★★       条 文 の 解 説        ★★

建物の区分所有等に関する法律

(この解説においては、略称:区分所有法 と言う)

第1章 建物の区分所有 第5節 規約及び集会

第三十条 規約事項
第三十一条 規約の設定、変更及び廃止
第三十二条 公正証書による規約の設定
第三十三条 規約の保管及び閲覧
第三十四条 集会の招集
第三十五条 招集の通知
第三十六条 招集手続の省略
第三十七条 決議事項の制限
第三十八条 議決権
第三十九条 議事
第四十条 議決権行使者の指定
第四十一条 議長
第四十二条 議事録
第四十三条 事務の報告
第四十四条 占有者の意見陳述権
第四十五条 書面又は電磁的方法による決議
第四十六条 規約及び集会の決議の効力
 
*集会の進め方 
 
*マンション購入からの税について 

X-a.第30条(規約事項)から 第34条(集会の招集)まで

マンション管理士・管理業務主任者を目指す方のために、区分所有法を条文ごとに解説しました。 

試験問題は、過去の問題から出されるのではありません。条文から出題されます。

条文を勉強することが、合格への道です。

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第一章 建物の区分所有
第五節 規約及び集会
 
(規約事項)
第三十条
1項 建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。
   
過去出題 マンション管理士 R05年、R03年、H28年、H25年、H24年、H23年、H22年、H21年、H19年、H18年、H17年、H15年、H13年
管理業務主任者 H27年、H19年、H15年、

規約で定めることが”できる”...規約の作成は区分所有法上の義務ではない。任意である。しかし、マンション管理の根本規則であり、マンションの憲法とも言われる位置にあるので、殆どのマンションでは「管理規約」として作成されている。

★ここからは、「第1章 建物の区分所有」の「第5節 規約及び集会」に入ります。
 「第5節 規約及び集会」は、第30条から第46条までで構成されています。
  第30条から第33条までが「規約」に関する規定で、
  第34条から第44条までが「集会」に関する規定です。
  第45条は「集会を開催しない場合の決議」、
  第46条は「規約と集会の決議の効力」を定めています。

★規約とは

 第30条は規約に関する規定です。
区分所有法では単に規約と称していますが、一般には「管理規約」といわれています。 (または、管理組合規則などともいわれる)

 規約の設定は、区分所有法第3条で、区分所有者の団体に対して、集会を開く、管理者をおくことなどと共に、認められています。

<参照>区分所有法 第3条 (区分所有者の団体)

第三条  区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、
集会を開き、
規約を定め
、及び
管理者を置くことができる。
一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。

 規約とは、マンションなどの区分所有建物において「建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する事項に関し区分所有者間の権利義務を定めたもの」で、区分所有者の団体における組織や運営を定めた自治法の一種と考えられます。
 第30条1項は、区分所有者の団体において、規約を制定してもいいという法的な根拠を示し、その規定可能な範囲はどこまでかを規制する、授権法規(一定の範囲で権限の委任を定めた法)であり且つ制限法規です。

 いいかえますと、規約は区分所有者の団体によって決定した、建物・敷地・附属施設の管理・使用についての自主的なルールです。
規約を制定することで、区分所有者の自治による区分所有建物の共同管理を円滑にすることが狙いです。

  

◎規約で定められるのは、@管理 と A使用についてだけ
  いくら区分所有者の団体が自主的に定められるといっても、規約で定められる事項には、制限があります。
 規約で定められるのは、
  イ.建物 又は ロ.その敷地 若しくは ハ.附属施設(集会所や駐車場など)の
   @管理 と 
   A使用 についての
 区分所有者相互間の事項だけです。当然ながら外部の第三者に関する制限などは、規約として取り決めは出来ません。

もし、規約に外部の人の権利を侵害するような規定があれば、それは無効です(4項)

◎管理に関する事項とは、
  建物・敷地・附属施設(集会所など)の「管理」に関する事項とは、エントランスや廊下、階段室など建物の共用部分の清掃や補修、建物等の管理費・修繕積立金の負担割合・額・支払時期・徴収方法・共用部分に関する固定資産税や保険金その他の諸経費の支払いなど建物等を維持してゆくために必要又は有益な事項です。
 そのほか、区分所有者の団体(管理組合)の組織、運営等に関する事項も規約で定めることができます。

◎使用に関する事項とは、

  建物・敷地・附属施設の「使用」に関する事項とは、例えば、動物(犬猫などペット)の飼育の可否やピアノの演奏時間に関する事項など、専有部分の使用方法に関する規制とか、駐車場、倉庫等の使用方法、駐車料など敷地、共用部分の使用方法や対価等に関する事項をいいます。

 そこで、区分所有権(専有部分を目的とした所有権)を譲渡してはいけないなどの禁止や制限等は建物や附属施設等の管理・使用に関する事項ではありませんから規約で定めても効力がありません。
また、規約も広義の合意の一種として強行法規や公序良俗(民法第90条)に反することは定めることができず、不合理に権利を制限し義務を規定するような場合にはその規約の効力が認められないことは勿論です。

<参照>民法 第90条:(公序良俗)

 公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。


注:公の秩序、善良の風俗(公序良俗)に違反する例。無効となる
  ・高利貸し(暴利行為)
  ・妾契約(愛人契約)(古ッ)
  ・一方の当事者にとって、余りにも不利益な内容の契約(長期雇用契約での不更新条項)

 そして、当然ながら規約に定めることができるのは区分所有者相互間の事項についてであり、その規約が効力を有するのはその区分所有建物内(マンション内)だけですから、その区分所有建物(マンション)と関係のない人の権利を侵してはいけません。(4項)

★殆どは規約にできる。しかし規約がなくてもいい。(作成は任意)

      ただし、区分所有法で、「規約として定めることができる」と規定してある条文だけ規約で変更や設定ができる。これに反する規約は設定しても無効(強行規定)。

★規約で別段の定めができる事項:

     ◎規約共用部分等に関する事項...第4条2項、第5条1項、第22条1項但し書き、第22条2項

     ◎共用部分の共有等に関する事項...第11条2項、第27条1項、第14条、第17条1項、第18条2項、第19条、第16条、第30条2項

     ◎管理者に関する事項...第25条1項、第26条1項、第26条4項、第28条

     ◎規約に関する事項...第33条1項、第42条3項

     ◎集会に関する事項...第34条3項、5項、第35条1項、第35条4項、第45条1項、第37条2項、第38条、第39条1項、第41条

     ◎建物の復旧に関する事項...第61条4項

     ◎管理組合法人に関する事項...第49条4項、第49条、第50条3項、第52条1項、第56条

     *このほか、区分所有法第6条で定める「共同の利益に反する行為」以外でも、区分所有者相互間の事項なら、「公序良俗(民法第90条)」や「強行規定」に反しなければ、規約で設定できる。

 ◎規約が無効とされた規約の例-1

{判例}一括検針、一括徴収制度の水道料金の支払い方法や特定承継人への支払い義務は、規約で定めても無効である。 (名古屋高裁:平成25年2月22日)

 *概要:名古屋市の、あるマンションでは、水道料金の支払いについて市の上下水道局と建物全体に対して1個のメーターで検針をし、その検針に従った水道料金を市の上下水道局に支払い、建物内では各戸に設置された水道のメーターにより使用料を別途算定して請求する「一括検針、一括徴収制度」を採用していた。
 そのマンションの規約では、
  ・規約は区分所有者の包括承継人及び特定承継人に承継される
  ・専用使用料、駐車場料金及び水道料金等で区分所有者が管理組合へ支払うものの滞納がある場合、全滞納額を承継人に対しても請求できる
 の規定があった。
 そこで、滞納した区分所有者から競売で落札した特定承継人から、法律上の原因がない請求であるとして不当利得返還請求がなされた。

 *判決の主旨:区分所有法第30条1項の主旨・目的は、建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項に限って規約で定めることができるのであり、それ以外の事項を規約で定めても規約としての効力を有しない。
 そこで、専有部分である各戸の水道料金は、専ら専有部分において消費した水道の料金であり、共用部分の管理とは直接関係がなく、区分所有者全体に影響を及ぼすものともいえないのが通常であるから特段の事情のない限り、上記の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項に該当しない。
 上記水道料金について、各区分所有者が支払うべき額や支払い方法、特定承継人に対する支払義務の承継を区分所有者を構成員とする管理組合の規約をもって定めることはできず、そのようなことを定めた規約は、規約としての効力を有しないと解すべきである
 として、審理不十分として、名古屋地方裁判所に差し戻した。

 *管理組合が取るべき手段
   マンションの給水方式として水道本管から分岐してマンションに設置してある受水槽(貯水槽)に一度溜めてから各戸に給水する受水槽方式を採用している場合に、受水槽に入るまでの管理は水道局が行い、それから先にある受水槽等の管理は管理組合が行うことになっています。
 そこで、各地の水道局(上下水道局)はマンション全体の使用量を1つのメーター(親メーター)で検針し、管理組合に料金を請求します。それに基づいて管理組合が使用料金の全額を水道局に支払い、別途、マンション内では各戸に設置された水道メーター(子メーター)での使用量に応じて管理組合が各戸に水道料を請求している例がかなりあります。
 これは、一括検針、一括徴収制度と呼ばれているようです。
 この方式では、管理組合が水道局に支払う金額は、マンション内に水道料金の滞納者がいる場合には、管理組合が滞納者分を立替えているということです。
 そこで滞納金額の請求を特定承継人(後からマンションを買った人や、競売で落とした人)にもできるのかという問題点が指摘されました。

 このような水道の使用は専有部分での使用なので規約で、各区分所有者が支払うべき額や支払い方法、特定承継人に対する支払義務の承継を定めても、管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項に該当しないので、その規約は無効だと名古屋高裁が判断したということです。

  この判決により、該当する管理組合が取らなければならない行動は、
   1.無効とされた管理規約の該当箇所の早急な変更
   2.水道局とマンション全体の一括検針、一括徴収制度を廃止し、水道局と各戸への水道メーター方式への変更(戸別検針の採用)
   3.滞納された水道料金を支払った管理組合のその金額の回収
 が考えられます。

 ◎具体的には、
  規約の変更は、該当する多くの規定を削除・変更することになるでしょう。なお、規約の変更ですから、総会では特別多数決議が必要です。
  一括検針、一括徴収制度を廃止し、戸別検針への変更は、その建物を管轄している水道局(上下水道局)に相談し、どのような手続きと工事が必要かを確認し、総会にかけて、これも該当箇所の規約の変更や必要な工事をすることになります。また、戸別検針に変更がなされても、受水槽方式を採用していると、受水槽の維持管理は管理組合の負担となりますので、この際に水道直結方式への変更も検討すればいいでしょう。なお、水道直結方式への変更に当たっては、各地の自治体で階数などの制限もありますので、その建物を管轄している水道局に相談してください。
  滞納された水道料金は、もうすでに、管理組合が滞納者に代わって水道局に支払っていますから、該当する規約は無効であっても、民法の不当利得民法第703条)により、滞納者に請求することになりましょうか。
 専有部分に関する滞納された水道料金についての規約が無効となると、特定承継人(あとから買った人や競売で落とした人等)は、滞納された水道料金全額の支払いも引き継がないということになり、滞納の期間によって元の区分所有者が負担する金額と特定承継人が負担する金額を分ける必要もあるでしょう。また、裁判にするなら、規定に基づいて行うこととなります。

<参考> 民法 第703条 及び 第704条
(不当利得の返還義務)
第七百三条  法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者(以下この章において「受益者」という。)は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う。

(悪意の受益者の返還義務等)
第七百四条  悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う。


 ◎規約が無効とされた規約(細則) の例−2

★高圧一括受電方式への変更で、細則に個別契約を解約を義務付ける規定は、有効か → 無効。
 これは、「専有部分の使用または共用部分の管理に関する区分所有者相互間」の事項ではないため規約で定めることができない。

{判例}
平成31年3月5日の最高裁判所の判決では、団地の裁判ですが、
  @高圧一括受電方式への変更のうち、団地建物所有者(区分所有者)等に個別契約の解約を申し入れることは、共用部分の変更や管理事項ではない。専有部分の使用に関する事項である。
  → 集会(総会)で決議しても、ここは、無効。(区分所有法第17条1項、第18条1項関係)

 Aそして規約との関係で、高圧一括受電方式への変更のために、団地建物所有者(区分所有者)等に個別契約の解約申入れを義務付けた細則は、規約で定められる「専有部分の使用または共用部分の管理に関する区分所有者相互間」の事項ではない。 
   電気料金の削減では、変更しなくても、専有部分の使用や、共用部分の管理に支障は生じない。
  → 細則で定めても、無効。(区分所有法第30条1項関係)

 したがって,高圧一括受電方式導入に反対した2名が個別契約の解約を申し入れないことは、不法行為ではなく、損害を賠償する責任はないと判断しています。

 なお、当裁判については、別途 「◎マンションの管理組合が、高圧一括受電方式を採用しても、区分所有者は、その総会の決議に拘束されない。また、規約でも定められない。」 

 もありますから、参考にしてください。


*マンションを維持・管理する上で、管理費と修繕積立金は欠かせないもので、特に将来に備えた修繕積立金を区分所有者に返金するという事態も稀ですが、福岡の方で、どうしても修繕積立金を取り戻したい人がいたようで、裁判になった例を見つけたので紹介します。

{判例}修繕積立金の一部を取り崩す規約の改正は有効だが、その配分において、区分所有権の所有期間や居住年数に応じて返金するのは、公序良俗違反である、
(平成28年1月18日:福岡地裁小倉支部)

  事案の概要:従前の修繕積立金に関する規約では、
      「修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合に限って取り崩すことができる」
      となっていたのを、改正し
      「修繕積立金は、次の各号に掲げる特別の管理に要する経費に充当する場合、
又は総会の特別決議による場合に限って取り崩すことができる」
     とした、上で、総会を開催し、特別決議で、返金を「居住年数に応じて返金する」と決議した。

  これに対して裁判所の判断主旨は、
   ・修繕積立金を「総会の特別決議による場合に限って取り崩すことができる」とする改正は有効
   ・しかし、修繕積立金を区分所有者に返金するには、その配分方法としては、規約に別段の定めがある場合を除いて、
    専有部分の床面積の割合(区分所有法第14条参照)に応じて行うことが区分所有者間の利害の衡平に資するものであり、これに反する配分方法は、特段の事情がない限り、区分所有者間の利害の衡平を著しく害するもので、公序良俗違反(民法第90条参照)であり、総会の特別決議があっても、有効ではない。
   です。
  
  この例は、修繕積立金を返してという区分所有者がいる場合の参考になります。


◎規約で定めた別段の規定の例

 規約で別段の定めができる事を受け、標準管理規約では、以下のように別段の規定を定めています。

 ◎区分所有法と標準管理規約(単棟型)で別段の定めの例
区分所有法 標準管理規約(単棟型)
◎管理者の資格 ◎35条2項 役員
 規定がない  役員(理事・監事)は、組合員であること(改正平成23年
 又は、外部専門家も可改正平成28年)
   
◎第35条 集会招集の通知 ◎43条 総会の招集手続
 会日の少なくとも1週間前に発する  原則:少なくとも会議を開く日の2週間前
 規約で伸縮 可  緊急:理事会承認で5日を下回らない範囲
   
◎第39条1項 議事 ◎47条1項、2項
 区分所有者及び議決権の各過半数  定数:議決権総数の半数以上の出席
   議決:出席組合員の議決権の過半数 でいい
   
◎議決権行使の代理人の資格 ◎46条5項 議決権行使の代理人の資格
 規定がなく限定されない 平成23年の改正で、同居等がなくなった
だが、平成28年の改正で
 1.配偶者
 2.一親等の親族
 3.同居親族
 4.他の組合員
 となっている。
   
◎第34条 集会の招集の限定 ◎42条 集会を総会と言い換える
 少なくとも年1回 と規定するだけで期日なし  ・新会計年度開始後2か月以内に招集のこと
   
   

  ◎犬猫などペットの飼育の可能・禁止、管理費・修繕積立金の額の決定、徴収方法なども規約で設定できる。

    また、規約違反について、社会的に相当な範囲なら、制裁金を定める規約も有効と考えられる。

    しかし、全ての動物の飼育を禁止する規定は無効。例えば、観賞用の熱帯魚・小鳥などは他の区分所有者の迷惑にはならないので飼ってもいい。

     (*)国土交通省作成の「標準管理規約」(法文ではない。あくまでも参考資料であることに注意。)があるので、これも参照にするといい。
        (標準管理規約は、平成28年 3月14日付で大幅に改正されているので、注意のこと。
 また、令和3年6月22日付でも改正されている)
 

判例}当初はペット禁止でなかったので、犬を飼っていたが、規約の変更でペットの禁止が決められた。
    この規約の変更は、特定の区分所有者(犬の飼い主)=特別に影響を及ぼす人の承諾が必要か?

   →判例では、犬の飼育が家族の生活・生存にとって必要不可欠でないので、ここに規定する「特別の影響をおよぼす人」ではない。
   承諾は不要。ペット禁止の規約は成立した。

   ★規約は、そこのマンション以外の人には、影響を及ぼさないが、マンションの敷地内の空地に駐車場を設けて、外部の人に賃貸することはできる。(排他的な収益をする権利の設定はできる。


◎マンション内の駐車場の使用料について

   ただし、マンションの組合員(区分所有者)以外の人に駐車場を貸す行為は、継続してマンション駐車場という常設された附属施設で駐車場業を行えば、収益事業に該当し、その収益事業から生じた所得に対して法人税が課されることになります。(平成24年2月3日付:国土交通省住宅局から国税庁課税部にあてた照会文)

  1.区分所有者のみを対象とする駐車場...収益事業たる駐車場業には該当しない。消費税も不課税(なお、管理費も不課税)
    理由は、
     @ マンション管理組合の組合員である区分所有者を対象とした共済的事業であること、
     A 駐車料金は区分所有者がマンションの附属施設である駐車場の敷地を特別に利用することによる「管理費の割増金」と考えられること、
     B 駐車場の使用料収入は、区分所有者に分配されることなく、管理組合において駐車場の管理に要する費用を含めた管理費又は修繕積立金の一部に充当されること

  2.区分所有者以外の者を対象とする駐車場...収益事業たる駐車場業に該当する。法人化していなくても「人格のない社団等に該当」し、収益事業となりそこから生じた所得には法人税(所得)と消費税がかかる。

  この国税庁の判断によって、外部の人に空いている駐車場を貸し出す時には、駐車場収入として会計も別に明確にしなければなりません。


★規約以外に使用細則がある

 区分所有法では、規約を定めることができるの規定がありそれに基づき規約が制定されていますが、多くのマンションでは規約の他に「使用細則」とよばれるものもあります。

 例えば、マンションに駐車場があれば、その使用について特定の区分所有者に専用使用権を認め、駐車場使用者の選定方法や使用料等を使用細則で定めることがあります。また、ペット飼育に関する細則、自転車の駐輪細則なども規約と共に存在しています。

 規約で基本原則を定めて、個別的な事項は使用細則に委ねるという関係にあります。

 この場合、規約で決めておかなければならない事項と、別途使用細則で定めることができる事項が問題となります。
その判断の基準としては、区分所有法において
  @個別的に管理規約によってのみ定めることを認めている(絶対的規約事項)か、
  A管理規約として定めても認められる区分所有者相互間の一般的な事項(相対的規約事項) か になります。

 Aの「相対的規約事項」に該当すれば、基本は規約で定めて、詳細などは別途使用細則での定めも許されると解されます。

 例えば、「一部共用部分の各共有者の負担割合」について、区分所有者及び議決権の各過半数の集会の決議で使用細則に定めることは、
 区分所有法第19条(共用部分の負担及び利益収取)
 「第十九条  各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。 」
 とあり、この規定は一部共用部分の各共有者においても適用されますが、絶対的規約事項と解され、別段の定めは、規約でなければ規定できません。使用細則で定めることは、許されません。

 また、区分所有者が専有部分の修繕に係る共用部分の工事を行うことができる旨を規約で定め、その具体的な手続きや当該区分所有者が遵守すべき事項等について使用細則で定めることは、区分所有者相互間の一般的な事項(相対的規約事項)の例の1つと考えられますので、具体的な手続きは使用細則で定めることが許されます。

<参考>標準管理規約(単棟型)では、基本は規約で定め、別途の「使用細則」を定めることも認めていて、駐車場の使用方法・使用料、やペット飼育のルールを定めることができる。

<参考>標準管理規約(単棟型) (使用細則)  

 第18条 対象物件の使用については、別に使用細則を定めるものとする。

<参考>標準管理規約(単棟型) 第18条関係コメント

@ 使用細則で定めることが考えられる事項としては、動物の飼育やピアノ等の演奏に関する事項等専有部分の使用方法に関する規制や、駐車場、倉庫等の使用方法、使用料、置き配を認める際のルール等敷地、共用部分の使用方法や対価等に関する事項等が挙げられ、このうち専有部分の使用に関するものは、その基本的な事項は規約で定めるべき事項である。また、マンション内における感染症の感染拡大のおそれが高いと認められた場合において、使用細則を根拠として、居住者による共用部分等の使用を一時的に停止・制限することは可能であると考えられる。
 なお、使用細則を定める方法としては、これらの事項を一つの使用細則として定める方法と事項ごとに個別の細則として定める方法とがある。

A 犬、猫等のペットの飼育に関しては、それを認める、認めない等の規定は規約で定めるべき事項である。基本的な事項を規約で定め、手続等の細部の規定を使用細則等に委ねることは可能である。
 なお、飼育を認める場合には、動物等の種類及び数等の限定、管理組合への届出又は登録等による飼育動物の把握、専有部分における飼育方法並びに共用部分の利用方法及びふん尿の処理等の飼育者の守るべき事項、飼育に起因する被害等に対する責任、違反者に対する措置等の規定を定める必要がある。

B ペット飼育を禁止する場合、容認する場合の規約の例は、次のとおりである。

 ペットの飼育を禁止する場合
(ペット飼育の禁止)
第○条 区分所有者及び占有者は、専有部分、共用部分の如何を問わず、犬・猫等の動物を飼育してはならない。ただし、専ら専有部分内で、かつ、かご・水槽等内のみで飼育する小鳥・観賞用魚類(金魚・熱帯魚等)等を、使用細則に定める飼育方法により飼育する場合、及び身体障害者補助犬法に規定する身体障害者補助犬(盲導犬、介助犬及び聴導犬)を使用する場合は、この限りではない。

 ペットの飼育を容認する場合
(ペットの飼育)
第○条 ペット飼育を希望する区分所有者及び占有者は、使用細則及びペット飼育に関する細則を遵守しなければならない。ただし、他の区分所有者又は占有者からの苦情の申し出があり、改善勧告に従わない場合には、理事会は、飼育禁止を含む措置をとることができる。

C 専用使用部分でない共用部分に物品を置くことは原則として認められないが、宅配ボックスが無い場合等、例外的に共用部分への置き配を認める場合には、長期間の放置や大量・乱雑な放置等により避難の支障とならないよう留意する必要がある。

D 第12条において住宅宿泊事業を可能とする場合は、必要に応じ、住宅宿泊事業法第13条に基づき掲げなければならないこととされている標識の掲示場所等の取扱いについて、あらかじめ使用細則において明確化しておくことが望ましい。

 規約でも区分所有法と異なる定めのできないもの強行規定

     @共用部分の重大変更の決議要件のうち議決権の数は4分の3以上(第17条1項)。ただし区分所有者の定数は過半数まで下げられる。(第21条、第66条で準用されている)

     A管理所有者による重大変更行為の禁止。(第21条2項)

     B規約の設定・変更・廃止に関する決議要件。4分の3以上(第31条1項)(第68条で準用されている)

     C集会招集請求権の定数を区分所有者の5分の1以上に増加させること。下げるのは可(第34条3項)

     D特別決議事項(共用部分の重大変更、規約の変更、建替など)については、招集通知に通知されていないときは決議できない。(第37条2項)

     E管理組合法人の設立・解散決議は4分の3以上であること(第47条1項、第55条2項)

     F義務違反者に対する訴訟提起の決議要件は4分の3以上であること(第58条2項)(第59条2項、第60条2項で準用されている)

     G建物価格2分の1を超える部分の滅失の場合(大規模滅失)の復旧決議の要件は4分の3以上であること(第61条5項)

     H建替決議の要件は5分の4以上であること(第62条1項)

     I団地内の建物の建替承認決議の要件は議決権の4分の3以上であること(第69条1項。ここだけ区分所有者の数は入っていない。)

     J団地内の建物の一括建替決議の要件は5分の4以上であること(第70条1項)

 

  規約で任意に規定できる事項

     @管理組合の名称(法人では「管理組合法人」の名称は用いること)、業務、事務所の設置(法人では必須)

     A管理組合役員の資格、職務権限、理事会・監事の設置(理事・監事は法人にすると必須)、定数、任期(法人では原則2年、規約があれば3年以内)、選任方法

     B集会(総会)の成立要件

     C管理費等の額、徴収方法、会計区分、会計期間、会計処理、遅延損害金の付加、保管方法、諸費用の支払方法、収支予算の編成、収支報告

     D専有部分の用途、管理・使用制限

     E共用部分、敷地、附属施設の用途、運営方法

     F専用使用部分の範囲、専用使用者の資格、決定方法、使用期間、対価の有無、専用使用料の額・徴収方法と譲渡・転貸の可否

     G近隣および地方自治体などとの協定書の承継

★規約原本とは
  従来、管理者や理事が置かれていないなどで、規約の原本の保管がないマンションもかなりありました。
  厳密な規約の原本は、1通の規約書に、区分所有者全員が、区分所有者となった時点で署名 ・押印 すればいいのですが、マンション分譲時の売買契約における煩雑さ・多忙さ、場所などを考慮すると、現実的ではありません。

