★★       条 文 の 解 説        ★★

建物の区分所有等に関する法律

(この解説においては、略称:区分所有法 と言う)

第1章 建物の区分所有 第 9 節 義務違反者に対する措置

第五十七条 共同の利益に反する行為の停止等の請求
第五十八条 使用禁止の請求
第五十九条 区分所有権の競売の請求
第六十条 占有者に対する引渡し請求

Z.第57条(共同の利益に反する行為の停止等の請求)から 第60条(占有者に対する引渡し請求)まで

マンション管理士・管理業務主任者を目指す方のために、区分所有法を条文ごとに解説しました。 

試験問題は、過去の問題から出されるのではありません。条文から出題されます。

条文を勉強することが、合格への道です。

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第一章 建物の区分所有
第七節 義務違反者に対する措置
 
(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
第五十七条
1項 区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
   
過去出題 マンション管理士 R06年、R02年、H26年、H25年、H24年、H23年、H21年、H19年、H18年、H17年、H16年、H15年、H13年
管理業務主任者

H24年、H23年、H15年、

◎第 9 節 義務違反者に対する措置

 令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、第6節 所有者不明専有部分管理命令 と 第7節 管理不全専有部分管理命令及び管理不全共用部分管理命令 の2節が新設されて、 旧第7節から 新第9節と変更になっています。

施行は令和8年4月1日。



★区分所有者は当然に、また占有者(賃借人)にも準用される(第57条4項)

★引用されている区分所有法第6条1項の確認

<参照> 区分所有法 第6条1項:(区分所有者の権利義務等); 

 区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない

(以下、略)

★建物の「保存に有害な行為」とは...耐力壁など建物の一部を取壊して建物全体の安定度を弱める行為、共用部分であるベランダを改造して居室にするなど、物理的に建物を傷つける行為

★建物等の「管理」に関する事項とは...建物の一部であるエントランスや廊下など共用部分の清掃や補修、建物等の管理費・修繕積立金の負担割合・額・支払時期・徴収方法・共用部分に関する税金その他の諸経費の支払いなど建物等を維持してゆくために必要又は有益な事項をいいます。そのほか、区分所有者の団体(管理組合)の組織、運営等に関する事項も規約で定めることができます。

★建物等の「使用」に関する事項とは...専有部分は住宅として使用するとか、動物・ペットの飼育の是非、ピアノの演奏時間に関する事項など専有部分の使用方法に関する規制とか、駐車場、倉庫等の使用方法、駐車料など敷地、共用部分の使用方法や対価等に関する事項をいいます。

請求することができる...相手方に特定の行為(停止、除去、予防)を求めることができる。これは裁判でなくても必要な措置がとれる。裁判外でも可。

”他の”区分所有者の全員又は管理組合法人...利益に反する行為をした区分所有者を除いた区分所有者又は管理組合法人が請求できる。
  ただし、裁判にするなら、法人格を有していない単なる区分所有者の団体(管理組合)では、便宜上、業務執行者として任命された管理者または集会で指定された区分所有者が他の区分所有者全員のために、訴訟提起ができる。(3項)
 法人格のない管理組合の場合は、注意してください。
 管理組合が法人化されていれば、管理組合法人が訴訟の提起をできる。

   


★ここからは、「第1章 建物の区分所有」の「第9 
節 義務違反者に対する措置」に入ります。
「第9 
節 義務違反者に対する措置」は、第57条から第60条までで構成されています。

★侵害行為に対する請求  〜共同利益背反(はいはん)行為に対して〜

 まず、第57条は義務違反者に対する手段として、このあと出てきます
  ・第58条・・・専有部分の使用禁止、
  ・第59条・・・区分所有権の競売、
  ・第60条・・・占有者に対する引渡し
 に規定される内の第一弾である、共同の利益に反する該当の行為をやめさせたり、排除・予防できるいわゆる「差し止め請求」に関する規定です。

 建物の専有部分は区分所有者の所有物で、エントランスや廊下・エレベーターなどの共用部分は区分所有者の共有物ですから、ある人が他の人の専有部分を侵害したり共用部分を侵害した場合、またはそのおそれのある場合、被害を受ける”ほかの”区分所有者は単独
民法が昔から定める所有権や人格権に基づき(物権的請求権)わざわざ区分所有法に基づかなくてもその妨害の防止・排除・回復の請求ができることは当然です。

 しかし、エントランスや廊下・エレベーターなどの共用部分に対する侵害に対しては、区分所有者全員の利益に関する違反行為であることが明白であるにも拘わらず、今までの法律の構成では、単なる区分所有者の団体(管理組合)では、「法人格がない」ため、義務違反者に対して、その行為の停止や、除去などのいわゆる差止請求の主体になれるかという問題があり、また、区分所有者全体のために、ある区分所有者が個人として訴訟を起こした場合の費用負担は、他の区分所有者や区分所有者の団体(管理組合)に償還を求めることができるかなどの解釈や適用が曖昧でした。

 これらを明確にするために、本第57条1項では、「共同の利益に反する行為」を、区分所有者全員に対する行為と認識して、「差し止めの請求」ができるのは、その侵害行為をしている区分所有者を除いた”他の”区分所有者の全員、また区分所有者の団体(管理組合)が法人化されていれば、区分所有者の事務を代理する管理組合法人(参照:第47条6項)と、明文化したものです。

 ◎度々説明していますように、区分所有法第3条で規定する「区分所有者の団体」の存在が、法的に明確になっていないために、今までの民法での解釈として、様々な問題が起きている訳です。
  本当に、「区分所有者の団体」を法的に明確にすべき時期です。

★マンションで共同生活をする以上、一般 戸建での生活とは異なった制約がある 〜 所有権の大幅な制限 〜

 マンション暮らしをすることは、大変なことです。
 例えば、1戸建では、犬猫を飼うのに、近所の人の承諾は必要がありません。
しかし、マンションでは、1棟の建物内に多くの人々が共同で住み、その棟では上下階そして左右(隣室)が互いに物理的に繋がった一体の関係にありますから、区分所有法では、犬猫を飼うことも、これを「共同の利益に反する行為」に当たるかどうかで判断して制限ができるとしています。恐ろしい制約です。
 マンション生活は、戸建と違って窮屈なものであることを認識して、マンションを購入してください。

 通常の民法で規定する戸建てを基本とした隣・近所との通行や境界などの関係(相隣関係)とは異なった、密着した共同生活関係がマンション(区分所有建物関係)では存在しているために、特別な制限がなされています。
 それが、第57条(差し止め請求)、第58条(専有部分の使用禁止)、第59条(区分所有権の競売)、第60条(占有者に対する引渡し)に規定されています。


★共同の利益違反行為(「共同利益背反行為」ともいう)に対する請求  〜制裁請求の妥当性〜

 通常、違反行為者等に対する行為の停止等の請求権は、一般には元々個人が有する民法での所有権や人格権の侵害を具体的に要件としますから、単に区分所有法第6条に定める「共同の利益違反行為」という実に抽象的な侵害だけで、違反行為者等に対する行為の停止等の請求が発動できるかどうかは、議論のあるところです。
 しかし、区分所有者の団体(管理組合)は、「建物並びにその敷地及び附属施設の管理」(区分所有法第3条)をする団体であり、その目的を達するために定められた特別法の区分所有法も区分所有者の共同の利益の擁護・調整を目的として構成され、制定されていますから、客観的に共同の利益に反する行為に対してどこかで、なんらかの制裁規定を持たないようではその法としての目的が達成できないことになります。

 そこで、必ずしも個々の所有権や人格権に対する具体的な侵害とはいえない行為であっても区分所有法第6条に規定する「建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」に対して、妨害排除請求権などの物権的請求権の行使の場合と同様にその侵害の防止・排除・回復を認めたのがこの第57条の規定です。

 しかし、区分所有法第6条にしても、この第57条にしても、規定されている「共同の利益違反行為」とは実に抽象的な表現であり、それでいて個人の権利を大幅に制約するため、何が、「共同の利益に反する行為」かは、具体的には、各マンションの実情に応じて判断され、過去から多くの紛争事例が裁判に持ち込まれて判例もでています。

★共同の利益を優先すると特定(一部)の人が納得しない
  多くの場合、共同の利益を優先すると、それにより特定(一部)の人の権利を制限したり、時には権利の剥奪まで起こります。
  このようなことは、一般の生活でも発生していますし、共同生活の場であるマンション暮らしでは特に問題となっています。
 共同の利益違反といわれる行為に対する停止や除去の請求は、一方では、一部の区分所有者の権利を侵害する行為とも関係します。
  そこで、裁判になった時の「共同の利益違反行為」の判断基準は、その請求が「影響を受ける特定の人が受忍できる範囲であるかどうか」になりますが、「受忍できる範囲」といってもこれも随分と曖昧な表現で、当然に個人差があります。

影響を受ける特定の人が「受忍できる範囲」であるかどうかの判断規準
 そこで、「共同の利益違反行為」に何が該当するかを判例などから纏めますと、
 まず、
  @その行為の必要性があるのか、そして、
  A行為者が受ける利益と、その行為が他人に与える不利益の程度、
  B他にとれる手段はないのか
 など、本当によく言われる「諸般の事情」を考慮し、またその時代の社会通念なども判断の材料になりますから、ペットの飼育を禁止するような規定などは、ペットを家族の一員と捉えるようになると将来は過去の判例と異なる判決がでる可能性もあります。

  多くの裁判では、規約の設定・変更(区分所有法第31条)とも絡み、具体的には規約での規定内容とも関係していますから、判例を参考にしてください。

{判例}
●争点: ペットの飼育
  一 マンション内での動物の飼育を一律に禁止する管理規約の規定の効力

  二 マンションの居住者の中に犬を飼育している区分所有者がいる場合に管理規約を改正して動物の飼育を禁止する規定を新設することが建物の区分所有等に関する法律三一条一項にいう「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼす」ものとはいえないとされた事例

判決要旨:
   一 マンション内での動物の飼育を管理規約で一律に禁止することは、建物の区分所有等に関する法律の許容するところであり、具体的な被害の発生する場合に限定しないからといって当該規定が当然に無効となるものではない

  二 マンションの居住者の中に犬を飼育している区分所有者がいる場合に管理規約を改正して動物の飼育を禁止する規定を新設することは、その者の犬の飼育があくまでペットとしてのものであって、自閉症の家族の治療上必要であるとか、犬が家族の生活にとって客観的に必要不可欠の存在であるなどの特段の事情がない等判示の事実関係の下では、建物の区分所有等に関する法律三一条一項にいう「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼす」ものとはいえない
 ペットとしての犬の飼育が専有部分内で行われる場合であっても、飼育を禁止するとする規約は、他の区分所有者に影響を及ぼすおそれのある行為で有効である。(東京高裁:平成6年8月4日)

★「共同の利益に反する行為」とは
{例-1}
  ・耐力壁の撤去、
  ・爆発物の持ち込み、
  ・住居専用使用と決めているのに事務所・店舗とする、
  ・共用部分である廊下や階段室に私物を置く、
  ・勝手に自動車を停める、
  ・外壁やベランダに家庭教師の宣伝用看板を取り付ける、
  ・プライバシーの侵害、
  ・騒音、悪臭の発散
 などが「共同の利益に反する行為」

{例−2} 滞納管理費等
 管理費・修繕積立金等の滞納が原因で、建物の修繕に重大な支障が生ずるような状況に至っている場合は、この滞納は、建物の管理に関し区分所有者の共同の利益に反する行為に当たる。

{例-3} 鳩の餌付け
 占有者が野鳩に餌付けをし飼育をしていて、他の居住者の迷惑になり、使用賃貸借契約の解除、占有者の退去、占有者に対する損害賠償請求が認められた。

{例-4}カラオケ店の営業時間の禁止
 居住地域でのマンションの1階部分がカラオケ店舗で深夜の営業が禁止された。
 

{例-5} 住居専用での保育室
 住居専用マンションで1室を保育室としたのは規約違反であり、他の区分所有者の共同の利益に反する。(横浜地裁:平成6年9月9日判決)

 {例-6} 規約で禁止している不特定の者を宿泊させる営業(民泊営業)
  (大阪地裁:平成29年1月13日)

 {例-7} 歯科医院が専有部分の窓から外部に見えるように設置した看板は撤去すべき
  看板の設置行為はマンションの外観変更に当たり、管理規約及び使用細則に違反し、共同の利益に反する行為である。 (東京地裁:平成28年4月21日)

*他にも、使用禁止の例はあります。
 ● 暴力団の組事務所の使用禁止(東京地裁:平成10年12月8日判決)
 ● 教団施設としての使用禁止は例が多い。(京都地裁:平成10年2月13日、大阪高裁:平成10年12月17日、横浜地裁:平成12年9月6日判決)
 ● 託児所として使用禁止(東京地裁:平成18年3月30日判決)
   この判例では、騒音、エレベーターの使用の利用上の不便、警察官を呼ぶような騒ぎを起こしたことを差止理由としています。

{例-8} マンションの区分所有者が,業務執行に当たっている管理組合の役員らをひぼう中傷する内容の文書を配布し,マンションの防音工事等を受注した業者の業務を妨害するなどする行為は,それが単なる特定の個人に対するひぼう中傷等の域を超えるもので,それにより管理組合の業務の遂行や運営に支障が生ずるなどしてマンションの正常な管理又は使用が阻害される場合には,区分所有法6条1項所定の「区分所有者の共同の利益に反する行為」に当たるとみる余地があるというべきである。(最高裁:平成24年 1月17日判決


◎しかし、共同の利益に反するとしながらも、使用禁止は権利の濫用に当たるとして認められなかった次の例もあります。

  ● エステティックサロンとしての使用について(東京地裁判:平成17年6月27日判決)
   原告が,住戸部分を事務所として使用している大多数の用途違反を長期間放置し,かつ,現在に至るも何らの警告も発しないでおきながら,他方で,事務所と治療院とは使用態様が多少異なるとはいえ,特に合理的な理由もなく,しかも,多数の用途違反を行っている区分所有者である組合員の賛成により,被告に対して,治療院としての使用の禁止を求める原告の行為は,クリーン・ハンズの原則に反し,権利の濫用といわざるを得ない

(注:クリーンハンズの原則)
 自ら法を尊重するものだけが、法の救済を受けるという原則で、自ら不法に関与した者には裁判所の救済を与えないという意味である。道義的色彩が強い裁判上の救済を求める以上、自分にうしろめたいところがあってはいけない。 


★質問:エアコンの換気装置を設置するために、マンションの外壁に円筒形の開口部を勝手に設置した組合員がいます。原状に戻すことを要求できるでしょうか。

答え:規約等で、外壁の改造は禁止されているのが普通です。しかし、そのような規定がなくても、外壁に開口部を設置することは、壁面の強度を弱め、建物の安全性を低下させる可能性があります。すなわち、「建物の保存に有害な行為」にあたり、組合員の共同の利益に反する行為に該当します。(区分所有法第6条第1項)

 判例では、換気装置を設置するためマンションの外壁に直径15〜20cm円筒型の開口部を設けた場合、その開口部は「建物の保存に有害な行為」にあたり、「共同の利用に反する行為」にあたるものであって被控訴人はその開口をしたことによってその原状回復を負担するに至ったものといわざるをえない」として原状回復を認めています。(東京高裁:昭和53年2月27日判決)

注: 「マンション管理士 香川事務所」より、
 最近のマンションでは、エアコン用の開口部が建築時から設置されているのが多いのですが、昔に建築されたマンションでは開口穴が設置されていない場合があります。そのようなマンションでは、管理組合主導で開口部を設置している例もあります。もちろん、壁面の強度に十分配慮するとともに、共用部分の変更ですので、組合員総数および議決権総数の各3/4以上の賛成が必要とされます。

◎なお、区分所有法第6条の「共同の利益」を守る義務は各区分所有者や占有者が他の全員、言いかえれば管理組合という「団体」に対して負う義務ですから、この請求する主体は管理組合(管理組合法人)となることは当然です。
 これが、条文にある「”他の”区分所有者の全員」は、「全員が全員で」という趣旨で、管理組合が法人格を取得しているときには、この権利は、管理組合法人が有して、かつ行使すべき権利とされます。


★「共同の利益がないとき」には、管理組合(管理組合法人)は全員のための訴訟は提起できないのか?

  上下階・隣同士での迷惑行為(騒音・臭気など)やプライバシー侵害などは、その当事者間での部分的な問題であるため、区分所有者全体の団体である管理組合(管理組合法人)は、「共同の利益」がないため、訴訟での当事者適格を欠くため提訴できません。 
 区分所有者が個人として提訴することになります。 

★規約違反者に対しては、どうするのか?

 区分所有法第30条1項では「規約で、建物等の使用に関することを定める」ことが出来ると規定しています。

 そこで、規約で、例えば、ベランダには布団を干してはいけないとかの使用を定め、その義務違反者に対して、管理組合が他の全員のために、提訴できるのか、どうかの解釈での論争があります。
 区分所有法第6条で規定している「共同の利益違反」に該当すれば、区分所有法が単純に(実際には複雑ですが)適用されますが、「共同の利益違反」までには至りませんが、規約に違反している場合です。

  この場合、区分所有者が負う義務は団体(管理組合)に対して負う義務と考えて、管理組合(管理組合法人)が提訴できると考えていいようです。

<参照> 区分所有法 第30条1項 ;(規約事項)
第三十条  建物又はその敷地若しくは附属施設の管理又は使用に関する区分所有者相互間の事項は、この法律に定めるもののほか、規約で定めることができる。


◎区分所有者個人でも請求できる
 また、共同の利益に反する行為が同時に区分所有者個人が有する所有権や人格権の侵害行為であるときは、区分所有法第57条の管理組合等の請求権と民法に基づく個人の請求権が並存することになりどちらを行使してもかまいません。
 それに伴い権利や利益が侵害されていれば、損害賠償を請求することも出来ます(民法 第709条 不法行為)

建物の保存に有害な行為:専有部分に爆発物を持ち込む、異常な騒音・振動を発するなど。

★一般に必要な措置(行為の差止め請求)をとれる法的な根拠:

    @不法行為 民法 第709条:(不法行為による損害賠償)に基づく;

<参照> 民法 第709条:(不法行為による損害賠償)

 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。


       ★因果関係は必要。立証は被害者がする。

      A区分所有権および共用部分の共有持分権に基づく物権的請求権;所有権(物権)などの権利が侵害された場合に、その排除を求めることができる権利。

★請求を受ける対象は、共同の利益違反を起こしている区分所有者や共に居住しているその家族は勿論のこと、使用人だけでなく、占有者も入る(第57条4項)


★違反の状況に応じてとれる措置

  本第57条1項では、義務違反の状況に応じ、以下の3つの措置がとれることを規定しています。

  @行為の停止: その行為をやめさせ、または将来にむかってしないこと。 
    例:ピアノの音がうるさいとき、ピアノの演奏を停止させる。1階にあるカラオケスタジオの夜間の一定時間の使用停止

  A行為の結果の除去:  
    例:共用部分の廊下を個人の荷物置き場に使っているとき、荷物を取り除かせる。無断で設置した看板や造作を撤去させる。

  B行為の予防:     
    例:営業は禁止されていないが、新しくカラオケ店が騒音を起す可能性があるとき、防音装置の設置をさせる

 を差止め請求できます。

★別に、集会の決議がなくても、この程度(軽度)は、各個人や管理組合(法人)が請求できる。

  区分所有者が、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしたり、またその行為をするおそれがあれば、その行為の停止などを求めるのは、区分所有者が個人でも可能ですし、管理組合(法人化されていれば、管理組合法人も)が求めることになります。

