買での所有権移転登記  評価額  1,500万円    20/1,000 = 30万円
 新築建物の所有権保存登記  評価額  1,000万円    4/1,000 =  4万円
 抵当権設定登記  借入金額 2,500万円    4/1,000 = 10万円


   C印紙税・・・政府発行の証書。課税文書である売買契約書やローンの金銭消費貸借契約書等に、記載された金額に応じて該当の金額の印紙を貼付し、消印をして納付は完了する
    

 例
不動産譲渡契約書
印紙税 
 記載金額 印紙税額
 1万円未満 非課税 
 10万円以下  200円
 10万円を超え50万円以下  400円
 50万円を超え100万円以下  1千円
 100万円を超え500万円以下  2千円
 500万円を超え1千万円以下  1万円
 1千万円を超え5千万円以下  2万円
 5千万円を超え1億円以下  6万円
 1億円を超え5億円以下  10万円
 5億円を超え10億円以下  20万円
 10億円を超え50億円以下  40万円
 50億円を超えるもの  60万円
   
 契約金額の記載のないもの  200円

    ●印紙税について
       印紙税は、電磁的方法(電子メールに添付したPDFファイルやFAXによる契約書、電子契約書の取り交わし)によるなど、現物の文章(課税文書)が交付されない場合は、課税されない。
       コピーされた契約書にも貼付は不要。

       また、契約書に印紙を貼らなくても、契約は成立する。ただし、納付しなかった過怠税として該当の印紙税の額とその2倍に相当する金額の合計額(印紙税額の3倍)が課せられる。


 があります。

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 ◎マンション購入後の税金(維持に必要な税) 〜固定資産税(地方税)〜

   毎年1月1日時点(賦課期日)現在で、登記簿に土地や建物の不動産の所有者(個人、法人を問わず)として記載されているに者に対して、その不動産がある市町村が不動産の価格に応じて毎年課税する税(地方税)に、
   @固定資産税・・・土地と建物の課税標準額(原則:固定資産税評価額を使うが軽減措置も多い)x税率(通常 1.4%=1.4/100) と
   A都市計画税・・・原則として市街化区域内にある土地・建物に対して、課税標準額x税率(最高 0.3%=0.3/100)、
       基本として、マンションは都市計画法で規定される市街化区域内に建築される
    があります。

  なお、固定資産税の納税通知書は、毎年4月から6月頃に、各納税義務者あてに送られてくる。(注:新しく譲渡などがあり実際の所有者と登記簿上の名義人が異なっていても、固定資産税の納税義務者は、登記簿上の名義人となる。)
 固定資産税の納付は、原則として、4月、7月、12月そして翌年の4月の4回にわけてします。

    注:市街化区域とは...都市計画法で指定されている都市計画区域のひとつで、すでに街の整備が進められて市街地になっている区域と、おおむね10年以内に優先的、計画的に市街地として整備を図るべき区域のことです。
      市街化区域には第一種低層住居専用地域とか田園住居地域などの用途地域が必ず指定されています。
      この市街化区域に対応して、市街化調整区域がある。
      市街化調整区域とは...市街化調整区域とは、「市街化を抑制すべき区域」のことで、開発行為は原則として禁止されています。自然を保全することと農業や林業などを営む環境を守る目的で定められています。

 

      詳細を知りたい方は、「マンション管理士 香川事務所」 が無料で提供しています、 「要約 建築基準法」 をご覧ください。

 ●固定資産税の計算 〜固定資産税評価額(課税標準額) x 1.4% 〜
  
  *固定資産税評価額(課税標準額)の算出方法

    ア.土地の場合
     国土交通省が毎年3月頃、1月1日時点で発表している主な「土地の公示価格」をもとに、市町村が3年ごとに、公示価格の70%を目途に、主要な街路に価格を設定し(これを路線価といいます)、主要な街路との状況の差を比較考慮してその他の街路の路線価を付設します。
     その路線価が固定資産税の評価に使用され、固定資産税路線価と呼ばれます。

     固定資産税路線価があれば、それを使用して固定資産税評価額を算出する路線価方式と、田や山林など固定資産税路線価が定められていない地域の土地等を評価する標準宅地比準方式があります。
      
    ア-1.固定資産税路線価が定められている地域の土地の場合 〜路線価方式〜

     固定資産税評価額(課税標準額) = 固定資産税路線価 X 敷地面積(u) x 補正率

      となります。

    

     

   例えば、上の例の場合、市町村が3年ごとに定める固定資産税路線価が30万円で、マンションの敷地面積が700平方メートルで、奥行35mの価格補正率が0.97であった場合、土地の固定資産税評価額は「30万円×0.97x700u=20,370万円」となります。

   土地の形状によって「補正率」をかけて調整され、囲繞地(袋地)など特殊な形の土地は評価額が下がる傾向があります。2路線に面していると評価額は上がります。

     *住宅用地に対する課税標準の特例
       住宅用地に対しては、特例として、以下の軽減措置があります。      

区分   説明  固定資産税の課税標準 都市計画の課税標準 
 小規模住宅用地  200uまでの住宅地  評価額x1/6  評価額x1/3
 一般の住宅用地  200u超え、床面積の10倍までの住宅地  評価額x1/3  評価額x2/3

     
  ア-2.固定資産税路線価が定められていない地域の土地の場合 〜標準宅地比準方式〜

          田や山林には宅地のような道路がないため、固定資産税路線価は設定できません。
          そこで、採用されるのが、標準宅地比準方式です。

          標準宅地比準方式は、標準となる土地を選定し、販売実例価格を参考に、形状や条件等の補正を行い、固定資産税評価額を計算する仕組みです。
          
         @標準宅地の選定...奥行、間口、形状等を考慮して標準地を選定します。
         A標準宅地の適正な時価の評定...選定された標準宅地について地価公示価格、都道府県地価調査価格及び鑑定評価価格の7割を目途に適正な時価を評定します。

        そこで、計算式は、

         「標準宅地の単価×土地面積×補正率」

         です。

      例えば「標準宅地の単価=10万円」x「土地面積=100u」x「補正率=0.7」の場合は、
     「10万円×100u×0.7=固定資産税評価額700万円」となります。


    イ.建物(家屋)の場合
 
      建物(家屋)の場合の固定資産税は、以下のようになります。

       (固定資産税評価額(課税標準額=その年度の評価額)) x 1.4%   

      建物の課税標準額は、「再建築価格方式」によって算出されることが基本です。

      再建築価格方式とは、「同じ土地に同じ構造・規模・形態・機能の建物を建てた場合、どれほどの価格がかかるか」を想定して建築価格を定める計算方式で、経年劣化分を評価・減額して最終的な課税標準額が求められます。
      概算として、新築時は、購入価格の50%〜70%が目安となります。      


  *軽減(減額)措置が多い
   例えば、
    ・住宅用地とか、
    ・新築住宅なら一定期間固定資産税が 1/2 になるとか、
    ・既存住宅に係る耐震改修促進税制とか、
    ・既存住宅に係るバリアフリー改修工事の減額措置とか、
    ・長期優良住宅に係る減額措置とか、
    ・省エネ改修住宅に係る減額措置など、
   主に戸建て住宅だと、減額されるので、戸建ての所有者は検討のこと。

---------------------------------------------------------------------   

   *マンションの固定資産税

    マンションでは、固定資産税と原則市街化区域内にある敷地(土地)に対して課せられる都市計画税は各区分所有者の専有床面積で決まります。
    固定資産税の計算は、まず1棟全体で評価し、出てきた金額を各区分所有者の専有部分の床面積によって按分しています。
    そのため、同一物件で、専有面積が同じであれば、1階でも40階でも、間取りや眺望のよさ、日当たりの良さ等によって高額な販売価格が設定されていても、固定資産税・都市計画税は同じ金額になります。

    ●タワー・マンションでは

   

    タワー・マンションのように、下層階と上層階ではその取引価格に大きく差がある場合、高層階の所有者ほど固定資産税・都市計画税の税額が実際の取引価格と比べて相対的に低いという問題が発生し、納税者の公平さを保つため税制の見直しが図られました。

  そこで、平成29年(2017年)4月以降に売買契約をした高さが60mを超える建築物のうち複数の階に住戸が所在しているいわゆるタワー・マンションは「居住用超高層建築物」に定義され、階によって固定資産税、および都市計画税を区分所有者の有する専有部分の床面積の割合に応じて按分計算する原則的な取扱いに代えて、実際の分譲価格を踏まえた按分方法(床面積当たりの取引単価の変化の傾向を反映するための補正率=「階層別専有床面積補正率」)により計算することとされました。(地方税法第352条2項、地方税法施行規則第15条の3の2、同第7条の3の2)

   注:「階層別専有床面積補正率」・・・最近の取引価格の傾向を踏まえ、居住用超高層建築物の1階を100とし、階が1つ増えるごとに、これに10/39を加算した数値とされます。

     したがって、

     [N階の階層別専有床面積補正率=100+10/39×(N-1)]となります。
       つまり、40階で10%(1割)増加します。
 
     (例)1階に係る固定資産税が100の場合、40階の固定資産税は、100+10/39x(40-1)で、110となります。

<参照> 地方税法 第352条

(区分所有に係る家屋に対して課する固定資産税)

第三百五十二条 区分所有に係る家屋に対して課する固定資産税については、当該区分所有に係る家屋の建物の区分所有等に関する法律第二条第三項に規定する専有部分(以下この条及び次条において「専有部分」という。)に係る同法第二条第二項に規定する区分所有者(以下固定資産税について「区分所有者」という。)は、第十条の二第一項の規定にかかわらず、当該区分所有に係る家屋に係る固定資産税額を同法第十四条第一項から第三項までの規定の例により算定した専有部分の床面積の割合(専有部分の天井の高さ、附帯設備の程度その他総務省令で定める事項について著しい差違がある場合には、その差違に応じて総務省令で定めるところにより当該割合を補正した割合)により按分した額を、当該各区分所有者の当該区分所有に係る家屋に係る固定資産税として納付する義務を負う。

2 区分所有に係る家屋のうち、建築基準法第二十条第一項第一号に規定する建築物であつて、複数の階に人の居住の用に供する専有部分を有し、かつ、当該専有部分の個数が二個以上のもの(以下この項において「居住用超高層建築物」という。)に対して課する固定資産税については、当該居住用超高層建築物の専有部分に係る区分所有者は、第十条の二第一項及び前項の規定にかかわらず、当該居住用超高層建築物に係る固定資産税額を、次の各号に掲げる専有部分の区分に応じ、当該各号に定める専有部分の床面積の当該居住用超高層建築物の全ての専有部分の床面積の合計に対する割合(専有部分の天井の高さ、附帯設備の程度その他総務省令で定める事項について著しい差違がある場合には、その差違に応じて総務省令で定めるところにより当該割合を補正した割合)により按分した額を、当該各区分所有者の当該居住用超高層建築物に係る固定資産税として納付する義務を負う。
   一 人の居住の用に供する専有部分 当該専有部分の床面積(当該専有部分に係る区分所有者が建物の区分所有等に関する法律第三条に規定する一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものを所有する場合には、当該一部共用部分の床面積を同法第十四条第二項及び第三項の規定の例により算入した当該専有部分の床面積。次号において同じ。)を全国における居住用超高層建築物の各階ごとの取引価格の動向を勘案して総務省令で定めるところにより補正した当該専有部分の床面積
   二 前号に掲げるもの以外の専有部分 当該専有部分の床面積

3 建物の区分所有等に関する法律第十一条第二項又は第二十七条第一項の規定による規約(都市再開発法第八十八条第四項の規定によりみなされるものを含む。)により区分所有者又は管理者が所有する当該区分所有に係る家屋の建物の区分所有等に関する法律第二条第四項に規定する共用部分(以下この項及び次条において「共用部分」という。)については、当該共用部分を当該家屋の専有部分に係る区分所有者全員(同法第三条に規定する一部共用部分については、同法第十一条第一項ただし書の区分所有者全員)の共有に属するものとみなして、前二項の規定を適用する。

 なお、階層別専有床面積補正率を新しく採用しただけで、マンション1棟の固定資産税額(総額)は、今までとうりで、今回の改正の前後で増減はありません。

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 ◎マンションの売却時の税金

   マンションを始めとして、土地や建物など保有する資産を売却(譲渡)すると、上で説明した、消費税印紙税がかかり、その譲渡で利益(譲渡所得)がでると、さらに所得税(国税)や住民税(地方税)がかかります。
   その譲渡所得(課税譲渡所得金額)の計算式は、

 
  課税譲渡所得金額=譲渡価額-(譲渡費用+取得費 )- 特別控除額

       ※譲渡価額:土地や建物の売却価格(収入金額)
       ※譲渡費用:仲介手数料や測量費・登記費・取り壊し費・印紙税などの諸経費。ただし、税理士に支払った費用や、引っ越し費用、譲渡資産を取得するための借入金の利息などははいらない。
       ※取得費:土地や建物の購入価格(当時の手数料なども含む。不明な時は、譲渡価格の5%))
       ※特別控除額:一定要件を満たす場合に適用されます。
         マイホームの譲渡、買い替え、収用等、特定土地区画整理事業等、特定住宅遅造成事業等、農地保有の合理化等で土地や建物、農地を譲渡した場合に適用

  また、譲渡所得は、売却した年の1月1日現在において、その土地・建物(不動産)の所有期間(5年超(長期譲渡所得)か5年以下(短期譲渡)かで、税金の計算が異なる。
  短期譲渡の税率が長期譲渡の2倍と高いのは、いわゆる「土地ころがし」を抑制するためです。

   ・短期譲渡所得・・・不動産の所有期間が5年以下の場合は、短期譲渡取得に該当します。
    税率は所得税が30%、住民税が9%です。短期譲渡では、長期譲渡と比べて税額が約2倍となっている。
    さらに2037年までは所得税額の2.1%を復興特別所得税として納付することになっています。

    短期譲渡所得での税金の計算
     課税短期譲渡所得金額 x 39.63% (所得税 30.63% + 住民税 9%)

 
   ・長期譲渡所得・・・不動産の所有期間が5年を超える場合は、長期譲渡所得に該当します。(正月を6回超えたら長期所有)
    所得税が15%、住民税が5%です。
    また、短期譲渡所得と同じように、2037年までは所得税額の2.1%が復興特別所得税としてかかります。

   長期譲渡所得での税金の計算
    課税長期譲渡所得金額 x 20.315% (所得税 15.315 + 住民税 5%)