  そこで、現在では、マンションの分譲会社がマンションの販売時に、規約案文のコピーを渡し、規約案文への同意書に署名 ・押印 を得、最終的に分譲会社から規約原本と各規約の同意書を纏めて、管理組合に渡しています。これが、規約原本となります。

注:以前からあった、押印は、法の改正により省略も可能です。

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★ あるマンション販売でのサンプル

「xxxxマンション」管理に係わる承認書 

(売主)     AA 株式会社 
(管理会社)  BB 管理 株式会社  御中

 今般、土地付き区分所有建物「xxxxマンション」の売買契約締結に伴い、下記の事項を承認します。

          − 記 −
対象物件: 名称   :「xxxxマンション」
        所在地 :東京都千代田区・・・・

1. 別記 
   「xxxxマンション 管理規約」、
   「同使用細則」、
   「同宅配ボックス使用細則」、
   「同駐輪場使用細則」、
   「同共用駐車場使用細則」、
   「同共用駐車場使用契約書(書式)」、
   「同共同バイク置場使用細則」、
   「同共同バイク置場使用契約書(書式)」 案を原案の通り承認し遵守いたします。 

 なお、この規約に基づき、「xxxxマンション管理組合」に加入し、他の組合員と協議の上、規約に定める役員を選任することを承認します。 
 また、専有部分を第三者に貸与する場合は、その者にも、この管理規約及び使用細則等に定める事項を遵守させることを、誓います。

2. 管理規約による正規の管理者(理事長)が選任されるまでの間は、「BB 管理 株式会社」が管理組合の職務を代行することを承認します。
  また、本物件の維持管理の必要上、あらかじめ備品として
  清掃用具、
  管理組合印及び理事長印、
  電話加入権(名義上は、「BB 管理 株式会社」にしますが、費用の負担及び実質上の権利者は、本物件の管理組合とします。)
 などの購入及び管理組合の預金口座の開設を承認します。

3. 本物件の駐輪場、駐車場及びバイク置場の当初の区割りについては、「売主 AA 株式会社」 の指定の方法によることを承認します。

4. 別記 「xxxxマンション 管理費予算見積書」及び「xxxxマンション 管理委託契約書」により、管理組合が「BB 管理 株式会社」に管理を委託することを承認します。

5. 対象物件に関し、売主又はその指定する者が、建物及び共用部分を、次の販売活動のために、無償使用することを承認します。 (規約x条a項参照)
    ア.対象物件内に販売案内所及びモデルルームを設置し、それらに伴う案内板や看板等を設置すること。
    イ.対象物件の外壁面等に販売に関する垂れ幕、看板等を設置すること。

6. 管理の開始後、売主による未販売住戸がある場合には、売主による管理基金・修繕積立基金(一時払い金)の納付は要しないことを承認いたします。(規約x条b項参照)

7. 対象物件の管理開始後、部分管理(暫定管理)があることを承認します。(規約x条c項参照)

8. 管理規約ならびに管理委託契約書への署名 捺印 を、本書の署名 捺印 をもって代えることを承認します。

                                     以上
   年  月   日
      xxxxマンション       号室 区分所有者
      氏名                  
     共有者 氏名              

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★規約の保管は絶対必要です。
  規約はそのマンションでの憲法といえるほど、重要です。

  そこで、この規約原本とその後の規約変更記録の保管責任者は、管理者がいれば、管理者が保管しなければなりません。(区分所有法第33条1項
 管理者がいないときは、建物を使用している区分所有者またはその代理人で、規約または集会の決議で定められ、保管の依頼を受けた者が保管します。 (区分所有法第33条1項)
 管理組合が法人化されていれば
、管理者に代わって、理事が任命されますから規約の保管は理事が行います。(区分所有法第47条12項

 規約はその重要性から、保管しないと、罰として、20万円以下の過料もかせられますから注意してください。(区分所有法第71条

  なお、 標準管理規約では、保管は理事長(管理者)とされています。

<参考>標準管理規約(単棟型) 72条:(規約原本等) 


*(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合 (規約原本等)

(規約原本等)
第72条 この規約を証するため、区分所有者全員が署名した規約を1通作成し、これを規約原本とする。

2 規約原本は、理事長が保管し、区分所有者又は利害関係人の書面による請求があったときは、規約原本の閲覧をさせなければならない。

3 規約が規約原本の内容から総会決議により変更されているときは、理事長は、1通の書面に、現に有効な規約の内容と、その内容が規約原本及び規約変更を決議した総会の議事録の内容と相違ないことを記載し、署名した上で、この書面を保管する。

4 区分所有者又は利害関係人の書面による請求があったときは、理事長は、規約原本、規約変更を決議した総会の議事録及び現に有効な規約の内容を記載した書面(以下「規約原本等」という。)並びに現に有効な第18条に基づく使用細則及び第70条に基づく細則その他の細則の内容を記載した書面(以下「使用細則等」という。)の閲覧をさせなければならない。

5 第2項及び前項の場合において、理事長は、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。

6 理事長は、所定の掲示場所に、規約原本等及び使用細則等の保管場所を掲示しなければならない。

★新規分譲マンションにおける規約の効力発生時点

  それでは、規約はいつから効力を発揮するのでしょうか。
  マンションの新規分譲に際しては、規約の効力発生は、最初の区分所有者に住戸(専有部分)の引渡しがあった時点となります。
 また、管理組合の成立時点も規約により、最初に住戸(専有部分)の引渡しがあった日付をもって成立とします。

★規約の見直しの必要性

 区分所有法など規約に関係する法令の改正があったり、役員のなり手がいないとか、居住者に賃借人が増加したり、高齢者対応の必要性がある場合など、常に実態に即した規約にするために、変化に応じて見直しが必要です。

 また元々の規約は分譲会社が作成したものであることに注意が必要です。規約の後ろの方に、さりげなく、分譲会社の看板の取り付けを認めさせ、さらにその看板の電気代などの維持費まで管理組合の費用にさせている規約もあります。

★規約を見直ししたくても、売れ残りが多くてできない!
 最近の不況下で、マンションの完売がされないマンションもかなり出てきています。
 たとえば、全戸数100戸で議決権数が各戸1のマンションがあったとします。
 そして、まだ50戸が未分譲の場合、議決権はマンション分譲業者が持っています。
 このような状態では、分譲会社は、自社に不利な規約の変更には納得しませんから、規約の変更に必要な区分所有者及び議決権の3/4以上の賛成は得られません。

 さあ、あなたがそのマンションのオーナーなら、どうしますか?


{注意}駐車場の専用使用権を巡って分譲会社と管理組合の争いで、最高裁判所が変な判決を出していますから、注意が必要です。

{設問−1} 平成25年マンション管理士試験 「問6」

〔問6〕 マンション分譲会社Aは、マンションの分譲に際し、専有部分の区分所有権及び敷地の共有持分とは別に、一部の区分所有者Bらに、マンションの敷地の一部に 設けられた駐車場の専用使用権を分譲し、その代金を受領した。Bらは、所定の駐車場使用料を管理組合Cに毎月支払い、駐車場を専用使用してきたが、Cは、 集会決議により規約を変更した上で駐車場使用料を増額する旨の決議をした。ところがBらはこれに応じなかった。この場合に関する次の記述のうち、区分所有 法及び民法の規定並びに判例によれば、適切なものはどれか。

1  Cが、規約を変更した上で駐車場使用料を増額したことは、一般的にBらに不利益を及ぼすものであるから、Bらの承諾を得ない限り、許されない。


X 適切でない。 受忍の範囲で、承諾はいらない。
  平成20年 マンション管理士試験 「問26」 、 平成19年 マンション管理士試験 「問7」 など。
  
 設問の背景説明:新しく区分所有法の勉強をしている人には、設問が何を目的としたものか、こんな勝手な分譲なんて不合理なことをどうして分譲会社ができるのかと思うでしょう。
 でも、現実に昭和の終わり頃(また、最近でも)、マンションの分譲会社は、明らかに区分所有者の共有財産である、敷地の使用権を特定の区分所有者に販売して、利益を得ているのです。
 そこで、分譲後の管理組合がこの不合理さに気がつき各地で裁判を起こしました。
 これらの裁判について、最高裁は、平成10年10月22日には ミリオンコーポラス高峰館事件、平成10年10月30日に シャルム田町事件 と シャルマンコーポ博多事件、平成10年11月20日に 高島平マンション事件、 について判決を出しました。
 設問はこれら一連の事件についてです。

 具体的には、区分所有法第31条に定める「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない」に関係します。
 区分所有法第31条
 「(規約の設定、変更及び廃止)
 第三十一条  規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない
  2  前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。 」

 第31条1項が定める「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼす」とは、論争の起きる箇所で、判例はこの判断として”「特別の影響を及ぼすべきと き」とは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その 不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいうものと解される。」”としています。(平成10年10月30日:シャルマンコーポ博多事件
 そして、設問の駐車場の使用料増額に対しては、”これを使用料の増額についていえば、使用料の増額は一般的に専用使用権に不利益を及ぼすものであるが、増額の必要性及び合理性が認められ、かつ、増額された使用料が当該区分所有関係において社会通念上相当な額であると認められる場合には、専用使用権者は使用料の増額を受忍すべきであり、使用料の増額に関する規約の設定、変更等は専用使用権者の権利に「特別の影響」を及ぼすものではないというべきである”と判断しました。
 確かに駐車場使用料を増額するのは、該当の利用者にとっては不利益ではありますが、受忍すべき範囲であり、区分所有法第31条1項後段にいう”一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきに該当しないので、その承諾はいらないとしましたから、適切ではありません。

 

2  Bらが訴訟において駐車場使用料増額の効力を争っているような場合に、Cが、Bらの駐車場使用料の増額分の不払を理由に駐車場使用契約を解除し、Bらの駐 車場の専用使用権を失わせることは、契約の解除を相当とするに足りる特段の事情がない限り、許されない。

○ 適切である。 訴訟が継続中である。
  設問は、選択肢1で引用しました、最高裁の判決:平成10年10月30日:シャルマンコーポ博多事件 で以下のように判決文があります。
 ”管理組合は、規約の設定、変更等又は規約の定めに基づく集会決議をもって使用料を増額することができ、これが専用使用権者の権利に「特別の影響」を及 ぼすものでない限り、専用使用権者は増額された使用料の支払義務を負うことになる。しかし、この「特別の影響」の有無、殊に、増額された使用料が社会通念 上相当なものか否かは、裁判所の最終的な判断を待たなければ明らかにならない場合が少なくない。したがって、専用使用権者が訴訟において使用料増額 の効力を争っているような場合には、裁判所の判断を待つことなく、専用使用権者が増額された使用料の支払に応じないことを理由に駐車場使用契約を解除し、 その専用使用権を失わせることは、契約の解除を相当とするに足りる特段の事情がない限り、許されないものと解するのが相当である。” 
 よって、適切です。



3  AがBらにマンションの敷地の一部に設けられた駐車場の専用使用権を分譲する売買契約は、公序良俗に反するものであるから、無効である。

X 適切でない。 分譲契約は公序良俗に反しない。
  私なら、このような購入者の無思慮に乗じて、暴利を得る分譲業者の行為は許さないのですが、今度は、最高裁の判決:平成10年10月22日: ミリオンコーポラス高峰館 で以下のような判決文があります。

 ”売買契約書、重要事項説明書、管理規約案の記載に照 らすと、本件駐車場の専用使用権は、本件マンションの分譲に伴い、上告人(分譲会社)が特定の区分所有者に分譲したものであるところ、右専用使用権を取得 した特定の区分所有者は右駐車場を専用使用し得ることを、右専用使用権を取得しなかった区分所有者は右専用使用を承認すべきことをそれぞれ認識し理解していたことが明らかであり、分譲業者である上告人が、購入者の無思慮に乗じて専用使用権分譲代金の名の下に暴利を得たなど、専用使用権の分譲契約が公序良俗に反すると認めるべき事情も存しない
 なお、本件のように、マンションの分譲に際し分譲業者が専用使用権を分譲して対価を取得する取引形態は、好ましいものとはいえないが、このことのゆえに右契約の私法上の効力を否定することはできない。”
 とあり、不本意ですが、判例によるなら、駐車場の専用使用権を分譲する売買契約は公序良俗に反するものと認められませんから、無効ではないため、選択肢3は適切ではありません。

 なお、公序良俗とは、民法第90条
 「(公序良俗)
 第九十条  公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする。」です。



4  Aは、区分所有者全員の委任により、Bらに駐車場の専用使用権を分譲したものであるから、Cは、Aに対して、委任事務処理上の金員引渡請求権に基づき、AがBらから受領した専用使用権の分譲代金の引渡しを請求することができる。

X 適切でない。 分譲会社の行為は委任には該当しない。
  分譲会社が勝手に受領した専用使用権の分譲代金を何とかして、管理組合のものにできないかと、管理組合から相談を受けた弁護士が苦労して「委任」を持ち出した事件です。 
 これには、最高裁の平成10年10月22日の ミリオンコーポラス高峰館事件 と、同平成10年10月30日判決の シャルム田町事件 が該当します。
 まず、ミリオンコーポラス高峰館事件の判決文は以下のようになっています。

 ”右売買契約書の記載によれば、分譲業者である上告人は、営利の目的に基づき、自己の利益のために専用使用権を分譲し、その対価を受領したものであっ て、専用使用権の分譲を受けた区分所有者もこれと同様の認識を有していたと解されるから、右対価は、売買契約書に基づく専用使用権分譲契約における合意の内容に従って上告人(分譲会社)に帰属するものというべきである。この点に関し、上告人が、区分所有者全員の委任に基づき、その受任者として専用使用権の分譲を行ったと解することは、右専用使用権分譲契約における当事者の意思に反するものであり、前記管理委託契約書の記載も右判断を左右しない。また、具体的な当事者の意思や契約書の文言に関係なく、およそマンションの分譲契約においては分譲業者が専用使用権の分譲を含めて包括的に管理組合ないし区分所有者全員の受任者的地位に立つと解することも、その根拠を欠くものといわなければならない。
  したがって、委任契約における受任者に対する委任事務処理上の金員引渡請求権に基づき右対価の引渡しを求める被上告人の予備的請求(注:主位的な請求は不当利得返還請求権でした)は、理由がない。
 
 また、シャルム田町事件 では以下がその該当部分です。
 ”分譲業者である上告人A2興産は、営利の目的に基づき、自己の利益のために専用使用権を分譲し、その対価を受領したものであり、さらに、専用使用権の分譲を受けた区分所有者もこれと同様の認識を有していたと解されるから、右対価は、右分譲契約における合意の内容に従って同上告人に帰属するものというべ きである。この点に関し、上告人A2興産が、区分所有者全員の委任に基づき、その受任者として専用使用権の分譲を行ったと解することは、右分譲契約における当事者の意思に反するものであるといわなければならない。また、ある者が自己のためにする意思の下にした行為が、他の者からの受任によってする行為と外 形的に同一であったとしても、そのことだけで、関係者の具体的意思に反して、両者の間に委任契約が成立していたということはできないし、具体的な当事者の意思や契約書の文言に関係なく、およそマンションの分譲契約においては分譲業者が専用使用権の分譲を含めて包括的に管理組合ないし区分所有者全員の受任者的地位に立つと解することも、その根拠を欠くものである。したがって、委任契約における受任者に対する委任事務処理上の金員引渡請求権に基づき右対価の引渡しを求める被上告人B2の予備的請求(注:主位的な請求は不当利得返還請求権)は、理由がない
 と判断して、「委任」関係を適用して専用使用権の分譲代金の引渡しを請求することはできないとしましたから、適切ではありません。


 なお、委任とは、民法第643条以下にあります。
 「(委任)
 第六百四十三条  委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」



答え:2  
 選択肢4の委任関係はわからなくても、多くの人が疑問を感じている、分譲会社によるマンション敷地内の駐車場の専用使用権の分譲が、一応、平成10年での法の解釈では、おかしいが仕方ないという認識であるという判決の概要を読んだ人は多いと思います。
 しかし、おかしいという認識を受け、区分所有法第30条3項
 「3  前二項に規定する規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形 状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払つた対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定 めなければならない。 」の規定が新しく追加されています。


注:追記(2017年 9月):この最高裁判所の判決に納得できませんので、別途 「駐車場の専用使用権をめぐる平成10年の最高裁判所の判決について」 を作成しましたので、参考にしてください。


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第三十条

2項  一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。

過去出題 マンション管理士 R02年、R01年、H23年、H22年、H17年、
管理業務主任者 未記入

★一部共用部分の規約

 この条文も分かり難いのですが、度々、区分所有法で出てくる、1棟の中で一部共用部分(1棟に店舗部と住居部があり、明らかに客だけしか使わない店舗部専用出入口と、明らかに居住者しか使わない居住用専用の出入口が分かれているときの各々の出入口や、高層居住用マンションで上層階専用エレベーターと下層階専用のエレベーターがある時などの各々のエレベーターは、それぞれが一部共用部分となる)については、全体共用部分と同様にその一部の共有者だけでの団体(全体の団体に対する部会的な存在)を形成し(第3条後段)、全員の利害にかかわるものを除きその一部の者達だけで管理を行うことが原則(第16条)ですが、全体の規約に定めれば(全体の)管理組合の管理に管理を移管することができることは第16条の解説のとおりです。

 ただし、棟全体の規約に、全体の利害に関しない一部共用部分の事項を取り組む場合には、一部共用部分の区分所有者の1/4超の反対があればできない(第31条2項)の制限はあります。

 1棟内における一部共用部分の団体(全体の団体に対しては部会ともいえますが)においても、その一部共用部分の団体だけの自治および一部共用部分の管理のために規約を設定することができ、その内容や権限は全体の団体(管理組合)の場合と異なりません。

 ただ、この一部共用部分の団体(部会)の決議が必須となるのは、一部共用部分の変更のとき以外にはありませんから、全体の団体(管理組合)組織と重複して一部共用部分の団体(部会)を別途組織化するのは煩雑且つ不経済です。
そのため用途の異なる複合建物の場合以外には別途の部会規約を設定して部会を構成する例はあまりないようです。

 そこで、第30条2項は、かなり読みづらいのですが、
 @一部共用部分に属しても区分所有者全員の利害に関する事項、
  例えば、1棟のマンションが店舗部と住居部で構成される場合、店舗部の一部共用部分である外装の変更が建物全体の外観に重大な影響を与える場合などには、店舗部の一部区分所有者だけの規約で定めることはできず、全体の規約でしか定めることができないとしています。(第30条2項の反対解釈から)

 Aまた、一部共用部分に属していて、区分所有者全員の利害に関しない事項でも、その一部共用部分の団体が望むなら区分所有者全員の規約に定めることができます。

 これらにより、一部共用部分では、上で説明した@とAの状態にない事項だけが最後に残り、この最後の事項については、一部の区分所有者だけに適用される規約が定められることになります。

★一部共用部分は、全体の利害に関係せず、かつ全体の規約に取り込まれていないときには、一部共用部分の区分所有者だけの規約が作れる。

  この一部共用部分の区分所有者だけの規約を設定・変更・廃止には、一部共用部分の区分所有者および議決権の各3/4以上の多数の決議がいる。(区分所有法第31条1項)

<参照> 区分所有法 第31条1項:

  規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によってする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

  つまり、一部共用部分を共用している区分所有者には、マンション全体の規約もあり、一部共用部分だけの別の規約も設定が可能です。
 また、一部共用部分であっても、全体の規約に包括されるように定めることもできます。

  だだし、一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関しない事項を、全体の規約に取り込む場合には、一部共用部分を共用する区分所有者の1/4を超える者、又は議決権の1/4が反対したら、全体の規約の設定・変更・廃止はできません。(区分所有法第31条2項)

<参照> 区分所有法 第31条2項:(規約の設定・変更および廃止)

  前条第二項(第30条2項のこと)に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該 一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。

(注:)「一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権」と「及び」ではなく「又は」になっていることに注意の事。一部共用部分の区分所有者の数又は議決権の数のどちらかでも1/4を超える反対があれば、全体の規約の設定、変更、廃止はできない。

★一部共用部分の全体管理は、問題が多い。
  1棟の建物において下が店舗で、上が住居などのマンションで全体管理をしている場合には、入居後問題が発生しています。
  例えば、 分譲当初の規約では、店舗部分の駐車場が店舗で無償使用できるようになっていたり、屋上に店舗の看板が管理組合の費用(電気代など)で維持されていたりします。
  また、管理費が店舗部と住居部では極端に差があることで、是正を求めて裁判になっています。   

  判例としては、各々の事例で、該当の利益・不利益、受忍限度を超えているかどうか、合理的な限度を超えているかどうか、が判定基準となっています。


★「規約に違反」した区分所有者と占有者に誰が、差止め請求ができるのか
  区分所有法第6条に定める「共同の利益に反する行為の禁止等」は、今後説明します、第57条(共同の利益に反する行為の停止等の請求)から第60条(占有者に対する引渡し請求)の規定により訴訟の主体が管理組合法人なら理事、集会の決議により管理者や指定された区分所有者が提訴できますが、この第30条1項で定めた「建物等の使用に関する義務違反」については、区分所有法では規定がありません。

  解釈としては、規約は団体の規約である以上、各区分所有者が規約により負う義務は団体に対する義務であるから、これに対応する権利も団体が持ち、かつ行使できるもとのしています。
  これにより、管理組合法人なら法人(代表の理事)、法人でなければ、団体として(民事訴訟法第29条参照)でき、具体的には、管理者ができるという説があります。


{設問-1}平成23年 マンション管理士試験 「問1」

〔問 1〕マンション(マンションの管理の適正化の推進に関する法律(以下「マンション管理適正化法」という。)第2条第1号イに規定するマンションをいう。以下同じ。)の一部共用部分に関する次の記述のうち、建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか。

1 区分所有者全員の規約で定めれば、共用部分の一部について、これを一部共用部分として、一部の区分所有者が管理するものとすることができる。

X 誤っている。 「共用部分の一部」と「「一部共用部分」は違う。
区分所有法での一部共用部分とは、区分所有法第3条の後半に出てきます。
  「(区分所有者の団体)
   第三条  区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。」とあります。
 具体的には、1棟のマンションで下が店舗、上が住居用の構造となっており、店舗部分には従業員専用出入り口があり、その従業員専用出入り口を、住居部分の人は明らかに利用しない場合に、その部分は、「一部共用部分」となります。
 この場合「一部共用部分」は、まとめてそのマンションが全体として管理してもいいし、別の店舗部分だけの管理体制にしてもいいことになります。
 その規定は、区分所有法第16条
 「(一部共用部分の管理)
  第十六条  一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するもの又は第三十一条第二項の規約に定めがあるものは区分所有者全員で、その他のものはこれを共用すべき区分所有者のみで行う。 」とあり、
 一部共用部分の管理のうちから、除かれるのは、
  @区分所有者全員の利害に関係するもの 又は
  A第三十一条第二項の規約に定めがあるもの です。
  ここでの、「一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するもの」の例としては、店舗部分の外装を変更する場合に、建物全体の美観を損ねるような場合です。
 では、引用されています区分所有法第31条2項は、
  「(規約の設定、変更及び廃止)
   第三十一条  
    2  前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。 」です。
 またも引用されています、前条2項とは、第30条2項ですから、
  「(規約事項)
   第三十条
    2  一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。 」です。
  ここを解説しますと、区分所有者全員の利害に関係しない一部共用部分であっても、区分所有者全員での規約の定めがあれば、それが、一部共用部分であっても管理は、区分所有者全員で行うことができるということです。
  そこで、第16条に戻りますが、一部共用部分を共用すべき一部の区分所有者の規約で定めることのできるのは、
   @区分所有者全員の利害に関係しないもの でかつ
   A区分所有者全員の規約に定めがない ものとなります。

   設問の場合、「共用部分の一部について」とあり、これは、区分所有法第3条後半での「一部共用部分とは、一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分」ではありませんから、「これを一部共用部分として、一部の区分所有者が管理するものとすること」は、区分所有法上できません。

  *しかし、「共用部分の一部」と、区分所有法での「一部共用部分」とは別と出題者は言いたいのだろうが、ここは、区分所有法でいう”一部共用部分”が「明らかでないこと」が多い実態から、規約で明確にしておく必要性がある場合も考えられ、区分所有法第30条1項との関係で、区分所有者の総意があれば、許されるのではという問題がある設問だ。
  参考:区分所有法第30条1項
 「(規約事項)
   第三十条  建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。」


2 一部共用部分の管理は、区分所有者全員の規約に定めがあるものを除き、これを共用すべき区分所有者のみで行う。

○ 正しい?
 選択肢1で解説、引用しましたように、区分所有法第16条
  「(一部共用部分の管理)
  第十六条  一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するもの又は第三十一条第二項の規約に定めがあるものは区分所有者全員で、その他のものはこれを共用すべき区分所有者のみで行う。 」とあり、
  @区分所有者全員の利害に関係するもの と
  A区分所有者全員の規約に定めがある場合 を除いて、これを共用すべき区分所有者のみで行うことになります。(ここを、誤っているとするなら、@の区分所有者全員の利害に関係するもの がないとするのか?)