 具体的には、個人で義務違反者に注意するのは、近隣関係がこじれるおそれが多いため、理事会に相談し、管理組合の立場から解決を図ることになるでしょう。

  ただし、裁判にするなら、集会の決議が必要となります(第57条2項)。この「差止め請求」の場合は、普通決議(過半数)で可能です。

<参考>標準管理規約(単棟型) 66条 :(義務違反者に対する措置)  

 (*令和7年10月17日版でも変更なし)

 第66条 区分所有者又は占有者が建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、区分所有法第57条から第60条までの規定に基づき必要な措置をとることができる。

<参考>標準管理規約(単棟型)67条:(理事長の勧告及び指示等)  

  (*令和7年10月17日版で変更有)

 第67条 区分所有者若しくはその同居人又は専有部分の貸与を受けた者若しくはその同居人(以下「区分所有者等」という。)が、
法令、規約又は使用細則等に違反したとき、又は対象物件内における共同生活の秩序を乱す行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経てその区分所有者等に対し、その是正等のため必要な勧告又は指示若しくは警告を行うことができる。

2. 区分所有者は、その同居人又はその所有する専有部分の貸与を受けた者若しくはその同居人が前項の行為を行った場合には、その是正等のため必要な措置を講じなければならない。

3. 区分所有者等がこの規約若しくは使用細則等に違反したとき、又は区分所有者等若しくは区分所有者等以外の第三者が敷地及び共用部分等において不法行為を行ったときは、理事長は、理事会の決議を経て次の措置を講ずることができるその差止め、排除又は原状回復のための必要な措置の請求に関し、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行することができる。
   一 行為の差止め、排除又は原状回復のための必要な措置の請求に関し、管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行すること
   二 敷地及び共用部分等について生じた損害賠償金又は不当利得による返還金の請求又は受領に関し、区分所有者のために、訴訟において原告又は被告となること、その他法的措置をとること


4. 前項の訴えを提起する場合、理事長は、請求の相手方に対し、違約金としての弁護士費用及び差止め等の諸費用を請求することができる。

5. 前項 の規定 に基づき請求した弁護士費用及び差止め等の諸費用に相当する収納金は、第27条(注:管理費)に定める費用に充当する。

6. 理事長は、第3項の規定に基づき区分所有者のために原告又は被告となったときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。
 この場合に   おいて 、第43条第2項及び第3項の規定  は、区分所有者のへの通知について 準用する。


★注:標準管理規約67条3項の規定は、かなり問題がある規定です。
 〜規約違反なら、総会の決議は不要で、理事会の決議だけで提訴できるのか〜

 マンションおける「規約違反者に対する行為の中止」を裁判所に求める(差止め請求)ことが、理事会の決議だけでできるのか、それとも、集会(総会)の決議が必要かは、非常に議論のある個所です。

 標準管理規約67条3項によりますと、(令和7年10月17日版では、少し変更がありましたが)、 「区分所有者等がこの規約若しくは使用細則等に違反したときは、理事長は、理事会の決議を経て、行為の差止め、排除又は原状回復のための必要な措置の請求に関し、 管理組合を代表して、訴訟その他法的措置を追行すること」
 となり、集会の決議を経ないで、理事会の決議だけで、訴訟ができるとしています。

 この標準管理規約67条は、区分所有法第26条4項
 「(権限)
  第二十六条
      4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。 」
 を受けて、設けた規定のようです。

 しかし、区分所有法第57条は、
 「(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
  第五十七条  区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
   2  前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
   3  管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
   4  前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。」、
 とあり、
 2項では、区分所有法第6条に規定されている「建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」を訴訟にするには、必ず、集会の決議が必要で、理事会だけの決議ではできないとしています。
 そこで、「規約違反」ということと、どこまでが管理者(理事長)の職務に該当するかが曖昧なのです。

 国土交通省が規約の例として作成した標準管理規約の創案者の頭には、一応、「規約事項」と「区分所有法第57条から第60条」は別だという考え方はあったようですが、規約には、区分所有法第6条で規定される「共同の利益」に反する内容も規定されているために、単純に上で引用しています、標準管理規約67条3項を適用して、提訴を総会の決議を経ず理事会の決議だけでいいとはいえないのです。
 標準管理規約67条3項の表現は、区分所有法第57条に抵触しているため、内容を明確にした変更が必要です。

 そこで、該当の個所は、私も、標準管理規約を定めた国土交通省にメールをだし、標準管理規約67条をもっと明確に整備するよう要請したのですが、回答はなく、国土交通省でのマンション標準管理規約の改正概要案(平成22年12月24日)においても、「第66条に定める義務違反者に対する措置と第67条第3項第1号に定める措置の違いについて、各管理組合において混乱が生じている事例も見受けられることから、整理を行った上で記載する。」と発表し、混乱の認識はあるものの、放置しています。
 また、区分所有法第57条に該当するとなると、標準管理規約48条11号では、総会の決議事項としてある点も参考にしてください。

<参照> 標準管理規約(単棟型) 48条

 (*令和7年10月17日版で変更有)

(議決事項)
第48条 次の各号に掲げる事項については、
総会の決議を経なければならない
   一 規約及び使用細則等の制定、変更又は廃止
   二 役員の選任及び解任並びに役員活動費の額及び支払方法
   三 収支決算及び事業報告
   四 収支予算及び事業計画
   五 長期修繕計画の作成又は変更
   六 管理費等及び使用料の額並びに賦課徴収方法
   七 修繕積立金の保管及び運用方法
   八 適正化法第5条の3第1項に基づく管理計画の認定の申請、同法第5条の6第1項に基づく管理計画の認定の更新の申請及び同法第5条の7 第1項に基づく管理計画の変更の認定の申請
   八 第16条第2項に定める敷地及び共用部分等の第三者の使用
   九 第21条第2項に定める管理の実施
   十 第28条第1項に定める特別の管理の実施並びにそれに充てるための資金の借入れ及び修繕積立金の取崩し

   
十一 区分所有法第57条第2項及び前条第3項 第三号 第四号 の訴えの提起並びにこれらの訴えを提起すべき者の選任

   十二 建物の一部が滅失した場合の滅失した共用部分の復旧
   十三 円滑化法 第102条 第163条の56 第1項に基づく除却  の必要性に係る認定の申請
   十四 区分所有法第62条第1項の場合の建替え 及び円滑化法第108条第1項の場合のマンション敷地売却 
 区分所有法第64条の5第1項の場合の建物の更新、
 区分所有法第64条の6第1項の場合の建物敷地売却、
 区分所有法第64条の7第1項の場合の建物取壊し敷地売却及び
 区分所有法第64条の8第1項の場合の取壊し

   十五 第28条第2項 及び第3項 に定める 建替え等 マンション再生等 に係る計画又は設計等の経費のための修繕積立金の取崩し
   十六 適正化法に基づく管理計画の認定、認定の更新及び変更の認定の申請
   十七 十六 組合管理部分に関する管理委託契約の締結
   十八 十七 その他管理組合の業務に関する重要事項



{設問}マンション内において生じた紛争について、管理組合が原告として訴訟を提起することができるものは、区分所有法、民法及び民事訴訟法の規定によれば、次のうちどれか。

1.特定の区分所有者が専有部分内で騒音を発生させ、直下の居住者とトラブルとなっているため、その騒音の差止請求。

答え:提起できない。当事者間の問題。
騒音発生が広範囲に及び共同の利益を害する程度に至るときは、区分所有法第57条の差止請求の対象となるが、上下階の2者間の問題に止まるときは2者間で解決すべき問題。通常は直下の居住者による所有権または人格権に基づく差し止めの問題で管理組合には当事者適格がない。(騒音被害では、階上のフローリング工事を共同の利益に反する行為と言い難いとした判例:東京地裁八王子支部、平成8年7月30日、がある。これによると騒音問題は、あくまでも当事者間の問題で、管理組合は原告になれない。)

2.管理会社から派遣された管理員が、犬の飼育を禁止している規約の規定に違反して区分所有者が飼っている犬にかまれてけがをしたため、その損害賠償請求。

答え:提起できない。これも、当事者間の問題。
違反行為者たる飼い主と被害者たる管理員間の不法行為に基づく損害賠償の問題で、管理組合には当事者適格がない。

3.特定の専有部分の区分所有権につき複数の者が区分所有権を争っているため、管理の必要上行う区分所有者の確認請求。

答え:提起できる。管理費等を請求する者の確認が必要。
専有部分の区分所有権の帰属は組合員の地位の問題であり、管理組合にとって誰が組合員であるかは管理費請求等の組合員の管理組合に対する義務の履行者を決定し、議決権の行使を認める相手方を決定するのに重要であり、利害関係を持つので、この確認訴訟の当事者適格がある。

4.特定の専有部分の占有者が占有権限のないことが疑われるため、管理の必要上行う占有権限の確認請求。

答え:提起できない。占有権限を確認しても管理組合には利害がない。
専有部分の占有者は管理組合の部外者であり、原則としてその決定は管理組合の利害にはかかわらないから管理組合には当事者適格がない。

正解;3

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第五十七条

2項  前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。

過去出題 マンション管理士 R06年、R04年、H29年、H26年、H24年、H19年、H18年、H16年、H15年、
管理業務主任者 H15年、H14年、

*訴訟にするなら集会の決議によらなければならない...裁判にするなら、集会での”普通決議(過半数決議)”がいる。
   区分所有者の団体(管理組合)が法人化されている場合:区分所有法第52条の関係で、規約があっても、管理組合法人の理事が単独には、訴訟の提起できない。また、決議は、個々の事案ごとにすること。包括してはできない。

★ここ「行為の停止請求」だけ該当の区分所有者に「弁明の機会」は不要

  この第57条の「行為の停止請求」では、該当の区分所有者に弁明の機会は与えなくて良い。(第57条の「行為の停止の請求」の時だけ、弁明の機会を与えなくてもいいが、次の第58条(使用禁止の請求)、第59条(区分所有権の競売の請求)、第60条(占有者に対する引渡し請求)では、該当の区分所有者に弁明の機会を与えることになっているので、よく出題される。整理して覚えること。)

 これは、通常の不法行為の差止や所有権に基づく妨害排除請求と同様で、裁判手続きで当事者は反論できるためです。
 第58条(使用禁止の請求)、第59条(区分所有権の競売の請求)、第60条(占有者に対する引渡し請求)となると、行為をやめさせるだけでなく、専有部分(室)を使わせない、とか、所有権を奪うなど、財産権への重大な侵害となるので該当の区分所有者からの「弁明」も保障しています。

★訴訟提起の決議 〜事案ごとに検討すること〜

 すでに説明しましたよう、区分所有法第6条1項で規定する「共同利益背反行為」というのは、民法等の通常の所有権侵害とは異なります。
 例えば、戸建てなら問題がないマンションでのペットの飼育を制限する行為は、所有権侵害では説明できないように、「共同の利益に反している行為」とは実に抽象的な概念です。
 何が共同の利益に反する行為かは、通常、そのマンションでの規約や使用細則等で具体化されるのでしょうが、裁判をする場合には、訴訟提起の前に、果たしてその行為が本当に「共同の利益行為に反する」に該当するか否かをまず区分所有者の団体(管理組合=区分所有者全員)で検討して判断することが、例え規約や使用細則に規定があっても裁判所の手間を省く意味でも妥当といえます。

 そこで、訴訟の提起(提訴=裁判上の請求)を行う場合には、必ず個別の事案ごとに区分所有者が集まって集会(総会)を開き、その事案を区分所有者たちが検討して提訴の是非を議決しなければならないものとされています。

 ここが、「規約で定めれば」、管理者が原告・被告となれる区分所有法第26条4項の管理者の職務の場合と違います。
 共同の利益の利益の義務違反行為に対する提訴は管理者(理事)の職務権限に含まれません。

<参照>区分所有法 第26条4項: (*令和8年4月1日施行で改正あり

4 管理者は、規約又は集会の決議により、その職務 (第二項後段に規定する事項を含む。) に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。

 管理者が、「共同の利益に反する行為の停止」の裁判の訴訟提起ができるのは、次の第57条3項の規定
 「管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。」の適用があるときだけです。 

 区分所有者たちが集会を開くということは、その集会の場での討議・審議によって該当の違反者が反省をし、違反行為の再発や予防また損害の回復がなされれば、面倒な裁判をしなくてもいいという意味を持たせています。

 なお、この場合の集会でも、区分所有者全員の承諾があれば、集会を開催せずに、書面または電磁的方法により決議はできます。(区分所有法第45条1項及び3項

*集会には、該当の行為者も出席でき、意見を言える

 この義務違反者に対する共同の利益に反する行為の停止を求める集会では、当該行為が核心となる「共同の利益に反する」かどうかがまず審議されますが、集会が区分所有者間の利害関係調整の場であり、その審議は当該行為をめぐる利害調整そのものですから、問題になっている行為者(区分所有者)にも当然その集会での審議に参加して意見を述べることができ、また議決に参加することができます。

 なお、この集会での決議は提訴を行うための要件ですから、その集会で「訴訟をするという決議」がない場合に訴えを起こしてもその訴えは「訴えの利益なし」となり裁判所から却下されることになるでしょう。
  該当の「訴訟提起の集会」の議事録は、誰が被告(訴えられる側)か誰が原告(訴えを起こす側=通常管理組合)になるのか、管理者を訴訟提起者にするのか、など裁判での当事者の確定も含めて、今後の裁判でも必要とされますから、必ず明確に作成してください。また、集会招集通知などの保管も裁判上で証拠書類ともなりますから十分にしてください。

    ★裁判でなくても各個人で:裁判外でも、差止め請求できるが、もし裁判にするなら、手続きや費用も必要なので、集会の決議(過半数の決議でいい)がいる。

    ★管理者(管理組合法人では理事)が単独で裁判には出来ないし、理事会の決議だけでも、裁判にはできない。(第52条参照。管理組合法人の理事の事務から除かれている。)

    ★次の第58条にある「使用禁止の請求」や第59条の「競売の請求」と違って、第57条の「行為の停止」の場合には問題を起こしている区分所有者に弁明の機会は与えなくていい。(本第57条の行為の停止請求は、使用禁止や競売請求ほど、該当の行為者にとって重要でないと、判断されている。)


{設問-1} 平成15年 管理業務主任者 試験 「問35」

次の記述は正しいか。
管理組合法人の理事は、規約又は集会の決議により、その事務に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。

答え:誤り。理事ではなく、管理組合法人が訴訟の当事者となる。
区分所有法第 47条第8項;管理組合法人は、規約又は総会の決議により、その事務に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。とあり、「理事」ではなく、「管理組合法人」がなる
引っかけ的ではあるが、こんな出題もある。よく出題される理事と管理組合法人の関係は、まとめておくこと。

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第五十七条

3項  管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。

過去出題 マンション管理士 R05年、H19年、H17年、H15年、H14年、H13年
管理業務主任者 H23年

★この第57条3項の訴えの提起の規定は、次の第58条で規定される「使用禁止の請求」(4項)、第59条の「競売の請求」(2項)、そして第60条の「占有者に対する引渡し請求」(2項)でも準用されているので注意。

★訴訟の提起者はだれがなるか 〜訴訟の主体〜

 区分所有者の団体(管理組合)が法人化されており集会の決議があれば、区分所有者を代理する管理組合法人(実際の処理は法人を代表し事務を執行する理事)が提訴する(区分所有法第47条8項参照)ことになりますが、管理組合が法人でない時には、区分所有者の代理人である管理者や該当の集会で指定された区分所有者(複数でも可)が区分所有者全員(該当の違反行為者を除いた)のために提訴します(任意的訴訟担当)。法人でない管理組合の場合は注意が必要です。

<参照>区分所有法 第47条8項 (成立等):(*令和8年4月1日施行で改正あり)

第四十七条
  8  管理組合法人は、規約又は集会の決議により、その事務 (第六項後段に規定する事項を含む。) に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。

     管理組合法人名であることに注意。(理事個人ではない。)
     当然、判決の効力は区分所有者全員に及ぶ。(民事訴訟法第115条1項1号及び2号)

     原告(訴えた側=管理者や管理組合法人等))が敗訴した場合は、再度同じ内容の訴訟を他の区分所有者が起すことはできない。(一事不再理の原則)

     その訴訟に使った費用は区分所有者全員で負担する。

<参照>民事訴訟法 第115条 (確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)

  第百十五条  確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
     一  当事者
     二  当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
     三  前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
     四  前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者

    2  前項の規定は、仮執行の宣言について準用する。

★裁判での請求

 本第57条2項により、集会の普通決議(区分所有者及び議決権の各過半数)で訴訟を提起することになりますと、管理組合が法人であれば、その管理組合法人の代表者たる理事が管理組合法人の名でその代表として訴訟を提起しますが、法人でない区分所有者の団体(管理組合)の場合には管理者が管理組合という「権利能力なき社団」の代表として民事訴訟法第29条に基づき、または本第57条3項で認められた該当の区分所有者を除いた全員のための訴訟担当者(区分所有者全員が自分たちのためにみんなで原告となるのは、訴状で全員の氏名を列挙するなどで手続きが煩瑣になり、且つ不経済です。)として訴訟を提起することになります。ここでも、法人化された団体と単なる区分所有者の団体の扱い方の違いがあります。

  ★「区分者全員のために」:訴状上の名は、「区分所有者代理」でなく、管理者や集会で指定された区分所有者の個人名(当事者)で行う。

  ★管理者がいても、他の区分所有者を訴訟の追行者として指定できる。

  ★共同の利益に反する行為かどうか、各事案ごとに集会を開いて決議すること。集会を開かないで、総括的に訴訟提起の権限を管理者に与えることはできない。


  なお、区分所有者全員の承諾があれば、集会を開催せずに、書面または電磁的方法により決議はできます。(区分所有法第45条1項及び3項

★「共同利益背反行為」による訴訟は、管理者の通常の職務には含まれていない

  管理者の通常の「職務」に関する場合には、規約であらかじめ包括的に訴訟追行をさせることが出来ます。
  区分所有法第26条4項の規定により、管理者には、その職務に関しては、規約で定めていれば、集会を開かなくても、原告・被告なる訴訟の追行が可能ですが、義務違反に対しては毎回集会を開いて決議することが、必要です。
 (注:この区別を理解しておくこと! 試験でもよくでます。)

<参照> 区分所有法 第26条4項、5項;(*令和8年4月1日施行で改正あり)


4項  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務 (第二項後段に規定する事項を含む。) に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。

5項 管理者は、次の各号に掲げるときは、遅滞なく、それぞれ当該各号に定める者にその旨を通知しなければならない。この場合における区分所有者に対する通知については、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。
   一 前項の規約によりその職務に関し原告又は被告となつたとき 
      区分所有者
   二 前項の規約により保険金等の請求及び受領に関し原告又は被告となつたとき 
      保険金等の請求権を有する者
   三 前項の集会の決議により保険金等の請求及び受領に関し原告又は被告となつたとき
      保険金等の請求権を有する者(区分所有者を除く。)

---------------------------------------------------
 *改正前の 区分所有法 第26条5項

5項  管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。



{設問} 管理組合の集会において、マンション全体に響きわたる騒音を発生させている区分所有者に対し、その騒音の差止め等について訴訟を含む法的な措置を執るための決議をする場合に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 規約で理事会が集会の決議により法的な措置を執ることができると定めたとしても、理事会は、その名において、訴訟を提起することができない。

答え:正しい。共同の利益に反する行為の差し止めを裁判にするなら、毎回集会が必要
区分所有者に対する「騒音の差止め請求」は区分所有法第57条に該当する。区分所有法第57条2項によれば(事務の執行) 管理組合法人の事務は、この法律に定めるもののほか、すべて集会の決議によつて行う。ただし、この法律に集会の決議につき特別の定数が定められている事項及び第五十七条第二項に規定する事項を除いて、規約で、理事その他の役員が決するものとすることができる。
とあり、当件は、第57条2項に該当し、規約があっても、毎回、集会の決議が必要で、理事会は、その名において、訴訟を提起することができない。
また、訴訟の提起者は、管理組合が法人化されていなければ管理者(理事長)または集会で指定された区分所有者であり、理事会の名ではできない。(区分所有法第57条3項)