      ただし、長期譲渡所得において、所有期間が10年を超える場合、軽減税率の特例が適用されます。
      譲渡所得が6,000万円以下の場合・・・所得税が10%(10.21%)、住民税が4%、
      譲渡所得が6,000万円を超える場合・・・所得税が15%(15.315%)+600万円(612.6万円)、住民税が5%+240万円

  ・マイホーム(居住用財産)の売却なら、所有期間が短期でも、譲渡所得から3,000万円分を控除できる特例があります。

  注:上の税法の解説は、原則です。課税の特例において、特別控除の特例や軽減税率の特例、交換・買換えの特例等、税法は時代の政治的な影響により、よく改正がありますから、最新の情報に注意してください。

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 ◎マンションの相続税(国税) 〜土地・建物〜

     

   マンションであってもその相続は通常の相続と同様に、遺された現預金は当然の事ながら、土地・建物の不動産や貴金属、絵画など故人の財産(遺産)が金銭的にいくらの価値があるかによって相続税が決まります。
 遺産を金銭的に見積もったものは「課税遺産総額」と呼ばれ、この合計金額により相続税が決まる仕組みです。
 相続税額の算出方法は、各人が相続などで実際に取得した財産に直接税率を乗じるというものではありません。

 正味の遺産額から基礎控除額を差し引いた残りの額(課税遺産総額)を民法に定める相続分によりあん分した額(法定相続分に応ずる取得金額)に税率を乗じます。
 この場合、民法に定める相続分は、基礎控除額を計算するときに用いる法定相続人の数に応じた相続分(法定相続分)により計算します。

*民法での法定相続人と法定相続分    
 順位  相続人  法定相続分 説明 
 第1順位 配偶者と子   ・配偶者 1/2
・子 1/2
 子が数人いるときは等分となる
 第2順位 配偶者と直系尊属 ・配偶者 2/3
・直系尊属 1/3 
 直系尊属が数人いるときは等分となる
第3順位 配偶者と兄弟姉妹 ・配偶者 3/4
・兄弟姉妹 1/4 
・兄弟姉妹が数人いるときは等分となる
・父母の一方を同じくする兄弟姉妹の相続分は、
 父母の双方を同じくする兄弟姉妹の1/2となる

 計算式は、

   遺産額 + 相続開始前7年以内の贈与財産 − (非課税財産+葬式費用+債務) - 基礎控除額 = 課税遺産総額

     ※基礎控除額...3,000万円+(600万円×法定相続人の数)

     注:相続開始前7年以内の贈与財産(生前贈与):令和6年1月1日以後に贈与により取得する財産(改正あり)

   課税遺産総額 x 税率 - 控除額 = 相続税

    ●相続税の速算表
法定相続分に応ずる取得金額   税率  控除額
 1,000万円以下  10%  −
 1,000万円超から3,000万円以下  15%  50万円
 3,000万円超から5,000万円以下  20%  200万円
 5,000万円超から1億円以下  30%  700万円
 1億円超から2億円以下  40%  1,700万円
 2億円超から3億円以下  45%  2,700万円
 3億円超から6億円以下  50%  4,200万円
 6億円超  55%  7,200万円

 {相続税の計算例}
  例えば、該当の生前贈与がないとして、相続財産が2億円。
  法定相続人が妻(配偶者)と子2人である場合、民法に従い法定相続分は妻は2分の1、子二人は、遺された2分の1を二人で分けて、各4分の1となります。

  相続財産の2億円から基礎控除額(3,000万円+(600万円x3人)=4,800万円)を差し引いた課税遺産総額は1億5,200万円になり、法定相続分に応ずる取得金額は、
   妻が  2分の1 の 7,600万円、
   子は各 4分の1 の 3,800万円ずつとなります。

  これらの法定相続分に応ずる取得金額を相続税の速算表に当てはめて、控除額を引くと、算出税額は次のとおりで計算されます。

   妻(配偶者):  7,600万円 × 30% (5,000万円超から1億円以下に該当 )   - 700万円= 1,580万円 
   子1: 3,800万円 × 20% (3,000万円超から5,000万円以下に該当) - 200万円 =  560万円
   子2: 3,800万円 × 20% (3,000万円超から5,000万円以下に該当) - 200万円 =  560万円

   算出された税額を合計すると相続税の総額は2,700万円になります。

   相続税の総額の2,700万円に、各人の負担割合を計算します。
   妻: 2,700万円 x 1/2 = 1,350万円
   子: 2人 各人 x 1/4 =  675万円

   注:ここから、妻:配偶者の負担分 1,350万円は、税額軽減(1億6,000万円まで)の措置が適用され 妻の相続税額は、0円となる。(ただし、申告が必要です。)

   通常相続では法定相続人が多いほど、基礎控除があるので節税できます。

  また、資産を不動産にしておくと、実勢価格から、路線価評価になり、実質、節税できることがあります。

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  ◎相続における土地・建物の評価

  ここでは、その遺産の内、直ぐには金額が分からない土地・家屋(不動産)を金銭として評価する方法を説明します。

  相続税評価額の評価方法は、基本的に評価時点における価格つまり「時価」ですが、土地と建物では評価方法が異なります。

  1.土地の評価方法
    土地は、地目(宅地、田、畑、山林など)ごとに評価し、方法としては、(相続税)路線価方式 と 倍率方式 の2方式があります。

    ア.(相続税)路線価方式
      相続税路線価とは、国税庁が例年7月にその年の1月1日時点の価格として公表しており、土地取引の指標となっている公示地価です。
     「道路(路線)に面する標準的な宅地1uあたりの評価額(千円単位)」のことを指します。
     公示価格の80%程度の価格で、その年の1月1日から12月31日までの間に相続、または贈与によって土地を取得した場合に適用されます。

    注1:「路線価」には他にも市町村が3年ごとに定める固定資産税や都市計画税などのもとになる「固定資産税路線価(実勢価格の70%程度の価格)」もあるので、注意のこと。通常、路線価というと、相続税路線価の方を指すことが多い。

    注2:公示価格と実勢価格の違い
     ・公示価格とは、国土交通省が毎年調査して発表している、1月1日時点での標準地とした全国約2万6000地点の土地の単価のことで、土地取引や資産評価の目安です。国が行っている地価の調査のことを「地価公示」と呼びます。
     ・実勢価格とは、実際に売買取引されている価格のことで、つまり土地の時価です。
     実勢価格は、一度決まった公示価格と異なり売り手と買い手の思惑や売買時の状況・変化によりその都度自由に価格が決まります。  

  ●路線価の違い  
  相続税路線価  固定資産税路線価 
評価の対象   土地の相続税用  土地の固定資産税用
 対象の税  相続税・贈与税  固定資産税・都市計画税・不動産取得税
 税の種類  国税  地方税
 作成者  国税庁  市町村
 作成頻度  毎年  3年に一度
 価格時点 1月1日   基準年(3年ごと)の1月1日
 公表時期 毎年7月頃   基準年の4月頃
 価格水準 公示価格の約80%   公示価格の約70% 


    

      この路線価に基づいて土地を評価する方法が「(相続税)路線価方式」です。
      路線価方式による土地の相続税評価額は次の計算式を用います。

      【路線価×各種補正率×土地面積】
      
      ※各種補正率:土地の形状(奥行、長方形、不整形など)や接する道路の数、また借地権などで異なる。

      例えば、以下のような土地があった場合、

       
         路線価:30万円
         各種補正率:1.0
         土地面積:180u
      相続税評価額は【30万円 × 1.0 × 180】で5,400万円となります。

     路線価及び奥行価格補正率などは国税庁のホームページで確認することができます。

    イ..倍率方式
     「倍率方式」とは、上で述べた路線価が定められていない地域に関する土地の評価方式です。 
     この方式による土地の相続税評価額は次の計算式を用います。

      【固定資産税評価額×倍率】

     ※「固定資産税評価額」とは市町村から毎年送られてくる納税通知書に同封されている「固定資産税課税明細書」に記載されています。
       明細書の土地の「価格」の欄の額が「固定資産税評価額」です。
     ※倍率...宅地や田、山林などで異なる。
        多くの宅地の倍率は、1.1倍です。
       固定資産税評価額は、公示価格の約70%で、これを、1.1倍すると、固定資産税評価額は、公示価格の約80%である相続税評価額に近くなります。
   
     倍率も路線価と同じように国税庁のホームページで確認することができます。

     

     {例}
     固定資産税評価額が1,000万円で倍率が1.1の土地を相続した場合
     相続税評価額は【1,000万円 × 1.1】で1,100万円となる。

  2.建物の評価方法
    建物(家屋)の評価は以下の計算式だけです。

    【固定資産税評価額×1.0】

    「固定資産税評価額」は土地の評価の項目で説明したように、市町村から毎年送られてくる「固定資産税課税明細書」に記載されています。

    {例}
    価格に「2,000万円」と記載されていた場合、相続税評価額は次のようになります。

       【2,000万円×1.0=2,000万円】

       すなわち相続税評価額は2,000万円ということです。

      ただし、相続した建物が賃貸アパートであったり、第三者に貸していたり、あるいは被相続人が亡くなる前にリフォームをしていた場合などは計算式が異なってきます。

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 配偶者居住権について

 ◎建物の評価と配偶者居住権の関係


 令和2年4月1日施行の民法改正で配偶者居住権が創設されました。

 居住権という用語は法令によって定められたものでは無いのですが、その概念は、建物の賃貸借契約において貸主(大家)から不当な立ち退き等が要求された場合(例えば、旧都市整備機構から、強制的に建て替えで、裁判にまでなった「金町団地」の建替え闘争」のような場合)に、今まで住んでいた人がその建物に継続して住むことができる権利です。

 居住権は日本の法体系においては、明確にみとめたものではないのですが、今回の民法改正において「配偶者」という限定ではありますが、居住権が法文化されたのは、全国の賃借人にとって、大家からの不法な立ち退きを迫られた場合に対抗できる道が開かれtました。

 因みに、配偶者居住権とは、夫婦の一方が亡くなった場合に,残された配偶者(妻に限りません)が,亡くなった人が所有していた建物に,亡くなるまで又は一定の期間,無償で居住建物を使用収益することができる権利です。居住建物の敷地も居住建物の使用及び収益に必要な範囲で利用することができます。
 存続期間を定めると、その期間の延長や更新は認められません。

 令和2年4月1日以降に発生した「相続」から新たに認められた権利です。

 建物の価値を「所有権」と「居住権」に分けて考え,残された配偶者は建物の所有権を持っていなくても,一定の要件の下,その建物に住み続けることが出来る権利=居住権を取得することで,亡くなった人が所有していた建物に引き続き住み続けられるようにするものです。 (一身専属権)

   

 不動産の所有権を配偶者が住む権利(居住権)とそれ以外の権利にわけて相続をすることを可能にします。
 配偶者は、現在住んでいる建物にそのまま住み続ける権利(居住権)と残った遺産分割を受け取る権利があり、子供など配偶者以外の相続人は、配偶者居住権がついた自宅の所有権と残った遺産分割の権利を持ちます。

 配偶者が配偶者居住権を第三者に対抗するためには、配偶者居住権の設定登記を要し、建物の賃借権と異なり、居住建物の引渡しは対抗要件とはなりませんから注意してください。

  この配偶者居住権が創設されたことにより、相続において遺された不動産をどうするのか、家には誰が住むのかで揉めることなく円滑に相続手続きを完了できます。
  ですが、デメリットとしては、配偶者居住権がある間は、第三者はこの配偶者居住権を無くすことが出来ないため該当の不動産の売却ができなくなることです。
 配偶者居住権の終了期限は遺産分割協議で決めていない限りは、配偶者が亡くなる(死亡する)まで存続します。
  一身専属権である配偶者居住権の譲渡は出来ませんし、相続の対象にもなりません。。
  もしもその配偶者が病気などで介護が必要になったり、老人ホームに入ることになった場合には、家を売却して費用を捻出することができなくなります。


 *固定資産税はあくまでも、建物の所有者が納付する。
  建物の固定資産税は,建物の所有者が納税義務者とされているため,配偶者居住権が設定されている場合であっても,所有者がこれを納税しなければなりません。
  もっとも,配偶者は,建物の通常の必要費を負担することとされているので,建物の所有者が,固定資産税を納付した場合には,その分を配偶居住権者に対して請求することができます。
  
 
 *配偶者居住権の評価
   残された配偶者が,遺産分割によって,配偶者居住権を取得する場合には,配偶者は,自らの具体的相続分(遺産分割の際の取り分)の中から取得することになります。
 そこで、配偶者居住権の財産的価値を評価する必要があります。
  
  配偶者居住権の財産的価値の評価については,様々な評価方式があります。

  例えば、以下の計算式もあります。

   
  配偶者居住権も相続税の課税対象になります。

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   3.マンションの相続税の評価方法  〜その1〜(改正前)

    
      
   相続をした建物がマンションの場合の評価方法は戸建てと同じで、土地(敷地権)と家屋(専有部分)に分けて行います。

  その計算式は、

  マンション(一室)の相続税評価額(自用の場合)= 敷地(敷地権)の価額 + 区分所有建物の価額

     @敷地(敷地権)の価額= 敷地全体の価額(注1) × 共有持分(敷地権割合)
     A 区分所有建物の価額= 建物の固定資産税評価額(注2) × 1.0
 
    (注1)「敷地全体の価額」は、路線価方式又は倍率方式により評価
    (注2)「建物の固定資産税評価額」は、1棟の建物全体の評価額を専有面積の割合によって按分して各戸の評価額を算定
  

      ア.土地(敷地)の評価方法
        通常マンションなどが建っている場所には、路線価が設定されていますので、路線価方式を説明します。もう1つの、倍率方式(路線価が定められていない地域の土地の評価方法)は、上の説明を見てください。

        敷地の相続税評価額は、路線価とマンション全体の敷地における区分所有する敷地権の割合に基づいて評価されます。
        敷地権の割合は不動産登記簿の全部事項証明書に記載されていますし、一般的にマンション売買契約書でも確認できます。

       マンションの土地の相続税評価額は、次の計算式を用います。

       【路線価×全体の土地の面積×敷地権割合】

   
    例:
      <前提要件>
         1 正面路線価:200千円/u
         2 利用状況:被相続人が居住していたもの(自用地)
         3 面積(地積):17,200.00u
         4 持分割合(敷地権の割合):2,000,000分の7,500

      <評価方法>
         1 マンションの敷地全体の評価を行います。
           200千円×17,200.00u=3,440,000千円
         2 敷地全体評価に敷地権の割合を乗じて区分所有部分の評価を行います。
           3,440,000千円×7,500/2,000,000=12,900千円(評価額)

      イ.家屋(専有部分)の評価方法
        マンションでも戸建てと同様に、家屋部分(専有部分)の相続税評価額は、市町村から送られてくる「固定資産税課税明細書」の「価格」の欄の額がそのまま該当します。
      計算式は次のとおりです。

      【固定資産税評価額×1.0】

     

     たとえば価格欄に「700万円」と記載されていた場合、相続税評価額は次のようになります。

     【700万円×1.0=700万円】

    すなわち家屋部分(専有部分)の相続税評価額は700万円ということです。

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 *タワー・マンションでは、相続時に節税になる?          