3 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものについての区分所有者全員の規約の設定は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の1/4を超える者が反対したときは、することができない。

○ 正しい。 
 ここは、選択肢1で解説・引用しました、区分所有法第31条2項
 「(規約の設定、変更及び廃止)
  第三十一条 
    2  前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。 」
 そして、前条第二項とは、区分所有法第30条2項で、
  「(規約事項)
   第三十条
    2  一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。 」
 に該当しています。

4 一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するものについて、区分所有者全員で管理する場合は、その旨を区分所有者全員の規約で定めなければならない。

X 誤っている? 
 選択肢1で解説しました、区分所有法第16条
 「(一部共用部分の管理)
  第十六条  一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するもの又は第三十一条第二項の規約に定めがあるものは区分所有者全員で、その他のものはこれを共用すべき区分所有者のみで行う。 」とあり、
同法第30条2項
 「(規約事項)
   第三十条
    2  一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。 」です。
  「一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するものについて」は、区分所有者全員の規約に入りますから、特に「その旨を区分所有者全員の規約で定めなければならない」とは明確に表現はされていません。しかし、この「区分所有者全員の利害に関係するかどうか」の判断においては、実態として区分が難しい場合もあり、「その旨を区分所有者全員の規約で定め」ておけば、トラブルが解消されますが。

答え:2、3。 
マンション管理センターの解答:3
 この出題のように、問題の設定が拙いのが、「マンション管理センター で、度々、謝りの文章を出しています。


{設問-2}平成22年 マンション管理士試験 「問2」

〔問 2〕一部共用部分についての規約の定めに関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

1 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものについては、区分所有者全員の規約に定めることはできない

X 誤っている。  
 まず、一部共用部分とは、建物において、構造上明らかに一部の専有部分にのみ共用されている廊下や階段室のことをいいます。例としては、下が店舗で上が居住用のいわゆる「下駄ばきマンション」を想定してください。この場合、店舗用にだけ使用される廊下や階段、また住戸の人専用の廊下やエレベーターが、この一部共用部分に該当します。(区分所有法第3条後半参照)
 本来、この一部共用部分の管理や使用は、一部共用部分の区分所有者達だけで行うように規約を定めてもいいのですが、建物全体としての管理を望むなら、区分所有者全員の利害に関係していなくても、区分所有者全員の規約に定めることができます。それが、区分所有法第30条2項です。
 「(規約事項)
  第三十条  
   2  一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。 」
 丁寧に読まないと、分かり難い条文ですが、「一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて」により、区分所有者全員の利害に関係しないものであっても、区分所有者全員の規約に定めることができます。
 そこで、一部共用部分の区分所有者達で定めることのできるのは、@区分所有者全員の利害に関しないこと、と、A区分所有者全員の利害に関しないことだけど区分所有者全員の規約に定められている事項を除いた事項となります。


2 一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属し、規約で特別に定めても管理者が所有するものとすることはできない。

X 誤っている。 
 
前半の「一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属し」は、区分所有法第11条1項ただし書きにより正しい。
 「(共用部分の共有関係)
 第十一条  共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。 」
 そして、後半の「規約で特別に定めても管理者が所有するものとすること」については、区分所有法に特別に規定される、管理者が所有権を登記できない共用部分を所有するという規定、いわゆる「管理所有」があります。それは、同法第27条1項です。
 「(管理所有
 第二十七条  管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。」
 この第27条1項の規定は、一部共用部分であっても適用が可能ですから、規約で特別に定めれば、管理者が一部共用部分を所有することができます。


3 一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の利害に関係するものであっても、これを共用すべき区分所有者のみで行う旨を規約で定めることは妨げない。

X 誤っている。 
  分かり難い設問です。これは、選択肢1で説明した逆の解釈です。
  区分所有法第30条2項は、区分所有者全員の利害に関するものは、区分所有者全員の規約で定めるように規定されていますから、「これを共用すべき区分所有者のみ(一部共用部分の区分所有者達だけ)」での規約は定められません。


4 一部共用部分であるか否かは、その構造上決定されるものであって、規約で別段の定めをすることはできない。

○ 正しい? 
 一部共用部分については、区分所有法第3条の後半が参考になります。
 「(区分所有者の団体)
 第三条  区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。 」とあり、
 一部共用部分であるか否かは、その共用部分の客観的な性質からみて、”明らかであること”が求められていますから、規約で別段の定めはできないと考えられます。しかし、現実には、全部共用部分か一部共用部分であるかが明確ではない場合が多くて、裁判になっていますので、規約で定めた方がいいでしょう。
(参考判例:構造・機能上特に一部の共用が明白な場合に限ってこれを一部共用部分として扱うことを相当とした(東京高裁 昭59年11月29日。他に、東京高裁:平成14年9月30日、東京地裁:平成5年3月30日など)

答え:4

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第三十条

3項  前二項に規定する規約は、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設(建物の敷地又は附属施設に関する権利を含む。)につき、これらの形状、面積、位置関係、使用目的及び利用状況並びに区分所有者が支払った対価その他の事情を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるように定めなければならない。

過去出題 マンション管理士 H18年、H17年、
管理業務主任者 R03年、

衡平...公平と同じ。釣り合いがとれていること。

★多くの場合、マンションの規約は、国土交通省がマンションの規約の雛形とした「マンション標準管理規約」(区分所有法の改正や判例により、度々改正されるので最新版に注意のこと)が公表され、これに準拠した規約が分譲会社によって作成されるのが一般的になっています。

●規約は、
   1.形状、
   2.面積、
   3.位置関係、
   4.使用目的、
   5.利用状況、
   6.区分所有者が支払った対価、
   7.その他の事情、
  を、総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平を図って定めること。

★規約の設定過程 〜原始規約とは〜
  通常のマンションの分譲では、分譲会社が分譲するにあたって宅地建物取引業法上、分譲契約書・重要事項説明書・管理規約のいわゆる3点セットを現地販売所やモデル・ルームに備えることとなっていますので、規約(管理規約)は、分譲を行う時点で分譲会社によって規約原案が作成されます。

 そして販売が進むにつれ、各購入者から売買契約書と共に別途、「規約の合意書(承認書)」を取り付けることにより最終的に居住者(区分所有者)全員の合意を集めて、いわゆる、全員の書面合意による「書面決議」により規約(一番最初の規約という意味で原始規約といわれています。)が成立することになります。
 でも、この形態では規約の中身は、分譲業者が自己の都合のいいように決定し、本来の規約の当事者であるべき購入者(居住者=区分所有者)がその内容の決定に加わる余地が事実上ありません。

 マンションの購入希望者が原始規約案に反対するなら、売買契約が成立しませんので、購入希望者は余り規約の内容を読まずに、形式的に「合意書」に署名 ・捺印 しているのが実情です。
 多くのマンションの購入者は、初めて高額な自分の住み家「マンション」を手に入れる興奮で一杯です。肝心の売買契約書も金額以外は読み飛ばし、ましてページ数の多い「管理規約」を購入時に提示されても、内容を完全に理解しないうちに 署名 ・捺印 しています。

 そのため、一部の分譲業者が管理組合に不当な内容の規約を作成したり、公平でない規約がつくられます。
 また、実際に過去のマンションの分譲において、マンションの敷地内に分譲業者が権利を持つ駐車場がある、分譲業者の専有部分の管理費が、他の専有部分より低く設定されていたなど、分譲業者に有利な規約が多くありました。
 こうした「著しく不公平」な内容の規約は、
民法第90条「公序良俗」に反する場合には無効となりますが、民法での「公序良俗」の概念は抽象的であり判断基準が明確でないとの指摘がありました。
 そこで、この第30条3項の規定が平成14年の改正で追加されました。

 この第30条3項の規定により、衡平性を欠く場合には、その規約は無効と判断されます。

 参照:専用使用権の説明:区分所有法第4条1項

★対象は、専有部分、共用部分、建物の敷地 そして その附属施設
  これは、基本的にマンションの建物と土地のすべてで、区分所有者間の利害調整が図られ、衡平でなければいけないということになります。

★形状、面積とは、
  床面積や容積その他の外形的要素を指します。
  *形状については、例えば各区分所有者の専有部分の容積や空間の大きさ等もこの概念の中に含めて考えることができます。
  *面積については、これは、区分所有法が専有部分の床面積の割合を共用部分の持分割合、共用部分の負担等の割合、敷地利用権の割合、議決権の割合等を決定する原則としているので、中心的な判断要素の一つとして挙げられます。

★位置関係とは、
  1棟の建物内または敷地内での専有部分と共用部分との位置関係や、各々の専有部分の位置を指します。
  例えば専用庭やルーフバルコニーのように,専有部分と建物の敷地の一部がその位置関係から見て密接な関連性を有している場合、特定の区分所有者が専用庭等の設定を受けていることをもって、その特定の区分所有者と他の区分所有者の利害が著しく不公平であるとは評価できないと考えられます。
  なお、ここでの位置関係とは、マンション内部やそのマンションが建っている敷地内での位置関係だけを考えていますので、マンションの近隣にある店舗や駅までの距離などは、含まれません。

★使用目的とは、
  専有部分を商業用(店舗・事務所)や居住用に定める場合における用途の定め等を指します。
  例えば,その区分所有建物の客観的な構造等から見て、当該建物、つまり専有部分と共用部分の使用目的が、居住専用か、商業用との混在かということは、規約の内容の衡平性の判断の際に考慮される要素の一つとなります。

★利用状況とは、
  共用部分などの具体的な利用状況やその頻度などを指します。
 この利用状況という概念には、比較的広範な状況・事項を取り込めるのではないかと、創案者は考えているようです。
  例えば、区分所有者間において、特定の共用部分や附属施設(集会室等)の利用頻度に大きな差があるような場合には、その共用部分や附属施設の維持管理に必要な費用の負担について、区分所有者間で差を設けることが考えられます。こうした場合の利用頻度等が、ここでの利用状況として、衡平性を判断する要素として考慮されます。

★区分所有者が支払った対価とは、
  1階や最上階などの特定の区分所有者が、庭や屋上テラスなどの共用部分を専用使用する権利の設定を受けるなど、その利用について特別の利益を得ている場合には、これに関連して別途対価を支払っていることは多くのマンションで見られます。
 この場合には、こうした対価の有無やその多寡についても、規約の内容の衡平性を判断する場合の重要な考慮要素になります。

  最近の超高層マンション(タワー・マンション)の出現により、同一の専有面積であっても、下層階と上層階では極端に分譲価格に差が見られます。このような場合には、衡平さを保つために、例えば、議決権において(第38条参照)同一の専有面積であっても、差をつけることも必要です。

★その他の事情とは、
  規約を定める場合、それぞれのマンションには、様々な事情があるので、上記のように列挙した以外の考慮要素もあるでしょうからそれらも「その他」として考慮します。
  例えば、分譲業者がマンションの販売の際に規約の内容についてどの程度説明をしたかなどの原始規約の設定にいたる経緯も、「その他の事情」に含まれます。

  以上は、平成14年の改正にあたって、立法の担当者の説明等にあるものですが、分譲会社が、分譲時に十分に規約の内容を購入者に対して説明がない時には、販売そのものにも影響を与えます。

 以前は分譲業者が、自社に都合のいいように規約を作成し、裁判になっていた。

     {例}1.駐車場使用権を、分譲会社が持つ。
        2.自社管理の室の管理費を他の室の管理費より、不当に低く設定した。

 このような場合への対処として平成14年の改正法では本3項を新設し、規約内容の実質的衡平を要求しています。
このことは規約の新設でも変更でも変りはありませんが、制定の趣旨からは特に原始規約を事実上作成する分譲業者へ、規約の作成を衡平に行うように向けたものといえるでしょう。

★規約は公平であること。これに違反する規約は無効。
  しかし、規約を無効であるからといって変更すると、必ず「特定の区分所有者」が関係します。
 そして、なにが衡平であるかは、該当の区分所有者ごとに異なります。

 現実には、なにが衡平であるかの判断に当たっては、当事者同士の判断では決着をつけることは難しくて、第三者である裁判所が介在し、客観的そして総合的な判断により該当の区分所有者が「受忍すべき範囲」を超えているかどうかを争うことになります。

 一般的な言葉で言いかえますと、「ある行為があれば、その必要性および合理性と、その行為を受ける人の不利益とを比較考慮して、受忍すべき程度の不利益にあるかどうか」が判断の基準となります。

{特定の区分所有者の承諾が必要な例

1. すべての駐車場について、区分所有者の公平な利用を確保するため、特定の区分所有者の駐車場を専用使用する権利を廃止する旨を定める場合は、区分所有者の専用使用権に「特別の影響を及ぼす」ため、その区分所有者の承諾がないままの消滅決議は無効である。(最高裁:平成10年11月20日:高島平マンション事件)

  この場合の特別な影響とは、達成される目的との関係で規制の程度、方法等が通常の受忍の範囲を超えることをいい、分譲条件の専用使用権の剥奪は通常受忍の限度を超える

2.規約の変更により、区分所有者に認められていた屋上、外壁、敷地の無償の専用使用権を消滅させることは、その区分所有者の承諾が必要。その承諾がない以上、規約の変更は無効である。(東京高裁:平成8年2月20日)

********************************* 

{特定の区分所有者の承諾は不要な例}

1. 特定の区分所有者が分譲時の契約で専用使用することとされている駐車場の低廉な使用料について、「社会通念上相当な額」に増額する旨を定める場合は「特別の影響」を及ぼさない。(最高裁:平成10年10月30日:シャルマンコーポ博多事件)

2.従来特定の区分所有者が無償で使用している駐車場について、「集会の決議」で有償化(有償化決議)し専用使用権者に使用料を払わすことは、使用料が社会通念上相当な額と認められる場合は「特別の影響」を及ぼさない。(最高裁:平成10年11月20日:高島平マンション事件)

3.すべての駐車場について、共用部分の維持管理上特段の事由がある場合は、一定期間、管理者がその使用を制限することができる旨を定める場合。

不要:合理的な負担を求めることは妥当性があり、一般に受忍の範囲内である。(判例)

4.不在組合員に対し、1戸あたり月額 2,500円の住民活動協力金を支払わせる規約の変更は、不在組合員の権利に「特別の影響」を及ぼすものではない。(最高裁:平成22年1月26日:中津リバーサイドコーポ事件)


★そんなに、不公平な規約が最初からあるなら、分譲後の一定期間は、規約の改正を簡単にできるようにしたらいいのでは?

 平成14年の改正で、この条文を加えるなら、分譲後の一定期間は、通常の規約改正での要件(区分所有法第31条以下参照)の区分所有者及び議決権の3/4以上の決議が必要などを緩和したらどうかという検討もされています。

 しかし、規約はもともと厳格な要件が必要とされているのに、分譲後だけの状況で、特例を認めていいのか。
 ペットを飼っていいという規約で、そのマンションを購入したのに、すぐにペット禁止となったのでは問題が大きすぎる、などの面から条文化されなかったとのことです。


{設問}区分所有法第30条の規定により、専有部分若しくは共用部分又は建物の敷地若しくは附属施設につき規約を定める場合は、これらの形状、面積、位置関係、使用目的、利用状況等を総合的に考慮して、区分所有者間の利害の衡平が図られるよう定めなければならないとされているが、これらに関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 形状、面積とは、床面積や容積その他の外形的要素を指す。

答え:正しい。外形的要素である。

2 位置関係とは、区分所有者の利便に係る周辺施設等との位置関係を指す。

答え:誤りである。
 一棟の建物内又は敷地内での専有部分と共用部分との位置関係や、各々の専有部分の位置関係を指し、周辺施設との利便の位置関係ではない。

3 使用目的とは、専有部分を商業用や居住用に定める場合における用途の定め等を指す。

答え:正しい。
 専有部分を商業用(店舗用・事務所用など)や居住用に定めた、用途に関する項目である。

4 利用状況とは、共用部分等の具体的な利用方法やその頻度等を指す。

答え:正しい。 
 共用部分などの利用状況である。

正解:2

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第三十条

4項  第一項及び第二項の場合には、区分所有者以外の者の権利を害することができない。

過去出題 マンション管理士 H20年、
管理業務主任者 H24年、H18年、

★規約の対外的効力 〜区分所有者、占有者以外の人には及ばない〜

 本第30条4項では、1項の区分所有者全員の規約の設定・変更・廃止と、2項の一部区分所有者における一部共用部分についての規約の設定・変更・廃止、つまり「規約は区分所有者以外の者の権利を害することができない」と規定しますが、規約がその建物内の区分所有者の団体の自治法であることから団体外の者に効力を及ぼすことができないのは当然です。
従って、本4項はその当然の事柄の確認規定ということになります。

 ただし、この区分所有者団体の周辺にいる関係者にも全く及ばないとすると団体の目的達成に支障が出る場合がありますから、必要な関係者には規約の効力が及ぶことを個別に定めています。
第46条1項の特定承継人および同条2項の占有者がこれにあたります。

 ★規約はあくまでも、該当のマンション内だけの約束事であり、マンションの持ち主以外の人の権利には及ばない。

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第三十条

5項 規約は、書面又は電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)により、これを作成しなければならない。

過去出題 マンション管理士 R04年、R03年、H15年、
管理業務主任者 R05年、H20年、H15年、

★コンピューターの普及による、IT(アイ・ティ=インフォメーション・テクノロジー)化に伴い平成14年に追加された項目です。

★規約をつくったら、@書面または、AパソコンでCD、USBメモリーなどにしておくこと。
 この新しい規定により、特に、前もって集会や規約での承認がなくても、規約の電磁的記録は書面と共に、”集会の決議がなくても最初から許される”ことに注意。

 平成14年の区分所有法の改正までは、規約(議事録も 第42条1項参照)は書面だけによって作成を義務付けられていましたが、このIT化による改正により、書面でもまた電磁的記録によっても作成することができるようになりました。

    ◎規約は保管・閲覧の義務がある。されないと罰則もある。<参照>区分所有法第33条罰則は、第71条

<参照>区分所有法 第33条:(規約の保管及び閲覧)

第三十三条  規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。

 前項の規定により規約を保管する者は、利害関係人の請求があつたときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧(規約が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したものの当該規約の保管場所における閲覧)を拒んではならない

 規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。

電磁的記録...電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものとして法務省令で定めるもの。

  具体的な電磁的記録はコンピューター用語では「ファイル」と呼ばれる物に名前を付けて保存します。そのファイルを記録する媒体としては、磁気ディスク、磁気テープ、フロッピー・ディスクやCD、ICカード、USBメモリーなどがあります。この媒体はどれでもかまいません。

 法務省令とは、「建物の区分所有等に関する法律施行規則」(平成十五年法務省令第四十七号)です。

<参照>建物の区分所有等に関する法律施行規則:(平成十五年五月二十三日法務省令第四十七号) 注:令和5年12月27日施行にあわせた

 建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号)第三十条第五項、第三十三条第二項、第三十九条第三項、第四十二条第四項及び第四十五条第一項の規定に基づき、建物の区分所有等に関する法律施行規則を次のように定める。


(電磁的記録)
第一条 建物の区分所有等に関する法律(昭和三十七年法律第六十九号。以下「法」という。)第三十条第五項に規定する法務省令で定める電磁的記録は、電子計算機に備えられたファイル又は電磁的記録媒体(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって電子計算機による情報処理の用に供されるものに係る記録媒体をいう。第三条第一項第二号において同じ。)をもって調製するファイルに情報を記録したものとする。


<参考までに>

(電磁的記録に記録された情報の内容を表示する方法)
第二条 法第三十三条第二項に規定する法務省令で定める方法は、当該電磁的記録に記録された情報の内容を紙面又は出力装置の映像面に表示する方法とする。

(電磁的方法)
第三条 法第三十九条第三項に規定する法務省令で定める方法は、次に掲げる方法とする。
   一 送信者の使用に係る電子計算機と受信者の使用に係る電子計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織を使用する方法であって、当該電気通信回線を通じて情報が送信され、受信者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに当該情報が記録されるもの
   二 電磁的記録媒体をもって調製するファイルに情報を記録したものを交付する方法
 2 前項各号に掲げる方法は、受信者がファイルへの記録を出力することにより書面を作成することができるものでなければならない。

(署名に代わる措置)
第四条 法第四十二条第四項に規定する法務省令で定める措置は、電子署名及び認証業務に関する法律(平成十二年法律第百二号)第二条第一項の電子署名とする。

(電磁的方法による決議に係る区分所有者の承諾)
第五条 集会を招集する者は、法第四十五条第一項の規定により電磁的方法による決議をしようとするときは、あらかじめ、区分所有者に対し、その用いる電磁的方法の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。
 2 前項の電磁的方法の種類及び内容は、次に掲げる事項とする。
   一 第三条第一項各号に規定する電磁的方法のうち、送信者が使用するもの
   二 ファイルへの記録の方式
 3 第一項の規定による承諾を得た集会を招集する者は、区分所有者の全部又は一部から書面又は電磁的方法により電磁的方法による決議を拒む旨の申出があったときは、法第四十五条第一項に規定する決議を電磁的方法によってしてはならない。ただし、当該申出をしたすべての区分所有者が再び第一項の規定による承諾をした場合は、この限りでない。

(電磁的方法による通知又は催告に係る相手方の承諾等)
第六条 次に掲げる規定により電磁的方法による通知又は催告をしようとする者は、あらかじめ、当該通知又は催告の相手方に対し、その用いる電磁的方法の種類及び内容を示し、書面又は電磁的方法による承諾を得なければならない。
   一 法第六十一条第九項
   二 法第六十一条第十二項
   三 法第六十三条第二項
 2 前項の電磁的方法の種類及び内容は、次に掲げる事項とする。
   一 第三条第一項各号に規定する電磁的方法のうち、送信者が使用するもの
   二 ファイルへの記録の方式
 3 第一項の規定による承諾を得た者は、同項の相手方から書面又は電磁的方法により電磁的方法による通知又は催告を受けない旨の申出があったときは、当該相手方に対し、当該通知又は催告を電磁的方法によってしてはならない。ただし、当該相手方が再び同項の規定による承諾をした場合は、この限りでない。

★また、IT化により、電磁的記録は、規約だけでなく、集会での議事録でも認められています。(区分所有法第42条1項参照)

<参照>区分所有法 第42条1項:(議事録)

第四十二条  集会の議事については、議長は、書面又は電磁的記録により、議事録を作成しなければならない。

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(規約の設定、変更及び廃止)

第三十一条

1項  規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によってする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。

過去出題 マンション管理士 R02年、H30年、H26年、H25年、H24年、H23年、H21年、H20年、H19年、H17年、H15年、H14年
管理業務主任者 R05年、R03年、H29年、H28年、H27年、H26年、H25年、H22年、H19年、H17年、H15年、H14年、H13年

★規約の設定・変更・廃止等の要件 〜区分所有者及び議決権の各3/4以上の集会の決議(特別多数決議)が必要
      規約は重要なので、この要件は規約でも絶対変更できない。(注:区分所有法第17条の「共用部分の重大変更」での、区分所有者の定数だけが過半数に減らすことが許されているのと、混同した出題が多い。)

★ここでも、多数決の原理の採用

 第31条は規約の設定、変更及び廃止の手続きに関する規定です。

 規約が区分所有者同士の「契約」だとすれば、
民法の原則では、「設定・変更・廃止」を行うときには、当然その効力の及ぶ全員の合意が必要となります。
 しかし、
民法で求める団体の活動で全員が合意することは殆ど不可能である現状認識から、区分所有法では、多くの団体活動における決定方法と同様に多数決原理が採用されています。

 

 第31条は区分所有者の団体の根本規則となる規約の設定・変更、廃止時における多数決原理を表した規定でもあります。

★マンションのルールは、特別多数決で決めること
 規約は、区分所有者の団体が遵守しなければならない根本規則であることや、その内容が、廊下や階段室等の共用部分だけでなく時には区分所有者の専有部分に関する権利を制限し義務を課すこと、しかも一度成立すると反対者に対してもその効力が及ぶ重要度の高さを認識し、多数の区分所有者の同意を得て決めるとしていますが、通常の場合における過半数では足らず、もっと多くの賛成を必要とする特別多数と呼ばれる数字、つまり、区分所有者及び議決権の各3/4以上の同意が、規約の設定、変更又は廃止における要件とされています。

 

 まず、その特別多数における数をいくつにするのかの妥当性ですが、3/4以上でいいのか、それとも4/5以上を必要とするのか、どの程度であればよいかは非常に判断が難しい問題です。
そこで、その程度の判断を問題が発生する度に、第三者である裁判所の合理的判断に任せる方法も考えられます。
しかし、問題の発生の都度、裁判所の判断を求めることも実務的でなく、事前に納得のいくと思われる範囲で、法文により定めておく方法もあります。

 この考え方から、第31条では、規約の設定、変更又は廃止について、
    「@区分所有者 及び 
     A議決権 の 
     各四分の三以上の多数の賛成」
    (特別決議事項)を成立要件としました

★どうして、@区分所有者の数 と A議決権 の2つの要件が必要か 〜民法との妥協点〜

 このように、第31条では議決要件として、@区分所有者数 及び A議決権数 の双方を要求していますが、区分所有者の数だけを要件とすることは区分所有法の本来的機能である民法物権編の特則としての財産管理法の趣旨に反しますし(財産の量に比例して制約を受けるのだから発言権も持分に比例するのが合理的と考えられています)、一方、議決権(原則:専有部分の床面積)だけを要件とする場合には弱小権利者の権利が守られず、規約という団体管理法の趣旨に反するので、区分所有法では、両者の調和を図った巧妙な方法と思われます。
 もとよりどちらか一方のみを要件とした場合に比べて、区分所有者数と議決権という2つの要件は、決議に際して面倒で窮屈なものとなりますが、対立する利益の調和(妥協)を図る場合のやむを得ない結果ととらえることができます。

区分所有者の数 〜共有でも一人〜

  区分所有者の数は、1つの専有部分(室)を数人で「共有」していても、1人です。
  また、逆に1人で複数の専有部分(室)を所有していても区分所有者の数は、1人と数えます。

議決権の数  〜原則:専有部分の床面積で配分する〜

 議決権は原則として、各区分所有者が有する専有部分の床面積に応じて配分されます。第14条第38条
 しかし、規約で専有部分の床面積と異なった割合も決められます(第38条)ので、床面積の大小に関係なく専有部分1つにつき、1議決権とすることも可能です。

