★★       条 文 の 解 説        ★★

建物の区分所有等に関する法律

(この解説においては、略称:区分所有法 と言う)

第1章 建物の区分所有 第 10  節 復旧及び建替え 

第六十四条の二 賃貸借の終了請求 *新設
第六十四条の三 使用貸借の終了請求 *新設
第六十四条の四 配偶者居住権の消滅請求 *新設
   
第六十四条の五 建物更新決議 *新設
第六十四条の六  建物敷地売却決議 *新設
第六十四条の七 建物取壊し敷地売却決議 *新設
第六十四条の八  取壊し決議 *新設

[-b-2.第64条の2(賃貸借の終了請求)から 第64条の8(取壊し決議) まで

マンション管理士・管理業務主任者を目指す方のために、区分所有法を条文ごとに解説しました。 

試験問題は、過去の問題から出されるのではありません。条文から出題されます。

条文を勉強することが、合格への道です。

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凡例:各条文は、黒字にて表示。解説は条文の下に緑字にて表示
 

(賃貸借の終了請求)

第六十四条の二 (注:令和8年4月1日施行で改正あり。新設。)

1項 建替え決議があつたときは、建替え決議に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)若しくはこれらの者の全員の合意により賃貸借の終了を請求することができる者として指定された者又は賃貸されている専有部分の区分所有者は、当該専有部分の賃借人に対し、賃貸借の終了を請求することができる。

過去出題 マンション管理士
管理業務主任者

*新設

 令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、ここ(第64条の2:賃貸借の終了請求)から、第64条の8:取壊し決議までは、新設された条文です。

施行は、令和8年4月1日。

★令和8年4月1日施行で新設された理由 〜@賃貸借の終了請求、A使用貸借の終了請求、B配偶者居住権の消滅請求について〜

 国土交通省の調査(令和5年度)では、築年数が古いマンション程、賃貸率が高い現状があります。


   

 しかし、基本的に、区分所有法における「建替え決議」は、建替えに賛成した各区分所有者にはその効力が及びますが、区分所有権=専有部分(室)に設定された融資のローンでの担保や、専有部分(室)を貸している場合(賃貸借)に、その借り手(賃借人)には及ばないと解されています。

★建替え決議がされた場合の”担保権”の取扱い  → 令和8年4月1日施行の改正に入れない

  区分所有権(専有部分)に設定された抵当権その他の担保権も、建替え決議があったとしても引き続き存続します。そして、担保権の目的である建物の取壊しは、担保権に基づく妨害予防請求としての工事差止請求の対象となり得えます。 

 この、担保権を消滅させない限り、建替えを実施することが困難になるという点については、令和8年4月1日施行の改正の対象となっている賃借権、使用貸借や配偶者居住権と同様です。
 その意味で、建替え決議があった場合に担保権を消滅させる仕組みを令和8年4月1日施行でも検討したのですが、担保権にあっては、債務者である区分所有者や、建替えを推進する第三者(建替え賛成者)が、担保権者に対して弁済をして担保権を消滅させることが可能であるため(第三者の弁済につき民法474条)、新たな規律を導入する必要はないと判断したとのことです。

<参照> 民法 第474条

(第三者の弁済)
第四百七十四条 債務の弁済は、第三者もすることができる。

2 弁済をするについて正当な利益を有する者でない第三者は、債務者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは、この限りでない。

3 前項に規定する第三者は、債権者の意思に反して弁済をすることができない。ただし、その第三者が債務者の委託を受けて弁済をする場合において、そのことを債権者が知っていたときは、この限りでない。

4 前三項の規定は、その債務の性質が第三者の弁済を許さないとき、又は当事者が第三者の弁済を禁止し、若しくは制限する旨の意思表示をしたときは、適用しない。


★@「賃貸借」とA「使用貸借」とB「配偶者居住権」は終わらせる(消滅)請求ができる

 令和8年4月1日施行の改正区分所有法では、上で延べた担保権の方には手を付けなかったのですが、
  @賃貸借・・・第64条の2
  A使用賃借・・・第64条の3
  B配偶者居住権・・・第64条の4
 については、新しく終了や消滅を求める(請求)ことができるという規定を新設しました。

  Aの使用賃借とは・・・当事者の一方(貸主)が無償で物を貸し、もう一方の当事者(借主)がその物を無償で使用・収益し、契約が終了したときに返還することを約束する契約のことです(民法第593条)。
   対価を支払う賃貸借と異なり「無償」がキーです。

<参照> 民法 第593条

第六節 使用貸借

(使用貸借)
第五百九十三条 使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。


  Bの配偶者居住権とは・・・2020年(令和2年)4月1日に施行された改正民法によって新設された権利です。
   新設された理由は、配偶者(夫または妻)が亡くなった被相続人が所有する建物に住んでいた場合、たとえその建物の所有権を相続しなかったとしても、その建物に引き続き住み続けられるようにするための制度です。(民法第1028条〜)
   この制度は、残された配偶者が住み慣れた家で生活を続けられるようにし、また、老後の生活資金を確保しやすくすることを目的としています。

<参照> 民法 第1028条

第八章 配偶者の居住の権利  第一節 配偶者居住権

配偶者居住権
第千二十八条 被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
   一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
   二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。

2 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。

3 第九百三条第四項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。

   

★建替え決議と賃貸借の関係
 

 上で述べたように、区分所有法における「建替え決議(第62条〜)」は、建替えに賛成した区分所有者にはその効力が及びますが、専有部分(室)を貸している場合(賃貸借)に、その借り手(賃借人)には建替えの決議の効力が及ばないとなると、建替え決議に基づいて建替えが行われる際には、専有部分の賃借人は、建物賃借権に基づいて、占有(正当に借りて住んでいる)を妨害しているのでそれを停止してと、建替え工事の差止めを請求することができると解され(民法第605条の4)、賃借人から建替え工事をさせないと主張されると、建替えを実施することができないことになります。

<参照> 民法 第605条の4 

(不動産の賃借人による妨害の停止の請求等)
第六百五条の四 不動産の賃借人は、第六百五条の二第一項に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。
   一 その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求
   二 その不動産を第三者が占有しているとき その第三者に対する返還の請求

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 注:引用されている 民法 第605条の2 1項

(不動産の賃貸人たる地位の移転)

第六百五条の二 前条、借地借家法(平成三年法律第九十号)第十条又は第三十一条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。

 (以下、略)
 

  また、賃貸借期間の定めがあり、その期間の満了時期(終期)が、相当先にある場合には、契約期間の途中でも貸主(区分所有者)から解約できるという中途解約権が留保されているときを除き、その終期に至るまでは、借主との合意による以外に賃貸借契約を終了させる方法はありません。

 一方、建替え決議が成立すれば、賃貸人(貸主)たる区分所有者は、現存する建物の明渡義務(区分所有法第63条)を履行するため、明渡期日までに賃借人(借主)に明渡しを求めることになりますが、賃借人は、このような明渡請求に応じない場合があります。
 そのため、賃貸人としては、みずからの明渡義務を円滑に履行するうえで、その明渡期日に先立って賃貸借関係を終了させなければなりません。

★賃貸借契約の「貸主」からの解除方法

  貸主(大家)からの賃貸借契約の解除方法は、契約期間を定めていない場合と、期間を定めている場合に別れます。 
 1.期間の定めがない場合
   ・貸主は借主へ「解約の申入れ」を行います。
   ・原則として、解約申入れから6ヶ月が経過した時点で契約が終了します(借地借家法第27条)が、これには「正当事由」が必要です。(借地借家法第28条)
    正当事由がない場合、法定更新により契約が自動的に更新されます。
   ・貸主の解約申入れ後も借主が建物の使用を継続している場合は、貸主は遅滞なく異議を述べる必要があります。
 2.期間の定めがある契約の場合
   ・貸主は契約期間満了の1年前から6ヶ月前までに「更新拒絶通知」を借主に出す必要があります。(借地借家法第26条、第27条)
   ・この場合も「正当事由」が必要です。(借地借家法第28条)
   ・定期借家契約の場合は、原則として契約期間満了により更新されずに終了します。(借地借家法第38条)

 賃貸借を無くすには、賃借人が明渡に納得して合意解除に応じるか、または、借地借家法第28条で定める賃貸人(大家)からの「更新拒絶・解約申入れの正当事由」が認められれば、賃貸借関係は終了して、専有部分(室)から賃借人を排除できます。

<参照> 借地借家法 第28条 (注:〇印は 香川が記入)

(建物賃貸借契約の更新拒絶等の要件)
第二十八条 建物の賃貸人による第二十六条第一項の通知又は建物の賃貸借の解約の申入れは、
 @建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情のほか、
 A建物の賃貸借に関する従前の経過、
 B建物の利用状況及び建物の現況並びに
 C建物の賃貸人が建物の明渡しの条件として又は建物の明渡しと引換えに建物の賃借人に対して財産上の給付をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して、
 正当の事由があると認められる場合でなければ、することができない

 この借地借家法第28条で定める「正当な事由」要件には、次の4つの判断基準があります。
  @賃貸人と賃借人の建物使用の必要性・・・ 賃貸人が建物の使用を必要とする事情と、賃借人が建物を失うことで生活や営業に支障が出る事情を比較検討します。
  A賃貸借契約の今までの経過・・・ 賃料の不払い、無断改装、乱暴な使用方法など、これまでの契約期間中における経緯が考慮されます。
  B建物の利用状況と現況・・・ 建物の老朽化や建替えの必要性など、建物の現状や利用状況も判断材料となります。
  C立退料の支払い・・・ 引っ越し費用や新しい物件の家賃や敷金礼金などの支払です。店舗の場合は移転に伴う営業補償も入ります。
   正当事由が不十分な場合でも、賃貸人が充分な立退料を支払うことで、契約を終了させる余地があります。立退料は、正当事由を補完する要素として考慮されます。

  これらの判断基準は、単独ではなく、相互に関連して総合的に評価されます。

 そこで、マンションなどの区分所有建物が老朽化しているとか、耐震性を欠くとかの客観的な理由から建替えの必要性を訴えても、「正当な事由」の判断は、ケースバイケースであるため常に賃貸人からの「更新拒絶・解約申入れ」が成立するとは保証されていません。

 このような状況から、専有部分にある賃借は、区分所有建物の円滑な建替えの支障となっているとの指摘があるそうです。

★法制審議会のメンバーには、借家人が入っていない?

  私に言わせれば、賃貸借が円滑な(?)建替えを阻むというのは、建替えをしたい人からの一方的な主張で、ここは、賃借人(借り手)がどうして、追い出しに反対するのかを深く考えていないと思えます。

 例え借家のマンション生活といえども、そこに住んでいれば、子供は学校に通っているだろうし、また、住民として密接な地元との付き合いなどもある。
 その住み慣れた家を追い出されるために、子供には転校に伴うストレスなどを与えることもあるでしょう。
 今まで培ってきた「居住の権利=居住権」を奪うことには、もっと、もっと借家人の立場による慎重な思考方法が必要です。

 また、ローンでの担保や賃貸借関係を結んだ区分所有者が自分の責任においてこれらを解決できないのは、その区分所有者がただマンションの管理に感心がなくて建替えの時期が来るまでそれらを放置した結果だと思いますが、法制審議会には、面倒見のいい優しい人もいるようです。

 ★賃借人と大家(UR都市再生機構)との、裁判闘争の記録

  現実に大家であるUR都市再生機構と、賃借人(金町団地の居住者)が建替えで裁判になりました。
  追い出しを強制された物を言えない高齢者や弱者の保護がいかに必要かが分かります。

  参考: 「公団住宅 金町団地の建替え闘争

★立ち退き料(補償金)が充分なら、立ち退きに応じやすい

 借地借家法第28条での「判断基準」のC「立退料の支払い」は、賃貸借を話し合いで終了させるには、重要な事項です。
 建替えで、引っ越しを要求された借主にとって、引っ越し費用や新たな物件を探す労力、時間、精神的負担(慰謝料)、家賃の差額などを充分に補償してくれれば、終了前の賃貸借を終期前であっても終わらすのに有力な要因にはなります。

 そこで、新しく設けられた区分所有法第64条の2 3項では、

 <参照> 区分所有法 第64条の2 3項だけ

3 第一項の規定による請求があつたときは、当該専有部分の区分所有者は、当該専有部分の賃借人(転借人を含む。第五項において同じ。)に対し、賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償金を支払わなければならない

 として、賃借人は、賃貸借が終了することによって「通常生じる損失」を受け取ることができ、この補償金があるまで、引っ越しをしなくていい(5項)ことになっています。

★通常生じる補償金は、どうやってきめる?

  賃貸借の終了により「通常生ずる損失の補償金」とは、通常「立ち退き料」とも言われているもので、具体的には、
   1.引っ越し費用...移転にかかる実費
   2.家賃差額の補償...新しい物件の家賃が以前より高くなる場合の差額分
   3.借家権補償...借りている物件を利用する権利を手放すことへの補償
   4.慰謝料... 立ち退きに伴う精神的・労力的な負担に対する補償
   4.営業補償・休業補償...店舗や事務所など 事業用物件の場合、移転による休業期間中の損失や、営業に関する補償
  などが考えられます。

  ◎借家人に対する引っ越し費用や家賃差額は「借家人補償」とも呼ばれます。
  具体的には、
   @家賃差額補償 及び
   A一時金に係る補償
  に区分されます。

  @家賃差額補償は、立ち退きによって引っ越す必要のある借家人に対し、新しい物件の家賃と現在の家賃の差額を一定期間補償します。
   支払賃料における「標準的」な家賃相当額と現在家賃との差額の一定期間(従前の建物との家賃差に応じて、家賃差が2倍以下の場合は2年、2倍超3倍以下の場合は3年、3倍超の場合は4年)分の補償です。
  A一時金に係る補償は、新たに物件を賃借するための契約を締結するのに通常要する費用(敷金や礼金)等(一時金に係る補償)の補償です。

  具体的には、現在の実際支払賃料と、同程度の代替建物等の賃借の際に必要とされる新規の実際支払賃料との差額を基礎として算定が行われます。
  この考え方によれば、現在の実際支払賃料が新規の実際支払賃料よりも低額であればあるほど、賃借人が喪失することになる経済的利益が高額になります。

 ◎借家権補償
 借家権というのも算定が難しい内容です。
 相続税の課税の際の財産評価においては、借家権は、その目的となっている家屋の価額に借家権割合を乗じて計算した価額によって評価することとされており、その借家権割合は、全国一律30パーセントとされています。
 これは、他者に貸し出されている建物(賃貸建物)には借家権という権利が発生し、その借家権の分だけ相続税評価額を減額できる、という考え方に基づいています。

  1の引っ越し費用: 移転にかかる実費 や、2の家賃差額の補償: 新しい物件の家賃が以前より高くなる場合の差額分などの金額は算定しやすいのですが、3の借家権補償 や、4の移転での慰謝料や 5の営業している場合などでの補償となると、様々な考え方があり算出が難しくなります。

 そこで、賃貸借の終了により「通常生ずる損失の補償金」については、公共事業での土地収用で土地所有者や関係者が被る損失に対して、適切かつ円滑に補償を行うための統一的な基準として「中央用地対策連絡協議会(用地対策連絡会)」が定めた「公共用地の取得に伴う損失補償基準(用対連基準)」の「借家人が受ける補償(通損補償)と同じレベルを採用したようです。

 公共用地の取得に伴う損失補償基準の
  ・第31条・・・動産移転料
  ・第34条・・・借家人に対する補償 
  ・第37条・・・移転雑費
  ・第43条・・・営業廃止の補償
  ・第44条・・・営業休止等の補償
  などが採用されます。

<参照> 公共用地の取得に伴う損失補償基準 (注:抜粋)

         昭和37年10月12日  用地対策連絡会決定
         最近改正 令和2年1月31日

(動産移転料)
第31条土地等の取得又は土地等の使用に伴い移転する動産に対する補償については、第28条第1項前段に規定する建物等の移転に係る補償の例による。

---------------------------------------------------
  (注:引用されている 第28条)

 (建物等の移転料)
第28条 土地等の取得又は土地等の使用に係る土地等に建物等(立木を除く。以下この条から第30条まで及び第42条の2において同じ。)で取得せず、又は使用しないものがあるときは、当該建物等を通常妥当と認められる移転先に、通常妥当と認められる移転方法によって移転するのに要する費用を補償するものとする
 この場合において、建物等が分割されることとなり、その全部を移転しなければ従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、当該建物等の所有者の請求により、当該建物等の全部を移転するのに要する費用を補償するものとする。
 

第34条
借家人に対する補償
第34条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い建物の全部又は一部を現に賃借りしている者がある場合において、賃借りを継続することが困難となると認められるときは、その者が新たに当該建物に照応する他の建物の全部又は一部を賃借りするために通常要する費用を補償するものとする。
2 前項の場合において、従前の建物の全部又は一部の賃借料が新たに賃借りする建物について通常支払われる賃借料相当額に比し低額であると認められるときは、賃借りの事情を総合的に考慮して適正に算定した額を補償するものとする。


移転雑費
第37条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い建物等を移転する場合又は従来の利用目的に供するために必要と認められる代替の土地等(以下「代替地等」という。)を取得し、若しくは使用する場合において、移転先又は代替地等の選定に要する費用、法令上の手続に要する費用、転居通知費、移転旅費その他の雑費を必要とするときは、通常これらに要する費用を補償するものとする

2 前項の場合において、当該建物等の所有者、借家人及び配偶者居住権を有する者又は当該代替地等を必要とする者が就業できないときは、第44条、第47条及び第51条に規定するものを除き、それらの者が就業できないことにより通常生ずる損失を補償するものとする。


第3節 営業補償
(営業廃止の補償)
第43条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常営業の継続が不能となると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。
   一 免許を受けた営業等の営業の権利等が資産とは独立に取引される慣習があるものについては、その正常な取引価格
   二 機械器具等の資産、商品、仕掛品等の売却損その他資本に関して通常生ずる損失額
   三 従業員を解雇するため必要となる解雇予告手当相当額、転業が相当と認められる場合において従業員を継続して雇用する必要があるときにおける転業に通常必要とする期間中の休業手当相当額その他労働に関して通常生ずる損失額
   四 転業に通常必要とする期間中の従前の収益相当額(個人営業の場合においては従前の所得相当額)

2 前項の場合において、解雇する従業員に対しては第62条の規定による離職者補償を行うものとし、事業主に対する退職手当補償は行わないものとする。


(営業休止等の補償)
第44条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常営業を一時休止する必要があると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。
   一 通常休業を必要とする期間中の営業用資産に対する公租公課等の固定的な経費及び従業員に対する休業手当相当額
   二 通常休業を必要とする期間中の収益減(個人営業の場合においては所得減)
   三 休業することにより、又は店舗等の位置を変更することにより、一時的に得意を喪失することによって通常生ずる損失額(前号に掲げるものを除く。)
   四 店舗等の移転の際における商品、仕掛品等の減損、移転広告費その他店舗等の移転に伴い通常生ずる損失額

2 営業を休止することなく仮営業所を設置して営業を継続することが必要かつ相当であると認められるときは、仮営業所の設置の費用、仮営業であるための収益減(個人営業の場合においては所得減)等並びに前項第3号及び第4号に掲げる額を補償するものとする。

◎賃貸借の終了を請求できる人 〜請求権者

  それでは、規定の内容を、条文に従って見ていきましょう。

  

 前置きが長くなったので、もう一度、区分所有法第64条の2 1項の条文を確認します。

<参照> 区分所有法 第64条の2 1項 (注:〇印は、注釈用に香川が添付した。)

(賃貸借の終了請求)
第六十四条の二 建替え決議があつたときは、
@建替え決議に賛成した各区分所有者 若しくは
A建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。) 若しくは
Bこれらの者の全員の合意により賃貸借の終了を請求することができる者として指定された者 又は
C賃貸されている専有部分の区分所有者 は、
当該専有部分の賃借人に対し、賃貸借の終了を請求することができる。

 先ずは、「建替え決議」(第62条)があり、その区分所有建物の専有部分(室)に賃貸借があれば、その賃貸借の終了を請求(求めること)できる人は、
  @建替え決議に賛成した区分所有者(承継人も含む)
  A後からの建替え参加者(承継人も含む)
  B建替え賛成者全員から賃貸借の終了を請求できる者として指定された者
  C賃貸にしている区分所有者
  となっています。

 注:承継人とは...相続人(一般承継人/包括承継人)、または売買や競売で区分所有権を得た人(特定承継人)

◎@とA建替え決議に賛成した区分所有者(後からの建替え参加者やその承継人も含む)

 第64条の2 1項では、建替え決議があれば、賃貸借の終了請求ができるのは、
  @建替え決議に賛成した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)
  A建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)
 となっています。

 本来なら、第一番目にC番目の賃貸にしている区分所有者が当事者として賃貸借終了を請求する人として規定の順番の最初に来るべきだと思いますが、第64条の2 1項では、賃貸にしている区分所有者は最後の四番目に列挙されています。

 これを規定した創案者の意図としては、建替え決議は、区分所有者の相当多数による「団体的な意思決定」により、専有部分の取壊しを伴う建物の更新を行うためのものであり、建替え決議がされた場合には、「区分所有者全体の利益」のために、特定の専有部分の賃借権を消滅させることが必要と考えて、賃貸に出した区分所有者個人よりも建替え賛成者の団体が先に行動すべきと考え、一番目に「建替え決議に賛成した各区分所有者」としたようです。

 また、建替え賛成者で賃貸に出した区分所有者がこの「賃貸借の終了請求」をしない場合も考えられるため、区分所有法第64条の建替え賛成者が全員建替えに賛成しているという「みなし合意」に基づく権利を被保全債権として、他の区分所有者が賃借権消滅請求権を代位行使(民法第423条)する発想です。 

<参照> 民法 第423条

第二款 債権者代位権

(債権者代位権の要件)
第四百二十三条 債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。

2 債権者は、その債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使することができない。ただし、保存行為は、この限りでない。

3 債権者は、その債権が強制執行により実現することのできないものであるときは、被代位権利を行使することができない。


 この建替えに賛成した区分所有者の団体から、まず「賃貸借の終了」をさせるべきとの考え方から、
  @建替え決議に賛成した区分所有者(承継人も含む)
  A後からの建替え参加者(承継人も含む)
 が「賃貸借の終了請求」ができると規定しています。

◎B建替え賛成者全員から賃貸借の終了を請求できる者として指定された者

 当該専有部分の賃借人に対し、賃貸借の終了を請求することができる三番目に
  @建替え決議の(当初からの)賛成者(承継人を含めて)
  A建替えに(後からの)参加回答者(承継人を含めて)
  これら、@Aの全員の合意により賃貸借の終了を請求することができる者として指定された者も「賃貸借の終了請求」ができるといっています。


 この指定を受ける場合には、必ず建替え賛成集団の「多数決」ではなく、建替え決議に最初からの賛成者と後からの建替えに参加を表明した人たち「全員の合意」が必要です。

 指定を受ける者として、通常考えられるのは、建替えに賛成した集団の代表者ですが、指定された者については、その条件が特定されていませんから、ここは区分所有者でなくても、建替えに参加した法人のデベロッパーでも、建替え賛成者(承継者人を含めて)全員の合意で指定されれば、「賃貸借の終了請求」ができるということです。

◎C賃貸にしている区分所有者

 最後になりましたが、賃貸にだしている区分所有者も、「賃貸借の終了請求」ができます。
 

★賃貸借の終了請求を受けた後 → 引っ越し費用などを受け取って6ヶ月で出て行く

 これら4つのタイプ
  @建替え決議に賛成した区分所有者(承継人も含む)
  A後からの建替え参加者(承継人も含む)
  B建替え賛成者全員から賃貸借の終了を請求できる者として指定された者
  C賃貸にしている区分所有者
 の請求権者から「賃貸借の終了請求」 を受けた該当の専有部分の賃貸借は、請求をうけた日から6ヶ月(初日不算入)が過ぎれば終了します(第64条の2 2項)が、終了に対して賃借人は、引っ越し費用など「通常生ずる損失の補償金」を受け取ります。(第64条の2 3項)
 この引っ越し費用などを支払うのは、賃貸借の当事者である賃貸に出した区分所有者です。(第64条の2 3項)
 ただし、賃貸に出した区分所有者以外の建替え賛成者や建替え賛成者全員から指定された者も「賃貸借の終了請求」 ができますから(第64条の2 1項)、建替え賛成者や建替え賛成者全員から指定された者が賃貸に出した区分所有者よりも先に「賃貸借の終了請求」をした場合には、その「賃貸借の終了請求」をした者と賃貸に出した区分所有者は、引っ越し費用などを「連帯」して、支払の責任があります。(第64条の2 4項)
 もしも、引っ越し費用などが、「賃貸借の終了請求」をうけて6ヶ月までに支払わなければ、賃借人は、その専有部分の引き渡しを拒めます。(第64条の2 5項)