  

  マンションの相続税評価額は、実際に市場で取引される価格(実勢価格、時価)に比べて、土地は路線価で評価されるので低くなり、相続税の節税がなされるという考え方です。

 特に土地を高度に利用しているタワー・マンションでは敷地に対して住戸数が多いため、一戸当たりの持分とされる土地の面積(敷地権の割合)が小さくなり土地の相続税評価価額が少なくなります。
 その影響で、タワー・マンションの相続税評価額が時価よりもかなり低くなり(3割程度の話もある)、相続しても再販利益が大きくでるとことです。特に上層階ほど、利益が上がると言われます。

 「価格の高い上層階のマンションが、どうして下層階のマンションと固定資産税が同額なのか」との指摘を受け国税庁は、上で説明したように、固定資産税の課税の見直しを行い、平成29年(2017年)4月以降に売買契約をした高さが60mを超える建築物のうち複数の階に住戸が所在しているいわゆるタワー・マンションは「居住用超高層建築物」に定義され、階によって固定資産税、および都市計画税を区分所有者の有する専有部分の床面積の割合に応じて按分計算する原則的な取扱いに代えて、実際の分譲価格を踏まえた按分方法(床面積当たりの取引単価の変化の傾向を反映するための補正率=「階層別専有床面積補正率」)により計算することとされました。

 これにより、タワー・マンションの階数による固定資産税の極端な差(乖離)は、やや解消されましたが、相続で使用される路線価(相続税路線価=公示価格の80%)は、固定資産税路線価(公示価格の70%)と異なるし、実勢価格を反映していません。

 そこで、タワー・マンションを始めとしてマンション(区分所有建物)の相続税の見直しが検討されて、令和6年(2024年)1月1日から評価が改正されました。

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*居住用の区分所有財産の評価について  〜令和6年(2024年)1月1日以降の相続、遺贈または贈与に適用〜(その2)

 「階層別専有床面積補正率」を採用しても、タワー・マンションの相続税の評価額と実際の価格(時価)との乖離が埋まらないために、国税庁は、令和5年(2023年)9月28日付で、「居住用の区分所有財産の評価について」という通達を出し、近年の区分所有財産の取引実態等を踏まえ、居住用の区分所有財産の評価方法を変更しました。

 その内容は、居住用の区分所有建物(マンション)に対しては、令和6年(2024年)1月1日以後に相続、遺贈又は贈与により取得した財産の評価は、以下のように取り扱うというものです。

 この対象となるのは、居住用の区分所有建物(マンション)で、事業用のテナント・ビルや1棟全体が賃貸とか、居住用区分所有建物でも階数が2階以下は除かれます。

 考え方の概要としては、

  現行の相続税評価額 × 当該マンション一室の評価乖離率 × 最低評価水準0.6(定数)

  
 説明:現行の相続税評価額を前提とした上で、市場価格との乖離要因(説明変数)から乖離率を予測し、その乖離率を現行の相続税評価額に乗じて評価する方法です。

     乖離要因を説明変数とすることから、相続税評価額と市場価格の乖離を補正する方法として直截的であり、乖離要因に基づき補正すれば足りるため執行可能性も高い

     上の式は課税評価額を実質、取引時価の6割とするという意味で、従来、課税評価が実勢価格より低かった新築マンション、タワーマンションの高層階などでは相続税が上がることになります。

 
この考え方を検討して、詳細は以下のようになりました。   

 マンション一室の価額は、次の算式により計算した価額によって評価することとする。 

土地部分   従前の敷地利用権の価額 x  区分所有補正率 
 従前の敷地利用権の価額=路線価を基とした1u当たりの価額 x 地積 =敷地全体の価額 
     x 敷地権の割合(共有持分の割合)
建物部分  従前の区分所有権の価格(家屋の固定資産税評価額) x 区分所有補正率

 新しく登場した区分所有補正率は、
  1 評価乖離率、
  2 評価水準、
  3 区分所有補正率
 の順に、以下のとおり計算します。 

* 「1.評価乖離率」の計算式   
マンション1室の評価乖離率=A + B + C + D + 3.220   
 上記算式中の「A」、「B」、「C」及び「D」は、それぞれ次による
 A 当該一棟の区分所有建物の築年数×△0.033   「築年数」は、当該一棟の区分所有建物の建築の時から課税時期までの期間とし、当該期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とする。 △はマイナスの意味 
 B  当該一棟の区分所有建物の総階数指数×0.239(小数点以下第4位を切り捨てる。)  「総階数指数」は、当該一棟の区分所有建物の総階数を33で除した値(小数点以下第4位を切り捨て、1を超える場合は1とする。)とする。この場合において、総階数には地階を含まない。  
 C  当該一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階×0.018 ・ 当該一室の区分所有権等に係る専有部分が当該一棟の区分所有建物の複数階にまたがる場合(いわゆるメゾネットタイプ)には、階数が低い方の階を「当該一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階」とする。
・当該一室の区分所有権等に係る専有部分が地階である場合には、「当該一室の区分所有権等に係る専有部分の所在階」は、零階とし、Cの値は零とする。
 
 D  当該一室の区分所有権等に係る敷地持分狭小度×△1.195(小数点以下第4位を切り上げる。)  「当該一室の区分所有権等に係る敷地持分狭小度」は、当該一室の区分所有権等に係る敷地利用権の面積を当該一室の区分所有権等に係る専有部分の面積(床面積)で除した値(小数点以下第4位を切り上げる。)とする。  △はマイナスの意味

 そして、 
  2.評価水準 とは  評価水準=1÷評価乖離率 つまり、評価乖離率の逆数 です。

  3.区分所有補正率は、評価乖離率と評価水準を次の表に当てはめて、区分所有補正率を計算します。    

区分   区分所有補正率
 評価水準 < 0.6  評価乖離率 × 0.6
 0.6 ≦ 評価水準 ≦1  補正はありません
(従来の評価額で評価)
 1 < 評価水準  評価乖離率


  ◎計算例
   ステップ 1:従前の価額を算出する
    ア.土地の部分 (登記事項証明書に記載されている)
      
      これを基に、正面の路線価を仮に 500千円/u として計算する。
       ・マンション全体の価額は...地積(面積) x 路線価 で
         3,500.00u x 500千円 = 1,750,000千円
       ・所有者の敷地利権の価額は...マンション全体価額 x 自分の持分(敷地権の割合で)
         1,750,000千円 x 6,300/1,050,000 = 10,500千円 となります。

    イ.建物の部分(家屋部分=区分所有権=専有部分)。これは、市町村から送られてくる課税証明書(固定資産税・都市計画税 納税通知書)に記載されている
       

   単純に、固定資産税評価価額 x 1.0 ですから、
    4,000,000円 x 1.0 = 4,000,000円 が従前の区分所有権の価額です。

  ステップ 2:改正された評価内容に従い、築年数や該当の階数(所在階)などを用いて、

   2−1:評価乖離率を計算する(基礎となるデータは、登記事項証明書に記載されている)

   
   登記事項証明書から分かるのは、
   1 種類:居宅(@)
   2 築年数:27年(A)
     築年数は、Aの建築の時(平成〇年〇月〇日)から課税時期までの期間をいいます。
     ここでは計算の便宜上、築年数を27年と仮定して計算しています。
   3 総階数:11階(B)
   4 所在階:3階(C)
   5 専有部分の面積:60.00u(D)
   6 敷地の面積:3,500.00u(E)
   7 敷地権の割合:1,050,000分の6,300(F)
   8 敷地利用権の面積:21.00u
      (注)敷地利用権の面積は、次により計算します。 
      敷地の面積E x  敷地権の割合F = 3,500.00u x 6,300/1,050,000 = 21.00u   

   ◎評価乖離率の計算
     評価乖離率の計算式は...評価乖離率 = A + B + C + D + 3.220
     A :築年数 x △0.033 = 27年 x △0.033 = △0.891
     B:総階数指数(総階数÷33=0.333) x 0.239 = 0.079
     C:所在階 x 0.018 = 3階 x 0.018 = 0.054 
     D:敷地持分狭小度(敷地利用権の面積 ÷ 床面積) x △1.195
       = 21.00u ÷ 60.00u = 0.350 x △1.195 = △0.419

    から、評価乖離率は、-0.891 + 0.079 + 0.054 -0.419 + 3.220 = 2.043 となる。

  2−2:評価水準は、
      評価水準 = 1 ÷ 2.043 = 0.489476204・・・

  2−3:区分所有補正率においては、下の表を使う。
区分   区分所有補正率
 評価水準 < 0.6  評価乖離率 × 0.6
 0.6 ≦ 評価水準 ≦1  補正はありません
 1 < 評価水準  評価乖離率
      
  評価水準 は、 0.489476204・・ で これは、 < 0.6 なので、上の表から、
   区分所有補正率 = 評価乖離率 × 0.6 = 2.043 x 0.6 = 1.2258 を使うことになる。

  そこで、該当の区分所有の税は、
  従前の価額 x 区分所有補正率 となり、
   従前の価額  x  区分所有補正率    
土地部分(敷地利用権)  10,500,000円  x  1.2258 =   12,870,900円
建物部分(区分所有権)  4,000,000円  x  1.2258   4,903,200円
 合計          17,774,100円

   となる。
 
   この改正された計算式を採用することにより、従前の税額よりも、約327万円増加することになります。

 複雑な計算式や定数がどのような理論から生まれたのか、分かりませんが、築年数や階数を変数として採用したことだけで、単純にタワー・マンション といっても相続税などが実勢価格(時価)とどの程度の乖離になるかは、今後の動向をみる必要がある改正です。

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 *マンションにおける相続税の判例 〜相続税更正処分等取消請求事件〜

  以上、マンションを購入し、保持、売却、相続について説明してきましたが、この説明を始めるきっかけになった、マンションの相続時の節税についての裁判を解説します。

 ・事案のあらまし:
   ・札幌に住む高齢の被相続人が、平成21年に、共に首都圏にある、
     ・甲不動産(東京都杉並区の8階建てマンション1棟)を代金 8億3千700万円(内借入:6億3千万円)で購入した。
     ・乙不動産(神奈川県川崎市にある7階建てマンション1棟)を代金 5億5千万円(内借入:4億2千500万円)で購入した。
    購入の動機...2不動産とも購入・借入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続において相続人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて企画して実行したものである。
   そして、94歳の被相続人が平成24年6月17日に死亡して、相続が発生した。
 
   本件で購入・借入れがなかったとすれば、相続に係る相続税の課税価格の合計額は6億円を超えるものであった。

       なお、乙不動産は、5億1,500万円で第三者に売却されている。


  相続人が国税庁の定める「財産評価基本通達(評価通達)」の路線価による方法で、各物件を評価した。
   甲不動産...合計2億4万1474円
   乙不動産...合計1億3千366万4767円  合計 3億33706241円

<参考> 国税庁の「財産評価基本通達(評価通達)」

(評価の原則)
1 財産の評価については、次による。(平3課評2−4外改正)

(1) 評価単位
 財産の価額は、第2章以下に定める評価単位ごとに評価する。

(2) 時価の意義
 財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(相続、遺贈若しくは贈与により財産を取得した日若しくは相続税法の規定により相続、遺贈若しくは贈与により取得したものとみなされた財産のその取得の日又は地価税法第2条《定義》第4号に規定する課税時期をいう。以下同じ。)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。

(3) 財産の評価
 財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮する。

---------------------------------------------------------------------
(この通達の定めにより難い場合の評価)

6 この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。

   相続人は、平成25年3月11日;札幌南税務署長に対し、本件各通達評価額を記載した相続税の申告書を提出した。
   上記申告書においては、課税価格の合計額は2千826万1000円とされ、借入額も相続して基礎控除の結果、相続税の総額は0円とされていた。

  そこで、札幌南国税局長は、国税局長官に問い合わせて、平成28年3月10日 以下の回答を得た。
  内容:本件各不動産の価額につき、評価通達6項により、評価通達の定める方法によらずに他の合理的な方法によって評価すること

  札幌南税務署長:平成28年4月27日付、不動産鑑定士が不動産鑑定評価基準により本件相続の開始時における本件各不動産の正常価格として算定した鑑定評価額に基づき、
   ・甲不動産の価額が合計7億5400万円、
   ・乙不動産の価額が合計5億1900万円  
   であることを前提とする各更正処分として、相続に係る課税価格の合計額を8億8874万9000円、相続税の総額を2億4049万8600円とする各賦課決定処分をした

  以上の経緯をまとめると以下のようになります。 

  購入代金  借入額   相続人の課税評価額(評価通達による路線価方式を採用) 相続人の課税価額  控除後の相続税  札幌南税務署の鑑定評価額(不動産鑑定士による)  札幌南税務署の課税価額  札幌南税務署の課税価額 
甲不動産   8億3,700万円  6億3,000万円  2億4万1,474円      7億5,400万円    
乙不動産   5億5,000万円  4億2,500万円(共同相続人からのも含む)  1億3,366万4,767円  5億1,900万円
合計  13億8,700万円    3億3,370万6,241円  2,826万1,000円  0円  12億7,300万円  8億8,874万9,000円  2億4,049万8,600円

  注:相続人の課税評価額 3億3,370万6,241円 に対して 税務署の 課税評価額の 8億8,874万9,000円 差額 5億5,504万2,759円 と差額が大きすぎる。

 そこで、札幌南税務署は、相続人に対して、約3億3千万円の追徴課税を行った。

 ●この処分を不当として、相続人が提訴。
   提訴の理由: 財産評基本価通達(評価通)に従って価額を評価し、相続税を申告したが、札幌南税務署から当該不動産の価額は評価通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められるから別途実施した鑑定による評価額をもって評価すべきであるとして、それぞれ更正処分及び過少申告加算税の賦課決定処分を受けたため、税務署を相手に、これらの取消しを求める。相続税法22条等の法令の解釈適用を誤った違法性がある。