 *現実の規約では、各専有部分の床面積(u)に応じて配分すると 各専有部分の床面積を全体の床面積で割ることになリます。
  例えば、1つの専有部分では、70.43(u)/25,567.12(u) などの細かな数字になり、過半数や 3/4 の算出が大変となるため、床面積に大幅な差が無いときには、1専有部分(1戸)=1議決権とする方が現実的です。

 しかし、各専有部分の床面積が極端に差があるのに、全部を同一の議決権にすると、この規約は無効になりますから気を付けてください。
また、逆に最近の超高層マンション(タワー・マンション)の出現により、低層階と上層階で同じ床面積であっても、分譲価格に極端な差がある場合にも、議決権の設定においては調整が必要となります。現実には、どこに妥当性を置くかで判断が難しいですが。

 標準管理規約(単棟型)では、特に議決権割合を具体的には指定せず、各マンションの特徴に合わせて、規約で設定できることにしています。

<参考>標準管理規約(単棟型)46条 及び 別表第5 議決権割合: (議決権)

第46条
各組合員の議決権の割合は、別表第5に掲げるとおりとする。

2 住戸1戸が数人の共有に属する場合、その議決権行使については、これら共有者をあわせて一の組合員とみなす。

3 前項により一の組合員とみなされる者は、議決権を行使する者1名を選任し、その者の氏名をあらかじめ総会開会までに理事長に届け出なければならない。

4 組合員は、書面又は代理人によって議決権を行使することができる。

5 組合員が代理人により議決権を行使しようとする場合において、その代理人は、以下の各号に掲げる者でなければならない。
   一 その組合員の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)又は一親等の親族
   
二 その組合員の住戸に同居する親族
   三 他の組合員

6 組合員又は代理人は、代理権を証する書面を理事長に提出しなければな らない。

〔※管理組合における電磁的方法の利用状況に応じて、次のように規定〕

(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合
(規定なし)

(イ)電磁的方法が利用可能な場合
7 組合員は、第4項の書面による議決権の行使に代えて、電磁的方法によって議決権を行使することができる。

8 組合員又は代理人は、第6項の書面の提出に代えて、電磁的方法によって提出することができる。

 別表第5 議 決 権 割 合
住戸番号 議決権割合 住戸番号 議決権割合
○○号室 ○○○分の○○ ○○号室 ○○○分の○○
○○号室 ○○○分の○○ ○○号室 ○○○分の○○
○○号室 ○○○分の○○ ○○号室 ○○○分の○○
合計 ○○○分の○○○

















強行法規 〜区分所有者及び議決権の各3/4以上は規約でも変更できない〜

 この規約の設定・変更、廃止を規定する第31条1項での「区分所有者及び議決権の各3/4以上」の賛成による決議方法は立法者が、規約の設定・変更、廃止に際してマンションに住む賛成者と反対者の利害調整のために妥当と考えて決定した基準であり、且つ規約での別段の定めを許容していませんから、他の条文のように区分所有者及び議決権の各3/4以上を加重することも緩和することもできません。

 注意:この場合でも、議決権の配分は規約での別段は認められています。(区分所有法第38条)。

<参照> 区分所有法 第38条:(議決権)

第三十八条  各区分所有者の議決権は、規約に別段の定めがない限り、第十四条に定める割合(注:専有部分の床面積)による。

 他の条文とは、例えば、前に説明した、共用部分の重大変更(第17条1項但書)では”区分所有者の数”の要件の方だけは規約で、3/4以上を過半数まで減じることを認めています

<参照>区分所有法 第17条:(共用部分の変更)

第十七条  共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。

2  前項の場合において、共用部分の変更が専有部分の使用に特別の影響を及ぼすべきときは、その専有部分の所有者の承諾を得なければならない。

 この区分所有者数と議決権数の変更を第17条のにように認めないのは、第17条に規定する、共用部分の変更では「財産管理面が主眼」であり、そのため少数の区分所有者が持分の大多数を占めている場合には、区分所有者の数を少なくできるという融通性を持たせたものです。
 しかし、規約の場合には、設定・変更、廃止の内容が必ずしも財産関係には限られないため、弱小の持分権者の利益も軽視することはできないと法の創案者が判断した結果です。

★旧(昭和59年1月1日以前)の規約との関係 〜以前の規約は変更される〜
  この区分所有法第31条の「規約の設定、変更及び廃止」の規定は、昭和37年(1962年)の区分所有法制定時には、第24条として「規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者全員の書面による合意によってする」となっていました。
 しかし、昭和58年(1983年)に全面改正され現在の「規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によってする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。」とされました。

 そこで、改正区分所有法が施行された昭和59年1月1日以前に制定されている区分所有法第31条の議決権の要件に抵触する規約は無効となります。(昭和59年改正附則9条2項)

<参照> 区分所有法 附 則 (昭和五八年五月二一日法律第五一号) 抄

(施行期日)
第一条  この法律は、昭和五十九年一月一日から施行する。

(規約に関する経過措置)
第九条  この法律の施行の際現に効力を有する規約は、
新法第三十一条又は新法第六十六条において準用する新法第三十一条第一項及び新法第六十八条の規定により定められたものとみなす。
 
2  前項の規約で定められた事項で新法に抵触するものは、この法律の施行の日からその効力を失う。

★必ず、集会の決議が必要
  規約の設定、変更又は廃止は、必ず集会の決議で行わなければ、有効ではありません。
  集会を開かずに、書面を持ち回って、区分所有者および議決権の各3/4以上の多数の賛成を集めても、無効です。

 規約の設定や変更・廃止において、集会を開催させるのは、その重要性から、反対者の意見も聞いて、区分所有者が全員で討議して決めましょうという狙いです。

 ただし、”区分所有者全員の承諾”があれば、集会を開かずに、書面又は電磁的方法で、区分所有者および議決権の各3/4以上の多数の賛成があれば、規約の設定や変更・廃止もできます。(第45条1項、3項

★さらに条件が付く
 このように規約は区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数により集会で設定・変更・廃止ができますが、一定の場合には更に条件が付けられています。

 その一つは、規約の変更等が、「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その者の承諾を得なければならない」、ということであり、もう一つは「一部共用部分に関する事項で全員の利害に関係しないものについて全員の規約に定める場合に当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の1/4を超える者又はその議決権の1/4を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない」、ということです。(2項)

★付加条件1 〜 一部の区分所有者に特別の影響のある場合
 では、一部の区分所有者に特別の影響を及ぼす場合とはどういうことでしょうか。

 「特別の影響を及ぼすという」条項は、区分所有法ではよく使われています。
 例えば、共用部分の変更(第17条2項)や管理の場合(第18条3項(第17条2項の準用)にも同様に存在し、この「特別の影響を及ぼすという」条項が必要な理由もまた同様です。
即ち、規約の変更等は区分所有者全員にその効力が及びますから、全員が多かれ少なかれその影響を受けることは明らかです。

 ◎多数決での少数意見の尊重
   しかし、規約は区分所有者団体の基本的ルールですから、多数決によりある規約が成立すると、その規約に反対者もその団体の一員である以上、成立した規約を守ることは当然です。
この意味で区分所有者には自己の意に添わない又は自分に不利な内容であっても、一度成立した規約を遵守するという「受忍義務」があります。

 しかし、多数者の意思が常に少数者の意思に優越するとした場合には、何時自分が少数者の立場となり、今までよりも不利な状況に陥るかもわからないのですから、これでは安心して住むことができません。
物事には全て耐えられる限界、「受忍すべき限度」というものがあり、それは規約の場合も同様です。

 その
限界が条文では「特別な影響」と表現されています。
一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすときとは、多数決による規約の変更等が特定の区分所有者の権利義務に、通常受忍すべき程度を質的又は量的に超えた特別の犠牲を強いるようなときは、多数者による少数者への不当な圧迫と評価されてその効力を認めないというものと考えられます。

 もとより、「特別な影響」といってもそれは実に抽象的な概念であり、具体的な場合に何が「特別な影響」に該当するかは一概には言えません。
「特別な影響」はケースバイケースで、規約の設定・変更等が特定の区分所有者に対し、受忍限度を明らかに越えたものかどうかを、その規約の設定・変更等の必要性・合理性・緊急性と制約を受ける人の権利等の性質・内容・制約の程度等を比較し総合的に判断して結論を下すべきものです。


 そこで、最高裁判所が以下のように例示しました。

 「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」とは、
 規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、
 当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が右区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいう
。(最高裁判所:平成10年10月30日、シャルマンコーポ博多事件

  とのことで、規約の設定、変更等が
  @どの程度必要なのか、またどの程度合理性があるのか を
  A一部の区分所有者が受ける不利益はどの程度か とを
  B様々な角度から比較し、考えて、 また
  Cそのマンションの区分所有関係の実態もよく検討して
  D最終的には、不利益を受ける一部の区分所有者が、共同生活を営む上で、通常、がまんできる限度を超えている場合をいう、ことになります。

 具体的には、「特別の影響」は裁判例が参考となりますが、その影響が全ての区分所有者に均等に及んだり、単に制約を受けるだけでは特別の影響とは認定されてはいませんが、駐車場などの専用使用権の制約では特別の影響と認定される場合と否定される場合とがあり、認定の困難さを反映した結論となっています。

★「特別の影響を及ぼす」かどうかの具体例
  前にも引用しましたが、再度確認です。

{特定の区分所有者の承諾が必要な例

1. すべての駐車場について、区分所有者の公平な利用を確保するため、特定の区分所有者の駐車場を専用使用する権利を廃止する旨を定める場合は、区分所有者の専用使用権に「特別の影響を及ぼす」ため、その区分所有者の承諾がないままの消滅決議は無効である。(最高裁:平成10年11月20日:高島平マンション事件)

  この場合の特別な影響とは、達成される目的との関係で規制の程度、方法等が通常の受忍の範囲を超えることをいい、分譲条件の専用使用権の剥奪は通常受忍の限度を超える

2.規約の変更により、区分所有者に認められていた屋上、外壁、敷地の無償の専用使用権を消滅させることは、その区分所有者の承諾が必要。その承諾がない以上、規約の変更は無効である。(東京高裁:平成8年2月20日)

********************************* 

{特定の区分所有者の承諾は不要な例}

1. 特定の区分所有者が分譲時の契約で専用使用することとされている駐車場の低廉な使用料について、「社会通念上相当な額」に増額する旨を定める場合は「特別の影響」を及ぼさない。(最高裁:平成10年10月30日:シャルマンコーポ博多事件)

2.従来特定の区分所有者が無償で使用している駐車場について、「集会の決議」で有償化(有償化決議)し専用使用権者に使用料を払わすことは、使用料が社会通念上相当な額と認められる場合は「特別の影響」を及ぼさない。(最高裁:平成10年11月20日:高島平マンション事件)

3.すべての駐車場について、共用部分の維持管理上特段の事由がある場合は、一定期間、管理者がその使用を制限することができる旨を定める場合。

不要:合理的な負担を求めることは妥当性があり、一般に受忍の範囲内である。(判例)

4.不在組合員に対し、1戸あたり月額 2,500円の住民活動協力金を支払わせる規約の変更は、不在組合員の権利に「特別の影響」を及ぼすものではない。(最高裁:平成22年1月26日:中津リバーサイドコーポ事件)

★付加条件2 〜 一部共用部分の場合
 1棟内での一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものについても区分所有者全員の規約に取り込んで定めることは可能でした。(第30条2項)。

 この規定に対応して、次の第31条2項に、全員の利害に関係しない一部共用部分を全体の規約に取り込りこむ場合には、当該一部共有者の一定の割合の者(1/4を超える)が反対した場合には全体の規約の設定・変更等ができないこととなっています。

 これは本来、全体の利益に関係しない場合には、その一部共用部分に関する規約の設定・変更権限は一部共有者の専権に属すべきものですから、それを区分所有者全員の多数決で決めるのは相当ではないとの発想です。

  つまり、全体の利益に関係しない一部共用部分の管理は、一部共用部分を共用する区分所有者で規約の設定・変更等をしてもいいのですが、それを全体の規約で取り込み全体の管理対象にするなら、一部共用部分を共用する区分所有者または議決権の各3/4以上の多数が消極的ですが賛成することが必要であるということです。
 これを、条文では、逆に捉え、一部共用部分を共用する区分所有者または議決権の各1/4を超える人が積極的に反対した場合には、全体の規約の設定・変更等はできないと規定しています。

 一部共用部分を共用する少数区分所有者の全体管理に対する拒否権ともみられます。

    ★特別に多数の賛成が必要で「特別決議事項」と呼ばれる。(その8の2)

   ★規約の設定・変更・廃止は重大事項であるので、区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議が必要。

     3/4以上の定数は増減できない。(規約でも変更不可)(注;共用部分の変更(第17条1項)は、区分所有者の数を過半数まで減らせるので、よく出題される

     また、管理費の負担などで、店舗部と一般住居部で差をつけるときなどには、影響を受ける者の承諾がいる。

      影響を受ける者が反対したら、決議も無効。

{判例}ペット飼育を制限・禁止する新規約は有効であるとされた事例

 マンション内での犬の飼育禁止を定めた規約に改正される以前から犬を飼育していた区分所有者に対しても、当該規約の改正が特別の影響を及ぼす場合にあたらず、マンション内での動物の飼育について、具体的な被害の発生を問わずに一律に禁止する規約が当然には無効であるとはいえない。

    ◎当然ながら、その影響が全ての区分所有者に均等に及ぶときは、個々の承諾は要らない
      {例:規約で負担割合を一律に上げる。居住用マンションでの事務所使用を禁じる。}

★総会での規約原本

 新規分譲後のマンションでは、マンションの分譲が終了後に、区分所有者が自主的に開催することになっている総会の特別決議(区分所有者及び議決権総数の4分の3以上)によって規約は設定されます。(完売しないときは、ある程度の入居者が確定したときに、最初の総会が開催される。この場合、販売会社が区分所有者としての権利を行使することになります。)

 この最初の総会で、規約の設定を決議した議事録がその規約を証する書面になり、この議事録への署名 押印 は、議長及び集会に出席した区分所有者の二人で足ります。(区分所有法第42条第2項 参照))
 なお、議事録とは別に独立の書面としての規約原本を作成することもありますが、この場合も、規約原本に区分所有者全員の署名 押印 を求める必要はありません。

 ただし、区分所有者全員の書面による合意をもって、総会の決議にかえることも認められており(書面決議:区分所有法第45条2項)、実務上は分譲業者によって作成された規約案に対し、別途規約案承認書に購入者の署名 押印 を受け、分譲終了時に区分所有者全員の書面による合意が成立したことにより、規約が設定されたものとして取り扱われるのが一般的です。(これを「原始規約」といいます。)


{設問} マンションの駐車場が区分所有者の共有に属する敷地上にあり、その駐車場の一部が分譲時の契約等で特定の区分所有者の専用とされている場合、駐車場の使用方法等を定めている規約を変更する集会の決議に当たって、当該特定の区分所有者の承諾を必要とするものは、区分所有法の規定及び判例によれば、次のうちどれか。

1 すべての駐車場について、区分所有者の公平な利用を確保するため、特定の区分所有者の駐車場を専用使用する権利を廃止する旨を定める場合。

答え: 必要:
 区分所有法第31条1項後段によれば、規約変更が一部の区分所有者に特別の影響を及ぼす場合にはその承諾が必要であるが、その場合の特別な影響とは、達成される目的との関係で規制の程度、方法等が通常の受忍の範囲を超えることをいい、分譲条件の専用使用権の剥奪は通常受忍の限度を超える。(判例:最高裁 平成10年11月20日:高島平マンション事件)

2 特定の区分所有者が無償で使用している駐車場について、集会の決議で有償化すること及びその額を決定することができる旨を定める場合。

答え: 不要:
 合理的な負担を求めることは妥当性があり、一般に受忍の範囲内である。(判例:最高裁 平成10年11月20日:高島平マンション事件)

3 特定の区分所有者が分譲時の契約で専用使用することとされている駐車場の低廉な使用料について、社会通念上相当な額にする旨を定める場合。

答え: 不要:
 合理的な負担を求めることは妥当性があり、一般に受忍の範囲内である。(判例:最高裁 平成10年11月20日:高島平マンション事件)

4 すべての駐車場について、共用部分の維持管理上特段の事由がある場合は、一定期間、管理者がその使用を制限することができる旨を定める場合。

答え: 不要:
 維持管理上特段の事由がある場合に一般的に公平に制約が及ぶことは、一般に受忍の範囲内である。

正解:1

注:追記(2017年 9月):この最高裁判所の判決に納得できませんので、別途 「駐車場の専用使用権をめぐる平成10年の最高裁判所の判決について」 を作成しましたので、参考にしてください。



★住んでいない区分所有者だけに、別途の金銭を支払わせる規約は有効である。(最高裁:平成22年1月26日 判決)

  この判決は、「一部の団地建物所有者の権利に”特別の影響を及ぼすべきとき”に該当しない」例として重要です。

 *事件の概要 〜中津リバーサイドコーポ事件〜
   対象マンション:大阪市にある昭和40年代に建てられた14階建の4棟、総戸数:868戸から構成される区分所有法第65条に規定される団地型マンション。
   建築後、20年過ぎから空き室が目立ち、平成16年頃には約170戸が不在区分所有者(不在組合員)となっていたので、平成16年の団地管理組合総会において、適法(区分所有法第66条1項1項前段での団地建物所有者及び議決権の各4分の3以上の多数)に、「不在組合員は1戸当たり月額5000円の「協力金」を負担し,これを組合費と共に納入しなければならないとする規約及び同施行細則の変更」が可決された。
  この規約の変更をうけ、団地管理組合が当時の不在組合員に対し「協力金」の支払を求め、175戸の内158戸は支払に応じたが、支払を拒否続ける不在組合員7名(専有部分の総数14戸)は裁判となった。
 控訴審で裁判所から「協力金」を月額2500円にする和解提案があり、これをうけ、平成19年の団地管理組合総会で、「協力金」を「住民活動協力金」と名称変更し,その額を遡及的に1戸当たり2500円とする規約及び同施行細則の変更が、区分所有法に従って適法に可決された。
 この和解に上記7名の不在組合員のうち2名(専有部分の総数2戸)は,住民活動協力金を支払う旨の訴訟上の和解をしたが,5名(専有部分の総数12戸)は,なおその支払を拒否した。

 *判決
 ◎支払を拒否している側(5名)の主張:
 従来,役員がすべての区分所有者や居住者のために無償で上告人(団地管理組合)の事務や上告人の業務を分掌する各種団体等の活動を行ってきたが,精神的・肉体的にも負担であり,不在組合員がこれらの役職に就いて活動を行うことなく,居住組合員のみが一方的にこれらの活動を強いられるとの不公平感や不満を訴える者が増えてきたため,本件規約変更により,不在組合員に住民活動協力金として月額2500円の支払義務を課すとともに,規約の変更を同時に行って,これを主に役員の報酬や必要経費として支給することにしたものである。
 そうすると,役員の上記精神的・肉体的な負担や不公平感は,上記の報酬の支給により補てんされることになったということができるところ,役員の諸活動は,区分所有者全員の利益のために日常的に行われるべきものであるから,役員報酬及びその必要経費の財源として,住民活動協力金を不在組合員と居住組合員との間に格差を設けて負担させる場合,不在組合員であるがために避けられない印刷代,通信費等の出費相当額を不在組合員に加算して負担させる程度であればともかく,その全額を不在組合員のみに負担させるべき合理的な根拠は認められない。
 したがって,本件規約変更は,区分所有法31条1項後段にいう「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすとき」に該当し,区分所有者Aの承諾がないから無効である。

  ◎最高裁の判断:

  (1) 区分所有法66条(注:団地関係)が準用する法31条1項後段の「規約の設定,変更又は廃止が一部の団地建物所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」とは,規約の設定,変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の団地建物所有者が受ける不利益とを比較衡量し,当該団地建物所有関係の実態に照らして,その不利益が一部の団地建物所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいう(最高裁平成8年(オ)第258号同10年10月30日第二小法廷判決・民集52巻7号1604頁参照)。
   (2) 前記事実関係によれば,本件マンションは,規模が大きく,その保守管理や良好な住環境の維持には上告人及びその業務を分掌する各種団体の活動やそれに対する組合員の協力が必要不可欠であるにもかかわらず,本件マンションでは,不在組合員が増加し,総戸数868戸中約170戸ないし180戸が不在組合員の所有する専有部分となり,それらの不在組合員は,上告人の選挙規程上,その役員になることができず,役員になる義務を免れているだけでなく,実際にも,上告人の活動について日常的な労務の提供をするなどの貢献をしない一方で,居住組合員だけが,上告人の役員に就任し,上記の各種団体の活動に参加するなどの貢献をして,不在組合員を含む組合員全員のために本件マンションの保守管理に努め,良好な住環境の維持を図っており,不在組合員は,その利益のみを享受している状況にあったということができる。
 いわゆるマンションの管理組合を運営するに当たって必要となる業務及びその費用は,本来,その構成員である組合員全員が平等にこれを負担すべきものであって,上記のような状況の下で,上告人が,その業務を分担することが一般的に困難な不在組合員に対し,本件規約変更により一定の金銭的負担を求め,本件マンションにおいて生じている不在組合員と居住組合員との間の上記の不公平を是正しようとしたことには,その必要性と合理性が認められないものではないというべきである。

 居住組合員の中にも,上記のような活動に消極的な者や高齢のためにこれに参加することが事実上困難な者もいることはうかがえるのであって,これらの者に対しても何らかの金銭的な負担を求めることについては検討の余地があり得るとしても,不在組合員の所有する専有部分が本件マンションの全体に占める割合が上記のように大きなものになっていること,不在組合員は個別の事情にかかわらず類型的に上告人や上記の各種団体の活動に参加することを期待し得ないことを考慮すると,不在組合員のみを対象として金銭的負担を求めることが合理性を欠くとみるのは相当ではない。
 また,平成19年総会における決議により,役員に対する報酬及び必要経費の支払が規約上可能になったものの,上告人の活動は役員のみによって担われているものではなく,不在組合員と居住組合員との間の上記の不公平が,役員に対する報酬の支払によってすべて補てんされるものではないから,そのことを理由として本件規約変更の必要性及び合理性を否定することはできない。
 そして,本件規約変更により不在組合員が受ける不利益は,月額2500円の住民活動協力金の支払義務の負担であるところ,住民活動協力金は,全組合員から一律に徴収されている組合費と共に上告人の一般会計に組み入れられており,組合費と住民活動協力金とを合計した不在組合員の金銭的負担は,居住組合員が負担する組合費が月額1万7500円であるのに対し,その約15%増しの月額2万円にすぎない。

 上記のような本件規約変更の必要性及び合理性と不在組合員が受ける不利益の程度を比較衡量し,加えて,上記不利益を受ける多数の不在組合員のうち,現在,住民活動協力金の趣旨に反対してその支払を拒んでいるのは,不在組合員が所有する専有部分約180戸のうち12戸を所有する5名の不在組合員にすぎないことも考慮すれば,本件規約変更は,住民活動協力金の額も含め,不在組合員において受忍すべき限度を超えるとまではいうことができず,本件規約変更は,法66条,31条1項後段にいう「一部の団地建物所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきとき」に該当しないというべきである

  ◎結論:
 以上と異なる原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。この趣旨をいう論旨は理由があり,原判決は破棄を免れない。
   そして,上記説示によれば,公序良俗違反等,本件規約変更の無効をいう被上告人らのその余の主張に理由がないことも明らかであり,上告人の請求は理由があるから,これを認容した第1審判決は正当であり,本件控訴は棄却すべきである。
   よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 堀籠幸男 裁判官 藤田宙靖 裁判官 那須弘平 裁判官田原睦夫 裁判官 近藤崇晴)

★この判決により、賃貸化が進み多くの不在区分所有者がいるマンションの場合や、管理組合の役員報酬など、これからの規約の改正での参考になります。

  この判決のポイントは、マンション全体に占める不在組合員の数が多いこと、不在組合員が負担する金額が¥2,500(月)と比較的に少額(この判断も問題ですが)、また支払を反対する組合員が5名と少ないことなどです。

 平成28年 3月14日の標準管理規約の改正により、マンション管理士等、外部の専門家も総会で選任できるようにもなったため、以下は、削除した。
 なお、注意することは、標準管理規約では、管理組合の役員資格を現に居住する者に限定していますので(標準管理規約35条2項参照:なお、平成23年の改正により、現に居住の条件はなくなった。)負担金額が余りにも大きくなると、新しい争点となる可能性があります。



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第三十一条

2項  前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。

過去出題 マンション管理士 R02年、H28年、H26年、H23年、H15年、
管理業務主任者 H15年、H13年

★全体の規約に、全員の利害に関係しない一部共用部分についての事項を取り込むなら、全体の規約の、設定・変更・廃止は、影響を受ける人ではなくて、その一部共用部分の区分所有者又は議決権の1/4超が反対したらできない。

◎区分所有者「及び」議決権の、ではなく「又は」に注意!