2 騒音の被害を受けていない区分所有者でも、集会の決議により指定された場合にはその騒音の差止め訴訟を提起することができる。

答え:正しい。
区分所有法第57条3項によれば訴訟を提起するのは原因となっている当人以外の全員、管理者又は集会において指定された区分所有者は、騒音の被害を受けていなくても、集会の決議により指定された場合にはその騒音の差止め訴訟を提起することができる。

3 騒音の差止め訴訟を議題とする集会には、その訴訟の相手方である区分所有者は、出席して議決権を行使することができる。

答え:正しい。出席して意見もいえる。
区分所有法第57条でも、また同法第58条や第59条でも議決権行使についての制約は無いから騒音の差止め訴訟を議題とする集会には、その訴訟の相手方である区分所有者は、出席して議決権を行使することができる。(弁明と混同しないように。集会での議決権の行使は、区分所有者である限り奪われません。)

4 騒音により被害を受けている区分所有者がいても、集会の決議に拘束され、当該区分所有者は、損害賠償請求の訴訟を独自に提起することができない。

答え:誤りである。独自に民法に従い出来る。
区分所有法第57条は個人の被害の賠償に何らふれるところが無いから騒音により被害を受けている区分所有者がいれば、集会の決議に拘束されることはなく、当該区分所有者は、損害賠償請求の訴訟を独自に提起することができる。民法第709条の不法行為に基づきます。

正解: 4   


★参考までに、〜「規約に違反」した区分所有者と占有者に誰が、差止め請求ができるのか〜

  区分所有法第6条に定める「共同の利益に反する行為の禁止等」は、第57条から第60条の規定により訴訟の主体が、管理組合法人なら法人を代表して理事が、また決議により管理者や指定された区分所有者が提訴できます。
 しかし、第30条1項に定める「規約」に基づき定めた「建物等の使用に関する義務違反」については、区分所有法では規定がありません。

  解釈としては、規約は団体の規約である以上、各区分所有者が規約により負う義務は団体に対する義務であるから、これに対応する権利も団体が持ち、かつ行使できるもとのしています。
  これにより、管理組合法人なら法人(代表の理事)、法人でなければ、団体として(民事訴訟法第29条参照)でき、具体的には、管理者ができるという説があります。
 また、「規約」の内容には、第6条に規定する「共同の利益に反する行為」にも該当する場合もあるため、「規約違反」であれば、集会の決議を経ずに、理事会の決議だけで、訴訟が起こせるという判断をすることは、無理があります。

 これは、上で述べた、標準管理規約67条3項 とも関係していますので、注意してください。


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第五十七条

4項  前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。

過去出題 マンション管理士 R06年、R02年、H26年、H25年、H24年、H20年、H17年、H15年、H14年、H13年
管理業務主任者 H28年、

前三項の規定...前の第57条1項、2項、3項を指す。

<参照> 区分所有法 第6条:(区分所有者の権利義務等);

1項  区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない

2項  区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。

3項  第一項の規定は、区分所有者以外の専有部分の占有者(以下「占有者」という。)に準用する。

4項 民法(明治二十九年法律第八十九号)第二百六十四条の八及び第二百六十四条の十四の規定は、専有部分及び共用部分には適用しない。

★義務違反の占有者(賃借人など)に対する請求

 共同の利益に反する行為者が、区分所有者から専有部分を賃借している占有者である場合も区分所有者に対するのと同様の措置がとられます(第6条4項)。

 マンションの占有者である賃借人等も同じ建物での共同生活では重要な立場にあるため、区分所有法第6条により、建物の保存や管理・使用については、区分所有者と同様に、共同の利益に反する行為をすることは禁止されています(第6条3項による第6条1項の準用)。
 もし、占有者が共同の利益に反する行為をした時、裁判にならない状況であれば、第57条1項だけの問題ですから管理組合の管理者や管理組合法人の理事がその業務執行の権限で、占有者に対しても

  @行為の停止: その行為をやめ、または将来にむかってしないこと。 
    例:ピアノの音がうるさいとき、ピアノの演奏を停止させる。1階にあるカラオケスタジオの夜間の一定時間の使用停止

  A行為の結果の除去:  
    例:共用部分の廊下を荷物置き場に使っているとき、荷物を取り除かせる

  B行為の予防:     
    例:騒音を起す可能性があるとき、防音装置の設置をさせる

 など、必要な差し止め請求を行うことになります。

 裁判にならない状況では、必ずしも当該事項に関する集会議決は必要ありませんので、何が共同の利益で、何がそれに反する行為であるかがこれまでの集会議決または使用規則等で決めていない限り、管理者や管理組合法人の理事の恣意的な運用になりかねず問題となることも考えられますので運用には注意が必要です。

 裁判にするなら、集会の普通決議(区分所有者及び議決権の各過半数)が必要となるのは、区分所有者に対するのと同じです。(第57条2項の準用)

 また、占有者を相手とする訴訟の提起も、管理組合が法人化されていれば、管理組合法人の名でおこない、法人格がない単なる区分所有者の団体の場合には、管理者または集会の決議で指定された区分所有者が、他の区分所有者全員のために訴えを起こします。(第57条3項の準用) 

★共同の利益に反する行為をしたり、その行為のおそれがあるときは、その区分所有者だけでなく、占有者(賃借人など)に対しても、差止め請求や裁判の提訴をすることができる。

  (*注)この第57条(行為の停止)と、これから出てくる、第58条(使用禁止の請求)、第59条(区分所有権の競売請求)、第60条(占有者に対する引渡し請求)は、整理が必要なので、以下に先にまとめる。

◎ 義 務 違 反 者 に 対 す る 措 置
条文 内容 対象者 裁判 訴えの決議 弁明の機会
第57条 行為の停止 区分所有者、占有者 外、上 過半数(普通決議) 共に与えなくていい
第58条 使用禁止 区分所有者だけ 3/4以上(特別多数決議) 区分所有者に与える
第59条 競売 区分所有者だけ 3/4以上(特別多数決議) 区分所有者に与える
第60条 引渡し 占有者に対して 3/4以上(特別多数決議) 占有者に与える

{設問-1}平成23年 マンション管理士試験 「問8」 

〔問 8〕マンションにおける紛争を解決するための訴訟の当事者に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1 外壁の瑕疵により区分所有者がこうむった損害に係るマンション業者に対する賠償請求の訴えについては、規約で定めれば、専有部分の賃借人が区分所有者のために、訴訟の原告となることができる。

X 誤っている。賃借人には当事者適格がない。 
 訴訟においては、裁判の前に、誰が適正な原告・被告(訴訟当事者)になれるか、また、裁判において、適正な判決を受けるために必要な資格(当事者適格)が与えられているかどうかが必要とされます。
  そこで、規約で定めれば、専有部分の賃借人であっても区分所有者のために、訴訟の原告になれるかるどうかです。
  まず、外壁の瑕疵により区分所有者がこうむった損害は、その被害を受けた区分所有者がマンション業者に対して訴訟を起こせる他に、外壁は共用部分ですから、共用部分での損害賠償請求として、管理者が、区分所有者のために、原告又は被告となることが区分所有法第26条2項及び4項に定められています。
 「(権限)
  第二十六条
    2  管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
    4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。」

 そこで、本題の占有者である、専有部分の賃借人が規約があれば、訴訟の原告になるれかですが、確かに、区分所有法第30条により、多くの事項は、規約があれば、規定が可能で、また占有者も区分所有者と同じように、共同の利益を守ること(第6条3項)や、規約や集会の決議を守ること(第46条2項)が義務付けられていますが、本来、マンション生活での管理の原点は、区分所有者達での管理であり、便宜上、管理者がいれば、管理者に代理権を与えているだけです(第26条1項、そして4項)。

 そこで、訴訟提起という重要性を考えた場合、これは、規約においても、区分所有者の他にできるのは、第三者であっても、管理者までで、専有部分の賃借人を規定することはできないと考ええることが妥当と判断します。
参考:区分所有法第57条3項
 「3  管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。 」


2 共用部分たるピロティ部分に壁を設置して物置としていた区分所有者に対して当該壁の撤去とその部分の明渡しを求める訴えについては、集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、訴訟の原告となることができる。

○ 正しい。 
共用部分たるピロティ部分(1階の部分が柱になっている構造)に壁を設置して物置とする行為は、区分所有法第6条1項に規定される、「共同の利益に反する行為」となります。
 「(区分所有者の権利義務等)
  第六条  区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。」
すると、この排除は、区分所有法第57条。
 「(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
   第五十七条  区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
    2  前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
    3  管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
    4  前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。 」とあり、
3項により、集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、訴訟の原告となることができます。


3 専用使用権のない敷地部分につき有料駐車場として賃貸した区分所有者に対する賃料相当額の不当利得の返還を求める訴えについては、管理者が区分所有者でない第三者であっても、集会の決議により、訴訟の原告となることができる。

○ 正しい。  
専用使用権のない敷地部分を有料駐車場として賃貸に出し、賃料を得た区分所有者は、権原のない共用部分での不当利得(民法第703条)を得たことになりますから、区分所有者の団体(管理組合)は、賃料を得た区分所有者に対して賃料相当額を返還請求ができます。 そして、不当利得の返還請求訴訟の提起は、管理者でも、区分所有法第26条2項及び4項。
 「(権限)
  第二十六条  管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
   2  管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
   3  管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
   4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
   5  管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。」とあり、
規約又は集会の決議で、訴訟の原告となることができます。(なお、区分所有法第26条が設けられたのは、区分所有者でない、第三者の管理者(理事長)が訴訟の原告になれるか、どうかで過去に争いがあったので、それらを明確にしたものです。)


4 管理組合法人と理事個人との売買契約に関する紛争については、監事が管理組合法人を代表して、管理組合法人の名において、訴訟を追行することができる。

○ 正しい。利益相反で監事が行う。 
通常、管理組合が法人化されていれば、紛争があって訴訟を提起するのは、管理組合法人ですが(区分所有法第47条6項参照)、紛争の相手が法人を代表する理事では、利益が相反する事項となり、区分所有者の利益が守られないおそれがありますので、その場合には、監事が理事の代わりに管理組合法人の代表となり、訴訟を提起することになります。
それは、区分所有法第51条
 「(監事の代表権)
  第五十一条  管理組合法人と理事との利益が相反する事項については、監事が管理組合法人を代表する。」です。


答え:1  (ここの選択肢1は、法律の解釈として、さらに突っ込んだものを求めているのか、それとも、一般的な判断を求めているのか不明な出題だ。答え難い。)


{設問-2}平成10年 マンション管理士試験 「問10」

〔問 10〕区分所有者Aは、ぺットとしての犬の飼育が規約で禁止されているにもかかわらず、ペットとして小型犬の飼育を始めた。甲マンション管理組合の管理者が再三にわたり中止するよう申し入れたが、Aは、その申入れを無視して犬の飼育を継続している。この場合に関する次の記述のうち、区分所有法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1 ペットとしての犬の飼育が専有部分内で行われる場合であっても、飼育を禁止するとする規約は、有効である。

→○ 正しい。
規約の改正が一部の区分所有者の権利にどの程度の影響があるかを問題にしている。
 当初、動物の飼育を禁止する規約は定められていなかったマンションにおいて、後に規約を改正し、犬、猫、小鳥等のペットを飼うことを禁止したマンション管理組合の管理者が、規約改正前から犬を飼育していた区分所有者に対し、犬の飼育禁止を求めた事例において、東京高裁平成6年8月4日は次のように判示した。
 すなわち、「区分所有者は管理規約で共同の利益に反する行為の具体的内容、範囲を定めることができる。よって、マンション内で動物の飼育を一律に禁止することもできる。本件規約については、その規約が買主の権利に特別の影響を与えるものでない。」として、管理者の請求を認めた。有効である。


2 Aの犬の飼育が他の居住者に具体的に実害を発生させ、あるいは発生させる蓋然性はないとしても、Aの犬を飼育する行為は、規約に違反する行為である。

→○ 正しい。
規約の禁止規定に反する行為は、具体的な実害がなくても規約違反である。(判例:東京高裁:平成6年8月4日))


3 甲がAの犬の飼育の差止めの訴訟を提起する集会の決議をする場合、あらかじめ、Aに弁明する機会を与える必要がある。

→X 必要がない。行為の停止では、該当者に弁明の機会を与えなくていい。 
犬の飼育の差止めの訴訟は、区分所有法第57条「1項 区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
   2項  前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。」とあり、
共同の利益に反する行為の停止等の請求」により行うが、この訴訟の提起には集会の普通決議が必要であるが、行為をした区分所有者へ弁明の機会を与える規定は無い。ただし、区分所有法第58条(使用禁止の請求、同法第59条(競売の請求)、同法第60条(占有者に対する引き渡し請求)には、弁明の機会をあたえること。


4 甲がAの犬の飼育の差止めの訴訟を提起する場合の集会の議事は、区分所有者及び議決権の各過半数で決することができる。

→○ 正しい。
選択肢3でも述べたように、犬の飼育の差止めの訴訟は、区分所有法第57条2項「前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない」とあり、こ の訴訟は、普通決議(区分所有者及び議決権の各過半数)で可能区分所有法第38条1項)。

答え:3


{設問-3}平成26年 マンション管理士試験 「問4」

[問 4] 管理組合(区分所有法第3条の団体をいう。以下同じ。)の管理者の訴訟の追行等に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定によれば、誤っているものはどれか。ただし、規約に別段の定めはないものとする。

1 規約により使用目的を庭として専用使用権を与えられた敷地を勝手に駐車場に改造した区分所有者に対して、管理者が他の区分所有者の全員のために、原状回復を求める訴訟を原告として提起するためには、集会の決議を経なければならない。


○正しい。
 
平成24年マンション管理士試験 「問5」、 平成23年マンション管理士試験 「問8」、 平成19年マンション管理士試験 「問5」 など。
 まず区分所有法で問題になるのは区分所有法第3条で規定される
 「(区分所有者の団体)
 第三条  
区分所有者は、全員で、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成し、この法律の定めるところにより、集会を開き、規約を定め、及び管理者を置くことができる。一部の区分所有者のみの共用に供されるべきことが明らかな共用部分(以下「一部共用部分」という。)をそれらの区分所有者が管理するときも、同様とする。」
 の解釈です。
 この第3条で規定される区分所有者の団体は、建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体であって、そのための事務処理は行っても、権利や義務の主体ではない団体の性格をもっているということです。 また、管理者は区分所有法第26条2項
 
「(権限)
 第二十六条
   2  
管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。 」 
とあり、
 管理者は区分所有者を代理はしていますが、団体の代表ではないということです。
 そのため、裁判において権利・義務を争う時の主体となり得る適正な被告・原告の資格、これは裁判では「当事者適格」といわれますが、において紛争の当事者として区分所有者の団体が当事者適格を有すのか、それとも区分所有者全員が対象になるのかなどの認定が争いの始めとなり、またそれに付随して、区分所有者でない者もなれることのできる管理者が、区分所有者の団体のために訴追行為ができるかも、論争の基になっていました。
 法人でない区分所有者の団体に対しては「権利能力なき社団(権利能力なき団体とも)」の概念があり、訴訟においても、原告・被告になれます(民事訴訟法第29条)が、区分所有法との関係において明確でないため、区分所有法では、平成14年の法改正で管理者の権限として第26条4項
 「4  管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。 」 と規定して、
 管理者に訴訟を追行する当事者適格を認め、訴訟追行権を与えています。

 これを前提に設問の「規約により使用目的を庭として専用使用権を与えられた敷地を勝手に駐車場に改造」する行為は、区分所有法第57条に該当します。
 「(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
 第五十七条  区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。
   2  
前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない
   3  
管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる
   4  前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。」
 とあり、
 引用されています第6条は
 「(区分所有者の権利義務等)
 第六条  区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。
   2  区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。
   3  第一項の規定は、区分所有者以外の専有部分の占有者(以下「占有者」という。)に準用する。 」 
です。
 規約で庭として使用することが定められているにも係わらず、これを勝手に駐車場に変更する行為は、区分所有法第6条1項の「建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為」と認定できます。
 そこで、この行為は区分所有法第57条1項に該当し、同2項及び3項により、訴訟の提起は集会の決議があれば、管理者が他の区分所有者の全員のために、原状回復を求める訴訟を原告として提起することができますから、正しい。



2 管理者が原告として滞納管理費等の支払を求める訴訟の係属中に、管理者自身の区分所有権を第三者に譲渡し区分所有者でなくなった場合であっても、管理者は、原告として当該訴訟を追行することができる。

○ 正しい。管理者は区分所有者でなくてもいい。
 平成25年マンション管理士試験 「問5」、 平成24年マンション管理士試験 「問7」平成23年管理業務主任者試験 「問30」 など。
 まず管理者はそのマンションにおいて第三者であっても原告として滞納管理費等の支払を求める訴訟の提起については、選択肢1で説明しましたようにできますから、この箇所は正しい。
 次に管理者の地位ですが、管理者の選任は、区分所有法第25条
 
「(選任及び解任)
 第二十五条
 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。
   2  管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。」
 です。
 国土交通省が作成しましたマンションの標準管理規約では、管理者=理事長(役員)とし、その役員の資格として、区分所有者(組合員)であることを規定しています(標準管理規約36条4項)が、区分所有法では、第25条1項により原則:管理者は、区分所有者でなくても選任できますから、設問のように、別段の規約がなければ、管理者が区分所有権を失い区分所有者でなくなっても、訴訟上の地位がなくなるわけではありませんから、正しい。
 この選択肢2は全体として、正しい。



3 集会において、共用部分に係る大規模修繕工事の瑕疵について、管理者が施工業者に瑕疵修補に代えて損害賠償請求を求める訴訟を提起することが決議された場合は、管理者は、区分所有者のために原告として当該訴訟を追行する。


○ 正しい。 
平成22年マンション管理士試験 「問14」、 平成20年マンション管理士試験 「問4」平成19年マンション管理士試験 「問14」 など。
 もう一度管理者の権限を整理しましょう。
 区分所有者第26条です。
 
「(権限)
 第二十六条  管理者は、共用部分並びに第二十一条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第四十七条第六項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
   2  
管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第十八条第四項(第二十一条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
   3  管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
   4  
管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第二項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる
   5  管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第三十五条第二項から第四項までの規定を準用する。 」


 管理者の職務権限として、2項に「区分所有者を代理し、共用部分等について生じた損害賠償金の請求ができると」あり、同4項により、「管理者は、集会の決議があれば、その職務に関して区分所有者のために、原告又は被告となること」ができます。
 そして、共用部分に係る大規模修繕工事の瑕疵となると、民法第634条
 「(請負人の担保責任)
 第六百三十四条  仕事の目的物に瑕疵があるときは、注文者は、請負人に対し、相当の期間を定めて、その瑕疵の修補を請求することができる。ただし、瑕疵が重要でない場合において、その修補に過分の費用を要するときは、この限りでない。
   
2  注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる。この場合においては、第五百三十三条の規定を準用する。」
 とあり
 この場合の注文主は、区分所有者の団体(管理組合)で、解釈が面倒ですが、管理者は区分所有者を代理していますから、また集会の決議もありますので、区分所有法第26条4項と民法第634条2項により、 集会において、共用部分に係る大規模修繕工事の瑕疵について、管理者が施工業者に瑕疵修補に代えて損害賠償請求を求める訴訟を提起することが決議された場合は、管理者は、区分所有者のために原告として当該訴訟を追行することができますから、全体として、正しい。

 なお、民法第635条もありますから、注意してください。
 「第六百三十五条  仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができる。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りでない。 」