  第一審の東京地裁の判決:令和元年8月27日の判決:及び第二審の東京高裁の判決:令和2年6月24日もほぼ同様。相続人は、敗訴した。

  判決内容:
  本件各不動産の価額については、評価通達の定める方法により評価すると実質的な租税負担の公平を著しく害し不当な結果を招来すると認められるから、特別の事情があり他の合理的な方法によって評価することが許されると判断した上で、本件各鑑定評価額は本件各不動産の客観的な交換価値としての時価であると認められるからこれを基礎とする本件各更正処分は租税法22条で定める時価の算定方法として適法であり、これを前提とする本件各賦課決定処分も適法であるとした。

  <参照> 相続税法 第22条

  第三章 財産の評価

(評価の原則)
第二十二条 この章で特別の定めのあるものを除くほか、相続、遺贈又は贈与により取得した財産の価額は、当該財産の取得の時における時価により、当該財産の価額から控除すべき債務の金額は、その時の現況による

 <参考>国税庁 法令解釈通達

 第1章 総則
(評価の原則)
1 財産の評価については、次による。(平3課評2−4外改正)
(1) 評価単位
 財産の価額は、第2章以下に定める評価単位ごとに評価する。

(2) 時価の意義
 財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期(相続、遺贈若しくは贈与により財産を取得した日若しくは相続税法の規定により相続、遺贈若しくは贈与により取得したものとみなされた財産のその取得の日又は地価税法第2条《定義》第4号に規定する課税時期をいう。以下同じ。)において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。

(3) 財産の評価
 財産の評価に当たっては、その財産の価額に影響を及ぼすべきすべての事情を考慮する。

 (区分所有財産)
3 区分所有に係る財産の各部分の価額は、この通達の定めによって評価したその財産の価額を基とし、各部分の使用収益等の状況を勘案して計算した各部分に対応する価額によって評価する。

---------------------------------------------------------------------
 これに対する、最高裁判所:令和4年4月19日の判決は、

 裁判要旨

1 相続税の課税価格に算入される財産の価額について、財産評価基本通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、当該財産の価額を上記通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは租税法上の一般原則としての平等原則に違反しない。

2 相続税の課税価格に算入される不動産の価額を財産評価基本通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、次の(1)、(2)など判示の事情の下においては、租税法上の一般原則としての平等原則に違反しない。

 (1)当該不動産は、被相続人が購入資金を借り入れた上で購入したものであるところ、上記の購入及び借入れが行われなければ被相続人の相続に係る課税価格の合計額は6億円を超えるものであったにもかかわらず、これが行われたことにより、当該不動産の価額を上記通達の定める方法により評価すると、課税価格の合計額は2826万1000円にとどまり、基礎控除の結果、相続税の総額が0円になる。

  (2)被相続人及び共同相続人であるXらは、上記(1)の購入及び借入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続においてXらの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて当該購入及び借入れを企画して実行した。

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 判決の原文:

 令和2年(行ヒ)第283号 相続税更正処分等取消請求事件
令和4年4月19日 第三小法廷判決

主 文
 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人らの負担とする。

理由の一部


(1) 相続税法22条は、相続等により取得した財産の価額を当該財産の取得の時における時価によるとするが、ここにいう時価とは当該財産の客観的な交換価値をいうものと解される。
 そして、評価通達は、上記の意味における時価の評価方法を定めたものであるが、上級行政機関が下級行政機関の職務権限の行使を指揮するために発した通達にすぎず、これが国民に対し直接の法的効力を有するというべき根拠は見当たらない。
 そうすると、相続税の課税価格に算入される財産の価額は、当該財産の取得の時における客観的な交換価値としての時価を上回らない限り、同条に違反するものではなく、このことは、当該価額が評価通達の定める方法により評価した価額を上回るか否かによって左右されないというべきである。
 そうであるところ、本件各更正処分に係る課税価格に算入された本件各鑑定評価額は、本件各不動産の客観的な交換価値としての時価であると認められるというのであるから、これが本件各通達評価額を上回るからといって、相続税法22条に違反するものということはできない。

 (2)
 ア 他方、租税法上の一般原則としての平等原則は、租税法の適用に関し、同様の状況にあるものは同様に取り扱われることを要求するものと解される。
  そして、評価通達は相続財産の価額の評価の一般的な方法を定めたものであり、課税庁がこれに従って画一的に評価を行っていることは公知の事実であるから、課税庁が、特定の者の相続財産の価額についてのみ評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることは、たとえ当該価額が客観的な交換価値としての時価を上回らないとしても、合理的な理由がない限り、上記の平等原則に違反するものとして違法というべきである。
  もっとも、上記に述べたところに照らせば、相続税の課税価格に算入される財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反するというべき事情がある場合には、合理的な理由があると認められるから、当該財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが上記の平等原則に違反するものではないと解するのが相当である。

 イ これを本件各不動産についてみると、本件各通達評価額と本件各鑑定評価額との間には大きなかい離があるということができるものの、このことをもって上記事情があるということはできない。
  もっとも、本件購入・借入れが行われなければ本件相続に係る課税価格の合計額は6億円を超えるものであったにもかかわらず、これが行われたことにより、本件各不動産の価額を評価通達の定める方法により評価すると、課税価格の合計額は2826万1000円にとどまり、基礎控除の結果、相続税の総額が0円になるというのであるから、上告人らの相続税の負担は著しく軽減されることになるというべきである。
  そして、被相続人及び上告人らは、本件購入・借入れが近い将来発生することが予想される被相続人からの相続において上告人らの相続税の負担を減じ又は免れさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて本件購入・借入れを企画して実行したというのであるから、租税負担の軽減をも意図してこれを行ったものといえる。
  そうすると、本件各不動産の価額について評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことは、本件購入・借入れのような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と上告人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべきであるから、上記事情があるものということができる。

  ウ したがって、本件各不動産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることが上記の平等原則に違反するということはできない。

5 以上によれば、本件各更正処分において、札幌南税務署長が本件相続に係る相続税の課税価格に算入される本件各不動産の価額を本件各鑑定評価額に基づき評価したことは、適法というべきである。

 所論の点に関する原審の判断は、以上の趣旨をいうものとして是認することができる。論旨は採用することができない。
よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 長嶺安政 、裁判官 戸倉三郎 、裁判官 宇賀克也 、裁判官 林 道晴 、裁判官 渡 惠理子)


*この判決のまとめ 〜結局、マンションでは、節税になる!?〜

  この判決の前までは、遺産での時価の判定は、評価通達に従って、「路線価方式」により、多くの場合特別の事情はあまり考慮しない画一的なパターンで行ってきたが、この事案のように相続税の課税価格の評価に「特別の事情」があれば、それを考慮して「鑑定評価額」を採用することは、平等の原則に反しないと判断されたことです。
 しかし、この事案は、たまたま、マンションを2棟も相続したのに、払う税金が 0円 となっていたために、税務署内で問題として取り上げられたと推測します。

 いくらかでも税金を払うようになっていれば、税務署内でもおかしいとは思っていても、そのまま受理されたと思います。

 判決でいうように、(相続税)路線価で評価しないで、不動産鑑定士にお金を払ってまでもその物件の評価をする相続人なんて、普通いないでしょう。

  税務署が路線価を設定しているのは、物件を公平に、また一律に評価するのが目的であり、相続される物件ごとに金をかけけて時価を鑑定するなら、路線価なんて不要でこれを設定する作業は、税金の無駄遣いです。

 本件だけの問題でなく、マンション(特にタワー・マンション)では、基本的に現行の相続税のやり方では、実勢価格を反映出来ないために、節税はできます。

 相続税法だけの問題でなく、今までの戸建てを基本としてきた日本の法体系全体が見直されないと根本的な解決にはなりません。
 マンション管理士の私が関係している「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」における「共有関係の見直し」も含めて、新しい居住建物=マンション に対応した 法体系を早急に整備する必要を感じます。

 今回の最高裁判所の判断の「特別の事情」が、建物の購入目的が最初から租税負担の軽減を目的としていただけでは、かなり例示としては足りないと思います。


<参考資料>
〇東京地裁判決 平成29年(行ウ)第539号 相続税更正処分等取消請求事件
        (令和元年8月27日判決)
〇東京高裁判決 令和元年(行コ)第239号 相続税更正処分等取消請求事件
        (令和2年6月24日判決)
〇最高裁判決  令和2年(行ヒ)第283号 相続税更正処分等取消請求事件
        (令和4年4月19日判決)


 区分所有法第38条1項の解説に戻ります。


◎専有部分の床面積を議決権の割合とすること → 規約で計算の易しい数値に変えていい(こちらが原則)

 建物の専有部分の床面積を議決権の割合にすることは、財産の持分に応じた議決権である点で区分所有法や民法の趣旨に添うものです。

 議決権の割合の原則である「その有する専有部分の床面積の割合」による決め方は法の趣旨にはあっていても、専有部分の床面積(u)に応じて明確に示すと、多くの場合、専有部分の床面積は100uとか150uなどの整数ではありませんから、各戸の議決権が123.45等の4桁から5桁の数値となりますし、且つ議決権合計も相当大きな数値にならざるを得ません。
 集会での決議に際し、大きな数値を集計したり、過半数や3/4以上を求めることは、議決権の計算が実務において、大変に面倒です。

 区分所有法での議決権の役目は、議決の際に必要な多数が確保されているか、とか、少数招集権に必要な議決権総数の1/5以上は満足しているか等を判断する一定の割合としての指標ですから、割合が表されていれば床面積の値に完全に一致しなくてもいい性質のものです。

 従って、議決権総数を  1,000 や  10,000 等の数えやすい数値にして各戸の持分を換算した議決権とするのが実際の集会(総会)運営の便宜に適うでしょう。


 そこで、本第38条では、まず規約で議決権を定めることの方を優先し、規約がなければ、その有する専有部分の床面積の割合にしています。

◎規約での議決権の設定は、公正であること

 「規約で別段の定めが限り」の規定は専有部分の床面積という持分によらない議決権の設定を許容していますから、上記の議決権の総数が 1,000 や  10,000 等の数値がまだ大きいと感じられる場合には、100 または 1,000 数値にするために各戸の議決権を四捨五入等により丸めることも可能です。

 各戸の議決権を四捨五入したり、10位以下切り捨てなどをする場合、専有部分の床面積の大小により本来あるべき権利の割合に比べ多少の不公平は生じますが、実際上の権利行使の効果は殆んど変わりがないでしょうから、その不利益と議決権計算の便宜の利益を比較すると議決権計算の便宜の利益が勝り適法な定めといえるでしょう。

◎この「規約で別段の定めが限り」という点において、議決権計算の便宜のため、専有部分(持分)の床面積の多少に関わらず 「 1戸=1議決権 」 という定めも本条が許容しているとの考えもありますが、1戸=1議決権は同じような床面積の住戸の集合体の場合には計算の便宜の利益の優越という理由から認められても、議決権の本体は所有権の持つ所有物の自由な管理・使用・処分権能ですから、本来は持分の多少に比例して表現されるのが当然であり、このような所有権の割合を極端に無視したやりかたは区分所有法や民法の趣旨に添う方法ではありません。

 そこで、専有部分の床面積が2倍も違うような場合に 各戸が、 1戸=1議決権 では実質的に少ない床面積の人が、大きい床面積の人の倍も投票権を持つような結果ともなり公正とはいえません。
 このような場合は、本来あるべき持分比での議決権の場合と比べて、不適切な規約として無効になることがありますので注意してください。(参考判例:平成2年7月24日:東京地裁平成13年10月16日:京都地裁

★議決権の表示
 議決権は原則として、建物の専有部分の床面積の割合と同様な数値になりますから、その総数が全専有面積の合計値になります。

 例えば、Aとして 99.68uの建物と、Bとして 76.88uの建物の2個の区分建物の場合には議決権総数は A+B (99.68+76.88=)176.56 (100%、小数点を嫌い、100倍にして整数値に直すことが多いようです。)、個々の専有部分の議決権はその面積分の数値がその値となりますのでAの議決権は 99.68(56.46%)となりBの議決権は 76.88(43.54%)となります。
 なお、この場合に計算の便宜のため数値を四捨五入する等により整数値とする場合には、

  例えば、議決権総数 176.56 を100 とすると、Aの議決権は 99.68/176.56x100 = 56 

  となりBの議決権は 76.88/176.56x100= 44 となります。

 標準管理規約(単棟型)では、議決権割合は、具体的には示さず、各マンションの実情に合わせた設定ができるように、○○としています。(別表第5参照)

<参考>標準管理規約(単棟型) 46条(議決権)

第46条 各組合員の議決権の割合は、別表第5に掲げるとおりとする。

2 住戸1戸が数人の共有に属する場合、その議決権行使については、これら共有者をあわせて一の組合員とみなす。

3 前項により一の組合員とみなされる者は、議決権を行使する者1名を選任し、その者の氏名をあらかじめ総会開会までに理事長に届け出なければ ならない。

4 組合員は、書面又は代理人によって議決権を行使することができる

5 組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、以下の各号に掲げる者でなければならない。
    一 その組合員の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)又は一親等の親族
   二 その組合員の住戸に同居する親族
   三 他の組合員

  (注:平成23年の改正では、削除された、同居人が、平成28年の改正では、同居する親族として復活している。)

6 組合員又は代理人は、代理権を証する書面を理事長に提出しなければならない。

〔※管理組合における電磁的方法の利用状況に応じて、次のように規定〕

*(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合
  (規定なし)

*(イ)電磁的方法が利用可能な場合
7 組合員は、第4項の書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法によ って議決権を行使することができる。

8 組合員又は代理人は、第6項の書面の提出に代えて、電磁的方法によって提出することができる。

 別表第5 議決権割合
住戸番号 議決権割合 住戸番号 議決権割合
○○号室 ○○○分の○○ ○○号室 ○○○分の○○
○○号室 ○○○分の○○ ○○号室 ○○○分の○○
○○号室 ○○○分の○○ ○○号室 ○○○分の○○
合計 ○○○分の○○○

 

<参考>「標準管理規約(単棟型) 第46条関係コメント 

@ 議決権については、共用部分の共有持分の割合、あるいはそれを基礎としつつ賛否を算定しやすい数字に直した割合によることが適当である。

A 各住戸の面積があまり異ならない場合は、住戸1戸につき各1個の議決権により対応することも可能である。
 また、住戸の数を基準とする議決権と専有面積を基準とする議決権を併用することにより対応することも可能である。