<参照> 前条第2項=第30条2項:

2  一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものは、区分所有者全員の規約に定めがある場合を除いて、これを共用すべき区分所有者の規約で定めることができる。

★一部共用部分を共用すべき区分所有者の1/4を超える者”又は”その議決権の1/4を超える議決権を有する者
 この区分所有法第31条2項では、区分所有法の他の条文で多く規定されている「区分所有者
及び議決権の各3/4以上の多数」と異なった「一部共用部分を共用すべき区分所有者の1/4を超える者”又は”その議決権の1/4を超える議決権を有する者」となっているのは、全体の利害に関係しない以上、、一部の区分所有者でも積極的に反対したら、全体の規約に取り込むことは妥当ではありませんが、一部共用部分でもできるだけ、全体の管理にもっていこうとする法の創案者が要件を緩めたようです。

 注:A「及び」Bは、AB両方の要件が必要ですが、A「又は」Bは、ABどちらか一方の要件で可能です。

★全体集会での注意が必要
 この全員の利害に関係しない一部共用部分についての事項を全体の規約として設定・変更・廃止を決議する集会では、反対者が「該当の一部共用部分の区分所有者」であるか、どうかの確認が必要です。
単に、少数の反対として処理は出来ません。

  具体的な、全体集会(総会)の運営では、一部共用部分の区分所有者達に、前もって、議案に賛成かどうかを聞き、一部共用部分の区分所有者”または”議決権の1/4以上が反対でなければ、全体の決議に入る、とか、一部共用部分の区分所有者達の投票は分けて集計するなどが考えられます。面倒ですが。


{設問-1}次の記述は正しいか。

* 一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものついて、区分所有全員の規約に定めがある場合、その規約の変更は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の1/4を超える者の反対があったときは、することができない。

答え:正しい。 
 区分所有法第31条2項によれば、一部共用部分に関する事項で区分所有者全員の利害に関係しないものついて、区分所有全員の規約に定めがある場合、その規約の変更は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の1/4を超える者の反対があったときは、することができない、とある。


{設問-2}次の記述は正しいか。

* 一部共用部分は、規約に特別の定めをしても、区分所有者全員の共有とすることはできない。

答え:間違いである。できる。 
 区分所有法第 16 条「一部共用部分の管理のうち、区分所有者全員の 利害に関係するもの又は第 31 条第 2 項の規約に定めがあるものは区分所有者全員で、その他のものはこれを共有すべき区分所有者のみで行う。」


{設問-3}平成21年 マンション管理士試験 「問7」

〔問 7〕 「敷地及び建物の使用については、別に使用細則を定めるものとする。」との定めがある場合の規約と使用細則に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 一部共用部分の各共有者の負担割合については、区分所有者及び議決権の各過半数の集会の決議で使用細則に定めることは、許される。

*注:標準管理規約は平成28年3月に改正があり、解説において未対応があるので、注意のこと。

X 誤っている。 
 使用細則についての出題は新しい。
  区分所有法には使用細則についての規定はないのですが、たとえば、マンションに駐車場があれば、その使用について特定の区分所有者に専用使用権を認め、その使用者の選定方法や使用料等を使用細則で定めることがあります。規約以外の取り決めです。そこで、規約で決めておかなければならない事項と、使用細則で定めることができる事項が問題となります。その判断の基準としては、区分所有法で@個別的に規約によってのみ定めることを認めている(絶対的規約事項)か、A規約で定めても認められる区分所有者相互間の一般的な事項(相対的規約事項)かになります。Aに該当すれば、使用細則での定めも許されると解されます。
  これを元に、設問を検討しますと、「一部共用部分の各共有者の負担割合」は、区分所有法第19条(共用部分の負担及び利益収取)
 「第十九条  各共有者は、規約に別段の定めがない限りその持分に応じて、共用部分の負担に任じ、共用部分から生ずる利益を収取する。 」とあり、この規定は一部共用部分の各共有者においても適用されますが、絶対的規約事項と解され、別段の定めは、規約でなければ規定できません。使用細則で定めることは、許されません。


2 使用細則の設定、変更又は廃止は、議決権総数の半数以上を有する区分所有者が出席した集会において出席区分所有者の議決権の過半数で決する旨を規約に定めることは、許される。

○ 正しい。 
  使用細則に規定される内容は、区分所有者相互間の一般的な事項に限られますから、設定、変更又は廃止は区分所有法での普通決議で可能と考えられます。すると、区分所有法第39条1項(議事)
 「第三十九条  集会の議事は、この法律又は規約に別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決する。」とあります。
 この規定にあります、普通決議の場合、例えば、標準管理規約(単棟型)47条1項、2項(総会の会議及び議事)
 「第47条 総会の会議は、前条 第1項に定める議決権総数の半数以上を有する組合員が出席しなければならない。
   2 総会の議事は、出席組合員の議決権の過半数で決する。 」に見られるように、
 規約での別段の定めも可能ですから、使用細則の設定、変更又は廃止は、議決権総数の半数以上を有する区分所有者が出席した集会において出席区分所有者の議決権の過半数で決する旨を規約に定めることは、許されます。


3 区分所有者が専有部分の修繕に係る共用部分の工事を行うことができる旨を規約で定め、その具体的な手続きや当該区分所有者が遵守すべき事項等について使用細則で定めることは、許される。

○ 正しい。 
 区分所有者相互間の一般的な事項(相対的規約事項)の例の1つと考えられます。許されます。


4 使用細則の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数による集会の決議によってする旨を規約に定めることは、許される。

○ 正しい。 
 選択肢2で説明しました議決方法よりも、規約の設定、変更又は廃止と同じような厳しい要件ですが、これも許されます。
 参照:区分所有法第31条1項(規約の設定、変更及び廃止)
 「第三十一条  規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。 」

答え:1

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(公正証書による規約の設定)

第三十二条

 最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、第四条第二項、第五条第一項並びに第二十二条第一項ただし書及び第二項ただし書(これらの規定を同条第三項において準用する場合を含む。)の規約を設定することができる。

過去出題 マンション管理士 R03年、H30年、H28年、H18年、H14年、
管理業務主任者 R02年、

公正証書...公証人(公証役場で執務する公務員です)が契約その他私法(民法、商法など個人の私的な生活関係を規律する法律)上の権利に関する事実について正規の方式で作成した証書。
          訴訟において強い証拠力を持つ。

*最初に建物の専有部分の全部を所有する...譲渡によらないこと。

 <参照>引用されている区分所有法

@第4条2項(規約共用部分):
  第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。

A第5条1項(規約敷地の定め):

 区分所有者が建物及び建物が所在する土地と一体として管理又は使用をする庭、通路その他の土地は、規約により建物の敷地とすることができる

B第22条1項但し書き(専有部分と敷地利用権の分離処分ができる定め):

 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない

C第22条2項但し書き(各専有部分と敷地利用権の割合が専有部分の床面積でないとき):

 2  前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第十四条第一項から第三項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。

★ただ、この条文を読むと、どうしてこんなところに、唐突にあるのかと、疑問に感じるでしょう。
 新規分譲マンションで分譲前に決めておかなければならない重要なことを、販売会社が自分勝手に決めて、後で勝手に変更することを防ぐ規定です。

 また、不動産登記法の改正により、区分所有建物の専有部分の表示登記は一括申請できること(不動産登記法第48条1項、2項。第44条参照)になり、最初に建物の専有部分の全部を所有する者(分譲会社)は単独で規約共用部分や規約敷地など4項目だけを公正証書で規約として設定できるようにした

★公正証書規約 〜合同行為の例外〜
 第32条は、公正証書による規約に関する規定です。

 本来、規約は複数の区分所有者からなる団体のルールを決めたもので、その内容は、専有部分を含む1棟の建物または敷地・附属施設の管理・使用に関する規定ですから、その規約の作成にあたっては当然に複数の区分所有者の存在を予定し、それら複数の区分所有者の共同的な合意という「合同行為」によって成立する性格を有するものです。
 そこで、規約は原則として、複数の区分所有者の区分所有関係が生じた後に、第31条による区分所有者の集会の決議または第45条の書面決議により、利用する区分所有者の意思で作成されるのが本来の方法です。

 しかし、規約で決める事項の中には、集会室は個人の物か共用部分とするのか、駐車場や遊園地はどうするか、また各区分建物の敷地権割合等のように建物竣工と同時または分譲開始前の、購入者(区分所有者)が存在しない段階で決定しておく必要のある項目が多く含まれていますから、区分建物を含む1棟の建物が分譲業者の単独所有の段階でこれらを決定できるようにしなければ、その先にある円滑な分譲が望めない実態も存在します。

 その必要性から、本来、区分所有者が複数成立した後の「合同行為」であるべき規約作成に関し、例外として分譲会社などの「単独行為」による規約の作成を認めたものがこの第32条の規定です。

★公正証書による規約設定内容の制限 〜4項目だけ〜
 ただし、もともと、団体の組織や内部規定等当事者自治に基づき、当事者(区分所有者)が自主的に形成すべき事項のすべてを分譲業者が単独で決定するのは好ましくないため、単独行為で認められる事項は分譲前に決めておくのに必要最低限と思われる次の4項目に限られています。

   @第4条2項の「規約共用部分」を定める規約、(これは、もともとは、専有部分ともなりうる部分。管理人室、倉庫、集会所など)

   A第5条1項の「規約敷地」を定める規約、(マンションが建っている敷地=法定敷地 以外の土地。通路、駐車場、遊園地など)

   B第22条1項但書の「専有部分と敷地利用権の分離処分を許す」ことを定める規約、(区分所有法の分離処分の禁止の原則から外れるため。ただし、現在の多くの区分所有建物では、分離処分は許さない。昔のタウンハウスなどでの例外だけに許す。)

   C同2項但書の「各専有部分に対応する敷地利用権の割合」を定める規約  (原則の専有部分の床面積割合を変えるため)

 そして、これらの4項目は、分譲後の多数の区分所有者の利害にかかわる重要な事項であることから、その内容を分譲業者が恣意的に変更することを回避するため、それらを公に確認する手段として「公正証書」によらなければ効力がないものとして区分所有者の利益保護を図っています。

★マンションの分譲業者などが、最初から、管理人室や集会室、一体として管理する複数の敷地、専有部分と敷地利用権の関係を決めておくと、入居者もわかり易いので決めることができるようにした。

  しかし、4つの事項に限定されている。しかも公正証書(公証人が作成する)であること。分譲業者の恣意的な変更を禁止しています。

★最初に専有部分の全部を所有する者
  最初に専有部分の全部を所有する者とは、建物の区分所有権は成立したが、専有部分がいまだ個別の区分所有者に帰属せず、その専有部分の全部を所有している者です。

 具体的には、分譲業者が、マンションを新築してまだ、専有部分(室)を1つも分譲していないときの分譲業者をさします。専有部分を1戸でも販売したら、その後は、もう公正証書規約の設定はできません。

 まだ、販売をしていない段階なら、公正証書の変更はできます。

  *数人で共同建築して専有部分の全部をその数人で共有するときの共有者もこれに該当する。

     ただし、複数の区分所有者の区分所有が生じた後で、一人が専有部分の全部を買い集めても、「最初に専有部分の全部を所有する者」には該当しない。 

★公正証書規約は、規約設定の時にだけ認められている。その後の変更・廃止は通常の規約の変更・廃止の手続きになる。 

★不動産登記においても、この公正証書を添付すること
  規約共用部分であることを、第三者に対抗するためには、登記が必要となります。そこで分譲業者は、建物の表示に関する登記として、規約で共用部分を定めたことを証する書類として、この公正証書も添付します。

<参照> 不動産登記法 (共用部分である旨の登記等)

第五十八条  共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記に係る建物の表示に関する登記の登記事項は、第二十七条各号(第三号を除く。)及び第四十四条第一項各号(第六号を除く。)に掲げるもののほか、次のとおりとする。
   一  共用部分である旨の登記にあっては、当該共用部分である建物が当該建物の属する一棟の建物以外の一棟の建物に属する建物の区分所有者の共用に供されるものであるときは、その旨
   二  団地共用部分である旨の登記にあっては、当該団地共用部分を共用すべき者の所有する建物(当該建物が区分建物であるときは、当該建物が属する一棟の建物)

2  共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記は、当該共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記をする建物の表題部所有者又は所有権の登記名義人以外の者は、申請することができない。

3  共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記は、当該共用部分又は団地共用部分である建物に所有権等の登記以外の権利に関する登記があるときは、当該権利に関する登記に係る権利の登記名義人(当該権利に関する登記が抵当権の登記である場合において、抵当証券が発行されているときは、当該抵当証券の所持人又は裏書人を含む。)の承諾があるとき(当該権利を目的とする第三者の権利に関する登記がある場合にあっては、当該第三者の承諾を得たときに限る。)でなければ、申請することができない。
4  登記官は、共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記をするときは、職権で、当該建物について表題部所有者の登記又は権利に関する登記を抹消しなければならない。

5  第一項各号に掲げる登記事項についての変更の登記又は更正の登記は、当該共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物の所有者以外の者は、申請することができない。

6  共用部分である旨の登記又は団地共用部分である旨の登記がある建物について共用部分である旨又は団地共用部分である旨を定めた規約を廃止した場合には、当該建物の所有者は、当該規約の廃止の日から一月以内に、当該建物の表題登記を申請しなければならない。

7  前項の規約を廃止した後に当該建物の所有権を取得した者は、その所有権の取得の日から一月以内に、当該建物の表題登記を申請しなければならない。


{設問} 平成18年 マンション管理士 試験 「問8」

区分所有法第32条の規定に基づき公正証書による規約を設定することができない者は、区分所有法の規定によれば、次のうちどれか。

1 既存のマンションの専有部分をすべて購入し、その専有部分の全部を分譲する予定のマンション業者

答え:できない。最初ではない。 
 区分所有法第32条「最初に建物の専有部分の全部を所有する者は、公正証書により、第四条第二項、第五条第一項並びに第二十二条第一項ただし書及び第二項ただし書(これらの規定を同条第三項において準用する場合を含む。)の規約を設定することができる」の規定により、一度専有部分が複数の区分所有者に帰属してから、専有部分を全部買ったのでは、最初の全部所有者ではないので、できない。

2 相続した共有名義の土地に相続人が全員で専有部分のある建物を建築し、その専有部分の全部を最初に共有している共有者

答え:できる。 
 共有関係でも、最初の全部所有者に該当するので、できる。

3 自己所有の賃貸用の建物を区分することによってその専有部分の全部を区分所有者として所有することになった不動産業者

答え:できる。
最初の全部所有者に該当するので、できる。

4 建物を新築することによってその建物の専有部分の全部を最初に取得した建築業者

答え:できる。 
最初の全部所有者に該当するので、できる。

正解:1

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(規約の保管及び閲覧)

第三十三条

1項  規約は、管理者が保管しなければならない。ただし、管理者がないときは、建物を使用している区分所有者又はその代理人で規約又は集会の決議で定めるものが保管しなければならない。

過去出題 マンション管理士 R04年、R03年、R02年、H30年、H29年、H28年、H26年、H25年、H21年、H14年、H13年
管理業務主任者 R04年、H23年、H16年、

★趣旨

 第33条は規約の保管(1項)と閲覧(2項)に関する規定です。

 規約は区分所有者の団体(管理組合)の根本規則を定めた規定であり、何らかの事態が発生した場合には規約を基本として、その解決が図られる重要な書類ですから、通常、その作成・成立手続きを定める(第30条など)と共に必要な場合に規約を利用できるようにするため、一般には、保管者が誰かを定めておきます。

 その重要な規約を誰がちゃんと保管するかを決めておくことは必要です。

  

なお、規約は、書面又はパソコン(電磁的記録)で作成されます。(区分所有法第30条5項 参照

★ 保管者−1〜 管理者がいる時は常に管理者〜
 第33条1項では、規約の第一順位の保管者は、管理者がいる場合には管理者と規定しています。
管理者がいない場合(区分所有法では管理者の設置は「置くことができる」と任意(第3条)ですから、管理者がいない場合もありえます。また、管理者がいたが辞任その他で欠けた場合もこれに該当します。)には、建物に現に住んでいる区分所有者またはその代理人の中から規約または総会決議で定める者としています。

 管理者が規約保管者の第一順位にあることは、管理者が規約を実行する職責を持ち、2項に規定されている閲覧等の区分所有者の団体(管理組合)の事務を執行する立場にあるのですから、妥当な規定といえます。

★ 保管者−2〜 管理者がいない時〜
  規約の保管者としての第二順位として、規約か集会の決議で定められた、
  a.建物に現に住んでいる区分所有者=組合員 または
  b.その代理人 
 が挙げられています。

 ★ 管理者がいない時 保管者−2−a 〜建物を使用している区分所有者〜

 管理者がいない時の規約の保管者の第一は、現に住んでいる(法文上は「建物を使用している」ですから事務所や店舗の場合には文字通り、そこの使用者となります。)区分所有者という要件は、規約を閲覧させるという便宜性から当該建物内に規約若しくはその保管者があるのが望ましいという趣旨の表れで、それなりに合理性があります。
ただし、規約が重要文書ということで銀行の貸し金庫に保管する等現実の保管方法は特段の定めがない限り保管者がその責任において任意に判断実行できますので、規約が必ず建物内に存在するものではありません。

 ところで、規約の保管行為はそれ自体は民法上は無報酬の「寄託契約」に属しますので、有償寄託と無償寄託では責任の程度が異なることになりそうです。

 しかし、区分所有法上はあまり明らかではありませんが、保管行為が無償だとしても管理者の場合は委任に類似した契約に基づく管理者業務の一環としての業務ですから民法第659条に係らず当然「善管注意義務」があると思われます。

<参考> 民法 第659条 : (無償受寄者の注意義務)

第六百五十九条  無報酬で寄託を受けた者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、寄託物を保管する義務を負う。

 従って、自分で規約の保管場所を確保できない場合や、より保管に適すると思われる場合には区分所有者の団体(管理組合)の事前の承諾(民法第658条)がなくとも保管代行者を利用することが可能であり、むしろそれが要請されることもありますから、現実には直接の保管者が他の者である場合も当然有り得ます。

<参考> 民法 第658条 : (寄託物の使用及び第三者による保管) :(一部改正)

第六百五十八条 受寄者は、寄託者の承諾を得なければ、寄託物を使用することができない。

2 受寄者は、寄託者の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、寄託物を第三者に保管させることができない。

3 再受寄者は、寄託者に対して、その権限の範囲内において、受寄者と同一の権利を有し、義務を負う。


 他方、保管者が管理者でない場合は、規約の保管は純然たる寄託契約となりますので、無償の場合は責任が軽くなりますが(民法第659条)、皆のためというだけで善管注意義務を負わせるのは酷ですからこの結論もやむを得ないでしょう。

  ★管理者がいない時 保管者ー2−b 〜代理人の場合〜
 つぎに、管理者がいない時の規約の保管者の第二は、建物を使用している(現に住んでいる)区分所有者の代理人も、規約や集会で指名を受ければ規約を保管できるとされています。

 保管という事実行為に代理人という法律行為を行う地位の者を規定するのは、一見合理性がないようですが、代理人については区分所有法には規定がないため民法その他の法律による代理人ということになります。

 この場合、趣旨に最も適するのは本人の成り代わり(代行者)といえる法定代理人であり、親権者や後見人等の無能力者の法定代理人、裁判所の任命する不在者の管理人がこれに該当するといえます。
 任意代理人の場合は本人が委任した不在中の財産管理人はともかく、それ以外の者の場合には規約保管を代理行為の付帯業務とするような代理の場合でないと代理人とはいえないでしょう。

 なお、「建物を使用している」を要件とする以上、この代理人は占有代理人でもありますが、占有者というだけではこの代理人と解するのは困難でしょう。
(この代理人は、単に区分所有者に代わって規約を保管する者との解釈もありますが、代理の言葉を軽くとらえ過ぎと思います。)

代理人の場合も無償の場合は無償寄託として責任が自己の物と同一の注意となることは非管理者が規約を保管する場合と同様です。

 ★規約は管理者がいれば管理者が保管する。管理者が保管しないと20万円以下の過料。(区分所有法第71条1号

  管理者がいないときは、規約や集会の決議で決められた人が必ず保管する。(ただし、この場合には、保管しなくても過料の罰則はない。)

  保管の場所は、定めがない。

  規約がないとき(存在しない時)は、当然保管義務もない。

 ★注:管理組合法人が設立され、理事がいるとき(法人になると理事は必須ですが)は、規約の保管は理事が管理組合法人の事務所で保管する。(区分所有法第47条12項参照

   理事が保管しないと20万円以下の過料

<参照>第47条12項での第33条1項本文の準用

<参照>区分所有法 第71条1号: 
次の各号のいずれかに該当する場合には、その行為をした管理者、理事、規約を保管する者、議長又は清算人は、二十万円以下の過料に処する。

一  
第三十三条第一項本文(第四十二条第五項及び第四十五条第四項(これらの規定を第六十六条において準用する場合を含む。)並びに第六十六条において準用する場合を含む。以下この号において同じ。)又は第四十七条第十二項(第六十六条において準用する場合を含む。)において読み替えて適用される第三十三条第一項本文の規定に違反して、規約、議事録又は第四十五条第四項(第六十六条において準用する場合を含む。)の書面若しくは電磁的記録の保管をしなかったとき。

   ★注意:管理者がいないときは、保管している区分所有者や決議で定められたものに対しては過料ない。
    (規約を保管する者に入らない。

     準用が「本文」に注意。管理者がいないときは「但し書き」であるので入らない。)

   ★過料(かりょう)...刑法上の罰ではない。おなじ読み方の科料(かりょう)は刑法上の罰。

      刑法上の刑の種類...重い順から @死刑 A懲役(無期、有期。監獄で作業) B禁錮(無期、有期。監獄で拘置)

                            C罰金(1万円以上) D拘留(拘留場に30日未満拘置) E科料(千円以上〜1万円未満)


★標準管理規約(単棟型)では、規約の保管者を理事長とした。
  また、理事長は、規約原本から内容の変更があれば、変更をした総会議事録の内容と相違ないことを署名 ・押印 し、閲覧の義務者でもある。

<参考>標準管理規約(単棟型) 72条:(規約原本等) 


*(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合 (規約原本等)

第72条 この規約を証するため、区分所有者全員が 署名 記名押印 した規約を1通作成し、これを規約原本とする。

規約原本は、理事長が保管し、区分所有者又は利害関係人の書面による請求があったときは、規約原本の閲覧をさせなければならない。

3 規約が規約原本の内容から総会決議により変更されているときは、理事長は、1通の書面に、現に有効な規約の内容と、その内容が規約原本及び規約変更を決議した総会の議事録の内容と相違ないことを記載し、署名押印した上で、この書面を保管する。

4 区分所有者又は利害関係人の書面による請求があったときは、理事長は、規約原本、規約変更を決議した総会の議事録及び現に有効な規約の内容を記載した書面(以下「規約原本等」という。)並びに現に有効な第18条に基づく使用細則及び第70条に基づく細則その他の細則の内容を記載した書面(以下「使用細則等」という。)の閲覧をさせなければならな い。

5 第2項及び前項の場合において、理事長は、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。

6 理事長は、所定の掲示場所に、規約原本等及び使用細則等の保管場所を掲示しなければならない。

<参考>「標準管理規約(単棟型) 第72条関係コメント 

@ 区分所有者全員が 署名 記名押印 した規約がない場合には、分譲時の規約案及び分譲時の区分所有者全員の規約案に対する同意を証する書面又は初めて規約を設定した際の総会の議事録が、規約原本の機能を果たすこととなる。

A 第4項では、第18条に基づく使用細則及び第70条に基づく細則その他の細則についても、規約原本等と同じ手続で閲覧を認めることを明確に定めた。

 

★多くの場合、区分所有者全員が署名  記名・押印 した1冊の規約原本はない。分譲時の規約案の同意書で規約原本とする。
  また、規約案の同意書をとっていても、最初の総会で、規約案の承認を議案に入れることもある。

<参考>標準管理規約(単棟型) 72条:(規約原本等) 附則

(規約の発効)
第1条 この規約は、平成○年○月○日から効力を発する。

<参考>「標準管理規約(単棟型) 附則全般関係コメント

@ 新規分譲において、分譲会社等が原始規約案を作成する際の参考とする場合は、附則第1条の次に以下のような附則を規定することが考えられる。

(管理組合の成立)
第2条 管理組合は、平成○年○月○日に成立したものとする。

(初代役員)
第3条 第35条にかかわらず理事○名、監事○名とし、理事長、副理事長、会計担当理事、理事及び監事の氏名は別に定めるとおりとする。
2 前項の役員の任期は、第36条第1項にかかわらず平成○年○月○日までとする。

(管理費等)
第4条 各区分所有者の負担する管理費等は、総会においてその額が決定されるまでは、第25条第2項に規定する方法により算出された別に定める額とする。

(経過措置)
第5条 この規約の効力が発生する日以前に、区分所有者が○○会社との間で締結した駐車場使用契約は、この規約の効力が発生する日において管理組合と締結したものとみなす。

A @に記載するもののほか、初年度の予算及び事業計画等に関しても必要に応じて附則で特例を設けるものとする。

B 新規分譲において、分譲会社等が原始規約案を作成する際の参考とする場合は、次の点に留意する。
    ア)規約の効力発生時点は、最初に住戸の引渡しがあった時とする
    また、管理組合の成立年月日も、規約の効力発生時点と同じく、
    最初に住戸の引渡しがあった時とする

    イ)役員の任期については、区分所有者が自立的に役員を選任することができるようになるまでとする。
    ウ)入居後直ちに開催する総会で抽選で駐車場の使用者を決定する場合には、附則第5条は、不要である。

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第三十三条

2項  前項の規定により規約を保管する者は、利害関係人の請求があつたときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧(規約が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したものの当該規約の保管場所における閲覧)を拒んではならない。

過去出題 マンション管理士 R02年、H30年、H14年、
管理業務主任者 R04年、H17年、

利害関係人...区分所有者、賃借人等の専有部分の占有者、売買等によって区分所有権を取得しようとする者、専有部分を賃借しようとする者、管理組合に対し債権を有し、または管理組合と取引しようとする者、区分所有権または敷地利用権の上に抵当権を有し、または抵当権の設定を受けようとする者、区分所有者から媒介の依頼を受けた宅地建物取引業者等法律上の利害関係のある者など広い。