4 管理者が原告として訴訟を追行する場合、当該訴訟に要する費用又は要した費用について、管理者は、各区分所有者に対して、前払い又は償還の請求をすることができるが、弁護士費用については、前払い又は償還の請求をすることができない。

X 誤っている。 委任では、事務を処理するについて要する費用又は要した費用については、前払い請求又は償還の請求をすることができる。 
 平成24年管理業務主任者試験 「問4」平成16年管理業務主任者試験 「問2」など。
  区分所有者の団体の規約または集会の決議によって選任された管理者と区分所有者の団体との関係は、民法の委任または委任に類似した契約と解されています。そこで、区分所有法第28条はこの関係を明確にしました。
 
「(委任の規定の準用)
 第二十八条  
この法律及び規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任に関する規定に従う。

 この規定により、民法の委任の規定第643条から第656条が管理者に適用されます。
 そこで設問の「管理者が原告として訴訟を追行する場合、当該訴訟に要する費用又は要した費用」の請求は、民法第649条
 
「(受任者による費用の前払請求)
 第六百四十九条  
委任事務を処理するについて費用を要するときは、委任者は、受任者の請求により、その前払をしなければならない。」
 とあり、
 委任者(各区分所有者)に前払い請求ができます。
 また、民法第650条
 「(受任者による費用等の償還請求等)
 第六百五十条
 受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができる
   2  受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる債務を負担したときは、委任者に対し、自己に代わってその弁済をすることを請求することができる。この場合において、その債務が弁済期にないときは、委任者に対し、相当の担保を供させることができる。
   3  受任者は、委任事務を処理するため自己に過失なく損害を受けたときは、委任者に対し、その賠償を請求することができる。 」
 とあり、
 受任者である管理者が委任された訴訟に要する費用を支出したときも委任者に償還の請求ができます。

 ここで、設問が、請求先の委任者を区分所有者の団体とか、管理組合とせず、「各区分所有者」としてあるのが、出題者も区分所有法での団体の扱いで苦労している箇所です。
 そこで、委任事務を処理するについての費用又は委任事務を処理するのに必要と認められる費用に、「弁護士費用がふくまれるか、どうか」ですが、客観的にみて、通常裁判となると、管理者だけでは対応できないと考えられますから、弁護士費用も含めていいと判断できますので、正しい。



答え:4。 なお、管理者については、平成26年 マンション管理士試験 「問14」 も参考にしてください。 また、弁護士費用についても、「問14」選択肢3 も参考にしてください。
  {ある受験者の感想…選択肢2も候補にあがったが、4の方がXの可能性が高かったので、4にした。}

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(使用禁止の請求)

第五十八条

1項  前条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、前条第一項に規定する請求によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる。

過去出題 マンション管理士 R06年、R02年、H26年、H15年、
管理業務主任者 未記入

★”相当な期間”専有部分の使用禁止の訴え

 本第58条は「専有部分を”相当の期間”使用禁止」にする規定です。引用されている前条とか第6条の条文が何を意味しているのか注意のこと。

 区分所有法第6条に規定される「共同の利益の違反行為者」に対しては、前第57条で「その行為の差し止め等」ができることになっていますが、差し止め等を命令する判決だけでは、有害行為が解決できない場合に違反行為者本人を建物内から一定期間排除(追い出し)して、その反省を迫ると共に円満な共同生活の回復を図るのがこの第58条です。

  

 この相当な期間自分のマンションに住めなくなるとの訴えは区分所有法が創設した特殊なもので他の法律には例がありません。 (今現在、生活している建物から追い出すとは、一般の権利を大きく制限した内容です。)

★専有部分の使用禁止の請求の要件 〜重大な所有権の制約〜

 一定の期間(相当の期間)とはいえ、自分が所有している専有部分(室)が使用できなくなるということは、現在の生活の場からの追い出しとなり、該当の区分所有者は一時的に外部に住むこととなり、これは区分所有者として有する専有部分と共用部分を含めた使用権を大幅に制限するわけですから、通常の区分所有者が持っている所有権行使に対する重大な制約となります。
そこで、単に「共同の利益を害する」という要件では足りなく、追加の要件があります。

その要件は、

  @有害な行為、共同の利益に反する行為で(第6条参照)

  A共同生活上の障害が著しくあり、

  B行為の停止等の請求(第57条1項参照)では、共同生活の維持が困難であること が必要で(第58条1項)、

  更に、集会を開き、前の第57条の「行為の停止等」の場合は、普通決議(区分所有者及び議決権の各過半数)で訴訟提起が可能でしたが、本第58条ではその内容が大きく区分所有権を制限した内容であるため訴えの提起には、議決権を有しないものを除く集会で、区分所有者と議決権の過半数が出席し、その出席した「区分所有者及び議決権の各3/4(75%)以上の特別多数決議が必要」とされています(第58条2項)。

 注:集会の成立要件として、過半数を上回る規約があればそれを採用します。

  なお、区分所有者全員の承諾があれば、集会を開催せずに、書面または電磁的方法により決議はできます。(区分所有法第45条1項及び3項

 その集会では、該当の区分所有者を除いて誰が管理組合(区分所有者)を代表して原告(訴える側)となるかも含めて審議されます(第58条4項)。

 なお、この相当な期間専有部分の使用を禁止する請求は第57条の「行為の停止請求」では解決できない場合の規定ですから、要件があえば、特に第57条の「行為の停止等を求めた」後に行うものではなく、直ちに第58条として「使用禁止の請求」ができます。

★共同利益背反行為での各請求権の位置 〜第57条、第58条、第59条の関係〜

 区分所有法の構成上の規定として第57条(前条)が挙げられていますが、請求の順序として、まず第57条の行為の停止等の請求をしてその効果が得られないことを確認してから、次にこの第58条の請求をしなければならないというものではありません。

 この点は次の第59条の「区分所有権の競売の請求」も同様であり、第57条と第58条・第59条は、順を追って請求するものではなく、それぞれの要件や効果を異にしていますから、互いに、どれかが認められる場合には他は認められないという排斥的な関係にあります。

★A「共同生活上の障害が著しい」とは

 要件の内 @有害な行為、共同の利益に反する行為は、第6条第57条と同様ですから、そちらを参照してください。
  「共同の利益に反する行為」であるかどうかは、その行為の必要性の程度、それによって他の区分所有者が被る不利益の態様、程度等、実に多くの事情が、比較・考量されて判断されます。

 Aの「共同生活上の障害が著しい」とは、抽象的な内容です。そこで、例としては、
  ・暴力団事務所として使用
  ・性格異常者であることが明白
  ・ガス自殺未遂、自宅放火等による他人の生命・身体への侵害
  またはその惧れがある場合等 
  の場合に肯定されるのは勿論ですが、建物の物理的損壊や騒音・振動・悪臭など被害は割合軽微であってもその行為が継続していたり累積的になることにより障害となります。

 ただし、ごみ出しのルールを守らない等の容易に回復できる生活上のルール違反ではこれに該当しないでしょう。

 この要件は次の第59条の「区分所有権の競売の請求」と同じですから、専有部分(室)の「相当の期間の使用禁止(第58条に基づく)」か「永久追放を求める競売(第59条に基づく)」かは侵害行為の性質や違反行為者の加害目的・性格・態度等を考慮して目的達成にどちらの手段がいい方法かを判断して選ぶことになります。

★B行為の停止等の請求では、共同生活の維持が困難であること 〜専有部分の使用禁止の必要性〜

 要件Bの「行為の停止等の請求では、共同生活の維持が困難であること」とは、言い換えると「相当な期間の専有部分の使用禁止の必要性」ともなります。

 この要件は、円滑な共同生活を維持するためには、前の第57条に規定されている単なる当該行為の停止請求等では足らず、また次に規定される第59条での「競売という建物からの永久追放手段」よりもこの相当な期間、専有部分の使用禁止の手段を採用するほうがいいという理由です。

 それは、何らかの理由で侵害行為の期間が限定される場合や、違反行為者の性格等から相当な期間使用禁止にすれば反省が期待できるような場合にこの方法を採ることが肯定されます。

 反対に相当な期間での使用禁止では、使用禁止期間が終わりまた建物に戻ってきた場合に侵害行為が再発する惧れがある場合や、もう期間限定の専有部分の使用禁止では反省等が期待できない場合には次の第59条の「永久追放としての競売請求が妥当」になるためこの使用禁止の請求は不適当となります。

該当の区分所有者(違反行為者)に弁明の機会を与えること

 本第58条で規定する専有部分の一時的な「使用禁止の請求」は、本来ならば、専有部分を所有して自由に使うことが許されている個人の財産である専有部分(室)が、たまたま区分所有建物内にあるという位置づけだけで、エントランスや廊下等の共用部分を含めて使用できなくるという個人が有する所有者の権利(所有権)を大きく制限する行為です。
 そのため、使用禁止の請求を裁判にするなら、必ず集会を開き、その集会では、議決権を有しないものを除いた区分所有者と議決権の過半数が出席し、出席した区分所有者及び議決権の各3/4(75%)以上の賛成を必要とし(第58条2項)、普通決議よりも要件が厳格です。
 
 また、その集会での審議においては違反行為者からも言い分を述べることができる、「弁明の機会」が与えられる必要があります(第58条3項)。

 違反行為者に弁明の機会を与えるということは、ある判定を下す前に、該当の者に対して問題となっている内容を告知しその事案に対する意見を聞く方法で、行政機関などでは通常「聴聞」と呼ばれてるやりかたです。
 「聴聞」というのは民主的な制裁手続きにおける必須の要件ですから、その聴聞権を保障した規定となっています。
この趣旨から、弁明の聴取は制裁を審議する集会で行うべきで、集会とは別の理事会の席や、他の機関が違反行為者の弁明を聞いて、集会へ報告するだけでは足らないと考えるべきでしょう。

 ただし、違反行為者に弁明の機会を与えればそれで足り、また、弁明の機会を与えたが、本人が欠席したり、出席しても弁明をしない場合は、区分所有法に規定される行為としての瑕疵はありません。

 ★弁明の機会のタイミング

   集会の席上で、決議前に与えるのが、望ましいが、法律上は機会を与えるだけでいい(場所・時間は決められていない)。

   また、集会においては、必ず該当者に十分な発言の機会と時間を確保すること。

◎この集会の審議において、違反者の侵害行為が
    @「著しい共同生活上の障害」に該当し、
    A「使用禁止の必要性」により使用禁止が妥当であるか否かが検討され、
    違反者は@、Aの要件がないこと、または@の加害行為を今後しない旨の弁明ができます。

★弁明と議決権行使

 なお、義務違反者はこの議案の当事者として特別の利害関係を有しますが、弁明の最終手段として議案に反対の議決権を行使できることは当然です。

◎この反対の弁明にもかかわらず、または弁明の機会を放棄した結果、集会で「使用禁止」が可決されても、裁判となれば裁判所でも義務違反者は弁明が可能ですから裁判所の審判の結果@「著しい共同生活上の障害」またはA「使用禁止の必要性」の要件がないとして、集会で決議した使用禁止請求が棄却されることもあります。

「相当の期間」とは

 本第58条1項による専有部分の使用停止での「相当の期間」としてどの程度が妥当かは、その侵害行為の内容・性格と共同の利益の回復との関係で決定される事柄であり、一概には決まりませんが、短期間では差止請求での対処が可能でしょうから、数ヶ月以上2年以下程度で設定すべきでしょうか。(暴力団の事務所使用では、3年間使用禁止なった例があるが、これは極端な場合です。)

 従って、該当の集会で「相当の期間」を決議し、訴え内容としては「期間xxxの専有部分の使用禁止」として請求することになりますが、裁判所は独自に管理組合側の請求期間内で適当な期間を裁定することになります。

 この場合、管理組合の請求期間を超えて裁定するのは民事訴訟の処分権主義に反しますからできないとすべきでしょう。
従って、事案に対して不適当に短い期間の請求は「使用禁止の必要性」の要件を満たさず請求の期間を拡張しない限り棄却されることになると考えられます。

 *相当な期間の目安としては、

違反態様   使用禁止期間の目安 
暴力・威嚇・深刻な騒音 6か月?1年
長期・悪質な迷惑行為 1年程度
反社会的活動拠点化 1?2年(3年は極端な場合)
改善可能性が低い やや長め
再発のおそれが高い 長め

★裁判

 建物の専有部分の一定期間の使用禁止の判決は、不動産にかかわる紛争ですから、その訴額は不動産固定資産評価額(敷地権を除外した区分建物の価格)となりますから被告または不動産所在地を管轄する地方裁判所の管轄となります(民事訴訟法第4条、第5条12号等)。

 また、その判決は使用差し止めの場合と同様不作為の裁判となり、判決が原告(訴えた方)の主張で確定すれば「被告(違反者)は自己の専有部分を判決で認められた期間中使用できなくなります」。
使用の有無は当該専有部分の占有即ち事実上の支配の有無により判断されることになりますから、専有部分を倉庫代わりにして物品の保管する行為も使用となるでしょう。

★使用禁止の範囲

 本第58条の条文では「専有部分の使用禁止」となっていますが、専有部分だけでなく、その他のエントランスやエレベーター等の共用部分、附属施設、敷地の使用もできなくなります。

★使用が禁止されても、区分所有権は失っていませんから、管理費・修繕積立金の支払など、区分所有者としての義務はあります。

 他人に賃貸する等により直接占有がなくなれば判決違反とはいえません。

◎この点で問題は同居親族による使用ですが、家族や使用人も占有補助者として使用が出来なくなります。

 なお、この判決での義務の履行は義務違反者(債務者)の意思にかかわるものとなりますから、該当の区分所有者が判決に従わない時(専有部分から出て行かない時)には、判決を「債務名義」として、強制執行ができます。
 その強制執行は引渡しではないため、「間接強制」の手段となります(民事執行法第171条・第172条)し、(区分所有法第57条の場合も同じですが、)共同の利益への侵害が急迫なもので判決による執行では間に合わないと認められるときは、民事保全手続きによる仮処分が認められることは勿論です。

<参照> 民事執行法 第171条・第172条

代替執行
第百七十一条 次の各号に掲げる強制執行は、執行裁判所がそれぞれ当該各号に定める旨を命ずる方法により行う。
   一 作為を目的とする債務についての強制執行 債務者の費用で第三者に当該作為をさせること。
   二 不作為を目的とする債務についての強制執行 債務者の費用で、債務者がした行為の結果を除去し、又は将来のため適当な処分をすべきこと。

2 前項の執行裁判所は、第三十三条第二項第一号又は第六号に掲げる債務名義の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める裁判所とする。

3 執行裁判所は、第一項の規定による決定をする場合には、債務者を審尋しなければならない。

4 執行裁判所は、第一項の規定による決定をする場合には、申立てにより、債務者に対し、その決定に掲げる行為をするために必要な費用をあらかじめ債権者に支払うべき旨を命ずることができる

5 第一項の強制執行の申立て又は前項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

6 第六条第二項の規定は、第一項の規定による決定を執行する場合について準用する。

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間接強制
第百七十二条 作為又は不作為を目的とする債務で前条第一項の強制執行ができないものについての強制執行は、執行裁判所が、債務者に対し、遅延の期間に応じ、又は相当と認める一定の期間内に履行しないときは直ちに、債務の履行を確保するために相当と認める一定の額の金銭を債権者に支払うべき旨を命ずる方法により行う。

2 事情の変更があつたときは、執行裁判所は、申立てにより、前項の規定による決定を変更することができる。

3 執行裁判所は、前二項の規定による決定をする場合には、申立ての相手方を審尋しなければならない。

4 第一項の規定により命じられた金銭の支払があつた場合において、債務不履行により生じた損害の額が支払額を超えるときは、債権者は、その超える額について損害賠償の請求をすることを妨げられない。

5 第一項の強制執行の申立て又は第二項の申立てについての裁判に対しては、執行抗告をすることができる。

6 前条第二項の規定は、第一項の執行裁判所について準用する。

★前条1項=第57条1項(違反行為の差止め請求)は単なる引用で、

ここの要件は、

   @義務違反をする区分所有者の行為が他の区分所有者との共同生活上に著しい障害を与え、

   A違反行為の差止め請求では解決できないような共同生活での障害がひどいとき

   には、原因となっている区分所有者の専有部分を、集会の特別多数決議(3/4以上)で提訴して、一定期間使用禁止にできる。(第58条2項)

    *特に、違反行為の差止め請求(第57条)をした後でなくてもいい。(差止め請求をしてなくても、この使用禁止請求を状況に応じてできる。)(注:ここが、よく出題される。)

  ★この使用禁止は、個人の財産に対する強力な請求なので、違反行為の差止めのように裁判外の請求がない。全部裁判となる。

    また、決議に際して、あらかじめ義務違反者に、弁明の機会を与えることも必要。(第58条3項)

    弁明の機会は与えればいいだけで、その弁明を集会で採用するかどうかは集会が決めることである。

  ★判決がでると、該当の区分所有者だけでなく、その家族も、専有部分だけでなく、エントランスや廊下等の共用部分並びに敷地、附属施設も使用できない。
    要するに、一定期間は、該当の建物には入れなくなる。

      ただし、他人に賃貸することは許される。

      ◎その結果、相当の期間空き室にするか、他に貸すか、転売するかになる。なお、時々空き室に空気を入れにくるのは、「使用」に当てはまらない。

{判例}相当な期間の例
 福岡地裁:昭和62年5月19日
     各地で他の暴力団と対立・抗争を繰り返していた暴力団が組事務所として使用していた専有部分を、3年間の使用禁止を命じた。

 大阪地裁:平成13年9月5日
      長期間にわたり多額の管理費等を滞納しているテナントビルの区分所有者に対して、2年間の専有部分の使用禁止と滞納管理費等の支払を命じた。

★ただし、占有者(賃借人等)が「共同の利益に反する行為」をしても、この第58条の「一定期間の使用禁止」の適用はないことに注意。


★管理費や修繕積立金を滞納したら、使用禁止請求ができるのか? --> 「共同の利益に反する」が出来ないこともある。

  多くの判例でも、管理費や修繕積立金等の滞納は、「共同の利益に反する」の認識はされているが、@使用禁止 と 次の A競売 まで行えるかは、まだ結論がでていないようです。

 この理由としては、区分所有者に対する金銭債権には、先取特権が認められ(第7条)、また支払督促や財産の差し押さえ、動産の執行など別の回収方法も考えられるからです。

{判例}
 大阪高裁:平成14年5月16日
   1.滞納額は、金額と期間の双方において著しいものがあり、区分所有法6条1項の共同利益背反行為に該当する、が

   2.専有部分の使用禁止と滞納管理費の支払とは、直接的な関連性がない、

   3.専有部分の使用禁止により、滞納管理費などの支払が促進されるものではなく、他の区分所有者に何らかの利益がもたらされるものではない、
     により、専有部分の使用禁止はできない。

 *もともと、区分所有法第57条から第60条までの各義務違反者に対する措置について法律の創案者が想定していたのは、騒音や悪臭、不良な入居者などの積極的な生活妨害行為(作為といいます)で、管理費や修繕積立金を支払わないというような消極的な行為(不作為といいます)は想定外でした。

  しかし、これからは、滞納管理費等の問題が多発することも考えられますので、裁判で明確になるでしょう。


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第五十八条 (*令和8年4月1日施行で改正あり)

2項 前項の決議は、集会において、区分所有者(議決権を有しないものを除く。以下この項において同じ。)の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)の者であつて議決権の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の各四分の三以上の多数でする。

2項  前項の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。

過去出題 マンション管理士 R07年、R04年、R02年、H20年、H15年、H13年
管理業務主任者 未記入

★特別に多数の賛成が必要で「特別多数決議事項」と呼ばれる。(その8の4−1)