B @やAの方法による議決権割合の設定は、各住戸が比較的均質である場合には妥当であるものの、高層階と低層階での眺望等の違いにより住戸の価値に大きな差が出る場合もあることのほか、民法第252条本文が共有物の管理に関する事項につき各共有者の持分の価格の過半数で決すると規定していることに照らして、新たに建てられるマンションの議決権割合について、より適合的な選択肢を示す必要があると考えられる。これにより、特に、大規模な改修や建替え等を行う旨を決定する場合、建替え前のマンションの専有部分の価値等を考慮して建替え後の再建マンションの専有部分を配分する場合等における合意形成の円滑化が期待できるといった考え方もある。
 このため、住戸の価値に大きな差がある場合においては、単に共用部分の共有持分の割合によるのではなく、専有部分の階数(眺望、日照等)、方角(日照等)等を考慮した価値の違いに基づく価値割合を基礎として、議決権の割合を定めることも考えられる。
 この価値割合とは、専有部分の大きさ及び立地(階数・方角等)等を考慮した効用の違いに基づく議決権割合を設定するものであり、住戸内の内装や備付けの設備等住戸内の豪華さ等も加味したものではないことに留意する。
 また、この価値は、必ずしも各戸の実際の販売価格に比例するものではなく、全戸の販売価格が決まっていなくても、各戸の階数・方角(眺望、日照等)などにより、別途基準となる価値を設定し、その価値を基にした議決権割合を新築当初に設定することが想定される。ただし、前方に建物が建築されたことによる眺望の変化等の各住戸の価値に影響を及ぼすような事後的な変化があったとしても、それによる議決権割合の見直しは原則として行わないものとする。
 なお、このような価値割合による議決権割合を設定する場合には、分譲契約等によって定まる敷地等の共有持分についても、価値割合に連動させることが考えられる。

C 特定の者について利害関係が及ぶような事項を決議する場合には、その特定の少数者の意見が反映されるよう留意する。

D 総会は管理組合の最高の意思決定機関であることを踏まえると、代理人は、区分所有者としての組合員の意思が総会に適切に反映されるよう、区分所有者の立場から見て利害関係が一致すると考えられる者に限定することが望ましい。第5項は、この観点から、組合員が代理人によって議決権を行使する場合の代理人の範囲について規約に定めることとした場合の規定例である。また、総会の円滑な運営を図る観点から、代理人の欠格事由として暴力団員等を規約に定めておくことも考えられる。なお、成年後見人、財産管理人等の組合員の法定代理人については、法律上本人に代わって行為を行うことが予定されている者であり、当然に議決権の代理行使をする者の範囲に含まれる。

E 書面による議決権の行使とは、総会には出席しないで、総会の開催前に各議案ごとの賛否を記載した書面(いわゆる「議決権行使書」)を総会の招集者に提出することである。他方、代理人による議決権の行使とは、代理権を証する書面(いわゆる「委任状」。電磁的方法による提出が利用可能な場合は、電磁的方法を含む。)によって、組合員本人から授権を受けた代理人が総会に出席して議決権を行使することである。
 このように、議決権行使書と委任状は、いずれも組合員本人が総会に出席せずに議決権の行使をする方法であるが、議決権行使書による場合は組合員自らが主体的に賛否の意思決定をするのに対し、委任状による場合は賛否の意思決定を代理人に委ねるという点で性格が大きく異なるものである。そもそも総会が管理組合の最高の意思決定機関であることを考えると、組合員本人が自ら出席して、議場での説明や議論を踏まえて議案の賛否を直接意思表示することが望ましいのはもちろんである。しかし、やむを得ず総会に出席できない場合であっても、組合員の意思を総会に直接反映させる観点からは、議決権行使書によって組合員本人が自ら賛否の意思表示 をすることが望ましく、そのためには、総会の招集の通知において議案の内容があらかじめなるべく明確に示されることが重要であることに留意が必要である。

F 代理人による議決権の行使として、誰を代理人とするかの記載のない委任状(いわゆる「白紙委任状」)が提出された場合には、当該委任状の効力や議決権行使上の取扱いについてトラブルとなる場合があるため、そのようなトラブルを防止する観点から、例えば、委任状の様式等において、委任状を用いる場合には誰を代理人とするかについて主体的に決定することが必要であること、適当な代理人がいない場合には代理人欄を空欄とせず議決権行使書によって自ら賛否の意思表示をすることが必要であること等について記載しておくことが考えられる。

G WEB会議システム等を用いて総会に出席している組合員が議決権を行使する場合の取扱いは、WEB会議システム等を用いずに総会に出席している組合員が議決権を行使する場合と同様であり、区分所有法第39条第3項に規定する規約の定めや集会の決議は不要である。ただし、第三者が組合員になりすました場合やサイバー攻撃や大規模障害等による通信手段の不具合が発生した場合等には、総会の決議が無効となるおそれがあるなどの課題に留意する必要がある。


注:最近のいわゆる、タワー・マンションの出現により、超高層階と低層階との床面積が同一でも、分譲価格の差が激しい場合を想定しているが、価格で議決権の割合を決めるのは、現実問題として多くの人が納得できる基準をどう設定するのか、むつかしいものがある。

★ 議決権...規約が無ければ、建物の専有部分の床面積の割合(規約で別段の定め可)

<参照> 第14条:各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による。

         ◎ 議決権が 1戸=1議決権なら

            1人で同じ面積の室を2つ持っていれば、議決権は2倍になる。

             区分所有者の数=1

               議決権の数=2

         ◎ 共有者:区分所有者の数=1

               議決権の数=1

 

<参照> 区分所有法 第40条:

  専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない。



{設問-1} 甲マンションの現況は、ア〜ウのとおりである。甲マンション管理組合の管理者が、集会の開催に当たり、議決権の対象となる戸数の総数及び自己の名義で議決権を行使することができる者に関して行った次の説明のうち、区分所有法、民法及び民事執行法の規定によれば、正しいものはどれか。

ア 甲マンションは、全戸の分譲開始から1年足らずであるが、一部が売れ残り、販売を継続中である。
イ 103号室の区分所有者Aは、所在不明で、財産の管理人も置かれず、Aの債権者Cが時々外部から同室の点検を行っている。
ウ 201号室の区分所有者Bは、第三者のために同室に抵当権を設定し、差押えを受けている。

1 議決権の対象となる戸数の総数は、全戸数ですが、規約で販売済みの戸数とすることもできます。いずれの場合にも、Aが集会に出席をすれば、議決権を行使することができることは当然です。

答え:誤りである。

 議決権は区分所有者の権利であり、区分所有法第38条によれば、議決権の割合は規約で別段の定めが出来るが、規約でも、売れ残りの戸数の議決権を失わせることはできない。誤りである。この売れ残りの議決権は、販売会社がもっている。なお、所在不明のAが集会に出てくれば、当然に自己の議決権を行使できる。

2 議決権の対象となる戸数の総数は、全戸数ですが、集会の決議で販売済みの戸数とすることもできます。集会の決議が行われた場合には、Cは議決権を行使することができますが、差押えを受けているBは、議決権を行使することはできません。

答え:誤りである。 
 議決権は区分所有者の権利であり、たとえ集会の決議でも、規約でも、売れ残り分の議決権を失わせることはできない。また、区分所有者ではない債権者のCは議決権を行使することができない。なお、差押えを受けていても区分所有者であるBは、議決権の行使はできる。

3 議決権の対象となる戸数の総数には、所在不明のAの分は含まれません。また、差押えを受けているBが議決権を行使するには、裁判所の許可が必要です

答え:誤りである。
 所在不明でも区分所有者である限りAにも議決権はある。所在不明者を議決権数から除く規定はない。また、差押えを受けていても区分所有者のBは、裁判所の許可がなくても議決権の行使はできる。

4 議決権の対象となる戸数の総数は、全戸数ですから、Aが所在不明でも、その分を集会の決議で除くことはできず、Bも議決権を行使することができます。Cは、議決権を行使することはできません。

答え:正しい。
 所在不明のAも、差押えのBも専有部分の法的権利の処分に制約は受けるが、区分所有法での集会での議決権行使には制約は受けない。Cは債権者であるだけで、区分所有者ではないので議決権はない。

正解:4


{設問-2}次の記述は正しいか。ただし、規約での別段の定めはないものとする。

* 各住戸の専有部分の床面積は異なりますが、各住戸の議決権は、それぞれ1個となりますので、ご承知おきください。

答え:間違いである。
 「各住戸の専有部分の床面積は異なりますが、各住戸の議決権は、それぞれ1個となり ます」というのは、規約が無い以上、区分所有法第38条「専有部分の床面積の割合による」べきで承知できない。(規約があれば可能だけど)。


{設問-3}平成29年 マンション管理士試験 「問28」

〔問 28〕 議決権に関連する次の記述のうち、標準管理規約によれば、適切なものはいくつあるか。

ア 専有部分の価値の違いに基づく価値割合を基礎とした議決権割合を定める場合には、分譲契約等によって定まる敷地等の共有持分についても、価値割合に連動させることができる。


〇 適切である。 
 最近のタワー・マンションの出現で、上層階と下層階で分譲価格に極端な差がある場合などでは、議決権の割合も、分譲価格に比例することも検討したらいい。

 平成28年での改正点。

 マンションでの基本的な議決権の決め方は、区分所有法第38条
 「(議決権)
 第三十八条 各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合による。」
 とあり、
 規約が優先し、規約が無ければ区分所有法第14条で定める「専有部分の床面積の割合」となります。

 そこで、標準管理規約での議決権は、標準管理規約 46条
 「(議決権)
 第46条 各組合員の議決権の割合は、別表第5に掲げるとおりとする。
2 住戸1戸が数人の共有に属する場合、その議決権行使については、これ ら共有者をあわせて一の組合員とみなす。
3 前項により一の組合員とみなされる者は、議決権を行使する者1名を選任し、その者の氏名をあらかじめ総会開会までに理事長に届け出なければ ならない。
4 組合員は、書面又は代理人によって議決権を行使することができる。
5 組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代 理人は、以下の各号に掲げる者でなければならない。
   一 その組合員の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同 様の事情にある者を含む。)又は一親等の親族
   二 その組合員の住戸に同居する親族
   三 他の組合員
6 組合員又は代理人は、代理権を証する書面を理事長に提出しなければな らない。」
 とあり、
 議決権の割合は、標準管理規約 46条1項にありますように、今までは、基本とされる「専有部分の床面積」を元に別表で、決めていいことになっています。
ここにおいては、眺望や日当たりのいい南向き、角部屋、利便性など分譲時の価格に反映される条件は考慮されていませんでした。

 しかし、最近の超高層マンション(タワー・マンション、だいたい20階(60m)以上)の出現により、同じ床面積でありながら、東京23区では最上階の分譲価格が1階と比べて4倍、時には10倍にも及ぶという現状があります。
 そこで、上層階の居住者から、こんなに高い金額を払って購入したのに、マンションの総会における議決権が下層階の居住者と同じというのでは、不公平だという声が、多くなってきています。
 今までの床面積で議決権の割合を決めているのは、納得がいかないという、当然な不満です。

 このような、状況なら、議決権の割合も、価格も考慮した内容にすべきです。
 そこで、具体的には業者が決めた分譲価格を元にするのも一案ですが、業者が決めた分譲価格には、売れなければ、当初の分譲価格を下げるなど、かなり業者の思惑(恣意)が入っているため、客観性の面では、疑問があります。分譲価格に極端な差があるマンションでの議決権の割合を決めるには、慎重さが求められます。
 
 それらを前提に、設問の標準管理規約の世界に戻りますと、平成28年の改正時に、国土交通省の役人も分譲価格差に気が付いていて、標準管理規約 46条 コメントB
 「B  @やAの方法による議決権割合の設定は、各住戸が比較的均質である場合には妥当であるものの、高層階と低層階での眺望等の違いにより住戸の価値に大きな差が出る場合もあることのほか、民法第252条本文が共有物の管理に関する事項につき各共有者の持分の価格の過半数で決すると規定していることに照らして、新たに建てられるマンションの議決権割合について、より適合的な選択肢を示す必要があると考えられる。
 これにより、 特に、大規模な改修や建替え等を行う旨を決定する場合、建替え前のマンションの専有部分の価値等を考慮して建替え後の再建マンションの専有部分を配分する場合等における合意形成の円滑化が期待できるといった考え方もある。

 このため、住戸の価値に大きな差がある場合においては、単に共用部分の共有持分の割合によるのではなく、専有部分の階数(眺望、日照等)、方角(日照等)等を考慮した価値の違いに基づく価値割合を基礎として、議決権の割合を定めることも考えられる。
 この価値割合とは、専有部分の大きさ及び立地(階数・方角等)等を考慮した効用の違いに基づく議決権割合を設定するものであり、住戸内の内装や備付けの設備等住戸内の豪華さ等も加味したものではないことに留意する。
 また、この価値は、必ずしも各戸の実際の販売価格に比例するものではなく、全戸の販売価格が決まっていなくても、各戸の階数・方角(眺望、 日照等)などにより、別途基準となる価値を設定し、その価値を基にした 議決権割合を新築当初に設定することが想定される。
 ただし、前方に建物 が建築されたことによる眺望の変化等の各住戸の価値に影響を及ぼすよう な事後的な変化があったとしても、それによる議決権割合の見直しは原則 として行わないものとする。
 なお、このような価値割合による議決権割合を設定する場合には、分譲契約等によって定まる敷地等の共有持分についても、価値割合に連動させることが考えられる。」
 の記述があります。

 そこで、この標準管理規約 46条 コメントBによりますと、「このような価値割合による議決権割合を設定する場合には、分譲契約等によって定まる敷地等の共有持分についても、価値割合に連動させることが考えられる」とあり、
 専有部分の価値の違いに基づく価値割合を基礎とした議決権割合を定める場合には、分譲契約等によって定まる敷地等の共有持分についても、価値割合に連動させることができるは、まあ適切です。

 具体的に「分譲契約等によって定まる敷地等の共有持分についても、価値割合に連動させることができる」とまで言い切れるかは、具体的に実行の段階において、どうするのか、かなり疑問がありますが、これを適切とするのは、あくまでも標準管理規約での話です。


イ 専有部分の価値の違いに基づく価値割合を基礎とした議決権割合を定める場合において、事後的にマンションの前方に建物が建築され、眺望の変化等により価値割合に影響を及ぼす変化があったときは、議決権割合の見直しを行う必要がある。

X 適切でない。 
 標準管理規約のコメントでは、事後の変化では、議決権割合の見直しは原則 として行わないとなっている。

 設問も、選択肢アで引用しました、標準管理規約 46条 コメントB
 「ただし、前方に建物 が建築されたことによる眺望の変化等の各住戸の価値に影響を及ぼすよう な事後的な変化があったとしても、それによる議決権割合の見直しは原則 として行わないものとする。 」
 とあり、
 専有部分の価値の違いに基づく価値割合を基礎とした議決権割合を定める場合において、事後的にマンションの前方に建物が建築され、眺望の変化等により価値割合に影響を及ぼす変化があったときは、議決権割合の見直しを行う必要があるは、適切ではありません。

 しかし、現実問題として、事後に他の建築物が建てられて、分譲当初に価格に反映されていた優れた眺望、日照などが無くなり、転売時には、分譲当初の価格より、半分以下の価値しかなくなった時には、どうしますか?