 なお、法律上の利害関係のない、例えば、親族関係にあるだけの者は、利害関係人の範囲に入りません。

★閲覧と利害関係人

閲覧の必要性
 規約もただ保管されているだけでは意味がなく、文書である以上必要なときに必要な人が規約の内容を確認できる必要があります。
 しかし、規約は、そのマンション内での取り決めであるため、閲覧希望者なら誰にでも閲覧させる必要もなく、2項はこの閲覧が必要とされる範囲を、利害関係人に限る規定です。

 平成14年の改正法で、規約(議事録も)の作成形式に従前の書面形式の他に電磁的記録の形式を加えましたから、保管・閲覧の対象にも書面の他にフロッピーディスクや磁気テープ、ICメモリー、CD、DVD、USBメモリー等のものが加わりました。
 保管方法はこれでいいのですが、閲覧において閲覧希望者にフロッピーディスクや磁気テープ、ICメモリー、CD、DVD、USBメモリーを見せても内容は分かりませんから、記録媒体がこれらの場合にはモニター(表示機)で読める状態にしたものを閲覧させるか印刷(プリントアウト)する必要があります。
そのため、その旨を改正法では2項で(法務省令:具体的には紙面とかモニターに表示)の括弧書きをしています。

利害関係人の範囲
 規約の閲覧ができる利害関係人とは、規約の規定内容について法律上の利害関係、すなわちその者の権利義務に何らかの影響が認められる者をいい、事実上の影響のある者は含まないとされています。
 規約は別に誰に見せても減るものではありませんが、この閲覧権者の制限は規約が区分所有者の団体(管理組合)の内部規則であり、その団体のプライバシーの尊重や閲覧事務の手間との関係で法律上閲覧の利益を保護すべき者との調整の結果です。

そこで、法律上の利害関係人に誰があたるかが問題ですが、
  まず
   @ 区分所有者は管理組合の構成員として当然これに該当します。
  次に
   A 相続人や売買での特定承継人は規約の適用を受け、賃借人である占有者も建物の使用に関し区分所有者と同様な義務を負担しますから(区分所有法第46条)当然法律上の利害関係があります。
   B 区分建物の担保権者も規約の規定が担保価値に影響するので当然です。

 問題は、これから買受を予定している者や賃貸を予定している者で、これらの者も買い受け等により特定承継人や占有者となるので利害関係人にあたるとする見解(マン管HPのQ&A)もありますが、それらの者は利害関係人となりうる者とはいえてもいまだ利害関係人自身とはいえないように思われます。
少なくとも予約契約等により利害関係の成立が確定的に予定されているのでなければ法律上の影響を肯定することは困難で、それを購入予定といえば誰でも閲覧権者になってしまうのでは、閲覧者の制限は事実上無意味となってしまうでしょう。

<参考>財団法人マンション管理センターの Q&A より、

  規約の閲覧を請求できる利害関係人の範囲
 
◎QUESTION :
 当マンション内の住戸の購入予定者から規約を閲覧したいという申し出がありましたが、どのように対応したらよいのでしょうか。規約を閲覧できる利害関係人の範囲についても併せて教えてください。
 

◎ANSWER :
 区分所有法は、「規約を保管する者は、利害関係人の請求があったときは、正当な理由がある場合を除いて、規約を閲覧させなければならない。」(同法第33条第2項)と規定しています。
 さて、質問の前段は、売買により区分所有権を取得する者が同法第33条第2項に規定されている利害関係人に含まれるのかということです。言いかえれば、それは、質問の後半の「利害関係人の範囲」について具体的に知り得れば、自ずと対応できる性質のものです。そこで後段の質問から回答することにします。
 
1 利害関係人とは
 閲覧を請求できる利害関係人とは、法律上の利害関係がある者をいい、単に事実上の利益や不利益を受けたりする者等は対象となりません。
法律上の利害関係がある者とは、どういう者をいうのか、主なものを例示します。
 ・規約の拘束を当然に受ける区分所有者
 ・賃借人等の専有部分の占有者(占有者は建物等の使用方法について規約の拘束を受けます。同法第46条第2項)。
 ・売買等によって区分所有権を取得しようとする者(特定承継人として規約の拘束を受けます。同法第46条第1項)。
 ・専有部分を賃借しようとする者(同法第46条第2項。上記2.参照)
 ・管理組合に対し債権を有し、または管理組合と取引しようとする者(その債権についての区分所有者の責任割合は、規約によって変わってきます。同法第29条第1項、第53条)。
 ・区分所有権または敷地利用権の上に抵当権を有し、または抵当権の設定を受けようとする者(専有部分と敷地利用権の一体性に関する規約等について利害関係を有します)。
 ・区分所有者から媒介の依頼を受けた宅地建物取引業者等法律上の利害関係のある者など、広い範囲の者を含みます。
なお、法理上の利害関係のない、親族関係にあるだけの者は、利害関係人の範囲に入りません

2 特定の住戸を購入しようとしている者
 特定の住戸の購入予定者は上記1の3.のとおり、利害関係がありますので、夜間等不適当な時間に閲覧請求がなされた場合など正当な事由がないかぎり、規約の閲覧を拒否できません。
 
3 罰則について
 管理者が正当な理由がないのに利害関係人の規約の閲覧請求を拒んだときは、管理者は20万円以下の過料に処せられます(同法第71条第2号)。

  しかし、買受を予定している者や借受を予定している者にとって、規約の内容が重要であることは勿論であり、売主や貸主に取引上要求される開示義務項目であることは否定できません。
 この点は宅地建物取引業者である売主や仲介業者の業法上の義務であることからも明らかですが、これらはあくまで売主や貸主がその相手方に対する義務であって管理組合自身の義務とはいえないように思えます。
 閲覧の義務の履行は売主たる区分所有者が自己の有する閲覧権を通して間接的に実現されるものであって、利害関係人の範囲を拡張して実現するものではないように考えます。

 ただし、2項は閲覧の拒絶権を認めているに過ぎず閲覧権者以外に開示することを禁止しているわけではありませんから、買受を予定している者や賃貸を予定している者、更には仲介業者に閲覧を許すことはそれらを予定する者やその当事者たる区分所有者の利益のために望ましいことと思われ、現実にはその方向で運用されているように思われます。

◎事実上の利害関係人
 法律上の利害関係人以外の者は事実上の利害関係人といわれ、この解説上は買受を予定している者や賃貸を予定している者も含みますが、区分所有者の単なる債権者(区分所有権の差押等担保権者と同様に区分建物に直接の利害関係が認められる場合以外は経済上の利害関係にあるの過ぎません。)、友人(区分所有者の利害に心情的な利害関係が有るにすぎません。)、規約変更等を検討している他のマンションの理事等(単なる参考となる利益があるにすぎず規約の内容がどうであろうと当人の権利義務に何らの影響もありません。)等がこれに当たります。

{判例}利害関係人:
  利害関係人とは、マンションの管理及び会計の経理についてマンションの区分所有者たる組合員に準ずる管理規約上の地位を現に有する者であって、その地位に基づき管理組合に対して会計帳簿等の閲覧を請求する法律上の利害関係が認められる者
例えば、区分所有者からその専有部分の貸与を受け、管理組合にその旨の届出があった者又はその同居人、
管理組合との間で組合管理部分について貸与、管理受託その他の契約関係を有する者等でその地位と当該閲覧請求との間に法律上の関連性が認められる者
が想定される。
)をいい、
単にその閲覧につき事実上の利害関係を有するにすぎない者を含まないと解するのが相当である」

として、専有部分の共有持分を譲渡して区分所有者でなくなった者について、利害関係人に該当しないとして、会計帳簿等の閲覧及び謄写の請求を認めなかった。(東京高裁:平成14年8月28日、判決)

正当な理由があると閲覧を拒絶できる
 なお、規約の閲覧が認められる閲覧権者の閲覧請求においても「正当な理由」、即ち時間的な都合や閲覧理由との関係で拒絶することが認められます。

 しかし、この「正当な理由」は、かなり抽象的な概念で正当かどうかは閲覧請求者と閲覧義務者とのそれぞれの理由を客観的に判断してどちらの利益が優越するかで決定される事柄です。
 例えば、夜遅いなど非常識な時間でも閲覧の必要性と緊急性が強度の場合には閲覧の利益が認められますし、単なる嫌がらせのように閲覧の理由がない場合や、昼間などの常識的な時間でも管理者等の閲覧義務者に閲覧させる余裕がないときに事前の連絡なく突然閲覧要求があった時等の場合には拒絶しても正当と判断されます。

   ★正当な理由:
     * 夜間等不適当な時間に閲覧請求がなされた場合
     *不必要に何回も閲覧請求をする、
     *いやがらせの閲覧請求が明らかな場合、 など。
     いつでも、だれにでも無条件に閲覧を許すものではないことに注意。相手が、利害関係人でも正当な事由があれば、拒める。

◎規約の閲覧を正当な理由が無くて拒むと20万円以下の過料:(区分所有法第71条2号

<参照>区分所有法 第71条2号:

次の各号のいずれかに該当する場合には、その行為をした管理者、理事、規約を保管する者、議長又は清算人は、二十万円以下の過料に処する。

二 
第三十三条第二項(第四十二条第五項及び第四十五条第四項(これらの規定を第六十六条において準用する場合を含む。)並びに第六十六条において準用する場合を含む。)の規定に違反して、正当な理由がないのに、前号に規定する書類又は電磁的記録に記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧を拒んだとき。

★注意:ここには、管理者がいなくて規約を保管している者も入り、正当な理由がなくて閲覧を拒むと20万円以下の過料となる。

<参照>建物の区分所有等に関する法律施行規則:(電磁的記録に記録された情報の内容を表示する方法)

 第二条  法第三十三条第二項 に規定する法務省令で定める方法は、当該電磁的記録に記録された情報の内容を紙面又は出力装置の映像面に表示する方法とする

★ パソコンに入っている規約(電磁的に記録された情報)の閲覧は、内容を紙にプリント(印刷)して見せるか、モニター(表示機)に表示することです。


★さらにステップ・アップを目指す人へ

*区分所有権が共有の場合
 区分所有法第40条において、専有部分(区分所有権の対象部分)が、数人の共有関係にある場合は、議決権行使者は一人にしなければなりませんが、本区分所有法第33条2項の規約の閲覧においては、各共有者は、個別に閲覧請求ができると考えていいでしょう。

<参照> 区分所有法 第40条 (議決権行使者の指定)

第四十条  専有部分が数人の共有に属するときは、共有者は、議決権を行使すべき者一人を定めなければならない。

*閲覧には、謄写(コピー)も含まれるのか?
 区分所有法第33条2項では、利害関係者であれば、「規約の閲覧」は、当然にできるとしていますが、それなら、謄写(コピー)を請求できるのかという疑問が湧くでしょう。
 最近の多くの法律での条文は、「閲覧」と「謄写」は併記し、共に請求が可能としています。

<参照>民事執行法 第17条(民事執行の事件の記録の閲覧等)

第十七条  執行裁判所の行う民事執行について、利害関係を有する者は、裁判所書記官に対し、事件の記録の閲覧若しくは謄写、その正本、謄本若しくは抄本の交付又は事件に関する事項の証明書の交付を請求することができる。

<参照>会社法 第125条(株主名簿の備置き及び閲覧等)

第百二十五条  株式会社は、株主名簿をその本店(株主名簿管理人がある場合にあっては、その営業所)に備え置かなければならない。
2  株主及び債権者は、株式会社の営業時間内は、いつでも、次に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
一  株主名簿が書面をもって作成されているときは、当該書面の閲覧又は謄写の請求
二  株主名簿が電磁的記録をもって作成されているときは、当該電磁的記録に記録された事項を法務省令で定める方法により表示したものの閲覧又は謄写の請求
3  株式会社は、前項の請求があったときは、次のいずれかに該当する場合を除き、これを拒むことができない。
一  当該請求を行う株主又は債権者(以下この項において「請求者」という。)がその権利の確保又は行使に関する調査以外の目的で請求を行ったとき。
二  請求者が当該株式会社の業務の遂行を妨げ、又は株主の共同の利益を害する目的で請求を行ったとき。
三  請求者が当該株式会社の業務と実質的に競争関係にある事業を営み、又はこれに従事するものであるとき。
四  請求者が株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報するため請求を行ったとき。
五  請求者が、過去二年以内において、株主名簿の閲覧又は謄写によって知り得た事実を利益を得て第三者に通報したことがあるものであるとき。
4  株式会社の親会社社員は、その権利を行使するため必要があるときは、裁判所の許可を得て、当該株式会社の株主名簿について第二項各号に掲げる請求をすることができる。この場合においては、当該請求の理由を明らかにしてしなければならない。
5  前項の親会社社員について第三項各号のいずれかに規定する事由があるときは、裁判所は、前項の許可をすることができない。

 確かに、コピー機も安価になり、規約を保管している事務所にも、コピー機が置かれていることも有るでしょうが、謄写するとなると、閲覧における手間と比べて、規約の持ち出が必要となる場合や、誰が謄写(コピー)するのか、また、その費用はいくらにするかなど、単に見せる「閲覧」とは異なった状況が考えられますから、規模の小さな管理組合も存在している現行の区分所有法の下では、謄写(コピー)の請求は当然にはできず、「謄写」については、別途の「規約での規定」が必要でしょう。 


*2017年11月3日:追記

  謄写(コピー)には特別な機器が必要で、設置や利用に費用と時間が必要だった頃から、現在はデジタル・カメラやスマートフォンの機能が発展して、資料を明細に写真撮影することが可能となっています。
 そこで、「謄写(コピー)」についての認識にも変更が必要です。

 現行の区分所有法第33条2項では「閲覧」はできるが、「謄写(コピー)」を許すには、設備や費用の面から別の規定が必要と考えられていましたが、これを変更し、現在の解釈においては、閲覧等の請求者の負担において写真撮影をすることは「閲覧」に含まれると解することが妥当です。(下の平成28年12月9日:大阪高等裁判所を参照)

 また、この大阪高等裁判所の平成28年9日付の判決では、「閲覧」ができ、写真撮影ができる「帳票類」には、会計帳簿(元帳、仕訳帳等)は勿論のこと、その裏付けとなる原資料(領収書、見積書等)も含まれると判断していますが、こちらの判断も妥当です。


*規約・集会の議事録以外の「閲覧・謄写」請求はできるか?
 区分所有法では、「規約と集会の議事録の閲覧(第42条5項で準用)」を規定していますが、標準管理規約では、「総会の議事録の閲覧(電磁的方法が利用可能な場合なら標準管理規約49条5項)」が認められ、「理事会の議事録閲覧(電磁的方法が利用可能な場合なら標準管理規約53条
4 項)、また、「会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿等の閲覧(標準管理規約64条)」が認められ、 最後に、「規約の閲覧(電磁的方法が利用可能な場合なら標準管理規約72条4項など)」の規定があります。

<参考>標準管理規約(単棟型) 

標準管理規約49条 

*(イ)電磁的方法が利用可能な場合

(議事録の作成、保管等)
第49条 総会の議事については、議長は、書面又は電磁的記録により、議事録を作成しなければならない。

2 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、又は記録しなければならない。

3 前項の場合において、議事録が書面で作成されているときは、議長及び議長の指名する2名の総会に出席した組合員がこれに署名押印しなければならない。

4 第2項の場合において、議事録が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報については、議長及び議長の指名する2名の総会に出席した組合員が電子署名(電子署名及び認証業務に関する法律(平成12年法律第102号)第2条第1項の「電子署名」をいう。以下同じ。)をしなければならない。

5 理事長は、議事録を保管し、組合員又は利害関係人の書面又は電磁的方法による請求があったときは、議事録の閲覧(議事録が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を紙面又は出力装置の映像面に表示する方法により表示したものの当該議事録の保管場所における閲覧をいう。)をさせなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。

6 理事長は、所定の掲示場所に、議事録の保管場所を掲示しなければならない。

標準管理規約53条 

(理事会の会議及び議事)
第53条 理事会の会議(WEB会議システム等を用いて開催する会議を含む。)は、理事の半数以上が出席しなければ開くことができず、その議事は出席理事の過半数で決する。

2 次条第1項第五号に掲げる事項については、理事の過半数の承諾があるときは、書面又は電磁的方法による決議によることができる。

3 前2項の決議について特別の利害関係を有する理事は、議決に加わることができない。

〔※管理組合における電磁的方法の利用状況に応じて、次のように規定〕

(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合

4 議事録については、第49条(第4項を除く。)の規定を準用する。ただし、第49条第2項中「総会に出席した組合員」とあるのは「理事会に出席した理事」と読み替えるものとする。

(イ)電磁的方法が利用可能な場合

4 議事録については、第49条(第6項を除く。)の規定を準用する。ただし、第49条第3項中「総会に出席した組合員」とあるのは「理事会に出席した理事」と読み替えるものとする。

標準管理規約64条 

*(イ)電磁的方法が利用可能な場合 

(帳票類の作成、保管)
第64条 理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を、書面又は電磁的記録により作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面又は電磁的方法による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。

2 理事長は、第32条第三号の長期修繕計画書、同条第五号の設計図書及び同条第六号の修繕等の履歴情報を、書面又は電磁的記録により保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面又は電磁的方法による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。

3 理事長は、第49条第5項(第53条第4項において準用される場合を含む。)、本条第1項及び第2項並びに第72条第2項及び第4項の規定により閲覧の対象とされる管理組合の財務・管理に関する情報については、組合員又は利害関係人の理由を付した書面又は電磁的方法による請求に基づき、当該請求をした者が求める情報を記入した書面を交付し、又は当該書面に記載すべき事項を電磁的方法により提供することができる。この場合において、理事長は、交付の相手方にその費用を負担させることができる。

4 電磁的記録により作成された書類等の閲覧については、第49条第5項に定める議事録の閲覧に関する規定を準用する。

 <参考>「標準管理規約(単棟型)  コメント第64条関係  

@ 第1項から第3項までにおける「利害関係人」については、コメント第49条関係@を参照のこと。

A
作成、保管すべき帳票類としては、第64条第1項に規定するものの他、領収書や請求書、管理委託契約書、修繕工事請負契約書、駐車場使用契約書、保険証券などがある。

B
組合員名簿の閲覧等に際しては、組合員のプライバシーに留意する必要がある。

C 第2項は、第32条で管理組合の業務として掲げられている各種書類等の管理について、第1項の帳票類と同様に、その保管及び閲覧に関する業務を理事長が行うことを明確にしたものである。なお、理事長は、理事長の責めに帰すべき事由により第1項の帳票類又は第2項に掲げる書類が適切に保管されなかったため、当該帳票類又は書類を再作成することを要した場合には、その費用を負担する等の責任を負うものである。

D 第3項は、組合員又は利害関係人が、管理組合に対し、第49条第3項(第53条第4項において準用される場合を含む。)、本条第1項、第2項並びに第72条第2項及び第4項の閲覧ではなく、管理組合の財務・管理に関する情報のうち、
自らが必要とする特定の情報のみを記入した書面の交付を求めることが行われている実態を踏まえ、これに対応する規定を定めるものである。書面交付の対象とする情報としては、大規模修繕工事等の実施状況、今後の実施予定、その裏付けとなる修繕積立金の積立ての状況(マンション全体の滞納の状況も含む)や、ペットの飼育制限、楽器使用制限、駐車場や駐輪場の空き状況等が考えられるが、その範囲については、交付の相手方に求める費用等とあわせ、細則で定めておくことが望ましい。別添4は、住戸の売却予定者(組合員)から依頼を受けた宅地建物取引業者が当面必要とすると考えられる情報を提供するための様式の一例に記載のある主な情報項目であり、上述の細則を定める場合の参考とされたい。

E 第3項に規定する管理組合の財務・管理に関する情報については、これらの情報が外部に開示されることにより、
優良な管理が行われているマンションほど市場での評価が高まることや、こうした評価を通じて管理の適正化が促されることが想定されることから、書面交付の対象者に住戸の購入予定者を含めて規定することも考えられる。一方で、開示には防犯上の懸念等もあることから、各マンションの個別の事情を踏まえて検討することが必要である。

標準管理規約72条 

*(イ)電磁的方法が利用可能な場合 

(規約原本等)
第72条 この規約を証するため、区分所有者全員が書面に署名又は電磁的記録に電子署名した規約を1通作成し、これを規約原本とする。

2 規約原本は、理事長が保管し、区分所有者又は利害関係人の書面又は電磁的方法による請求があったときは、規約原本の閲覧をさせなければならない。

3 規約が規約原本の内容から総会決議により変更されているときは、理事長は、1通の書面又は電磁的記録に、現に有効な規約の内容と、その内容が規約原本及び規約変更を決議した総会の議事録の内容と相違ないことを記載又は記録し、署名又は電子署名した上で、この書面又は電磁的記録を保管する。

区分所有者又は利害関係人の書面又は電磁的方法による請求があったときは、理事長は、規約原本、規約変更を決議した総会の議事録及び現に有効な規約の内容を記載した書面又は記録した電磁的記録(以下「規約原本等」という。)並びに現に有効な第18条に基づく使用細則及び第70条に基づく細則その他の細則の内容を記載した書面又は記録した電磁的記録(以下「使用細則等」という。)の閲覧をさせなければならない。

5 第2項及び前項の場合において、理事長は、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。

6 理事長は、所定の掲示場所に、規約原本等及び使用細則等の保管場所を掲示しなければならない。

7 電磁的記録により作成された規約原本等及び使用細則等の閲覧については、第49条第5項に定める議事録の閲覧に関する規定を準用する。

 とあり、標準管理規約では、規約の他に、総会や理事会の議事録の他にも、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿、領収書や請求書、管理委託契約書、修繕工事請負契約書、駐車場使用契約書、保険証券なども組合員など利害関係人は、閲覧はできます。

 そこで、この規約をもとに、組合の会計を調べる目的で、組合員が、「謄写」も請求した裁判がありました。

 その裁判で、東京地裁では、「閲覧」に加えて「謄写」も求めることができるとしましたが、東京高裁では、その判決文(平成23年9月15日)において、「閲覧」はできても、当然に「謄写」はできないとしているのは、妥当な判断だと思います。

*2017年11月3日:追記
  謄写(コピー)には特別な機器が必要で、設置や利用に費用と時間が必要だった頃から、現在はデジタル・カメラやスマートフォンの機能が発展して、資料を明細に写真撮影することが可能となっています。
 そこで、「謄写(コピー)」についての認識にも変更が必要です。

 現行の区分所有法第33条2項では「閲覧」はできるが、「謄写(コピー)」を許すには、設備や費用の面から別の規定が必要と考えられていましたが、これを変更し、現在の解釈においては、閲覧等の請求者の負担において写真撮影をすることは「閲覧」に含まれると解することが妥当です。(平成28年12月9日:大阪高等裁判所を参照)

<参考> 東京高裁 平成23年9月15日の判決文の抜粋:

 被控訴人(注:組合員)らは,本件規約上謄写を認める規定はないが,閲覧が許される場合には謄写も許されるべきであると主張する。
しかし,謄写をするに当たっては,謄写作業を要し,謄写に伴う費用の負担が生じるといった点で閲覧とは異なる問題が生じるのであるから,閲覧が許される場合に当然に謄写も許されるということはできないのであり,謄写請求権が認められるか否かは,当該規約が謄写請求権を認めているか否かによるものと解される。
 本件規約第70条(注:標準管理規約なら64条)においては,「理事長は,会計帳簿,什器備品台帳,組合員名簿及びその他の帳票類を作成・保管する。組合員又は利害関係人の閲覧請求については,第57条3項の定めを準用する。」とし,第57条3項(注:標準管理規約なら、49条5項)において, 「理事長は議事録を保管し,組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは,議事録を閲覧させなければならない。この場合,閲覧につき相当の日時,場所等を指定することができる。」と定められていることは当事者間に争いがないところ,このように本件規約で閲覧請求権について明文で定めている一方で,謄写請求権について何らの規定がないことからすると,本件規約においては,謄写請求権を認めないこととしたものと認められる。

 被控訴人らは,閲覧のみしか認めないとなると必然的に長時間の閲覧が必要となり,場合によっては2回, 3回の閲覧が必要となるのに対し,謄写が認められれば,閲覧者が閲覧に要する時間は非常に短くなり,謄写を認めることは閲覧をさせる控訴人(注:管理組合)の利益にもなるから,謄写請求権が認められるべきであると主張する。
 しかし,控訴人は,組合員からの閲覧請求に対して社会通念上相当と認められる時間閲覧をさせることで足り, 1回の閲覧請求で不相当に長時間の閲覧が認められるものではないから,閲覧の時間を短縮するために謄写請求権を認めるべきとの主張は理由がない。


*2017年11月3日追記:
  区分所有法第33条2項の「閲覧」には、デジタル・カメラやスマートフォンの機能の発展により、特別な規定がなくても、閲覧請求者の負担による「謄写(コピー」として写真撮影も含まれると、解釈を変更しましたが、また「標準管理規約64条1項に規定される「帳票類」についても、マンションの管理の適正化に関する指針を根拠に、会計に関する領収書などの裏付け資料が含まれると解する判例がありますので、参考にしてください。(大阪高等裁判所:平成28年12月9日

判示事項の要旨:
1 権利能力なき社団たるマンション管理組合とその構成員たる各区分所有者との間のマンション管理に関する法律関係に対し,委任契約に関する民法645条(受任者の報告義務に関する規定)の類推適用が相当とされた事例。

2 上記の場合において,各区分所有者は,マンション管理規約に明文の定めがない場合であっても,民法645条に基づき,管理組合に対し,管理組合がマンション管理業務について保管している文書(会計帳簿の裏付けとなる原資料等)の閲覧及び閲覧の際の当該文書の写真撮影を請求する権利を有するとされた事例。