 <参照> 民法 第436条

第四款 連帯債務

(連帯債務者に対する履行の請求)
第四百三十六条 債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。
 


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(賃貸借の終了請求)

第六十四条の二 (注:令和8年4月1日施行で改正あり。新設。)

2項 前項の規定による請求があつたときは、当該専有部分の賃貸借は、その請求があつた日から六月を経過することによつて終了する。

過去出題 マンション管理士
管理業務主任者

  令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、新設された条文です。

施行は、令和8年4月1日。

 

◎前項の規定=第64条の2 1項(賃貸借の終了請求) を指す。

★賃貸借は、請求があった日から6ヶ月後(初日不算入)に終了する

 建替え決議があり、ある専有部分に賃貸借があると、賃借人は、
  @建替え決議に賛成した区分所有者(承継人も含む)
  A後からの建替え参加者(承継人も含む)
  B建替え賛成者全員から賃貸借の終了を請求できる者として指定された者
  C賃貸にしている区分所有者
  の一人から、賃貸借の終了の請求を受けます。(第64条の2 1項)

 この賃貸借の終了の請求を受けた日(初日不算入)から、6ヶ月が過ぎると、該当の賃貸借は終了するということです。
 この6ヶ月の間に、賃借人は、引っ越し費用など「損失補償金」を受け取って(第64条の2 3項)、専有部分(室)を明渡します。

 もしも、この賃貸借の終了の請求を受けた日から6ヶ月の間に、「損失補償金」の支払いがないときは、賃借人は、引っ越しを拒むことができます。(第64条の2 5項)

◎終了期間を「6ヶ月後」にした理由

 この法案の審議過程で、賃借人の利益を保護するために、建替え決議から賃貸借の終了までに一定の期間を確保しなければならないことは分かっていて、では、その期間を「6ヶ月」にするのか、それとも「1年」とするのかを検討したようです。

 そこで、借地借家法上、正当事由のある解約申入れであっても、賃貸借の終了までには最低6ヶ月の期間が確保されていること(借地借家法第27条)を参考に、「6ヶ月」とする考え方が採用されたとの事です。

 <参照> 借地借家法 第27条

(解約による建物賃貸借の終了)
第二十七条 建物の賃貸人が賃貸借の解約の申入れをした場合においては、建物の賃貸借は、解約の申入れの日から六月を経過することによって終了する

2 前条第二項及び第三項の規定は、建物の賃貸借が解約の申入れによって終了した場合に準用する。

  当然、賃借人にも生活があり、もし賃借部分が店舗」や「事務所」であると移転先を探したり、移転の案内など通常の人の引っ越しよりも時間と経費が必要になります。
 マンション管理士 香川 としては、この賃貸借の終了期間が請求後6ヶ月とは、短いと思います。


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(賃貸借の終了請求)

第六十四条の二 (注:令和8年4月1日施行で改正あり。新設。)

3項  第一項の規定による請求があつたときは、当該専有部分の区分所有者は、当該専有部分の賃借人(転借人を含む。第五項において同じ。)に対し、賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償金を支払わなければならない。

過去出題 マンション管理士
管理業務主任者

  令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、新設された条文です。

施行は、令和8年4月1日。

★賃貸にしている区分所有者は、賃借人(転借人)に「通常生ずる損失の補償金」を支払うこと

 借家人(賃借人)としては、自分の都合でなく、貸主(区分所有者)サイドの理由で、今まで生活をしていた建物から追い出し請求(賃貸借の終了請求)を受けるわけで、その生活や事業において大きな損失を被ることになります。その利益を保護するために、引っ越し費用や必要なら営業補償など、賃貸借の終了によって通常生じる「損失の補償金」を、賃貸に出している区分所有者から受け取ることができます。

 この場合、該当の専有部分(室)を賃借人が賃貸人(大家=区分所有者)の承諾を得て、さらに第三者(転借人)に貸している場合(民法第612条)は、その転借人も賃貸借の終了によって通常生じる「損失の補償金」を、賃貸に出している区分所有者から受け取ることができます。

 転貸借の場合の「損失の補償金」の算出は面倒だとは思いますが。

<参照> 民法 第612条 及び 第613条

(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。

2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。

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(転貸の効果)
第六百十三条 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。

2 前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。

3 賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。

◎引っ越し費用など補償金について

 専有部分の賃借消滅時の引っ越し費用などの補償金額をいくらにするかは、いろいろと検討が必要ですが、区分所有法では、上でも説明しました、賃貸借の終了により「通常生ずる損失の補償金」については、公共事業での土地収用で土地所有者や関係者が被る損失に対して、適切かつ円滑に補償を行うための統一的な基準として「中央用地対策連絡協議会(用地対策連絡会)」が定めた「公共用地の取得に伴う損失補償基準(用対連基準)」の「借家人が受ける補償(通損補償)と同じレベルを採用したようです。

 具体的には、公共用地の取得に伴う損失補償基準の
  ・第31条(動産移転料)
  ・第34条(借家人に対する補償) 
  ・第37条(移転雑費)
  ・第43条(営業廃止の補償)
  ・第44条(営業休止等の補償)
  などが採用されます。

<参照> 公共用地の取得に伴う損失補償基準 (注:抜粋)

         昭和37年10月12日  用地対策連絡会決定
         最近改正 令和2年1月31日

(動産移転料)
第31条土地等の取得又は土地等の使用に伴い移転する動産に対する補償については、第28条第1項前段に規定する建物等の移転に係る補償の例による。

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  (注:引用されている 第28条)

 (建物等の移転料)
第28条 土地等の取得又は土地等の使用に係る土地等に建物等(立木を除く。以下この条から第30条まで及び第42条の2において同じ。)で取得せず、又は使用しないものがあるときは、当該建物等を通常妥当と認められる移転先に、通常妥当と認められる移転方法によって移転するのに要する費用を補償するものとする
 この場合において、建物等が分割されることとなり、その全部を移転しなければ従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、当該建物等の所有者の請求により、当該建物等の全部を移転するのに要する費用を補償するものとする。
 

第34条
借家人に対する補償
第34条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い建物の全部又は一部を現に賃借りしている者がある場合において、賃借りを継続することが困難となると認められるときは、その者が新たに当該建物に照応する他の建物の全部又は一部を賃借りするために通常要する費用を補償するものとする。
2 前項の場合において、従前の建物の全部又は一部の賃借料が新たに賃借りする建物について通常支払われる賃借料相当額に比し低額であると認められるときは、賃借りの事情を総合的に考慮して適正に算定した額を補償するものとする。


移転雑費
第37条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い建物等を移転する場合又は従来の利用目的に供するために必要と認められる代替の土地等(以下「代替地等」という。)を取得し、若しくは使用する場合において、移転先又は代替地等の選定に要する費用、法令上の手続に要する費用、転居通知費、移転旅費その他の雑費を必要とするときは、通常これらに要する費用を補償するものとする

2 前項の場合において、当該建物等の所有者、借家人及び配偶者居住権を有する者又は当該代替地等を必要とする者が就業できないときは、第44条、第47条及び第51条に規定するものを除き、それらの者が就業できないことにより通常生ずる損失を補償するものとする。


第3節 営業補償
(営業廃止の補償)
第43条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常営業の継続が不能となると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。
   一 免許を受けた営業等の営業の権利等が資産とは独立に取引される慣習があるものについては、その正常な取引価格
   二 機械器具等の資産、商品、仕掛品等の売却損その他資本に関して通常生ずる損失額
   三 従業員を解雇するため必要となる解雇予告手当相当額、転業が相当と認められる場合において従業員を継続して雇用する必要があるときにおける転業に通常必要とする期間中の休業手当相当額その他労働に関して通常生ずる損失額
   四 転業に通常必要とする期間中の従前の収益相当額(個人営業の場合においては従前の所得相当額)

2 前項の場合において、解雇する従業員に対しては第62条の規定による離職者補償を行うものとし、事業主に対する退職手当補償は行わないものとする。


(営業休止等の補償)
第44条 土地等の取得又は土地等の使用に伴い通常営業を一時休止する必要があると認められるときは、次の各号に掲げる額を補償するものとする。
   一 通常休業を必要とする期間中の営業用資産に対する公租公課等の固定的な経費及び従業員に対する休業手当相当額
   二 通常休業を必要とする期間中の収益減(個人営業の場合においては所得減)
   三 休業することにより、又は店舗等の位置を変更することにより、一時的に得意を喪失することによって通常生ずる損失額(前号に掲げるものを除く。)
   四 店舗等の移転の際における商品、仕掛品等の減損、移転広告費その他店舗等の移転に伴い通常生ずる損失額

2 営業を休止することなく仮営業所を設置して営業を継続することが必要かつ相当であると認められるときは、仮営業所の設置の費用、仮営業であるための収益減(個人営業の場合においては所得減)等並びに前項第3号及び第4号に掲げる額を補償するものとする。

 
  


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(賃貸借の終了請求)

第六十四条の二 (注:令和8年4月1日施行で改正あり。新設。)

4項  第一項の規定による請求をした者(当該専有部分の区分所有者を除く。)は、当該専有部分の区分所有者と連帯して前項の債務を弁済する責任を負う。

過去出題 マンション管理士
管理業務主任者

 令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、新設された条文です。

施行は、令和8年4月1日。

 

◎前項の債務・・・第64条の2 3項=賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償金の支払債務

◎連帯して弁済する・・・賃貸借の終了請求をした人は、賃貸に出している区分所有者と共に「通常生ずる損失の補償金」債務全額を履行すべき義務を負う。
 賃借人(債権者)はそのうちの誰に対しても全額の履行を請求できる(民法第436条)

★賃貸借の終了請求をした者も、賃貸に出している区分所有者と「連帯」して、賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償金の支払をすること

 第64条の2 1項で、賃貸借の終了請求をできる人は、
  @建替え決議に賛成した区分所有者(承継人も含む)
  A後からの建替え参加者(承継人も含む)
  B建替え賛成者全員から賃貸借の終了を請求できる者として指定された者
  C賃貸にしている区分所有者
  となっています。

  賃貸借が終了してその負担から逃れるのは、賃貸に出している区分所有者ですが、令和8年4月1日施行の改正区分所有法では、専有部分の賃貸人である区分所有者が請求権を行使しない場合には、建替えが進まないおそれがあるため、建替え決議を「団体的な行為」として捉え、建替えを円滑に進めるために、賃貸借の終了請求ができる人を
  @建替え決議に賛成した区分所有者(承継人も含む)
  A後からの建替え参加者(承継人も含む)
  B建替え賛成者全員から賃貸借の終了を請求できる者として指定された者
 などとしました。

 本来なら、賃貸借を終了させることは、建替え決議に賛成した他の区分所有者が利益を得るわけではないことからすれば、賃貸人である区分所有者だけに負担させることが公平に適うと考えられますが、ここは、「賃貸借の終了を請求した人」も、請求責任者として、該当の専有部分の区分所有者と「連帯責任」を負い、補償金の支払義務があります。

 なお、該当の専有部分の区分所有者でないものが、補償金を支払った場合には、その人は、該当の区分所有者の対して、支払額の求償ができます。(民法第442条)

 ここを、連帯責任としたのは、該当の専有部分区分所有者に資力がないとか、破産者、行方不明の場合も考えられ、それでは、「建替え」が前に進まないことを考慮したのでしょう。

<参照> 民法 第436条

第四款 連帯債務

(連帯債務者に対する履行の請求)
第四百三十六条 債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。

 


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(賃貸借の終了請求)

第六十四条の二 (注:令和8年4月1日施行で改正あり。新設。)

5項  専有部分の賃借人は、第二項の規定により当該専有部分の賃貸借が終了したときであつても、前二項の規定による補償金の提供を受けるまでは、当該専有部分の明渡しを拒むことができる。 

過去出題 マンション管理士
管理業務主任者

  令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、新設された条文です。

施行は、令和8年4月1日。

 

◎第2項の規定・・・賃貸借は、賃貸借の終了請求があった日から(初日不算入)6ヶ月が過ぎると終了する

★通常生ずる損失の補償金が、賃貸借の終了請求があった日から6ヶ月過ぎても支払われないときは、明渡しを拒める。

 建替え決議があり、ある専有部分(室)が賃貸借になっていれば、その賃借人は、引っ越し費用など「通常生じる損失の補償金」を、賃貸人(区分所有者)や請求をした人などから受け取って、その専有部分から引っ越し(明渡す)をすることになります。

 その期間は、賃貸借の終了請求を受けた日から6ヶ月(初日不算入)までとなっています。(第64条の2 2項)
この6ヶ月までに、賃借人に対して「補償金」の提供がないと、当然、賃借人は、その専有部分から引っ越しをしなくていいということです。

 引っ越し費用など「通常生じる損失の補償金」の算出には時間がかかることもあり、また、「補償金額」によっては、賃貸人も金策出来ない状態もあるでしょうし、提案された補償金額に賃借人が納得できない時もあるでしょう。

 当事者間で、「補償金」について納得が行かないと、裁判で決着をつけることになりますが、裁判となると「6ヶ月」で判決がでるのは稀です。
 また、控訴(第二審)、上告(第三審)とまでいくとなると、もう、建替えに着手する時期が不明となる恐れがあります。

★賃貸借の補償を受けて、6ヶ月が過ぎても、賃借人が出て行かない時

 賃貸借の終了請求を受けて、6ヶ月以内に、ちゃんと補償額を受け取っても、その賃借人が、明渡をしない時には、該当の賃借人は、賃貸借契約終了しているにも係らず、居座る=不法占拠となり、裁判ともなります。

 その不法占拠中の家賃額は、賃貸人(大家)に返還することになります。

 簡単に引っ越しができない高齢者や生活保護受給者にとっては、6ヶ月は短い期間ですが、そこは、「補償額」を高くするなどで、やってくれというのが、創案者の考えでしょう。


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(使用貸借の終了請求)

第六十四条の三 (注:令和8年4月1日施行で改正あり。新設。)

 前条第一項及び第二項の規定は、専有部分が使用貸借の目的物とされている場合(民法第五百九十八条第一項又は第二項に規定する場合を除く。)について準用する。

過去出題 マンション管理士
管理業務主任者

 令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、「賃貸借の終了請求」や次の「配偶者居住権の消滅請求」と共に新設された条文です。

施行は、令和8年4月1日。

◎前条第1項及び第2項・・・第64条の2 1項 及び 2項

  <参照> 区分所有法 第64条の2 1項 及び 2項

賃貸借の終了請求
第六十四条の二 建替え決議があつたときは、建替え決議に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)若しくはこれらの者の全員の合意により賃貸借の終了を請求することができる者として指定された者又は賃貸されている専有部分の区分所有者は、当該専有部分の賃借人に対し、賃貸借の終了を請求することができる。

2 前項の規定による請求があつたときは、当該専有部分の賃貸借は、その請求があつた日から六月を経過することによつて終了する。

 

 令和8年4月1日施行の改正区分所有法で、「賃貸借の終了請求(第64条の2」)と共に新設されたのがこの「使用貸借の終了請求」 (第64条の3)と次の「配偶者居住権の消滅請求(第64条の4)です。

◎使用貸借とは

 使用貸借とは、民法第593条に定められている契約形態の一つで、当事者の一方(貸主)が相手方(借主)に対して物を無償で貸し、借りた側はその物を使用・収益した後に返還することを約束する契約です。

<参照> 民法 第593条

第六節 使用貸借

(使用貸借)
第五百九十三条 使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。

 使用貸借は、賃料などの対価が発生しない「無償契約」であることが特徴です。
また、貸主と借主の間に「個人的な信頼関係があること」が想定されており、親族間の車の貸し借りや、親が所有する土地に子が家を建てるケースなどが身近な例として挙げられます。


★ 使用貸借と賃貸借との違い

 使用貸借と賃貸借の最も大きな違いは、「有償か無償か」という点です。
 賃貸借は賃料の支払いが発生する有償契約であるのに対し、使用貸借は無償です。
 この無償性のため、使用貸借では借主の権利(使用借権)が賃貸借に比べて弱く、借地借家法のような借主を保護する法律の適用を受けません。

 そして、使用貸借の解除については、貸主からは、当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる、(民法第598条2項)ともなっています。

<参照> 民法 第598条

(使用貸借の解除)
第五百九十八条 貸主は、前条第二項に規定する場合において、同項の目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができる。

2 当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。

3 借主は、いつでも契約の解除をすることができる。

 建替え決議がなされても、建替え決議は、賃貸借の場合と同じように使用貸借の効力には影響を及ぼしませんから、建替え決議がなされたといっても、それは使用貸借をただちに終了させるものではありません。

 しかし、効力の弱い使用貸借の存在が建替えを阻害しているとの指摘は特にされていませんが、令和8年4月1日施行の改正区分所有法では、建替え決議があれば、新しく「使用貸借の終了請求」ができると規定しました。
 それが、第64条の3 の規定です

★使用貸借の終了請求ができるのは

 第64条の2 1項の準用により、使用貸借の終了請求をできる人は、賃貸借の終了請求と同様に、
  @建替え決議に賛成した区分所有者(承継人も含む)
  A後からの建替え参加者(承継人も含む)
  B建替え賛成者全員から賃貸借の終了を請求できる者として指定された者
  C賃貸にしている区分所有者
  となっています。

使用貸借の終了請求を受けたらその日から6ヶ月(初日不算入)までに引っ越しをすること 〜明渡は拒めない(6ヶ月後にはでていく)〜

  賃貸借の終了請求を定めた第64条の2 2項の準用により、該当の専有部分の使用貸借は、「請求があつた日(初日不算入)から6ヶ月を経過することによつて終了」しますから、それまでに引っ越ししないと、不法占拠となります。

★ただし、使用貸借では引っ越し費用=「補償金」はない

 使用貸借は賃貸借と異なり、「無償」ですから、引っ越し(明渡し)に伴う費用が必要でも、大家さんから「補償金」は出ません。

 注:香川コメント:いくら無償で借りているといっても、借りている人にも、その場所での生活があり、転居に伴う費用もは発生する。
 この規定では、借家人の権利=居住権がまったく考慮されていない。補償の規定は、もっと、検討が必要です。


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(配偶者居住権の消滅請求)

第六十四条の四 (注:令和8年4月1日施行で改正あり。新設。)

  第六十四条の二の規定は、専有部分に配偶者居住権が設定されている場合(民法第千三十五条第一項ただし書に規定する場合を除く。)について準用する。

過去出題 マンション管理士
管理業務主任者

  令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、「賃貸借の終了請求」や前の「使用貸借の終了請求」と共に新設された条文です。

施行は、令和8年4月1日。

 

◎配偶者居住権とは

 配偶者居住権とは、2020年(平成2年)4月1日に施行された民法改正によって新設された権利です。(民法第1028条〜第1041条)

<参照> 民法 第1028条

第八章 配偶者の居住の権利

第一節 配偶者居住権

配偶者居住権
第千二十八条 被相続人の配偶者(以下この章において単に「配偶者」という。)は、被相続人の財産に属した建物に相続開始の時に居住していた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、その居住していた建物(以下この節において「居住建物」という。)の全部について無償で使用及び収益をする権利(以下この章において「配偶者居住権」という。)を取得する。ただし、被相続人が相続開始の時に居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合にあっては、この限りでない。
   一 遺産の分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
    二 配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき。

2 居住建物が配偶者の財産に属することとなった場合であっても、他の者がその共有持分を有するときは、配偶者居住権は、消滅しない。

3 第九百三条第四項の規定は、配偶者居住権の遺贈について準用する。

  配偶者居住権制度が新設された理由は、亡くなった被相続人が所有する建物に配偶者(夫又は妻)が住んでいた場合、たとえ残された配偶者がその建物の所有権を相続しなかったとしても、配偶者は住んでいる建物に引き続き住み続けられるようにするための制度です。
  この制度は、夫又は妻が亡くなっても、後に残された配偶者が今まで住み慣れた家で継続した生活を続けられるようにし、また、老後の生活資金を確保しやすくすることを目的としています。
  配偶者居住権は原則として配偶者居住権を持った配偶者が亡くなるまで存続しますが、遺産分割協議や遺言、家庭裁判所の審判によって期間を定めることも可能です。

    

 ★ 配偶者居住権の性質と特徴は次のようになります。

   1.賃借権類似の権利・・・配偶者居住権は、賃借権に類似する法定の債権と位置付けられています。
   2.譲渡不可・・・配偶者居住権は、第三者に譲渡したり売却したりすることはできません。
     配偶者が死亡すると消滅し、相続の対象にもなりません。
   3.対象範囲・・・偶者居住権の効力は、居住建物の全部に及びます。
     たとえ配偶者が一部しか使用していなかった場合でも同様です。
   4.登記の必要性・・・配偶者居住権を建物所有者以外の第三者に対抗するためには、登記が必要です。
     建物所有者は、配偶者に対して配偶者居住権の登記を備えさせる義務を負います。
   5.費用負担・・・建物の固定資産税は所有者が納税義務者ですが、配偶者居住権を有する配偶者は建物の通常の必要費を負担する必要があります。

<参照> 配偶者居住権の登記 不動産登記法 第3条

(登記することができる権利等)
第三条 登記は、不動産の表示又は不動産についての次に掲げる権利の保存等(保存、設定、移転、変更、処分の制限又は消滅をいう。次条第二項及び第百五条第一号において同じ。)についてする。
   一 所有権
   二 地上権
   三 永小作権
   四 地役権
   五 先取特権
   六 質権
   七 抵当権
   八 賃借権
   九 配偶者居住権
   十 採石権(採石法(昭和二十五年法律第二百九十一号)に規定する採石権をいう。第五十条、第七十条第二項及び第八十二条において同じ。)

配偶者居住権制度が建替えを阻んでいる?