ウ 組合員が代理人によって議決権を行使する場合において、その組合員の住居に同居する親族を代理人として定めるときは、二親等の親族を代理人とすることができる。

〇 適切である。 同居なら親族でいい。親等は問わない。
 平成28年の改正点。

 代理人による議決権の行使は、選択肢アで引用しました、標準管理規約 46条5項、
 「5 組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、以下の各号に掲げる者でなければならない。
   一 その組合員の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同 様の事情にある者を含む。)又は一親等の親族
   二 その組合員の住戸に同居する親族
   三 他の組合員 」
 とあり、
 標準管理規約 46条5項1号によれば、代理人は、「その組合員の住戸に同居する親族」であればよく、 親組合員が代理人によって議決権を行使する場合において、その組合員の住居に同居する親族を代理人として定めるときは、二親等の親族を代理人とすることができるは、適切です。

 どうして、代理人の資格で、標準管理規約が「親等」を持ち出すのか、意味が分かりませんが。


エ 組合員が代理人によって議決権を行使する場合において、他の組合員を代理人として定めるときは、当該マンションに居住する他の組合員の中から定めなければならない。

X 適切でない。 居住していない組合員でもいい。

 他の組合員を代理人として定めるなら、選択肢アで引用しました、標準管理規約 46条5項3号
 「5 組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、以下の各号に掲げる者でなければならない。
    三 他の組合員 」
 とあり、
 他の組合員であれば可能ですから、組合員が代理人によって議決権を行使する場合において、他の組合員を代理人として定めるときは、当該マンションに居住する他の組合員の中から定めなければならないは、適切ではありません。


1 一つ
2 二つ
3 三つ
4 四つ


答え:2 (適切なものは 、ア と ウ の2つ

 標準管理規約46条(議決権)は、平成23年にも改正があり、また平成28年にも改正があったという、基本があやふやな規定です。

  しかも、そのコメントから、安易に出題をする姿勢は、適切ではありません。

《タグ》標準管理規約 議決権 分譲の価格差 代理人 親等 組合員

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(議事)

第三十九条

1項  集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。

過去出題 マンション管理士 H27年、H24年、H21年、H16年、
管理業務主任者 R04年、H30年、H27年、H26年、H18年、

区分所有者 及び 議決権の各過半数で決する...決議は、原則として、
      @区分所有者数 と 
      A議決権 
     の両方において、過半数:半数(50%)を越えなければならない。(どちらか片方だけを、満足しても決まらない)
    半数が 10 なら、過半数は 11 となる。(注:以上と過半数は違う!)
    「普通決議」と呼ばれる。ただし、区分所有法で許している場合は規約で別に決めてもいい。   

★議事での議決の原則
 本第39条は議決の要件に関する規定です。

 1項により、集会の議事は、原則として、区分所有者及び議決権の各過半数で決するものとされます。
 区分所有者及び議決権の各過半数と、「区分所有者数」と「議決権数」を併用するのは、他の規定と同様に、建物や敷地等の管理と使用について、区分所有者各自の意見の尊重と、共有財産(これが、議決権として反映されています)での持分の価格割合に従うという
民法(第252条)との折衷に寄るものです。
 従って、区分所有法の各条項で「集会の議決による」とされている事項、例えば第7条の先取特権での「他の区分所有者に対して有する債権」、第18条1項の「共用部分の管理」など、その他については原則として「区分所有者及び議決権の各過半数」で可決成立することになります。

例外1〜区分所有法の規定〜
 区分所有者及び議決権の各過半数で決する事の例外が、@区分所有法 又は A規約 に別段の定めがある場合です。

 @このうちの「この法律に別段の定めがある場合」とは、区分所有法の各条項に本条が定める原則の区分所有者及び議決権の各過半数という要件を変更・修正する特別の定めがある場合です。
 例えば、第17条の「共用部分の重大変更」や第31条の「規約の設定・変更および廃止」など「
特別決議事項」とされる項目や「建替え」のような特殊の決議事項の場合であり、これらの条項では区分所有者及び議決権の 各 3/4 以上や 各 4/5 以上の多数という要件が明記されて過半数の原則を修正しています。これらが特別の定めに該当します。

 この特別決議事項のうち、第17条に限り「共用部分の変更の決議を区分所有者の 3/4以上 の要件を規約で過半数まで減じることを許す」としていますが、他の場合は、その要件を規約で緩和することも加重することも認められていません。

例外2〜規約の規定〜
 区分所有者及び議決権の各過半数で決する事の例外の2は、規約で別段の定めをすることを許している場合です。

 これに該当するのは、原則として普通決議事項に関したものです。
 区分所有法で別段の定めがない事項は、規約があれば、規約での決議要件により、特に「区分所有者及び議決権の各過半数」でなくても、議決できます。

 一般に規約では、区分所有法で求められている、区分所有者数の要件を外し議決権の過半数と緩和する例や、これを更に緩和して「出席した者」の議決権の過半数とする例などが多いようです。

 例えば、区分所有者数の要件を外すということは、各区分所有者を平等に取扱うということをせず議決権、即ち専有部分の床面積という持分の多少で区別した取扱いをするということになりますが、第38条でも一言したように共有物に関する事項の決定権がその持分の多少に比例するのが民法の原則ですから、議事内容が財産の管理項目である限り妥当なものといえます。

 これを受け、標準管理規約(単棟型)47条では、普通決議は、区分所有者全員の数を入れずに、「出席した者」の議決権の過半数で決するとしています

<参考>標準管理規約(単棟型)47条1項: (総会の会議及び議事) 

第47条 総会の会議(WEB会議システム等を用いて開催する会議を含む。)は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。

2 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。

3 次の各号に掲げる事項に関する総会の議事は、前項にかかわらず、組合員総数の4分の3以上及び議決権総数の4分の3以上で決する。
   一 規約の制定、変更又は廃止
   二 敷地及び共用部分等の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないもの及び建築物の耐震改修の促進に関する法律第25条第2項に基づく認定を受けた建物の耐震改修を除く。)
   三 区分所有法第58条第1項、第59条第1項又は第60条第1項の訴えの提起
   四 建物の価格の2分の1を超える部分が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
   五 その他総会において本項の方法により決議することとした事項

建替え決議は、第2項にかかわらず、組合員総数の5分の4以上及び議決権総数の5分の4以上で行う。

マンション敷地売却決議は、第2項にかかわらず、組合員総数、議決権総数及び敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上で行う。

〔※管理組合における電磁的方法の利用状況に応じて、次のように規定〕

(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合

6 前5項の場合において、書面又は代理人によって議決権を行使する者は、出席組合員とみなす。

(イ)電磁的方法が利用可能な場合

6 前5項の場合において、書面、電磁的方法又は代理人によって議決権を行使する者は、出席組合員とみなす。


7 第3項第一号において、規約の制定、変更又は廃止が一部の組合員の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。この場合において、その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはならない。

8 第3項第二号において、敷地及び共用部分等の変更が、専有部分又は専用使用部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分を所有する組合員又はその専用使用部分の専用使用を認められている組合員の承諾を得なければならない。この場合において、その組合員は正当な理由がなければこれを拒否してはならない。

9 第3項第三号に掲げる事項の決議を行うには、あらかじめ当該組合員又は占有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。

10 総会においては、第43条第1項によりあらかじめ通知した事項についてのみ、決議することができる。


 注:建築物の耐震改修の促進に関する法律及びマンションの建替え等の円滑化に関する法律の改正により、追加されている。

    ★ 区分所有者の数...1人が複数のマンションの室を持っていても1つ。また、複数の人が1室をもっていても1つ(共有)。


 {設問}複数の人が、複数の室を持っていたら、区分所有者の数は?

         共有者:区分所有者の数=1

              議決権の数=1

        議決権...専有部分の床面積の割合(別途規約可)

★特別決議と普通決議
 区分所有法では、決議の多数決要件として特別の定めをしている特別決議事項と、過半数の決議で決する旨の定めをしている普通決議事項とがあります。
 普通決議事項については、区分所有法第39条1項で、原則として、区分所有者の人数と議決権のそれぞれについて、過半数以上の賛成を必要とする旨その要件を定めています。

 そしてこの普通決議の過半数は、集会(総会)に出席した区分所有者の人数と議決権を基準にするのではなく、全区分所有者の人数と議決権を基準にします。
つまり、全区分所有者の人数と議決権割合の、それぞれの過半数の賛成がないと決議が成立しないことになります。
よって、賛成・反対が同数のときは、否決となります。他の集会のような議長による採決はありません。

*議長の立場
  区分所有法では、議長になった人も、議決権を有するなら、区分所有者として当初から、決議に加わって賛成・反対を表明することを想定しています。
  なお、国会での議長は、当初の採決には加わっていないため、賛否同数なら、議長裁決となります。

<参照>憲法 第56条2項

 第五十六条  両議院は、各々その総議員の三分の一以上の出席がなければ、議事を開き議決することができない。
 2  両議院の議事は、この憲法に特別の定のある場合を除いては、出席議員の過半数でこれを決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。

 ただし、この普通議決の要件の軽減あるいは加重は、規約で別段の定めをすることによってそれが可能になります。(第39条1項)

特別決議事項

 区分所有者及び議決権の各3/4以上の決議を必要とする、特別決議事項には、次のようなものがあります。

    @第17条1項の「共用部分の重大な変更」、(ただし、区分所有者の定数だけは、規約でその過半数まで下げられる。議決権は変更できない

    A第21条の「共有に属する敷地などの変更」、(17条の準用)(ただし、区分所有者の定数だけは、規約でその過半数まで下げられる。議決権は変更できない

    B第31条1項の「規約の設定・変更・廃止」、

    C第47条1項の「管理組合法人となること」、

    D第55条2項の「管理組合法人の解散」、

    E第58条2項の「義務違反者に対する処置の使用禁止」、

    F第59条1項の「区分所有権の競売請求」、

    G第60条2項の「占有者に対する引渡請求」、

    H第61条5項の「共用部分の大規模滅失(価格の1/2超)の場合における復旧」、

    I第62条1項の「建替え」、(建替えは、重要性が高いので、区分所有者及び議決権の各4/5以上 要)

    J第68条1項の「団地管理組合の規約の設定・変更・廃止」、

    K第69条7項の「団地内の2以上の区分所有建物の一括承認に付する旨の承認の決議」(これは、区分所有者及び議決権の各4/5以上 要)

★集会(総会)成立の定足数は区分所有法では定めがない
 集会(総会)の定足数とは、「合議体が議事を進め議決をなすに必要とする最小限度の構成員の出席数」のことですが、区分所有法は、第39条1項で「決議成立要件」を定めているだけであって、集会(総会)成立に関する定足数の定めを置いていません。

 従って、定足数を充足しないからといって、集会(総会)が流会になるということはないのですが、仮に決議に必要な「区分所有者及び議決権の過半数」に出席数が達してない場合は、出席者した全員が賛成しても決議は成立しませんので、後日改めて集会(総会)を開かざるを得ないことになります。

 ところで、普通決議の要件の軽減は規約でその定めをすれば可能ですが、たとえば「出席区分所有者の議決権の過半数で決する」と規約で定めたとします。
この場合、集会(総会)成立の定足数を定めてないと、極端にいえば区分所有者1人の出席があればその者の意見で決まることになり、これでは区分所有法が集会という制度を設け区分所有者の大多数の意思によって管理運営の方向を定めようという法の趣旨が全く失われてしまうことになります。
 そこで、かかる軽減措置を図る場合、一定数以上の出席がないと決議がなし得ないような仕組みにすることが肝要です。
つまり、集会(総会)成立の定足数も併せて規約で定めておく必要があります。

 なお、標準管理規約では、定足数を議決権総数の半数以上の出席と定めています。
 
★そこで、1つの例で検討してみましょう。
 議決権総数が 40 なら、 20以上 の出席で集会は成立です。
 そして、普通決議は、過半数で決しますから、この 20 で成立した集会の決議は 10 を超えた 11 で決議されます。
なんと、40 の議決権総数があっても、11 の賛成で通ります。
 多数決の理論といいながら、実際には総数の 1/4 しか賛成がなくても可決します。
 規約の規定には、注意が必要です。 

<参考>標準管理規約(単棟型)47条1項: (総会の会議及び議事) 

第47条 総会の会議(WEB会議システム等を用いて開催する会議を含む。)は、前条第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。

2 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。

 以下、略


 そして、標準管理規約(単棟型)47条のコメントとして以下の内容があります。議長を含めて賛否同数なら否決です。
 多くの集会で見られる、「議長裁決」は、標準管理規約では認めていません。

<参考>「標準管理規約(単棟型) 第47条関係コメント 

@ 第1項の
定足数について、議決権を行使することができる組合員がWEB会議システム等を用いて出席した場合については、定足数の算出において出席組合員に含まれると考えられる。これに対して、議決権を行使することができない傍聴人としてWEB会議システム等を用いて議事を傍聴する組合員については、出席組合員には含まれないと考えられる。

A 第2項は、議長を含む出席組合員(書面(電磁的方法による議決権の行使が利用可能な場合は、電磁的方法を含む。)又は代理人によって議決権を行使する者を含む。)の議決権の過半数で決議し、過半数の賛成を得られなかった議事は否決とすることを意味するものである。