*判決文より抜粋:
 マンション管理適正化指針は,「管理組合は,マンションの区分所有者等の意見が十分に反映されるよう…適正な運営を行うことが重要である」とし(指針一の1),区分所有者も「管理組合の一員として…管理組合の運営に関心を持ち,積極的に参加する等,その役割を適切に果たすよう努める必要がある」とし(指針一の2),さらに「管理組合の運営は,情報の開示,運営の透明化等,開かれた民主的なものとする必要がある」とし(指針二の1),「管理組合の管理者等は,必要な帳票類を作成してこれを保管するとともに,マンションの区分所有者等の請求があった時は,これを速やかに開示することにより,経理の透明性を確保する必要がある」とする(指針二の4)。
マンション管理適正化指針二の4にいう「帳票類」とは帳簿と伝票類を意味する会計用語であり,本件の裏付資料は,ここでいう「帳票類」の中に含まれる。
管理組合の区分所有者に対する情報開示義務に関し,法令の解釈適用をするに当たっては,このように,適正化推進法が施行されて長年が経過し,上記のような内容のマンション管理適正化指針が公表されているという経過を踏まえて行うべきである。


{設問} マンションの占有者(区分所有者以外の専有部分の占有者をいう。)に関し、区分所有法の定めによれば、次の記述は適切か。

マンションの占有者は、集会の決議事項について利害関係を有する場合でも、集会議事録の閲覧請求をすることはできない。

→× 適切でない。 
 議事録を保管するものは、利害関係人の請求があったときは、正当な理由がある場合を除いて、議事録の閲覧を拒めない。(区分所有法第42条5項「第三十三条の規定は、議事録について準用する。」
そして、区分所有法第33条2項「前項の規定により規約を保管する者は、利害関係人の請求があつたときは、正当な理由がある場合を除いて、規約の閲覧(規約が電磁的記録で作成されているときは、当該電磁的記録に記録された情報の内容を法務省令で定める方法により表示したものの当該規約の保管場所における閲覧)を拒んではならない。 )。
よって占有者は、集会の決議事項について利害関係を有する場合には、集会議事録の閲覧請求はできる。

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第三十三条

3項 規約の保管場所は、建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。

過去出題 マンション管理士 R02年、
管理業務主任者 R04年、H22年、

★保管場所をどこにするか 〜見やすい場所に掲示とは〜
 ところで規約の閲覧権者が閲覧を実現するためには規約がどこにあるかを見つけることが必要です。

 そのため本3項で規約がどこに保管されているかを「建物内の見やすい(発見しやすい)場所」に掲示することが要求されています。
ただし、ここでは、規約の保管場所がどこであるかを示すだけでよく、実際の規約の保管場所は管理組合が法人化されていなければ、特に管理事務所とかの指定はありません。

 でも、規約の保管場所が分かっても閲覧は閲覧義務者の義務の履行で果たされるのですから、○○銀行の貸し金庫に保管中と掲示しても意味がありません。

従って、規約の保管場所とは閲覧を実現できる管理者等の保管義務者又はその履行補助者を発見できる場所即、ち保管義務者等の住所・居所を意味するものと解されます。

★多くの場合、規約保管場所の掲示は管理人室の窓口にしており、規約保管場所も管理人室にしている
  最近のマンションでは、玄関の近くに、広さの差はありますが、管理人室がありますから、ここに「当マンションの管理規約及び総会議事録は、管理人室に保管しています」と張り紙を出しています。この場合、管理規約は、パソコン利用ではないため、紙面にしています。
 「なお、管理規約及び総会議事録を閲覧出来るのは、利害関係者に限ります」などの文章も出ています。

 ★この規約保管場所の掲示規定には、規約・議事録・電磁的記録とも管理者(理事)、管理者がいないときの区分所有者とも罰則はなし

    ◎ただし、管理組合法人が設立されていれば、規約は理事が「事務所」で保管する

 <参照>区分所有法 第47条12項での第33条1項本文の準用:

12項  管理組合法人について、第三十三条第一項本文(第四十二条第五項及び第四十五条第四項において準用する場合を含む。以下この項において同じ。)の規定を適用する場合には第三十三条第一項本文中「管理者が」とあるのは「理事が管理組合法人の事務所において」と、第三十四条第一項から第三項まで及び第五項、第三十五条第三項、第四十一条並びに第四十三条の規定を適用する場合にはこれらの規定中「管理者」とあるのは「理事」とする。


{設問}次の記述は正しいか。

*管理者は、規約を建物内に保管する義務があり、その保管場所を建物内の見やすい場所に掲示しなければならない。

答え: 間違いである。 
 区分所有法第33条には、「管理者に規約を保管する義務がある」ことを規定している。そして、管理組合法人の場合には、区分所有法第47条第12項により「管理組合法人の事務所」に保管する旨の規定がある。しかし、法人化されていない管理組合(権利能力なき社団)の場合には、規約の保管場所については特に規定がない。
設問の「建物内に保管する」とあるのは誤りで、保管場所は何処でもよい。

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(集会の招集)

第三十四条

1項  集会は、管理者が招集する。

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 H21年、

   

★区分所有法第5節 規約及び集会は、第30条から第46条で構成され、規約についてが、第30条から第33条までに規定され、本第34条から第44条までが集会に関する規定です。
 第45条は集会を開催しない場合の決議、第46条は規約と集会の決議の効力を定めています。

集会 〜区分所有法では標準管理規約で使用している「総会」とは規定していない〜

 第34条は集会の招集に関する規定です。

★集会の重要性
  区分所有法が
民法と異なる大きな点は、エントランスや階段など建物の共用部分の共有関係です。

 
民法では共有物を変更する行為については、共有者「全員の合意」が求められています(民法第251条1項)が、この共有者全員の合意を得ることは実生活では殆ど不可能を意味している実体から、区分所有法では「多数決の原理」を取り入れていることです。(区分所有法第17条など)

<参考> 民法 第251条  (改正あり。赤字

(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない。

2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

  区分所有法の特徴である「多数決」制度の採用により、区分所有者による集会で決議された事項は、その集会が開催された時の区分所有者だけでなくその後に、マンションを買った特定承継人や相続をした包括承継人にも及びます。(区分所有法第46条1項
 また、集会で使用方法についての決議があれば、専有部分を借りた占有者(賃借人)も拘束します。(区分所有法第46条2項
 このように、集会での決議はマンション生活では重要な位置を占めていますので、区分所有者は必ず集会に出席して、自分の意思を伝えることが肝心です。

★ 集会は、区分所有法上で区分所有者団体での「最高意思決定機関」です。
 規約の設定・変更・廃止、管理者の選任・解任、会計決算・予算案の承認など重要な事項が集会の決議を必要とされています。
 (ただし例外として、第32条の分譲前の公正証書による規約の設定と、第45条の区分所有者全員の承諾があれば、集会を開かなくても書面や電磁的方法での決議はできます。)

 この区分所有者による「集会」は、会社や自治会など一般の団体では「総会」と称し、関係者が集まりますが、総会という名称が団体性のはっきりした社団等の議決機関という法律的な性格を帯びたものである一方、たびたび述べていますが、区分所有法では区分所有者団体の社団性については法律的に明確に規定していません。

 区分所有法第3条においても解説しましたように、この区分所有者は、全員でただ「団体を構成する」と規定しているだけで、正式には「管理組合」と規定していないように、この区分所有法第34条においても、一般の呼び名である「総会」ではなく、区分所有者個々人の一時的な集合体というイメージの「集会」という名称を用いていることが区分所有法の特徴です。

 しかし、区分所有者の団体が直ちに管理組合とはなりませんが、区分所有者の団体も「権利能力のない社団」と解されますから、集会を総会と理解しても問題はありません。

 現実に、標準管理規約(単棟型42条)では、「総会」と区分所有法での「集会」は同じとしています。

<参考>標準管理規約(単棟型) 42条:(総会) 

第42条 管理組合の総会は、総組合員で組織する。

2. 総会は、通常総会及び臨時総会とし、区分所有法に定める集会とする。

3. 理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後2か月以内に招集しなければならない。

4. 理事長は、必要と認める場合には、理事会の決議を経て、いつでも臨時総会を招集することができる。

5. 総会の議長は、理事長が務める。

  (注)3項の通常総会の新会計年度以後「2か月以内に招集」の規定は、区分所有法にはない

<参考>「標準管理規約(単棟型) 第42条関係コメント

(第3項関係)
災害又は感染症の感染拡大等への対応として、WEB会議システム等を用いて会議を開催することも考えられるが、やむを得ない場合においては、通常総会を必ずしも「新会計年度開始以後2か月以内」に招集する必要はなく、これらの状況が解消された後、遅滞なく招集すれば足りると考えられる

(第5項関係)
総会において、議長を選任する旨の定めをすることもできる。

*標準管理規約による、管理組合の組織・機関



★集会は誰が招集するのか


  

★第1次 〜管理者〜による集会招集 

  第34条1項で、集会の招集は、まず管理者にその権限が認められています。

 管理者は区分所有者の団体である管理組合の事務を執行し、管理組合を代表する機関であり、集会の招集も管理組合事務の執行の一環ですから集会の招集権を管理者に認めることは当然といえます。

  なお、続く2項では、「管理者は少なくとも毎年1回集会を招集しなければならない」として管理者に少なくとも年1回は集会の招集義務を課しています。
  この意図は、集会は、管理者を選任したり解任すること(第25条)や事務の報告をさせる(第43条)等により管理者を監督する機関でもあることから、少なくとも年1回は集会を開いて、区分所有者が管理者の業務執行を監督する機会を保証しようとするものです。

  従って、管理者がいない場合には、当然、2項に定める年1回の集会招集はありません。

 ◎ただし、実務上は会計期間を1年とする予算制度で管理組合が運営されていることが多く、予算や決算の審議のために毎年定期に定期総会が招集されているのが一般であり、管理者(通常は理事長)の業務監督についてもその機会に行われます。

★第2次 〜管理者が招集しない時、または管理者がいない時は、区分所有者(1/5以上)が集会を招集する〜 
  管理者がいても集会を開かない時(4項)や、管理者が選任されていない時や、管理者が欠けている時には、区分所有者の1/5以上で議決権の1/5以上を有する者が連名で、集会を招集することになります。(5項)
 なお、この定数は、規約で減ずることもできます。(5項)

   ★原則、集会の招集者は管理者。 管理組合が法人になっているときは、理事

    例外:管理者がいないとき、また管理者に集会の招集を請求したが、管理者が開かないときは、区分所有者の1/5以上で議決権の1/5以上を有するものも招集できる
    <参照>第34条3項、4項、5項


★マンションに住んだこともなく、地元の町会(自治会)の総会などにも出席することにも無関心な受験生は、総会(集会)がどういう手順で行われるのか、今まで興味もなかったでしょうが、役員の方々の苦労を見てみましょう。

◎管理組合の集会(通常総会)の開催までの流れ:

1.理事会における総会用「議案書」の検討

  理事会を開き、通常総会で検討する案(多くの場合、年間活動報告、決算書の承認、予算案の承認、役員改選、活動計画が中心になります。)を作成します。

  (実際の現場では⇒管理業者が、草案を作り、殆ど変更はありませんが、理事会に渡します。)

2.通常総会開催日等の検討

     議案書(案)の作成が終りますと、次は通常総会開催のため議案書(案)を印刷し、各組合員に通常総会開催の2週間前(区分所有法第35条では1週間前でいいが2週間前が勧められる)に配布することになります。

     通常総会には組合員全員の出席が望ましいので、理事長(理事会)は、集まりやすい時期を選んで通常総会の日を決めます。
    開催日時は、土曜や日曜日の午後に、場所は、マンションに集会室があればそこで、無いときは近隣で探さなければなりません。
  近隣の地区センター等を利用するときは、申込しても抽選や既に予約されていたりして、希望の日時がとれないこともありますので、予備日なども検討が必要です。
    しかし、現実には、集まりやすい時期を選んでも、殆ど組合員全員の出席は望めないものと考えておかなければなりません。(総会が成立しない場合もあります。)

   (実際の現場では⇒管理業者が、管理組合の負担を考えて安い会場を探します。でも、どうしても近隣には場所がとれなくて、マンションから遠い場所になると、わがままな居住者は、管理業者を責めます。)

3.通常総会議案書等の配布

  日時、場所が決定しましたら、通常総会議案書を管理組合理事長名で組合員全員に配布します。

   通常総会議案書の内容は、通常総会開催の日時、場所、議案の目的(議題)、また規約の改正などでは議案の要領も必要、総会出席票、委任状、第〇〇回通常総会議決権行使書等を添付します。
   マンション外に居住している組合員で届けの出ている場合は、返信用封筒を入れて送付する方がよいでしょう。(この際の、切手の負担を管理組合にするのか、外部の組合員の負担にするのかなどは予め管理組合内で決めておきます。)

   総会出席票は、出席・欠席にかかわらず総会前に提出してもらいます。これにより、総会開催日の5日程前に理事長あるいはあらかじめ定めている総会担当理事等が総会出席票を受取り総会出席者数を把握し、会場設営の準備を行います。

4.通常総会開催の出席者等の把握

   理事(理事会)は、通常総会に対して、組合員からの出欠を事前に確認し、面倒ですが通常総会成立に努めなければなりません。
   組合員の総会に対する出席または欠席は次のように分かれます。

    @ 組合員の出席/欠席の確定
         総会出席票提出
        委任状による代理人の出席(ここは、一般の代理人ではなく、標準管理規約旧46条5項の制限に注意)

    (注:以下の標準管理規約46条5項は、平成23年(2011年)に改正され、削除されたので、新しい管理規約を使用している、管理組合は注意のこと。)
    標準管理規約旧46条5項で、代理人になれるのは、
          イ)組合員の同居者
          ロ)組合員の住戸を借り受けた者
     ハ)他の組合員もしくは他の組合員と同居する者

  しかし、平成28年 3月14日の改正;標準管理規約46条5項で代理人になれるのは、
    一 その組合員の配偶者(婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同 様の事情にある者を含む。)
      又は一親等の親族
    二 その組合員の住戸に同居する親族
    三 他の組合員 
   と平成23年の改正で削除された、同居人が復活しているので、再注意のこと。



       委任状の提出により欠席
       委任状を理事長等に提出
     総会決議投票書(議決権行使書)提出により欠席
     第〇〇回通常総会決議投票書(議決権行使書)提出

   A組合員から出欠の返答なし
     出欠の意思が確認されない組合員が多くなると、通常総会の成立が危ぶまれます。
   このようなことがないよう事前に出席、代理出席及び理事長等への委任状の数を把握し、無回答の組合員に対して出席または代理出席を要請し、欠席のときは理事長等への委任状あるいは総会決議投票書(議決権行使書)の提出について働きかけます。(これが大変な仕事となる。)

  (実際の現場では⇒管理業者が、この役目を理事の代わりにやることになります。高価なマンションを買った人でも、管理組合の活動には殆ど無関心です。無回答の部屋を訪問しても、総会の期日を知らないだけでなく、総会の案内も捨てています。管理業者は、出席・委任状のコピーを多く携えて、各戸を訪問しますが、不在も多く、総会成立の定数を確保するために、土・日、夜間と費用がかさむ仕事を、多くの場合規定の料金内でやっています。)

5.総会出席票等の整理

 総会の成立及び決議等について総会当日混乱しないようにするために、総会に出席する組合員、代理出席者の確認、総会決議投票書(議決権行使書)の賛成、反対数、及び委任状提出者とその数を「総会出席票等整理表」にあらかじめ記入しておくとよいでしょう。

  議決権数が端数や x/y などとなっている場合には、電卓も必要です。

  (実際の現場では⇒管理業者が、受付となって集計します。大体、理事は、総会での議決権や定数などが、規約で決められているなんて知りません。また、夫婦二人で来たら、どう扱うのかなんて興味もないでしょう。)

6.総会の開催

  担当役員は、総会の開始前に会場に行き、机・椅子などの準備を行います。
  また、最終的に、出席者/欠席者の確認となり、委任状も含めて規約による「総会」の成立要件(組合員総数の過半数など)を満たしていることが必要です。

  総会の開催が定数を満たし成立すれば、あとは、議題に従って、議長が議事を進行していきます。

書面投票の例
令和○○年○○月○○日
決議投票書(議決権行使書)
私は都合により、○月○日開催の第○回通常総会に出席できませんので、本書をもって下記のとおり議決権を行使いたします。
第1号議案○○○の件(賛成 反対)
第2号議案○○○の件(賛成 反対)
第3号議案○○○の件(賛成 反対)
室番 △△棟 △△号室
氏名 ◇ ◇ ◇ ◇ 

7.議案の採決

   報告事項が終了すれば、次に議案の採決に移ります。
 原則としては、各議案ごとに質疑応答をして、採決をします。でも、出席者が少ないとき、議案が簡単な内容である場合には、もう一気に全議案を説明して、纏めて、賛成・反対を採決することもあります。

  このような、総会では、組合員の関心が低いので、多くの場合、理事会提案に全て賛成で終わります。早ければ、開始から10分もかからず、閉会です。

8.閉会

  閉会して、理事(議長から書記に任命された人)には、「議事録の作成」業務がまっています。

実際の現場では⇒管理業者が、総会の議事録をとり、議事録案として理事会に提出しますが、この段階でもう「案」でなく、ほぼ議事録です。

9.集会(総会)議事録の配布・保管
  
  
議長(多くは理事長)は、議事録に署名 押印 し、また集会(総会)に出席した他の組合員(区分所有者)二人の署名 押印 も貰って議事録が作成されます。なお、標準管理規約に規定されていませんが、通常、議事録は各組合員に配布しています。配布の目的は、管理組合の活動に関心のない組合員に対し、マンション管理の実態を周知させる意味があります。

  集会(総会)議事録は、区分所有法の定め(第33条)に従って、理事長(管理者)が責任をもって適切なフォルダーに規約と共にファイルされます。

 


★集会(総会)のイメージ
  上に説明しましたが、多くの受験生が、集会(総会)に一度も参加したことがないので、集会(総会)のイメージができないようです。

  基本的な考え方として、マンションにおいては、重要なことは、すべて集会(総会)で決められるということです。
 つまり、無責任また無関心な区分所有者が言うような、一部の役員(理事)が勝手に決めて、組合員に押しつけているのではありません。
 役員会(理事会)は集会(総会)にかける「案」を提出しているだけです。

 この「案」に賛成したり反対するのは、組合員である区分所有者の意思を反映できる集会(総会)で組合員が決めるのです。
 その決め方が、事項により組合員の過半数であったり、3/4以上であったりしますが、多数決です。
 ですから、この「案」に対して納得がいかないなら、質問をしなければいけません。
 反対なら反対の意思表示をしなければ、集会(総会)では賛成とみなされるのです。

 そして、一度決まったら、決まった内容に従う義務があるということを、肝に銘じておいてください。

 *株主総会に例えると?
   よく、受験参考書で、マンションの集会(総会)を株主総会に例えていますが、受験生で株主総会に出席したした人は少ないと思います。
  でも、会社社長の使い込みや業績不振でテレビでの株主総会の放映をみたことがあるでしょうから、株主総会の開催も説明しましょう。

1.総会の通知がくる
    その会社の決算が終わると、多くの場合2ヶ月以内を開催日とした株主総会の通知がきます。
    これに、 開催日時、場所、事業報告、決議事項(余剰金の処分、定款の一部変更、取締役x名の選任、監査役y名の選任)等と必要な資料が記載されています。
    そして、議決権行使用紙が添付されています。

    議決権は、保有している株数分だけ行使できます。 10株しか持っていない人は、10個、100株持っている人は100個となります。

    この議決権行使書を持って、総会に出席します。
   でも、総会に出席できない場合には、議決権行使書に、賛成・反対に○をつけて、郵送してもいいし、最近はインターネットでパスワードを利用した賛成・反対もできます。

2.総会に出席する
    受付で、議決権行使書を出すと、会場に入れます。議決権行使書に書かれた議決権数が直ちに集計されます。

3.株主総会が始まる
    定時になると、仮議長(多くは、社長がなる)の立場の人が登場し、総会に必要な定数を確認し、開会を宣言します。
    そして、正式の議長(これも、仮議長の社長がそのままなる)が議事を進行します。

   *報告事項
     ここでは、該当年度の事業報告(どれが売れたとか、どれが不調だったとか、理由は)が映像やグラフを交えてなされます。
     そして、会計報告があり、会計監査法人と監査役会から適正との報告があります。

   *決議事項
    次に、余剰金の処分、定款の一部変更、取締役x名の選任、監査役y名の選任等の議題の説明があります。

   *質疑応答
    そして、質疑応答があるわけですが、質疑も事業報告に関わっていたり、会計の内容であったりと株主は何でも質問しますので、最近の株主総会では、各議案ごとに質疑をし、採決を行う方法から、全部一括して質問は受け付けています。

   *採決
     質疑が終わると、採決になります。
     採決に必要な議決権数は異なりますから、この採決では、議案ごとに、拍手なりで賛成・反対をとります。
     (拍手で過半数が分かるかは疑問がありますが、実は、株主総会を開く前に、大口株主から、議案に対しての賛成の委任状を会社側は得ていますので、総会を開く前に、既に多くの事項は決まっているのです。)

4.閉会
    議長が閉会を宣言して、終わりです。


★集会(総会)の開催予告の案内
  集会(総会)の実出席率を上げるために、区分所有法や標準管理規約には規定がありませんが、総会の開催日時を前もって掲示や広報紙、また理事会議事録などで予告することをも検討します。

★参考: 国土交通省 調べ(平成17年) 平均実出席率 36.4%、 平均総会出席率 80.4% (委任状、書面議決などを含む) 
      望ましい対応 ---> 少なくとも半数程度の区分所有者が実際に出席している。


      国土交通省 調べ(平成25年) 平均実績出席率 34.8%  平均総会出席率 79.4% (委任状、議決権行使書などを含む)

      国土交通省 調べ(平成30年) 平均実績出席率 32.9% 平均総会出席率 82.1% (委任状、議決権行使書などを含む)

      国土交通省 調べ(令和5年) 平均実績出席率 24.6% 平均総会出席率 88.5% (委任状、議決権行使書などを含む)

  *組合員の半数も総会に出席していないのが実情です。
   区分所有者(マンションのオーナー)は一生払い続ける巨額な借金をしてまで買ったマンションなのに管理に対して実に無関心です。
    この区分所有者の管理に対する認識の低さを向上していくためには、マンション管理士が必ず管理組合の顧問となる制度が必要です。

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第34条

2項  管理者は、少なくとも毎年一回集会を招集しなければならない。

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 H30年、

★管理者は、最低、年1回は集会を招集して事務報告をすること。(定時集会(総会)または通常集会(総会)という。)

 第34条2項では、管理者は少なくとも毎年1回集会を招集しなければならないとして管理者に集会の招集義務を課しています。
これは集会を開くことによって、管理者が行った管理組合の事務の執行内容を組合員(区分所有者)が監査できるようにするための重要な規定です。

 集会は、管理者の選任・解任権(第25条)や事務報告聴取権(第43条)等により管理者が行った事務の内容を審査・承認する場でもあることから、少なくとも年1回は開いて管理者の業務執行の内容を区分所有者が審査する機会を保証しようとするものです。

 また、その集会で、管理者は事務報告もする必要があります。(区分所有法第43条 参照
従って、管理者が任命されていない場合には年1回の集会招集義務はありません。

<参照> 区分所有法 第43条「事務の報告」:

 管理者は、集会において、毎年一回一定の時期に、その事務に関する報告をしなければならない。

   

   この定時集会では、第45条2項の「区分所有者の全員の書面による合意があったときは、集会の決議があったとみなす」の規定は適用されません。この規定が意図している事務報告がされませんから。

<参照> 区分所有法 第45条2項:

 この法律又は規約により集会において決議すべきものとされた事項については、区分所有者全員の書面又は電磁的方法による合意があつたときは、書面又は電磁的方法による決議があつたものとみなす。


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◎では、新型コロナウイルス感染症が蔓延している、2020年(2021年も、2022年も)において、集会(総会)を開くことができない状況にあるときでも、管理者(理事長)は、いつか「集会」を開いて、事務の報告をしなければならないのか → 区分所有法の改正が必要

 確かに、管理者の事務報告は、管理組合員にとっては、過去1年間に管理者が行った活動内容を知るために重要な事項であり、区分所有法では、必ず集会で事務報告をさせることにより、管理者の活動内容を監査し、管理組合運営の透明性、適正化を目指しています。

 しかし、2020年(まだ、2021年3月も、さらに2022年10月も)現在、新型コロナウイルス感染症が世界中に蔓延しており、政府からも集団感染を防ぐために緊急事態宣言が出され、3密(1. 密閉空間(換気の悪い密閉空間である)、 2.密集場所(多くの人が密集している)、 3.密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行われる))を避けるように要請があるなかで、集会を開催することは、不可能です。
 集会を延期しても開催することができるなら、この区分所有法第43条の規定は、有効ですが、新型コロナウイルス感染症の収束がまったく読めない状況下では、いつまでも集会を開くことはできず、そのために、前の理事長は、集会が開ける状況となった1年後にまた、2年後になるかも分かりませんが、過去に遡った「事務の報告」をしなければならないとするのは合理的ではありません。

 そこで、このような、集会が開けない状況は区分所有法が想定していない、対応しきれない事態として条文の解釈も変更することが肝心です。
 
 それは、区分所有法第45条の「区分所有者全員の合意」をえて、特定の日を持って「書面による集会(総会)」を開催し、その中で、「集会(総会)が招集されたとみなす」ことによって、緊急避難的な集会(総会)の開催を認めることが必要です。
 その集会(総会)の議案書に、報告事項として「理事会活動(事務)報告」を載せ、案内書において、「区分所有法第43条に定める管理者(理事長)の総会における「事務の報告」は、あったものとみなします」とする方法を取ることです。