◎令和8年4月1日施行で「配偶者居住権の消滅請求」が追加された理由

  令和8年4月1日施行の改正区分所有法でこの「配偶者居住権の消滅請求」(第64条の4)が、
   @賃貸借の終了請求(第64条の2)
   A使用貸借の終了請求(第64条の3)
 と並んで、新しく追加されたのは、上で説明したように、例え、「建替え決議」がなされても、建替え決議は、区分所有者を拘束しますが、専有部分(室)にある、ローンの担保権や賃貸借、使用貸借そして配偶者居住権にはその効力が及ばないため、危険な状態にある区分所有建物の建替えを阻んでいるという見解があり、そのために、新しく、担保を除いて
  @賃貸借の終了請求(第64条の2)
  A使用貸借の終了請求(第64条の3)
  に加えて、
  B「配偶者居住権の消滅請求」(第64条の4)
 の規定を新設したとのことです。

★専有部分に配偶者居住権が設定されている場合は、第64条の2(賃貸借の終了請求) の規定を全て準用する

 建替え決議があった場合に、ある専有部分に「配偶者居住権」が設定されていると、その「配偶者居住権の消滅請求」ができるということです。

 準用されている 賃貸借の終了請求:第64条の2 は以下の内容です。

<参照> 区分所有法 第64条の2

(賃貸借の終了請求)
第六十四条の二 建替え決議があつたときは、建替え決議に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議の内容により建替えに参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)若しくはこれらの者の全員の合意により賃貸借の終了を請求することができる者として指定された者又は賃貸されている専有部分の区分所有者は、当該専有部分の賃借人に対し、賃貸借の終了を請求することができる。

2 前項の規定による請求があつたときは、当該専有部分の賃貸借は、その請求があつた日から六月を経過することによつて終了する

3 第一項の規定による請求があつたときは、当該専有部分の区分所有者は、当該専有部分の賃借人(転借人を含む。第五項において同じ。)に対し、賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償金を支払わなければならない。

4 第一項の規定による請求をした者(当該専有部分の区分所有者を除く。)は、当該専有部分の区分所有者と連帯して前項の債務を弁済する責任を負う。

5 専有部分の賃借人は、第二項の規定により当該専有部分の賃貸借が終了したときであつても、前二項の規定による補償金の提供を受けるまでは、当該専有部分の明渡しを拒むことができる。


 上の「賃貸借の終了請求(第64条の2)」でも説明しているように、
 「建替えの決議」があれば、ある専有部分(室)に、「配偶者居住権」が設定されていれば、建替えを阻害するので、その「配偶者居住権」を消滅させることを請求(求める)できます。

 そこで、「配偶者居住権」を消滅させることを請求をできる人は、第64条の2(賃貸借の終了請求)を準用していますから、
  @建替え決議に賛成した区分所有者(承継人も含む)
  A後からの建替え参加者(承継人も含む)
  B建替え賛成者全員から配偶者居住権の消滅を請求できる者として指定された者
  C配偶者居住権が設定されている専有部分の区分所有者
  となっています。(第64条の2 1項)

 通常なら、配偶者居住権の消滅を請求できる者の順序として、一番目にCの配偶者居住権が設定されている専有部分の区分所有者が、関係事案の当事者としてでてくるべきですが、法の草案者は、建替えは「建替え賛成者」という団体の行為であることから、全員の利益を優先して、また、配偶者居住権が設定されている専有部分の区分所有者が個人として「配偶者居住権の消滅請求」をしない場合も想定されるため、 「配偶者居住権を消滅させることを請求をできる人」には、
  @建替え決議に賛成した区分所有者(承継人も含む)
  A後からの建替え参加者(承継人も含む)
  B建替え賛成者全員から配偶者居住権の消滅を請求できる者として指定された者
 が、 
  C配偶者居住権が設定されている専有部分の区分所有者
 よりも、優先して規定されています。

★B建替え賛成者全員から配偶者居住権の消滅を請求できる者として指定された者

 配偶者居住権者に対して「配偶者居住権の消滅請求」ができるのは、1番目に「建替え決議に賛成した区分所有者(承継人も含む)」であり、2番目には「後からの建替え参加者(承継人も含む)」です。

 三番目に規定される「建替え賛成者全員から配偶者居住権の消滅を請求できる者として”指定された者”」には、「賃貸借の終了請求」と同様にその資格は限定されていませんから、区分所有者でなくても、建替えに参加することになったデベロッパーも、建替え賛成者全員からの”同意”をとって、配偶者居住権の消滅請求者になれます。

 この指定を受ける場合には、必ず建替え賛成集団の「多数決」ではなく、建替え決議に最初からの賛成者と後からの建替えに参加を表明した人たち「全員の合意」が必要です。

★C賃貸にしている区分所有者

  第62条による「建替えの決議」があった場合に、配偶者居住権の終了を請求することができる、最後、四番目は、その専有部分に配偶者居住権が付いている区分所有者、本人です。
  どうして、一番責任があると思われる該当部分の区分所有者が最後の順番になっているかというと、基本的に「建替え」は、団体としての行為であり、個人に任せると、相続で揉めている、人情があり実行できないなどで、配偶者居住権者に、出て行けと言えないことも考えられ、これでは、団体の総意である「建替え」が先に進まない恐れがあるために、最後にしたとのことです。

★「配偶者居住権の消滅請求」を受けた後 → 引っ越し費用などを受け取って6ヶ月(初日不算入)で出て行く

 これら4つのタイプ
  @建替え決議に当初から賛成した区分所有者(承継人も含む)
  A後からの建替え参加者(承継人も含む)
  B建替え賛成者全員から配偶者居住権の消滅を請求できる者として指定された者
  C配偶者居住権が設定されている専有部分の区分所有者
 の請求権者から「配偶者居住権の消滅請求」 を受けた該当の専有部分の配偶者居住権は、請求をうけた日から6ヶ月(初日不算入)が過ぎれば消滅します(第64条の2 2項)が、消滅に対して配偶者居住権者は、引っ越し費用など「通常生ずる損失の補償金」を受け取ります。(第64条の2 3項)

 この引っ越し費用などを支払うのは、配偶者居住権が設定されている専有部分の区分所有者です。(第64条の2 3項)
 配偶者居住権は、残された配偶者が、亡くなった方が所有していた建物に、亡くなるまで、または一定期間、無償で住み続けることができる権利(居住できるという権利)です。
 あくまでも「居住できるという権利」であり、所有権ではありませんから、配偶者居住権者と区分所有者は異なります。

 ただし、配偶者居住権が設定されている専有部分の区分所有者以外の建替え賛成者や建替え賛成者全員から指定された者も「配偶者居住権の消滅請求」 ができますから(第64条の2 1項)、建替え賛成者や建替え賛成者全員から指定された者が配偶者居住権が設定されている専有部分の区分所有者よりも先に「配偶者居住権の消滅請求」をした場合には、その「配偶者居住権の消滅請求」をした者と配偶者居住権が設定されている専有部分の区分所有者は、引っ越し費用などを「連帯」して、支払の責任があります。(第64条の2 4項)

<参照> 民法 第436条

第四款 連帯債務

(連帯債務者に対する履行の請求)
第四百三十六条 債務の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって数人が連帯して債務を負担するときは、債権者は、その連帯債務者の一人に対し、又は同時に若しくは順次に全ての連帯債務者に対し、全部又は一部の履行を請求することができる。


 もしも、引っ越し費用などが、「配偶者居住権の消滅請求」をうけて6ヶ月初日不算入)までに支払わなければ、配偶者居住権者は、その専有部分の引き渡しを拒めます。(第64条の2 5項)

◎配偶者居住権の消滅請求における引っ越し費用など補償金について

 ★新しく創設された「配偶者居住権」をいくらに見積もるか 〜相続税を参考に〜
  
 配偶者居住権の評価額は、
  1.建物に関する評価額と
  2.土地(敷地利用権) 
 に分けられます。

 1.建物に関する評価額
  建物の配偶者居住権の評価額は、建物の相続税評価額から、配偶者居住権が設定された場合の建物所有権の評価額を差し引くことで算出されます。
  これは、建物の時価から、将来配偶者居住権が消滅した時点での建物の価値を現在価値に換算して差し引くという考え方に基づいています。

  具体的な計算式の要素:としては、
   ・建物の相続税評価額
   ・建物の残存年数(法定耐用年数に1.5倍し、そこから経過年数を引いたもの)
   ・配偶者居住権の存続年数(終身の場合は配偶者の平均余命、期間を定めた場合はその年数)
   ・複利現価率(存続年数に応じた法定利率に基づき算出)

   建物が非常に古い場合など、建物の残存耐用年数から配偶者居住権の存続年数を引いた値がゼロまたはマイナスになる場合、配偶者居住権の評価額は建物の相続税評価額と同額になります。

 2.土地に関する評価額
  配偶者居住権を取得すると、建物だけでなくその敷地も利用することになるため、敷地利用権も評価の対象となります。
   敷地利用権の評価額は、敷地の相続税評価額から、配偶者居住権が設定された場合の敷地所有権の評価額を差し引くことで計算されます。

  具体的な計算式の要素:としては、
   ・土地等の時価(配偶者居住権設定前の相続税評価額)
   ・配偶者の平均余命(存続年数)
   ・民法の法定利率(2020年4月1日以降は変動制になった。当初は3%)

  賃貸借の終了請求時と同様に、配偶者居住権の消滅においてもいろいろと検討が必要ですが、区分所有法では、上でも説明しました、賃貸借の終了により「通常生ずる損失の補償金」については、公共事業での土地収用で土地所有者や関係者が被る損失に対して、適切かつ円滑に補償を行うための統一的な基準として「中央用地対策連絡協議会(用地対策連絡会)」が定めた「公共用地の取得に伴う損失補償基準(用対連基準)」の「借家人が受ける補償(通損補償)と同じレベルを採用したようです。

 具体的には、公共用地の取得に伴う損失補償基準の
  ・第31条(動産移転料)
  ・第34条(借家人に対する補償) 
  ・第37条(移転雑費)
  ・第43条(営業廃止の補償)
  ・第44条(営業休止等の補償)
  などが採用されます。


  また、配偶者居住権については、公共用地の取得に伴う損失補償基準 の第28条の2 があります。

<参照> 公共用地の取得に伴う損失補償基準
                   昭和37年10月12日
                   用地対策連絡会決定
                  最近改正 令和2年1月31日


対連基準 第28条の2

(配偶者居住権を有する者に対する建物の移転に係る補償)
第28条の2 土地等の取得又は土地等の使用に係る土地にある建物が配偶者居住権の目的となっている場合において、当該建物の移転に伴い、当該配偶者居住権が消滅するものと認められるときは、当該配偶者居住権がない場合における当該建物の価格から当該配偶者居住権がある場合における当該建物の価格を控除した額を当該配偶者居住権を有する者に対して補償するものとする
 この場合において、前条第1項後段の規定により補償することとなった建物が配偶者居住権の目的となっている場合についても、同様とする。

 これによると配偶者居住権者に対する補償の金額は、建物の価格を超えないこととなります。
 
これらの事項から、何が適切な「通常生ずる損失の補償金」になるかは、今後の判断に任せましょう。

★単なる補償で配偶者居住権者を追い出していいのか → もっと、厚い手当てが必要

 この建替え決議があれば、配偶者居住権の消滅請求ができるという、令和8年4月1日施行の改正区分所有法はかなり問題のある規定です。

 その訳は、どうして「配偶者に今住んでいる家に住み続けること」を、2020年(令和2年)4月1日施行の改正民法が新しく認めたのかを追求すればわかります。

 民法の配偶者居住権は、高齢化が進む中で、残された配偶者が住まいを失うことなく、老後の安定した生活を送れるようにするため創設されたものです。

 配偶者居住権を得た高齢者は、これで、やっと死ぬまで安心してその家(専有部分)に住む積りで老後の生活設計を立てていたのが、ただ単にマンションのような区分所有建物に住んでしまったために「建替え決議」がなされたということだけで、配偶者居住権の消滅請求を受け現在の住まいを追われて、その6ヶ月後には強制的に追い出しを余儀なくさせられるというのは、基本的に配偶者居住権創設の理念に反した規定です。

 区分所有法の改革案を検討する人たちは、建替え賛成の立場をとる裕福な人しかいないようで、経済的理由から他に引っ越しができない、またそこに住み続けたいと願う借家人や高齢者の立場に寄り添った規定が必要です。

 この多数による横暴を許す規定は、もっと、もっと、移転期間の延長や、高齢者特例、行政での住宅の確保など検討がなされるべき規定です。



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(建物更新決議)

第六十四条の五 (注:令和8年4月1日施行で改正あり。新設。)

1項 集会においては、区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物の更新(建物の構造上主要な部分の効用の維持又は回復(通常有すべき効用の確保を含む。)のために共用部分の形状の変更をし、かつ、これに伴い全ての専有部分の形状、面積又は位置関係の変更をすることをいう。次項において同じ。)をする旨の決議(同項及び第三項において「建物更新決議」という。)をすることができる。 

過去出題 マンション管理士
管理業務主任者

 令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、今までの建替え手法以外の選択肢として、
 ・第64条の5・・・建物更新決議、
 ・第64条の6・・・建物敷地売却決議
 ・第64条の7・・・建物取壊し敷地売却決議
 ・第64条の8・・・取壊し決議
 が、新設されました。

施行は、令和8年4月1日。

 

◎令和8年4月1日施行で新設された理由 〜今までの修理や建替えから離れた完全に新しい考え方〜

★区分所有法での建替えが多数決で許される訳 〜個人が有する財産権の侵害ではない〜

 繰り返しの説明になりますが、多くの人が共有しているマンションのような区分所有建物の寿命は、鉄筋コンクリート造で約40年から90年が目安とされ、いつかは、建替えが必要な時期が来ます。

 しかし、民法では共有物である建物を取り壊すことは、「共有物の重大な変更」に該当して「共有者全員の”同意”」が必要です。(民法第251条)

<参照> 民法 第251条 

(共有物の変更)
第二百五十一条 各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更(その形状又は効用の著しい変更を伴わないものを除く。次項において同じ。)を加えることができない

2 共有者が他の共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないときは、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者以外の他の共有者の同意を得て共有物に変更を加えることができる旨の裁判をすることができる。

 しかし、共有者が2,3人程度の場合なら、共有者全員が納得して重大な変更に同意することも可能ですが、マンションのような、1棟に100人とか、200人など多くの共有者が存在する区分所有建物において、この「全員の同意」を得ることは、現実問題として、不可能である実態が分かっています。

 この民法の共有の理論で変更行為での「他の共有者の全員の同意を得る」に従うことは、大多数の人々が、老朽化などで切実に建替えを希望していても、たった一人の区分所有者の反対があれば建替えはできず、建替えが実行できない場合には、その建物が老朽化した状態であっても居住を継続しなければならないことになります。

 共有者の一人でも反対すれば老朽化した建物の建替えができないということは、他の多くの区分所有者にとって不利益をもたらしますし、また、その建物がある地域・社会にとっても、老朽化して今にも倒壊しそうな危険な状態での建物があることや、多くの居住者が住んでいないスラム化した建物が存続することは社会問題ともなります。

 そこで、民法の規定を変える「特別法」としての区分所有法では、多くの人が棲むマンションのような区分所有建物においては、民法で規定される共有物の変更において事実上不可能な区分所有者「全員の合意」は不要として、多数決の要件(5分の4(80%)以上の決議, この 80%以上というのは、かなり高いハードルです。)により「建替え」を認めて、憲法(第29条)及び民法で保障された個人の財産権と、区分所有建物内で共同生活を営む他の多数の区分所有者及び周辺社会との利益の調和を図っています。(区分所有法第62条:建替え決議)

 <参考> 最高裁判所判例 : 平成21年4月23日 :団地の例(区分所有法第70条)ですが、区分所有法第62条(建替え決議)も憲法違反でないといっている。

  *注:この平成21年の最高裁判所の判決により、個人の財産権(憲法第29条)の制限は、区分所有法の規定により、妥当であるとされていて、その後の「建替え」の規定を進める強い根拠となっています。
  また、判決文にあるように、区分所有権や時価による売渡請求など、勉強になりますから、よく読んでおいてください。


   判決文:

   主文
  本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

1 上告代理人熊野勝之ほかの上告理由のうち建物の区分所有等に関する法律(以下「区分所有法」という。)70条が憲法29条に違反する旨をいう部分について

(1) 区分所有法70条1項は,1つの団地内に存する数棟の建物の全部(以下「団地内全建物」という。)が,いずれも専有部分を有する建物であり,団地内全建物の敷地が,団地内の各建物の区分所有者(以下「団地内区分所有者」という。)の共有に属する場合において,当該団地内建物について所要の規約が定められているときは,団地内の各建物ごとに,区分所有者及び議決権の各3分の2以上の賛成があれば,団地内区分所有者で構成される団地内の土地,建物等の管理を行う団体又は団地管理組合法人の集会において,団地内区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で団地内全建物の一括建替え(以下「団地内全建物一括建替え」という。)をする旨の建替え決議をすることができる旨定めている。

 この定めは,同法62条1項が,1棟の建物の建替え(以下「1棟建替え」という。)においては,当該建物の区分所有者の集会において,区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で建替え決議をすることができると定めているのに比べて,建替えの対象となる当該建物の区分所有者及び議決権の数がより少数であっても建替え決議が可能となるものとなっている。
 そして,団地内全建物一括建替えの決議がされた場合は,1棟建替えの決議がされた場合と同様,建替えに参加しない区分所有者は,時価による売渡請求権の行使を受けて,その区分所有権及び敷地利用権を失うこととなる(同法70条4項,63条4項)。

 上告人らは,区分所有法70条によれば,団地内全建物一括建替えにおいては,各建物について,当該建物の区分所有者ではない他の建物の区分所有者の意思が反映されて当該建物の建替え決議がされることになり,建替えに参加しない少数者の権利が侵害され,更にその保護のための措置も採られていないなどとして,同条が憲法29条に違反することを主張するものである。

(2) 区分所有権は,1棟の建物の中の構造上区分された各専有部分を目的とする所有権であり(区分所有法1条,2条1項,3項),廊下や階段など,専有部分の使用に不可欠な専有部分以外の建物部分である共用部分は,各専有部分の所有者(区分所有者)が専有部分の床面積の割合に応じた持分を有する共有に属し,その持分は専有部分の処分に従うものとされている(同法2条2項,4項,4条,11条,14条,15条)。

 また,専有部分を所有するための建物の敷地に関する権利である敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には,区分所有者の集会の決議によって定められた規約に別段の定めのある場合を除き,区分所有者は敷地利用権を専有部分と分離して処分することはできないものとされている(同法2条6項,22条)。

 このように,区分所有権は,1棟の建物の1部分を構成する専有部分を目的とする所有権であり,共用部分についての共有持分や敷地利用権を伴うものでもある。
 したがって,区分所有権の行使(区分所有権の行使に伴う共有持分や敷地利用権の行使を含む。以下同じ。)は,必然的に他の区分所有者の区分所有権の行使に影響を与えるものであるから,区分所有権の行使については,他の区分所有権の行使との調整が不可欠であり,区分所有者の集会の決議等による他の区分所有者の意思を反映した行使の制限は,区分所有権自体に内在するものであって,これらは,区分所有権の性質というべきものである。

 区分所有建物について,老朽化等によって建替えの必要が生じたような場合に,大多数の区分所有者が建替えの意思を有していても一部の区分所有者が反対すれば建替えができないということになると,良好かつ安全な住環境の確保や敷地の有効活用の支障となるばかりか,一部の区分所有者の区分所有権の行使によって,大多数の区分所有者の区分所有権の合理的な行使が妨げられることになるから,1棟建替えの場合に区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数で建替え決議ができる旨定めた区分所有法62条1項は,区分所有権の上記性質にかんがみて,十分な合理性を有するものというべきである。

 そして,同法70条1項は,団地内の各建物の区分所有者及び議決権の各3分の2以上の賛成があれば,団地内区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数の賛成で団地内全建物一括建替えの決議ができるものとしているが,団地内全建物一括建替えは,団地全体として計画的に良好かつ安全な住環境を確保し,その敷地全体の効率的かつ一体的な利用を図ろうとするものであるところ,区分所有権の上記性質にかんがみると,団地全体では同法62条1項の議決要件と同一の議決要件を定め,各建物単位では区分所有者の数及び議決権数の過半数を相当超える議決要件を定めているのであり,同法70条1項の定めは,なお合理性を失うものではないというべきである。

 また,団地内全建物一括建替えの場合,1棟建替えの場合と同じく,上記のとおり,建替えに参加しない区分所有者は,売渡請求権の行使を受けることにより,区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すこととされているのであり(同法70条4項,63条4項),その経済的損失については相応の手当がされているというべきである。

(3) そうすると,規制の目的,必要性,内容,その規制によって制限される財産権の種類,性質及び制限の程度等を比較考量して判断すれば,区分所有法70条は,憲法29条に違反するものではない
 このことは,最高裁平成12年(オ)第1965号,同年(受)第1703号同14年2月13日大法廷判決・民集56巻2号331頁の趣旨に徴して明らかである。論旨は採用することができない。

2 その余の上告理由について論旨は,違憲及び理由の不備をいうが,その実質は単なる法令違反をいうもの又はその前提を欠くものであって,民訴法312条1項及び2項に規定する事由のいずれにも該当しない。

3 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 甲斐中辰夫 裁判官 涌井紀夫 裁判官 宮川光治 裁判官 櫻井龍子 裁判官 金築誠志)

◎現行の「建替え制度」の問題点

 区分所有法において、マンションのような区分所有建物では、区分所有者及び議決権の各4/5(80%)以上の多数で建替えができると規定しました(第62条)が、建替えに参加する区分所有者にとって、建替えは、建物の解体や新規の建物の建設に伴う経済的な負担が大きく(1戸当たり約1,000万円〜2,000万円)、また、引っ越しが3年程度もかかる不便さもあります。

 更に、建設当時は問題なく建てられた現在の区分所有建物がその後改正された建築基準法により高さに係る制限や、日影に係る規制等各種基準に対して適合していないいわゆる「既存不適格建築物」となっている場合には、建替えを実施するに際して必要な基準への適合が求められることとなり、建替え後の区分所有建物の規模は、今の区分所有建物よりも縮小せざるを得ない場合もあります。

 また、躯体は高い耐震性を備えていても、設備などが社会的に陳腐していればこれを更新する手段が区分所有法では「建替え」しか無いのは、廃棄物や省エネルギーの観点からも無駄が大きいとの指摘もあります。

◎新たな建物再生化手法の創設 〜建替えに代わるオプション(選択肢)を増やした〜

 区分所有法第62条における「建替え」では、集会を開いて、区分所有者及び議決権の各4/5(80%)以上の多数で既存の区分所有建物を壊して、元の土地(一部でも全部でも、またプラス近隣の土地)に新しく建物を建築するやり方しかありませんでしたが、令和8年4月1日施行の改正区分所有法では、過去の建替えにおいて問題となった点を顧みて、建替えに以下の選択肢(オプション)を追加・新設しました。

 それが、
  @建物更新決議・・・第64条の5・・・建物の躯体を残し、共用部分と専有部分の形状等を変更する
    この場合、建物と敷地の権利は残っている。

  しかし、以下の3条では、建物の権利が無くなったり、さらに敷地の権利も失うことになります。
  A建物敷地売却決議・・・第64条の6・・・既存の建物とその敷地を売ってしまう
  B建物取壊し敷地売却決議・・・第64条の7・・・既存の建物を取り壊した上で、その敷地を売ってしまう
  C取壊し決議・・・第64条の8・・・既存の建物を取り壊す
 です。

  

  

★建物更新(一棟リノベーション)決議(第64条の5)とは

 では、区分所有法の規定の順番に従って、「建物更新決議」(第64条の5)から、見ていきましょう。

<参照> 区分所有法 第64条の5 1項

(建物更新決議)
第六十四条の五 集会においては、区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物の更新(建物の構造上主要な部分の効用の維持又は回復(通常有すべき効用の確保を含む。)のために共用部分の形状の変更をし、かつ、これに伴い全ての専有部分の形状、面積又は位置関係の変更をすることをいう。次項において同じ。)をする旨の決議(同項及び第三項において「建物更新決議」という。)をすることができる。

 (以下、略)

◎第64条の5(建物更新決議)新設の理由

 第64条の5に規定される「建物更新決議」は、躯体部分は残して建物全体をまるごと新しく改修することで、「一棟リノベーション」ともよばれ、従来の「建替え」、つまり建物を取壊して新しく建築するというやり方を大きく変える新しい発想の手法です。

 建物更新決議が新設された理由は、以下のとおりです。

 「近年、建築技術の進展に伴い、老朽化した区分所有建物を再生する工事の施工方法として、区分所有建物の構造によっては、既存構造躯体を維持しながら、一棟全体を一旦スケルトン状態(内部が透けてみえる状態)とし、玄関や配管を含めて共用部分と全ての専有部分を更新するという「一棟リノベーション工事」の方法が可能となっている。

 この方法によれば、耐震性不足等の問題がある建物でも、建物の軽量化、耐震補強等によって安全性を高め、その外観や内観を大きく転換し、設備を一新することができるとされる。

一方、一棟リノベーション工事では、費用の低減を図ることができることに加え、一定の工事内容の範囲であれば、従前の規模を維持することも可能となり得る。

 このように、機能性や耐震性等の観点で実質的に建替えと同様の結果を得ることができる上、工事費用や廃棄物・二酸化炭素発生の抑制を図ることができる「一棟リノベーション工事」は、区分所有者の負担軽減の観点からも環境保護の観点からも利点が多く、区分所有建物の刷新を図る新たな手法として、これを促進する必要があると考えられる。」

   

◎一棟リノベーションのメリット

 このような観点から新規に採用された建物の既存の躯体を活用できる「一棟リノベーション」は、通常の建替えよりも解体費用や新築費用を抑えやすく、工事期間も短縮できるメリットがあります 
 また、建物の寿命を延ばせる適切な補修・補強を行うことで、建物の寿命を延ばし、長持ちさせることが可能です。
資産価値の向上: 新築同様の見た目と住み心地を実現できるため、賃貸では入居率のアップや家賃設定の引き上げも期待できます。

◎一棟リノベーションのデメリット

 一棟リノベーションは、一般的には建替えよりも費用は抑えられますが、設備をよくするとかなり高額になる場合もあります。
  また、新しい工法のため専門の業者が少ないようです。  