B 特に慎重を期すべき事項を特別の決議によるものとした。あとの事項は、会議運営の一般原則である多数決によるものとした。

C 区分所有法では、共用部分の変更に関し、区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議(特別多数決議)で決することを原則としつつ、その形状又は効用の著しい変更を伴わない共用部分の変更については区分所有者及び議決権の各過半数によることとしている(なお、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、区分所有法第17条第2項(第18条第3項において準用する場合を含む。)の規定に留意が必要である。(第8項参照))。
 建物の維持・保全に関して、区分所有者は協力してその実施に努めるべきであることを踏まえ、機動的な実施を可能とするこの区分所有法の規定を、標準管理規約上も確認的に規定したのが第47条第3項第二号である。
 なお、建築物の耐震改修の促進に関する法律第25条の規定により、
要耐震改修認定区分所有建築物の耐震改修については、区分所有法の特例として、敷地及び共用部分等の形状又は効用の著しい変更に該当する場合であっても、過半数の決議(普通決議)で実施可能となっている。

D 第1項に基づき議決権総数の半数を有する組合員が出席する総会において、第2項に基づき出席組合員の議決権の過半数で決議(普通決議)される事項は、総組合員の議決権総数の4分の1超の賛成により決議されることに鑑み、例えば、大規模修繕工事のように多額の費用を要する事項については、組合員総数及び議決権総数の過半数で、又は議決権総数の過半数で決する旨規約に定めることもできる。

E このような規定の下で、各工事に必要な総会の決議に関しては、例えば次のように考えられる。ただし、基本的には各工事の具体的内容に基づく個別の判断によることとなる。

  ア)バリアフリー化の工事に関し、建物の基本的構造部分を取り壊す等の加工を伴わずに階段にスロープを併設し、手すりを追加する工事は
普通決議により、階段室部分を改造したり、建物の外壁に新たに外付けしたりして、エレベーターを新たに設置する工事は特別多数決議により実施可能と考えられる。

 イ)耐震改修工事に関し、柱やはりに炭素繊維シートや鉄板を巻き付けて補修する工事や、構造躯体に壁や筋かいなどの耐震部材を設置する工事で基本的構造部分への加工が小さいものは
普通決議により実施可能と考えられる。

  ウ)防犯化工事に関し、オートロック設備を設置する際、配線を、空き管路内に通したり、建物の外周に敷設したりするなど共用部分の加工の程度が小さい場合の工事や、防犯カメラ、防犯灯の設置工事は
普通決議により、実施可能と考えられる。

  エ)IT化工事に関し、光ファイバー・ケーブルの敷設工事を実施する場合、その工事が既存のパイプスペースを利用するなど共用部分の形状に変更を加えることなく実施できる場合や、新たに光ファイバー・ケーブルを通すために、外壁、耐力壁等に工事を加え、その形状を変更するような場合でも、建物の躯体部分に相当程度の加工を要するものではなく、外観を見苦しくない状態に復元するのであれば、
普通決議により実施可能と考えられる。

  オ)計画修繕工事に関し、鉄部塗装工事、外壁補修工事、屋上等防水工事、給水管更生・更新工事、照明設備、共聴設備、消防用設備、エレベーター設備の更新工事は
普通決議で実施可能と考えられる。

  カ)その他、集会室、駐車場、駐輪場の増改築工事などで、大規模なものや著しい加工を伴うものは
特別多数決議により、窓枠、窓ガラス、玄関扉等の一斉交換工事、既に不要となったダストボックスや高置水槽等の撤去工事は普通決議により、実施可能と考えられる。

F 建替え決議及びマンション敷地売却決議の賛否は、売渡し請求の相手方になるかならないかに関係することから、賛成者、反対者が明確にわかるよう決議することが必要である。なお、第4項及び第5項の決議要件については、法定の要件を確認的に規定したものである。



 
注:普通決議か特別多数決議かは、その判断が大変に難しく、ここのEの ア)からカ)に示されている例は大変に重要です。試験にもたびたび出ていますから、覚えておいてください。

★多数決が正しいとはいえない!
  多くの人は、民主主義の根幹は多くの民意に基づいた多数決によることが、正しいことだと思っているでしょうが、それは誤りです。
 多数決に従うということは、例えば、1人の賢人ソクラテスと2人の泥棒がいて、2人の泥棒がソクラテスの意見に反対すれば、ソクラテスも泥棒の意見に従うということです。
 また、多くの人は自己の意見を持たずに、偏見性のあるマスコミの報道や極端な意見をいう政治家に従う傾向があります。

 他人任せにせず、常に、反対の意見も参考にして、自分の意見を持って責任ある行動をとることが必要です。

 マンション生活では、多くの事柄が多数決で決まります。マンションの管理を理事会任せにしないで、自ずから管理に参加する姿勢をとってください。


{設問} 5個の専有部分を所有している区分所有者が死亡して5人の相続人が共同相続しましたが、まだその遺産分割をしていません。
その場合、区分所有法上、5人の相続人は、総会に関してどのように扱われるのですか。

答え}:この場合、まだ遺産分割がされてないので、5個の専有部分は5人の相続人によって共有されていることになります。そこで、5個の専有部分を5人が共有しているという観点から区分所有法上の総会(集会)に関する扱いを考えていく必要があります。

 5個の専有部分を5人で共有している場合の区分所有者の数は、1人として扱われます。ただし、議決権数は1住戸1個の場合は5個となります。5人の共同相続人が5個の議決権を行使するときは、行使者を1人指定し、その旨を議長に前もって届け出ておく必要があります(実務的には書面で届け出ることが望ましい)。

 また、1人で複数個の専有部分を所有しているときも、区分所有者の人数の計算において1人であることに変わりません。

 総会において議決権を行使する場合にも、共有者は、共同して(1個の専有部分について)1個の議決権を行使すべきであって、共有者はその議決権の一部ずつを行使すべきものではないことは明らかです。
つまり、5人の共同相続人は、共同して5個の議決権を行使することになります(現実には5人の相続人のうちの1人が代表して5個の議決権を行使すべきです)。

 また、議決権の前提としての意見陳述権についても同じことになります。(現実には共有者の誰か一人が代表して意見陳述をし、議決権を行使すべきです)。
 このような考え方を前提として、区分所有法は第40条で、「専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない」としています。
 
 共有者(5人の共同相続人)のうち誰を指定するかは、共有者の内部関係の問題ですが、それは共有物の管理の関する事項と考えられますから、民法第252条の規定にしたがい、各共有者の持分の価格の過半数によって決めることになります。

総会の招集通知は、区分所有法第40条の規定によって議決権行使者が指定されているときは、その者に対して通知すればよく、その指定がないときは、共有者(つまり5人の共同相続人)のうち誰でも1人に対してすればよいこととされています(同法第35条第2項)。

 なお、行使者が定められていても、招集通知の際に招集者(管理者)に届け出ていなければ、招集通知は、その指定がないものとして取り扱ってよいと解されています。

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第三十九条

2項  議決権は、書面で、又は代理人によって行使することができる。

過去出題 マンション管理士 R05年、H21年、
管理業務主任者 H24年、H22年、H21年、H15年、

★議決権の行使 @書面 で 又は A代理人 で 〜これは、昔からある基本〜

 集会(総会)は、区分所有者の団体(管理組合)の最高且つ唯一の意思決定機関であり、予算・決算、規約等を含め、区分所有者が各自の意思を管理組合の運営や建物の管理・使用に反映させるためには集会に出席して自己の意思を表明することが唯一の手段です。

 そのため区分所有法では招集手続きを厳格に定めて区分所有者が集会に参加する機会を保障していますが、実際の集会の開催日時は個々の区分所有者の予定を聞かずに招集権者が決定するため、仕事等で当日都合により区分所有者が参加できない場合があります。

 この場合に、区分所有者自らは出席できなくともその意思が代わりの者等により表明されれば、区分所有者の集会参加権は一応保護されることになりますし、定数が必要な集会の議決が個人の都合でできないというような不都合も回避できることになります。

 このような理由により、本第39条2項で、区分所有者は@書面 または A代理人 でその議決権を行使できるものとしています。

本人が出席しない@書面 と A代理人による 表決はもともと民法でも認められているものです。

 代理人は区分所有者の選任する任意代理人となりますので、委任事項やその権限は全て区分所有者の授権の範囲・内容により決定され、通常は委任状で代理人資格および授権の内容・範囲が明らかにされますが、白紙委任状の場合は(本来は白紙部分に記入が必要)全般的な権限があると取り扱うのが通常でしょう。

★代理人の資格を制限できるか
  なお、区分所有法では代理人資格を制限していませんから、誰を代理人にしようと、何人代理人を選任しようと原則として自由ですが、それでは集会にそぐわないような者の参加を規制できないため、標準管理規約を始めとして代理人資格を規約で区分所有者等に制限することが多いようです。

★旧の標準管理規約は、代理人の資格を同居人などで制限していたが、批判が多く、平成23年の改正で削除したので注意のこと
  しかし、また、平成28年 3月14日の改正では、同居する親族として復活しているので、注意のこと。

<参考>標準管理規約(単棟型)46条5項: 平成23年改正の条文

新:5項: 組合員又は代理人は、代理権を証する書面を理事長に提出しなければな らない。

旧:5項: 組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、
   その組合員と同居する者
   若しくはその組合員の住戸を借り受けた者

   又は他の組合員
   若しくはその組合員と同居する者でなければならない


------------------------------------------------------------------------------

平成28年 3月14日の改正では、同居する者として「親族」が復活しているので、注意のこと。

 5 組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、以下の各号に掲げる者でなければならない。
   一 その組合員の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)
     又は一親等の親族
   
二 その組合員の住戸に同居する親族
   三 他の組合員

★区分所有法第39条2項には規約での別段の定めを認める記載はありませんが、区分所有者の議決権という権利行使も集会の円滑な運営という他の利益との調和のもとで達成されるべきですから、その制限が実質上議決権行使を相当困難にするようなものでない限り規約による代理人の制限は、解釈として争いがあるでしょうが、一応有効と思われます。

 なお、平成23年の改正標準管理規約は、この代理人の制限をとりました。しかし、平成28年3月に改正された標準管理規約では、また、代理人の制限を復活させています。
 標準管理規約は単なる国土交通省の役人が作成しているモデルとは言うものの、その影響力の強さから、この変更はあまりにも、安易な行為で納得ができません。代理人の制限は、もっと法律と実務の点から検討がなされるべきです。

 集会の議事内容からすれば、区分所有者本人よりも事情に精通した同居人や他の区分所有者(組合員)が最も代理人に相応しいわけですが、そのためには事前に賛否の意向を代理人に十分説明しておく必要があります。
たとえ本人の意思と異なる場合でも代理人の質疑や賛否の行為は本人のものとされますから、後でそうではなかったというのは通じないからです。

★書面による議決権行使 〜議決権行使書の利用〜
 自己の意思を反映する方法としては、白紙委任状ではなく「議案」に対して自己の賛否を明らかにした委任状の使用が望ましいかもしれません。
この考えを延長すると書面による議決権の行使、いわゆる「議決権行使書」となります。

  書面による議決権の行使とは、集会(総会)には出席しないで、集会の開催前に議案についての賛否を記載した書面を集会の招集者に提出することです。

通常、下の例のような形で、議決権を行使します。

議決権行使書の例
令和○○年○○月○○日
私は都合により、○月○日開催の第○回通常総会に出席できませんので、本書をもって下記のとおり議決権を行使いたします。
第1号議案○○○の件(賛成 反対)
第2号議案○○○の件(賛成 反対)
第3号議案○○○の件(賛成 反対)
室番: △△棟 △△号室
氏名: ◇ ◇ ◇ ◇ 

  「議決権行使書」は、各議決事項単位に賛成・反対を明らかにして議長に提出するもので、白紙委任状の有効性をめぐる諸問題や、代理人の代理権不誠実行使等の代理でのトラブルが防止できる利点がありますが、議案修正への対応については硬直的な結論となりかねない欠点もあります。

    ★ 多忙な人の便宜をはかり、書面や代理人での議決権行使ができる。

       代理人...誰でも可能(制限能力者でも代理人になれます。 
             民法
 第102条:代理人は、行為能力者であることを要しない。

<参照>民法 第102条(代理人の行為能力)

第百二条 制限行為能力者が代理人としてした行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができない。ただし、制限行為能力者が他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為については、この限りでない。

    ★ 行使方法:集会の日までに、各議案につき「賛否」を記載した書面を、集会の招集者(管理者・理事など)に出す。

    ★ 次の電磁的方法(3項)と違って、書面と代理人による議決権行使の方法は規約がなくても、一般のやり方で、全ての区分所有建物で認められた方法であることに注意。(過去から法律上当然に認められている。)

★集会における議決権は、区分所有者本人が出席して自ら行使するのが原則ですが、書面で行使すること(書面投票)、または代理人によって行使することが認められています(区分所有法第39条2項)。
 なお、この書面または代理人による議決権行使は、区分所有者の法律上の権利ですから、規約等でこれを一切認めないと定めたり、著しい制限を加えたりすることは認められません。

★書面での議決権の行使(書面投票)とは、集会に出席できない場合、あらかじめ通知を受けた議案について、集会開催日前に賛否を記載した書面を集会の招集者に提出して、議決権を行使することをいいます。
 また、規約又は集会の決議により、書面に代えて電磁的方法による行使も可能です。(3項)
 書面投票はその提出自体が議決権の行使である点が、委任状による議決権の行使と異なります。

 ◎代理人による議決権の行使とは、委任を受けた代理人が集会(総会)に出席して区分所有者に代わって議決権を行使することをいいます。
  法律上は必ずしも委任状の提出を必要としませんが、代理権の存在をはっきりさせるため、規約で委任状の提出を条件としているのが一般的です。
  また代理人の資格については、特に制限はないので、
民法と区分所有法上では、意思能力がある限り誰でも代理人になることができます。
  ただ、規約でその資格を一定の者(例えば他の区分所有者、同居者、賃借人等)に制限することは、法律上も争いがありますが、一応許されると解されています。

委任状の例
令和○○年○○月○○日
私は都合により、○月○日開催の第○回通常総会に出席できませんので、 ○○○○ 氏を代理人と定め議決権の行使を委任いたします。
室番: △△棟 △△号室
氏名: ◇ ◇ ◇ ◇ 

*参考までに、以下は、平成23年の改正前の標準管理規約です。
 旧、平成23年の改正前の標準管理規約(単棟型)では、代理人の資格を限定していましたので、注意してください。(標準管理規約(単棟型)46条5項)

   しかし、また、平成28年 3月14日の改正では、同居する親族として復活しているので、注意のこと。 

<参考>旧(平成23年の改正前)標準管理規約(単棟型) 46条5項:(議決権)

第46条 各組合員の議決権の割合は、別表第5に掲げるとおりとする。

2. 住戸1戸が数人の共有に属する場合、その議決権行使については、これら共有者をあわせて一の組合員とみなす。

3. 前項により一の組合員とみなされる者は、議決権を行使する者1名を選任し、その者の氏名をあらかじめ総会開会までに理事長に届け出なければならない。

4. 組合員は、書面又は代理人によって議決権を行使することができる。

5. 組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、
   その組合員と同居する者
   若しくはその組合員の住戸を借り受けた者、
   又は他の組合員
  若しくはその組合員と同居する者でなければならない。


6. 代理人は、代理権を証する書面を理事長に提出しなければならない。

-------------------------------------------------------------------

また、平成28年 3月14日の改正では、46条5項に同居する親族が復活しているので、注意のこと。

 5 組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、以下の各号に掲げる者でなければならない。
   一 その組合員の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)
     又は一親等の親族
   
二 その組合員の住戸に同居する親族
   三 他の組合員


 ★自分の部屋の賃借人人は代理人になれるが、他の部屋の賃借人は代理人になれない!