 *このような面倒なことが起きないように、区分所有法第43条も集会が開催できない状況を想定した規定を、早急に追加すべきです。

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★標準管理規約(単棟型)42条では、区分所有法では定めのない集会の招集期日を、「新会計年度開始後2か月以内」に招集することになっています。

<参考>標準管理規約(単棟型) 42条:(総会)  

第42条 管理組合の総会は、総組合員で組織する。

2. 総会は、通常総会及び臨時総会とし、区分所有法に定める集会とする。

3. 理事長は、通常総会を、毎年1回新会計年度開始以後2か月以内に招集しなければならない。

4. 理事長は、必要と認める場合には、理事会の決議を経て、いつでも臨時総会を招集することができる。

5. 総会の議長は、理事長が務める。

★なお、管理者(理事長)は、個々の区分所有者の要求に対しては、直接的に事務報告の義務を負いません。

{判例} 区分所有者個々の要求に対して、管理者(理事長)は事務報告の義務が、あるのか が争われた事件で、「事務報告は、集会において行えば足りるのであって、個々の区分所有者の要求に直接的かつその都度、応じる義務はない」とされています。(東京地裁;平成4年5月22日 判決)

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第三十四条

3項  区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。

過去出題 マンション管理士 R05年、R01年、H29年、H27年、H26年、H20年、H16年、
管理業務主任者 H24年、H22年、H21年、H18年、H17年、H16年、H13年

定数は減ずることができる...規約で、区分所有者の数1/5(20%)の定数は減らせるが、増加(加重)はできない

★少数区分所有者の集会招集請求の趣旨

 第34条1項で規定された管理者についで、2番目に集会を招集できるのは、少数の区分所有者です。(5項参照)

<参照> 区分所有法 第34条5項:

5項  管理者がないときは、区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる

 多くの法律の構成上、一般に、第一順位の招集権者のみに集会の招集権を限る例は少なく、第二順位の招集権者またはそれに代わる招集義務を定めるのが通常です。

 そのわけは、第一順位の集会の招集権者である管理者が自己の意向に沿わない議題である等の理由により集会を招集しない場合には、管理組合の意思決定に必要な集会の成立が不可能となります。
それを防ぐ方法として、管理者に代わる少数区分所有者の集会の招集権を認めたのが本3項、4項及び5項の規定です。

 また、区分所有法では、少数者による集会の招集については、
 1.管理者がいる場合(3項、4項) と
 2.管理者がいない場合(5項) の2つの状況を規定しています。

管理者がいる場合の少数区分所有者の招集の方法
 管理者がいる場合には、少数区分所有者の集会の招集権の要件は二段階に分かれています。

 まず、@少数区分所有者は、管理者に対して「会議の目的(議題)」を示して集会の招集を求めます(3項)、

     Aこの請求により管理者が所定の期間内(2週間以内にその請求の日から4週間以内の日を会日とする集会の招集)に集会を招集しなかった場合には、請求した区分所有者達が集会を招集できることとしています(4項)。

管理者がいない場合の少数区分所有者の招集の方法
 管理者が選任されていない場合には、集会の開催を求める少数区分所有者が自ら集会を招集することができます。この場合には、管理者がいる場合と異なり「その請求の日から4週間以内の日」には縛られず、別途招集手続きを踏む必要のあることは当然です。(5項)

★管理者がいてもいなくても、共通な少数区分所有者の要件
 管理者が選任されていても、また管理者がいない場合でも、集会を招集できる、少数区分所有者の定数は「区分所有者の1/5以上で議決権の1/5以上の者」とされています。(3項、5項)
 この要件を満たせば実際の人数は1人であろうと何人であろうと、この条項の少数区分所有者となります。

★どうして、1/5以上としたのか
 この「区分所有者の1/5(20%)以上で議決権の1/5以上」は、以前は「1/4(25%)以上」になっていましたが、昭和58年の改正で変更されました。

 まず、あまり大きな定数を設けると実際上招集が不可能になって少数区分所有者の招集権を認める意味がなくなりますし、あまり少ない定数では濫用的な招集を防止できず問題ですから、その調和点を1/5以上としたものがこの趣旨です。
 また、旧法での1/4以上を1/5以上に改正したのは、旧
民法(第61条2項)の法人での臨時総会招集請求での定数に合わせたとのことです。

 ただ、この定数は区分所有法が具体的なマンションの区分所有者数やその議決権の分布状況を無視して、一般的に定めていますから、これでも実際上招集が不可能または相当に困難なケースがありえます。

区分所有者の数だけ、規約で 1/5から減らすことができる 〜議決権の方は変更できない〜?
 第34条3項及び5項で「この定数を規約で減じる」の解釈で、減じることができるのは、区分所有者の数だけか、それとも議決権を含むのかで論争があります。

 それは、第17条1項では、減じることのできる定数を「区分所有者の定数」と明示してますが、第34条3項及び5項では区分所有者の規定がなく単に「定数」としている違いを取り上げる解釈です。

<参考>区分所有法 第17条1項(共用部分の変更)

第十七条  共用部分の変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。)は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議で決する。
ただし、この区分所有者の定数は、規約でその過半数まで減ずることができる。

<参考>区分所有法 第34条3項、及び5項の但し書き
ただし、この定数は、規約で減ずることができる。

  私は、区分所有法における「定数」は、区分所有者の数だけをさし、議決権を含まないと解しますので、区分所有者の数だけ規約で 1/5から減らすことができ、議決権を減じることは規約でもできないとします。

★参考までに、今は削除されました旧民法第61条2項の規定です。

<参照>旧民法 第61条2項

 総社員の5分の1以上より会議の目的たる事項を示して請求を為したる時は理事は臨時総会を招集することを要す。
 但しこの定数は定款を以てこれを増減することを得。

 この旧民法の規定では、人数(頭数)だけが想定されていて、区分所有法での議決権の概念は含まれていないと解釈できます。 そして、区分所有法第34条3項 区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる、 との関係です。

 検討の前に、区分所有法において、どうして 面倒な @区分所有者 と A議決権 の2つの要件を必要としたのかに戻ります。

 区分所有建物でも共用部分の管理や使用方法(変更)をどうするかの決め方は、当初は
民法で規定される持分での共有関係に基づく方法を とっていましたが、共有者が多くなれば、民法で規定される「全員の同意」をとるということは不可能で、実態は、何もできないことを意味しています。
これでは、共同生活が成り立たない現状が発生しました。 そこで、区分所有建物においては、
民法での持分を基本とする 議決権=専有部分の床面積 だけでなく、 区分所有者の数 も入れて団体の運営を行うようにしたものです。 つまり、民法との折衷案が区分所有法では採用されています。 この民法からの流れにある、議決権 は区分所有法の草案者の頭の中には、基本的に減じると民法との関係で複雑になるので許さないと考え、 しかし、区分所有者の数の方は、少しは緩くすることも可能として規定したのが 区分所有法第17条1項であり、 その基本的な流れは、区分所有法を改正した状況においては同じでそれは第34条3項、5項に繋がっていると考えます。
 そこで、私は減じることの出来る定数には「区分所有者の数」だけを想定し、「議決権」は含まれていないととらえています。


★上記の私の解釈に対して、 ここも「区分所有者と議決権」の双方を含んでいいとの、ご意見が寄せられましたので、ご紹介します。

*議決権を含むという解釈(中野誠様のメールより)

 イ. 文言上、法第34条3項ただし書には、「この定数」とあり、この定めは、当然、同条同項本文を受けたものであるところ、本文では、「区分所有者の5分の1以上で議決権の5分の1以上を有するもの」となっており、区分所有者の数と議決権の数を一体のものとして規定しており、区分所有者の数と議決権の数を分けていないこと。

 もし区分所有者の数と議決権の数を分ける必要がある場合においては、法第17条1項(共用部分の変更)のように、区分所有者の定数についてのみ規約で定めることができる場合には、明確に、「この区分所有者の定数」という文言を使用していることから、「この定数」の文言について、「区分所有者の定数」に限定し、「議決権の数」は排除されていると解釈するのは無理があると考えます。
ロ. また、実質的理由からは、少数者による集会招集請求制度が、定期的な集会開催及び区分所有者にとって関心がある事項について臨時集会の開催を可能とするために設けられてものであり、この制度の活用が望まれこそすれ、制度趣旨を損なう方向で考えるべきでないこと、また、集会の決議は、最終的には、法第39条第1項で、別段の定めがない限り、区分所有者及び議決権の各過半数で決すると定められており、集会招集請求に当たり、ことさら議決権の数についてのみ、区分所有者の数と異なる取り扱いをするような特別重要な意味を持つものでないことからして、議決権の数についてのみ5分の1未満とすることが許されないとする理由はないと考えます。

 これは、できるだけ多くの区分所有者から集会の請求ができるようにしようとするものですから、区分所有者の数においても議決権においても引き上げる(加重する)規約は無効です。

★全員出席集会について
  上の説明のように、集会を招集できるのは、
  1.管理者
  2.少数区分所有者
  ですが、招集権者の第3番目は、区分所有者が全員出席した集会(第36条)の場合です。

 全員出席集会の場合にはそもそも招集手続きが必要ありませんから招集権者も不要ともいえます。
しかし、招集を集会の活動能力取得の要件とする場合には全員が集まった時点で集会の活動能力が取得されるのですから、全員出席集会における全員も招集権者の一つと考えられます。

★特別のことがあったり、管理者がやる気の無いときなど、5分の1(20%)以上で管理者(理事)に対して、集会を開けといえる。

    区分所有者の方の数の1/5(20%)は減らすこと(1/6=17%とか)は出来るが、引き上げること(1/2とか、1/4とか)はできない。少数者でも集会を開けるようにしてある。

◎集会招集請求者の数 :  1/5以上(区分所有者数と議決権を有すること) ――> 定数(区分所有者数)だけ減は可能(規約で)。議決権の方は1/5以上は規約でも変更できない。


{設問}集会招集を請求できる者の定数を区分所有者及び議決権の各4分の1以上とすることは正しいか。

答え:間違いである。 区分所有法第34条3項によれば、区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、管理者に対し、会議の目的たる事項を示して、集会の招集を請求することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる、とされ 1/4以上は要件を加重するので、できない。


*どのようにして、1/5以上の賛同者を集めるか
 区分所有法第34条3項は、区分所有者の1/5以上(規約で減は可)で議決権の1/5以上が集まれば、管理者に対して集会の招集を請求できるとしていますが、この1/5以上はどのようにして集められ、そのマンションの区分所有者として認証されるのでしょうか。

1.組合員(区分所有者)名簿の閲覧と交付を求める
 通常、マンションに居住していても、果たして隣人が区分所有者なのかそれとも賃借人か、また、専有部分が夫婦の共有になっていると、夫か妻のどちらが議決権行使者として管理組合に届けられているのか(第40条)は、分かりません。
 そこで、まず、区分所有者数を正しく総数の1/5以上にするには、そのマンションの組合員(区分所有者)名簿にて、正確な区分所有者名を知る必要があります。
その為には、標準管理規約64条1項にて管理組合として備えることが義務付けられている組合員名簿を組合員として理事長に請求・閲覧し、必要ならそれを交付してもらうこと(同条3項)から始まります。

<参照> 標準管理規約 (単棟型)64条

(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合

(帳票類等の作成、保管)
第64条 理事長は、会計帳簿、什器備品台帳、組合員名簿及びその他の帳票類を作成して保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。

2 理事長は、第32条第三号の長期修繕計画書、同条第五号の設計図書及び同条第六号の修繕等の履歴情報を保管し、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求があったときは、これらを閲覧させなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。

3 理事長は、第49条第3項(第53条第4項において準用される場合を含む。)、本条第1項及び第2項並びに第72条第2項及び第4項の規定により閲覧の対象とされる管理組合の財務・管理に関する情報については、組合員又は利害関係人の理由を付した書面による請求に基づき、当該請求をした者が求める情報を記入した書面を交付することができる。この場合において、理事長は、交付の相手方にその費用を負担させることができる。

2.組合員の情報は、どこまで入手できるか
 通常、組合員名簿には、基本として、
  @部屋番号
  A氏名(専有部分が共有なら、議決権行使者1名を届けること)
  B自宅電話番号
  C携帯電話番号(必要に応じて記入)
  D勤務先電話番号(必要に応じて記入)
  E住所(賃貸に出していてマンション外に居住の場合は特に必要)
  F総会案内などの送付先住所(マンション外に居住の場合は特に必要)
  G備考欄
 があり、必要に応じて記載されています。


 そこで、区分所有者数 1/5以上を集める区分所有者(組合員)には、管理組合が有するこれらの組合員情報のうち、個人情報保護との関係で全てを、閲覧・交付請求ができるのかという争いがあります。

 ◎基本的に組合員名簿に記載されている基本情報の閲覧・交付の請求はできる
 区分所有法第34条3項等で、管理者以外の少数の区分所有者にも、集会(総会)の招集を認めているのは、管理者が自己の意向に沿わない議案の場合などに集会(総会)を、他の区分所有者でも招集できるようにしたものです。
 そこで、管理者(理事長)や理事会は恣意により、組合員が組合員名簿の閲覧を求める場合には、これを、組合員による権利の濫用とか、正当性がないなどの理由で拒むことは、できません。
 少数の区分所有者(組合員)による集会(総会)招集権を区分所有法で認めその権利を実現させる手段としては、区分所有者(組合員)が組合員名簿を閲覧請求することは正当な行為です。
 また、共同生活を営むマンションの区分所有者となったということは、正当な目的なら互いに連絡を取り合う必要性があることを区分所有者は納得した上であり、氏名や住所等の開示も同意したというべきです。

 ◎閲覧請求の範囲はどこまでか
 上でも述べたように、通常の組合員名簿には、
  @部屋番号
  A氏名(専有部分が共有なら、議決権行使者1名を届けること)
  B自宅電話番号
  C携帯電話番号(必要に応じて記入)
  D勤務先電話番号(必要に応じて記入)
  E住所(賃貸に出していてマンション外に居住の場合は特に必要)
  F総会案内などの送付先住所(マンション外に居住の場合は特に必要)
  G備考欄
 が記載されていることが、想定されますが、集会(総会)招集に必要な閲覧の範囲としては、
  @部屋番号
  A氏名(専有部分が共有なら、議決権行使者1名を届けること)
 と マンション外に住んでいる区分所有者(組合員)に対しては、
  F総会案内などの送付先住所(マンション外に居住の場合は特に必要)
 は、最低限に必要な部分ですし、
 電話番号に関しては、最近は、自宅の固定電話を有していないことも多い為、
  B自宅電話番号 又は C携帯電話番号(必要に応じて記入)
 は、集会(総会)招集の理由が文章だけでは説明ができないことも考えられるため、請求できる事項です。
 そこで、
  D勤務先電話番号(必要に応じて記入)
  G備考欄
 は、特に集会(総会)招集だけが、目的であれば、閲覧事項から除くことも可能です。


3.入手した組合員(区分所有者)名簿に従って、賛同者を集める
 これで、そのマンションでの区分所有者が確定できましたから、あとは、手紙や訪問、また電話などを使って、自分たちの意見を主張し、区分所有者の1/5以上で議決権の1/5以上 の賛同者を集め、連名で管理者に対して、「会議の目的事項」を示して、集会の招集を請求できます。

  
参考判例:平成29年10月26日判決:東京地裁:組合員名簿閲覧請求。(NETの判例検索には、ない)


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第三十四条

4項  前項の規定による請求がされた場合において、二週間以内にその請求の日から四週間以内の日を会日とする集会の招集の通知が発せられなかつたときは、その請求をした区分所有者は、集会を招集することができる。

過去出題 マンション管理士 H20年、
管理業務主任者 H24年、H21年、

会日...集会の日

★管理者がいて集会を開かない場合(前項=第34条3項)
  管理者いる場合に、区分所有者の1/5以上で議決権の1/5以上を有するものは、管理者に対して会議の目的たる事項(議題)を示して、集会を招集してくれと請求できます。(第34条3項)

 しかし、集会を招集してくれと請求しても 管理者が2週間以内に、4週間以内の集会日を決めた通知を出さないときは、請求した区分所有者(達)が連名で集会を開けるのがこの規定です。
 管理者が、区分所有者の集会の招集請求を無視した時に適用されます。


   

★具体的な例
  請求日: 5月1日 ― 2週間以内(7日x2週間=プラス14日)= 5月15日 までに集会の通知を出すこと

              ― 4週間以内(7日x4週間=プラス28日)= 5月29日 までの日を集会日 とすること

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第三十四条

5項  管理者がないときは、区分所有者の五分の一以上で議決権の五分の一以上を有するものは、集会を招集することができる。ただし、この定数は、規約で減ずることができる。

過去出題 マンション管理士 R01年、H29年、H23年、H22年、
管理業務主任者 R04年、H24年、

できる...だれも招集しなければ、集会は開かれない。この招集権者の1/5以上の定数(区分所有者数)も、規約で減は可能(増は認められない)。議決権の方は規約でも変更できないと解する。(ここについては、3項も参照のこと)

★管理者がいない場合の集会の招集
 管理者がいる場合は、4項までの招集によりますが、もともと管理者がいない場合、また管理者が死亡して後任者が選任されていない時などでは少数区分所有者および全員出席集会が集会の招集を行うことになります。  

★管理者がいない時は、もう自分たちで集会を開催するより他に無いので、1/5(20%)以上で集会を開催する。
  この1/5(20%)も区分所有者数の方は減らすことはできる(1/6=17%とか)が、引き上げることはできない。少数者でも集会を開けるようにしてある。

  ◎集会招集請求者の数 :  1/5以上(区分所有者数と議決権を有すること) ――> 区分所有者数だけ減は可能(規約で)。議決権の方は、1/5以上は規約でも変えられないと解します。

   少数区分所有者の保護のため定足数は規約で引き下げることはできても、引き上げることはできないと解される。


<参考>標準管理規約(単棟型)44条:(組合員の総会招集権) 

第44条 組合員が組合員総数の5分の1以上及び第46条第1項に定める議決権総数の5分の1以上に当たる組合員の同意を得て、会議の目的を示して総会の招集を請求した場合には、理事長は、2週間以内にその請求があった日から4週間以内の日(会議の目的が建替え決議又はマンション敷地売却決議であるときは、2か月と2週間以内の日)を会日とする臨時総会の招集の通知を発しなければならない。

2 理事長が前項の通知を発しない場合には、前項の請求をした組合員は、臨時総会を招集することができる

*(ア)電磁的方法が利用可能ではない場合

3 前2項により招集された臨時総会においては、第42条第5項にかかわらず、議長は、総会に出席した組合員(書面又は代理人によって議決権を行使する者を含む。)の議決権の過半数をもって、組合員の中から選任する。


{設問} 平成20年 マンション管理士 試験 「問30」

 組合員総数の1/5以上及び議決権総数の1/5以上に当たる組合員の同意を得て、組合員Aが防犯カメラの設置を目的として臨時総会の招集を理事長に請求した。この場合の臨時総会の手続きに係る次の記述のうち、標準管理規約によれば、適切なものはどれか。

*注:標準管理規約は平成28年3月に改正があり、解説において未対応がありますので、注意してください。(ピンク字が該当の箇所です。)

1  理事長は、請求のあった日から2週間以内の日を会日とする臨時総会の招集通知を発しなければならない。

答え:適切でない。 
  標準管理規約44条 ((組合員の総会招集権)
  「第44条 組合員が組合員総数の5分の1以上及び第46条 第1項に定める議決権総数の5分の1以上に当たる組合員の同意を得て、会議の目的を示して総会の招集を請求した場合には、
理事長は、2週間以内にその請求があった日から4週間以内の日(会議の目的が建替え決議又はマンション敷地売却決議であるときは、2か月と2週間以内の日)を会日とする臨時総会の招集の通知を発しなければならない。
  2 理事長が前項の通知を発しない場合には、前項の請求をした組合員は、臨時総会を招集することができる。」とあり、1項により、請求があった日から4週間以内の日を会日とすればいい。

2  理事長が2ヶ月後に通常総会が開催されるとして何もしないまま請求があった日から2週間を経過した場合は、Aが臨時総会を招集することができる。

答え:適切である。 
 選択肢1で引用した標準管理規約44条2項に該当する。通常総会の開催の有無は当規定とは関係がない。

3  臨時総会の議長は、出席組合員の議決権の過半数により、理事長以外の組合員の中から選任されなければならない。

答え:適切でない。 
 標準管理規約44条3項では、
  「3 前2項により招集された臨時総会においては、第42条 第5項にかかわらず、議長は、総会に出席した組合員(書面又は代理人によって議決権を行 使する者を含む。)の議決権の過半数をもって、組合員の中から選任する。」とあり、理事長以外の組合員となっていない。臨時総会でも、組合員である理事長 が議長に選任される場合もある。
 参照:区分所有法第41条(議長)
  「第四十一条  集会においては、規約に別段の定めがある場合及び別段の決議をした場合を除いて、管理者又は集会を招集した区分所有者の一人が議長となる。」

4  臨時総会の議事録は、議長が作成・保管し、所定の掲示場所に保管場所を掲示しなければならない。

答え:適切でない。 
 設問は議事録の作成と保管の2段階に分かれる。
  まず、総会(臨時総会も含めて)の議事録は、「議長」が作成する。しかし、議事録の保管は「理事長」の仕事で、保管場所がどこかも掲示するのも「理事長」の仕事である。標準管理規約49条にある。(議事録の作成、保管等)
  「第49条 総会の議事については、議長は、議事録を作成しなければならない。
    2 議事録には、議事の経過の要領及びその結果を記載し、議長及び議長の指名する2名の総会に出席した組合員がこれに署名押印しなければならない。
    3 
理事長は、議事録を保管し、組合員又は利害関係人の書面による請求があったときは、議事録の閲覧をさせなければならない。この場合において、閲覧につき、相当の日時、場所等を指定することができる。
    4 理事長は、所定の掲示場所に、議事録の保管場所を掲示しなければならない。

答え:2 (あわてて、1 としないように。)


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ページ終わり

謝辞:Kzさんの了解により一部転用・編集をしています。

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最終更新日:
2024年 8月14日:見直した。
2024年 2月4日:023年)の出題年を入れた。
2024年 1月19日:見直した。
2023年 2月23日:令和4年(2022年)の出題年を入れた。
2022年10月12日:第33条に図を入れた。
2022年10月10日:再度見直して、第34条に図を入れた。
2022年 1月10日:標準管理規約を最新にした。
また、見直した。
2021年12月17日、20日:令和3年(2021年)の出題年を入れた。
2021年 3月11日:コロナ過対応として、第34条2項に「管理者の事務報告」対応を入れた。
2021年 3月 5日:令和2年(2020年)の出題年を入れた。
2020年 3月29日:令和元年(2019年)の出題年を入れた。
2019年11月 1日:最高裁の「高圧一括受電」の判例を、第30条に入れた。
2019年 4月17日:平成30年の出題年を入れた。
2018年10月15日:第34条3項に「どの様にして、1/5以上の賛同者を集めるか」を入れた。
2018年 3月13日:平成29年の出題年を入れた。
2017年11月 3日:第33条2項の「閲覧」にカメラによる写真撮影ができるを入れた(平成28年12月9日の大阪高等裁判所の判決もあり)
2017年 9月30日:「マンションの駐車場の専用使用権の分譲をめぐる平成10年の最高裁判所の4件の判決について」を第30条の設問などに入れた。
2017年 5月14日:第31条1項に、昭和59年1月1日以降の規約は、変更される(昭和59年の附則9条)を入れた。
2017年 5月 4日:第30条、第31条の「特別の影響」を見直した。
2017年 3月20日:平成28年の出題年を入れた。
2016年11月23日:第31条1項後段の「特別の影響」で判例:平成10年10月30日:最高裁の判決文を入れた。
2016年10月10日:判例として、第30条に修繕積立金の返金を入れた。
2016年 4月 9日:3月14日付の標準管理規約の改正に対応した。
2016年 2月24日:平成27年の出題年を入れた。
2015年 3月29日:平成26年の出題年を記入。また、少し見直して、第34条4項の図を作成した。
2014年 2月23日:平成25年の出題年を記入。
2013年 8月28日:水道料金の一括検針・一括徴収制度に追記。
2013年 8月25日:水道料金の一括検針・一括徴収制度と規約の無効の最高裁の判例を第30条1項に入れた。
2013年 7月 7日:第34条「集会の招集」に加筆。
2013年 7月6日:規約、第30条から33条までを大幅に加筆し、図も新しくした。
2013年 5月12日:第31条をちょろちょろと加筆。
2013年 4月 2日:第33条2項に、共有者や「謄写」が認められているか、を入。
2013年 3月24日:平成24年の出題年を入。
2012年11月23日:総会の流れに、標準管理規約の改正を入。
2012年 2月25日:平成23年の出題年や、「標準管理規約」の改正を入。
2011年 9月17日:総会などに加筆
2011年 8月20日:第31条に図など入
2011年 7月 3日:ちょろちょろと
2011年 6月 8日:ちょろちょろと
2011年 1月15日:平成22年の出題記入
2010年6月29日:第34条3項に中野様の反論追記
2010年6月6日:第34条の定数1/5以上を中心に追記
2010年1月29日:第31条1項に「不在区分所有者の別途負担金の支払い」判決を追加
2010年1月23日:H21年の出題年を記入
2009年11月5日:第30条3項の平成14年の検討を加筆
2009年7月5日:第30条3項の解説で追加。
2009年7月4日:株主総会の例 追加。第30条1項:規約:加筆
2009年6月20日 :第33条3項で加筆。

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