建物更新(一棟リノベーション)決議の要件

 建物更新決議に必要なのは、
  @集会を開く
  A区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議決権の各4/5(80%)以上の多数の賛成が必要
  B建物更新をする決議
   ・建物の構造上主要な部分の効用の維持又は回復(通常有すべき効用の確保を含む。)のために共用部分の形状の変更をし、
   かつ、これに伴い全ての専有部分の形状、面積又は位置関係の変更をする旨
  をすることです。

 建物更新決議をするには、まず建替え決議(第62条)と同様に
 @集会を開くことが必要です。
  その集会で、
 A区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議決権の各4/5(80%)以上が
 B建物更新をする決議
 に賛成することとなっています。

★集会の成立要件は、ない 〜処分を伴うから〜

 ここで注意しなければいけないのは、令和8年4月1日施行の改正区分所有法では、多くの集会の決議では、
   ・所在不明の区分所有者を賛成の母数から除外し、”集会に出席した”区分所有者のみの多数決で決議を可能にする仕組みが採用されていますが、「建物更新決議」においては、「建替え決議」と同様に、”集会に出席した”の条件は適用しておらず、議決権を有しないものを除いた区分所有者と議決権の各4/5(80%)以上の多数の賛成が必要ということです。
 その理由は、「建替え」では、なぜ”出席者の” 4/5以上 としなかったのかについては、「建替え決議についても出席者の多数決による決議の仕組みの対象とすると、区分所有者が集会に出席せず、議決権を行使しなかったことの結果として、その区分所有者の区分所有権の処分がされることを踏まえたものである。
 また、出席しなかったことをもって、自らの区分所有権の処分についても他人の決定に委ねたものと評価することは適切ではないとも考えられることからも、建替え決議を出席者の多数決による決議の仕組みの対象とはしていない。」
とのことです。

 この議決要件の「区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議決権の各4/5(80%)以上の多数」は、規約での別段の定めは出来ません。

★採決に当たっての注意点

 「建物更新決議」が「区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議決権の各五分の四以上の多数」で採決されると、その後の進め方は、個人の財産である専有部分の形状や床面積の変更ともなりますから、今後の紛争を避けるために、挙手での採決方法ではなく、必ず、賛成・反対が証拠として残る書面を使った「投票用紙」にしてください。 

Bの建物更新をする決議の内容は、

 建物更新決議をする際には、以下の内容であることを、明確にする必要があります。
 その内容は、
  ア.建物の構造上主要な部分の効用の維持又は回復(通常有すべき効用の確保を含む。)のために共用部分の形状の変更 と 
  イ.これに伴い全ての専有部分の形状、面積又は位置関係の変更をする
  です。

  建築基準法が絡むために、かなり面倒な言い回しです。

  ア.建物の構造上主要な部分とは・・・建築基準法を参考にするなら、建築基準法第2条 5項に「主要構造部」の定義があります。

 <参照> 建築基準法 第2条 5号

(用語の定義)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

五 主要構造部 壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、付け柱、揚げ床、最下階の床、回り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分を除くものとする。

  

  建築基準法の「主要構造部」の定義と異なり、建替え更新決議では、「建物の構造上主要な部分」と規定していますが、基本的に「壁、柱、床、はり、屋根や階段」などを指すと考えていいでしょう。
  
  ・「効用の維持又は回復」とは・・・上の建物の構造上主要な部分が、経年劣化や災害などによって損なわれた場合に、元の状態に戻したり(回復)、その機能を維持したりするための修理や改良を意味します。

   また、「通常有すべき効用の確保」とは・・・一般的に備わっていると期待される機能や効果が、きちんと利用できる状態になっていることです。
   これらのために、壁や廊下、エントランス、階段室、エレベーター設備など「
共用部分の形状の変更」が行われ、

  イ.「共用部分の形状の変更」に伴い全ての専有部分の形状、面積又は位置関係の変更をする 
    ことを決議の内容とします。
    
   基本的に「建物更新をする決議」は、建物の躯体は残しても、壁や廊下など共用部分の形状が大幅に変わり、また専有部分(室)の形状だけでなく、専有部分の面積や場所さえも変わるため、区分所有者としても自己が所有する財産(専有部分)が変更されることを理解した上で、「建物更新決議」をしなさいということです。

 また、「建物更新」の工事は、建築物の主要構造部に対する「過半の修繕」や「過半の模様替」ともなり、建築基準法で規定する「大規模の修繕」や「大規模の模様替え」に該当する場合もあります。(建築基準法第2条14号、15号)

<参照> 建築基準法 第2条 14号、15号

(用語の定義)
第二条 この法律において次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

五 主要構造部 壁、柱、床、はり、屋根又は階段をいい、建築物の構造上重要でない間仕切壁、間柱、付け柱、揚げ床、最下階の床、回り舞台の床、小ばり、ひさし、局部的な小階段、屋外階段その他これらに類する建築物の部分を除くものとする。

十四 大規模の修繕 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕をいう。

十五 大規模の模様替 建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の模様替をいう。

  「大規模の修繕」や「大規模の模様替え」に該当すると、建築基準法第6条での「確認申請」が必要となり、工事前に建築主事等の確認が必要となります。(建築基準法第6条)

 <参照> 建築基準法 第6条

(建築物の建築等に関する申請及び確認)
第六条 建築主は、第一号若しくは第二号に掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号又は第二号に規定する規模のものとなる場合を含む。)、
これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合
又は第三号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定(この法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定(以下「建築基準法令の規定」という。)その他建築物の敷地、構造又は建築設備に関する法律並びにこれに基づく命令及び条例の規定で政令で定めるものをいう。以下同じ。)に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事又は建築副主事(以下「建築主事等」という。)の確認(建築副主事の確認にあつては、大規模建築物以外の建築物に係るものに限る。以下この項において同じ。)を受け、確認済証の交付を受けなければならない。当該確認を受けた建築物の計画の変更(国土交通省令で定める軽微な変更を除く。)をして、第一号若しくは第二号に掲げる建築物を建築しようとする場合(増築しようとする場合においては、建築物が増築後において第一号又は第二号に規定する規模のものとなる場合を含む。)、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第三号に掲げる建築物を建築しようとする場合も、同様とする。

一 別表第一(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートルを超えるもの

(以下、略)

  


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(建物更新決議)

第六十四条の五 (注:令和8年4月1日施行で改正あり。新設。)

2項  建物更新決議においては、次の事項を定めなければならない。
   一 建物の更新がされた後の建物の設計の概要
   二 建物の更新に要する費用の概算額
   三 前号に規定する費用の分担に関する事項
   四 建物の更新がされた後の建物の区分所有権の帰属に関する事項 

過去出題 マンション管理士
管理業務主任者

 令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、新設された条文です。

施行は、令和8年4月1日。

  

◎建物更新決議で定める事項 〜4項目がある〜

 集会で「建物更新決議」をする際には、区分所有者が賛否の判断をする材料として、以下の4つの事項を定めなければなりません。
 これらを求める理由は、「建物更新決議」によって「建替え決議」と同様に、4つの事項を内容とした「建物更新を目的とした集団」を「擬制」(区分所有法第64条の準用)するためです。

 なお、建物更新決議で定める4つの事項の前に、
  ・どうして「建替え」(第62条)や、令和8年4月1日施行の改正区分所有法で新しく再生の円滑化等の推進で追加された

   ・第64条の6:建物敷地売却決議
   ・第64条の7:建物取壊し敷地売却決議
   ・第64条の8:取壊し決議
  の手法をとらずに、このマンション(区分所有建物)では「建物の更新」を行うことを選んだのかの説明もあるべきです。


 これらは、建物更新の決議の集会の通知をするときに、会議の目的たる事項及び議案の要領の他として、通知します。(第64条の5 3項で第62条7項の準用)  

 建替え更新建物更新決議において定める4つの事項は、
  @ 建物の更新がされた後の建物の設計の概要
  A 建物の更新に要する費用の概算額
  B 前号に規定する費用の分担に関する事項
  C 建物の更新がされた後の建物の区分所有権の帰属に関する事項
 で、 これらは、建替え決議の第62条 4項の規定を参考にしています。

<参照> 区分所有法 第62条 4項 だけ

4 建替え決議においては、次の事項を定めなければならない。
   一 新たに建築する建物(以下この項において「再建建物」という。)の設計の概要
   二 建物の取壊し及び再建建物の建築に要する費用の概算額
   三 前号に規定する費用の分担に関する事項
   四 再建建物の区分所有権の帰属に関する事項

建物更新決議において定める4つの事項

 @建物の更新がされた後の建物の設計の概要
  建物更新決議において定める4つの事項の内、1番目の「建物の更新がされた後の建物の設計の概要」 とは、更新されて出来上がる建物の構造、間取り、材料、専有部分の構造、配置、その床面積などの設計図です。
  
  ここも建替えと同様に、単に更新後の「建物の概要」ではなく「設計の概要」として建物更新決議参加者が、建物更新事業参加の判断の要素や次の2号での費用概算額の根拠となることを予定しているとみられることから建築基準法での建築確認申請に必要とされる詳細な実施設計までは要求されないまでも、建物更新に際して概算見積りをとれる程度の基本設計図程度のものは必要と思われます。

 A建物の更新に要する費用の概算額
  建物更新決議において定める4つの事項の内、2番目の「建物の更新に要する費用の概算額」は、1号で規定された「建物更新工事」にかかる費用が、いくらかを「概算」でいいから次の3号で区分所有者が負担するために算出しろといっています。
  1号で示された建物更新の設計の概要において示された内容に従い、具体的に、
  ・更新の設計費、工事費、管理組合の運営費などを「概算」で算出します。
  ここには、「建替え決議」と同様に、別途必要となる各区分所有者の引っ越し代や工事期間中の家賃などは含まれません。

 また、「建物の更新に要する費用の概算額」となっていますから、更新工事の実費額が、後日、止むを得ない事情等によりこの概算額を超えても、「建物更新決議」は有効です。

 B前号に規定する費用の分担に関する事項
  
 建物更新決議において定める4つの事項の内、3番目は、2号で算出された「建物更新工事」における費用の概算額を各区分所有者でどのように負担するのかを決めろといっています。
  決め方の例としては、
   ・専有部分の床面積の割合に寄るのが妥当ですが、別の配分基準を採用することも可能です。
   別の配分方法を採用するなら、その内容も決めてください。   


 決める際には、「各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならない」ともいっています。(第64条の5 3項準用)
  当然ですが。

 C建物の更新がされた後の建物の区分所有権の帰属に関する事項
  
 建物更新決議において定める4つの事項の内、最後の4番目は、「建替え決議」でも同様な規定があります。
 「建物の更新がされた後の建物の区分所有権の帰属に関する事項」を定めろといっています。

  建物更新決議は、廊下やエントランスなど共用部分の形状を大きく変えるだけでなく、専有部分(室)の形状もその床面積もまた位置も変えますから、だれが、区分所有権の対象となる専有部分(室)を所有することになるのかは、最大の関心事です。

 基本的に、「建物更新」ですから、建替えと異なり、専有部分(室)の位置のずれや床面積の変更は多少ありますが、階数の変更はほとんどないとみていいでしょう。

 建物更新の設計図に従って、何号室は、だれそれさんの所有にするとかになるでしょう。

 ここでも、決める際には、「各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならない」ともいっています。(第64条の5 3項準用)
  当然ですが。

★敷地利用権も変更になる?

 建物更新工事が終われば、専有部分の床面積に変更があるでしょうから、不動産登記法に従って(不動産登記法第51条)「建物の表題部の変更の登記」をします。

 登記に関係して、「敷地利用権の割合」が問題となりますが、区分所有法では「建替え」と同様に、「敷地利用権」の再配分は求めていません。

 もしも、建物更新が、専有部分の床面積を大幅に変えるのなら、この「建物の更新がされた後の建物の区分所有権の帰属に関する事項」に関係して、敷地利用権の再配分を決めるべきです。

 ここに関しては、地主の同意が必要な「借地権」で建っているマンションなど研究すると面白い。


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(建物更新決議)

第六十四条の五 (注:令和8年4月1日施行で改正あり。新設。)

3項 第六十二条(第一項及び第四項を除く。)及び第六十三条から前条までの規定は、建物更新決議について準用する。この場合において、第六十二条第二項中「前項」とあるのは「第六十四条の五第一項」と、同条第五項中「前項第三号及び第四号」とあるのは「第六十四条の五第二項第三号及び第四号」と、同条第七項第一号中「建物の建替え」とあるのは「建物の更新(第六十四条の五第一項に規定する建物の更新をいう。以下同じ。)」と、同項第二号中「建物の建替え」とあるのは「建物の更新」と、第六十三条第一項、第二項及び第四項から第六項まで、第六十四条並びに第六十四条の二第一項中「建替えに」とあるのは「建物の更新に」と、第六十三条第七項及び第八項中「建物の取壊しの工事」とあるのは「建物の更新の工事」と、第六十四条中「建替えを」とあるのは「建物の更新を」と読み替えるものとする。

過去出題 マンション管理士
管理業務主任者

 令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、新設された条文です。

施行は、令和8年4月1日。


◎「建替え決議」(第62条)の条文を「建物更新決議」にも準用する。

 「建物更新決議」は、「建替え」の選択肢(オプション)として、令和8年4月1日施行の改正区分所有法で新規追加された規定ですから、基本的に元々規定された「建替え決議」の条文、
  ・第62条(建替え決議)
  ・第63条(区分所有権等の売渡し請求等)  から
  ・第64条(建替えに関する合意) まで、
 そして、令和8年4月1日施行の改正区分所有法で新設された
  ・第64条の2(賃貸借の終了請求)
  ・第64条の3(使用貸借の終了請求)
  ・第64条の4(配偶者居住権の消滅請求)
  までが準用され、読み替えが行われますが、この規定も「団地の規定(第66条)」と同様に、こんなに列挙されるともう面倒との気持ちが先に立ってしまいます。

 でも、「超解説 区分所有法」の解説者としては、ちゃんと解説しましょう。 

 第64条の5 3項 準用関係を纏めると以下のようになります。

準用されている条文   
 条・項  条文   読み替え
 基本読み替え (建替え決議) → (建物更新決議)   
第62条 1項と4項は除く。  
 第62条2項(新設)  2 建物が次の各号のいずれかに該当する場合における 前項 → 第六十四条の五第一項 の規定の適用については、同項中「五分の四」とあるのは、「四分の三」とする。
   一 地震に対する安全性に係る建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき。
   二 火災に対する安全性に係る建築基準法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき。
   三 外壁、外装材その他これらに類する建物の部分が剥離し、落下することにより周辺に危害を生ずるおそれがあるものとして法務大臣が定める基準に該当するとき。
   四 給水、排水その他の配管設備(その改修に関する工事を行うことが著しく困難なものとして法務省令で定めるものに限る。)の損傷、腐食その他の劣化により著しく衛生上有害となるおそれがあるものとして法務大臣が定める基準に該当するとき。
   五 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律第十四条第五項に規定する建築物移動等円滑化基準に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき
 あり
 第62条3項(新設)   3 法務大臣は、前項各号の基準を定め、又はこれを変更するときは、あらかじめ、国土交通大臣と協議するものとする。  
 第62条5項   5 前項第三号及び第四号 → 第六十四条の五第二項第三号及び第四号 の事項は、各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならない。  あり
第62条6項   6 建替え決議→建物更新決議 を会議の目的とする集会を招集するときは、第三十五条第一項の通知は、同項の規定にかかわらず、当該集会の会日より少なくとも二月前に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸長することができる。  あり
 第62条7項  7 前項に規定する場合において、第三十五条第一項の通知をするときは、会議の目的たる事項及び議案の要領のほか、次の事項をも通知しなければならない。
   一 建物の建替え → 建物の更新(第六十四条の五第一項に規定する建物の更新をいう。以下同じ。) を必要とする理由
   二 建物の建替え → 建物の更新 をしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
   三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
   四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
 あり
 第62条8項  8 第六項の集会を招集した者は、当該集会の会日より少なくとも一月前までに、当該招集の際に通知すべき事項について区分所有者に対し説明を行うための説明会を開催しなければならない。  
 第62条9項  9 第三十五条及び第三十六条の規定は、前項の説明会の開催について準用する。

 (注:第35条:集会の通知、第36条:招集手続の省略)
 
  第62条10項  10 前条第六項の規定は、建替え決議→建物更新決議)をした集会の議事録について準用する。

 (注:前条:第61条:6 前項の決議をした集会の議事録には、その決議についての各区分所有者の賛否をも記載し、又は記録しなければならない。)
 あり
     
  (区分所有権等の売渡し請求等)    
  第63条1項  建替え決議→建物更新決議があつたときは、集会を招集した者は、遅滞なく、建替え決議→建物更新決議に賛成しなかつた区分所有者(その承継人を含む。)に対し、建替え決議→建物更新決議)の内容により 建替えに → 建物の更新に 参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告しなければならない。  あり
 第63条2項  2 集会を招集した者は、前項の規定による書面による催告に代えて、法務省令で定めるところにより、同項に規定する区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により 建替え決議→建物更新決議 の内容により 建替えに → 建物の更新に 参加するか否かを回答すべき旨を催告することができる。この場合において、当該集会を招集した者は、当該書面による催告をしたものとみなす。  あり
 第63条3項  3 第一項に規定する区分所有者は、同項の規定による催告を受けた日から二月以内に回答しなければならない。  
 第63条4項  4 前項の期間内に回答しなかつた第一項に規定する区分所有者は、 建替えに → 建物の更新に 参加しない旨を回答したものとみなす。  あり
 第63条5項   5 第三項の期間が経過したときは、建替え決議→建物更新決議に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議の内容により 建替えに → 建物の更新に 参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)又はこれらの者の全員の合意により区分所有権及び敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者(以下「買受指定者」という。)は、同項の期間の満了の日から二月以内に、 建替えに → 建物の更新に 参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含む。)に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。建替え決議→建物更新決議があつた後にこの区分所有者から敷地利用権のみを取得した者(その承継人を含む。)の敷地利用権についても、同様とする。  あり
 第63条6項  6 前項の規定による請求があつた場合において、 建替えに → 建物の更新に 参加しない旨を回答した区分所有者が建物の明渡しによりその生活上著しい困難を生ずるおそれがあり、かつ、建替え決議→建物更新決議 の遂行に甚だしい影響を及ぼさないものと認めるべき顕著な事由があるときは、裁判所は、その者の請求により、代金の支払又は提供の日から一年を超えない範囲内において、建物の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。  あり
 第63条7項  7  建替え決議→建物更新決議 の日から二年以内に 建物の取壊しの工事 → 建物の更新の工事 に着手しない場合には、第五項の規定により区分所有権又は敷地利用権を売り渡した者は、この期間の満了の日から六月以内に、買主が支払つた代金に相当する金銭をその区分所有権又は敷地利用権を現在有する者に提供して、これらの権利を売り渡すべきことを請求することができる。
 ただし、建物の取壊しの工事 → 建物の更新の工事 に着手しなかつたことにつき正当な理由があるときは、この限りでない。
 あり
 第63条8項  8 前項本文の規定は、同項ただし書に規定する場合において、建物の取壊しの工事 → 建物の更新の工事  の着手を妨げる理由がなくなつた日から六月以内に その着手をしない ときに準用する。この場合において、同項本文中「この期間の満了の日から六月以内に」とあるのは、「建物の取壊しの工事 → 建物の更新の工事 の着手を妨げる理由がなくなつたことを知つた日から六月又はその理由がなくなつた日から二年のいずれか早い時期までに」と読み替えるものとする。  あり
      
 (建替えに関する合意)   
 第64条   建替え決議→建物更新決議 に賛成した各区分所有者、 建替え決議→建物更新決議 の内容により 建替えに → 建物の更新に 参加する旨を回答した各区分所有者及び区分所有権又は敷地利用権を買い受けた各買受指定者(これらの者の承継人を含む。)は、 建替え決議→建物更新決議 の内容により 建替えを → 建物の更新を 行う旨の合意をしたものとみなす。 あり 
     
 (賃貸借の終了請求)  *新設  
 第64条の2 1項   建替え決議→建物更新決議 があつたときは、 建替え決議→建物更新決議 に賛成した各区分所有者若しくは 建替え決議→建物更新決議 の内容により 建替えに → 建物の更新に に参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)若しくはこれらの者の全員の合意により賃貸借の終了を請求することができる者として指定された者又は賃貸されている専有部分の区分所有者は、当該専有部分の賃借人に対し、賃貸借の終了を請求することができる。  あり
 第64条の2 2項   2 前項の規定による請求があつたときは、当該専有部分の賃貸借は、その請求があつた日から六月を経過することによつて終了する。  
 第64条の2 3項   3 第一項の規定による請求があつたときは、当該専有部分の区分所有者は、当該専有部分の賃借人(転借人を含む。第五項において同じ。)に対し、賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償金を支払わなければならない。  
 第64条の2 4項  4 第一項の規定による請求をした者(当該専有部分の区分所有者を除く。)は、当該専有部分の区分所有者と連帯して前項の債務を弁済する責任を負う。  
 第64条の2 5項  5 専有部分の賃借人は、第二項の規定により当該専有部分の賃貸借が終了したときであつても、前二項の規定による補償金の提供を受けるまでは、当該専有部分の明渡しを拒むことができる。  
     
 (使用貸借の終了請求) *新設  
 第64条の3  前条第一項及び第二項の規定は、専有部分が使用貸借の目的物とされている場合(民法第五百九十八条第一項又は第二項に規定する場合を除く。)について準用する。  
     
 (配偶者居住権の消滅請求) *新設  
 第64条の4  第六十四条の二の規定は、専有部分に配偶者居住権が設定されている場合(民法第千三十五条第一項ただし書に規定する場合を除く。)について準用する。  


 といったように準用が多いので、詳細は、各条文に戻って見てくれればいいのですが、準用の概要を説明します。

★建物更新(一棟リノベーション)決議の流れ

 *建物の躯体部分を残し、壁や廊下などの共用部分の形状の変更と専有部分の形状や床面積を変える「建物更新」の決議は、
 ・区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議決権の各五分の四以上の多数できる。(注:ここには、”出席した”は入っていない
 ・また、耐震性の不足や火災に対する安全性の不足、バリアフリー基準に適していないなど「客観的な5つの事由」に当てはまれば、 多数決の割合が、4/5(80%)以上から 3/4(75%)以上に緩和される。(第62条2項)
 ・建物更新決議を目的とする集会は、
  ・集会の当日の 2ヶ月以上前に集会招集の通知をだす(第62条6項)

  ・その通知には、建物更新に対して賛否を判断できる材料として、
   ・その@議題とA議案の要領にプラスして
      一 建物の更新 を必要とする理由
      二 建物の更新 をしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
      三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
      四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
     も通知する(第62条7項)

 ・その説明会は、集会日より少なくとも1ヶ月前に開催する(第62条8項)
 ・集会の手続は、第35条(共有者の取扱、通知場所、掲示など)、第36条(招集手続は、全員が同意すれば、省略できる)による。これは、説明会でも適用する(第62条9項)

 ・開催された建物更新決議では、
    一 建物の更新がされた後の建物の設計の概要
    二 建物の更新に要する費用の概算額
    三 前号に規定する費用の分担に関する事項
    四 建物の更新がされた後の建物の区分所有権の帰属に関する事項
  を定めること。

 ・その集会の議事録には、建物更新決議についての各区分所有者の賛否をも記載又は記録する。(第62条10項)
  この賛否の記録によって、あとの「区分所有権等の売渡請求」の当事者が確定出来る。
 ・建物更新決議に賛成しない区分所有者は、2ヶ月の考慮期間を経て、建物更新決議に賛成者になることもできる。(第63条3項)
 ・最終的に建物更新決議に反対者となれば、反対者は建物更新決議の賛成者(または後から参加したデベロッパー)から区分所有権(専有部分の権利)と土地の権利(敷地利用権)の売渡請求を受けて、2ヶ月以内に出ていくことになる。(第63条5項など)
 ・出て行くに際して、生活上の困難があれば、裁判所の判断で代金を受け取ってから、1年を超えない範囲で建物の明渡が猶予されることもある。(第63条6項)
 ・また、建物更新決議があっても、正当な理由が無くて2年が過ぎても更新の工事がされていない時には、区分所有権と敷地利用権を売った区分所有者は、逆にそれらの権利を買い戻すことができる。(第63条7項)
 ・建物更新決議に賛成した区分所有者等は、全員「建物更新決議の内容に合意したものとみなし」これから先の建物更新の工事が始まるのは、「建替え決議」と同様です。(第64条)
 