 令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、変更があった条文です。
施行は、令和8年4月1日。



令和8年4月1日施行で改正の理由 〜多数決要件の緩和〜

 令和8年4月1日施行の改正区分所有法により、「集会の決議の円滑化」を図るため、
   1.所在等不明区分所有者を集会の決議の母数から除外する仕組み
   2.出席者の多数決による決議を可能とする仕組み
   が採用され、
  この第58条2項も変更があります。

 それは、まず、議決権を有しない所在等が不明な区分所有者(区分所有法第38条の2)を最初から、全ての集会の母数から除く「議決権を有しないものを除く」の規定です。

 

 次に、今までは集会の成立要件は区分所有法にはなくて無条件に「区分所有者の全数」と「議決権の全数」の両方において、各3/4(75%)以上の賛成がなければ成立しなかった決議でしたが、改正によって、集会は「区分所有者の数と議決権の数が各過半数(50.1%)なら成立」し、その「”出席した”区分所有者及びその議決権の各3/4(75%)以上」が賛成すれば、決議されるいうと大幅に緩和された事です。

 なお、集会の成立要件としては、規約で別途、区分所有者の数と議決権数について、それぞれ過半数を上回る割合が決めてあれば、その規約が優先します。

 規約で、集会の成立要件として、区分所有者の数と議決権数について過半数を下回る規定があっても、それは採用されません。



★「専有部分」の相当期間の使用禁止は、一時的にせよ他人の所有権を大きく制限するので、慎重を期するため、多くの区分所有者の決議が必要とされる。

 専有部分(室)の使用禁止を裁判所に請求する集会の決議においては、令和8年4月1日改正前は、単純に、「全区分所有者及び全議決権の各四分の三以上の多数が必要」となっていましたが、集会の決議を円滑化する改正により、
 まず、議決権を有しない所在等が不明な区分所有者は、集会の母数から除かれます。
 そして、集会が成立する要件として、
  ・区分所有者と議決権の各過半数が出席すること(ただし、共に規約で、過半数を上回る定めがあれば、それを採用する)
  集会が成立すれば、出席した
  
・区分所有者及び議決権の3/4以上が賛成すれば、いいとかなり緩和されました。

 逆に問題を起している区分所有者も議決権を持っている。そこで、問題を起している区分所有者が4分の1を超える議決権を持っていると、この訴訟は出来なくなることもある。

★特別多数決議事項であっても、招集の通知には、「会議の目的」だけを示せばよく、「議案の要領」はいらないことに注意。(第35条5項に入っていないぞ。) 注:令和8年4月1日施行で第35条5項は削除された。

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第五十八条

3項  第一項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。

過去出題 マンション管理士 H24年、H15年、H13年
管理業務主任者 R05年、H19年、

該当の区分所有者に弁明の機会を与えなければならない...弁明の機会を与えないとその集会での決議が無効になる。

★問題を起している区分所有者にも、自分の財産である専有部分が相当な期間の使用禁止の措置は厳しいので、弁明させること。

  ◎注:前条の第57条の違反行為の差止め請求には弁明の機会はない。(内容が軽いので不要。)

★この集会の審議において、違反者の侵害行為が
    @著しい共同生活上の障害に該当し、
    A使用禁止の必要性により使用禁止が妥当であるか否かが検討され、
    違反者は@、Aの要件がないこと、または@の加害行為を今後しない旨の弁明ができます。

 なお、違反者は、区分所有者として、この事案の集会に出席して意見を述べることは、当然に認められています。

★弁明の機会を与えるとは、

 違反者に対して明確に弁明をする機会を与える必要があります。
 そのためには、違反者に対して、あらかじめ、集会の日時、場所、議題や違反行為の概要などを通知しなければなりません。その際に注意しなければいけないのは、そのような通知が確実に行われたことを証拠として残すために内容証明郵便を使うべきでしょう。

 また、弁明の機会を与えたというためには、
 処分事由にあたる事実が存在したか否か、仮にそのような事実 があったとすれば何故になされたのか、そのようにせざるを得なかった事実はなかったのか、本人に同情するような事由はないか等を詳細に問い質すことになります。

 なお、弁明の機会を与えるということは、必ずしも本人に集会の席上で弁明させなければいけないということでなく、あらかじめ集会で弁明できるようにしてあればよく、実際に弁明するかどうかはその違反者の自由です。
また、違反者に通知をしても集会に欠席したときは、違反者本人が弁明の機会を放棄したものですから、手続きとしては、問題がありません。

 違反者は、この議案の当事者として特別の利害関係を有しますが、弁明の最終手段として議案に参加して、反対の議決権を行使できることは当然です。

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第五十八条

4項  前条第三項の規定は、第一項の訴えの提起に準用する。

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 未記入

★訴訟の提起は管理者または指定された区分所有者が、全員のためにするのは、違反行為差止め請求の提訴(第57条3項)と同じ。

<参照> 前条3項=第57条3項:

 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。

★訴訟の提起者

 区分所有者の団体が法人化されていれば、区分所有者を代理する管理組合法人(実際の処理は理事が法人を代表する)が提訴する(第58条1項)が、法人でない時には、管理者や指定された区分所有者(複数でも可)が、違反者を除いた区分所有者全員のために提訴する。

  当然、判決の効力は区分所有者全員に及ぶ。

  また、裁判費用は区分所有者全員の負担となり、敗訴しても、他の区分所有者から、当件については、再提訴できない。(一事不再理の原則)

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(区分所有権の競売の請求)

第五十九条

1項  第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。

過去出題 マンション管理士 R06年、R05年、R01年、H30年、H27年、H26年、H24年、H23年、H17年、H15年、
管理業務主任者 H28年、

区分所有権と敷地利用権を競売にかける...共同生活の維持のために個人の財産を第三者が競売にできる。(恐るべし、団体生活のルール)


◎本第59条は共同の利益違反者に対する「区分所有権等の競売請求」に関する規定です。

 ある区分所有者が「共同の利益に反する」と、その区分所有者が有する「区分所有権(建物の専有部分の所有権)」と土地の「敷地利用権」を第三者である区分所有者の団体(管理組合)や管理組合法人が競売という手段をとって強制的に売り払い、その建物から永久的に追い出すという「競売請求」も前第58条の「専有部分の使用禁止の訴え」と同様に区分所有法独特のものです。
 他人が持っている区分所有権と敷地利用権を裁判を通じて、第三者がはく奪するという、実に厳しい規定です。

*競売請求の要件

 競売請求をする要件は、第6条に規定する「有害な行為、共同の利益に反する行為」を前提とした、

   @著しい共同生活上の障害 があること、と

   A競売以外の手段では共同生活の維持が困難であること です。

 @著しい共同生活上の障害の要件は前第58条の使用禁止の請求と変わりませんが、その解決策として他人が持っている区分所有権と敷地利用権を第三者である他の区分所有者達が強制的に売り飛ばすということは、前第58条で規定されています専有部分の「相当な期間の使用禁止」つまり一定期間その建物から出ていくこととは大きく異なり、現在居住しており生活している場から第三者が強制的に追い出し、その建物から永久追放するという最も強力な制裁措置ですから Aの要件の競売以外の手段では共同生活の維持が困難である ことを結論づけるような強い性質・内容のものが要求されるでしょう。

 裁判で認定されやすい例としては、
 ・暴力団事務所利用
 ・長期にわたる極端な迷惑行為
 ・他住民への暴行・脅迫
 ・団体秩序の根本破壊
 です。

 なお、他の方法、例えば、区分所有者が長期に渡って管理費や修繕積立金を滞納している場合において、第7条に規定される先取特権の実行で債権の満足が得られるなら、債務不履行の問題として解決すべきで、第59条での「専有部分の競売請求」は適用されないという見解もあるが、その場合でも第59条を適用してもいいという論もある。
 
 私は、この場合にも、第59条は適用してもいいと考えます。

{競売を認めた判例}

@暴力団の組長及びその配下の組合員が他の区分所有者の共同の利益に反する行為をなし、共同生活の著しい障害となっている。
使用禁止等の方法では他の区分所有者らの平穏な共同生活の回復、維持ができないので管理組合の競売請求を認める。(札幌地裁:昭和61年2月18日判決)

A他にも、専有部分が暴力団の組事務所の時、競売を認めた(福岡地裁:平成24年2月9日判決)

B区分所有者及び占有者が奇声、騒音、振動等を発するなどで競売以外にない(東京地裁:平成17年9月13日判決)

★集会の特別多数決議と弁明の機会を与えることが必要

 訴訟で原告(訴える側)が誰になるかも当該集会で決定されること、また第三者(他の区分所有者)による特定個人の財産に対する恐ろしい制裁であるため、
 集会は、
  ・議決権を有しないものを除いた区分所有者と議決権の過半数が出席し、
   出席した「
区分所有者及び議決権の各3/4(75%)以上」の多数の特別多数決議によること、
   ただし、集会の成立要件として、規約で過半数を上回る規定があればそれを採用する。
 ・そして違反者たる区分所有者に
弁明の機会を与えることが必要なことなどは前第58条の場合と同様です(第59条2項で、第58条2項の準用)。

 なお、区分所有者全員の承諾があれば、集会を開催せずに、書面または電磁的方法により決議はできます。(区分所有法第45条1項及び3項

◎ただ、この第59条「区分所有権の競売請求」の訴えは前第58条の「専有部分の使用禁止」の場合と異なり、その執行として競売がなされなければ目的を達成できませんから、裁判で勝訴した原告(管理組合法人、管理者又は集会で指定された者)の競売申立ての期限が判決確定の日から6ヶ月以内に行うことに、制限されています(第59条3項)。

 この判決が確定して6ヶ月以内に競売の申立てをするとの制限があるのは、通常の確定判決での消滅時効は10年(民法 改正 第169条へ 第174条の2 参照)ですが、あまり長い間被告(競売を受ける者)を不安定な状態に置いておくことは不当であることと、競売の申立てが可能になってから6ヶ月間も同じ共同生活内に置いている状況では、追放の必要性が消滅したものとみなし得るという理由によるものと思われます。

<参照>民法 第169条 第174条の2 (判決で確定した権利の消滅時効)

第百六十九条 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。

2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。

◎もっとも、競売での落札価格は、通常の売買価格の7割以下でしか売れないのが実情ですから、競売の判決を受けても被告(共同の利益違反者)が競売が執行される前に任意に売却して、その建物から退去すれば競売申立ての必要はありません。

 ただし、任意売却中なので競売の申立ては待ってくれ、といわれて6ヶ月経過してしまえば、申立てをすること自体に法律上の障害はなくいつでもできたのにしなかったのですから3項により申立て権は失うものというべきでしょう。

 その場合は再度裁判からやり直しとなります。

★競売の対象:判決文で貰うもの

  @区分所有権(専有部分) と A敷地利用権  (この2つは分離して処分できない。区分所有法第22条参照) を競売できる旨を宣言する判決文。

  この判決文で、競売申立権ができ、あとは民事執行法の「換価のための競売(形式的競売)」(民事執行法第195条)に従って競売の手続きとなります。

★問題を起こしている区分所有者が競売の開始前に、区分所有権と敷地利用権を第三者に譲渡した場合

 区分所有法第59条に該当して、裁判となり、著しい障害を起こした区分所有者が競売の判決を受け、次の段階として、具体的な競売の執行の開始を受ける前に、そのマンションを売ってしまった場合に、それを買った人(著しい障害はおこしていない人)に対して、元の区分所有者を当事者として判決された競売ができるか、どうかです。

 区分所有法第59条制定の精神は、問題を起こした人をそのマンションから排除するための規定ですから、排除の対象にした区分所有者がもう既にそのマンションからいなくなっているのなら、後から買った人(譲受人)は、その時点では、問題をおこしていないため、排除の対象にすべきではないと考えられています。
 これは、旧区分所有者と新区分所有者では状況が異なっていますから、旧区分所有者での判決は、新区分所有者(譲受人)に対しては、当事者適格を欠くと考える方が妥当でしょう。
 しかし、判決の効力は承継人(譲受人)に及ぶとする点(民事訴訟法第115条1項3号)や、滞納管理費の回収とも合わせて、競売請求が判決で認められたら、その効力は、譲受人にも及ぶとする考えもあります。

<参考> 民事訴訟法 第115条 : (確定判決等の効力が及ぶ者の範囲)

  第百十五条  確定判決は、次に掲げる者に対してその効力を有する。
     一  当事者
     二  当事者が他人のために原告又は被告となった場合のその他人
     三  前二号に掲げる者の口頭弁論終結後の承継人
     四  前三号に掲げる者のために請求の目的物を所持する者
    2  前項の規定は、仮執行の宣言について準用する。」

 この問題に対しては、平成23年10月11日の最高裁の判決があります。https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=81691

 <参考> 平成23年10月11日の最高裁の判決

*判示事項
  建物の区分所有等に関する法律59条1項に基づく訴訟の口頭弁論終結後の区分所有権及び敷地利用権の譲受人に対し同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることの可否

*裁判要旨
 建物の区分所有等に関する法律59条1項の競売の請求は,特定の区分所有者が,区分所有者の共同の利益に反する行為をし,又はその行為をするおそれがあることを原因として認められるものであるから,同項に基づく訴訟の口頭弁論終結後に被告であった区分所有者がその区分所有権及び敷地利用権を譲渡した場合に,その譲受人に対し同訴訟の判決に基づいて競売を申し立てることはできないと解すべきである。

:この判例では、口頭弁論が終わった後で、マンションの持主が変われば、そのマンションの競売請求の判決が出ていても、新しい譲受人に対しては、訴訟を引き受けないので競売請求ができないということです。

★ 裁判の管轄等

 裁判の管轄等は前第58条の使用禁止の請求場合と同様ですが、前第58条と異なり訴額の対象が区分建物以外に敷地利用権も含みますので、その合算額となります。

 競売手続きは、不動産の執行として、当該物件の所在地を管轄する地方裁判所の専属管轄となります(民事執行法第44条)。

<参照> 民事執行法 第44条 :(執行裁判所)

第四十四条 不動産執行については、その所在地(前条第二項の規定により不動産とみなされるものにあつては、その登記をすべき地)を管轄する地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。

2 建物が数個の地方裁判所の管轄区域にまたがつて存在する場合には、その建物に対する強制執行については建物の存する土地の所在地を管轄する各地方裁判所が、その土地に対する強制執行については土地の所在地を管轄する地方裁判所又は建物に対する強制執行の申立てを受けた地方裁判所が、執行裁判所として管轄する。

3 前項の場合において、執行裁判所は、必要があると認めるときは、事件を他の管轄裁判所に移送することができる。

4 前項の規定による決定に対しては、不服を申し立てることができない。


*競売の執行

 なお、この区分所有法第59条での競売の執行は判決に基づくものではあっても、債権回収を目的とするものではありませんので、民事執行法上の分類の、
  @強制執行(民事執行法第28条以下)
  A担保権の実行としての競売(担保執行)民事執行法第180条以下)
  B
換価のための競売(形式的競売)(民事執行法第195条)
  C債務者の財産開示(民事執行法第196条以下)
 では、Aの担保権の実行としての「競売(担保執行)」ではなく、Bの「
換価のための競売(形式的競売)」の一種とされるようです。(民事執行法第195条参照) (この結果、結局、換価のための競売は、担保権の実行としての競売となりますが)

<参照> 民事執行法 第1条 (趣旨)

第一条 強制執行、担保権の実行としての競売及び民法(明治二十九年法律第八十九号)、商法(明治三十二年法律第四十八号)その他の法律の規定による換価のための競売並びに債務者の財産状況の調査(以下「民事執行」と総称する。)については、他の法令に定めるもののほか、この法律の定めるところによる。

<参照> 民事執行法 第195条 (留置権による競売及び民法 、商法 その他の法律の規定による換価のための競売)

第百九十五条  留置権による競売及び民法 、商法
その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による

★競売手続きへの参加は誰でもできることが原則ですが、特定人の共同生活からの放逐という目的から被告、および被告のための参加人は入札参加資格がありません(第59条4項)。

★判決が確定したら

  訴訟により、区分所有権と敷地利用権を競売をしてもいいという判決が確定しますと、民事執行法で定める、競売申立権を得て、原告は、裁判所に競売の申し立てをします(民事執行法第195条参照)。

  裁判所は、これを民事執行法に従って、区分所有権と敷地利用権を合わせて競売し、競売代金は、競売のための費用を控除して該当の区分所有者へ支払われます。(一度、競売申立人に支払い、それから区分所有者へ支払うという解釈もあるようです。)

★区分所有権及び敷地利用権の競売請求の要件:

  @義務違反行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しい

  A違反行為の差止め請求や使用禁止請求では共同生活の維持が困難

  なときは、集会で、区分所有者及び議決権数の各”過半数”が出席して、その出席した区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数で決議し、問題の区分所有者の @区分所有権 と A敷地利用権 の競売を提訴できる。
    ただし、集会の成立要件として、規約で過半数を上回る規定があればそれを採用する。

  ★決議にあたっては、使用禁止の請求(第58条)と同じように、問題を起こしている区分所有者に弁明の機会を与えること

  ★これも、順序として、前もって違反行為の差止め(第57条)や、相当の期間の専有部分の使用禁止(第58条)がうまくいかなかった後でなくてもいい。別の行為として、直ちに、できる。

状況が許せば、すぐ競売の請求もできる。

★滞納管理費等と競売の関係

 管理費や修繕積立金等の滞納があり、競売しても該当滞納額の回収の見込みがなく(無剰余)でも提訴していいかどうかは、判例でも争いがある。(民事執行法第63条参照)

 <参照>民事執行法 第63条 (剰余を生ずる見込みのない場合等の措置

第六十三条  執行裁判所は、次の各号のいずれかに該当すると認めるときは、その旨を差押債権者(最初の強制競売の開始決定に係る差押債権者をいう。ただし、第四十七条第六項の規定により手続を続行する旨の裁判があつたときは、その裁判を受けた差押債権者をいう。以下この条において同じ。)に通知しなければならない。
     一  差押債権者の債権に優先する債権(以下この条において「優先債権」という。)がない場合において、不動産の買受可能価額が執行費用のうち共益費用であるもの(以下「手続費用」という。)の見込額を超えないとき。
     二  優先債権がある場合において、不動産の買受可能価額が手続費用及び優先債権の見込額の合計額に満たないとき。

   2  差押債権者が、前項の規定による通知を受けた日から一週間以内に、優先債権がない場合にあつては手続費用の見込額を超える額、優先債権がある場合にあつては手続費用及び優先債権の見込額の合計額以上の額(以下この項において「申出額」という。)を定めて、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に定める申出及び保証の提供をしないときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。ただし、差押債権者が、その期間内に、前項各号のいずれにも該当しないことを証明したとき、又は同項第二号に該当する場合であつて不動産の買受可能価額が手続費用の見込額を超える場合において、不動産の売却について優先債権を有する者(買受可能価額で自己の優先債権の全部の弁済を受けることができる見込みがある者を除く。)の同意を得たことを証明したときは、この限りでない。
     一  差押債権者が不動産の買受人になることができる場合
     申出額に達する買受けの申出がないときは、自ら申出額で不動産を買い受ける旨の申出及び申出額に相当する保証の提供
     二  差押債権者が不動産の買受人になることができない場合
     買受けの申出の額が申出額に達しないときは、申出額と買受けの申出の額との差額を負担する旨の申出及び申出額と買受可能価額との差額に相当する保証の提供

   3  前項第二号の申出及び保証の提供があつた場合において、買受可能価額以上の額の買受けの申出がないときは、執行裁判所は、差押債権者の申立てに係る強制競売の手続を取り消さなければならない。