 代理人が、区分所有者本人と異なった意思表示を集会で行っても、区分所有者はその結果に従うことはいうまでもありません。

書面投票と書面決議の違い
 さて書面投票(書面での議決権行使)のに類似した言葉として、書面決議がありますので、注意を要します。

 書面決議とは、実際に集会(総会)を開催しないで集会(総会)の決議事項のすべてを決議しようとするもので、区分所有者全員の書面による合意をもって成立します(区分所有法第45条)。
書面決議は集会の決議を代替する効果はありますが、区分所有法第34条2項の規定で義務づけられる毎年1回の集会(総会)が招集されたことになるわけではありません。

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*注:コロナ過で年1回の集会(総会)が開催出来ない時は、どうするか?
 
 2019年から世界中に猛威をふるっている新型コロナウイル感染症により、政府では、緊急事態宣言を発出して、集会を避けるように指示しています。
 集会を延期しても開催できれば、区分所有法で定める年1回の集会を必ず開けという規定も妥当性がありますが、もう、2年以上も集会を開くことができない現状では、この規定を守ることは無理であり適切ではありません。
 そこで、区分所有法第45条の「区分所有者全員の合意」をえて、特定の日を持って「書面による集会(総会)」を開催し、その中で、「集会(総会)が招集されたとみなす」ことによって、緊急避難的な集会(総会)の開催を認めることが必要です。

 この「書面集会(総会)総会」においては、管理者の事務報告(第49条)も行うことが可能と考えます。

 このような事態に対応する区分所有法の改正が、早急に必要です。

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★ 区分所有者(組合員)が議決権を行使する場合、区分所有法は第39条2項で次の3通りの方法を認めています。

   1.区分所有者(組合員)本人が集会に出席し、議決権を行使する場合(これは、当然ですが)

   2.区分所有者が集会に出席できない時、総会開会前に書面にて、例えば「第1号議案賛成」、「第2号議案反対」等と記述して議決権を行使する場合(書面投票)    (注:同法第45条の「書面決議」とは異なります)。

   3.区分所有者の代理人を集会に出席させて、議決権を行使する場合(委任状の提出)

  したがって、2.書面による議決権行使 と  3.代理人の出席 の場合も出席扱いとする必要があります。注意してください。


★白紙委任状の取り扱い方 〜平成23年で改正される前の標準管理規約を基にしていますから、参考としてください。

  集会(総会)において、区分所有者が出席をしない場合には、委任状を提出し、これも出席として扱います。
  そこで、この委任状に署名・押印はあるものの、委任の相手方も委任の内容も記載のない、いわゆる白紙委任状が提出された場合は、どう扱うかの問題が以前からあります。
 マンション管理のなかで白紙委任状が理事長への一任として扱えるかどうかを検討してみました。

 ア.白紙委任状は無効であるという考え方

  標準管理規約(単棟型)46条5項は「組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、その組合員と同居する者若しくはその組合員の住戸を借り受けた者、又は他の組合員若しくはその組合員と同居する者でなければならない。」と規定し、代理人の資格を厳しく制限している。
そして、同46条関係のコメントでは、「なお、組合員は、代理人により議決権を行使する場合は、第46条 第5項に規定する者の中で、誰を代理人とするかについて主体的に決定することが望まれる。」とあり、この規定の意図するところは、「望まれる」とあり、明確ではないが、主体的に代理人を定めない白紙委任状を認めないものであると取れる。
 白紙委任状を理事長への一任とすると、多くの集会での案件は、理事会にて賛成・反対が決められたのと同じ結果となり、最高意思決定機関である集会での反対・賛成の議論が反映されない弊害が発生する。

イ.白紙委任状は有効であるという考え方

 一方、現実のマンション管理での集会の実体をみると、組合員の殆どが集会(総会)に出席せず委任状で済ませている。本来なら、受任者(代理人)を指定し最低でも議決権行使書(議案の賛成・反対の明示)の提出を行うべきであるが、署名・押印だけ記入し、他は白紙が多い。この場合、白紙委任状を無効とすると、集会(総会)も成立せず、マンションの管理が行えない事態にも陥る。そこで、白紙委任状を、
有効として扱い、その論理的帰着として、理事長に委任されたものとみなさざるを得ないという消極的な理由もある。

 私は、白紙委任状を理事長への有効な委任状とすることの弊害の方を重視し、適切でないとします。


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第三十九条

3項  区分所有者は、規約又は集会の決議により、前項の規定による書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法(電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法であって法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)によって議決権を行使することができる。

過去出題 マンション管理士 R04年、H26年、H23年、H17年、H16年、
管理業務主任者 R05年、H21年、H20年、H15年、

★電磁的方法による議決権の行使 〜 IT(アイティ)化 〜 ...ただし、前もって規約か集会の決議がなければ、電磁的方法では議決権を行使できない
   第39条1項の「書面」と「代理人」による議決権行使の場合は、過去から認められた方法で規約や集会の決議は要らない。

★IT化に対応 〜インフラの整備や本人確認方法も必要〜

 集会(総会)に出席できない場合に、紙にした議決権行使書で議決権を行使する方法は、書面による区分所有者の意思の表示方法ですが、区分所有者本人や代理人が集会(総会)に出席しない点ではその意思表示の書面が郵送でなされようが手渡しでなされようが変りはありません。
そうすると、時代の変化により、Faxでも電子メール(Eメール)でも郵便と同じといえ、更に電子投票システムを使用する場合も同様となります。

 そのため、電磁的記録による規約(第30条5項)や議事録の作成を認めた(第42条1項)のと同様の理由により、議決権行使の方法の一環として、電磁的方法による議決権行使の方法が、平成14年の改正で新たに認められました。

 電子メールなど電磁的方法による議決権行使の方法は遠隔地にいる区分所有者が集会に参加するために必要な交通費などの費用をかけずに集会に参加できるメリットがある一方、この方法が普及すると集会の場で他の人の意見等を聞き総合的に判断して自己の結論を導くという会議のメリットを阻害する可能性も秘めたものであり、インターネットのチャット(会話ができる)や掲示板、またWEB会議システム等の即時双方向の議論ができるものとセットした内容でないとIT化のメリットが生かせないのではないかと危惧されます。

 また通常電磁的方法では、文書でみられるような本人確認の捺印が無くなるため、他の人が「本人に成りすます」危険性も大きくあり、本人確認をどう行うかの技術的な問題もあります。

 そこで、本人確認の方法としては、あらかじめ、特定のパスワードを各人に割り当てて、入力させるとか、電子署名等の採用が必要となります。
もっとも、電子メールが手紙等の文書より手軽になった現在では文書による投票(議決権行使書の使用)が認められる以上、電子メールを否定する絶対的な理由はありません。

 しかし、IT化が進んだとはいえ、まだまだ区分所有者の中には、パソコンを持っていない人や、インターネット接続環境にない人もいるでしょうから、この電磁的方法で議決権を行使するには、前もって規約で認めるか、または集会の話し合いで決めることになっています。

   ★ 前もって規約や集会の決議で決めていれば、電子メールやWEBサイトでのホームページへの書き込み、フロッピー、CDなどの交付で議決権の行使ができる。(この場合は本人確認が必要。)
     *本人確認にマイナンバーカードの利用が出来るといいけど。

      2項の書面や代理人による議決権の行使と違って、前もって規約や決議がないと、やりかたとしては無効になる。(法律上当然ではない。)

<参照> 建物の区分所有等に関する法律施行規則(法務省令で定めるもの): 
 (電磁的方法)

第三条  法第三十九条第三項 に規定する法務省令で定める方法は、次に掲げる方法とする。

   一  送信者の使用に係る電子計算機と受信者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用する方法であって、当該電気通信回線を通じて情報が送信され、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該情報が記録されるもの

   二  第一条に規定するファイルに情報を記録したものを交付する方法

2  前項各号に掲げる方法は、受信者がファイルへの記録を出力することにより書面を作成することができるものでなければならない。

<参考>標準管理規約(単棟型)50条:(書面又は電磁的方法による決議) 

(イ)電磁的方法が利用可能な場合

第50条 規約により総会において決議をすべき場合において、組合員全員の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議をすることができる。
ただし、電磁的方法による決議に係る組合員の承諾については、あらかじめ、組合員に対し、その用いる電磁的方法の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。

2. 前項の電磁的方法の種類及び内容は、次に掲げる事項とする。
   一 第44条第4項各号に定める電磁的方法のうち、送信者が使用するもの
   二 ファイルへの記録の方式

3. 規約により総会において決議すべきものとされた事項については、組合員の全員の書面又は電磁的方法による合意があったときは、書面又は電磁的方法による決議があったものとみなす。

4. 規約により総会において決議すべきものとされた事項についての書面又は電磁的方法による決議は、総会の決議と同一の効力を有する。

5. 前条第5項及び第6項の規定は、書面又は電磁的方法による決議に係る書面並びに第1項及び第3項の電磁的方法が行われた場合に当該電磁的方法により作成される電磁的記録について準用する。

6. 総会に関する規定は、書面又は電磁的方法による決議について準用する。


{設問}次の記述は正しいか。

*議決権は、書面又は代理人によって行使するほか、規約又は集会の決議により、電磁的方法によって行使することができる。

答え:正しい。 
 (区分所有法第 39 条2項、 3 項) 議決権は、書面又は代理人によって行使するほか、規約又は集会の決議により、電磁的方法によって行使することができる。
  「2 議決権は、書面で、又は代理人によって行使することができる。
  3 区分所有者は、規約又は集会の決議により、前項の規定による議決権の行使に代えて電磁的方法(中略)によって議決権を行使することができる。」 により、議決権は、書面、代理人によるほか、規約又は集会の決議があれば、電磁的方法でも行使できる。


 ◎区分所有法と標準管理規約(単棟型)で別段の定めの例
区分所有法 標準管理規約(単棟型)
◎管理者の資格 ◎35条2項 役員
 規定がない  役員(理事・監事)は、組合員から(改正:平成23年)
   外部専門家も役員になれる(改正:平成28年)
   
◎第35条 集会招集の通知 ◎43条 総会の招集手続
 会日の少なくとも1週間前に発する  原則:少なくとも会議を開く日の2週間前
 規約で伸縮 可  緊急:理事会承認で5日を下回らない範囲
   
◎第39条1項 議事 ◎47条1項、2項
 区分所有者及び議決権の各過半数  定数:議決権総数の半数以上の出席
   議決:出席組合員の議決権の過半数 でいい
   
◎議決権行使の代理人の資格 ◎46条5項 議決権行使の代理人の資格
 規定がなく限定されない (平成23年の改正で、同居などの制限がなくなった。)
  (平成28年の改正で、制限が復活した。)
 1.配偶者
 2.一親等の親族
 3.同居親族
 4.他の組合員
   
◎第34条 集会の招集の限定 ◎42条 集会を総会と言い換える
 少なくとも年1回 と規定するだけで期日なし  ・新会計年度開始後2か月以内に招集のこと
   
   

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ページ終わり

謝辞:Kzさんの了解により一部転用・編集をしています。

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最終更新日:
2024年 8月10日:相続税として区分不動産の評価の改正を、第38条1項の下に追加した。
2024年 4月15日:第38条1項の議決権にタワー・マンションに、「配偶者居住権」など追記した。
2024年 2月 4日:令和5年(2023年)の出題年を入れた。
2024年 1月20日:見直した。
2023年12月15日:第38条1項の議決権で、タワー・マンションの節税に関して「マンション購入からの税について」を入れた。
2023年 2月23日:令和4年(2022年)の出題年を入れた。
2022年10月15日:文章見直した。第36条に図を入れた。
2022年 1月12日:標準管理規約や同コメントを最新(令和3年6月22日版)にした。
文章、見直した。
2021年12月20日:令和3年(2021年)の出題年を入れた。
2021年 3月18日:第39条2項に「コロナ過対応」を入れた。
2021年 3月 7日:令和2年(2020年)の出題年(管理業務主任者分)「を入れた。
2021年 3月 5日:令和2年(2020年)の出題年を入れた。
2020年 3月29日:令和元年(2019年)の出題年を入れた。
2019年 4月17日:平成30年の出題年を入れた。
2018年 8月 5日:第38条「議決権」に平成29年の出題(管理規約)を入れた。
2018年 3月13日:平成29年の出題年を入れた。
2017年 3月20日:平成28年の出題年を入れた。
2016年 4月 9日:3月14日付の標準管理規約の改正に対応した。
2016年 2月24日;平成27年の出題年を入れた。
2015年 3月30日:平成26年の出題年を入れたり、文章を見直した。
2014年 2月23日:平成25年の出題年を入れた。
2013年 9月16日:第39条2項に「委任状」を入れた。
2013年 7月12日:第34条に図などを入れた。
2013年 3月24日:平成24年の出題年を入。 
2012年 2月27日:平成23年の標準管理規約の改正を受け、第39条など変更。
平成23年の出題年も入。
2011年 8月20日:第38条の図入れ替えた
2011年 7月 2日:ちょろちょろと
2011年 1月15日:平成22年の出題記入
2010年10月16日:議題と議案が明確でないので、第35条を中心に加筆
2010年6月10日:ちょろちょろと加筆
2010年1月23日:H21年の出題年を記入
2009年6月20日:第35条1項「通知」などに加筆。

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