 また、令和8年4月1日施行の改正区分所有法で新規追加された、専有部分に
  @賃貸借(第64条の2
  A使用貸借(第64条の3)
  B配偶者居住権(第64条の4)
  があれば、その終了(消滅)も請求できます。

  この場合、賃借人や配偶者居住権者に適切な補償金を支払う義務があり、(第64条の2 3項)、賃借人や配偶者居住権者は、補償金を受け取るまでは、その専有部分の明渡しを拒めます。(第64条の2 5項)

 詳細は各条文にありますので、戻って見てください。


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(建物敷地売却決議)

第六十四条の六 (注:令和8年4月1日施行で改正あり。新設。)

1項 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利であるときは、集会において、区分所有者(議決権を有しないものを除く。)、議決権及び当該敷地利用権の持分(議決権を有しない区分所有者が有するものを除く。)の価格の各五分の四以上の多数で、建物及びその敷地(これに関する権利を含む。)を売却する旨の決議(次項及び第三項において「建物敷地売却決議」という。)をすることができる。

過去出題 マンション管理士
管理業務主任者

 令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、建替えの選択肢(オプション)として新設された4つの  
 ・第64条の5:建物更新決議 
 ・第64条の6:建物敷地売却決議
 ・第64条の7:建物取壊し敷地売却決議
 ・第64条の8:取壊し決議
 内の1つです。

施行は、令和8年4月1日。

 

◎新たな建物再生化手法の創設 〜建替えに代わるオプション(選択肢)を増やした〜

 上の「建物更新決議(第64条の5)でも、述べましたが、区分所有法第62条における「建替え」では、集会を開いて、区分所有者及び議決権の各五分の四(80%)以上の多数で既存の区分所有建物を壊して、元の土地(一部でも全部でも、またプラス近隣の土地)に新しく建物を建築するやり方しかありませんでしたが、令和8年4月1日施行の改正区分所有法では、過去の建替えにおいて費用だとか問題となった点を顧みて、従来の「建替え」に以下の4つの選択肢(オプション)を追加・新設しました。

 それが、
  @建物更新決議・・・第64条の5・・・建物の躯体を残し、共用部分と専有部分の形状等を変更する
  A建物敷地売却決議・・・第64条の6・・・既存の建物とその敷地を売ってしまう
  B建物取壊し敷地売却決議・・・第64条の7・・・既存の建物を取り壊した上で、その敷地を売ってしまう
  C取壊し決議・・・第64条の8・・・既存の建物を取り壊す
 です。

  

★第64条の6「建物敷地売却決議」設定の理由

 第64条の6 の「建物敷地売却決議」は、「建替え」の選択肢の1つとして、令和8年4月1日施行の改正区分所有法で新規追加された条文です。

 その理由は、試案の検討文によると、

 「区分所有者において建替えのコストを負担することはできないが、区分所有権の全部及びその敷地の購入を希望する者が現実に存在するようなケースでは、区分所有者の相当多数がこれを売却して代金を得ることを望むことも想定し得る。

 そして、一般に、建物・敷地の一括売却がされれば、新たな所有者によって建物及びその敷地が適正に管理され、建物を再生した上で再分譲するなどして有効に活用されることを期待することができるし、売却をした者も、売却代金を原資として、別の建物を取得することが可能になる。

 しかし、現行区分所有法においては、区分所有建物及び敷地を一括して売却するためには区分所有者全員の同意が必要であるが、区分所有者が極めて多数に上ることも少なくなく、その同意を得ることは必ずしも容易でない

 また、区分所有権の処分を伴う多数決による区分所有建物の再生手法として、建替え制度が既に設けられており、建替え制度と同様の要件・手続によるのであれば、多数決により区分所有建物及びその敷地を一括して売却する仕組みを設けることも許容されるとも考えられる

 現に、被災区分所有法(被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法)には、被災地の復興のため、政令で定める災害により区分所有建物の一部が滅失した場合において、区分所有者、議決権及び敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上の多数決により、区分所有建物及びその敷地を一括して売却する制度が設けられている(被災区分所有法第9条)


<参照> 被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法 第9条

(建物敷地売却決議等)
第九条 第七条に規定する場合において、
当該区分所有建物に係る敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利であるときは、区分所有者集会において、
区分所有者、議決権及び当該敷地利用権の持分の価格の各五分の四以上の多数で、
当該区分所有建物及びその敷地(これに関する権利を含む。)を売却する旨の決議(以下「建物敷地売却決議」という。)
をすることができる。

2 建物敷地売却決議においては、次の事項を定めなければならない。
   一 売却の相手方となるべき者の氏名又は名称
   二 売却による代金の見込額
   三 売却によって各区分所有者が取得することができる金銭の額の算定方法に関する事項


3 前項第三号の事項は、各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならない。

(以下、略)

 マンション建替円滑化法(マンションの建替え等の円滑化に関する法律)においても、特定要除却認定を受けたマンションについて、区分所有者、議決権及び敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上の多数決により、マンション及びその敷地を一括して売却するマンション敷地売却制度が設けられている(マンション建替円滑化法第108条)。


<参照> マンションの建替え等の円滑化に関する法律 108条

(マンション敷地売却決議)
第百八条 特定要除却認定を受けた場合において、
特定要除却認定マンションに係る敷地利用権が数人で有する所有権又は借地権であるときは、
区分所有者集会において、区分所有者、議決権及び当該敷地利用権の持分の価格の各五分の四以上の多数で、
当該特定要除却認定マンション及びその敷地(当該敷地利用権が借地権であるときは、
その借地権)を売却する旨の決議(以下「マンション敷地売却決議」という。)をすることができる。

2 マンション敷地売却決議においては、次に掲げる事項を定めなければならない。
   一 買受人(第百二十条第一項の規定により組合(第百十六条に規定する組合をいう。以下この号において同じ。)が設立された場合にあっては、組合から特定要除却認定マンションを買い受ける者)となるべき者の氏名又は名称
   二 売却による代金の見込額
   三 売却によって各区分所有者が取得することができる金銭(以下「分配金」という。)の額の算定方法に関する事項

3 前項第一号に掲げる者は、次条第一項の認定を受けた者でなければならない。

4 第二項第三号に掲げる事項は、各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならない。

(以下、略)

 なお、マンション敷地売却制度では、買受人は除却並びに転出者への代替建築物の提供等の計画を作成の上、都道府県知事等の認定を受け、計画に基づく除却並びに区分所有者への代替建築物の提供等を実施しなければならないと定められている(マンション建替円滑化法第109条、第113条)。

 そこで、試案では、区分所有建物の再生の円滑化を図るため、区分所有法においても、被災区分所有法を参考に、一定の多数決によって区分所有建物及び敷地を一括して売却することを可能にする制度(建物敷地売却制度
を設けることを提案している。」

 とのことで、「被災区分所有法(被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法)」や、区分所有法での建替え決議の後を受け持っている「マンション建替円滑化法(マンションの建替え等の円滑化に関する法律)」でも採用されている手法の「建物とその敷地の売却」を一定の条件の基に、区分所有法でも取り入れたということです。

   

★「建替え」と同じように事前に勉強会を開いて、他の「建物更新」などと充分に比較検討すること

 第64条の6の「建物敷地売却」においても、建替えと同様に、区分所有者にとっては、現在住んでいる建物から引っ越しを伴いますから、事前にマンション管理士など専門家を交えた勉強会(検討会)を開催して、不満や改善要求などの情報を集め、最終的に多くの区分所有者から納得がいくようにコンセンサス(同意)をえる準備が必要です。

 特に、高齢者等の居住の安定には配慮する必要があります。

 なお、勉強会(検討会)の費用は、総会で定めれば(普通決議)、管理費会計からでも修繕積立金会計からでも充当できます。

★建物敷地売却決議の要件

 @敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利であるとき
 A集会において
 B ア.区分所有者(議決権を有しないものを除く。)、
    イ.議決権 及び
    ウ.当該敷地利用権の持分(議決権を有しない区分所有者が有するものを除く。)の価格
   各五分の四以上の多数で
 C建物敷地売却決議 =建物及びその敷地(これに関する権利を含む。)を売却する旨の決議
 をすることができる。

1.建物敷地売却決議の要件の1 〜敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利であるとき〜
 第64条の6で定める「建物敷地売却決議」の要件の1番目の「@敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利であるとき」は、かなり区分所有法を勉強した人は、この文章は、何処かにあった文章だと気付いたと思います。

 ・敷地利用権とは・・・マンションの所有者(区分所有者)が、自分の専有部分(室)を「所有」するために必要な土地に関する権利のことです。(区分所有法第2条6項)
 :その他の権利であるとき・・・敷地利用権は、民法での所有権以外にも、地上権(物権)、賃借権(債権)、また殆どないが無償の「使用貸借」である場合もある。その他の権利であるときとは、地上権や、賃貸借権などの場合をさします。

   

 原則として、敷地利用権が土地の所有権、地上権、賃借権などで、これらが民法で規定する「共有」または「準共有」の関係にあるときは、持主は建物の「専有部分」と土地の「利用権」を別々には動かせない。
これで原則として、建物の「専有部分」と土地の「利用権」は一緒に動くことになる。 
 土地の所有権も敷地利用権に含まれる。(区分所有法第22条)

 そうです、第22条の規定に「敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利であるとき(場合ですが)」の文章があります。

<参照> 区分所有法 第22条

第三節 敷地利用権

(分離処分の禁止)
第二十二条 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利である場合には、区分所有者は、その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができない。ただし、規約に別段の定めがあるときは、この限りでない。

2 前項本文の場合において、区分所有者が数個の専有部分を所有するときは、各専有部分に係る敷地利用権の割合は、第十四条第一項から第三項までに定める割合による。ただし、規約でこの割合と異なる割合が定められているときは、その割合による。

3 前二項の規定は、建物の専有部分の全部を所有する者の敷地利用権が単独で有する所有権その他の権利である場合に準用する。

 ということで、まず、「建物敷地売却決議」ができるためには、専有部分(室)に対する土地(敷地)の権利=敷地利用権が、複数の区分所有者によって「共有」や「準共有」などの関係にあることです。

 この要件に合致しない、民法での「分有」関係にあるテラスハウスやタウンハウスでは、この「建物敷地売却決議」できないということになります。

  該当のマンションのような区分所有建物の敷地の権利(敷地利用権)が、ある個人の単独所有でなく、区分所有者の共有などであるために、その処分に多数決の理論を採用しています。

2.建物敷地売却決議の要件の2と3 
  A集会において、
  B ア.区分所有者(議決権を有しないものを除く。)、
     イ.議決権 及び
     ウ.当該敷地利用権の持分(議決権を有しない区分所有者が有するものを除く。)の価格
    各五分の四以上の多数

  「建物敷地売却決議」で必要な要件の「A集会を開け」は、建物と敷地を売り払うという極めて重要な決議は、規約で定めることはできないという、当然な規定です。

 その集会では、多数決要件として、
  B ア.区分所有者(議決権を有しないものを除く。)、
     イ.議決権 及び
     ウ.当該敷地利用権の持分(議決権を有しない区分所有者が有するものを除く。)の価格の
    各五分の四以上の多数
   の賛成が求められます。

  区分所有者の共有な持物であるマンションなど区分所有建物の建物とその敷地を売ってしまうためには、民法の「共有者全員の合意」を基本としなければなりませんが、100名以上も関係するマンションでは、民法で定める「共有者全員の合意を得る」ことは、不可能です。そこで、民法との妥協点が、この「4/5(80%)以上」という多数決の規定です。

  注:”出席した”の条件はない・・・令和8年4月1日施行の改正区分所有法で採用された、通常の集会では、過半数の出席で集会は成立し、その出席した区分所有者と議決権の各過半数があれば可決しますが、「建替え決議」と同様に、「建物敷地売却決議」においては、建物と敷地を売りはらうという権利の処分を伴う重大性から、議決権を有しない所在等不明者は除きますが、基本的に全区分所有者と全議決権にプラスして土地の売却も絡むため、第62条の「建替え決議」にはない、敷地利用権の持分価格においても、4/5以上 の賛成が必要としています。

  ア.区分所有者の数 4/5以上
    ・議決権を有しない者を除く・・・令和8年4月1日施行の改正区分所有法で、基本的に、住民票などから調べても所在等不明な区分所有者は、集会の決議の母数から除外されます。(第38条の2)
    ・共有者・・・1人として扱われる(第40条) 
  イ.議決権 4/5以上
    ・所在等不明区分所有者の持っている議決権数は、当然入らない
    ・議決権は、原則:その専有部分の床面積の割合(別段規約で設定可)(第14条)
  ウ.敷地利用権の持分価格 4/5以上
    ・通常は、「敷地利用権の持分の価格」は「敷地利用権の持分」と同じであるものと考えられます。
    細かく求めるなら
    ・敷地利用権の価格・・・区分所有者の敷地利用権の持分の価格を出すためには、まず、その区分所有建物の全体の敷地利用権の価格を出す必要があります。
     ・敷地利用権の算出方法・・・国税庁の「路線価方式」がある(詳細は、「マンション購入からの税」を参照)
      ステップ1・・・固定資産税路線価を使用して、そのマンション全体の土地(敷地)の評価額をだす
      ステップ2・・・敷地全体評価額 x 各区分所有者の敷地権割合 = 敷地権持分の価格
       敷地権の割合・・・規約または登記事項証明書で確認のこと
     ・議決権を有しない区分所有者が有するものは除く
    
   という要件を満たせば、「建物とその敷地」を売却することが、可能です。

★建物に「客観的な事由(5つ)」あれば、4/5(80%)以上 を 3/4(75%)以上に緩和できる。

  この「建物敷地売却決議」においても、第64条の6 3項において、「建替え決議」において、令和8年4月1日施行の改正区分所有法第62条2項で追加された、以下の5つの「客観的な事由」、 
  @ 耐震性の不足
  A 火災に対する安全性の不足
  B 外壁等の?落により周辺に危害を生ずるおそれ
  C 給排水管等の腐食等により著しく衛生上有害となるおそれ
  D バリアフリー基準への不適合
 のいずれかに該当すれば、多数決の割合を、4/5(80%)以上から 3/4(75%)以上 に引き下げることができます。(第64条の6 3項での準用)

 緩和される理由は、上の状態を放置すると第三者に危険が及ぶなど、単なるそのマンションなど区分所有建物内部の問題ではなく、公共安全にも影響を与えるため、危険状態の解消を進めるためです。

★敷地利用権が借地権の場合

 区分所有建物は、区分所有者たちの所有(共有)ですから、これを区分所有法に従って特別多数決で売却することは可能ですが、敷地(土地)の利用権が、区分所有者とは別の地主の持ち物、つまり、借地権である場合には、敷地利用権者である賃借人の地位は、新しく敷地利用権を買った人へ移転します。

 つまり、地代や契約期間、用途制限など、区分所有者が賃借人として持っていた権利は、全部そのまま、新しい購入者へ移転するということです。

 しかし、借地権の譲渡には、原則として地主の承諾が必要です(借地借家法 第19条1項)から、「建物敷地売却決議」をする前に、「敷地利用権」を売却し第三者に譲渡することについて地主の承諾を取っておくことです。
 区分所有法内での規定である「建物敷地売却決議」だけでは、外部の人である地主の承諾がないと、「建物敷地売却決議」は、内部的に成立してもその実行出来ません。

<参照> 借地借家法 第19条

(土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可)
第十九条 借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる。
 この場合において、当事者間の利益の衡平を図るため必要があるときは、賃借権の譲渡若しくは転貸を条件とする借地条件の変更を命じ、又はその許可を財産上の給付に係らしめることができる。

2 裁判所は、前項の裁判をするには、賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡又は転貸を必要とする事情その他一切の事情を考慮しなければならない。

3 第一項の申立てがあった場合において、裁判所が定める期間内に借地権設定者が自ら建物の譲渡及び賃借権の譲渡又は転貸を受ける旨の申立てをしたときは、裁判所は、同項の規定にかかわらず、相当の対価及び転貸の条件を定めて、これを命ずることができる。この裁判においては、当事者双方に対し、その義務を同時に履行すべきことを命ずることができる。

4 前項の申立ては、第一項の申立てが取り下げられたとき、又は不適法として却下されたときは、その効力を失う。

5 第三項の裁判があった後は、第一項又は第三項の申立ては、当事者の合意がある場合でなければ取り下げることができない。

6 裁判所は、特に必要がないと認める場合を除き、第一項又は第三項の裁判をする前に鑑定委員会の意見を聴かなければならない。

7 前各項の規定は、転借地権が設定されている場合における転借地権者と借地権設定者との間について準用する。ただし、借地権設定者が第三項の申立てをするには、借地権者の承諾を得なければならない。

 


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(建物敷地売却決議)

第六十四条の六 (注:令和8年4月1日施行で改正あり。新設。)

2項  建物敷地売却決議においては、次の事項を定めなければならない。
   一 売却の相手方となるべき者の氏名又は名称
   二 売却による代金の見込額
   三 売却によつて各区分所有者が取得することができる金銭の額の算定方法に関する事項 

過去出題 マンション管理士
管理業務主任者

  令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、建替えの選択肢(オプション)として新設された4つの  
 ・第64条の5:建物更新決議 
 ・第64条の6:建物敷地売却決議
 ・第64条の7:建物取壊し敷地売却決議
 ・第64条の8:取壊し決議
 内の1つです。

施行は、令和8年4月1日。

 

◎建物敷地売却決議において定める3つの事項

 本第64条の6 2項は、「建物敷地売却決議」においては、3つの事項を定めておくことが必要だといっています。

 「建物敷地売却決議」の目的は、建物と敷地を売却し、その売却代金を区分所有者に分配することです。
 区分所有者はその売却で得たお金をもとに、新たな生活資金にしたり、別の場所へ移り住んだりすることが可能となります。

 一方、建物と敷地の購入者(デベロッパーなど)は、その土地に新しく商業ビルやオフィスビルなど、マンション以外の建物を建設することも可能です。

 そのために、上でも述べましたが、事前に「建替え」や他の「建物更新」などと比較・検討し、また、買ってくれる人を見つける(探し出す)作業と売却金額を決めることは、時間がかかり不動産や建築など専門的な知識も必要とされる大変なことです。
 早期に、宅地建物取引士でもあり不動産業にも詳しい「マンション管理士 香川事務所」に相談しましょう。

 この大変さがあるため、「建物敷地売却決議」をする際には、以下の3つの事項を定めろといっています。

 @ 売却の相手方となるべき者の氏名又は名称
 A 売却による代金の見込額
 B 売却によつて各区分所有者が取得することができる金銭の額の算定方法に関する事項

1.売却の相手方となるべき者の氏名又は名称
 「建物敷地売却決議」をする際に決めなければならない1番目は「売却の相手方となるべき者の氏名又は名称」です。
 この規定は、当然といえば当然で、今ある区分所有建物全体とその敷地を一体誰が買ってくれるのか その購入者は、個人なのか法人なのかは、事前に交渉して決めておく必要があります。

 この規定があるということは、区分所有者の団体(管理組合)は、「建物敷地売却決議案」を提出する前に、あちらこちらの個人なり法人と接触して、その個人または法人から、購入希望額を得ていることが求められます。
 この交渉は、動く金額もかなり大きくなると想定されますから、相場額を調べたりして大変で、時間がかかります。

  ★売却の相手と売却額が決まったたら、覚書などで、書類を交換しておくこと
   「建物敷地売却決議」の前提となる売却の相手が、そのマンションを購入しないとなると、「建物敷地売却決議」も無効となりまから、そんな事態にならないように、必ず売却の相手と売却額などを明示した「覚書」を交換しておいてください。

   

 2.売却による代金の見込額
  「建物敷地売却決議」をする際に決めなければならない2番目は「売却による代金の見込額」です。
  買ってくれる相手(売却の相手方)が決まり、売れる金額が決まっていることは、重要なことです。

  売却額が決まっていなければ、「建物と土地」を売る「建物敷地売却決議」は出来ません。
  この「売却見込み額」は、極端な事由が起こらなければ、ほぼ「売却額」となります。

 3.売却によつて各区分所有者が取得することができる金銭の額の算定方法に関する事項
  「建物敷地売却決議」をする際に決めなければならない終りの3番目は「売却によつて各区分所有者が取得することができる金銭の額の算定方法に関する事項」です。各区分所有者が受け取る金額の配分基準です。

  ・金額算定基準
   各区分所有者がいくら受け取ることができるかは、各区分所有者にとって一番の関心事項です。
   そこで、考えられる受取金額の配分算定方法としては、以下の方法があります。
   1.専有部分の割合方式・・・各室の床面積の割合による
   2.敷地利用権の持分方式・・・規約なり登記事項証明書による割合
   3.固定資産税に基づく割合方式・・・路線価方式(タワー・マンションなどでは、階層別専有床面積補正率を使用すること)で算出された固定資産税をもとにする割合
   4.分譲された室の金額を元に算出する方式・・・マンションでは階数(眺望)や南向きなどで、分譲価格が違うため、分譲された当時の各室(専有部分)の価格を元にする。しかし、これでは、分譲当時の各室の価格を把握していること、とか途中でリフォームした場合などをどう評価するか揉める。

   分配金を受け取る区分所有者にしてみれば、一円でも多く貰いたいので、この受取金額の分配に関しては、一度の説明会(「建物敷地売却決議」をする会日よりも少なくても1ヶ月前には開催すること(第62条8項の準用))では、なかなか結論がでないと思われますから、説明会は、複数回開催されることでしょう。

  なお、この際には、引っ越し費用や店舗や事務所として使用していたなどの補償は、考慮しない方がいいでしょう。

  いずれにしても、区分所有者間で十分に話し合った上で、各区分所有者の衡平を害しないよう適切に定めることが必要です。(第62条5項の準用)


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(建物敷地売却決議)

第六十四条の六 (注:令和8年4月1日施行で改正あり。新設。)

3項 第六十二条(第一項及び第四項を除く。)及び第六十三条から第六十四条の四までの規定は、建物敷地売却決議について準用する。この場合において、第六十二条第二項中「前項」とあるのは「第六十四条の六第一項」と、同条第五項中「前項第三号及び第四号」とあるのは「第六十四条の六第二項第三号」と、同条第七項第一号及び第二号中「の建替え」とあるのは「及びその敷地(これに関する権利を含む。)の売却」と、第六十三条第一項、第二項及び第四項から第六項まで、第六十四条並びに第六十四条の二第一項中「建替えに」とあるのは「売却に」と、第六十三条第七項中「建物の取壊しの工事に着手しない」とあるのは「売買契約による建物及びその敷地(これに関する権利を含む。)についての権利の移転(以下この項及び次項において「建物等の権利の移転」という。)がない」と、同項ただし書中「建物の取壊しの工事に着手しなかつた」とあるのは「建物等の権利の移転がなかつた」と、同条第八項中「建物の取壊しの工事の着手」とあるのは「建物等の権利の移転」と、「その着手をしない」とあるのは「建物等の権利の移転がない」と、第六十四条中「建替えを」とあるのは「売却を」と読み替えるものとする。

過去出題 マンション管理士
管理業務主任者

 令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、建替えの選択肢(オプション)として新設された4つの  
 ・第64条の5:建物更新決議 
 ・第64条の6:建物敷地売却決議
 ・第64条の7:建物取壊し敷地売却決議
 ・第64条の8:取壊し決議
 内の1つです。

施行は、令和8年4月1日。

  

◎「建替え決議」の条文を「建物敷地売却決議」にも準用する。

 本第64条の6 3項では、「建物敷地売却決議」は、「建替え」の選択肢(オプション)として、令和8年4月1日施行の改正区分所有法で新規追加された規定ですから、基本的に元々規定された「建替え決議」の条文、
  ・第62条(建替え決議)
  ・第63条(区分所有権等の売渡し請求等)  から
  ・第64条(建替えに関する合意) まで、
 そして、令和8年4月1日施行の改正区分所有法で新設された
  ・第64条の2(賃貸借の終了請求)
  ・第64条の3(使用貸借の終了請求)
  ・第64条の4(配偶者居住権の消滅請求)
  までが準用され、読み替えが行われますが、この規定も「団地の規定(第66条)」と同様に、こんなに列挙されるともう面倒との気持ちが先に立ってしまいます。