   4  第二項の保証の提供は、執行裁判所に対し、最高裁判所規則で定める方法により行わなければならない。

 *滞納管理費で強制競売を認めた判例:  東京地裁:平成19年11月14日、東京地裁:平成22年11月17日

        *滞納管理費で強制競売を認めなかった判例: 東京地裁:平成18年6月27日、東京地裁:平成22年5月21日


 私は、区分所有法第59条は、該当の区分所有権を奪うこと(その区分所有建物からの排除)が目的であるので認めるべきと解するが。

★この競売請求も、使用禁止の請求と同じように、区分所有建物での持分を強制的に競売にされるという、権利関係の厳しいものなので裁判外では行使できない。

 また、裁判は、管理組合法人、管理者または集会で指定された区分所有者が提訴する。


★管理費等滞納での、区分所有権の競売請求(区分所有法第59条)ができるか、できないかの判例。

 使用禁止(第58条参照)でも説明しましたが、判例は、管理費や修繕積立金等が滞納されることは、区分所有法第6条1項に定める「共同の利益に反する」との認識はあるものの、それから先の「使用禁止」や「競売」についてはまだ結論が出ていません。
これは、個人の財産が第三者によって大幅に制限されたり、奪われる区分所有法の特異性を考慮したものと思われます。

*競売を認めた判例

{判例-1}
長期にわたり多額の管理費等の支払をせず、強制執行による未払管理費等の回収の見込みもない区分所有者が、任意の支払を拒否するばかりでなく、管理組合による管理費等の請求方法を非難するなどの態度をとり続け、修復できない程度に関係が悪化している状況で、管理組合の競売請求を認めた。(東京地裁:平成13年8月30日判決)

************************************

*競売の要件を満たしていない例

{判例-2} 先取特権に言及している。
区分所有者が100万円以上の管理費等を滞納していた。これは「共同の利益に反する行為」であるが、金銭債権の確保を図るために民事執行法の例外となる区分所有法59条の「競売」を適用できるのは、先取特権の実行や財産一般に対する強制執行をしても回収できない場合であるとして、認められなかった。(東京高裁:平成18年11月1日)  

*補助の説明:「差し押さえられた物件には3000万円の抵当権が設定されており、管理組合には配当が行かず、無剰余として取り消しとなることも想定される。
 抵当権の3000万円は、現時点では相当程度減少して(支払われて)いる可能性があるにもかかわらず、管理組合は現時点の抵当権の債権額について何ら主張・立証しない。対象となった住戸の“時価”も主張・立証していない」と判断し、管理組合は敗訴しました。
 剰余主義とは、競売しても差し押さえ債権者(管理組合)に配当される余剰がない場合は、配当が来ない債権者の競売申立は無益な競売として認めないと云うものであります。  
 

 *しかし、滞納費を回収できるお金がない以上競売しても無駄という考え方と、一応競売で該当者を追い出し、共同生活を維持することはできるという考え方もあります。


★民事執行法での、「強制執行による競売」と「担保権の実行としての競売」の違い。また、「換価のための競売(形式的競売)」との違い。

  裁判の判決によって行われる競売は「強制執行」と呼ばれるのに対して、一方、担保権による競売は、「担保権の実行としての競売(担保不動産競売)」と呼ばれ、別の扱いとなります。
 しかし、強制執行での競売も担保権による競売も、執行の方法などでは、地方裁判所を介して行うなど殆ど違いがありませんが、強制執行をするには、判決文の中で強制執行をしてもよいという「
債務名義が必要」ですが、担保権による競売には、「債務名義が必要でなく、不動産登記法での登記事項証明書などで抵当権設定があれば、執行できる点」が大きな違いです。

 また、民事執行法第195条では、「留置権による競売及び民法 、商法 その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による。」と定め、この民事執行法第195条での競売は、換価をもって終了し、請求権の実現を直接その目的にしていないため形式的競売と呼ばれています。
 形式的競売の執行方法は「
担保権の実行としての競売の例による」とあるので、「担保権の実行としての競売」とは別の扱いではありますが、実際の競売の執行方法は、担保権の実行としての競売と同じ手続きになります。

 そこで、区分所有法第59条の区分所有権と敷地利用権の競売の執行方法ですが、区分所有法により、必ず集会で決議して訴訟を起こし、裁判所から競売していいという判決をもらうと、民事執行法上では、第195条の「その他の法律の規定による換価のための競売」に該当すると考えられていて、「担保権の実行としての競売の例による」ことになります。
「例による」とはまた曖昧な表現で、多くの内容が考えられ、解釈も別れることにもなります。

 区分所有法第59条の競売の目的は、「特定の区分所有者のそのマンションからの排除(追い出し)」であって、「換価のための競売」とは、かなりその趣旨が違っていますし、剰余主義がとられるのか否かなど、民事執行法での条文も改正が必要です。

<参照>民事執行法 第195条 :(留置権による競売及び民法 、商法 その他の法律の規定による換価のための競売)

第百九十五条  留置権による競売及び民法 、商法
その他の法律の規定による換価のための競売については、担保権の実行としての競売の例による。

 

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第五十九条

2項  第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。

過去出題 マンション管理士 R06年、R05年、R04年、H27年、H26年、H13年
管理業務主任者 未記入

<参照> 区分所有法 第57条3項

3項 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。

★訴訟の提起者

 問題を起こした区分所有者を除いた他の区分所有者の全員または法人化されていれば、法人の名において理事が法人を代表して提訴するが、区分所有者の団体が法人でない時には、管理者や集会で指定された区分所有者が区分所有者全員のために提訴する。

     当然、判決の効力は区分所有者全員に及ぶ。

 <参照>区分所有法  前条2項及び3項=第58条2項:(令和8年4月1日施行で改正あり。)

 第58条2項:  

前項の決議は、集会において、区分所有者(議決権を有しないものを除く。以下この項において同じ。)の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)の者であつて議決権の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の各四分の三以上の多数でする。

---------------------------------------------------
 令和8年4月1日施行前の第58条2項

前項の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。

★区分所有権と敷地利用権の競売請求をするなら、必ず集会を開き、その決議には、議決権を有しない者は除いて、
  ・区分所有者と議決権の各過半数が出席し((ただし、規約で各々過半数を上回る規定があれば、その規定を採用する)、
  ・出席した区分所有者及び議決権の各3/4(75%)以上の多数の賛成が必要です。

          
 ★特別に多数の賛成が必要で「特別多数決議事項」と呼ばれる。(その8の4-2)

 また、集会での、議決権は問題を起こした区分所有者も持っています。そこで、第58条の使用禁止の訴訟と同様に、問題を起こした区分所有者が1/4を超える議決権を持っていると、この区分所有権及び敷地利用権の競売訴訟も起こせないこともあります。(3/4以上の逆の解釈)

<参照> 区分所有法 第58条3項:

 第一項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。


★弁明の機会を与えること

 また、問題を起している区分所有者にも、専有部分の使用禁止(一時的な追い出し)以上に競売の方法(その建物からの永久追放)は厳しいので、弁明の機会を与えることも必要です。
  機会を与えればそれでよく、弁明しなくてもそれは本人の勝手です。
  

  ◎注意:第57条の違反行為の差止め請求には本人や占有者に弁明の機会はない。(いらない。)

*管理費等を滞納している区分所有者が認知症(意思能力を欠く状況)で、弁明ができない場合は、どうなる 
  事件は、札幌地方裁判所 平成31年1月22日の判決です。

  ◎事件の概要
   当時90才の区分所有者Aは、平成16年以降、特別養護老人ホームに入所しており、平成28年1月分から管理費等を滞納した。
 そこで、管理組合は、平成30年、管理費等の滞納は共同の利益違反に該当するので、Aに対して、集会の通知をし、集会において、区分所有法第59条1項により、区分所有者及び議決権の3/4以上の賛成で、訴訟の提起、区分所有権と敷地利用権を競売する請求を起こした。
  集会の通知がなされた時のAは、要介護度が高く、会話をすることもできず、正確に事理を判断する能力が無かった。

 この集会の決議は、有効か? → 瑕疵があり無効である。弁明は該当の区分所有者がその内容を了解できないといけない。

  この訴訟に対して、札幌地方裁判所は、平成31年1月22日の判決で、
  「区分所有法法59条2項が準用する同法58条3項の弁明の機会は、単に形式的に当該区分所有者の住所地に弁明の機会を付与する旨の通知が届けられただけでは足りず、当該区分所有者において、その内容を了解することができる能力を有していることが必要と解される。
 そして、被告Aの状況に鑑みれば、被告Aが、…通知書の送付を受けた時点において、その内容を了解することができるだけの能力を有していたとは認め難い。
 したがって、本件訴えの提起は、被告Aに対する弁明の機会を付与しないままされた瑕疵ある決議に基づくものと言わざるを得ない。」
  としました。

  なお、実際には、本件の提訴後、精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にありながら、成年後見人が選任されていない被告Aに対して、民事訴訟法第35条により、本人の代わりに裁判を行う「特別代理人」が選任され、管理組合は改めて訴訟を継続する臨時総会を開き、特別代理人に対して弁明の機会を与える通知も行い、訴訟の継続が決議されたので、裁判所は、
 「被告に対する弁明の機会を付与することなくされた決議に基づく訴えの提起であるという上記瑕疵は、本件特別代理人に対する10月26日付け通知書の送付によってした弁明の機会の付与とそれを前提とした11月19日付け臨時総会決議によって治癒されたものと解するのが相当である。」
 としました。

  本人に意思能力がなくて弁明の機会があったと了解できないのに、特別代理人の権限として弁明の機会の了解が入るかどうかの札幌地裁の判断の問題はともかく、「弁明は単に機会を与えた」だけでなく、「内容が了解」される」ことも必要ということです。

 

 


{設問}共同利益背反行為(区分所有法第6条第1項に規定する区分所有者の共同の利益に反する行為をいう。以下この問いにおいて同じ。)を行った区分所有者に対してA〜Dの措置を執る場合、訴訟の主体(ア〜エ)及び訴訟提起のための集会の決議等(@〜B)に係る次の組合わせのうち、区分所有法の規定によれば、正しいものはどれか。

A 当該区分所有者の共同利益背反行為の停止
B 当該区分所有者による専有部分の相当の期間の使用の禁止
C 当該区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売
D 当該区分所有者の共同利益背反行為の結果の除去

ア 当該区分所有者以外の区分所有者全員
イ 規約で共用部分の所有者と定められた区分所有者(エの区分所有者を除く)
ウ 管理者
エ 集会の決議により訴訟追行権を与えられた区分所有者

@ 区分所有者及び議決権の各過半数の決議
A 区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数の決議
B 当該区分所有者に対する決議前の弁明の機会の付与

1  Aとイと@
2  BとアとA
3  Cとウと@
4  DとエとB

答え:区分所有法の規定によれば、
1  区分所有法第57条3項によれば、
    区分所有者の共同利益背反行為の停止の裁判は
   @ 区分所有者及び議決権の各過半数の決議で提起するが、提起する者は管理者又は集会での指名者で 
    規約で共用部分の所有者と定められた区分所有者(エの区分所有者を除く)ではない
    間違い。

2  区分所有法第58条によれば、
    区分所有者による専有部分の相当の期間の使用の禁止の裁判は、
   ア
当該区分所有者以外の区分所有者全員が 
   A 区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数の決議で提起する。
   正しい。

3  区分所有法第59条によれば、
   C 区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売の裁判は、
    管理者もできるが 
   A 区分所有者及び議決権の各3/4以上の多数の決議で提起する。
     @ 区分所有者及び議決権の各過半数の決議では足りない。
   間違い。

4  区分所有法第57条によれば、
    区分所有者の共同利益背反行為の結果の除去は、
    集会の決議により訴訟追行権を与えられた区分所有者が提起できるが、
   B 当該区分所有者に対する決議前の弁明の機会の付与は要件ではない。
   間違い。

正解: 2 (BとアとA) こんな、面倒な出題もあります。

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第五十九条

3項  第一項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。

過去出題 マンション管理士 R02年、H30年、
管理業務主任者 H26年、

することができない...判決で競売していいとなっても、判決後、6ヶ月間放置したら、もう競売はできない。 

★裁判で競売の判決がおりても、自動的に競売にはならない。

   判決確定後、原告になった管理者や管理組合法人などが6ヶ月以内に競売の申し立てをしないと、競売できない。

 ◎競売の請求(提訴=裁判)――>判決(競売していい)――>◎競売の申し立てーー>◎競売 
                                          (6ヶ月以内にすること)

★この区分所有権と敷地利用権の競売の訴えは前第58条の専有部分の使用禁止の場合と異なり、その執行として競売がなされなければ目的を達成できません。その競売申立ての期限が判決確定の日から6ヶ月以内に制限されています。

★確定判決の消滅時効は、10年では? 6ヶ月は変?

 通常、確定判決での消滅時効は10年の筈です(民法第169条)が、あまり長い間被告を不安定な状態に置いておくことは不当であることと競売の申立てが可能になってから6ヶ月間もの間共同生活内に置いている状況では共同生活からの放逐の必要性が消滅したものとみなし得るという理由によるものと思われます。

<参照> 民法 第169条

(判決で確定した権利の消滅時効)
第百六十九条 確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利については、十年より短い時効期間の定めがあるものであっても、その時効期間は、十年とする。

2 前項の規定は、確定の時に弁済期の到来していない債権については、適用しない。

★もっとも、競売では通常の売買の7割以下でしか売れないのが実情ですから、判決を受けて被告が任意に売却して退去すれば競売申立ての必要はありません。

 ただし、任意売却中なので競売の申立ては待ってくれ、といわれて6ヶ月経過してしまえば、申立てをすること自体に法律上の障害はなくいつでもできたのにしなかったのですから本第59条3項により申立て権は失うものというべきでしょう。
その場合は再度裁判からやり直しとなります。


{設問−1} 平成26年 管理業務主任者試験 「問31」 選択肢2(改題)

 期間に関する次の記述のうち、区分所有法の規定によれば、次の記述は正しいか。


 区分所有法第59条に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から6月を経過したときは、することができず、この期間は、規約により伸長することができない。

○ 正しい。 規約で伸ばせない。 この区分所有法第59条からの出題は珍しい。
 平成26年マンション管理士試験 [問5」
 設問は、区分所有法第59条
 「(区分所有権の競売の請求)
  第五十九条  第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。
   2  第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
   
3  第一項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。
   4  前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。」
  とあり、
 3項によれば、 「第一項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない」とあるだけで、規約による別段の定めは規定されていませんから、正しい。

  これは、通常、確定判決での時効は10年の筈です(民法第174条の2)が、あまり長い間被告を不安定な状態に置いておくことは不当であることと競売の申立てが可能になってから6ヶ月間もの間共同生活内に置いている状況では共同生活からの放逐の必要性が消滅したものとみなし得るという理由によるものと思われます。


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第五十九条

4項  前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。

過去出題 マンション管理士 未記入
管理業務主任者 未記入

その者(競売を申し立てられた区分所有者)の計算において買い受けようとする者とは...実際の金は問題を起こした区分所有者が出して、名義上は、関係のある親族やダミーの会社、知人など他人が買受人になる。
 また、第三者があらかじめその者に転売することを約束しておいて、買受人になるなど、実質上の買受人が、競売を申し立てられた区分所有者である場合。

 *該当の不動産を取得することによって経済的損益が実質的に帰属する者

★競売では誰でも、買受人(落札人)になれるので、また義務違反者が買い受けたら、競売にした意味がないので、義務違反の区分所有者と義務違反者が金を出して第三者に買受させるのを禁止する。

 同一な規定は、民事訴訟法にもないが、「自己の計算において=自己の利益を図る目的で」と同じ概念。


{設問−1} 平成28年 管理業務主任者試験 「問39」

[問 39] 以下のア〜ウの記述は、最高裁判所の判決又は決定の一部に若干の修正をしたものであるが、(  a   ) 〜 (  c   )に入る用語の組み合せとして、正しいものは、次の1〜4のうちどれか。  

ア 区分所有法第59条第1項の競売の請求は、特定の区分所有者が、(  a   )に反する行為をし、又はその行為をするおそれがあることを原因として認められるものである。  


a 区分所有者の共同の利益
 
 上の、「問37」 も参考に。 平成26年 マンション管理士試験 「問8」 、平成24年 マンション管理士試験 「問9」 、平成23年 マンション管理士試験 「問32」 

 まず、基本となっている、区分所有法第59条1項とは、
 「(区分所有権の競売の請求)
 第五十九条  第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる。

 (以下、略)」
  です。
 これを前提に、平成23年10月11日;最高裁判所の判決
 「建物の区分所有等に関する法律59条1項の競売の請求は,特定の区分所有者が,
区分所有者の共同の利益 に反する行為をし,又はその行為をするおそれがあることを原因として認められるものであるから,同項に基づく訴訟の口頭弁論終結後に被告であった区分所有者がその区分所有権及び敷地利用権を譲渡した場合に,その譲受人に対し同訴訟の判に基づいて競売を申し立てることはできないと解すべきである。」
 とあり、
 a 区分所有者の共同の利益 (に反する行為) が入ります。


イ 区分所有法第31条第1項の「( b  )を及ぼすべきとき」とは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいうものと解される。  

b 特別の影響 
 前の 「問33」 も参考に。 

 まず、区分所有法第31条とは
 「(規約の設定、変更及び廃止)
 第三十一条  規約の設定、変更又は廃止は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数による集会の決議によつてする。この場合において、規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に
特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない。
 2  前条第二項に規定する事項についての区分所有者全員の規約の設定、変更又は廃止は、当該一部共用部分を共用すべき区分所有者の四分の一を超える者又はその議決権の四分の一を超える議決権を有する者が反対したときは、することができない。

 ですから、

 判例を探すまでもないのですが、この「特別の影響を及ぼすべきとき」の判定基準として、平成10年10月30日;最高裁判所の判決
 は、大変重要ですから、記憶しておいてください。
 「
「特別の影響 を及ぼすべきとき」とは、規約の設定、変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し、当該区分所有関係の実態に照らして、その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいうものと解される。
 です。
 b 特別の影響 (を及ぼすべきとき) が入ります。



ウ 本件専有部分にある排水管は、その構造及び設置場所に照らし、専有部分に属しない(  c   )に当たり、かつ、区分所有者全員の共用部分に当たると解するのが相当である。  

c 建物の附属物
 平成26年 管理業務主任者試験 「問39」 

 この設問から、解答肢をみると、専有部分にある排水管は、「専用使用部分」か「建物の附属物」かを聞いています。
 そこで、平成12年3月21日;最高裁判所の判決
 「本件排水管は、その構造及び設置場所に照らし、建物の区分所有等に関する法律二条四項にいう
専有部分に属しない 建物の附属物 に当たり、かつ、区分所有者全員の共用部分に当たると解するのが相当である。」
 とあり、
 設問の「本件
専有部分にある排水管」の部分の説明としては、
 「1 本件建物のa号室の台所、洗面所、風呂、便所から出る汚水については、同室の床下にあるいわゆる躯体部分であるコンクリートスラブを貫通してその階下にあるb号室の天井裏に配された枝管を通じて、共用部分である本管(縦管)に流される構造となっているところ、本件排水管は、右枝管のうち、右コンクリートスラブとb号室の天井板との間の空間に配された部分である。
 2 本件排水管には、本管に合流する直前でc号室の便所から出る汚水を流す枝管が接続されており、a号室及びc号室以外の部屋からの汚水は流れ込んでいない。
 3 本件排水管は、右コンクリートスラブの下にあるため、a号室及びc号室から本件排水管の点検、修理を行うことは不可能であり、b号室からその天井板の裏に入ってこれを実施するほか方法はない」
 とあり、専有部分にある排水管と認識していいでしょう。
 そこで、

 c 建物の附属物 が入ります。




答え:2  a 区分所有者の共同の利益、 b 特別の影響、 c 建物の附属物

《タグ》判例。 共同の利益に反する行為。特別の影響を及ぼすべきとき。 建物の附属物。

   選択肢ウ の専有部分の排水管が建物の附属物の判例は知らなくても、他の選択肢から、a と b は選べる。 易しい。

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(占有者に対する引渡し請求)