 でも、「超解説 区分所有法」の解説者としては、ちゃんと解説しましょう。 

 第64条の6 3項の準用関係を纏めると以下のようになります。

 準用されている条文 
 条・項 条文  読み替え 
  基本読替え (建替え決議) → (建物敷地売却決議)へ  
第62条(建替え決議) 1項と4項は除く。   
第62条2項   2 建物が次の各号のいずれかに該当する場合における 前項 → 第六十四条の六第一項 の規定の適用については、同項中「五分の四」とあるのは、「四分の三」とする。
   一 地震に対する安全性に係る建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき。
   二 火災に対する安全性に係る建築基準法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき。
   三 外壁、外装材その他これらに類する建物の部分が?離し、落下することにより周辺に危害を生ずるおそれがあるものとして法務大臣が定める基準に該当するとき。
   四 給水、排水その他の配管設備(その改修に関する工事を行うことが著しく困難なものとして法務省令で定めるものに限る。)の損傷、腐食その他の劣化により著しく衛生上有害となるおそれがあるものとして法務大臣が定める基準に該当するとき。
   五 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律第十四条第五項に規定する建築物移動等円滑化基準に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき。
 あり
 第62条3項  3 法務大臣は、前項各号の基準を定め、又はこれを変更するときは、あらかじめ、国土交通大臣と協議するものとする。  
 第62条5項  5 前項第三号及び第四号 → 第六十四条の六第二項第三号 の事項は、各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならない。  あり
 第62条6項  6 建替え決議 → 建物敷地売却決議 を会議の目的とする集会を招集するときは、第三十五条第一項の通知は、同項の規定にかかわらず、当該集会の会日より少なくとも二月前に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸長することができる。  
 第62条7項  7 前項に規定する場合において、第三十五条第一項の通知をするときは、会議の目的たる事項及び議案の要領のほか、次の事項をも通知しなければならない。
   一 建物 の建替え → 及びその敷地(これに関する権利を含む。)の売却 を必要とする理由
   二 建物 の建替え → 及びその敷地(これに関する権利を含む。)の売却 をしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
   三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
   四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
 あり
 第62条8項  8 第六項の集会を招集した者は、当該集会の会日より少なくとも一月前までに、当該招集の際に通知すべき事項について区分所有者に対し説明を行うための説明会を開催しなければならない。  
 第62条9項  9 第三十五条及び第三十六条の規定は、前項の説明会の開催について準用する。  
 第62条10項  10 前条第六項の規定は、建替え決議 → 建物敷地売却決議をした集会の議事録について準用する。  あり
     
 (区分所有権等の売渡し請求等)   
 第63条1項   建替え決議 → 建物敷地売却決議があつたときは、集会を招集した者は、遅滞なく、建替え決議 → 建物敷地売却決議に賛成しなかつた区分所有者(その承継人を含む。)に対し、建替え決議 → 建物敷地売却決議の内容により 建替えに → 売却に 参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告しなければならない。  あり
 第63条2項   2 集会を招集した者は、前項の規定による書面による催告に代えて、法務省令で定めるところにより、同項に規定する区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により建替え決議 → 建物敷地売却決議の内容により 建替えに → 売却に 参加するか否かを回答すべき旨を催告することができる。この場合において、当該集会を招集した者は、当該書面による催告をしたものとみなす。  あり
 第63条3項   3 第一項に規定する区分所有者は、同項の規定による催告を受けた日から二月以内に回答しなければならない。  
 第63条4項   4 前項の期間内に回答しなかつた第一項に規定する区分所有者は、 建替えに → 売却に 参加しない旨を回答したものとみなす。  あり
 第63条5項   5 第三項の期間が経過したときは、建替え決議 → 建物敷地売却決議に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議 → 建物敷地売却決議の内容により 建替えに → 売却に 参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)又はこれらの者の全員の合意により区分所有権及び敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者(以下「買受指定者」という。)は、同項の期間の満了の日から二月以内に、 建替えに → 売却に 参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含む。)に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。建替え決議 → 建物敷地売却決議があつた後にこの区分所有者から敷地利用権のみを取得した者(その承継人を含む。)の敷地利用権についても、同様とする。  あり
 第63条6項   6 前項の規定による請求があつた場合において、 建替えに → 売却に 参加しない旨を回答した区分所有者が建物の明渡しによりその生活上著しい困難を生ずるおそれがあり、かつ、建替え決議 → 建物敷地売却決議の遂行に甚だしい影響を及ぼさないものと認めるべき顕著な事由があるときは、裁判所は、その者の請求により、代金の支払又は提供の日から一年を超えない範囲内において、建物の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。  あり
 第63条7項   7 建替え決議 → 建物敷地売却決議の日から二年以内に 建物の取壊しの工事に着手しない → 売買契約による建物及びその敷地(これに関する権利を含む。)についての権利の移転(以下この項及び次項において「建物等の権利の移転」という。)がない 場合には、第五項の規定により区分所有権又は敷地利用権を売り渡した者は、この期間の満了の日から六月以内に、買主が支払つた代金に相当する金銭をその区分所有権又は敷地利用権を現在有する者に提供して、これらの権利を売り渡すべきことを請求することができる。

 ただし、建物の取壊しの工事に着手しなかつた → 建物等の権利の移転がなかつた ことにつき正当な理由があるときは、この限りでない。
 あり
 第63条8項   8 前項本文の規定は、同項ただし書に規定する場合において、建物の取壊しの工事の着手 → 建物等の権利の移転 を妨げる理由がなくなつた日から六月以内に その着手をしない → 建物等の権利の移転がない ときに準用する。この場合において、同項本文中「この期間の満了の日から六月以内に」とあるのは、「建物の取壊しの工事の着手を妨げる理由がなくなつたことを知つた日から六月又はその理由がなくなつた日から二年のいずれか早い時期までに」と読み替えるものとする。  あり
     
 (建替えに関する合意)   
 第64条  建替え決議 → 建物敷地売却決議に賛成した各区分所有者、建替え決議 → 建物敷地売却決議の内容により 建替えに → 売却に 参加する旨を回答した各区分所有者及び区分所有権又は敷地利用権を買い受けた各買受指定者(これらの者の承継人を含む。)は、建替え決議 → 建物敷地売却決議の内容により 建替えを → 売却を 行う旨の合意をしたものとみなす。  あり
     
 (賃貸借の終了請求) *新設  
 第64条の2 1項  建替え決議 → 建物敷地売却決議があつたときは、建替え決議 → 建物敷地売却決議に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議 → 建物敷地売却決議の内容により 建替えに → 売却に に参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)若しくはこれらの者の全員の合意により賃貸借の終了を請求することができる者として指定された者又は賃貸されている専有部分の区分所有者は、当該専有部分の賃借人に対し、賃貸借の終了を請求することができる。 あり 
 第64条の2 2項  2 前項の規定による請求があつたときは、当該専有部分の賃貸借は、その請求があつた日から六月を経過することによつて終了する。  
 第64条の2 3項  3 第一項の規定による請求があつたときは、当該専有部分の区分所有者は、当該専有部分の賃借人(転借人を含む。第五項において同じ。)に対し、賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償金を支払わなければならない。  
 第64条の2 4項  4 第一項の規定による請求をした者(当該専有部分の区分所有者を除く。)は、当該専有部分の区分所有者と連帯して前項の債務を弁済する責任を負う。  
 第64条の2 5項  5 専有部分の賃借人は、第二項の規定により当該専有部分の賃貸借が終了したときであつても、前二項の規定による補償金の提供を受けるまでは、当該専有部分の明渡しを拒むことができる。  
     
 (使用貸借の終了請求) *新設  
 第64条の3  前条第一項及び第二項の規定は、専有部分が使用貸借の目的物とされている場合(民法第五百九十八条第一項又は第二項に規定する場合を除く。)について準用する。  
     
 (配偶者居住権の消滅請求) *新設  
 第64条の4  第六十四条の二の規定は、専有部分に配偶者居住権が設定されている場合(民法第千三十五条第一項ただし書に規定する場合を除く。)について準用する。  

  といったように「建替え」(第62条〜)からの準用が多いので、詳細は、各条文に戻って見てくれればいいのですが、準用の概要を説明します。

★「建物敷地売却決議」の流れ

 *建物とその敷地を売り払ってしまう「建物敷地売却」の決議は、
 ・区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議決権の各4/5(80%)以上の多数できる。(注:ここには、”出席した”は入っていない
 ・また、耐震性の不足や火災に対する安全性の不足、バリアフリー基準に適していないなど「客観的な5つの事由」に当てはまれば、 多数決の割合が、 3/4(75%)以上に緩和される。(第62条2項)
 ・建物敷地売却決議を目的とする集会は、
  ・集会の当日の 2ヶ月以上前に集会招集の通知をだす(第62条6項)

  ・その通知には、建物敷地売却に対して賛否を判断できる材料として、
   ・その@議題とA議案の要領にプラスして
      一 建物と敷地の売却 を必要とする理由
      二 建物と敷地の売却 をしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
      三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
      四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
     も通知する(第62条7項)

 ・その説明会は、集会日より少なくとも1ヶ月前に開催する(第62条8項)
   説明会は、何度開催してもいい。
 ・集会の手続は、第35条(共有者の取扱、通知場所、掲示など)、第36条(招集手続は、全員が同意すれば、省略できる)による。これは、説明会でも適用する(第62条9項)

 ・開催された建物敷地売却決議では、
    一 売却の相手方(買取るデベロッパーなど)となるべき者の氏名又は名称
    二 売却による代金の見込額
    三 売却によつて各区分所有者が取得することができる金銭の額の算定方法に関する事項
   を定めること。

 ・その集会の議事録には、建物敷地売却決議についての各区分所有者の賛否をも記載又は記録する。(第62条10項)
  この賛否の記録によって、あとの「区分所有権等の売渡請求」の当事者が確定出来る。
 ・建物敷地売却決議に賛成しない区分所有者は、2ヶ月の考慮期間を経て、建物敷地売却決議の賛成者になることもできる。(第63条)

 ・最終的に建物敷地売却決議に反対者となれば、反対者は建物敷地売却決議の賛成者(または後から参加したデベロッパー)から区分所有権(専有部分の権利)と土地の権利(敷地利用権)の売渡請求を受けて、2ヶ月以内に出ていくことになる。(第63条5項など)
 ・出て行くに際して、生活上の困難があれば、裁判所の判断で代金を受け取ってから、1年を超えない範囲で明渡が認められることもある。(第63条6項)
 ・また、建物敷地売却決議があっても、正当な理由が無くて2年が過ぎても売買契約による建物及びその敷地についての権利の移転(区分所有権と敷地利用権)がない時には、区分所有権と敷地利用権を売った区分所有者は、逆にそれらの権利を買い戻すことができる。(第63条7項)
 ・建物敷地売却決議に賛成した区分所有者等は、全員「建物敷地売却決議の内容に合意したものとみなし」これから先の建物敷地売却決議による権利の移動などが始まるのは、「建替え決議」と同様です。(第64条)
 
 また、令和8年4月1日施行の改正区分所有法で新規追加された、専有部分に
  @賃貸借(第64条の2)
  A使用貸借(第64条の3)
  B配偶者居住権(第64条の4)
  があれば、その終了(消滅)も請求できます。

  この場合、賃借人や配偶者居住権者に適切な補償金を支払う義務があり、(第64条の2 3項)、賃借人や配偶者居住権者は、補償金を受け取るまでは、その専有部分の明渡しを拒めます。(第64条の2 5項)

★売渡請求での時価の決め方

 「建物敷地売却決議」が有効に可決されれば、「建物敷地売却決議」の賛成者、または、売却参加者全員の合意により区分所有権及び敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者(買受指定者)は、建物と敷地の売却に参加しない区分所有者に対して、その区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すよう請求することができます。(準用:第63条5項)

 そこで、この売渡請求での時価が問題となります。
 通常、建物敷地売却決議が成立した時点での市場価格を基に、
  ・建物を取り壊すことを前提にして、不動産鑑定士などが、
   ・取引事例比較法・・・近隣類似マンションの成約事例、築年数・階数・方位・専有面積補正をする
   ことで、時価を算出します。

  これは、売却代金の分配金の額と理論的に大きな違いは生じないものと考えられます。

★賃借人や配偶者居住権者への補償額の決め方は 〜区分所有者への時価ではない〜

  ◎賃借人に対する「補償額」は、うける実際の損失の補填として
  ・移転料(引っ越し費用)、
  ・旧家賃と新家賃との差額、敷金礼金の有無
  、
  営業をしていれば、
  ・営業廃止の補償、
  ・営業休止の補償、
  ・仮営業の補償、
  ・営業規模縮小の補償、
  ・雑費
  などを考慮した額になります。(第64条の2 3項)

 ◎配偶者居住権者に対する「補償額」は、

   補償額=年間居住利益÷割引率 

  として 具体的には、
   ・想定賃料相当額
   ・余命期間
   ・割引率
   ・管理費負担関係
  などが要素になります。(第64条の4)

  

 詳細は、前に戻って見てください。


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(建物取壊し敷地売却決議)

第六十四条の七 (注:令和8年4月1日施行で改正あり。新設。)

1項 敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利であるときは、集会において、区分所有者(議決権を有しないものを除く。)、議決権及び当該敷地利用権の持分(議決権を有しない区分所有者が有するものを除く。)の価格の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊し、かつ、建物の敷地(これに関する権利を含む。次項において同じ。)を売却する旨の決議(同項及び第三項において「建物取壊し敷地売却決議」という。)をすることができる。

過去出題 マンション管理士
管理業務主任者

  令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、建替えの選択肢(オプション)として新設された4つの  
 ・第64条の5:建物更新決議 
 ・第64条の6:建物敷地売却決議
 ・第64条の7:建物取壊し敷地売却決議
 ・第64条の8:取壊し決議
 内の1つです。

施行は、令和8年4月1日。

 

◎新たな建物再生化手法の創設 〜建替えに代わるオプション(選択肢)を増やした〜

 上の「建物更新決議(第64条の2)等でも、述べましたが、区分所有法第62条における「建替え」では、集会を開いて、区分所有者及び議決権の各4/5(80%)以上の多数で既存の区分所有建物を壊して、元の土地(一部でも全部でも、またプラス近隣の土地)に新しく建物を建築するやり方しかありませんでしたが、令和8年4月1日施行の改正区分所有法では、過去の建替えにおいて費用だとか問題となった点を顧みて、従来の「建替え」に以下の4つの選択肢(オプション)を追加・新設しました。

 それが、
  @建物更新決議・・・第64条の5・・・建物の躯体を残し、共用部分と専有部分の形状等を変更する
  A建物敷地売却決議・・・第64条の6・・・既存の建物とその敷地を売ってしまう
  B建物取壊し敷地売却決議・・・第64条の7・・・既存の建物を取り壊した上で、その敷地を売ってしまう
  C取壊し決議・・・第64条の8・・・既存の建物を取り壊す
 です。

★第64条の7「建物取壊し敷地売却決議」制度設定の理由 〜建物の取壊し費用は、現在の区分所有者が負担する〜

 令和8年4月1日施行の改正区分所有法で「建替え決議」以外の方式として制定された4つの内の3番目の建物を取壊してその敷地を売ってしまう本第64条の7「建物取壊し敷地売却決議」が創設された理由は、審議会の資料では、以下のようになっています。

 「建物取壊し敷地売却制度について
 例えば、区分所有建物が老朽化や局地的な災害等により危険な状態になっている場合において、区分所有者の相当多数が、建物の保存行為や復旧、建替えの工事を実施することを望まず、区分所有建物及び敷地を売却したいと希望しているのに対し、敷地の購入を希望する者は現に存在するが、その者は危険な区分所有建物の購入を望まず、建物が取り壊されれば敷地だけを購入したいと考えているケースがあり得る。

 また、区分所有建物の購入希望者は建物も含めて購入してもよいと考えているとしても、建物の危険性に鑑みると、売却に先立って早急に取壊しを行う必要があるケースもあると思われる。
しかし、現行区分所有法においては、多数決によって区分所有建物を取り壊して敷地を売却することはできず、区分有者全員の同意が必要となるが、区分所有者が極めて多数に上ることも少なくなく、その同意を得ることは必ずしも容易でない。

 また、建替え制度と同様の要件・手続によるのであれば、多数決により区分所有建物を取り壊して敷地を売却する仕組みを設けることも許容されるとも考えられる。

 現に、被災区分所有法(被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法)には、被災地の復興のため、政令で定める災害により区分所有建物の一部が滅失した場合において、区分所有者、議決権及び敷地利用権の持分の価格の各5分の4以上の多数決により、区分所有建物を取り壊した上で敷地を売却する制度が設けられている(被災区分所有法第10条)。

そこで、試案では、区分所有建物の再生の円滑化のため、区分所有法においても、被災区分所有法を参考に、一定の多数決により、区分所有建物を取り壊し、敷地部分を売却することを可能とする制度(建物取壊し敷地売却制度)を設けることを提案している。」

<参照> 被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法 第10条

(建物取壊し敷地売却決議等)
第十条 前条第一項に規定する場合においては、区分所有者集会において、区分所有者、議決権及び敷地利用権の持分の価格の各五分の四以上の多数で、当該区分所有建物を取り壊し、かつ、これに係る建物の敷地(これに関する権利を含む。次項において同じ。)を売却する旨の決議(次項及び第三項において「建物取壊し敷地売却決議」という。)をすることができる。

2 建物取壊し敷地売却決議においては、次の事項を定めなければならない。
   一 区分所有建物の取壊しに要する費用の概算額
   二 前号に規定する費用の分担に関する事項
   三 建物の敷地の売却の相手方となるべき者の氏名又は名称
   四 建物の敷地の売却による代金の見込額

3 建物取壊し敷地売却決議については、前条第三項から第八項まで並びに区分所有法第六十三条第一項から第五項まで、第七項及び第八項並びに第六十四条の規定を準用する。この場合において、前条第三項中「前項第三号」とあるのは「次条第二項第二号」と、同条第四項中「第一項に」とあるのは「次条第一項に」と、同条第五項第一号中「売却」とあるのは「区分所有建物の取壊し及びこれに係る建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却」と、区分所有法第六十三条第一項、第四項及び第五項並びに第六十四条中「建替えに」とあるのは「区分所有建物の取壊し及びこれに係る建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却に」と、同条中「及び区分所有権」とあるのは「並びに区分所有権」と、「建替えを行う」とあるのは「区分所有建物の取壊し及びこれに係る建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却を行う」と読み替えるものとする。」

 ということで、この「建物取壊し敷地売却決議」も、前の「建物敷地売却決議」と同様に、被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法(被災区分所有法)で採用されている手法を、区分所有法内に取込んだということです。

「建物取壊し敷地売却決議(第64条の7)」と「建物敷地売却決議(第64条の6)」の大きな違いは、「建物」を取壊して(解体して)から、土地だけ売るのか、それとも「建物」は、壊さずに売るのかです。

 買う方にしてみれば、もう老朽化していたり、地震に耐えられない建物であれば、建物の解体費用は、区分所有者の負担でしてくれということですか。

   

★「建替え」と同じように事前に勉強会を開いて、他の「建物更新」などと充分に比較検討すること

 本第64条の7「建物取壊し敷地売却売却」においても、建替えと同様に、区分所有者にとっては、現在住んでいる建物から引っ越しを伴いますから、事前にマンション管理士など専門家を交えた勉強会(検討会)を開催して、不満や改善要求などの情報を集め、最終的に多くの区分所有者から納得がいくようにコンセンサス(同意)をえる準備が必要です。

 特に、高齢者等の居住の安定には配慮する必要があります。

 なお、勉強会(検討会)の費用は、総会で定めれば(普通決議)、管理費会計からでも修繕積立金会計からでも充当できます。

★建物取壊し敷地売却決議の要件

 「建物取壊し敷地売却決議」に必要なのは、

 @敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利であるとき
 A集会において
 B ア.区分所有者(議決権を有しないものを除く。)、
    イ.議決権 及び
    ウ.当該敷地利用権の持分(議決権を有しない区分所有者が有するものを除く。)の価格の
   各五分の四以上の多数で
 C建物取壊し敷地売却決議 =建物を取壊し、かつその敷地(これに関する権利を含む。)を売却する旨の決議
 をすることができる。

1.建物取壊し敷地売却決議の要件の1 〜敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利であるとき〜
 建物取壊し敷地売却決議の要件の1番目の「@敷地利用権が数人で有する所有権その他の権利であるとき」は、上の「建物敷地売却決議」(第64条の6)でも、規定されていた文章です。

 該当のマンションのような区分所有建物の敷地の権利(敷地利用権)が、ある個人の単独所有でなく、区分所有者の共有などであるために、その処分に多数決の理論を採用しています。 

 ・敷地利用権とは・・・マンションの所有者(区分所有者)が、自分の専有部分(室)を「所有」するために必要な土地に関する権利のことです。(区分所有法第2条6項)
 ・その他の権利であるとき・・・敷地利用権は、民法での所有権以外にも、地上権(物権)、賃借権(債権)、また殆どないが無償の「使用貸借」である場合もある。その他の権利であるときとは、地上権や、賃貸借権などの場合をさします。

   

 原則として、敷地利用権が土地の所有権、地上権、賃借権などで、これらが民法で規定する「共有」または「準共有」の関係にあるときは、持主は建物の「専有部分」と土地の「利用権」を別々には動かせない。
これで原則として、建物の「専有部分」と土地の「利用権」は一緒に動くことになる。 
 土地の所有権も敷地利用権に含まれる。(区分所有法第22条)

2.建物取壊し敷地売却決議の要件のAとB 
  A集会において、
  B ア.区分所有者(議決権を有しないものを除く。)、
     イ.議決権 及び
     ウ.当該敷地利用権の持分(議決権を有しない区分所有者が有するものを除く。)の価格
    各五分の四以上の多数

  建物取壊し敷地売却決議で必要な要件の「A集会を開け」は、貴重な財産である建物を取壊してその敷地を売り払うという極めて重要な決議は、規約で定めることはできないという、当然な規定です。

 その集会では、多数決要件として、
  B ア.区分所有者(議決権を有しないものを除く。)、
     イ.議決権 及び
     ウ.当該敷地利用権の持分(議決権を有しない区分所有者が有するものを除く。)の価格の
    各五分の四以上の多数
   の賛成が求められます。

  区分所有者の共有な持物であるマンションなど区分所有建物の建物を取壊しその敷地を売ってしまうためには、民法の「共有者全員の合意」を基本としなければなりませんが、100名以上も関係するマンションでは、民法で定める「共有者全員の合意を得る」ことは、不可能です。そこで、民法との妥協点が、この「4/5以上」という多数決の規定です。

  注:”出席した”の条件はない・・・令和8年4月1日施行の改正区分所有法で採用された、通常の集会では、過半数の出席で集会は成立し、その出席した区分所有者と議決権の各過半数があれば可決しますが、「建替え決議」と同様に、「建物取壊し敷地売却決議」においては、建物を取壊しその敷地を売りはらうという重大性から、議決権を有しない所在等不明者は除きますが、基本的に全区分所有者と全議決権にプラスして土地の売却も絡むため、敷地利用権の持分価格にも、4/5以上 の賛成が必要としています。

  ア.区分所有者の数 4/5以上
    ・議決権を有しない者を除く・・・令和8年4月1日施行の改正区分所有法で、基本的に、住民票などから調べても所在等不明な区分所有者は、集会の決議の母数から除外されます。(第38条の2)
    ・共有者・・・1人として扱われる(第40条) 
  イ.議決権 4/5以上
    ・所在等不明区分所有者の持っている議決権数は、当然入らない
    ・議決権は、原則:その専有部分の床面積の割合(別段規約で設定可)(第14条)
  ウ.敷地利用権の持分価格 4/5以上
    ・通常は、「敷地利用権の持分の価格」は「敷地利用権の持分」と同じであるものと考えられます。
     細かく求めるなら
    ・敷地利用権の価格・・・区分所有者の敷地利用権の持分の価格を出すためには、まず、その区分所有建物の全体の敷地利用権の価格を出す必要があります。
     ・敷地利用権の算出方法・・・国税庁の「路線価方式」がある(詳細は、「マンション購入からの税」を参照)
      ステップ1・・・固定資産税路線価を使用して、そのマンション全体の土地(敷地)の評価額をだす
      ステップ2・・・敷地全体評価額 x 各区分所有者の敷地権割合 = 敷地権持分の価格
       敷地権の割合・・・規約または登記事項証明書で確認のこと
     ・議決権を有しない区分所有者が有するものは除く
    
   という要件を満たせば、「建物を取壊してその敷地」を売却することが、可能です。

★建物に「客観的な事由(5つ)」あれば、4/5((80%)以上 を 3/4(75%)以上に緩和できる。

  この「建物取壊し敷地売却決議」においても、第64条の7 3項の準用において、「建替え決議」において、令和8年4月1日施行の改正区分所有法第62条2項で追加された、 
  @ 耐震性の不足
  A 火災に対する安全性の不足
  B 外壁等の剥落により周辺に危害を生ずるおそれ
  C 給排水管等の腐食等により著しく衛生上有害となるおそれ
  D バリアフリー基準への不適合
  のいずれかに該当すれば、多数決の割合を、4/5(80%)以上から 3/4(75%)以上 に引き下げることができます。(第64条の7 3項での準用)

 社会的な危険性のある建物は、早急に取壊す必要があるとの認識です。


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(建物取壊し敷地売却決議)

第六十四条の七 (注:令和8年4月1日施行で改正あり。新設。)

2項 建物取壊し敷地売却決議においては、次の事項を定めなければならない。
   一 建物の取壊しに要する費用の概算額
   二 前号に規定する費用の分担に関する事項
   三 建物の敷地の売却の相手方となるべき者の氏名又は名称
   四 建物の敷地の売却による代金の見込額
   五 建物の敷地の売却によつて各区分所有者が取得することができる金銭の額の算定方法に関する事項

過去出題 マンション管理士
管理業務主任者

  令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、建替えの選択肢(オプション)として新設された4つの  
 ・第64条の5:建物更新決議 
 ・第64条の6:建物敷地売却決議
 ・第64条の7:建物取壊し敷地売却決議
 ・第64条の8:取壊し決議
 内の1つです。

施行は、令和8年4月1日。

 

★建物取壊し敷地売却決議において定める5つの事項

 本第64条の7 2項は、「建物取壊し敷地売却決議」においては、以下の5つの事項を定めなければならないと規定しています。
   @ 建物の取壊しに要する費用の概算額
   A 前号に規定する費用の分担に関する事項
   B 建物の敷地の売却の相手方となるべき者の氏名又は名称
   C 建物の敷地の売却による代金の見込額
   D 建物の敷地の売却によつて各区分所有者が取得することができる金銭の額の算定方法に関する事項

1.建物の取壊しに要する費用の概算額
  建物取壊し敷地売却決議において定める一番目は、「建物の取壊しに要する費用の概算額」です。
  建物を取り壊すのですから、「建替え決議」(第62条2項2号)で求められているのと同じです。

  取壊し費用は、建物の構造や大きさ、また空き地があるかなどによって異なります。解体業者から見積をとります。
 2025年9月現在、マンションの解体費用は、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)で1坪あたり5万円〜8万円程度です。

  ここは、「取壊し費用の概算額」とありますから、実際の解体費用と違いがあっても構いません。次の2号と絡みます。

2.前号に規定する費用の分担に関する事項
  建物取壊し敷地売却決議において定める二番目は、1号で出された「建物取壊し費用の概算額」を、各区分所有者でどのように負担するかの取り決めです。
 考えられる負担金額の算定方法としては、以下の方法があります。
   ・ 専有部分の割合方式・・・各室の床面積の割合による

3.建物の敷地の売却の相手方となるべき者の氏名又は名称
  建物取壊し敷地売却決議において定める三番目は、「建物の敷地の売却の相手方となるべき者の氏名又は名称」です。
 これは、「建物敷地売却決議」(第64条の6)でも述べましたが、建物を壊した後の敷地を一体誰が買ってくれるのか その購入者は、個人なのか法人なのかは、事前に交渉して決めておく必要があります。

 、区分所有者の団体(管理組合)は、「建物取壊し敷地売却決議案」を提出する前に、あちらこちらの個人なり法人と接触して、買受人となる個人または法人(デベロッパー)を選定し、敷地の購入希望額を得ていることが求められます。
 この交渉は、動く金額もかなり大きくなると想定されますから、相場額を調べたりして大変で、時間がかかります。

  ★売却の相手と売却額が決まったたら、覚書などで、書類を交換しておくこと
   「建物取壊し敷地売却決議」の前提となる敷地の売却の相手が、その敷地を購入しないとなると、「建物取壊し敷地売却決議」も無効となりまから、そんな事態にならないように、必ず売却の相手と売却額などを明示した「覚書」を交換しておいてください。

4.建物の敷地の売却による代金の見込額
  建物取壊し敷地売却決議において定める四番目は、「建物の敷地の売却による代金の見込額」です。

 この敷地を売って得られる代金がいくらであるかは、区分所有者にとって最大の関心事ですから、この規定は重要です。
 この「売却見込み額」は、極端な事由が起こらなければ、ほぼ「売却額」となります。

5.建物の敷地の売却によつて各区分所有者が取得することができる金銭の額の算定方法に関する事項
  建物取壊し敷地売却決議において定める最後の五番目は、敷地売却代金を区分所有者にいかに配分するかです。

 考えられる受取金額の算定方法としては、以下の方法があります。
   1.専有部分の割合方式・・・各室の床面積の割合による
   2.敷地利用権の持分方式・・・規約なり登記事項証明書による割合
   3.固定資産税に基づく割合方式・・・路線価方式(タワー・マンションなどでは、階層別専有床面積補正率を使用すること)で算出された固定資産税をもとにする割合
   4.分譲された室の金額を元に算出する方式・・・マンションでは階数(眺望)や南向きなどで、分譲価格が違うため、分譲された当時の各室(専有部分)の価格を元にする。しかし、これでは、分譲当時の各室の価格を把握していること、とか途中でリフォームした場合などをどう評価するか揉める。 

  受け取る区分所有者にしてみれば、一円でも多く貰いたいので、この受取金額の分配に関しては、一度の説明会(「建物敷地売却決議」をする会日よりも少なくても1ヶ月前には開催すること(第62条8項の準用))では、なかなか結論がでないと思われますから、説明会は、複数回開催されるでしょう。

  なお、この際には、引っ越し費用や店舗や事務所として使用していたなどの補償は、考慮しない方がいいでしょう。

  いずれにしても、区分所有者間で十分に話し合った上で、各区分所有者の衡平を害しないよう適切に定めることが必要です。(第62条5項の準用)
   

 


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(建物取壊し敷地売却決議)

第六十四条の七 (注:令和8年4月1日施行で改正あり。新設。)

3項 第六十二条(第一項及び第四項を除く。)及び第六十三条から第六十四条の四までの規定は、建物取壊し敷地売却決議について準用する。この場合において、第六十二条第二項中「前項」とあるのは「第六十四条の七第一項」と、同条第五項中「前項第三号及び第四号」とあるのは「第六十四条の七第二項第二号及び第五号」と、同条第七項第一号及び第二号中「建替え」とあるのは「取壊し及び建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却」と、第六十三条第一項、第二項及び第四項から第六項まで、第六十四条並びに第六十四条の二第一項中「建替えに」とあるのは「建物の取壊し及び建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却に」と、第六十四条中「及び」とあるのは「並びに」と、「建替えを」とあるのは「建物の取壊し及び建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却を」と読み替えるものとする。

過去出題 マンション管理士
管理業務主任者

  令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、建替えの選択肢(オプション)として新設された4つの  
 ・第64条の5:建物更新決議 
 ・第64条の6:建物敷地売却決議
 ・第64条の7:建物取壊し敷地売却決議
 ・第64条の8:取壊し決議
 内の1つです。

施行は、令和8年4月1日。

 

◎「建替え決議」の条文を「建物取壊し敷地売却決議」にも準用する。

 「建物取壊し敷地売却決議」は、「建替え」の選択肢(オプション)として、令和8年4月1日施行の改正区分所有法で新規追加された規定ですから、基本的に元々規定された「建替え決議」の条文、
  ・第62条(建替え決議)
  ・第63条(区分所有権等の売渡し請求等)  から
  ・第64条(建替えに関する合意) まで、
 そして、令和8年4月1日施行の改正区分所有法で新設された
  ・第64条の2(賃貸借の終了請求)
  ・第64条の3(使用貸借の終了請求)
  ・第64条の4(配偶者居住権の消滅請求)
  までが準用され、読み替えが行われますが、この規定も「団地の規定(第66条)」と同様に、こんなに列挙されるともう面倒との気持ちが先に立ってしまいます。

 でも、「超解説 区分所有法」の解説者としては、ちゃんと解説しましょう。 

 第64条の7 3項の準用関係を纏めると以下のようになります。

 準用されている条文 
 条・項 条文  読み替え 
 (建替え決議) → (建物取壊し敷地売却決議)へ  
 第62条(建替え決議) 1項と4項は除く。   
 第62条2項  2 建物が次の各号のいずれかに該当する場合における 前項 → 第六十四条の七第一項 の規定の適用については、同項中「五分の四」とあるのは、「四分の三」とする。
   一 地震に対する安全性に係る建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき。
   二 火災に対する安全性に係る建築基準法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき。
   三 外壁、外装材その他これらに類する建物の部分が?離し、落下することにより周辺に危害を生ずるおそれがあるものとして法務大臣が定める基準に該当するとき。
   四 給水、排水その他の配管設備(その改修に関する工事を行うことが著しく困難なものとして法務省令で定めるものに限る。)の損傷、腐食その他の劣化により著しく衛生上有害となるおそれがあるものとして法務大臣が定める基準に該当するとき。
   五 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律第十四条第五項に規定する建築物移動等円滑化基準に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき。
 あり
 第62条3項  3 法務大臣は、前項各号の基準を定め、又はこれを変更するときは、あらかじめ、国土交通大臣と協議するものとする。  
 第62条5項  5 前項第三号及び第四号 → 第六十四条の七第二項第二号及び第五号 の事項は、各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならない。

(注:第64条の7 2項 2号:費用の負担、3号:代金の配分)
 あり
 第62条6項  6 建替え決議 → 建物取壊し敷地売却決議 を会議の目的とする集会を招集するときは、第三十五条第一項の通知は、同項の規定にかかわらず、当該集会の会日より少なくとも二月前に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸長することができる。  
 第62条7項  7 前項に規定する場合において、第三十五条第一項の通知をするときは、会議の目的たる事項及び議案の要領のほか、次の事項をも通知しなければならない。
   一 建物 の建替え → 取壊し及び建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却 を必要とする理由
   二 建物 の建替え → 取壊し及び建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却 をしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
   三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
   四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
 あり
 第62条8項  8 第六項の集会を招集した者は、当該集会の会日より少なくとも一月前までに、当該招集の際に通知すべき事項について区分所有者に対し説明を行うための説明会を開催しなければならない。  
 第62条9項  9 第三十五条及び第三十六条の規定は、前項の説明会の開催について準用する。  
 第62条10項  10 前条第六項の規定は、建替え決議をした集会の議事録について準用する。  
     
 (区分所有権等の売渡し請求等)   
 第63条1項   建替え決議 → 建物取壊し敷地売却決議  があつたときは、集会を招集した者は、遅滞なく、建替え決議 → 建物取壊し敷地売却決議 に賛成しなかつた区分所有者(その承継人を含む。)に対し、 建替え決議 → 建物取壊し敷地売却決議 の内容により 建替えに → 建物の取壊し及び建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却に 参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告しなければならない。  あり
 第63条2項   2 集会を招集した者は、前項の規定による書面による催告に代えて、法務省令で定めるところにより、同項に規定する区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により建替え決議 → 建物取壊し敷地売却決議 の内容により 建替えに → 建物の取壊し及び建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却に 参加するか否かを回答すべき旨を催告することができる。この場合において、当該集会を招集した者は、当該書面による催告をしたものとみなす。  あり
 第63条3項   3 第一項に規定する区分所有者は、同項の規定による催告を受けた日から二月以内に回答しなければならない。  
 第63条4項   4 前項の期間内に回答しなかつた第一項に規定する区分所有者は、 建替えに → 建物の取壊し及び建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却に 参加しない旨を回答したものとみなす。  あり
 第63条5項   5 第三項の期間が経過したときは、建替え決議 → 建物取壊し敷地売却決議 に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議 → 建物取壊し敷地売却決議 の内容により 建替えに → 建物の取壊し及び建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却に 参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)又はこれらの者の全員の合意により区分所有権及び敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者(以下「買受指定者」という。)は、同項の期間の満了の日から二月以内に、 建替えに → 建物の取壊し及び建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却に 参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含む。)に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。建替え決議 → 建物取壊し敷地売却決議 があつた後にこの区分所有者から敷地利用権のみを取得した者(その承継人を含む。)の敷地利用権についても、同様とする。  あり
 第63条6項   6 前項の規定による請求があつた場合において、 建替えに → 建物の取壊し及び建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却に 参加しない旨を回答した区分所有者が建物の明渡しによりその生活上著しい困難を生ずるおそれがあり、かつ、建替え決議 → 建物取壊し敷地売却決議 の遂行に甚だしい影響を及ぼさないものと認めるべき顕著な事由があるときは、裁判所は、その者の請求により、代金の支払又は提供の日から一年を超えない範囲内において、建物の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。  あり
 第63条7項   7 建替え決議 → 建物取壊し敷地売却決議 の日から二年以内に 建物の取壊しの工事に着手しない → 売買契約による建物及びその敷地(これに関する権利を含む。)についての権利の移転(以下この項及び次項において「建物等の権利の移転」という。)がない 場合には、第五項の規定により区分所有権又は敷地利用権を売り渡した者は、この期間の満了の日から六月以内に、買主が支払つた代金に相当する金銭をその区分所有権又は敷地利用権を現在有する者に提供して、これらの権利を売り渡すべきことを請求することができる。
 ただし、建物の取壊しの工事に着手しなかつた → 建物等の権利の移転がなかつた ことにつき正当な理由があるときは、この限りでない。
 あり
 第63条8項   8 前項本文の規定は、同項ただし書に規定する場合において、建物の取壊しの工事の着手 → 建物等の権利の移転 を妨げる理由がなくなつた日から六月以内に その着手をしない → 建物等の権利の移転がない ときに準用する。この場合において、同項本文中「この期間の満了の日から六月以内に」とあるのは、「建物の取壊しの工事の着手を妨げる理由がなくなつたことを知つた日から六月又はその理由がなくなつた日から二年のいずれか早い時期までに」と読み替えるものとする。  あり
     
 (建替えに関する合意)   
 第64条  建替え決議 → 建物取壊し敷地売却決議 に賛成した各区分所有者、建替え決議 → 建物取壊し敷地売却決議 の内容により 建替えに → 建物の取壊し及び建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却に 参加する旨を回答した各区分所有者 及び → 並びに 区分所有権又は敷地利用権を買い受けた各買受指定者(これらの者の承継人を含む。)は、建替え決議 → 建物取壊し敷地売却決議 の内容により 建替えを → 建物の取壊し及び建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却を 行う旨の合意をしたものとみなす。  あり
     
 (賃貸借の終了請求)   
 第64条の2 1項  建替え決議 → 建物取壊し敷地売却決議 があつたときは、建替え決議 → 建物取壊し敷地売却決議 に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議 → 建物取壊し敷地売却決議 の内容により 建替えに → 建物の取壊し及び建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却に に参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)若しくはこれらの者の全員の合意により賃貸借の終了を請求することができる者として指定された者又は賃貸されている専有部分の区分所有者は、当該専有部分の賃借人に対し、賃貸借の終了を請求することができる。  
 第64条の2 2項  2 前項の規定による請求があつたときは、当該専有部分の賃貸借は、その請求があつた日から六月を経過することによつて終了する。  
 第64条の2 3項  3 第一項の規定による請求があつたときは、当該専有部分の区分所有者は、当該専有部分の賃借人(転借人を含む。第五項において同じ。)に対し、賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償金を支払わなければならない。  
 第64条の2 4項  4 第一項の規定による請求をした者(当該専有部分の区分所有者を除く。)は、当該専有部分の区分所有者と連帯して前項の債務を弁済する責任を負う。  
 第64条の2 5項  5 専有部分の賃借人は、第二項の規定により当該専有部分の賃貸借が終了したときであつても、前二項の規定による補償金の提供を受けるまでは、当該専有部分の明渡しを拒むことができる。  
     
 (使用貸借の終了請求)   
 第64条の3  前条第一項及び第二項の規定は、専有部分が使用貸借の目的物とされている場合(民法第五百九十八条第一項又は第二項に規定する場合を除く。)について準用する。  
     
 (配偶者居住権の消滅請求)   
 第64条の4  第六十四条の二の規定は、専有部分に配偶者居住権が設定されている場合(民法第千三十五条第一項ただし書に規定する場合を除く。)について準用する。  

 といったように「建替え」(第62条〜)からの準用が多いので、詳細は、各条文に戻って見てくれればいいのですが、準用の概要を説明します。

★建物取壊し敷地売却決議の流れ

 *建物を取壊しその敷地を売り払ってしまう「建物取壊し敷地売却」の決議は、
 ・区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議決権の各4/5以上の多数できる。(注:ここには、”出席した”は入っていない
 ・また、耐震性の不足や火災に対する安全性の不足、バリアフリー基準に適していないなど「客観的な5つの事由」に当てはまれば、 多数決の割合が、 各3/4以上に緩和される。(第62条2項)

 ・建物取壊し敷地売却決議を目的とする集会は、
  ・集会の当日の 2ヶ月以上前に集会招集の通知をだす(第62条6項)
  ・その通知には、建物取壊し敷地売却に対して賛否を判断できる材料として、
   ・その@議題とA議案の要領にプラスして
      一 建物取壊し及び建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却 を必要とする理由
      二 建物取壊し及び建物の敷地(これに関する権利を含む。)の売却 をしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
      三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
      四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
     も通知する(第62条7項)

 ・その説明会は、集会日より少なくとも1ヶ月前に開催する(第62条8項)
   説明会は、何度開催してもいい。
 ・集会の手続は、第35条(共有者の取扱、通知場所、掲示など)、第36条(招集手続は、全員が同意すれば、省略できる)による。これは、説明会でも適用する(第62条9項)

 ・開催された建物取壊し敷地売却決議では、
   一 建物の取壊しに要する費用の概算額
   二 前号に規定する費用の分担に関する事項
   三 建物の敷地の売却の相手方となるべき者の氏名又は名称
   四 建物の敷地の売却による代金の見込額
   五 建物の敷地の売却によつて各区分所有者が取得することができる金銭の額の算定方法に関する事項  
  も定めること 

 ・その集会の議事録には、建物取壊し敷地売却決議についての各区分所有者の賛否をも記載又は記録する。(第62条10項)
  この賛否の記録によって、あとの「区分所有権等の売渡請求」の当事者が確定出来る。
 ・建物取壊し敷地売却決議に賛成しない区分所有者は、2ヶ月の考慮期間を経て、建物取壊し敷地売却決議の賛成者になることもできる。(第63条)
 ・最終的に建物取壊し敷地売却決議に反対者となれば、反対者は建物取壊し敷地売却決議の賛成者(または後から参加したデベロッパー)から区分所有権(専有部分の権利)と土地の権利(敷地利用権)の売渡請求を受けて、2ヶ月以内に出ていくことになる。(第63条5項など)
 ・出て行くに際して、生活上の困難があれば、裁判所の判断で代金を受け取ってから、1年を超えない範囲で明渡が認められることもある。(第63条6項)
 ・また、建物取壊し敷地売却決議があっても、正当な理由が無くて2年が過ぎても売買契約による建物及びその敷地についての権利の移転がない時には、区分所有権と敷地利用権を売った区分所有者は、逆にそれらの権利を買い戻すことができる。(第63条7項)
 ・建物取壊し敷地売却決議に賛成した区分所有者等は、全員「建物取壊し敷地売却決議の内容に合意したものとみなし」これから先の建物取壊し敷地売却決議による権利の移動、取壊し工事などが始まるのは、「建替え決議」と同様です。(第64条)
 
 また、令和8年4月1日施行の改正区分所有法で新規追加された、専有部分に
  @賃貸借(第64条の2)
  A使用貸借(第64条の3)
  B配偶者居住権(第64条の4)
  があれば、その終了(消滅)も請求できます。

  この場合、賃借人や配偶者居住権者に適切な補償金を支払う義務があり、(第64条の2 3項)、賃借人や配偶者居住権者は、補償金を受け取るまでは、その専有部分の明渡しを拒めます。(第64条の2 5項)

 売渡請求での時価の決め方、賃借人が受ける「補償」、配偶者居住権者が受ける「補償」などは、前の解説を読んでください。



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(取壊し決議)

第六十四条の八 (注:令和8年4月1日施行で改正あり。新設。)

1項 集会においては、区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議決権の各五分の四以上の多数で、建物を取り壊す旨の決議(以下この条及び第七十七条において「取壊し決議」という。)をすることができる。 

過去出題 マンション管理士
管理業務主任者

  令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、建替えの選択肢(オプション)として新設された4つの  
 ・第64条の5:建物更新決議 
 ・第64条の6:建物敷地売却決議
 ・第64条の7:建物取壊し敷地売却決議
 ・第64条の8:取壊し決議
 内の1つです。

施行は、令和8年4月1日。

 

◎新たな建物再生化手法の創設 〜建替えに代わるオプション(選択肢)を増やした〜

 上の「建物更新決議(第64条の2)等でも、述べましたが、区分所有法第62条における「建替え」では、集会を開いて、区分所有者及び議決権の各4/5(80%)以上の多数で既存の区分所有建物を壊して、元の土地(一部でも全部でも、またプラス近隣の土地)に新しく建物を建築するやり方しかありませんでしたが、令和8年4月1日施行の改正区分所有法では、過去の建替えにおいて費用だとか問題となった点を顧みて、従来の「建替え」に以下の4つの選択肢(オプション)を追加・新設しました。

 それが、
  @建物更新決議・・・第64条の5・・・建物の躯体を残し、共用部分と専有部分の形状等を変更する
  A建物敷地売却決議・・・第64条の6・・・既存の建物とその敷地を売ってしまう
  B建物取壊し敷地売却決議・・・第64条の7・・・既存の建物を取り壊した上で、その敷地を売ってしまう
  C取壊し決議・・・第64条の8・・・既存の建物を取り壊す
 です。

★第64条の8「取壊し決議」制度設定の理由 〜社会的に危険な建物は、壊す〜

  本第64条の8は、区分所有建物を取壊すことが、集会の多数決でできるという規定です。

 令和8年4月1日施行の改正区分所有法で新規に「建替え」のオプションとして加えられた4つの内の最後の「取壊し決議」は、今ある区分所有建物を取壊してしまうというだけで、全然「建替え」ではありません。

 「取壊し決議」が創設された理由は、審議会の資料では、以下のようになっています。

 「(建物)取壊し制度」について

 「例えば、区分所有建物が老朽化や局地的な災害等により危険な状態になっている場合において、売却先も当面見つからないようなケースでは、区分所有者の相当多数が、土地工作物責任(民法第717条)等の責任を負うことを避けるべく、建物の取壊しを行うことを望むことも考えられる。

<参照> 民法 第717条

(土地の工作物等の占有者及び所有者の責任)
第七百十七条 土地の工作物の設置又は保存に瑕疵があることによって他人に損害を生じたときは、その工作物の占有者は、被害者に対してその損害を賠償する責任を負う。ただし、占有者が損害の発生を防止するのに必要な注意をしたときは、所有者がその損害を賠償しなければならない。

2 前項の規定は、竹木の栽植又は支持に瑕疵がある場合について準用する。

3 前二項の場合において、損害の原因について他にその責任を負う者があるときは、占有者又は所有者は、その者に対して求償権を行使することができる。

 しかし、現行区分所有法においては、多数決によって区分所有建物を取り壊すことはできず、区分所有者全員の同意が必要となるが、区分所有者が極めて多数に上ることも少なくなく、その同意を得ることは必ずしも容易でない。