第六十条

1項  第五十七条第四項に規定する場合において、第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によってはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求することができる。

過去出題 マンション管理士 R07年、R02年、H28年、H26年、H24年、H21年、H14年、H13年
管理業務主任者 H30年、H22年、H19年、

*問題を起す占有者(賃借人など)にも賃貸借契約の解除と室(専有部分)の引渡し(占有者にとっては引越)を求めることができる。

★第60条は、「占有者に対する明渡(引渡し)請求」に関する規定です。

 マンションを購入しても持主である区分所有者は住まず、他の人に賃貸などで貸し、その賃借人(占有者)が騒音を出したりして、著しく共同生活を乱すこともかなりあります。
それら占有者に対する規定です。

 多くの場合、1棟の建物内での共同生活をしている人には区分所有者だけでなく、賃借人や使用借人などの占有者も存在し、それらの人々も区分所有者と同様に共同の利益を侵害する場合があります。

 そこで、区分所有法第6条3項によって、占有者も区分所有者と同様に「建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。」つまり「共同の利益」(第6条1項)を守ることが定められています。

 この規定も区分所有法の独自な規定です。

<参照> 区分所有法 第6条 (区分所有者の権利義務等)

第六条  区分所有者は、建物の保存に有害な行為その他建物の管理又は使用に関し区分所有者の共同の利益に反する行為をしてはならない。

2  区分所有者は、その専有部分又は共用部分を保存し、又は改良するため必要な範囲内において、他の区分所有者の専有部分又は自己の所有に属しない共用部分の使用を請求することができる。この場合において、他の区分所有者が損害を受けたときは、その償金を支払わなければならない。

3  第一項の規定は、区分所有者以外の専有部分の占有者(以下「占有者」という。)に準用する。

4 民法(明治二十九年法律第八十九号)第二百六十四条の八及び第二百六十四条の十四の規定は、専有部分及び共用部分には適用しない。

 このため、前述の第57条4項で「区分所有者に対する行為の停止等の請求」が占有者にも準用されていますが、第57条での占有者に対する行為の停止、結果の除去、予防等の必要な措置では問題が解決できない場合に、占有者に対して認められる手段が本第60条の「室の明渡(引渡し)請求」です。

<参照> 区分所有法 第57条  (共同の利益に反する行為の停止等の請求)

第五十七条  区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求することができる。

2  前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。

3  管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。

4  前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。

 問題を起こしている区分所有者に対しては、第57条の「行為の停止」と第58条の「専有部分の一定期間の使用禁止」や第59条の「区分所有権及び敷地利用権の競売」と三通りの請求が認められていますが、占有者に対しては第58条の「専有部分の一定期間の使用禁止の請求」は適用の規定がなく、また、占有者は「区分所有権」を有していませんから、当然第59条の「区分所有権及び敷地利用権の競売」には該当せず、最終的な共同生活を維持する手段として、占有者にはこの第60条で規定される「室(専有部分)の明渡し(引渡し)」の方法がとられ、占有者を追い出すことができます。

 占有者にも、第58条に規定されるような「専有部分の一定期間の使用禁止」があってもいいと考えられますが、区分所有法では認めていません。
 これは占有者は区分所有者と異なり、団体の構成者でもなく、外部の人であり、当該物件に対する投下資本が少なく(マンションを購入していない)専有部分が使用禁止によって一定期間他の場所に移転したら、その後専有部分が使用できるようになってもまた元のマンションに戻るという必要性は少ないと立法者が判断した結果のようです。

 また、一時的な使用停止だと賃貸借契約の期間の問題もあり、借地借家法の「正当事由」もからんで、面倒です。
この区分所有法の規定により、特別法として区分所有法の方が一般法の借地借家法よりも優先して適用される関係です。

★占有者に対する専有部分引渡し請求の要件

 占有者に対する専有部分引渡し請求の要件は、区分所有者に対する第59条と同様で、

   @区分所有者の共同生活上の障害が著しく 

   A室(専有部分)の引渡しの手段以外では他の区分所有者の共同生活の維持・回復が困難であること  が必要です。

 @「区分所有者の共同生活上の障害が著しく」は既に説明した第58条や第59条で定める区分所有者の場合と同様ですが、
 A「室の引渡しの手段以外では区分所有者の共同生活の維持・回復が困難であること」の要件は、占有者にも、行為の差止め請求が出来ます(第57条4項参照)が、その行為の差止め請求では解決できない場合に、最終的に、この「専有部分の引渡し」によって問題を解決することになります。

 この占有者に対する訴えは、第58条(使用禁止の請求)や第59条(区分所有権の競売の請求)など他の条文では訴えの相手が問題を起す区分所有者であったのが、問題を起す占有者に替わっただけですが、占有者にとっては、その家族を含めて今住んでいる建物から追い出され、また馴染んだ共同生活の場からの追放は重大な権利制限ですから、個人の区分所有者だけでこの訴えをすることは出来なくしています。

*裁判にするなら、必ず集会を開き、特別多数の決議を得て、またその占有者にも弁明させること。

 特定の占有者の追い出しを裁判で求めるなら、必ず集会を開き、その決議には、議決権を有しない者は除いて、
  ・区分所有者と議決権の各過半数が出席し(ただし、規約で各々過半数を上回る規定があれば、その規定を採用する)、
  ・出席した区分所有者及び議決権の各3/4(75%)以上の多数の賛成が必要です。

 区分所有者及び議決権の各3/4以上の決議(特別多数決議)が必要なこと、訴えの原告になる担当者も管理組合法人でないときは、管理者にするのか、それとも特定の人を指定するのかなども集会で決め、そして該当の占有者に必ず弁明の機会を与えて、占有者の言い分も述べさせる必要があります(第60条2項による準用)。

 なお、区分所有者全員の承諾があれば、集会を開催せずに、書面または電磁的方法により決議はできます。(区分所有法第45条1項及び3項

*請求の内容 @貸主との契約の解除 A専有部分の引渡し

 占有者は通常、占有する専有部分(室)を貸主である区分所有者との賃貸借契約や転貸借契約、その他の権限により専有部分の占有をしています。
 その契約などの法律上の関係で、区分所有者に対する使用禁止や競売の申立と異なり、判決で、原告(管理者または管理組合法人等)の主張が認められ、被告である占有者との間で専有部分の「引渡しの効力」が生じるだけでは、まだ専有部分について貸主である区分所有者と占有者との権利関係(賃貸借契約)は存続しています。

 該当の専有部分(室)を引渡す請求が認められた判決後も、元の賃貸借契約等が継続していては、賃借人である占有者は判決により専有部分を引渡した後も、言い換えますとマンションから追い出され使用ができなくても、依然として貸主に対する賃料の支払い義務があることになります。
このように、占有ができる賃貸借契約関係を存続させたままの引渡しは論理において矛盾していますから、引渡し請求にはまず占有権限を無くさせるために賃貸借契約を無効にさせること、つまり権利に関係した契約の解除等も必要となります。

 これが第60条1項で規定されています「占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除」という意味です。

★裁判

 この、専有部分に関する契約(賃貸借)関係の解除は当然に、契約の当事者全員にその効果が及ぶものでなければなりません。
また、原則として裁判の効力は訴訟当事者にしか及びませんから、この訴えには契約の両当事者(貸主と借主)、双方が被告となる共同被告として提訴する必要があります

 そこで、貸主が該当のマンションの区分所有者である時には、訴える区分所有者の全員から、該当の区分所有者は除外されることになります。

 勿論、占有者が何ら占有権限無く占有している場合(不法行為)には当該専有部分の区分所有者との間に解除すべき契約などの関係もありませんから、該当専有部分の区分所有者は被告から除かれて、無権限の占有者が単独の被告となります。

 それが、第57条から第59条の各1項では「”他の”区分所有者の全員」としているのに対して、本第60条1項では「区分所有者の全員」と少しばかり、条文が違っている理由です。

*賃貸借契約及び専有部分の明渡しを認めた判例

{判例-1}
 暴力団の組長が、マンションの1室を賃借して居住し、その組長の身辺警護で多くの組員が出入りし、駐車場を無断使用したり、ゴミを捨てたり、他の区分所有者を威嚇していた。そのため、他の区分所有者は恐怖感を抱き、また暴力団同士の抗争も発生する状況であった。これらは、区分所有法第60条に規定する区分所有者の共同の利益に反する行為をしたものであり、かつ将来もこれをするおそれがあつて、右行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときに該当する。(横浜地裁:昭和61年1月29日→最高裁:昭和62年7月17日)

{判例-2} 
 オウム真理教の教団施設として賃借された専有部分に、多くの信徒が深夜にも出入りし、地下鉄サリン事件を起こした危険な教義を信じている教団は、周囲の居住者に対していつ危害が加えられるかもしれないなど強度の不安感や恐怖感などの心理的な悪影響を及ぼし、その不安感は客観的な根拠に基づき、他の居住者の受忍限度を超えているので、賃貸借契約の解除と専有部分の引渡しが認められた。(京都地裁:平成10年2月13日→大阪高裁:平成10年12月17日)。

{注意} 上記のオウム真理教の判例では、判断の基準として、物理的な障害の有無の他にも、それによって、他の区分所有者が感じる不安感や恐怖心といった心理的な障害の有無や程度も考慮していることは、重要です。

★裁判管轄

 第58条(使用禁止の請求)、第59条(区分所有権の競売請求)の場合と同様ですが、裁判費用は建物の明渡しの裁判ですから第58条(使用禁止の請求)と同様、敷地利用権は含まず、建物価格のみが算定の対象となります。

★引渡し請求訴訟の内容

 判決文への申立事項として、
    @賃貸借契約等の解除 と共に、
    A専有部分の明渡し(引渡し) 
  も請求しなければなりません。

 専有部分の明渡しについては、訴えを起こした原告である管理者(または管理組合法人等)への明け渡しを請求するか、所有者である区分所有者への明渡しの請求でもよいか、等は突き詰めると問題ですが、@の賃貸借契約等の解除だけでは最終目的が達成される保証がありませんから、訴えの利益を実現するためには、Aの専有部分の明渡しの請求もします。

 通常であれば、当該専有部分の占有の排除を可能にできるのは、占有を排除できる所有権や賃借権等、正当に物の占有権限を包含する権利を持っている必要がありますが、そのような権利や権限を一つも持っていない原告(管理者または管理組合法人等第三者)に明渡しを認めるのは非常に、法の構成として例外な規定です。
 本第60条は団体の秩序を維持するために制定されている区分所有法に特有な規定であることに注意してください

★確定判決による専有部分の引渡しの相手方

 原告(管理者または管理組合法人等)に勝訴の確定判決がでれば、その専有部分は、専有部分を有している該当の区分所有者ではなく、裁判での原告である管理者や管理組合法人等へ引き渡しますこの後、原告から、当該区分所有者に遅滞無く引き渡されます
 第60条3項の「第一項の規定による判決に基づき専有部分の引渡しを受けた者は、遅滞なく、その専有部分を占有する権原を有する者にこれを引き渡さなければならない。」はこの意味です。

★区分所有者でなく占有者(借りている人)が義務違反をしているときは、占有者に対して行動をとる必要があるが、借りている人は持ち主ではないので競売の請求はできない。

 しかし、借りている基になっている「賃貸借契約(または転貸借の契約)など」の解除と「室(専有部分)の引渡し」は請求できる。

 これには、

  ★要件:

  @義務違反行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しい

  A他の方法では共同生活の維持が困難

 なときは、必ず集会を開き、その決議は、議決権を有しない者は除いて、
  ・区分所有者と議決権の各過半数が出席し((ただし、規約で各々過半数を上回る規定があれば、その規定を採用する)、
  ・出席した区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数の賛成で決議し、
  ・借りている基になっている「賃貸借契約」などの解除と「室の引渡し」は請求できる。(第60条2項――>第58条2項)

 ★決議にあたっては、問題の占有者に弁明の機会を与えること。(第60条2項――>第58条3項)

  *占有者に弁明の機会を与えればよくて、区分所有者(持主)には、弁明の機会を与える必要はない。

{判例}
  区分所有法60条に基づき占有者に対する引き渡しを請求するため、集会決議において、共同の利益に反した場合の賃貸借契約解除等の訴訟提起に当たり、占有者に対して弁明の機会を当たえれば足り、賃貸人である区分所有者に弁明の機会を当たえる必要はない。(最高裁;昭和62年7月17日)

 その理由は、原審(東京高裁判;昭和61年11月17日)によると、
 「弁明の機会は違反者たる占有者に与えれば足り、違反行為者でもなく、 排除の対象者でもない区分所有者に弁明の機会を与える必要はない」と述 べている。

*参考の考え方;
 区分所有法60条は、占有者である賃借人に弁明の機会を与えればよいことになっています。しかし、実際上は、賃貸人(区分所有者)も賃貸借契約が解除されることによって、賃料収入を失う等の不利益があり、賃貸人に弁明の機会を与える必要があるとの考えも成り立ちます。
 なお、本件は、暴力団の組長が正当に借りていた室から、管理組合が追い出しに成功した事例です。

 ★この占有者に対する引き渡し請求の順序も、前もって違反行為の停止(第57条4項)がうまくいかなかった後でなくてもいい。

 状況が許せば、すぐ引渡しの請求をしていい。

★この占有者に対する引き渡し請求も、区分所有者に対する使用禁止や競売の請求と同じように、内容が権利関係に影響する厳しい制限なので裁判外では行使できない。

 また、裁判は、区分所有者の全員、または管理組合法人、管理者または指定された区分所有者が提訴する。(第60条2項 -->第57条3項)

★転貸借(また貸し)の場合 〜現に占有している転借人〜

  その室(専有部分)が、正当に転貸借(区分所有者(賃貸人)→賃借人(転貸人)→転借人)の関係にある場合に、問題を起こしている占有者は、転借人となりますから、この場合には、転貸人と転借人との契約の解除が必要となります。そこで、共同被告は、転貸人と転借人になり、元の区分所有者(賃貸人)は、該当しません。

★不法占拠者に対する処置

  ここで規定されている「占有者」とは、正当な賃貸借契約などに基づいた者です。
  正当な権限がなく、建物を使用している者(不法占拠者)に対しては、民法上の所有権に基づき、妨害排除請求権、妨害予防請求権、返還請求権などで、退去できます。
  この不法占拠者には当然「弁明の機会 」を与える必要はありません。

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第六十条

2項  第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、第五十八条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。

過去出題 マンション管理士 R04年、H16年、H14年、
管理業務主任者 H28年、H25年、

★訴訟提起者
 区分所有者の団体が法人化されていれば、管理組合法人の名で理事が法人を代表して提訴するが、法人でない時には、管理者や指定された区分所有者(複数でも可)が区分所有者全員のために提訴する。

  当然、判決の効力は区分所有者全員に及ぶ。(第57条3項)

<参照> 区分所有法 第57条3項:

 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。

★必ず集会を開き、特別多数決議と占有者にも弁明の機会を与えること

 また、訴訟にするには、必ず集会を開き、その決議には、議決権を有しない者は除いて、
  ・区分所有者と議決権の各過半数が出席し(ただし、規約で各々過半数を上回る規定があれば、その規定を採用する)、
  ・出席した区分所有者及び議決権の各3/4(75%)以上の多数の賛成が必要で(第58条2項)、義務違反をしている占有者に弁明の機会を与えなければならない。(第58条3項)

<参照> 区分所有法 第58条2項:  (*令和8年4月1日施行で改正あり。)

2 前項の決議は、集会において、区分所有者(議決権を有しないものを除く。以下この項において同じ。)の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)の者であつて議決権の過半数(これを上回る割合を規約で定めた場合にあつては、その割合以上)を有するものが出席し、出席した区分所有者及びその議決権の各四分の三以上の多数でする。

---------------------------------------------------
 
注:令和8年4月1日の改正前の 第58条2項

前項の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。

          ★特別に多数の賛成が必要で「特別多数決議事項」と呼ばれる。(その8の4-3)

<参照> 区分所有法 第58条3項: 

第一項の決議をするには、あらかじめ、
当該 区分所有者(→占有者)に対し、弁明する機会を与えなければならない。


            ★準用なので「当該区分所有者」を「当該占有者」に読み替える。

          問題を起している占有者にも、契約解除や室の引渡し措置は厳しいので、弁明させること。

(*)注意:この条文は、占有者が対象で、この決議(契約解除や室の引渡し)に際しては、占有者に弁明の機会はあたえても、義務違反をしていない区分所有者に弁明の機会を与える必要ない。{判例あり}

{判例}占有者に対する引渡し請求をするための集会決議で、その区分所有者に弁明の機会が不要とされた。

 区分所有法第60条に基づき占有者に対する引渡し請求をするための集会決議において、共同の利益に反した場合の賃貸借契約解除などの訴訟提起に当たり、当該区分所有者に弁明の機会を与える必要はない。(昭和62年7月17日:最高裁)

 このあたりが、出題のポイントとなる。


★転貸借(また貸し)の場合

  その室(専有部分)が、正当に転貸借(区分所有者(賃貸人)→賃借人(転貸人)→転借人)の関係にある場合に、問題を起こしている占有者は、転借人となりますから、この場合には、弁明の機会は、転借人に与えることになります。

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第六十条

3項  第一項の規定による判決に基づき専有部分の引渡しを受けた者は、遅滞なく、その専有部分を占有する権原を有する者にこれを引き渡さなければならない。

過去出題 マンション管理士 H24年、H14年、
管理業務主任者 未記入

占有する権原を有するもの...ある法律的行為または事実的行為をすることを正当とする法律上の原因を持っている人。この条文の場合は、その専有部分(室)の区分所有者。

★裁判をして勝訴の判決を貰うと、原告=管理者(理事)または指定された区分所有者、管理組合法人に占有者は室を引き渡すことになる。

  引渡しを受けた原告は、賃貸人(その専有部分を占有する権原を有する者=区分所有者)に、遅滞なく、室を引き渡す。

★どうして、直接「その専有部分を占有する権原を有する者」に引渡しを規定しなかったのか?
  占有権原者がこの引渡しを怠ることが想定され、その場合には、占有者の排除が出来なくなるので、と草案者はいう。

<参照> 民事執行法 第168条 :

第三節 金銭の支払を目的としない請求権についての強制執行

(不動産の引渡し等の強制執行)

第百六十八条  不動産等(不動産又は人の居住する船舶等をいう。以下この条及び次条において同じ。)の引渡し又は明渡しの強制執行は、執行官が債務者の不動産等に対する占有を解いて債権者にその占有を取得させる方法により行う。

2  執行官は、前項の強制執行をするため同項の不動産等の占有者を特定する必要があるときは、当該不動産等に在る者に対し、当該不動産等又はこれに近接する場所において、質問をし、又は文書の提示を求めることができる。

3  第一項の強制執行は、債権者又はその代理人が執行の場所に出頭したときに限り、することができる。

4  執行官は、第一項の強制執行をするに際し、債務者の占有する不動産等に立ち入り、必要があるときは、閉鎖した戸を開くため必要な処分をすることができる。

5  執行官は、第一項の強制執行においては、その目的物でない動産を取り除いて、債務者、その代理人又は同居の親族若しくは使用人その他の従業者で相当のわきまえのあるものに引き渡さなければならない。この場合において、その動産をこれらの者に引き渡すことができないときは、執行官は、最高裁判所規則で定めるところにより、これを売却することができる。

6  執行官は、前項の動産のうちに同項の規定による引渡し又は売却をしなかつたものがあるときは、これを保管しなければならない。この場合においては、前項後段の規定を準用する