 また、建替え制度と同様の要件・手続によるのであれば、多数決により区分所有建物を取り壊す仕組みを設けることも許容されるとも考えられる。

 現に、被災区分所有法(被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法)には、被災地の復興のため、政令で定める災害により区分所有建物の一部が滅失した場合において、区分所有者及び議決権の各5分の4以上の多数決により、区分所有建物を取り壊す制度が設けられている(被災区分所有法第11条)。

<参照> 被災区分所有建物の再建等に関する特別措置法 第11条

取壊し決議等)
第十一条 第七条に規定する場合においては、区分所有者集会において、区分所有者及び議決権の各五分の四以上の多数で、当該区分所有建物を取り壊す旨の決議(以下「取壊し決議」という。)をすることができる。

2 取壊し決議においては、次の事項を定めなければならない。
   一 区分所有建物の取壊しに要する費用の概算額
   二 前号に規定する費用の分担に関する事項

3 取壊し決議については、第九条第三項から第八項まで並びに区分所有法第六十三条第一項から第五項まで、第七項及び第八項並びに第六十四条の規定を準用する。この場合において、第九条第三項中「前項第三号」とあるのは「第十一条第二項第二号」と、同条第四項中「第一項に」とあるのは「第十一条第一項に」と、同条第五項第一号中「売却」とあるのは「取壊し」と、区分所有法第六十三条第一項、第四項及び第五項並びに第六十四条中「建替えに」とあるのは「取壊しに」と、同条中「建替えを行う」とあるのは「取壊しを行う」と読み替えるものとする。

 そこで、試案では、区分所有建物の再生の円滑化のため、区分所有法においても、被災区分所有法を参考に、一定の多数決により、区分所有建物を取り壊すことを可能とする制度(取壊し制度)を設けることを提案している。」

 ということで、「取壊し決議」は、老朽化や災害などで大きな被害を受けたマンションを解体するための重要な手続きということです。

 しかし、この発想は、行政サイドからのアイディアで、建物の持主の区分所有者にとって、建物を取り壊すということは、解体費用を負担した上に、住まいを失うことで、残された土地の活用方法も法として考えなければいけません。
建物を取り壊した先、その土地をどう活用するのか、住居を失った多くの人々をどう手当てしていくのか、全く先の見えない法律です。

 令和8年4月1日施行の改正区分所有法で新規に「建替え」以外のオプションが「建物更新」、「建物敷地売却」、「建物取壊し敷地売却」、そして、この「取壊し」と各種提示されましたが、これらは建物が一人の人が住んでいるだけでなく多くの家族も生活している「住まい」であること、彼らにとって、近所付き合いがあり、子供たちはそこの学校に通っていること居住していて、そこを離れられない事情がおおくあることを考慮せず、「危険な建物」というハード面と「補償」だけから創作した規定です。
 私的な多数決による「収用制度」で、強制的に権利を剥奪するこの区部所有法でのやり方は、さらなる検討が区分所有法には必要です。

★「管理不全」に陥らないためにマンション管理士を顧問にするよう法を改正すべき

  建物の老朽化や管理不全のマンションを放置している現行法に問題がある。
 マンションの管理は区分所有者の自主管理では、到底できないことが分かっている。
 これらを解決する方法は、折角制度として存在している「マンション管理士」を活用して、管理不全に陥る前に修理や会計を精査すべきだ。
 例えば、一棟で戸数が20以上なら、必ず「マンション管理士」をその管理組合の顧問にする制度を作るべきだ。
 マンション管理士を法定監査人的な立場にすることです。
 顧問の費用は、地方自治体の一部負担とする方策もある。

 病気に例えるなら、健康診断を義務化して、危篤に陥る状態を避けるべきです。

   

★「建替え」と同じように事前に勉強会を開いて、他の「建物更新」などと充分に比較検討すること

  本第64条の8の「(建物)取壊し」においても、建替えと同様に、区分所有者にとっては、現在住んでいる建物から引っ越しを伴いますから、事前にマンション管理士など専門家を交えた勉強会(検討会)を開催して、不満や改善要求などの情報を集め、最終的に多くの区分所有者から納得がいくようにコンセンサス(同意)をえる準備が必要です。

 特に、高齢者等の居住の安定には配慮する必要があります。

 なお、勉強会(検討会)の費用は、総会で定めれば(普通決議)、管理費会計からでも修繕積立金会計からでも充当できます。

★取壊し決議の要件
 「取壊し決議」をするには、以下の要件が必要です。
 @集会において
 A ア.区分所有者(議決権を有しないものを除く。)、
    イ.議決権 及び
   各五分の四以上の多数で
 B建物を取壊す決議 
 をすることができる。

1.取壊し決議の要件の@とA 
  

 他の「建替え」オプションと同様な解説になりますが、「取壊し決議」で必要な要件の「@集会を開け」は、貴重な財産である建物を取壊してしまうという極めて重要な決議は、規約で定めることはできないという、当然な規定です。

 その集会では、多数決要件として、
  A ア.区分所有者(議決権を有しないものを除く。)、
     イ.議決権 及び
    各五分の四以上の多数
    の賛成が求められます。

  区分所有者の共有な持物であるマンションなど区分所有建物の建物を取壊すには、民法の「共有者全員の合意」を基本としなければなりませんが、100名以上も関係するマンションでは、民法で定める「共有者全員の合意を得る」ことは、不可能です。そこで、民法との妥協点が、この「4/580%以上」という多数決の規定です。

  注:”出席した”の条件はない・・・令和8年4月1日施行の改正区分所有法で採用された、通常の集会では、過半数の出席で集会は成立し、その出席した区分所有者と議決権の各過半数があれば可決しますが、「建替え決議」と同様に、「取壊し決議」においては、建物を取壊すという重大性から、議決権を有しない所在等不明者は除きますが、基本的に全区分所有者と全議決権の 各、4/5以上 の賛成が必要としています。

   ア.区分所有者の数 4/5以上
    ・議決権を有しない者を除く・・・令和8年4月1日施行の改正区分所有法で、基本的に、住民票などから調べても所在等不明な区分所有者は、集会の決議の母数から除外されます。(第38条の2)
    ・共有者・・・1人として扱われる(第40条) 
  イ.議決権 4/5以上
    ・所在等不明区分所有者の持っている議決権数は、当然入らない
    ・議決権は、原則:その専有部分の床面積の割合(別段規約で設定可)(第14条)
        
   という要件を満たせば、「建物を取壊す」ことが、可能です。

★建物に「客観的な事由(5つ)」あれば、4/5(80%)以上 を 3/4(75%)以上に緩和できる。

  この「取壊し決議」においても、第64条の8 3項の準用において、「建替え決議」において、令和8年4月1日施行の改正区分所有法第62条2項で追加された、5つの「客観的な事由」つまり、 
  @ 耐震性の不足
  A 火災に対する安全性の不足
  B 外壁等の?落により周辺に危害を生ずるおそれ
  C 給排水管等の腐食等により著しく衛生上有害となるおそれ
  D バリアフリー基準への不適合
  のいずれかに該当すれば、「取壊し」多数決の割合を、4/5(80%)以上から 3/4(75%)以上 に引き下げることができます。(第64条の8 3項での準用)

  危険性の高い建物は、早く取壊すという発想です。


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(取壊し決議)

第六十四条の八 (注:令和8年4月1日施行で改正あり。新設。)

2項 取壊し決議においては、次の事項を定めなければならない。
   一 建物の取壊しに要する費用の概算額
   二 前号に規定する費用の分担に関する事項

過去出題 マンション管理士
管理業務主任者

  令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、建替えの選択肢(オプション)として新設された4つの  
 ・第64条の5:建物更新決議 
 ・第64条の6:建物敷地売却決議
 ・第64条の7:建物取壊し敷地売却決議
 ・第64条の8:取壊し決議
 内の1つです。

施行は、令和8年4月1日。

 


★「取壊し決議」において定める2つの事項

  本第64条の8 2項では、「取壊し決議」をする際には、次の2つの事項も定めておく必要があと規定しています。他の「建物取壊し敷地売却決議」等と異なり「取壊し決議」で定めるのは2つだけです。

 @建物の取壊しに要する費用の概算額 と
 A前号に規定する費用の分担に関する事項

 です。

1.取壊し決議における要件@ 〜建物の取壊しに要する費用の概算額〜
 取壊し決議における要件の一番目の「建物の取壊しに要する費用の概算額」は、
  ア.建物の構造による...鉄骨造、RC造(鉄筋コンクリート造)など、建物の構造によって解体の方法が異なりそのため坪単価が違ってきます。また、高さと建物が強固なほど費用がかかります。
    一般的に、鉄骨造は4万円〜7万円、RC造は6万円〜8万円程度が相場とされています。
    1戸あたり、200万円〜1,000万円かかる(2025年9月現在)
  イ.廃棄物の処理費用...解体によって発生するコンクリートや鉄材など廃材の処理にかかる費用です。
  ウ.その他...諸経費や仮設トイレなど付帯工事費用が含まれます。
 これらの要素を元に、解体業者が見積を出してきます。
  
  取壊し費用(解体費用)は概算額で構いませんから、この「取壊し決議」をした時点と実際の解体時での金額に違いが出ても構いません。(正当な事由がないのに、大きく金額が異なった場合は、争いとなりますが。)

2.取壊し決議における要件A 〜前号に規定する費用の分担に関する事項〜
 取壊し決議における要件の二番目の「前号に規定する費用の分担に関する事項」とは、1号で見積もられた取壊し(解体)費用を、区分所有者間でどう負担するかの取り決めです。

 通常考えられる分担の基準は、専有部分(床面積)の割合(区分所有法第14条)が妥当でしょう。

<参照> 区分所有法 第14条

(共用部分の持分の割合)
第十四条 各共有者の持分は、その有する専有部分の床面積の割合による

2 前項の場合において、一部共用部分(附属の建物であるものを除く。)で床面積を有するものがあるときは、その一部共用部分の床面積は、これを共用すべき各区分所有者の専有部分の床面積の割合により配分して、それぞれその区分所有者の専有部分の床面積に算入するものとする。

3 前二項の床面積は、壁その他の区画の内側線で囲まれた部分の水平投影面積による。

4 前三項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。


 なお、取り壊しにかかる費用は、修繕積立金や管理費とは別に積み立てる必要がある場合があります。


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(取壊し決議)

第六十四条の八 (注:令和8年4月1日施行で改正あり。新設。)

3項 第六十二条(第一項及び第四項を除く。)及び第六十三条から第六十四条の四までの規定は、取壊し決議について準用する。この場合において、第六十二条第二項中「前項」とあるのは「第六十四条の八第一項」と、同条第五項中「前項第三号及び第四号」とあるのは「第六十四条の八第二項第二号」と、同条第七項第一号及び第二号中「建替え」とあるのは「取壊し」と、第六十三条第一項、第二項及び第四項から第六項まで、第六十四条並びに第六十四条の二第一項中「建替えに」とあるのは「取壊しに」と、第六十四条中「建替えを」とあるのは「取壊しを」と読み替えるものとする。

過去出題 マンション管理士
管理業務主任者

  令和7年(2025年)5月に成立した「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」によって、建替えの選択肢(オプション)として新設された4つの  
 ・第64条の5:建物更新決議 
 ・第64条の6:建物敷地売却決議
 ・第64条の7:建物取壊し敷地売却決議
 ・第64条の8:取壊し決議
 内の1つです。

施行は、令和8年4月1日。

 

◎「建替え決議」の条文を「壊し決議」にも準用する。

 「取壊し決議」は、「建替え」の選択肢(オプション)として、令和8年4月1日施行の改正区分所有法で新規追加された規定ですから、基本的に元々規定された「建替え決議」の条文、
  ・第62条(建替え決議)
  ・第63条(区分所有権等の売渡し請求等)  から
  ・第64条(建替えに関する合意) まで、
 そして、令和8年4月1日施行の改正区分所有法で新設された
  ・第64条の2(賃貸借の終了請求)
  ・第64条の3(使用貸借の終了請求)
  ・第64条の4(配偶者居住権の消滅請求)
  までが準用され、読み替えが行われますが、この規定も「団地の規定(第66条)」と同様に、こんなに列挙されるともう面倒との気持ちが先に立ってしまいます。

 私の解説も、今までと同じ「準用」で、「超解説 区分所有法」の解説者としては、ちゃんと解説しましょう。と同じ文句を使っています。 

 第64条の8 3項の準用関係を纏めると以下のようになります。

 準用されている条文 
 条・項 条文  読み替え 
 (建替え決議) → (取壊し決議)へ  
 第62条2項  2 建物が次の各号のいずれかに該当する場合における 前項 → 第六十四条の八第一項 の規定の適用については、同項中「五分の四」とあるのは、「四分の三」とする。
   一 地震に対する安全性に係る建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき。
   二 火災に対する安全性に係る建築基準法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき。
   三 外壁、外装材その他これらに類する建物の部分が?離し、落下することにより周辺に危害を生ずるおそれがあるものとして法務大臣が定める基準に該当するとき。
   四 給水、排水その他の配管設備(その改修に関する工事を行うことが著しく困難なものとして法務省令で定めるものに限る。)の損傷、腐食その他の劣化により著しく衛生上有害となるおそれがあるものとして法務大臣が定める基準に該当するとき。
   五 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律第十四条第五項に規定する建築物移動等円滑化基準に準ずるものとして法務大臣が定める基準に適合していないとき。
 あり
 第62条3項  3 法務大臣は、前項各号の基準を定め、又はこれを変更するときは、あらかじめ、国土交通大臣と協議するものとする。  
 第62条5項  5 前項第三号及び第四号 → 第六十四条の八第二項第二号 の事項は、各区分所有者の衡平を害しないように定めなければならない。
 
 (注:第六十四条の八第二項第二号:取壊し費用の分担)
 あり
 第62条6項  6 建替え決議 → 取壊し決議 を会議の目的とする集会を招集するときは、第三十五条第一項の通知は、同項の規定にかかわらず、当該集会の会日より少なくとも二月前に発しなければならない。ただし、この期間は、規約で伸長することができる。  あり
 第62条7項  7 前項に規定する場合において、第三十五条第一項の通知をするときは、会議の目的たる事項及び議案の要領のほか、次の事項をも通知しなければならない。
   一 建物 の建替え → 取壊し を必要とする理由
   二 建物 の建替え → 取壊し をしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
   三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
   四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
 あり
 第62条8項  8 第六項の集会を招集した者は、当該集会の会日より少なくとも一月前までに、当該招集の際に通知すべき事項について区分所有者に対し説明を行うための説明会を開催しなければならない。  
 第62条9項  9 第三十五条及び第三十六条の規定は、前項の説明会の開催について準用する。  
 第62条10項  10 前条第六項の規定は、建替え決議をした集会の議事録について準用する。  
     
 (区分所有権等の売渡し請求等)   
 第63条1項   建替え決議 → 取壊し決議 があつたときは、集会を招集した者は、遅滞なく、建替え決議 → 取壊し決議 に賛成しなかつた区分所有者(その承継人を含む。)に対し、建替え決議 → 取壊し決議 の内容により 建替えに → 取壊しに 参加するか否かを回答すべき旨を書面で催告しなければならない。  あり
 第63条2項   2 集会を招集した者は、前項の規定による書面による催告に代えて、法務省令で定めるところにより、同項に規定する区分所有者の承諾を得て、電磁的方法により建替え決議 → 取壊し決議 の内容により 建替えに → 取壊しに 参加するか否かを回答すべき旨を催告することができる。この場合において、当該集会を招集した者は、当該書面による催告をしたものとみなす。  あり
 第63条3項   3 第一項に規定する区分所有者は、同項の規定による催告を受けた日から二月以内に回答しなければならない。  
 第63条4項   4 前項の期間内に回答しなかつた第一項に規定する区分所有者は、 建替えに → 取壊しに 参加しない旨を回答したものとみなす。  あり
 第63条5項   5 第三項の期間が経過したときは、建替え決議 → 取壊し決議 に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議 → 取壊し決議 の内容により 建替えに → 取壊しに 参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)又はこれらの者の全員の合意により区分所有権及び敷地利用権を買い受けることができる者として指定された者(以下「買受指定者」という。)は、同項の期間の満了の日から二月以内に、 建替えに → 取壊しに 参加しない旨を回答した区分所有者(その承継人を含む。)に対し、区分所有権及び敷地利用権を時価で売り渡すべきことを請求することができる。
 建替え決議 → 取壊し決議 があつた後にこの区分所有者から敷地利用権のみを取得した者(その承継人を含む。)の敷地利用権についても、同様とする。
 あり
 第63条6項   6 前項の規定による請求があつた場合において、 建替えに → 取壊しに 参加しない旨を回答した区分所有者が建物の明渡しによりその生活上著しい困難を生ずるおそれがあり、かつ、建替え決議 → 取壊し決議 の遂行に甚だしい影響を及ぼさないものと認めるべき顕著な事由があるときは、裁判所は、その者の請求により、代金の支払又は提供の日から一年を超えない範囲内において、建物の明渡しにつき相当の期限を許与することができる。  あり
 第63条7項   7 建替え決議 → 取壊し決議 の日から二年以内に 建物の取壊しの工事に着手しない 場合には、第五項の規定により区分所有権又は敷地利用権を売り渡した者は、この期間の満了の日から六月以内に、買主が支払つた代金に相当する金銭をその区分所有権又は敷地利用権を現在有する者に提供して、これらの権利を売り渡すべきことを請求することができる。
 ただし、建物の取壊しの工事に着手しなかつた  ことにつき正当な理由があるときは、この限りでない。
 あり
 第63条8項   8 前項本文の規定は、同項ただし書に規定する場合において、建物の取壊しの工事の着手  を妨げる理由がなくなつた日から六月以内に その着手をしない  ときに準用する。この場合において、同項本文中「この期間の満了の日から六月以内に」とあるのは、「建物の取壊しの工事の着手を妨げる理由がなくなつたことを知つた日から六月又はその理由がなくなつた日から二年のいずれか早い時期までに」と読み替えるものとする。  あり
     
 (建替えに関する合意)   
 第64条  建替え決議 → 取壊し決議 に賛成した各区分所有者、建替え決議の内容により 建替えに → 取壊しに 参加する旨を回答した各区分所有者及び区分所有権又は敷地利用権を買い受けた各買受指定者(これらの者の承継人を含む。)は、建替え決議 → 取壊し決議 の内容により 建替えを → 取壊しを 行う旨の合意をしたものとみなす。  あり
     
 (賃貸借の終了請求)   
 第64条の2 1項  建替え決議 → 取壊し決議 があつたときは、建替え決議 → 取壊し決議 に賛成した各区分所有者若しくは建替え決議 → 取壊し決議 の内容により 建替えに → 取壊しに に参加する旨を回答した各区分所有者(これらの者の承継人を含む。)若しくはこれらの者の全員の合意により賃貸借の終了を請求することができる者として指定された者又は賃貸されている専有部分の区分所有者は、当該専有部分の賃借人に対し、賃貸借の終了を請求することができる。  あり
 第64条の2 2項  2 前項の規定による請求があつたときは、当該専有部分の賃貸借は、その請求があつた日から六月を経過することによつて終了する。  
 第64条の2 3項  3 第一項の規定による請求があつたときは、当該専有部分の区分所有者は、当該専有部分の賃借人(転借人を含む。第五項において同じ。)に対し、賃貸借の終了により通常生ずる損失の補償金を支払わなければならない。  
 第64条の2 4項  4 第一項の規定による請求をした者(当該専有部分の区分所有者を除く。)は、当該専有部分の区分所有者と連帯して前項の債務を弁済する責任を負う。  
 第64条の2 5項  5 専有部分の賃借人は、第二項の規定により当該専有部分の賃貸借が終了したときであつても、前二項の規定による補償金の提供を受けるまでは、当該専有部分の明渡しを拒むことができる。  
     
 (使用貸借の終了請求)   
 第64条の3  前条第一項及び第二項の規定は、専有部分が使用貸借の目的物とされている場合(民法第五百九十八条第一項又は第二項に規定する場合を除く。)について準用する。  
     
 (配偶者居住権の消滅請求)   
 第64条の4  第六十四条の二の規定は、専有部分に配偶者居住権が設定されている場合(民法第千三十五条第一項ただし書に規定する場合を除く。)について準用する。  
  

 といったように「建替え」(第62条〜)からの準用が多いので、詳細は、各条文に戻って見てくれればいいのですが、準用の概要を説明します。 

★「取壊し決議」の流れ

 *建物を取壊す「取壊し」の決議は、
 ・区分所有者(議決権を有しないものを除く。)及び議決権の各五分の四以上の多数できる。(注:ここには、”出席した”は入っていない
 ・また、耐震性の不足や火災に対する安全性の不足、バリアフリー基準に適していないなど「客観的な5つの事由」に当てはまれば、 多数決の割合が、 3/4以上に緩和される。(第62条2項)

 ・取壊し決議を目的とする集会は、
  ・集会の当日の 2ヶ月以上前に集会招集の通知をだす(第62条6項)
  ・その通知には、取壊しに対して賛否を判断できる材料として、
   ・その@議題とA議案の要領にプラスして
      一 建物取壊し を必要とする理由
      二 建物取壊し をしないとした場合における当該建物の効用の維持又は回復(建物が通常有すべき効用の確保を含む。)をするのに要する費用の額及びその内訳
      三 建物の修繕に関する計画が定められているときは、当該計画の内容
      四 建物につき修繕積立金として積み立てられている金額
     も通知する(第62条7項)

 ・その説明会は、集会日より少なくとも1ヶ月前に開催する(第62条8項)
   説明会は、何度開催してもいい。
 ・集会の手続は、第35条(共有者の取扱、通知場所、掲示など)、第36条(招集手続は、全員が同意すれば、省略できる)による。これは、説明会でも適用する(第62条9項)

 ・開催された取壊し決議では、
   一 建物の取壊しに要する費用の概算額
   二 前号に規定する費用の分担に関する事項
   も定めること 

 ・その集会の議事録には、取壊し決議についての各区分所有者の賛否をも記載又は記録する。(第62条10項)
  この賛否の記録によって、あとの「区分所有権等の売渡請求」の当事者が確定出来る。
 ・取壊し決議に賛成しない区分所有者は、2ヶ月の考慮期間を経て、取壊し決議の賛成者になることもできる。(第63条)
 ・最終的に取壊し決議に反対者となれば、反対者は取壊し決議の賛成者(または後から参加したデベロッパー)から区分所有権(専有部分の権利)と土地の権利(敷地利用権)の売渡請求を受けて、2ヶ月以内に出ていくことになる。(第63条5項など)
 ・出て行くに際して、生活上の困難があれば、裁判所の判断で代金を受け取ってから、1年を超えない範囲で明渡が認められることもある。(第63条6項)
 ・また、取壊し決議があっても、正当な理由が無くて2年が過ぎても建物の取壊しの工事に着手しない時には、区分所有権と敷地利用権を売った区分所有者は、逆にそれらの権利を買い戻すことができる。(第63条7項)
 ・取壊し決議に賛成した区分所有者等は、全員「取壊し決議の内容に合意したものとみなし」これから先の取壊し決議による権利の移動、取壊し工事などが始まるのは、「建替え決議」と同様です。(第64条)
 
 また、令和8年4月1日施行の改正区分所有法で新規追加された、専有部分に
  @賃貸借(第64条の2)
  A使用貸借(第64条の3)
  B配偶者居住権(第64条の4)
  があれば、その終了(消滅)も請求できます。

  この場合、賃借人や配偶者居住権者に適切な補償金を支払う義務があり、(第64条の2 3項)、賃借人や配偶者居住権者は、補償金を受け取るまでは、その専有部分の明渡しを拒めます。(第64条の2 5項)

  売渡請求での時価の決め方、賃借人が受ける「補償」、配偶者居住権者が受ける「補償」などは、前の解説を読んでください。



ページ終わり

謝辞:Kzさんの了解により一部転用・編集をしています。

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最終更新日:
2026年 2月24日:解説更新した。
2025年 9月18日: 
どうにか、第64条の2(賃貸借の終了請求)〜第64条の8(取壊し決議)までの第1版を終えた。
ここだけで、約1ヶ月かかった。
2025年 5月31日〜:令和8年4月1日施行版に移行中
2025年 8月28日:新設につき、M-p08b.htm
 から 分離させた。

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