7  前項の規定による保管の費用は、執行費用とする。

8  第五項(第六項後段において準用する場合を含む。)の規定により動産を売却したときは、執行官は、その売得金から売却及び保管に要した費用を控除し、その残余を供託しなければならない。

9  第五十七条第五項の規定は、第一項の強制執行について準用する。

★転貸借(また貸し)の場合

  その室(専有部分)が、正当に転貸借(区分所有者(賃貸人)→賃借人(転貸人)→転借人)の関係にある場合には、判決後の専有部分は、区分所有者(賃貸人)ではなく賃借人(転貸人)となりますから、注意してください。



{設問-1}甲マンションの区分所有者Aの管理費及び修繕積立金(以下「管理費等」という。)の滞納が極めて長期間にわたり、かつ、多額に達し、今後生ずる管理費等についても支払う意思がみられない。この場合における次の記述のうち、区分所有法、民法及び民事執行法の規定によれば、正しいのはどれか。

 1 Aの管理費等の滞納が原因で、建物の修繕に重大な支障が生ずるような状況に至っている場合は、この滞納は、建物の管理に関し区分所有者の共同の利益に反する行為に当たる。

答え:正しい。
管理費等の滞納を含め、原因の如何を問わず、建物の修繕に重大な支障が生ずるような状況は共同の利益に反する。(区分所有法第6条1項)。

2 Aの滞納管理費等を回収する為の先取特権は、共益費用の先取特権とみなされ、Aの総財産の上に行使することができる。

答え:間違い。総財産ではない。
先取特権については、区分所有法第7条2項により、「前項の先取特権は、優先権の順位及び効力については、共益費用の先取特権とみなす。」により、前半は正しい。
しかし、後半は、同第7条1項「区分所有者は、共用部分、建物の敷地若しくは共用部分以外の建物の附属施設につき他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権について、債務者の区分所有権(共用部分に関する権利及び敷地利用権を含む。)及び建物に備え付けた動産の上に先取特権を有する。管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権についても、同様とする。」
とあり、Aの総財産ではない。後半が間違い。

3 Aの滞納管理費等を回収するため、区分所有法第59条の規定により区分所有権及び敷地利用権の競売を請求する為には、これに先立って、Aの専有部分の使用禁止の請求をしなければならない。

答え:間違い。順序は決められていない。
区分所有法第59条は使用禁止請求が前提の権利ではなく、必要なら直ちに競売請求ができる。

4 区分所有法第59条の規定による強制競売は、Aの区分所有権及び敷地利用権の最低売却価額で滞納管理費等を回収できる見込みがない場合は、することができない。

答え:間違い。?
区分所有法第59条の競売は、問題区分所有者の排斥を目的とし代金回収を目的としないから最低競売価格の制限はない。(民事執行法第63条)

正解:1

(注:この選択肢4の設問は、{判例}大阪高裁:平成14年5月16日
   1.滞納額は、金額と期間の双方において著しいものがあり、区分所有法6条1項の共同利益背反行為に該当する。が
   2.専有部分の使用禁止と滞納管理費の支払とは、直接的な関連性がない、
   3.専有部分の使用禁止により、滞納管理費などの支払が促進されるものではなく、他の区分所有者に何らかの利益がもたらされるものではない、
     により、専有部分の使用禁止はできない。

と、すこしばかり、矛盾する。設問としてよくない。また、最近の判例では、競売しても滞納管理費の回収ができない時は(無剰余)、することができない考え方もある。判決もまだ統一されていない。)


{設問-2} 平成14年 マンション管理士試験 「問6」

〔問 6〕 暴力団甲組の組長Aは、乙マンションの207号室を所有者Bから賃借し、居住していたが、対立する暴力団との抗争が激化し、Aが同室を甲組の指揮本部として使用したため、襲撃の目標となり、銃弾が打ち込まれるなど緊迫した雰囲気となった。この場合に関する次の記述のうち、区分所有法及び民法の規定並びに判例によれば、誤っているものはどれか。

1 AB間の賃貸借契約で、207号室をAが暴力団事務所として使用しない旨が約されている場合には、Bは、この賃貸借契約を解除することができる。

答え:正しい。 
民法第616条により準用される民法第594条「借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。
   2項  借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。
   3項  借主が前二項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。 」とあり、
第1項及び第3項によると、借主は、契約によって定まった用法に従って使用しなければならない。この義務に違反した場合、貸主は、賃貸借契約を解除することができる。よって、本肢は正しい。

2 乙マンションの管理者Cは、集会で決議をした場合には、Aに対し、訴えをもって賃貸借契約の解除を請求することができる。

答え:正しい。 
建物の区分所有等に関する法律(以下、区分所有法という。)第60条第1項は、「第57条第4項に規定する場合において、第6条第3項において準用する同条第1項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求することができる。」と定める。
そして、第60条2項により、第57条3項「 管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。 」が準用されているので、管理者Cは、集会の決議があれば、Aに対して、賃貸借契約の解除を請求できる。
暴力団抗争の舞台となっている以上、他の方法によってはその障害を除去して共同生活の維持を図ることは困難であり、集会の特別多数決議により、管理者Cは訴えをもって賃貸借契約の解除を請求ができる(最判平6・3・25)。よって、本肢は正しい。

3 乙マンションの107号室を店舖として使用するDは、集会の決議がなくてもAの行為により被った営業上の損害を賠償すべきことを、単独で、Aに対し請求することができる。

答え:正しい。 
組長Aが207号室を甲組の指揮本部として使用するという「故意・過失」行為により、襲撃の目標となり、銃弾が打ち込まれるなど緊迫した雰囲気となっているので、同じマンションのDに損害が生じた場合、Dは、Aに対して不法行為に基づく損害賠償請求(民法第709条)ができる。この請求はDとAとの間のことであるから、単独で請求できる。よって、本肢は正しい。

4 乙マンションの管理者Cが原告となってAに対し207号室の引渡しを訴求し、これを認容する判決が確定した場合には、その執行は、直接Bに同室を引き渡させるものとなる。

答え:間違い。直接ではない。
区分所有法第60条第3項は、「第1項の規定による判決に基づき専有部分の引渡しを受けた者は、遅滞なく、その専有部分を占有する権原を有する者にこれを引き渡さなければならない。」と定める。本問において、管理者Cが原告となりAに対し207号室の引渡しを訴求し、これを認容する判決が確定した場合には、その執行により原告管理者Cが同室の引渡しを受け、その後、Cは、所有者Bに対し同室を引き渡さなければならない。直接Bに引き渡しではない。

正解:4


{設問-3} 平成26年 マンション管理士試験 「問8」

〔問 8〕 区分所有法第6条第1項の共同利益背反行為をした区分所有者又は区分所有者以外の専有部分の占有者に対して、次のア〜エの請求をする場合、集会の決議に基づき、訴えをもってしなければならないものは、同法の規定によれば、いくつあるか。

ア 当該区分所有者の専有部分の相当の期間の使用の禁止の請求

○ 集会の決議に基づき、訴えが必要。 
 平成19年管理業務主任者試験 「問29」、 平成15年マンション管理士試験 「問9」
 区分所有法第6条第1項の共同利益背反行為をしている区分所有者に対してその専有部分の相当の期間の使用の禁止の請求をするには、区分所有法第58条
 「(使用禁止の請求)
 第五十八条  前条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、前条第一項に規定する請求によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、
集会の決議に基づき、訴えをもつて相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求することができる
   2  前項の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。
   3  第一項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない。
   4  前条第三項の規定は、第一項の訴えの提起に準用する。 」
 とあります。
 1項によれば、相当の期間の当該行為に係る区分所有者による専有部分の使用の禁止を請求するには、集会の決議に基づき、訴えをもってします。



イ 当該占有者の共同利益背反行為の結果の除去の請求

X 裁判にしなくてもいい。
 
平成25年マンション管理士試験 「問3」、 平成24年マンション管理士試験 「問26」、 同「問28」、平成20年マンション管理士試験 「問17」など。
 マンションでは区分所有者は当然に共同利益背反行為をしてはいけませんが、占有者(賃借人など)も共同利益背反行為をしてはいけません。もし占有者が共同利益背反行為をして結果の除去の請求を求められると、区分所有法第57条 
 「(共同の利益に反する行為の停止等の請求)
 第五十七条  区分所有者が第六条第一項に規定する行為をした場合又はその行為をするおそれがある場合には、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため
必要な措置を執ることを請求することができる
   2  前項の規定に基づき訴訟を提起するには、集会の決議によらなければならない。
   3  管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。
   
4  前三項の規定は、占有者が第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為をした場合及びその行為をするおそれがある場合に準用する。 とあり、
 4項により、1項の区分所有者と同じく、 区分所有者の共同の利益のため、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置を執ることを請求されます。
 この、その行為を停止し、その行為の結果を除去し、又はその行為を予防するため必要な措置は、訴訟にしなくてもできます。
 なお、訴訟を提起するなら、集会の決議は必要です(2項)。



ウ 当該区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売の請求

○ 集会の決議に基づき、訴えが必要。
 平成24年マンション管理士試験 「問9」、 平成23年マンション管理士試験 「問32」、 平成17年マンション監理士試験 「問4」 など。
 
当該区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売の請求となると、区分所有法第59条
 「(区分所有権の競売の請求)
 第五十九条  第五十七条第一項に規定する場合において、第六条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、他の区分所有者の全員又は管理組合法人は、
集会の決議に基づき、訴えをもつて当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求することができる
   2  第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、前条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
   3  第一項の規定による判決に基づく競売の申立ては、その判決が確定した日から六月を経過したときは、することができない。
   4  前項の競売においては、競売を申し立てられた区分所有者又はその者の計算において買い受けようとする者は、買受けの申出をすることができない。 」
 とあり、
 1項により、当該行為に係る区分所有者の区分所有権及び敷地利用権の競売を請求するには、集会の決議に基づき、訴えをもってします。



エ 当該占有者の占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しの請求

○ 集会の決議に基づき、訴えが必要。
 平成24年マンション管理士試験 「問26」、 平成21年マンション管理士試験 「問10」 など。
 占有者の占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しの請求となると、区分所有法第60条
 「(占有者に対する引渡し請求)
 第六十条  第五十七条第四項に規定する場合において、第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、区分所有者の全員又は管理組合法人は、
集会の決議に基づき、訴えをもつて当該行為に係る占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求することができる。
  
 2  第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、第五十八条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
   3  第一項の規定による判決に基づき専有部分の引渡しを受けた者は、遅滞なく、その専有部分を占有する権原を有する者にこれを引き渡さなければならない。 」 とあり、
 1項によれば、占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求するには、集会の決議に基づき、訴えをもってします。



 1 一つ
 2 二つ
 3 三つ
 4 四つ


答え:3 集会の決議に基づき、訴えをもってするのは、ア、ウ、エ の3つ。  問題文をサラット読むと正解から外れます。


{設問-4} 平成28年 マンション管理士試験 「問10」

〔問 10〕マンション内で共同利益背反行為を行っている占有者に対して、区分所有者の全員が集会の決議により訴えを提起しようとする場合に関する次の記述のうち、区分所有法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。


1 専有部分を賃借している占有者の共同利益背反行為による共同生活上の障害が著しく、行為の停止を求める請求によってはその障害を除去して共同生活の維持を図ることが困難であるときは、賃借人に対し、相当の期間の賃借人による専有部分の使用の禁止を請求することができる。

X 誤っている。 行為の停止等では問題が解決できない賃借人(占有者)に対しては、もう使用禁止はなく、専有部分の引渡ししかない。 
 平成26年 マンション管理士試験 「問8」 、平成24年 マンション管理士試験 「問26」 、 平成21年 マンション管理士試験 「問10」 、 平成13年 マンション管理士試験 「問5」 。 平成28年 管理業務主任者試験 「38」 でも出ている。

  マンション生活では、戸建てと異なって密着した共同生活があるため、「共同の利益背反行為(区分所有法第6条参照)」をするとその義務違反者に対して
   @行為の停止等(区分所有法第57条参照)
   A使用の禁止(区分所有法第58条参照)
   B区分所有権の競売(区分所有法第59条参照)
  の請求が認められ、占有者に対しても、行為の停止を求めることはできますが(区分所有法第57条4項参照)、行為の停止を求める請求によってはその障害を除去して共同生活の維持を図ることが困難であるときとなると、区分所有者なら、使用の禁止の方法(区分所有法第58条)も認められていますが、占有者に対しては、使用の禁止の方法はなく、専有部分の引渡し請求(区分所有法第60条参照)となりますから、誤りです。

 参考:、区分所有法第60条
 
「(占有者に対する引渡し請求)
 第六十条  
第五十七条第四項に規定する場合において、第六条第三項において準用する同条第一項に規定する行為による区分所有者の共同生活上の障害が著しく、他の方法によつてはその障害を除去して共用部分の利用の確保その他の区分所有者の共同生活の維持を図ることが困難であるときは、区分所有者の全員又は管理組合法人は、集会の決議に基づき、訴えをもつて、当該行為に係る占有者が占有する専有部分の使用又は収益を目的とする契約の解除及びその専有部分の引渡しを請求することができる。
 2  第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、第五十八条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
 3  第一項の規定による判決に基づき専有部分の引渡しを受けた者は、遅滞なく、その専有部分を占有する権原を有する者にこれを引き渡さなければならない。」

 

2 占有者が専有部分の転借人であるときに、専有部分の賃貸借契約を解除し、専有部分の引渡しを請求するためには、転貸人と転借人に加え、原賃貸人である区分所有者を共同被告として、訴えを提起しなければならない。

X 誤っている。 正当な方法による転借契約なら、転貸人と転借人が共同被告で、原貸主である区分所有者は、被告にはならない。

 平成24年 マンション管理士試験 「問26」 。
 
 選択肢1で参考にしました、区分所有法第60条により、専有部分の賃貸借契約を解除し、専有部分の引渡しを請求するためには、転貸借(また貸し)の場合には、問題を起こしている占有者は、転借人となりますから、この場合には、転貸人と転借人との契約の解除が必要となります。そこで、共同被告は、転貸人と転借人になり、元の区分所有者(賃貸人)は、該当しませんから、誤りです。


3 専有部分を区分所有者から賃借している占有者に対して、原告ではなく、賃貸人である区分所有者に対して専有部分を直接に引き渡すよう求めることはできない。

〇 正しい。 

  裁判の判決で求めるのは、賃貸借契約の解除と、原告(管理組合等)に、その専有部分の引渡しを求めることになりますから、賃貸人である区分所有者に対して専有部分を直接に引き渡すよう求めることはできず、正しい。
  それでは、賃貸人である区分所有者に専有部分が戻ってこないではないかという疑念がわけば、あなたは、かなり勉強をしています。
 その疑念に対して、区分所有法第60条3項
 「3  第一項の規定による判決に基づき専有部分の引渡しを受けた者は、遅滞なく、その専有部分を占有する権原を有する者にこれを引き渡さなければならない。」
 とあり、
 この規定により、その専有部分を占有する権原を有する者である賃貸人(区分所有者)に専有部分が引き渡されます。
 なお、転貸借なら、転貸人に引き渡されます。



4 区分所有者及び区分所有者から専有部分を賃借している占有者に対して、専有部分の賃貸借契約を解除し、専有部分の引渡しを求める訴えを提起するための決議をするには、あらかじめ区分所有者に対して弁明の機会を与えなければならない。

X 誤っている。 弁明の機会は、問題を起こしている占有者与えればよく、区分所有者には与えなくてよい。

 平成28年 管理業務主任者試験 「問38」  、平成25年  管理業務主任者試験 「問39」 、 平成24年 マンション管理士試験 「問26」  平成22年 管理業務主任者試験 「問30」 、 平成14年 マンション管理士試験 「問5」 。

 区分所有法第60条2項に
 「2  第五十七条第三項の規定は前項の訴えの提起に、第五十八条第二項及び第三項の規定は前項の決議に準用する。
 とあり、
 準用されている第57条3項は
 「管理者又は集会において指定された区分所有者は、集会の決議により、第一項の他の区分所有者の全員のために、前項に規定する訴訟を提起することができる。」
 で、
 第58条2項及び3項とは
 「2 前項の決議は、区分所有者及び議決権の各四分の三以上の多数でする。
  
3 第一項の決議をするには、あらかじめ、当該区分所有者に対し、弁明する機会を与えなければならない
 です。
 弁明の機会は、第58条3項が該当します。
 この条文は、占有者が対象で、この決議(契約解除や室の引渡し)に際しては、占有者に弁明の機会はあたえても、義務違反をしていない区分所有者に弁明の機会を与える必要ない、というのが 昭和62年7月17日の最高裁判所の判例 ですから、あらかじめ区分所有者に対して弁明の機会を与える必要はなく、誤りです。



答え:3

《タグ》区分所有法。 共同利益背反。 賃貸借。 転貸借。 弁明の機会。
    ここは、過去問題をやっていれば、易しい


 *ある受験生の感想:選択肢4を選んだ。選択肢4で


◎まとめ
第57条(行為の停止)、第58条(使用禁止の請求)、第59条(区分所有権の競売請求)、第60条(占有者に対する引渡し請求)の関係。

◎ 義 務 違 反 者 に 対 す る 措 置
条文 内容 対象者 裁判 訴えの決議 弁明の機会
第57条 行為の停止 区分所有者、占有者 外、上 過半数(普通決議) 共に与えなくていい
第58条 使用禁止 区分所有者だけ 3/4以上(特別多数決議) 区分所有者に与える
第59条 競売 区分所有者だけ 3/4以上(特別多数決議) 区分所有者に与える
第60条 引渡し 占有者だけ 3/4以上(特別多数決議) 占有者に与える

ページ終わり

謝辞:Kzさんの了解により一部転用・編集をしています。

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最終更新日:
2026年 2月13日:
令和8年4月1日施行版と標準管理規約は、令和7年10月17日版に合わせた。
2025年 5月31日〜:令和8年4月1日施行版に移行中
2025年 2月24日:標準管理規約を令和6年6月7日版に更新した。
2025年 2月11日:令和6年(2024年)の出題年を入れた。
2024年12月20日:第59条2項(弁明の機会)に認知症の裁判例を入れた。
2024年 9月3日:見直した。第58条に図を入れた。
2024年 2月 4日:令和5年(2023年)の出題年を入れた。
2024年 2月1日:見直した。リンク先変更した。
2023年 2月23日:令和4年(2022年)の出題年を入れた。
2022年12月 9日:また、見直した。
2022年 1月26日:法律など更新した。
標準管理規約と同コメントは、令和3年6月22日版にした。
2021年 3月23日:見直した。
2021年 3月 6日:令和2年(2020年)の出題年を入れた。
2020年 3月29日:令和元年(2019年)の出題年を入れた。
2019年 4月17日:平成30年の出題年を入れた。
2018年 3月13日:平成29年の出題年を入れた。
2017年 4月 4日:平成28年の出題年を入れた。
2016年 4月10日:3月14日付の標準管理規約の改正に対応した。
2016年 2月24日;平成27年の出題年を入れた。
2015年 4月 5日:平成26年の出題年を入れた。
2014年 2月23日:平成25年の出題年を入れた。
2013年 7月 1日:再度、確認した。
2013年 5月14日:第60条に判例などを入れた。
2013年 4月 7日:再度、ちょろちょろと検討した。
2013年 3月24日:平成24年の出題年を入。
2013年 3月 6日: 第59条に競売での民事執行法での扱いを入。
2012年12月24日:第60条に「転貸借」の関係を入。
2012年 3月 5日;平成23年の出題など入。
2011年 7月25日:第60条再校正
2011年 7月24日:かなり加筆
2011年 1月15日:平成22年の出題記入
2010年6月20日:第60条を加筆
2010年6月20日:第59条までをちょろちょろと加筆
2010年1月23日:H21年の出題年を記入
2009年6月23日:段落程度の加筆

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